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著作権分科会 法制問題小委員会(第1回)議事録

1. 日時
平成18年3月30日(木曜日) 9時30分〜11時55分

2. 場所
三田共用会議所3階 大会議室

3. 出席者
(委員)
  市川,大渕,末吉,茶園,道垣内,土肥,苗村,中山,松田,村上,森田の各委員
(文化庁)
  辰野長官官房審議官,甲野著作権課長,川瀬著作物流通推進室長ほか関係者

4. 議事次第
1   開会
2 委員及び文化庁出席者紹介
3 議事
 
(1) 法制問題小委員会主査の選任等について
(2) 文化庁次長あいさつ
(3) 法制問題小委員会審議予定について
(4) 文化審議会著作権分科会の意見の概要
(5) IPマルチキャスト放送の著作権法上の取扱い等について
(6) 罰則の強化について
(7) 税関における水際取締りに係る著作権法の在り方について
(8) その他
4 閉会

5. 配付資料一覧
資料1   文化審議会著作権分科会法制問題小委員会委員名簿
資料2 文化審議会著作権分科会の議事の公開について
(平成18年3月1日文化審議会著作権分科会決定)
資料3 小委員会の設置について
(平成18年3月1日文化審議会著作権分科会決定)
資料4 ワーキングチームについて(案)
資料5 文化審議会著作権分科会法制問題小委員会審議予定(案)
資料6 著作権分科会(平成18年3月1日)において出された意見の概要
資料7 IPマルチキャスト放送の著作権法上の取扱い等について
資料8 罰則の強化に係る現状と課題について
※小委員会終了後、指摘を受けて若干修正しております
資料9 税関における水際取締りに係る著作権法の在り方について
参考資料1 文化審議会関係法令等
参考資料2−1 文化審議会著作権分科会委員・専門委員名簿
参考資料2−2 文化審議会著作権分科会各小委員会委員名簿
参考資料3 著作権に関する今後の検討課題【抄】
(平成17年1月24日文化審議会著作権分科会)

6. 議事内容

【甲野著作権課長】 おはようございます。それでは全員の先生方がお揃いでございますので、ただいまから文化審議会著作権分科会法制問題小委員会の今期の第1回目の会議を開催いたします。本日は御多忙の中、御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。私は、著作権課長の甲野でございます。本日は法制問題小委員会の最初の会議でございますので、後ほど主査を選任していただくこととなりますが、それまでの間、私が進行させていただきますので、どうか御了承いただきたいと思います。
 まず初めに、今回文化審議会著作権分科会法制問題小委員会の委員に御就任された委員の方々を着席の順に紹介をさせていただきます。
 まず、お一方目でございますが、本日御欠席でございますが、青山善充委員に御就任をいただいております。続きまして、市川正巳委員でございます。大渕哲也委員でございます。潮見佳男委員は本日御欠席でございます。末吉亙委員でございます。茶園成樹委員でございます。道垣内正人委員でございます。土肥一史委員でございます。苗村憲司委員でございます。中山信弘委員でございます。松田政行委員でございます。村上政博委員でございます。森田宏樹委員でございます。
 なお、法制問題小委員会には著作権分科会長である野村豊弘会長も御出席いただけることとなっておりますが、本日は御欠席でございます。
 多くの方々に昨年に引き続いて委員をお引き受けいただきましたけれども、本年度もまたどうかよろしくお願いを申し上げます。
 続きまして、文化庁関係者を紹介させていただきます。辰野裕一文化庁長官官房審議官でございます。川瀬真著作権課著作物流通推進室長でございます。白鳥綱重著作権課著作権調査官でございます。なお、加茂川幸夫文化庁次長も出席の予定でございましたが、国会の用務が急に入りましたので、本日は恐縮ながら欠席をさせていただきます。
 それでは、議事に移りたいと思います。まず、事務局から配付資料の確認をさせていただきます。

【白鳥著作権調査官】 それでは、よろしくお願いいたします。配付資料の中に議事次第の1枚紙がございます。その中段以下に配付資料の一覧が書いてございます。
 本日配付させていただきました資料としましては9点ございます。資料の1ですが、法制問題小委員会の委員の名簿、資料2と3につきましては、3月1日に開催されました著作権分科会で決定された議事の公開についてと、小委員会の設置についてでございます。資料の4はワーキングチームについての案、資料5は法制問題小委員会の審議予定の案でございます。資料の6は3月1日の著作権分科会において出されました意見の概要、資料7はIPマルチキャスト放送の著作権法上の取扱い等についてです。資料の8は罰則の強化に係る現状と課題について、資料の9は税関における水際取締りに係る著作権法のあり方に関する資料でございます。
 なお、参考資料といたしまして、関係法令等についてお配りしておりますので、御確認いただきまして、過不足等ございましたら御連絡いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

【甲野著作権課長】 それでは続きまして、本小委員会の主査の選任をお願いしたいと思います。選任の方法につきましては、文化審議会著作権分科会運営規則の規定によりまして、本小委員会に属する委員の中から互選により選任することになっておりますが、事務局といたしましては、前期も主査をお務めいただきました中山委員に今期も主査をお願いしてはどうかと思いますが、いかがでございましょうか。

〔異議なしの声あり〕

【甲野著作権課長】 御異議がないようでございますので、中山委員を主査として選任することで御了解いただきたいと思います。
 それでは、恐縮ですが、主査席の方にお願いいたします。

【中山主査】 御指名でございますので、主査を務めさせていただきたいと思います。今期の知的財産改革の中でも最大ともいえるくらい大きな目玉になるような課題も頂戴しておりますので、ハードな仕事になるかもしれませんけれども、ワーキングチームの方々も含めてよろしくお願いしたいと思います。
 それでは、まず文化審議会著作権分科会運営規則の3条5項に基づきまして、主査の代理を指名させていただきたいと思います。私といたしましては、土肥委員を指名させていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
 次に議事に入ります前に、本小委員会の会議の公開の取扱いについて、事務局より説明をお願いいたします。

【甲野著作権課長】 それでは、御説明をいたします。議事の公開につきましては、お手元に資料2がございますので、これを御覧いただきたいと思います。
 これは去る3月1日、文化審議会著作権分科会におきまして決定をいただいた内容でございますが、分科会、それから使用料部会、小委員会の議事全体についての公開についての規則でございます。これを御紹介させていただきます。
 会議につきましては、1項目にありますとおり、原則公開といたします。ただ、(1)から(3)の場合にありますように、人事などの案件あるいは主査が正当な理由があると認めるような場合につきましては、非公開とすることができる旨定めております。
 また、2番目といたしまして、会議の事前に日時場所等は1週間前に公表するということも規定してございます。
 また、会議の傍聴でございますが、(1)から(2)にありますように、一定の手続きを経て傍聴を認めるということでございますが、一般傍聴者につきましても傍聴を認めるということとしておりまして、例えば報道関係者あるいは委員関係者の方々にも、1、2にかかわらず多くの方々に傍聴していただくような運営をとっているところでございます。逆に4と5はここに書いてあるとおりでございます。
 6番目でございますが、議事録の公開でございますが、これは発言者名を付して公開をするということにさせていただいているところでございます。なお、議事が非公開という場合につきましては、議事要旨を作成して、これを公開するものといたします。また、会議資料につきましては、基本的には公開をするという内容でございます。以上でございます。

【中山主査】 ただいまの御説明のように、議事の公開の方針につきましては、議事の内容の公開を一層進めるという観点から、今期も原則といたしまして一般に公開した形で開催するということで、分科会において決定されておりますので、そのように御承知おきいただきたいと思います。
 本日ここまでは人事に係る案件ということで、分科会決定に基づきまして非公開といたしました。この後、本日の議題の(3)におきましては、ワーキングチームの設置について御審議をいただくとともに、各座長を指名する予定になっております。これは人事に係る案件とも考えられますけれども、この人事に関しましては、委員の皆様に御審議を頂戴する案件ではございませんので、ワーキングチームの設置についての審議と併せまして座長の指名を行うということといたしまして、これも併せてこれ以降の議事を公開により行いたいと思います。よろしゅうございましょうか。

〔異議なしの声あり〕

【中山主査】 それでは、御異議がないようでございますので、これ以降、本日の議事は公開といたします。傍聴者の方の入場をお願いいたします。

〔傍聴者入場〕

【中山主査】 それでは、第1回法制問題小委員会の開催に当たりまして、辰野文化庁長官官房審議官より御挨拶を頂戴したいと思います。

【辰野文化庁長官官房審議官】 第6期の文化審議会著作権分科会法制問題小委員会の開催に当たりまして、一言御挨拶を申し上げます。
 皆様方におかれましては、大変御多用の中、このたび文化審議会著作権分科会法制問題小委員会の委員をお引き受けいただきまして、誠にありがとうございます。
 御案内のように、近時の「知的財産権」に関する政府全体の動きにはめまぐるしいものがありまして、「知的財産立国」の実現に向けた様々な取り組みが進められております。文化庁といたしましても、著作権の分野において、このような政府全体の動きに対応した施策を着実に進めてまいりました。
 これも委員の皆様方が、精力的な御審議によりまして、基本的な方向性を迅速に示してくださったためであり、改めて厚く御礼を申し上げたいと思います。
 前期の法制問題小委員会におきましては、著作権分科会が今後優先して検討すべき著作権法制に関する課題として取りまとめた「著作権法に関する今後の検討課題」に沿いまして、様々な課題を御検討いただき、報告書を取りまとめていただきました。
 文化庁といたしましては、報告書で示していただきました方向性や基本的な考え方を踏まえまして、著作権法の整備を含め、速やかに必要な施策を推進してまいりたいと考えておるところでございます。
 今期の法制問題小委員会におきましても、引き続き、この「著作権法に関する今後の検討課題」に沿って、様々な課題について御検討いただきたいと考えておりますが、いわゆる「通信と放送の融合」への対応といった緊急に検討を開始すべき新たな課題も出現しております。
 したがいまして、ぜひこれらの課題につきましても、迅速に御検討いただき、方向性を示していただければと考えております。
 委員の皆様方にはお忙しい中、大変恐縮ではございますが、一層の御協力をお願いいたしまして、私からの御挨拶とさせていただきます。よろしくお願い申し上げます。

【中山主査】 ありがとうございました。次に、本委員会の設置の趣旨や所掌事務及び今後の審議予定等につきまして、事務局から説明をお願いいたします。

【甲野著作権課長】 それでは、御説明いたします。本委員会の設置の趣旨でございますが、資料3を御覧いただきたいと思います。この資料3は、3月1日の文化審議会著作権分科会において決定していただいた事項でございます。
 これによりますと、文化審議会著作権分科会には3つの小委員会を置くこととしているところでございます。法制問題小委員会、私的録音録画小委員会、国際小委員会でございます。
 それぞれの審議事項につきましては、法制問題小委員会については著作権法制の在り方、私的録音録画小委員会につきましては、私的録音録画に関する制度の在り方、国際小委員会におきましては、国際的なルールづくりへの参画の在り方、アジア地域等における著作権分野の国際協力の在り方というものでございます。こうした形で法制問題小委員会におきましては、昨年に引き続きまして著作権法制全体の在り方について御審議をいただくということになっておりますので、よろしくお願いをしたいと思います。
 なお、私的録音録画小委員会につきましては、昨年、法制問題小委員会におきまして大きく議論されたところでございますけれども、内容は非常に大きな問題であり、また関係当事者も含めて検討を行わなければいけないということから、別の委員会を置くということになったわけでございます。もちろん法制面につきましても、私的録音録画小委員会においても検討されることはあろうかと思いますけれども、法制問題小委員会とはよく連携を取りながら議論を進めていただければありがたいと思っておりますし、事務局の方でもそのような形でよく運営に配慮してまいりたいと思いますので、よろしくお願いを申し上げます。
 続きまして、ワーキングチームについて御説明を申し上げます。ワーキングチームでございますけれども、これまで法制問題小委員会におきましては、「デジタル対応」、「契約・利用」、「司法救済」、この3つのワーキングチームを置いて昨年検討いただいたわけでございますが、まだ検討の途上のものもあり、引き続きワーキングチームを置いて検討を継続したらどうかということで、事務局として準備をさせていただいているところでございます。
 置くべきワーキングチームは昨年と同様、「デジタル対応」、「契約・利用」、「司法救済」でございまして、引き続き昨年度からの検討をお願いをしたいと考えているところでございます。
 なお、この2番目の「契約・利用」のワーキングチームでございますけれども、検討課題につきましては、昨年度はこの(1)から(3)までの項目を挙げていたところでございますが、本年変更点といたしまして、(4)を追加したところでございます。この「著作物の『利用権』に係る制度の整備」は、昨年の1月に著作権制度について抜本的に検討するということで挙げられた課題の中では、特に「契約・利用」のワーキングチームで行うのではなく、本小委員会で行うべきものとして整理されていたものでございますけれども、この利用権に係る制度の整備につきましては、「ライセンシーの保護」あるいは「登録制度の見直し」と密接に関連する事柄でございますので、併せてここのところで全体を検討していただいた方がよろしいのではないかと思いまして、ここの中に追加をしたわけでございます。これまでのところ、契約・利用ワーキングチームは(2)の「契約規定全般の見直し」について中心に議論をしていただいたところでございますが、今後、それら以外の事柄が検討されるに当たりましては、これも加えて検討していただいたらどうかということでございます。
 なお、ワーキングチームの全体の構成でございますけれども、各ワーキングチームに座長を置くということでございますが、法制問題小委員会の主査が指名するということでございます。
 検討方法につきましては、機動的に検討ができるものとするというところでございまして、会議は非公開とするが、議事要旨を作成し、これを作成して公開するという形を考えているところでございます。
 2枚目をお開けいただきたいと思います。ワーキングチームを設置するということを決定いただきました場合のスケジュールでございますけれども、各ワーキングチームは法制問題小委員会の第3回の会合までに、そのうち当面何を検討すべきかを決定をいただきまして、各座長に指名されたワーキングチーム員の名簿とともに、この第3回の法制問題小委員会にそれを報告していただければと考えております。
 そして、その後引き続き検討をいたしまして、7月下旬頃に予定をしております第7回の法制問題小委員会におきまして、検討結果を報告いただき、それは本小委員会における審議を経まして、8月に取りまとめる予定の報告書に盛り込まれることになろうかと思います。
 その後の報告後は、残りの検討課題についての検討を進めるということではいかがかと思っているところでございます。
 続きまして、本体につきましての、この小委員会自体の検討の課題と検討項目につきまして、御説明をしたいと思います。資料5を御覧いただければと思います。
 事務局といたしまして、この本小委員会に検討課題として検討していただきたい事項としては、「新たな著作権法上の課題について」と、それから昨年の1月24日に著作権分科会において決定いただいた「著作権法に関する今後の検討課題」の中のいくつかの項目でございます。この新たな著作権法上の課題につきましては、先ほど辰野審議官からの挨拶の中にもありましたが、「通信と放送の融合」をにらんで、「IPマルチキャスト放送の著作権法上の取扱い等について」を御検討いただければと思っております。あともう2点は、「罰則の強化について」、「税関における水際取締りに係る著作権法の在り方について」でございます。これもほかの産業財産権法との動きもあり、緊急に検討すべき課題と考えているところでございます。
 それから2番目に、今後の検討課題の中からの項目でございますが、検討4つを挙げさせていただきました。「権利制限の見直し」、「私的使用目的の複製の見直し」、「共有著作権に係る制度の整備」、それから「各ワーキングチームにおける検討課題」でございます。
 「権利制限の見直し」につきましては、昨年1年間、法制問題小委員会で御検討いただいたところでございますが、なお引き続き検討するとされた項目が多数ございました。そうした事柄につきまして、引き続き検討をしていただければと思っているところでございます。
 「私的使用目的の複製の見直し」でございますが、私的録音録画の小委員会が発足をいたしまして、録音録画に関しましてはそちらで検討を行っているところでございますが、そちらでの検討はやはりこちらの法制問題小委員会の方でも私的使用の目的の複製の見直しを行いながら、連携して検討する必要があるのではないかと思います。そのようなことから、課題として挙げさせていただいたところでございます。
 「共有著作権に係る制度の整備」でございますが、これは法制問題小委員会本体で行うべき課題がいくつかありましたけれども、そのうちの1つを取り上げたものでございまして、これにつきましても検討を開始していただければと思います。
 「各ワーキングチームにおける検討課題」につきましては、先ほど御説明をいたしましたワーキングチームの課題でございますが、それについてワーキングチームで報告が取りまとめられましたら、それを改めて法制問題小委員会の方でも御検討いただきたいという内容でございます。
 これらの課題につきまして、どういう形で本年全体を進めたら良いかにつきましてもスケジュールといいますか、そうした見通しといいますか、そういうものを示させていただきました。2ページ目を御覧いただきたいと思います。
 緊急に検討を開始する必要があるという観点から、「新たな著作権法上の課題について」を当面御検討いただきまして、それを夏頃までに報告書1として取りまとめていただき、その後、「著作権法に関する今後の検討課題」につきまして、報告書2として取りまとめてもらったらいかがか、と考えているところでございます。
 ここのところに第1回目から、次のページにわたりまして第9回までおおよその日程を書かせていただきました。本日は第1回目でございますけれども、ワーキングチームを設置し、今後の検討課題につきまして決めていただくとともに、IPマルチキャスト放送や罰則の強化、税関の水際取締り、この3点につきまして御検討を始めていただければと思っているところでございます。第2回目はIPマルチキャスト放送の取扱いにつきまして、関係者からのヒアリングをお願いしてはどうかと考えております。第3回は4月27日を予定しておりますが、緊急に検討すべき3つの課題につきまして、さらに検討、論点整理をしていただくとともに、IPマルチキャスト放送のヒアリングにつきましても、全員が必ずしも4月5月にできるわけでもないようでございますので、一部ここにもヒアリングを行ってはどうかと思っているところでございます。
 そして先ほどワーキングチームについての御説明をいたしましたけれども、どのようなことを具体的に今年検討を行うかについての報告を頂戴をできればと思っております。そして5月30日の第4回目、6月上旬の第5回目という形で、報告書に向けた検討というものを行っていただければと思います。そして6月上旬の報告書案の取りまとめができましたら、これらにつきまして6月中旬には分科会に報告、審議をしていただくとともに、意見募集を行いたいというふうに考えているところでございます。
 なお、6月上旬には報告書案をお取りまとめいただくとともに、「著作権法に関する今後の検討課題」として挙げられている項目の3つ、権利制限、私的使用の複製、共有著作権につきましても検討を開始していただければと思っております。
 そして6月の下旬には第6回目を開催し、この報告書2に相当するような3つの課題をまとめていただくということでございます。以下、7月、8月と検討、両者が並行するような形になりますけれども、検討いただきまして、8月下旬頃に著作権分科会を開催、そこには報告書1につきまして審議をしていただいて、分科会名で公表、報告書の2の部分につきましては分科会に報告をして審議をしていただく。そしてその後、報告書の2について意見募集をして、秋になりましたら、それについて小委員会で取りまとめて、分科会には年末までには報告をして公表するというようなスケジュールを考えているところでございます。
 緊急に検討を要する事項があるということから、全体が2回に分かれるような形になっておりまして、回数も非常に多くなっておりますけれども、このような形で検討してはどうかという提案でございます。以上、配付資料の説明をさせていただきました。よろしくお願いいたします。

【中山主査】 ありがとうございました。ワーキングチームにつきましてはただいまの説明のとおり、資料4の中の2(1)にありますとおり、法制問題小委員会の委員のうち、各ワーキングチームの座長を指名することになっておりますので、私から指名をしたいと思います。
 前期から引き続きまして、「デジタル対応ワーキングチーム」につきましては茶園委員、「契約・利用ワーキングチーム」につきましては土肥委員、「司法救済ワーキングチーム」につきましては大渕委員にそれぞれ座長をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
 各座長におかれましては、次々回、第3回の4月27日ですけれども、この法制問題小委員会までにワーキングチームの名簿とともに、今期の検討事項につきまして御報告を頂戴したいと思います。
 それでは、ただいまの御説明いただきました法制問題小委員会審議予定につきまして、何か御意見あるいは御質問がございましたら、お願いいたします。

【大渕委員】 確認だけなのですが、資料5で言いますと、1ページの(2)の「著作権法に関する今後の検討課題」の最初に挙げられている「権利制限の見直し」について、先ほど「引き続き検討するとされた項目が多数あったので」と言われたことに関して、若干確認したいと思います。昨年の法制問題小委員会では、この権利制限の見直しに関しては、概ね結論的なものを得た部分と今後検討を引き続き行うという部分と、大体2つに分かれたかと思うのですが、今期は専ら後者の引き続き検討を行うとされたものを検討するという理解でよろしいのでしょうか。

【甲野著作権課長】 基本的には、昨年、引き続き検討が必要とされたもので、関係者の方でもう少し内容を精査して提案していただく必要があるとか、そういうものがありましたので、それを促しながら小委員会として必要な事柄について検討するということかと思います。ただこれは小委員会の方がお決めになっていただく話かと思いますけれども、それ以外にもやはりこういう権利制限が必要だというものがありましたら、それは排除するのではなく、検討いただいた方が良いのではないかと、事務局としては思っております。

【中山主査】 今のご質問は、了解の得られたことは蒸し返しはしないという、そういうことですか。

【甲野著作権課長】 蒸し返しはすべきでないと考えております。

【中山主査】 はい、分かりました。ほかに御意見あるいは御質問がございましたら。よろしゅうございますか。
 それでは、資料4の「ワーキングチームについて(案)」及び資料5「文化審議会著作権分科会法制問題小委員会審議予定(案)」につきましては、御了承いただいたものとしてよろしゅうございますか。

〔異議なしの声あり〕

【中山主査】 それでは、そのようにしたいと思います。
 それでは、今期の検討課題の審議に入りたいと思います。本日は議事が長時間にわたる予定でございますので、まず議事の段取りにつきまして確認をしておきたいと思います。
 本日は、まず3月1日に開催されました著作権分科会において頂戴いたしました意見につきまして、事務局から報告を頂戴したいと思います。
 その後、先ほど事務局から資料5の「文化審議会著作権分科会法制問題小委員会審議予定」で説明をいただきました「新たな著作権法上の課題」、即ち1番目、「IPマルチキャスト放送の著作権法上の取扱い等について」、2番目、「罰則の強化について」、3番目、「税関における水際取り締まりに係る著作権法の在り方について」のそれぞれにつきまして、事務局から説明をいただいた後、各委員からの御意見を頂戴したいと思います。こういう段取りで行ってまいりたいと思います。
 それでは、まず初めに3月1日に開催されました著作権分科会において頂戴した意見につきまして、事務局から報告をお願いしたいと思います。

【甲野著作権課長】 それでは、資料6を御覧いただきたいと思います。3月1日に著作権分科会が開催されまして、そこにおいて出された意見の概要を事務局の方で取りまとめたものでございます。ポイントのみ御紹介させていただきます。
 様々な意見を分科会委員から出していただいたところでございますが、IPマルチキャスト放送につきましては、「ネット流通に必要な集中管理の準備をしている団体もある。著作権者の、隣接権者の権利縮小のような法改正をするのであれば、文化の発展に反するのではないか」という意見がございました。
 また、私的録音録画補償金につきましては、「クリエーター、メーカー、ユーザーの絶妙なバランスをとった制度であるのではないか。文化振興という視野もしっかりもって議論していただきたい」。IPマルチキャストの同時再送信については、「実演家の団体でも検討を続けており、御協力できると思う」。また、実演家の権利保護期間の問題については、「存命中に期限が切れるという状況でもあるので、法制問題小委員会でも取り上げて検討いただきたい」という意見がございました。
 また、「ユーザーの利益に近年過度の比重が置かれているのではないか。クリエーターの利益も重く見てほしいというので、私的録音録画補償金制度についても、クリエーターの顔もよく見ながら議論をしていただきたい」という意見がございました。
 著作権の保護期間につきましても、「欧米諸国の多くが70年としているという状況、あるいは隣接権の保護期間につきましても、米国では発行後95年というようなことで、50年以上が多くなっているので、それらについての検討もお願いをしたい」という意見もございました。
 また、「コンテンツを持っているクリエーターの権利を考慮して、通信と融合ということでの課題については小委員会で議論していただきたい」という話がございました。
 また、「現場実務があるので、小委員会での議論は現場とのコンセンサスをとった上で議論していただきたい」という意見もございました。
 また、著作権の期間でございますけれども、「例えばフランスなどではまだ権利が残っているのに、日本ではフリーになっているという状況もあるということなので、日本だけが50年でやっていると世界から取り残されてしまうのではないか」という意見もございました。
 ただ、「保護期間の延長については、善意で様々な利用をしている人には大変抵抗があると思うので、そうした問題も解決をしていく必要がある」というような御指摘もございました。
 また、裁定制度についても、「これをもっと使いやすい制度に構築すべきではないか」ということも、意見として出されました。
 また、「映画の場合、製作委員会方式で複数の権利者が権利を持っているという状況があるが、複雑多様でわかりにくくなっている」というような意見もございました。「委員でない人でも意見を言えるような特別な措置も検討いただければ」、というような意見もございました。
 以上、事務局において取りまとめさせていただきました分科会における意見の概要でございます。

【中山主査】 それでは、ただいまの分科会の意見につきまして、特段何か御意見、御質問がございましたら、お願いしたいと思います。
 よろしゅうございましょうか。御意見もないようですので、それでは次の議事に移りたいと思います。
 続きまして、「IPマルチキャスト放送の著作権法上の取扱い等について」に関する論点につきまして、事務局から説明をお願いいたします。

【甲野著作権課長】 資料7を御覧いただければと思います。事務局の方で取りまとめをさせていただいた「IPマルチキャスト放送の著作権法の取扱い等について」、問題点ですとか背景を御説明させていただく資料でございます。
 IPマルチキャスト放送は、これは通信回線を用いて大量の情報を安全に送信することができる技術の1つでございまして、この技術を用いることによりまして、ケーブルテレビのほぼ同様の内容のサービスを受信者側に送るということができるとされているものでございます。
 しかしながら、このIPマルチキャスト放送は著作権法上は自動公衆送信に当たると考えられておりますので、様々な課題が提起されるに至っているわけでございます。
 IPマルチキャスト放送とは何かにつきましては、この資料の一番最後に御説明のものを付けましたので、御覧いただきたいと思います。
 真ん中に図がありますように、放送しようとする者、放送といいますか、送信をしようとする者からすべての番組の信号が発信されるわけでございますけれども、それらがIPv6網と呼ばれるNTT収容ビル、いくつかの収容ビル全体のその中にそれらが到達するわけでございます。IP局、NTT収容ビルでございますので、昔流にいえば電話局でございますが、その中の局内装置のところにはすべての番組の信号が到達するわけでございます。
 しかしながら、それらの先でございますけれども、各家庭等に至るまでには回線が太くもないという事情もございまして、それぞれ選局をしたもののみがIP局内装置から各家庭等に流れるという仕組みになっているわけでございます。
 こうしたような技術でございまして、通常のインターネット網とは切り離されたところで番組の送信等が行われるわけでございまして、各家庭から見ますと、ケーブルテレビとほぼ同様の効果をもった形で番組の視聴ができるという利点がございます。
 しかしながら、情報のやり取りという面を見ますと、放送といいますか。送信をしようとするところとNTT収容ビル内までにはすべてのチャンネルの信号が流れておりますので、ここまではいわばケーブルテレビといいますか。有線放送に似たような形で信号が送られておりますけれども、ここから先につきましてはリクエストがあったもののみ送られるということで、自動公衆送信といいますか、インターネットといいますか、そういうような情報のやり取りがされているわけでございます。
 しかしながら、これら全体がシステムとして動いておりますので、これら全体につきましては、果たして著作権法上は有線放送と見るのか、あるいは自動公衆送信と見るのかと、こういう点が論点になっているわけでございます。
 しかしながら、こうした形での通信回線を利用した放送といいますか、多チャンネルの送信のサービスでございますけれども、「通信と放送の融合」のうちの「伝送路の融合」とでも位置づけられるものでございまして、これらのサービスを行う事業者が増えてきているわけでございます。電気通信役務利用放送法の枠組みの中で、4社ほどがこれらのサービスを用いて番組の送信というものをすでに行っているところでございます。それは下に挙げたところでございますが、この図では4チャンネルしかございませんでしたが、実質的にはさらに数十チャンネルの番組が流されて、これらが行われているところでございます。
 「通信と放送の融合」という観点からは、こうしたようなサービスがこれからどんどん広がっていくということが求められるわけでございますけれども、ケーブルテレビとは適用される著作権法上の規定が異なるということで扱いが異なる。そこのところがほとんど同じであれば、同じような扱いにしても良いのではないかというのが、その論点というわけです。
 その論点でございますが、最初のページに戻っていただきたいのですけれども、「通信と放送の融合」との関連と、それから地上波デジタル放送との関連と、2つの論点があろうかと思うわけでございます。「通信と放送の融合」との関連でございますけれども、今説明の中でも触れさせていただきましたけれども、IPマルチキャスト放送は「通信と放送の融合」という観点からも、その普及といいますか。それが期待されているところでございますが、著作権法上は自動公衆送信と位置づけられて、有線放送ではありません。そういうことになりますと、実際に番組を送信しようとする者は権利者の許諾を求める範囲が広くなるわけでございます。そうしたことからなかなか大変だということもあり、有線放送と同様の取り扱いとできないかという要望が起きているところでございます。
 そして、このIPマルチキャストという技術を用いた送信・放送につきましては、テレビの地上波デジタル放送との関連もございます。現在、地上波のテレビジョン放送につきましては、アナログからデジタルへの移行が進められているところでございまして、アナログ放送は2011年7月にはもう停止をして、それ以降はデジタルに全面的に移行するという日程が決まっておりまして、それの移行に向けて関係者が準備をしているところでございます。
 こうした日程を踏まえて、昨年の7月でございますが、総務省の情報通信審議会の第2次中間答申「地上デジタル放送の利活用の在り方と普及に向けて行政の果たすべき役割」の中では、難視聴地域における伝送路として、CATVなどに加えまして、このIPマルチキャスト技術による地上波デジタル放送の再送信を有効な手段として触れているというところでございます。
 また、この地上波デジタル放送との関連では、本年2月に公表された知的財産戦略本部のコンテンツ専門調査会の報告書におきましても、こうしたデジタル移行のスケジュールを踏まえて、法改正も含めた法的な措置を速やかに講ずることを求める提言を出しているところでございます。
 こうした形で、このIPマルチキャスト放送につきましては、「通信と放送の融合」全般に絡む形、また緊急的といいますか、急ぐ話としては、地上波デジタル放送との関連で検討がなされなければならないという点が指摘をされているところでございます。
 そして、IPマルチキャスト放送が著作権法上どう取り扱われるかでございますが、2ページを御覧いただきたいと思います。
 IPマルチキャスト放送は先ほど申し上げましたように、途中のところは有線放送と同じような形でありながら、末端の部分におきましてリクエストに応じてということなので、果たして著作権法上どういう取扱いになるか議論されてきたわけでございますけれども、著作権法上の規定によりますと、こうした有線電気通信設備を用いた送信が有線放送というふうに解されるためには様々な規定があり、ここに12の条件が合うことが必要というふうに考えられるわけであります。
 一斉に送信が行われるということと、それから受信者の受信装置まで常時番組が届いていること。この要件が必要なわけでございます。
 この観点からいたしますと、発信をされているところにつきましては一斉に送信は行われておりますけれども、一斉に送信が行われたその状態はIP局内装置まででございまして、最後のところは視聴者がリクエストを選局したものに応じて流れるという仕組みになっているわけでございます。そうしたことから、IPマルチキャスト放送につきましては、やはりこれは有線放送とは考えられず、自動公衆送信、これについても入力型と蓄積型があるわけでございますけれども、いわゆる入力型の自動公衆送信というふうに考えられるわけでございます。
 参考といたしまして、下にそれらの違いを書かせていただきましたけれども、ケーブルテレビならば、これは有線放送といえるわけでございますが、ストリーミング型インターネットの放送は、これは自動公衆送信になろうということでございます。最近、ビデオ・オン・デマンドというようなサービスもIPマルチキャスト放送においても利用可能になっているわけでございますが、これは頭出しが可能で視聴できるものでございまして、これは蓄積型の自動公衆送信であろうかと思います。
 いずれにいたしましても、著作権法上の条文を素直に解釈すれば、このような形でIPマルチキャスト放送と呼ばれるものにつきましては、ビデオ・オン・デマンドを除いては、これは入力型の自動公衆送信だろうと考えられるわけでございまして、有線放送とは考えられないものであると考えているところでございます。
 続きまして、有線放送と自動公衆送信との間では、それではどういうような権利の働き方、つまりこの事業を行おうとする者はどこまで了解をとらなければいけないか、その違いがどうなっているのかにつきまして、御説明をしたいと思います。
 (1)と(2)とございますけれども、(1)は放送を受信して同時に再送信をする場合に権利者の権利がどういうふうに働くかについてでございます。左側が有線放送という形で放送を再送信する場合の働き方、右側が自動公衆送信という形で放送を受信して再送信する場合の権利の働き方でございます。著作物で著作権が働く場合、実演家が権利を及ぼす場合、レコード製作者が及ぼす場合、それらをさらに分けて表にしておりますけれども、有線放送の場合では著作物、著作権が働く部分につきましては、一般的な場合、商業レコードを利用するという場合、ともに許諾権が、これはまるは許諾権でございますが、働くわけでございます。
 しかしながら、実演家の権利、それからレコード製作者の権利につきましては、×であったり「権利なし」であったりということでございまして、権利が働かないことになっております。この×と「棒を引っ張って権利なし」の書き方の違いでございますけれども、×と書いてありますのは、本来的には実演家には有線放送に関しましては許諾権があるけれども、92条の2項の1項の規定によりまして、その権利がなくなっている。それを示すものであります。
 これに対しまして、レコード製作者が斜めに棒を引っ張ってありますけれども、これはそもそも原則的にレコード製作者には有線放送についての許諾権がありませんので、こういう形で書かせていただいたわけでございます。
 いずれにいたしましても、全部権利がないという点では同じでございまして、有線放送の場合でありますと、放送を受信して有線放送にする。その事業者は著作権だけ気をつけていれば良いということになるわけでございます。
 これに対しまして自動公衆送信でございますが、これらにつきましてはすべての関係権利者には自動公衆送信ということなので許諾権が働くということになります。したがいまして、有線放送との違いは実演家、レコード製作者の権利が有線放送の場合にはないのに対して、自動公衆送信の場合には許諾権がすべて働いている。そういう違いが出てくるわけでございます。
 それから2番目でございますけれども、これは放送の同時再送信以外の形態でございます。自分で自ら放送番組を作って流すような場合、あるいは他人が作った、番組製作者が作ったものの提供を受けてそれを流す場合等々でございます。この場合には権利の働きがどうなるかでございますが、いささか表が複雑になっておりますのをお許しいただければと思います。
 有線放送が左側でございますが、著作物、著作権につきましては、これは許諾権が一般の場合、また商業レコードを利用するという場合におきましても働くわけでございます。
 これに対しまして実演家でございますが、生実演につきましては許諾権が働きます。そして固定された実演でございますけれども、適法に固定をされたというようなものにつきましては、これはその瞬間権利を失ってしまいますので、×ということになってしまいます。しかしながら、商業用レコードの利用の場合には、これは2次使用の請求権が働くという形になっています。そしてレコード製作者についてでございますけれども、これは原則として権利は、許諾権としてはございませんので「権利なし」でございますが、商業用レコードを利用する場合には2次使用料の請求権があるということなので、ここは黒まるになっているわけでございます。
 これに対しまして自動公衆送信でございますけれども、実演家につきましては適法に録画されたものにつきましては、これはその瞬間権利を失ってしまいますので×という形になってしまいますけれども、それ以外の場面につきましては、基本的に自動公衆送信権、許諾権としてもうそれが働くということで全部まる印が付けられるということになっているわけでございます。
 表がずいぶんややこしくなっておりますけれども、基本的には実演家の部分について、適法に録画されたものにつきましては、どちらも権利がないという点があります。それからそれ以外の違う点といたしましては、商業用のレコードを使う場合に有線放送の場合には2次使用料の請求権という許諾権でない権利があるけれども、自動公衆送信の場合には許諾権が働く。そういうことが違いとして出てくるということになっているわけでございます。
 このような違いがあることから、実際に事業をする者にとりましては、視聴する側から見たら有線放送とIPマルチと同じなのに違っていて、条件が違うのはおかしいのではないか、有線放送並みにせよといったような要望が出てくるわけでございます。
 そうしたことから今後検討すべき課題としては、4ページ目に書かせていただいたとおり、3点にまとめさせていただいたところでございます。
 まず第1点目でございますけれども、IPマルチキャスト放送、これは著作権法上は入力型の自動公衆送信と解釈されるけれども、これらについて法改正をすべきと考えるかどうか。これが1点目でございます。
 そして2番目に、法改正をするとすればどのような改正を行うべきか。それは現行の著作権法の体系、あるいはIPマルチキャストの技術による著作物の送信の実態、あるいは条約の動き、各国法制に照らしてそれを考えなければいけないと思いますが、どのような改正を行うべきかが検討すべき事項としてあろうかと思います。
 また、再送信が円滑に行われるためには関係権利者団体との円滑な著作権契約はどうあるべきか。ここは契約のための小委員会ではありませんので、契約の締結をするための特別のシステムを提案していただくということまでは検討すべきことではないかと思いますけれども、そうしたことも検討すべき課題として念頭に置いて議論をしていただければありがたいと思っているところでございます。
 5ページ以下の参考資料につきましては、今まで御説明をさせていただいた様々な審議会の方針等々についての関係部分の抜粋でございますので、御覧になっていただければと思います。
 それから、今までの説明の中で特に引用していなかった点について、1点だけ御説明をしたいと思います。9ページでございます。
 これは質問主意書として8ページから9ページにかけてでございますが、中身は9ページにございます。このIPマルチキャスト放送といいますか。これにつきまして、著作権法上どうなっているのかというような質問主意書が2年前の2月23日に政府に対して出されたわけでございます。
 これに対しまして、政府として閣議決定として出された内容が9ページのところにあるものでございます。質問の中では、IPマルチキャスト放送とありましたけれども、傍線を引いておりますが、「一般論として申し上げれば」と書いてございますけれども、「家庭や職場の受信者それぞれがコンテンツの提供を求めることによって初めてそれが自動的に送信されるものは、これが役務利用放送に該当するか否かにかかわらず、公衆によって同一の内容の送信が同時に受信されることを目的として行うという送信形態ではないことから、著作権法上は放送に当たらず、自動公衆送信に該当すると考えている」と、こういうような内容でございました。
 特にIPマルチキャスト放送とは明示はしておりませんけれども、一般論としてこういうような見解がございます。そうしたことから、やはりIPマルチキャスト放送につきましては有線放送とは考えられず、自動公衆送信ということでございまして、それを前提に御議論をいただくべきではないかと考えているところでございます。
 以上、若干説明が長くなりましたけれども、問題状況を御説明させていただきました。

【中山主査】 ありがとうございました。この問題は奥行きの深い問題でありますけれども、ただいまの説明につきまして、これから30分程度時間を取りまして、御意見を頂戴したいと思います。何か御意見あるいは御質問がございましたら、お願いいたします。どうぞ、松田委員。

【松田委員】 技術的なことにわたってしまいますので、もしかしたらここではないかもしれませんが、10ページの図を見ますと、今の技術といいますか。説明されたことはよくわかります。A、B、C、DのコンテンツがIP局内部装置にはA、B、C、Dそれぞれ一斉の形で、そして家というところからアクセスがあった時に、その注文に応じてAないしはB、Cが送信されると、こういうことですよね。
 ところが、これから先の技術となりますと、家の方ですが、これはますますハードディスク内蔵型のテレビが普及していって、何十時間もここで蓄積できるということが起こってしまうはずです。そうすると、選局の仕方は今までと同じだとすると、その点について未知のものと考える必要はないのですが、今度IP局ないしは放送センターといわれる側において、家の方のセグメントが行われる可能性があるのですね。どういう家なのか、どういうことを趣味としているのか、どういう番組を欲しがっているのかということをどんどんセグメントをしていきますと、例えばこれはコマーシャルでよくいわれることですが、その人用のコマーシャルが流されるというところまでいくのだというふうにいわれているわけであります。
 このA、B、C、D4つなら良いのですが、A、B、C、Dが結局選局に従っては、ないしはこの人たちのセグメントによりましては、何万というふうに分かれる可能性がある。そして、なおかつその個々の家の方の需要に合わせたA、B、C、Dを組み合わせて、個々の需要に合うものを送信するということになった時も、まったく同じに考えれば良いのかどうか。この点はどうでしょうか。
 必ずそこまでいくということがもういわれているわけですよね。一番直近の『発明』という雑誌の最初の記事にそれは書かれておりました。必ずそういうところまでいくだろうと、これはコマーシャルとの関係でいわれておりますが、そんなことになった時に、要するにセグメントと個人ユースのサーバーが確立される、もっと大きくなった時に、これと同じように考えて良いのだろうかという点はどうでしょうか。

【甲野著作権課長】 今、直ちにそういうふうにセグメントが分かれた場合に、法律的にどういうふうに解釈するのか、現行の法令からすぐに答えが出てくるわけではないような気はいたしますけれども、そうした将来の放送といいますか、通信の在り方という方向性もにらみながら、ここでは御議論いただければと思っている次第でございます。

【松田委員】 そういう状況もあるかもしれないということで、発言させていただきました。

【中山主査】 どうぞ、村上委員。

【村上委員】 2回目にヒアリングがあるそうなので、そこでもう1度教えてもらえばいい質問かもしれませんが、非常に基礎的なことでお伺いしたいと思います。IPマルチキャスト放送というのは現在放送サービスを提供しているのかどうか。提供している内容で、例えば一部でも地上波の放送局の放送番組というのが含まれているというのは、現在あるのかないのか。それをまず伺いたいと思います。

【甲野著作権課長】 私どもが承知しておりますところは、この10ページの下に4社ございますけれども、これらの社がすでにサービスを開始しているところでございます。
 そしてサービス内容といたしまして、ここにありますとおり、いくつかのチャンネルを設けまして、そして番組製作をしているようなところから番組、ニュース専門の番組だったり、あるいはアニメ番組だったり、映画だったりいろいろありますけれども、そうしたような内容の番組を視聴者に提供するというサービスを行っております。
 ただ、そのサービスの中には地上波を受信して再送信をするというようなものは、まだ一切入っていないところでございます。これにつきましては、放送局の方が許諾をしていないからということがございます。

【村上委員】 もう1点だけよろしいですか。続けて質問させていただきます。そうすると、3ページにいろいろな権利者の関係が出ているのですが、地上波の放送番組をマルチキャスト放送に使おうと思うと、実演家とかレコード製作者の権利もあるのでしょうが、いずれにせよ放送局が放送番組の著作権か、もしくは窓口権とかを持つと思うのですが、それをどうかしなければならないという権利関係になるので、そこのところをどうするかというのを放送局と、マルチキャスト放送会社との話し合いは、契約をどうするとか、権利処理をどうするとか、そういうことの話というのはかなり進んでいるというのか、まだその辺がこれからだという話なのか、現状どんな感じになっているのでしょうか。

【甲野著作権課長】 放送を受信して再送信をするという場合につきましては、これは放送局の方が許諾を出しておりませんので、一切その番組、同時再送信というものが行われていないというのが現状でございます。
 しかしながら、今後再送信を許諾すると、同意をするというような状況になりました時には、それに併せてさらに3ページの(1)になりますけれども、現行の法制の下では自動公衆送信でございますので、自動公衆送信として権利が働く著作権者、実演家、レコード製作者、これらの方々の許諾を得るという手続きが必要になってくるわけでございます。

【土肥委員】 そもそもでお尋ねをしたいのですが、この資料の1ページにありますように、問題は2つあるということで、1が「通信と放送の融合」の問題、それから地上デジタル放送との関連、この2つが挙がっているのですけれども、これは一元的に議論できるのかどうかということなのです。
 つまり、2の地上波デジタル放送との関連でいうと、これはある意味では難視聴対策の問題の延長上の問題として考えておけば良いのかなというふうに、今思っているわけですけれども、1の方は、これは「通信と放送の融合」、まさにそういう話だろうと思うのですね。
 そうすると、これは中身が大きく違うのではないかというような感想を持っているのですが、そこの認識についてお尋ねをしたいのですけれども。

【甲野著作権課長】 地上波デジタルの放送を難視聴のために使うという局限的な使い方、あるいは通信と放送全体に使うということでは、その及ぼす意味といいますか、相当違うということは確かかと思います。
 しかしながら、例えば5ページを御覧になっていただきたいのですけれども、これは総務省の情報通信審議会の第2次中間答申でございます。ここのところで基本的な考え方というのは(1)にありますけれども、この下の方を見てみますと「IPマルチキャストを用いた光ファイバ等の通信インフラについては」といろいろありますけれども、「条件不利地域に限らず」と、条件不利地域、難視聴地域のことを念頭に置いておりますが、それも含めましても「地上波デジタル放送を視聴者まで配信する伝送路として積極的に活用」というようなことが書かれているわけでございます。
 他方、その下のところには、IP再送信、地上波デジタルの再送信のスケジュールも書いてあるわけでございまして、「2008年中に高品質、HD品質によって全国で開始をするということを目標とする」。逆算をしていきますと、「2006年から通常の品質、SD品質においてIP再送信を開始することが必要であるというふうに考えているところ」というふうに述べられております。
 したがいまして、当面地上波デジタルの再送信ということで課題があって、スケジュールも決められているという状況であります。ただそれに留まらず、通信・放送全体の話としてもやはりあるということでございますが、急ぐ話としては地上波デジタルのところでございます。しかしながら、それだけを視野に入れるということではなくて、直ちに全体を審議をここを含めて行うべきかという問題はありますけれども、そうしたことも念頭に入れながら緊急のものについて、やはり検討していくということが必要になってくるのではないかなと思っています。

【苗村委員】 ただいまの質問の延長の質問で恐縮です。基本的には、特に第1期といいますか。緊急に検討すべき課題の範囲なのですが、1つは今御質問のあったことで、「通信と放送の融合」との関連におけるIPマルチキャスト放送をどう取り扱うかといった時に、電気通信役務利用放送事業者が行う放送に限定するのか、あるいは一般的にIPマルチキャストというのはもともとは純粋に技術的な概念ですから、その技術を使ったものすべてを適用とするのかというのがポイントです。
 これはもし後の方だとすると、WIPOで検討中の新放送条約の行方にも関連してくるということで、極めて難しい議論になるかなという気がします。
 電気通信役務利用放送事業者に限るとしても、10ページの下にありますように、いわゆるストリーミング型とビデオ・オン・デマンド型と両方を含めて議論するのかで、また何かいろいろな意味が違うのではないかということです。
 それから、受信機の方ですね。これは電気放送役務事業の場合には、基本的にはテレビの受信機の前にアダプターといいますか。セットトップボックスを付けてテレビで受信するというイメージですが、IPマルチキャストはむしろパソコンで受信することを想定していると思います。それから、さらに先ほど申し上げたWIPOの条約とも関連しますが、これを有線放送に準ずるものとすれば、3ページに書いてあるようなほかの権利者の権利が働くかどうかということとは逆に、その事業者が自ら著作隣接権を持つかという議論もあるわけですが、どの範囲を検討することが要求されているのでしょうか。

【甲野著作権課長】 今、先生がおっしゃった事柄すべてが今後どこまで考えなければいけないかという、大変重要な論点かと思っております。大変広げる形で議論になりますと、それこそ条約の問題も出てまいりますし、また、本当にそうすることが適切なのかどうなのか、主体も広げるとどうなのかというような問題もございます。
 したがいまして、今後どこまでやるべきかということはよく議論をしていただきたいと思っておりますけれども、そうした論点につきましては、私ども事務的にもそういう論点があるとよく承知をしているつもりではありますけれども、今後少し論点を整理させていただいて、ここでよく議論していただければと思っております。

【道垣内委員】 10ページの仕組みについてお教えいただきたいのですが、IP局内装置は誰のもので、どういう権利関係になっているかということなのですが。と言いますのは、仕組みとしてIP局内装置を各家庭が共同でレンタルしているという仕組みを仮に作れば、もうそこで受けてしまっていて、後は自分のものを自分で持ってくるだけという仕組みができるように思うのですが。と言いますのは、今のテレビでもチューナーまでは全部の局来ているでしょうけれども、モニターまでは1個しか行っていないはずで、それがすごく長くなっているのがこれだという説明も可能かと思うのですけれども、その辺の権利関係がどうなっているのか、お教えいただければと思います。

【甲野著作権課長】 詳細に全部を調査しているわけではございませんが、私どもが承知している限りでは、このIP局内装置はそれぞれサービスをやっている、事業を持っている人たちがそれらを所有権として持っていて、局内に置かせてもらっているというふうに了解をしております。

【道垣内委員】 そうしますと、放送センターから局内までは自分のものに送っているということですね。

【甲野著作権課長】 そうです。

【道垣内委員】 わかりました。そうしますと、先ほど申しましたようにすれば、悪しき法律家の発想かもしれませんが、放送センターとしては有線放送をしている状態になるようにも思いますが。

【松田委員】 同じ疑問を持っておりました。そうすると、これからの議論の中で、この10ページの図で、放送センターが有線放送と同じような扱いをするかどうかという前提に立った上でですが、放送センターかその主体になるのか、IP局内部装置を持っている装置所有者が有線放送事業者になるのか、こういうことも考えなきゃいけませんね。単なるセンターとIP局との間が専用回線でつながれているだけだとすれば、これは単純な通信ですから、そうするとどちらが主体になるべきなのか。有線放送事業者となりますと、一種の著作権法上のいろいろな措置が生まれるわけですし、それがどちらの主体になるのかということ。それから、侵害形態が起こった時、どちらが被告なのかという問題も考えなきゃいけないわけでして、そうすると番組をA、B、C、D、専用回線で送る部分の評価というものが、主体としてまた考えなければいけないということも含まれるように思います。

【甲野著作権課長】 今後事務的にも整理をしたいと思いますが、次回以降、よく検討したいと思います。

【中山主査】 とりあえずは放送センターとIP局が1つの組織ということを前提として、議論していただきたいわけですね。

【甲野著作権課長】 そうです。

【川瀬著作物流通推進室長】 役務放送の場合には、この機械は所有は例えばNTTさんが所有しているわけですけれども、基本的にはその設備を借り受けまして、放送センターの責任で、つまり責任というのはどういうことかというと、役務利用放送法の場合には放送センターから受信者までのいわゆる一連の送信と受信について、すべて放送センターというか、放送局が責任を持っているわけでございます。これが一般のインターネット回線と全然違うところでして、一般のインターネット回線でもインターネット放送はできるのですけれども、それは送信行為者と受信者の間の送信について一切責任を持っていませんので、いったん電波を発した場合に必ずそれがリクエストした受信者に届くかどうかは保証の限りではないといいますか、そういうところがあるのですけれども、役務放送法の場合は通常のCATVと同じように、送信から受信まで送信主体者が責任を持っているということなので、基本的には道垣内委員の御意見もございましたけれども、IP局からの送信主体は放送センターと考えざるを得ないわけです。
 例えば家庭が自分の契約をして、IP局内装置についてその装置を買い受けてということは、今のビジネスモデルでは、ないということは、事業者の方からヒアリングをしておりまして確認をしております。

【中山主査】 よろしいでしょうか。

【松田委員】 NTT収容ビルがどういう仕事をするかということに結局はなってしまうのだろうと思いますが、インターネットを介していろいろなデータを送る場合も、送信する主体と途中ところどころにまた違うサーバーがあって、そこで一時蓄積するということもあるわけですね。その技術とまったく同じであれば、この図で良いのだろうと思うのですね。今、御説明のとおりで良いのだろうと思うのです。ところが、IP局の側でやるのが、先ほど私か少し言いましたように、A、B、C、Dのコンテンツを蓄積するほかに、いろいろなセグメント情報に基づいて各選局をいろいろな形で分けていくという作業までやるということになると、果たしてそれで放送センターが全部主体で、IP局の方が単なる一時的な伝送のツールにすぎない。こういうふうに言い切れるかどうかという問題が起こるのではないか、というふうに思っているわけです。

【甲野著作権課長】 また、そこのところはよく事情を調べまして、また議論する時にはきちんとしたデータをお示ししたいと思います。ただ、今の点に関しまして、私ども承知しているところでは、IP局内装置に何か番組がサーバーとして蓄積されるということではなく、ただ信号はそこのところまでは届いているという状態でございまして、各家庭からの選局があると、届いているもののうち選局があったものについて、ちょうどドアを開けたような形でダーッと流れていくというようなイメージというふうに聞いております。
 いずれにいたしましても、関係者もまた呼ぶこともございますし、議論するに当たりましては、この事実をはっきりさせた上で御検討ということを行いたいと思います。

【中山主査】 ほかに御意見、御質問はございますか。どうぞ、大渕委員。

【大渕委員】 今、課長の方から御説明があったところにかなり尽きている点はあるのですが、伺っていますと、この資料だけではそもそも技術関係の実情が必ずしもよくわからないように思います。細部にわたりすぎても資料としてわかりにくくなってしまうかもしれませんが、本日質問が出たようなところは詳しく整理していただいて、全体像をつかんで現状を把握しない限りは、今回のこの非常に難しいテーマをきちんと議論していくことはできないのではないかと思います。
 それから、私が若干気になりますのは、技術が動いているので、現状といっても半年なり1年たつとまた多少変わるかもしれないので、その辺りも含めて、資料をきちんと整理した上で議論しないと、次回以降、せっかくヒアリングの対象者の方に来ていただいても実のある議論にならないのではないかと思います。このように、今申し上げた点についての十分な基礎知識を我々がもった上で聞くということが重要かと思いますので、よろしくお願いします。
 それからお願いばかりで恐縮なのですが、資料で申しますと、資料7の4ページ「4.今後検討すべき課題」の(2)で法改正をするとすればということですが、ここでいくつか重要なポイントが挙げられております。先ほどのお話はどちらかというと、IPマルチキャスト技術による著作物等の送信の実態ということだと思うのですが、それ以外にも、国際条約の関係あるいは外国法制等についても、なるべく早い段階できちんとした資料を整えていただければ、より地に足のついた、しっかりとした議論ができるのではないかと思います。色々とお願いして恐縮なのですが、よろしくお願いいたします。

【中山主査】 はい、その点よろしくお願いします。ほかに何か御意見はございますか。

【苗村委員】 すでにもう議論されていることの繰り返しで恐縮ですが、10ページの絵が少し誤解を招いている恐れがあるので、今日確認をされなければ次回確認したら良いのですが、この絵で放送センターから出てくるところに番組A、B、C、Dとありますが、これは実際、例えばそれぞれが1時間の番組であれば、全部で合わせて4時間分の番組のデジタルのビット列が流れるわけですが、それは間違いなく流れるのです。それがIP局内装置にそのまま蓄積されるのではなくて、あくまでも実質時間、リアルタイムでどんどんどんどん流れてくる。つまり、蓄積されるのはもう本当に短い分だけです。
 その中で選局と書いてあるのは、通常のチャンネル選択と同じで、この右の上の家はAというチャンネルを選んだので、Aの番組だけがビット列として入ってくる。そういうことを表現しているのだと思うのですが、このIP局内装置の近くにA、B、C、Dと書いてあるものですから、あたかも番組全体がどこに蓄積されているように見えてしまう。それは意図ではないということだけを確認したいのですが。

【甲野著作権課長】 少し図が誤解を生じさせるものであったという点については、お詫びしたいと思います。このA、B、C、Dか流れるというのは、A、B、C、Dは一斉に太い回線の中で流れるというイメージでございます。IP局内装置についても、A、B、C、Dの番組が同時に全部届いているというイメージでございまして、そこのところでそれらが順次蓄積されるというイメージではございません。同時に流れるものについて、最後の段階で1つとか2つとか選択されたものだけが各家庭に届くというイメージでございます。そこは今後修正なり、わかりやすくしたいと思っております。

【中山主査】 ほかに御意見ございましたら。現在はIP局内に蓄積をしておいて、家の方から過去の番組も希望によってとるという、そういうビジネスモデルは想定されていないのですか。

【甲野著作権課長】 はい。IP局内装置はあくまでも通過するところでございまして、特にサーバーとしてそこに貯めるということがあるとは承知はしておりません。ただ、放送センターの方で、いろいろな番組ですとか、映画ですとかを蓄積をしておいて、放送センターの方までリクエストとして、頭出しでそこから流すというものはビジネスとしてはもうスタートはしているというところです。それにつきましては、自動公衆送信という形、蓄積型ということで考えられます。

【中山主査】 はい、わかりました。ほかに。はい、どうぞ。

【道垣内委員】 松田委員のおっしゃったことの確認ですけれども、IP局内装置について、所有権が誰であれ、それを利用する権利は放送センター側にあるとしますと、その間は自分のものに送っているだけなので、先ほどの御説明で、ここまでは放送で、そこから先が通信ではないかという御説明があったのですが、そこまでも放送なのかどうなのかというのが、少し疑問になるのですけれども、そこを確認させていただきたいと思います。

【甲野著作権課長】 ここまでが放送、ここまでが通信というのは、説明の都合上、そういう言い方で御説明しただけで、イメージとしてそのようなものということですので、現実に考えると、それは著作権法上、有線放送なのか、あるいはそこは通信というか、自動公衆送信なのかということがまた別の評価といいますか。観点からの判断があるかと思います。

【茶園委員】 今の点に関してなのですけれども、資料の2ページにIPマルチキャスト放送というものが、入力型の自動公衆送信であるという整理をされているのですけれども、その理由が上記の12でしょうか。
 ただ、1つの考え方としては、先ほどのA、B、C、Dがまず流れて、受信したい人がAというものを選択すると、Aだけが送られてくる。それは現在でも、無線でA、B、C、Dという電波が流れて、それをチャンネルをAというのに合わせればAだけが見えるというのと基本的にはあまり変わらないとも考えられます。
 もし変わらないとすると、今でも放送というふうにも理解できる、そういうふうに考えることもできないではないと思うのですけれども。IP収容局までは流れていて、そこからが現実の受信者の受信装置まで来るものを、受信者が決定するという場合と、現在の無線のように、地上波のように、本当に受信装置まで来ていて、そこで受信装置で受けるか受けないかを決定する場合とで、前者が自動公衆送信で、後者が放送というように分けられる理由をもう少し御説明いただければと思います。

【甲野著作権課長】 例えばケーブルテレビの場合ですと、これはケーブルテレビ局から各家庭まで専用の線が引いてございまして、全部の例えば何十チャンネルありましても、全部の信号が家庭内まで実は届いております。家庭内の何かセットトップボックスといいますか、そういうところまで届いておりまして、そこまで届いているうちのどれのチャンネルを選ぶかということを、家庭内で視聴者が選択をするということになっているわけでございます。
 普通の無線といいますか。放送につきましても、放送のアンテナのところにはすべての局の信号がいろいろなところから届いているわけでございます。そうしたように、最終のところまで、視聴者のところまでいずれにしても全部の電波が届いているという状態ですので、それらは放送なり有線放送というふうに考えられるのですけれども、IPマルチキャストの場合には、最後の家庭のところに届いているのは自分の選択した局のものだけしか届いておりません。有線放送の定義としまして、同じような内容のものについて、全員に同じようなものが届くように送信されるものが有線放送であると定義してありますが、IPマルチキャストの場合は送信する側も最後の末端まではそれぞれ家庭によって違うということも認識しながら出しているわけでございます。
 そうしたことから考えますと、これにつきましては効果としてはほとんど有線放送と同じなのですけれども、最後に届くところの部分がそれぞれ違うという意味で、有線放送には当たらないと解釈されるわけでございます。

【中山主査】 よろしいですか。確かにユーザーにしてみれば、まったくといっていいほど同じものなのですね。ですから、知的財産戦略本部のコンテンツの専門調査会でも、これは解釈で対応できるのではないかという意見もありました。しかし、条文を厳密に読んでいくと、今課長のおっしゃったようなことになるということだろうと思います。ユーザーは自分の選んだものが出てくるという、それだけですから、ユーザーからしてみれば何が違うのかということになると思うのですけれども。

【茶園委員】 その点が私もよく分からないのですけれども、今の有線放送の定義に当てはめて、受信者の受信装置まで同内容のものが同時に来ないと有線放送ではないとか、それまでの段階、つまり収容局までだったら有線放送の定義に該当しないというのは、そう考えるのが良いのか悪いのかは、別にして、少し難しいのではないかなとも思います。後者が有線放送ではないというのは、必ずしも明確ではないような感じがいたします。

【甲野著作権課長】 今の御質問にお答えということで御説明したいと思いますが、お手元にこの法令集があると思いますが、この7ページを御覧いただきたいと思います。
 7ページにある第2条なのですけれども、この法律の中で使われる文言についての定義規定がございます。第9号の2でございますが、ここに有線放送がございます。有線放送の定義ですけれども、公衆によって同一の内容の送信が同時に受信されることを目的として行う、とございます。
 したがいまして、末端のところまで、それぞれの人たちが同一の内容が同時に受信される。そういうようなことでもって送信されるものが有線放送なので、これはもう最初から末端の方には行く内容はあるところはAのチャンネルしかない、Bのチャンネルしかないというふうに違っておりますので、この条文からして有線放送に当たらないのではないかというふうなことです。

【苗村委員】 実は同じ点について質問しようと思ったのですが、今読み上げていただいた条文の解釈だと思いますが、この場合の公衆によって同一の内容の送信が同時に受信されるという時の公衆というのは、例えばある電気通信役務利用放送事業者が契約している利用者の数が仮に10万いたとして、その特定のチャンネルを選択する利用者は常時変わるわけですが、少なくとも1とか2ではなく、多数であろう。その多数の利用者が同時に受信することを目的としてそういうふうに、つまり公衆という言葉を10万人ではなくて、10万人のうちの何分の1かだというふうに解釈すれば、適用できるというのが考えられるのではないかと思うのですが、そういう議論はされたのでしょうか。
 もう1度言いますと、仮に10万人がある電気通信役務利用放送の契約をしている利用者、受信者である。ところがある時点で見ますと、その同じチャンネル、AならAというチャンネルを選択しているものは仮に1,000しかない。つまり、1,000人に向けて同じ番組を送信している。それは公衆によって送信されることではないか。そういうふうに解釈するということの可能性は、議論されことはあるでしょうか。

【甲野著作権課長】 今までの議論につきましては、受信者側、全部それが全体として公衆であって、それぞれについて見ると、受け取る内容がそれぞれ違っているので、有線放送に当たらないという議論でございました。今、先生がおっしゃっている内容が仮にそれぞれAという受信をするグループ、Bという受信をするグループというふうに分けて、そこへは全体分けてみると、もしかするとそこは放送に当たるのではないかという御議論だと思いますけれども、確かにそこだけ見ると同じ内容は行っているかもしれませんけれども、そういう考え方はあまり採っていないといいますか、やはり全体として見てというふうに考えていったところでございます。

【大渕委員】 今後の議論の仕方について、前提として現行法の解釈論がどうなっているかというのは重要なのですが、この法制問題小委員会での議論の目的は、現行法の解釈論自体というよりは、立法論としてどう考えていくべきかということになりますので、現行法上、IPマルチキャスト放送について、出発点が自動公衆送信か、あるいは有線放送かというのは、違うといえば違うのですけれども、ある意味では、どちらにせよ何かしら現行法とは別のものを考えていくのであれば、どちらから出発するかで発想が若干違うかもしれませんが、結局、最終的にどういう立法政策で現行法を変えていくかという話なのではないかという気はいたします。
 そうはいっても、現行法の認識が全くずれていたりするのは好ましくないので、そこも併せて議論はする必要はあるかとは思いますが、現行法の延長線上で考えていく立法論もあれば、そこから若干離れて、実態に合わせてどうするのがよいかという議論もあるので、そういう形でうまく議論が進んでいったら良いなというふうには思っております。

【中山主査】 解釈で有線放送とすることが可能であるとしても、文化庁は反対の公式見解を発表していますし、かなり多くの人はそう考えています。また仮に解釈できるとしても、そのビジネスモデルは最高裁までいって判決をもらわなければ、合法か違法かわからないというのでは、これはビジネスとして安定しないので、もし、もしやるなら、それは法改正でやった方が、ビジネスとしては安定している。最高裁を期待しますという、そういう答申は出しにくいのではないかなと思います。

【茶園委員】 現行法の解釈として、有線放送に当たるとしたら、ではそれでもう話は終わりになるとか、そういうようには全然思っておりませんで、もし仮にIPマルチキャストが有線放送の定義に当たるとしても、それは現行法上「有線放送」として念頭に置いていたものとはかなり違うものでしょうから、それに著作権法が定める有線放送の効果をそのまま当てはめて良いかどうかというのは、検討しなければいけないと思います。先ほど大渕委員がおっしゃいましたように、現行法上はどうかということと、それとは別に、IPマルチキャストにどういう効果を与えるかというのは、別に検討する必要があるのだろうと思います。
 ただ、それでも現行法上どうなるかというのを、まずはある程度考えておいた方がよいのではないか、もう少し詰めた方がよいのではないかと思って、先ほど質問させていただきました。

【森田委員】 現行法上可能かどうかという議論が、解釈でやるか、立法が必要なのかということであれば、それは、ある意味ではテクニカルな問題だと思いますが、より重要なのは、現行法の考え方を変更する必要があるような問題が提起されているのかどうかという点であると思います。この議論をするときに、次回以降で結構なのですが、資料の2ページで現行法上、扱いの違うものが2つある。この扱いが違うというのは、いったいどういう理由に基づいて扱いが違ってきているのか。その趣旨がどういうものとして認識できるかということをまず整理していただく必要があるのではないかと思います。現行法の趣旨は変えなくても良いけれども、条文には当てはまりにくくなっているので、そこを修正する必要があるということなのか、それとも現行法ではある考え方に基づいて線を引いているが、その考え方そのものを変えていく必要があるということなのか。技術というのは今後も様々なものがどんどん出てきますので、それを1つずつ後追い的に対処していくということもあり得る方法だと思いますけれども、その場合にも、現行法の基本的な考え方というのが維持できなくなっているのか、それともそうでない問題なのかということが、根本的には重要な問題だと思います。
 資料の2ページは現行法はこういう書き分けになっているという条文の説明がなされておりますが、ここには「当時の立法趣旨等に照らし」とあります。ここでいう立法趣旨というのはどういうものであって、なぜこのような扱いの違いが正当化できるのかという根拠を整理していただいて、その根拠が今後も妥当するのか、しないのかという点について、検討する必要があるのではないかと思います。

【甲野著作権課長】 今後検討いただくに当たりましては、どうして有線放送の方がこうで、自動公衆送信がこうだったのかということを踏まえて御議論いただきませんと、御議論できないかと思いますので、そこはよく準備をいたしまして、それで御議論いただきたいというふうに思っているところでございます。
 有線放送につきましては、公共性があるということが一番大きな理由としていわれているところでございます。事業者についても様々な制約といいますか。番組内容を公正に保つためのいろいろな規定ですとか、そういうものがあるということでございます。これは放送についてもいわれることでございますけれども、そうしたような理由ですとか、あるいは立法当時の状況、そうしたようなものが背景にあるというふうに私どもは考えているところでございますけれども、それらをきちんとした形で整理してお示しをして、御議論いただきたいと思います。

【中山主査】 ほかに御意見ございましたら。今日のところはこのくらいでよろしいでしょうか。次回以降、またこの問題を徹底的に議論してもらうことにいたしまして、今日は一応この問題はこのくらいにしたいと思います。
 それでは、次は罰則の問題なのですけれども、罰則の問題に入る前に若干の休憩を取りたいと思います。後ろの時計で11時10分から再開をしたいと思います。では、10分ほど休憩をしたいと思います。

〔休憩〕

【中山主査】 それでは、次の項目であります「罰則の強化」につきまして、議論をしたいと思います。事務局から「罰則の強化」に関する論点についての説明をお願いいたします。

【甲野著作権課長】 資料8を御覧いただければと思います。罰則の強化に係る現状と課題につきまして、御説明をさせていただきます。
 著作権法についての罰則の規定でございますけれども、これの強化につきましては、社会情勢あるいは他の産業財産権法などの規定、そういうようなバランスにみまして、引き上げの方向でずっと検討がされてきたところでございます。
 現行の著作権法が施行された後も、何回もこれらは行われているわけでございますが、ここでは御参考までに最近2回の改正につきまして、御紹介をさせていただきたいと思います。
 平成16年の改正、17年の1月1日施行が最近あったものの1つでございますが、このタイミングでは著作権法の著作権侵害の罪についての罰則の最高刑といいますか、それの引き上げが行われました。この図の表にありますとおり、個人の場合には懲役刑の場合、最高3年のものを5年といたしました。また、罰金刑につきましても上限を300万円から500万円に引き上げたところでございます。懲役と罰金の併科につきましても、これは改正前は認められておりませんでしたが、改正後はできるような形にいたしました。法人の場合には1億円以下を1億5,000万円以下としたわけでございます。こうした法改正が行われ、施行されたところでございます。
 それから著作権法の刑罰といたしましては、この著作権法の一部改正法案とは別のところでも別の要素が導入されたわけでございます。これは同じ国会に提出されました裁判所法等の一部改正によってでございますが、この改正によりまして、著作権法を含む知的財産権法のそれぞれの法律におきまして、裁判におけるインカメラ審理手続が導入されたところでございます。
 著作権に関しましては、著作権侵害の訴訟等が行われた時に、書類の提出ということがなされた時に、秘密保護を図るということで、裁判所は秘密保持命令を発することができ、その命令に反して秘密を漏洩したものに対しましては刑事罰が科せられるということでございました。この秘密保持命令違反につきまして罰則が設けられ、これの違反に対しましては個人の場合は懲役刑が3年以下、罰金刑300万円以下、法人の場合には1億円以下というものが設定されたわけでございます。
 それから平成17年の改正、これは施行日が平成17年の11月1日でございますが、ここでは秘密保持命令、その前の年にといいますか、その年に認められた秘密保持命令違反でございますが、これについての罰則の強化が行われたところでございます。これらは個人につきましては、5年以下の懲役もしくは500万以下の罰金という形にするとともに、法人につきましても、最高の罰金額を1億円から1億5,000万円と引き上げるということでございました。
 不正競争防止法の営業秘密の刑事的な保護の強化に伴いまして、同じ法益ということで、引き上げが行われたところでございます。このような形で著作権の侵害の訴訟に関してのインカメラ審理手続における営業秘密侵害罪について、引き上げが行われたわけでございます。
 このような状況の下で罰則強化というものをどういうふうに考えるかでございますけれども、(2)で現状について御説明をしているところでございます。近年、知的財産侵害における被害は増加しており、被害額も高額になっているということがいわれているわけでございます。他の産業財産権も含めたデータでございますけれども、著作権につきましても平成10年から15年の間に判決が下された損害賠償事件等で見ますと、平均1,300万円、最大でも1億6,000万円ほどの賠償額が出ているわけでございます。
 そして知的財産権侵害事犯につきましても、平成10年に他の財産権も含めますと、820件、人数として399名だったものが、平成16年には件数として1,233件、人員としても640件というふうに増えているところでございます。中身をよく見ますと、実は商標法の拡大が非常に大きいわけでございますけれども、著作権につきましても、途中年度により増減はありますけれども、平成12年に300件、これが平成16年後それよりもやや増ということでございますし、人員も増ということで、全体として見ては若干増えつつあるということになっているという状況にございます。
 また、これらに関しましては政府の知的財産戦略として取りまとめられている「知的財産推進計画2005」におきましても、ここのところにその抜粋を書いているところでございますけれども、抑止効果を高めるために知的財産権の侵害に係る刑罰(懲役)の上限を10年にすることにつきまして「検討して、必要に応じ制度を整備する」ということが謳われているわけでございます。
 こうしたことから、産業財産権の各法におきましても、罰則の強化について検討が進められているわけでございますけれども、後ほど御説明いたしますように、一定の方向が出まして、現在その関係にそれを取りまとめた法案が国会にも提出をされているところでございます。
 また、著作権に関する刑罰につきましても、先ほどの平成16年の法改正を提言した時の著作権分科会の報告書の中でも、他の知的財産権における刑罰のバランスを踏まえて、特許法、商標法と同程度に引き上げることが適当というような指摘もあるわけでございます。そうしたことから、他のバランスも考慮しつつ、著作権につきましても刑罰の引き上げを検討することが必要でございます。
 同様の事情は秘密保持命令違反についてもいえるところでございます。これにつきましても、現在関係の法案が提出をされているところでございますので、著作権についての秘密保持命令につきましても、バランスという点からこれを考えていかなければならないという事情があろうかと思います。
 そして4ページを御覧いただきたいのですが、著作権法の中では著作権侵害の罪以外にも様々な著作権法上の刑事罰の規定がございます。著作権侵害の罪を引き上げるということを仮に考えた場合には、そのほか様々な刑事罰則、これの上限をどう引き上げるかということにつきましても検討が必要となってくるかと思います。この赤で囲んだ部分が、それらの罪でございます。
 あともう1点、必要な検討事項がございます。これは5ページをお開けいただきたいのですが、公訴期間についてでございます。平成16年著作権法の改正によりまして、個人の罰則の懲役刑が最大が3年から5年に引き上げられました。これによりまして、刑事訴訟法上の公訴時効の期間にばらつきが出たわけでございます。法人の方の公訴時効が3年である一方、個人の方については5年ということになっているわけでございます。そのようなことから、法人についての公訴期間というものも考えなければならないという事情が生じているわけでございます。
 以上のような状況にあるわけでございますが、それでは産業財産権法、不競法を含めまして、罰則強化がどのような状況になっているのかにつきまて、6ページ以下に資料を付けておりますので、簡単に御説明をしたいと思います。
 昨年来、産業財産権法の分野におきまして、関係の審議会等で検討がなされ、方向性が出され、改正案がそれに基づいて提出をされているわけでございます。個人の罰則につきましては、この6ページの表にあるとおりでございますけれども、現在法律によりまして5年以下あるいは3年以下の懲役、罰則につきましても500万円あるいは300万円となっておりますけれども、実用新案法を除きまして産業財産権の各法につきましては10年以下、1,000万円以下という形にして、実用新案法は5年以下、罰則500万以下というような形で法案が提出をされております。
 また、併科につきましては、現在はこれらの産業財産権法では規定が置いてありませんけれども、すべて併科が可という形になっているところでございます。
 そして法人の罰則につきましては、これは現在、特許、商標から1億5,000万円、実用新案、意匠が1億円になるところを統一的に3億円以下という形にしてございます。図表は次のページにございますので、御覧いただければと思います。
 それから秘密保持命令違反でございますけれども、これらにつきましても5年以下、500万円以下という形に個人はなっております。また、法人については1億5,000万円以下というふうになっておりますけれども、現在提出されている改正法案では、法人につきましては3億円以下に統一という形になっているところでございます。
 それから公訴の延長についてでございますけれども、これは8ページをお開けいただければと思います。
 現行の規定でございますけれども、個人の罰則ですと5年以下の懲役と3年以下の懲役ということで、公訴期間が異なっておりまして5年、3年、そして法人につきましては3年ということでございます。これが現在の改正法案によりますと、3年以下の部分ということは、これは引き上げて5年ということになりまして、それから法人の刑罰、罰則につきましては5年に延長する。そのような内容になっているところでございます。
 こうしたような諸情勢を踏まえまして、論点といたしましてまとめたものが9ページでございます。
 著作権侵害罪の罰則について引き上げるべきかどうかという点がございますが、個人罰則につきましては、他の特許、商標と並ぶというような方針に基づいて考えますと、上限が10年、罰金刑の上限が1,000万円になりますけれども、こういうふうにすべきかどうか。
 また、法人につきましても、横並びと考えると3億円になりますけれども、そのようなことをすべきかどうかという点があろうかと思います。
 そして秘密保持命令違反についても、著作権侵害とバランスを考慮して、他の産業財産権法に合わせるように、具体的には1億5,000万円から3億円にすべきかどうか。これも論点としてあろうかと思います。
 そして著作権法における他の罰則についての引き上げをどうするのか。それから公訴時効の期間につきまして、刑事訴訟法の特例を設けるべきか。こうした点等が論点になっているかと思います。
 以上が、この罰則の強化についての現状と論点でございました。

【中山主査】 ありがとうございました。それではこの問題につきまして、30分程度の意見交換を行いたいと思います。御意見、御質問ありましたら、お願いします。

【市川委員】 公訴期間の延長は、これは今の産業財産権法の改正案では、個人と法人がちゃんと同じ期間になるように、すでにそういうことで法案ができているということですか。

【甲野著作権課長】 現在、提出されている法案で、こういう方向になっているというふうに承知をしております。

【市川委員】 なるほど。ありがとうございました。

【中山主査】 ほかに御意見、御質問がありましたら。よろしいでしょうか。16年改正で罰則を強化してすぐですけれども、御意見はございませんでしょうか。

【土肥委員】 確かに公訴時効期間が法人と個人で異なる。それも法人のほうが短いという形で、逆に異なるということを改めることは大変結構であろう、そういう措置は必要なのではないかと思うのですけれども、こういう刑事罰のレベルというものが国際的にどの辺りに来るのか。つまり、国際的に見てもこういう著作権侵害罪等が10年とか、そういうふうになっている例があるのか。あるいは、もしそういうふうにすれば、日本としては突出した形になるのか。そこのところを多少教えていただければと思いますが。

【甲野著作権課長】 本日まだ状況なり調査はしておりませんので、今後議論していただく時にそれを提出して見ていただきたいと思います。

【中山主査】 ほかに質問がございましたら。

【土肥委員】 2ページの知的財産権侵害事犯の検挙状況として出ているちょうど下のところですね、2ページの。赤で囲ってある著作権法というところに出ておりまして、非常に数としては多いのですけれども、実態としてはどういう形、内容になっているのですか。つまり、いわゆる著作権侵害で、要するに著作権侵害、ああいう一般的な形なのか、あるいは特殊な本来であれば別の法律で扱うようなものがここに来ているのか、そこは何か確認をなさっておられましょうか。

【甲野著作権課長】 現在、本当に詳しい状況は持っておりませんけれども、恐らく海賊版というような違法に複製をして売るというような事例が大半かと思いますけれども、そこはよく調査をしてみたいと思います。

【中山主査】 よろしいですか。

【土肥委員】 もしかしたらデザインの侵害とか、そういうキャラクター物がほとんどなのかなというふうにも想像したものですから、お尋ねをしたということでございます。

【中山主査】 ほかによろしいでしょうか。はい、どうぞ。

【村上委員】 これは18年提出法案ですから国会で審議に入ると思いますが、国会で議論なく成立する見込みなのか、成立したら施行日はいつ頃になるのかというのと、国会で説明する趣旨の中に、何でほかの知的財産権法についてこれだけ引き上げするかについて、例えば現行のペナルティの水準が低いのでこうこうとか何とか、その辺の国会に提出する説明書みたいなものがあると思いますが、それなどはどういう形でほかの知的財産法の引き上げを説明されていますかという点についてもしわかりましたらお願いします。

【甲野著作権課長】 施行日につきましては、来年平成19年の1月1日と承知をしております。国会の審議につきましては、まだこれからと聞いております。
 私どもが承知しているところでは、引き上げの理由といたしましては、知的財産の保護を強化するために知的財産の侵害を物の窃盗と同程度、またはそれ以上に重大な犯罪と位置づけることにより、政策の転換をわが国の知的財産制度に反映するとともに、わが国が率先して保護強化に取り組むということで、知的財産保護の重要性を世界に向けて働きかけることが求められているという、そういう考え方があったと承知しておりますが、またそこはいろいろ資料を整えて御説明をしたいと考えております。

【中山主査】 産業構造審議会の方では、結論が出た後、刑罰を引き上げるという議論が出たものですから、審議会では特にそういうことは議論をしておりません。商標は別とすれば、特許に関しては恐らく世界でも突出した重罰国になるはずです。恐らく世界に冠たる知的財産を重視する国である模範を示す、ということの説明になっているのではないかと思います。
 ほかに何か御意見、御質問ありましたら。
 よろしいでしょうか。それではこの話は一応このくらいにいたしまして、次の項目であります「税関における水際取り締まりに関する著作権法上の在り方」につきまして、議論を行っていきたいと思います。まず、事務局からこの論点に関して説明をお願いいたします。

【甲野著作権課長】 資料9をお開けいただければと思います。「税関における水際取締りに係る著作権法上の強化について」でございます。
 問題の所在でございますけれども、経済が国境を越えて様々な取引が行われるという一方で、取引が行われるといいますか、流れていくものにつきましては、模倣品ですとか海賊版、そうしたものが増えているわけでございます。
 知的財産権侵害物品、これは全体でございますけれども、差し止めの状況、輸入ですけれども、差し止めの状況は外務省関税局のデータによりましても、差し止め件数は非常に多くなって、ここに書いてありますように9,143件、103点と非常に大きくなっているところでございまして、年々これは拡大をしているところでございます。
 そして、こうしたような著作権でいえば海賊版の問題といいますのが、2ページの方にございますように、各国に飛散をしているところでございまして、そしてそれらから得られた収入というものが反社会的な勢力の資金源となるというようなことがいわれているところでございます。
 そうしたことから、こうした模倣品、海賊版の国境を越えた移動を未然に防ぐというのが日本の国際的な信用を高めるために非常に重要であるということがいわれていたわけでございます。そうしたことから、知的財産推進計画2005におきましても、韓国が模倣品あるいは海賊版を輸出、それから通過を規制することを内容とする模倣品・海賊版拡散防止条約を提唱しているところでございまして、また昨年7月のサミットにおきましても、小泉総理からそうした国際約束の必要性が提唱されまして、それらがどういう形でできないものかどうか、国際的な話し合いも継続をされているところでございます。
 そうしたような状況の下、2として関税定率法と著作権法の関係についてと書かせていただいているわけでございますが、輸出なり、あるいは通過なり、あるいはそうしたようなものを税関の場でどのような形で規定できるのかを、ここでは説明をしたいと思うのですけれども、輸入禁制品につきましては関税定率法で差し押さえができるという規定がございますけれども、輸出の禁制品につきましては関税関係の法令には規定がございません。
 そうしたことから、昨年来、財務省の関税・外国為替等審議会の関税分科会に設けられました「知的財産侵害物品の水際取締りに関するワーキンググループ」、これが検討していたわけでございますが、12月にまとめられた座長取りまとめによりますと、いろいろずっと書いてありますけれども、関税関係法令による独自に輸出・通過が何ら規制されていな物品の輸出、通過につきまして、関税関係法令により独自に禁止するということは適切ではないということが述べられているわけでございます。
 そうしたことから、「(中略)」とありますけれども、各知的財産権法上、輸出等が侵害行為とされる場合は、その輸出を禁止する制度を設けるということによって水際取り締まりを行うという、こういう方向が出たわけでございます。
 そうしたことから、模倣品あるいは海賊版、この海賊版についても輸出なり通過なり、それを税関で取り締まるということができるようにするためには、それぞれの関係の法、著作権法においても、それが、その行為が違法ということになっているというようなことが必要になるわけでございます。
 それで現在の著作権法の規定ではここがどうなっているかについてが、3ページ以下でございます。まず、輸出についてでございます。
 輸出についてでございますけれども、現在の著作権法におきましては、輸入についての侵害のみなし規定はございます。しかしながら、輸出についての侵害みなし規定というものはございません。
 ただ、侵害品を情を知って頒布し、あるいはまたは頒布の目的をもって所持する行為は侵害というふうにみなされるわけでございます。この「頒布」というのは有償であるか、無償であるかを問わず、複製物を公衆に譲渡、貸与するということを言うものでありまして、公衆には「特定かつ多数の者を含む」というふうに書いているわけでございます。国内、国外、両方頒布は含まれる。
 そのようなことからいたしますと、最初の図でございます、頒布の一部として国境を越えて日本から他の国に侵害品を送るというような行為が行われますと、これは輸出になるわけでございますけれども、その輸出は頒布行為の一部という形で侵害に当たるわけでございまして、そういうような行為が行われた場合には輸出の関係では侵害になっているという事情にあるわけでございます。
 しかしながら、そういうような場合でない輸出も事実上ずいぶん沢山あるわけでございまして、それらが著作権法上どうなっているのかということを見てみますと、下の図aの場合、特定の者に対する侵害物の譲渡、侵害物を特定少数の人に対して侵害物を譲渡したり貸与したりするという。特定少数でございますと頒布には当たりませんので、これはなかなか難しいのではないかという議論になってまいります。
 それからbのところでございますけれども、海外における頒布は最終的な頒布は目的とするけれども、特定少数のところに渡すだけ、これはどうなるのだろうかということも問題になっています。
 また、国外に頒布する目的があったかもしれないけれども、自分自身でそれを携帯して持っていく場合などがございます。あとdの場合で海外に侵害物を携帯する場合、いろいろあるわけでございますけれども、こうしたような場合には直ちにそれが、一般的に輸出といわれる行為が直ちに著作権侵害にはなかなかなりにくいのが状況であるわけでございます。
 5ページ以下でございますけれども、これは通過でございます。通過は事実上の擁護ということでございまして、関税法等を含めて明確に定義をする規定はございませんけれども、一般的には日本の領域にある貨物等々がいったん入った後、他国に送付される行為というような形で用いられているというふうにいって良いかと思います。
 したがいまして、日本に入るということは輸入ということでございますので、輸入というところで押さえられる部分というものが出てくるということは考えられるわけでございます。
 これはどういうことかと言いますと、先ほど若干紹介をいたしました輸入についてのみなし侵害の規定でございます。日本で頒布することを目的として侵害品を輸入するというようなことがあった場合、直ちに著作権侵害になるわけでございます。
 したがいまして、そういうような輸入があって、次のA国から輸入があってB国に渡すというような形態があった場合には、通過全体が完了する前に、輸入をされた段階で直ちにこれは権利侵害になるということがいえることができるかと思います。
 しかしながら、それ以外の様々な形態、これは通過のごく一部かと思いますけれども、それ以外の形態につきましては著作権法上、なかなかいわゆる事実上の通過というものが押さえられるという点はないのではないかと思うわけでございます。
 例えばこのaにありますように、領域内を通過するような場合というようなことがございます。または日本を仕向け地としない、貨物がいったん日本で陸揚げされた後に、通関手続きを経ずにほかの国に向かう。こういうようなものにつきましても、現行の著作権法上はこれが侵害に当たるというのがなかなか容易ではない、ということがいえるかと思います。
 このような状況の下で、産業財産権法の方でどのような議論がなされたかでございますけれども、これは平成17年度中に産業構造審議会の知的財産政策部会で小委員会が設けられまして、検討がされたわけでございます。
 輸出についてでございますが、アンダーラインを引いておりますけれども、商標法を除く産業財産権各法における「実施」、それから商標法においては「使用」の行為の内容として、新たに「輸出」を追加するという形にして、さらに「侵害とみなす行為」の中に「輸出を目的とした所持」を追加するということでございました。これらを踏まえて一部改正法が国会に提出されているという状況でございます。
 これに対しまして通過でございますけれども、通過についても様々な類型があってどうなのかということを検討されたと聞いておりますけれども、最低限輸出というところがあって、それで押さえることができるということでございまして、通過に関する新たな規定、これについては設けないことと、それが適切であるということで設けないこととしたと承知をしているところでございます。
 こうしたような状況の下で、著作権法で輸出の規定について何か必要性があるのかどうか。他法の動向を見た時には、輸出を侵害行為というふうに明示をする必要が、特に税関の運用も含めますとあるのではないかとも思われるわけでございますが、そこをどう考えるか。通過に対しても、何らかの形の対応が必要なのか。この辺が論点になってくるかと思います。
 以上が背景と論点でございます。

【中山主査】 ありがとうございました。それではこの問題につきましては、30分程度の意見を交換したいと思います。御意見あるいは御質問ございましたら、お願いいたします。

【道垣内委員】 確認ですけれども、特許権等については直接物が移動する場合を念頭に法改正されたと思うのですけれども、著作権についても問題になるのは頒布、譲渡だけなのでしょうか。送信可能化状態におけば、それで国内ではそうすれば問題ないのだろうと思うのですけれども、ただここでいう相手方の公衆が外国だけの特定多数公衆を相手に日本で送信可能状態にするということも考えられないわけではないわけですけれども。
 そういう例が適当なのかどうかわかりませんが、私が質問したいのは、特許権等との並びだけの改正が良いのか、著作権ならではのことを考えなければいけないのかということなのですけれども。

【甲野著作権課長】 最終的には著作権法としてどうあるべきかということでございますので、特許等の様子を見ながら著作権としてどうあるべきかということを、特許等には全然考慮しなくて良い公衆送信というような形で国境を越えるということもありますので、それも念頭に置いた上で御議論をいただくということになろうかと思います。
 ただ、この議論の最初のスタートが模倣品・海賊版という物のものが世界中に広まるというところが問題というところで進んでおりますので、最低限そこのところはどういうふうにするのか。ほかとも比べてどうなるのか。そういう視点で、どちらかというとそこを中心に御議論いただければありがたいと思っております。

【中山主査】 よろしいですか。

【道垣内委員】 はい。

【中山主査】 ほかに御質問ありましたら、御意見ございましたら。

【土肥委員】 そうすると、今御説明あったところによると、海賊版のみを考えての議論ということになるわけでしょうか。つまり、属地主義との関係から言いまして、向こうでも侵害、こっちでも侵害という場合ももちろんあるのだろうと思うのですけれども、こっちでは侵害だけれども、向こうでは侵害ではないという場合もあり得ると思うのです。それを専ら外に送り出すという時の行為、そこも含めて考えてほしいという、こういうことになるのでしょうか。

【甲野著作権課長】 こちらは出す方がどうで、あちらがどうでという問題はあろうかと思いますので、そこのところも論点になるかもと思いますので、そこも含めて御議論いただくということが必要になってくるかと思います。それで海賊版のみに限定するかどうかでございますけれども、当面海賊版、それから模倣品問題をどういうふうにしていくかということでスタートしておりますので、そこのところは御議論いただければと思いますけれども、そこに限定してということではございませんので、関連してほかのところはどうなのだということが大きく出てくるのであれば、もちろんそこのところも視野に入れて、併せて対策が必要ということでしたら、それも含めて御議論いただければと思います。

【土肥委員】 向こうでもこっちでもと申しましたのは、ライセンスで日本では生産することがもちろんOKなのだけれども、向こうでは駄目だとか、あるいはその逆の場合も考えているわけです。そういう場合も考えて、水際ですべて止めるようなことになっていくと、例えばそこを理由に、要するに企業間の侵害訴訟、その1つの手段として使われたりして、かなりいろいろ議論があるのではないかなというふうに思っておりましたので、そこで確認をさせていただきました。

【甲野著作権課長】 そういう事情があるということは、輸出について本当に対処するのかどうかということにつながってくるかと思います。産業財産権の方でどのような議論があったのかも含めまして、それも視野に入れながら必要性の判断をしていただければというふうに思います。

【大渕委員】 今出ておりました産業財産権法との関係でどのように考えていくかというところで、御参考までに、私が関与していた産業構造審議会知的財産政策部会の意匠制度小委員会と特許制度小委員会では、輸出を含めることにはかなり反対論も強かったところ、理由づけとしては、要するに、やはり属地主義等の関係では非常に問題になりましたが、先ほど出ていたような話とは違って、もっと抑えた形で、あくまで輸出ではありますが、内国の取引等の一番最後に位置付けられるものであるという理解でその辺を乗り越えたというふうに記憶しております。あまり拡げてしまうのはよいのかという批判は強かったけれども、結局はそのようなことで落ち着いたかと思います。
 もちろん、産業財産権はそうだけれども、著作権は違うという議論はあるのでしょうが、今申し上げた点は少なくとも念頭に置いておいた上でこの小委員会での議論を進めていく必要があるのではないかと思います。

【甲野著作権課長】 そういった産業財産権においての議論もよく踏まえて、資料を準備して御議論いただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

【末吉委員】 先ほどの重罰化については、弁護士会も反対をしております。ただ、産業財産権の方はもうすでに法案が出ていて、そういう段階で何か著作権だけ平仄を合わせないというのも、おかしな議論かなと思いまして意見を申し上げませんでした。しかし、この輸出・通過については、やはり産業財産権法四法の立法事実をよく踏まえながら、先ほど御指摘された著作権法においては模倣品・海賊版ということになるのかもしれませんけれども、それを中心とした立法の必要性を十分検討したい。そうすると恐らく条文の体裁など、いろいろな立法技術的なところも変わってくるかもしれません。どういうニーズに応えていくのかという問題もあると思うので、ぜひいろいろお示しをいただいて、議論をさせていただきたいと思っております。

【中山主査】 今の点で海賊版が日本に多数入ってきているということは周知の事実ですけれども、日本から出ていっているというのはどのくらいあるかというのは、これはわかるのでしょうか。秘密でやっているから、正確にわかるわけはないのですが、おおよそのところはどうなのでしょうか。

【甲野著作権課長】 税関としては止めることができないということがございますので、税関からのデータは出てこないと思います。どんなデータが収集できるのか、少し当たってみたいと思いますけれども、なかなか出ない感じです。

【中山主査】 そうですね。もし何か資料があればお願いします。
 ほかに何か御意見、御質問ありましたら。
 先ほどの土肥委員のお話ですけれども、日本では違法で外国では合法、あるいはその逆の場合も一応議論はするということですか。そこまで議論を広げるというのが著作権課の御趣旨でしょうか。

【甲野著作権課長】 今の土肥先生のお話ですと、これは正規品についてライセンスが日本だけで、外国はライセンスがしない時に移行するという場合の話として、正規品を念頭にということで。

【土肥委員】 正規品なら、国内ではセーフなのですよ。

【甲野著作権課長】 正規品をライセンス外のところに持っていくというこういう機会は、関連をとるということであればもちろん御議論いただくのですけれども、海賊版ということを念頭に置きますと、事務的には、直接は関係ないような感じもするなというふうに思えてきます。

【中山主査】 そうですね。国内でしか使用しないという契約がある場合に輸出してしまう場合はどうかというのは、ここで議論しなければいけないと思うのですけれども、存続期間とか何かの関係で、日本と海外で保護法が違うような時にどうか。そこまで議論するかどうという質問ですけれども。

【甲野著作権課長】 当面は海賊版、侵害品に限って議論していただければというふうに思います。

【中山主査】 国内での海賊版からですか。

【甲野著作権課長】 はい、国内の海賊版から。

【中山主査】 ほかに何か御意見、御質問ありましたら。

【大渕委員】 これは手元に条文がないのでよくわからないのですが、産業財産権法関係では輸出を定義してあったでしょうか。先ほどオンラインで出すもの云々というのがあったのですが、今ここを見ると、貨物を内国から国外に出すことが輸出だというような定義が書いてあったりするので、そういう意味での輸出だけを産業財産権法の方で対処している場合に、著作権法の方ではオンラインまで対処するのかという点も問題になり得ると思いますが。

【甲野著作権課長】 すみません。こちらも今手元に資料を持っておりませんので、よく確認した上で次回の議論に反映していただきたいと思います。

【中山主査】 ほかに何かございましたら。よろしゅうございますか。まだあまり議論らしい議論はしていないのですが、よろしいですか、今日のところは。
 それでは、また議論する時間もあると思いますけれども、今日のところはこのくらいにしたいと思います。本日の審議はこれで終了でございます。次回以降、お手元の審議予定に従いまして、審議を進めていくつもりでおります。
 次回は「IPマルチキャスト放送の著作権法上の取扱い等について」、関係者の方々から御意見を聴取し、これを踏まえて、議論する予定でおります。
 なお、最後に事務局から連絡事項がございましたらお願いいたします。

【白鳥著作権調査官】 本日はどうもありがとうございました。次回の法制問題小委員会の日程でございますが、4月5日水曜日、予定では朝9時半から12時半までの3時間、場所は経済産業省別館10階、1020会議室で行うことを予定しておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

【中山主査】 それでは、本日はこれで文化審議会著作権分科会の第1回法制問題小委員会を終了させていただきます。どうもありがとうございました。



(文化庁長官官房著作権課)

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