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「文化審議会著作権分科会法制問題小委員会審議の経過」に対する意見募集に寄せられた御意見

※いただいた御意見は項目ごとに整理させていただいておりますが、原文のまま掲載しております。
項目 意見
1.権利制限の見直しについて
(3)薬事行政に係る権利制限について
1承認・再審査・再評価制度において、申請書に研究論文等を添付する必要があるため、研究論文等の複写を作成し、国等に提出することについて 「審議の経過」10ページに「国等への迅速な情報伝達により国民の生命、健康への被害を未然に防止するという観点から、権利制限を行うことが必要とする意見が多かった」とありますが、薬事行政の必要性という理由で著作権者の権利が制限されてしまうことにいささか疑問があります。国民の健康に資するという使命は製薬企業も出版社も同じであり、営利企業である製薬会社は自ら製造・販売している医薬品について、承認や継続販売するために必要な経費は必要なコストとして負担するのが当然と考えます。一方的な権利侵害と考えます。

行政利用の文献、製薬企業が厚労省に提出する文献、製薬企業が医療関係者に無料で頒布する文献の3項目の複写すべてに反対です。
1.まず、権利制限規定を拡大する理由が「公共の利益」となっていますが、もし、このことが理由になるとすれば、あらゆる項目が該当することになります。言ってしまえば公務員の方は自分たちは公共に奉仕しているのだから、自分たちが行っていること、ないし自分たちの言うことはすべてが公共であると、思っていませんか?今回の厚労省の提言はまさにそのように思えます。まして、提案しながらどのように製薬企業が複写しているか実態も明らかにしないでです。
2.次に、行政目的であれば、すべて自由に利用できるという発想はおかしいのではないですか?行政であっても他人の権利を利用するのであれば、それなりの配慮をするのが法治国家ではないですか。欧米の国家はこのような場合支払っているではないですか。学術文献を戦後から永年、無断で著作権料の支払いもなく勝手に利用しているのは、お隣の中国とわが日本国(JSTとNL)ぐらいではないですか。
3.著作権は私の権利です。自由主義社会がこの権利を無視すれば崩壊します。製薬企業は出版業と同様私企業ではないですか。製薬企業が自らの営業に利用している無断複写をなぜ、今になって法的に無料で利用させるのですか。副作用情報といいながら、薬に関係のないすべての文献を無断で複写して頒布しているのです。製薬企業が他人の作った学術文献を大量に無断で複写して、医療関係者に配布していることを、法治国家として許してはいけないことだと思います。医学・医療の商業誌は、製薬企業が配布をする医療関係者を読者対象として制作しているのです。発行するそばから製薬企業がコピーをして読者であるべき医療関係者に無料で配布をすれば、本来の読者は誰も雑誌を買わないでしょう。現在、そのような状況になっているのです。医学雑誌が危機に瀕しているのです。小生の編集していた某誌は毎年赤字でも発刊しています。某製薬はかつてこの雑誌を50部購入していました。しかし電子的にコピーして配布しているから今は1部です。隣の中国のNLと同じことを行っているのです。こんなことが続けば商業誌はなくなります。ひいては研究者の発表の場は狭められていくのです。

権利制限すべきです。
文献の複写に関しては複数の管理団体が併存しており、管理著作物を調べる際には全ての団体を調査せざるを得ず、利用者の負担は大きい。
特に、日本複写権センターからJCLSが分離独立した際に、管理著作物の移動が行われているが、出版物に記されている管理団体の表示は、出版された時点のもので、その後の移動は反映されることはない。従って、出版物を見てもどこが管理してるのかは判断できないことになっている。そのため、管理団体の確認には非常に手間がかかってしまう。
2002年1月に社団法人情報科学技術協会は管理団体の統合を提言しているが、3年半以上経ったにもかかわらず、状況は好転していない。
http://www.infosta.or.jp/oshirase/cccteigen.html
また、管理団体が存在していると言っても全ての学術文献が管理されているわけではない。これらについては、さらに権利処理に時間がかかってしまう。
このような状況下では、個別の権利処理を製薬企業に求めるのは、非常に大きな負担を強いることになる。
一刻も早く権利制限すべき事項だと思います。

「問題の所在」として3項目が列記されていますが、いずれも現在の著作権利用制度の未整備に起因するものであると思います。その制度の整備を行わずして、著作権の制限を検討するのは本末転倒であると考えます。

学術論文は本来、学術的な目的のために執筆されており、薬剤承認や副作用報告を目的とはしていません。安易な複写の容認は、それを複写して足れりとする風潮に拍車をかけるものです。こういった異なる目的のためには、適切な引用の下に新たな文章を起草することこそがふさわしいと考えます。
4付記
私も研究者の一人として多くの論文や解説を執筆していますが、ほとんどの場合、著作権は出版社に帰属するという契約がなされています。従って、上記意見は自らの利益の保護を目的とするものではないことを付記しておきます。

「医薬品の製造承認・再審査・再評価制度において、申請書に研究論文等を添付する必要があるため、研究論文等の複写を作成し、国等に提出すること」は製薬企業として、企業活動を行うために設定されたルールであり、これを遵守することは法治国家における企業活動としては当然のことと思います。この諸制度のルールをクリアーすることによる製薬企業は自社が開発した医薬品を販売し、利潤を獲得するのですから、上記の「研究論文等の複写・添付する」ことに係る手続き・費用は企業活動の当然の必要コストとして製薬企業が負担すべきものと考えます。

昨今、著作権問題が浮上しており、その一環として、今回、薬事行政に関わる権利制限がご検討されていることは認識いたしております。すでに審議されております状況を拝見しますと1審査資料関係の研究論文の複写、提出、2副作用・感染症報告・治験副作用報告に関わる研究論文の複写提出、3医薬品の適正使用に必要な情報を提供するために研究論文等を複写し、医療関係者に提供すること、等を権利制限に入れるのは薬事法に基づく範囲として妥当な方向ではないかと思われます。
医療の現場に携わるものとしてご意見を言わせていただきますと、医療においては患者が中心であるべきです。医療の現場では医薬品の有効性と安全性に配慮して患者に最善の医療行為を行うため、常に最新の研究論文等に目を通しておかねばなりません。そのためには医薬品に関する文献は重要な情報源の一つとして必要です、このように日ごろから必要な情報を入手し、新しい治療等の勉強を行うにも廉価で情報を得ることが望まれます。
また、薬事法が医薬品等の有効性および安全性確保のための規制であるとともに、医療上特にその必要性が高い医薬品等の開発のために必要な措置を講じて保健衛生の向上を図る目的とし、必要な措置を医療機関係者に義務付けていることを十分にご理解願いたいと存じます。
以上のことを踏まえて今後の審議を進めていただきたくお願いいたします。

要望事項1「承認・再審査・再評価制度において、申請書に研究論文等を添付する必要があるため、研究論文等の複写を作成し、国等に提出すること」ならびに2「副作用・感染症報告制度・治験副作用報告制度において、期間内に副作用等の発現に係る研究論文等の複写を作成、調査し、国等に提出すること」について、これらの手続は製薬企業がその責任において行うべきものと考える。製薬企業が医薬品の販売によって利潤を得ており、製薬業務が企業の活動そのものである以上、こういった医薬品が国によって承認され、継続販売するために必要な手続は国に対する情報提供のコストも含めて全て製造者である製薬企業が負担すべきものである。
医薬品の審査や評価あるいは製薬企業による副作用の報告といった薬事行政に伴って利用される多くの学術論文誌あるいは医学専門誌は、医薬品の情報を研究者や製薬企業、あるいは厚生労働省に伝達することもその出版の販売対象としている。従ってこれらの出版物は行政目的に利用されることも通常の利用範囲内であり、薬事行政の必要性という理由で権利制限されることは、こうした出版物の発行と販売にとって非常に影響が大きい。
著作権法第42条は行政立法機関内部における複製利用について権利の制限を行っているものであるが、民間から提出する、あるいは民間に提出するものは明らかに行政立法機関内部の利用ではなく、また趣旨も異なる。行政立法機関以外が行う複製は当然権利制限の対象外とすべきであって、責任の所在と帰属性から考えてもそこには一定の線引きが必要である。
また、厚生労働省はこの要望事項にかかる複写利用がどの程度の量であるかを明らかにしていないが、当然権利制限を考慮する場合には複製の総量を明確にすべきである。

問題の所在12に関して、現行法第42条により厚生労働省等が文献の複写を行政目的で権利者の許諾なく行えるからといって、営利企業である製薬会社にも認めることになれば、権利者が被る制約は量的にも現状と同程度であるとは到底いえず、著作者の利益を不当に害することになる。

要望事項1「承認・再審査・再評価制度において、申請書に研究論文等を添付する必要があるため、研究論文等の複写を作成し、国等に提出すること」ならびに2「副作用・感染症報告制度・治験副作用報告制度において、期間内に副作用等の発現に係る研究論文等の複写を作成、調査し、国等に提出すること」について、これらの手続は製薬企業がその責任において行うべきものである。製薬企業の活動そのものというべき医薬品をめぐる必要な手続は国に対する情報提供のコストも含めて全て製造者である製薬企業が負担すべきものである。
医薬品の審査や評価あるいは製薬企業による副作用の報告といった薬事行政に伴って利用される多くの学術論文誌あるいは医学専門誌は、医薬品の情報を研究者や製薬企業、あるいは厚生労働省に伝達することもその出版の販売対象としている。従ってこれらの出版物は行政目的に利用されることも通常の利用範囲内であり、薬事行政の必要性という理由で権利制限されることは、こうした出版物の発行と販売にとって非常に影響が大きい。

「権利制限見直し」反対の意見を申し述べます。
「審議の経過」10ページ1、および2に関しては、利用者側の一方的な意見であり、権利者(著作者・出版社など)の損失を全く考えていない論理である。
著作権法42条は行政目的にのみ権利制限を認めているもので、文献にも「内部資料として必要と認められる限度」であり、「複製物が作成部局内での使用にとどまる場合に限定され、外部から提供されることには適用されない」というのがそもそもの立法趣旨である。(加戸守行:著作権法逐条講義四訂新版)」とある。また、同文献には、「経済的市場における使用と衝突するようなケース、あるいは、著作物の潜在的販路に悪影響を与えるようなケースには、たとえ内部資料としてであっても複製物を作成できない。」とあり、非常に限定的に解釈されるべきである。製薬企業等における複製量が多大と想像されるので、ベルヌ条約第9条2項の「そのような複製が当該著作物の通常の利用を妨げず、かつ、その著作者の正当な利益を不当に害しないことを条件とする」と大きく矛盾する。

「審議の経過」10ページ1および2に関し、これは利用者の一方的な意見で、著作者、出版社などの権利者の損害を考えていない、無謀な論理です。

13のいずれについても権利制限を行うべきである。
国民の健康にかかわる重要な問題であり、制度上必要とされる書類の複製が迅速に行われなければ、国民に重篤な影響が及ぶ。
研究のための複製についても、元となる論文・書籍が購入不可能な場合で著作権者不明などの理由で複製が困難な場合は、補償金をプールするなどして複製が可能になるような対処が必要と思われる。
12については国民の生命、健康への被害を未然に防止し、学術情報の流通が円滑に行われるのを推進するため、「立法または行政の目的」として複製が許容されるよう、第42条に定める権利制限を認めるのは賛成である。
権利制限の対象は複製物の用途・使用目的によって判断すべきである。

1「承認・再審査・再評価制度において、申請書に研究論文等を添付する必要があるため、研究論文等の複写を作成し、国等に提出すること」、2「副作用・感染症報告制度・治験副作用報告制度において、期間内に副作用等の発現に係る研究論文等の複写を作成、調査し、国等に提出すること」については、製薬企業等が開発した医薬品の承認・販売にあたり、企業として必要な手続きであり、かかる費用は自ら負担するのが当然と考える。また行政省が内部資料として行なう複写と利潤を追求する私企業が行なう複写とはまったく目的を異にするものであり、同じように考えることはできない。1および2について権利制限の対象となれば、容易に想像できるその複写枚数の多さから、権利者の利益を不当に害することは必至であり、それらについては権利制限の対象外とすべきである。

医薬品については、特許における産業発展の公益性に比べて、人の生命身体に関わるものであるので、より社会負担としての権利制限はより甘受すべきであるように思われる。
1承認・再審査・再評価制度において、申請書に研究論文等を添付する必要があるため、研究論文等の複写を作成し、国等に提出することについて
そして、これらについては、提出先が国であることから、42条との均衡からも無許諾・無償の権利制限を認めることは、必要性こそあれ、不都合ではないように思われる。

123に反対します
「審議の経過」には見直しについて「権利者の利益と社会一般との調整を図りつつ」とありますが、薬事の場合、著作権者の権利のみを制限し、製薬企業等の利益を保護することになり社会一般との調和なぞ全く図れません。

現在、製薬企業が主体となって設立した財団法人が無許諾で複写物を製薬企業に提供し続け、それに対し日本著作出版権センター(JCLS)が許諾を得て使用料を払い製薬企業に提供するように求めましたが全く改善はされていません。今回の見直しは資本力で優る製薬企業等が力ずくで弱者の権利を奪っているこの現状を著作権法で追認させようとするものです。
学術書誌、医学専門書誌にとって医薬品情報、学術情報を研究者、製薬企業等へ販売する事は売上げの大きな部分を占めています。製薬企業等が許可なく複写できるとなれば、経済的に弱小な著作権者、出版社に与える影響は非常に大きく書誌発行が存続できなくなることも予想されます。その結果情報を利用し国民の生命・健康を守るという社会の仕組みは永続しなくなるおそれがありますのでこの権利制限見直しについては強く反対いたします。
現在、学術、医書出版社は日本複写センター、学術著作権協会、日本著作出版権管理システム等の管理団体に全出版物を委託していますので利用者が事前の包括契約や事後の処理によって迅速に利用することには何らの支障もありません。P11の「現状のシステムの下では、製薬会社による情報提供に支障がでる状態にあると思われる」と懸念を述べられていますが、その理由として「権利者が探索できない場合には」しか述べられていません。このような理由ではシステム全体を懸念する根拠に乏しいと思われます。現在少なくとも管理団体によって複写可能になっている著作物については利用料を払うべきであると考えます。
ベルヌ条約9条2項の趣旨のとおり「特別な場合」、「著作物の通常の利用を妨げないものであり」、「著作者の正当な利益を不当に害しないものである」以外、他人の著作物を利用するに際しては、何らかの代償を払わなければならないのは当然なことです。現在製薬企業等で複写されている数千万頁とも言われている膨大な頁数の状態からすると上記ベルヌ条約9条2項の趣旨に反しています。製薬企業等も複写の利用料を負担して123の企業活動をしなければならないのは、社会一般から期待されているところだと思いますので権利制限の見直しには強く反対します。

[1]の「承認・再審査・再評価制度において、申請書に研究論文等を添付する必要があるため、研究論文等の複写を作成し、国等に提出することについて」と[2]の「副作用・感染症報告制度・治験副作用報告制度において、期間内に副作用等の発現に係る研究論文等の複写を作成、調査し、国等に提出することについて」については、今回の審議においても、特に問題はないとされているなので、是非とも、これらが可能となるように改められるべきと考えます。

1.要望事項12に関して、医薬品の審査、評価あるいは製薬企業による副作用の報告といった薬事行政に伴って利用される多くの学術論文書誌あるいは医学専門書誌は、医薬品の情報を研究者や製薬企業、あるいは厚生労働省に伝達することもその出版目的としている。これらの出版物にとっては行政目的に利用されることもその通常の利用範囲内であり、薬事行政の必要性という理由で権利制限されてしまうことはこれらの出版物の発行と販売にとって非常に影響が大きい。

「○問題の所在」の12については、安全性の確保は根源的かつ公益性が高いことから、「○審議の状況」記載の意見に賛同致します。

1及び2については、権利制限の対象としていただきたい。
理由・・医療機器は、医薬品と同様に人の生命及び健康への重大な影響を未然に防止するため、医療機器の品質、有効性及び安全性の確保を目的とした必要な各種関連情報の収集は、公益の目的に適うものであり、権利制限するべきものではない。

「文化審議会著作権分科会法制問題小委員会審議の経過」(以下「審議の経過」といいます。)では、薬事行政に関し3項目について著作権制限の拡大をご検討されていますが、そのいずれも著作権制限を拡大すべき理由は存しないと考えます。
確かに、国民の生命、健康への被害を未然に防止することは重要なことです。
しかし、「審議の経過」の中で論じられている3項目は、いずれも製薬会社が責任を負うべき自社製品の安全性等に関する情報提供について、他人の著作物を利用しようというものです。自らの製品の安全性についての情報提供義務は、製薬会社自身が負うべきであり、著作権者が義務を負うものではありません。
また、著作権法30条以下の著作権制限規定をみても、財産上の利益につながる著作物の利用について、著作権を制限することはほとんどありません。そして、財産上の利益につながる著作権制限を定める例外的場合(33条、34条、36条)でも無償での利用を認めた例はないと思われます(33条2項、34条2項、36条2項)。
したがって、製薬会社が自らの製品を販売するための承認手続や自らの製品の安全に関する情報提供等、営業上の利益のために著作権を制限するというのは、著作権法体系上、相当ではないと考えます。
第1の項目である「製造販売を行う医薬品の承認・再審査・再評価手続」は、製薬会社が医薬品を販売し利益をあげるための手続です。その申請にあたって研究論文等の添付が必要であるならば、販売されている論文そのものを添付すれば足ります。あえて、著作権を制限する必要はありません。

また、文献のコピーの利用については、日本複写権センター、学術著作権協会等が複製許諾手続を用意しているところであり、著作権制限をしなければ著作物を複製できないわけではありません。例え、すべての文献がこれらに複製許諾を委託していないとしても、このような著作権者の努力こそ支援すべきであって、問答無用で権利制限をしてしまうことは適切ではないと思われます。
特に、医学・薬学文献の著作権者は、自らが副作用情報等を必要とする人となる可能性が高いと思われますので、文献複写の許諾システムを構築しやすい条件があるのではないでしょうか。

しかも、仮に薬事行政に係るこれらのケースについて、著作権制限を拡大しても、大して実益があるようには思われません。
営利企業である製薬会社は、その事業活動において文献複写をする場合の多くが著作権者の許諾を要するのですから、「審議の経過」で検討されている3項目について著作権の制限が認められたとしても、日本複写権センターや学術著作権協会等との包括契約が不要になるわけではありません。したがって、新たに権利制限が設けられた複製について、どう勘案して複製使用料を設定したら良いのかという問題を惹起するだけで、いたずらに問題を複雑にするように思われます。
また、ベルヌ条約の求める「著作物の通常の利用を妨げず、かつ、その著作者の正当な利益を不当に害しない」という条件に矛盾しないとしても、それは条約違反に該らないというだけで、現行法上の著作権に新たな制限を設けることを正当化できるものではありません。
なお、現時点で民間の許諾システムが不充分であるため、著作物複製の許諾を得ていては、国民の生命、健康に被害が生じるおそれがあるのかもしれません。しかしその場合には、緊急非難(刑法37条)に該当し刑事責任は生じないと考えることもできます。
もっとも、民法上の緊急避難(民法720条2項)は「他人の物」から生じた危難でなければなりませんから、製薬会社が自社の製品に関する副作用情報を提供する場合には該当しません。しかし、製薬会社が自ら招いた国民の生命、健康への危難なのですから、副作用情報提供の費用は製薬会社自身が負担すべきであり、著作権者が負担する理由はありません。むしろ、製薬会社が無許諾複製について複製使用料相当額の損害賠償責任を負うのは当然であると思われます。
したがって、著作権の制限によるのではなく、著作権者の許諾が迅速に得られるようなシステムの構築を支援することのほうが適切だと考えます。

要望事項の13について、いずれも権利制限を認めることは妥当とは思われない。国民の生命、健康への被害を未然に防止するという観点を考慮したとしても、42条で行政の内部資料としての複写を認めていることを敷衍させて、権利制限を行うことは適切ではない。そもそも製薬企業が公共の福祉に貢献する要素は当然あるとしても、私企業である以上、利潤を追求するのであるから、その責任と負担で複写利用すべきものである。
また、「権利制限を認めたとしても、権利者にとっても結果的に被る制約は現状と同程度であると考えられる。したがって、権利制限を認めても、著作物の通常の流通を妨げず、かつ、著作者の正当な利益を不当に害することにはならないと考えられる。」とのコメントは、何を根拠に述べているのか理解できない。現状で行われている複写の実態を調査もせず、また、製薬業界にその具体的な利用状況のデータの提出・報告を求めることなく、権利制限が必要あるいは望ましいというような判断はどこから出てくるものなのか、到底納得できるものではない。
さらに、「権利者の許諾を得るのに時間がかかりすぎる」ということが要望の理由として挙げられているようであるが、実際は現在の複写権管理団体においては事後申請で運用されており、大部分の場合そのようなことはないといえる。行政としては、現在の複写権管理団体を通して必要な手続きをして利用するよう、製薬業界を指導することこそが必要なことであろう。

1.1承認・再審査・再評価制度に伴う複写、2副作用・感染症報告制度・治験副作用報告制度に伴う複写については、1行目に、「国等への迅速な情報伝達により国民の生命、健康への被害を未然に防止するという観点から、権利制限を行うことが必要とする意見が多かった」とあるが、医薬に係る著作物は、医薬品情報を関係官庁、病院、研究者等に伝達することを当然の目的の一つにして出版されているものであり、製薬企業が複写する場合は、医薬の販売によって利潤を得ている以上、12の複写に要するコストは当該製薬企業が負担すべきである。

薬事行政に係る権利制限に関して、
1承認・再審査・再評価制度において、申請書に研究論文等を添付する必要があるため、研究論文等の複写を作成し、国等に提出すること
2副作用・感染症報告制度・治験副作用報告制度において、期間内に副作用等の発現に係る研究論文等の複写を作成、調査し、国等に提出すること
3医薬品等の製造販売業者は医薬品等の適正使用に必要な情報を提供するために、関連する研究論文等を複写し、調査し、医療関係者へ頒布・提供すること
について、議論されています。
これらは、薬事法で規定される医薬品、医薬部外品、化粧品及び医療機器(以下、医薬品等という)の使用によってもたらされる国民の生命、健康の被害を未然に防ぎ、医薬品等の品質、有効性および安全性を確保するために、「医療関係者」および「医薬品等の製造販売業者」に課せられた制度に関連しています。すなわち、製造販売を行う医薬品等の承認・再審査・再評価手続における申請書への研究論文等の添付(1)、医薬品等の副作用や感染症発生、治験に関する副作用の報告義務(2)、医薬品等の適正な使用のための情報の収集、提供(3)に関連しています。
審議会の議論にも記されていますように、国民の生命、健康への被害を未然に防ぐためには、医薬品等に関して必要な情報が迅速に伝達されることが不可欠であり、1および2は権利制限の対象と明記しても、現状と大差なく、権利者の利益を不当に害することにならないと考えられます。欧米でもフェア・ユースとして実質的に権利制限の対象となっております。

<下記についての権利制限を要望いたします。>
1)承認・再審査・再評価制度において、申請書に研究論文等を添付する必要があるため、研究論文等の複写を作成し、国等に提出することについて
2)副作用・感染症報告制度・治験副作用報告制度において、期間内に副作用等の発現に係る研究論文等の複写を作成、調査し、国等に提出することについて

<理由>
・複製される論文は、定期刊行物として発行されている学術誌に掲載されており、その学術誌の多くは複製を行う製薬企業が事前に定期購読している場合が多い。
したがって、複製を定期購読の代替として利用されることはなく、著作物の流通や学術誌の販売などに悪影響を与えるとは思えず、ベルヌ条約第9条にも抵触しないと考える。
・また、現行の著作権許諾システムでは、複製対象となる著作物の網羅性の欠如、事務的手続きの煩雑さと権利許諾機関ごとにことなる許諾方法という実態があり、十分に機能していない。このことを考慮すると薬事法関連での複写と提出を現行の著作権許諾システムを通して権利処理することは、かえって緊急性のある生命と健康にかかわる情報流通を阻害することになる。
・また、現行の著作権許諾システムでの処理実績には、薬事法関連以外の処理実績も含まれており薬事法関連の権利制限を行っても、現行の著作権許諾システムそのものを否定することにはならない。
・医薬品の審査・許認可行政に客観性(客観的な科学的エビデンス)を担保するものであり、公共性は高い。
・医薬品の審査・許認可業務の迅速化に貢献する。

[意見]12及び3については、権利制限することが適当と考えます。
理由・・人の生命及び健康への重大な影響を未然に防止するため、医薬品と同様に医療機器の製造販売承認申請時等において、医療機器の品質、有効性及び安全性の確保を担保するための研究論文等の複写を作成し、行政へ提出すること及び医療機関への研究論文等の複写を作成し、情報提供することは、公益の目的に適うものであるため。
特に1及び2については、提出先及び提出部数も限定されること、3については一文献あたりの複写は通常一部であることから、著作権者の正当な利益を不当に害することにはならないと考えられる。

12について、権利制限は必要、認めていただきたいと思います。
「国民の生命、健康を守る」ことを優先していただきたい。
国民医療費の節減にもつながると思います。

「問題の所在」1から3のいずれも権利制限を行うことが必要であると考える。理由は、1及び2に関しては、10頁の該当箇所記載のとおり。

厚労省は、製薬企業等が医薬品の製造承認を受けようとする場合には、薬事法に基いて、国民の生命・健康を守るために、医薬品の品質・有効性及び安全性を確保する関連資料の提出を義務付けている。審査に必要な資料提出は必須とみなされている。
医薬品の品質・有効性及び安全性を証明するためには、関連資料として学術文献を複写して添付することは、客観的な評価を受けるためには必ずといってもよい位必要なことであり、又、文献も多数必要とされている。
これらの文献の提出は、一方では製薬企業の企業活動の一環として行う行為とも考えられるが、行政による審査行為に必要なために提出が義務付けされていること、その審査結果が国民の生命・健康の維持に密接に関わっていること。オーファンドラッグの申請に至っては、到底利益が得られないであろう製品でも、採算割れでも国民の生命・健康を維持し、疾病を治療するために開発が行われ、申請が行われている。単なる私企業の営利目的のみならず、国民の生命を守る公益性も有しているものであることも良く理解をして頂きたい。そのために、資料提出が義務付けされているものと受け止めています。
再審査や再評価手続に関わる研究論文等の資料提出も同様の趣旨によるものであり、著作権の権利を制限することに賛成致します。

これまでに2度要望を提出させていただいておりますが(添付資料参照)、この度も日本製薬団体連合会から提出されております意見書の内容に前向きの対応をしていただくよう、要望いたします。
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著作権法改正に関する要望事項
要望の趣旨 薬事法を中心として行われる薬務行政にしたがいなされる行為は、医薬品の有効性及び安全性の確保を図るという公益的見地から必要とされる行為であり、その行為は著作権法の制限規定に定められるべきものである。
法改正を必要とする理由 周知のとおり、国民が生命を維持し健康を追及することは、基本的人権として憲法において保障されている。
医薬品は、人の生命、健康に直接関わるものであり、それが適正に使用されることにより、品質、有効性及び安全性が確保されることが重要である。
このため、薬事法では、医薬品の使用によってもたらされる国民の生命、健康への積極的、消極的被害を未然に防止するため、医薬品に関する事項を規制し、医薬品の適正使用を推進し、その品質、有効性及び安全性を確保するために必要な各種関連情報の収集・評価・報告・保存を製薬企業等に義務付けている。
医薬品の効果や副作用等の評価を適切に実施するためには、製薬企業における副作用、感染症等の情報収集・分析・報告・保存などが十分にしかも迅速に行われることが必要である。
製薬企業としては、迅速に正確な情報を得るために公表された文献等を探索・精査し、これらの義務を果たしている。そして、これら必要な情報の入手には、迅速性、正確性の面から複製物に頼らざるを得ない状況であるが、定められた報告期限を考慮すると、著作権法の規定に従って事前に複製の許諾を得ることは不可能であり、許諾を条件とすると前記義務の履行は果たすことができなくなる。
このような薬事法を中心とて行われる薬務行政にしたがいなされる行為は、医薬品を適正に使用し、その品質、有効性及び安全性の確保を図るという公益的見地から必要とされる行為であり、その行為は著作権法の制限規定に定められるべきものである。
改正条項及び内容 著作権法 制限規定を新設
薬事法またはその関連法令、ならびにこれらに基づく行政の通達により、行政官庁への報告が求められる場合、その報告のために必要な範囲で、著作物を収集、保存する場合、複製、譲渡及び公衆送信することができる。
また、当該行為は委託することができる。

「○審議の経過」にも記述されているとおり、薬事法では、医薬品の使用によってもたらされる国民の生命、健康への被害を未然に防止することを目的として、医薬品の品質、有効性及び安全性を確保するために必要な情報の収集、評価、報告、使用、保存を行うことを、製薬企業と医療関係者に義務付けている。
「○問題の所在」に記されている各項目のうち、12については、「○審議の状況」で述べられている意見に強く賛同する。すなわち、国民の生命、健康に関する安全性の確保は極めて根源的かつ公益性の高い課題であって、これを維持・追求するためには、これらの行為について権利制限を行うことが必要である。

12につきましては、著作権法42条の範囲内での運用で可能ではないかと思われます。

12について、権利制限をすることに賛成です。
出版物の権利処理が迅速にできない現状で、国民の生命や健康を守るために、正確な情報の提供・入手が必要です。

1承認・再審査・再評価制度において、申請書に研究論文等を添付する必要があるため、研究論文等の複写を作成し、国等に提出すること」ならびに「2副作用・感染症報告制度・治験副作用報告制度において、期間内に副作用等の発現に係る研究論文等の複写を作成、調査し、国等に提出すること」について、「審議の経過」10ページに「国等への迅速な情報伝達により国民の生命、健康への被害を未然に防止するという観点から、権利制限を行うことが必要とする意見が多かった。」とある。しかし、医薬品の審査、評価あるいは製薬企業による副作用の報告といった薬事行政に伴って利用される多くの学術論文書誌あるいは医学専門書誌は、医薬品の情報を研究者や製薬企業、あるいは厚生労働省に伝達することもその出版目的としている。これらの出版物にとっては行政目的に利用されることもその通常の利用範囲内であり、薬事行政の必要性という理由で権利制限されてしまうことはこれらの出版物の発行と販売にとって非常に影響が大きい。製薬企業が医薬品の販売によって利潤を得ている以上、こういった医薬品が国によって承認され、継続販売するために必要な手続は、国に対する情報提供のコストも含めて製造者である製薬企業が負担すべきである。

「審議の経過」10ページに「現行法でも、第42条は、内部資料として必要な限度で行政目的の複製を認めていることから、厚生労働省等が内部資料として、さまざまな文献の複写を権利者の許諾なく行うことは可能であることから、こうした制限規定を置いたとしても、権利者にとっても結果的に被る制約は現状と同程度であると考えられる。したがって、権利制限を認めても、著作物の通常の利用を妨げず、かつ、著作者の正当な利益を不当に害することにはならないと考えられる。」とある。しかし、要望事項12については現状では第42条の範囲内ではないので、この部分について権利制限を拡大すれば、程度の差はあるとしても必ず権利者に影響が出ることになる。それが何故「権利者にとっても結果的に被る制約は現状と同程度であると考えられる」のか理解できない。著作権法第42条は確かに行政目的においては権利制限を認めているが、それは「内部資料として必要と認められる限度」であって、「複製物が作成部局内での使用にとどまる場合に限定され」(加戸守行:著作権法逐条講義四訂新版、283ページ)、外部から提供されることには適用されないというのがそもそもの立法趣旨である。それを行政庁が所有あるいは必要とする著作物であるからという理由で、複製物の外部への提供や外部からの入手までに著作権法第42条の概念を適用するのはあまりにも乱暴な論議である。行政庁以外が行う複製は当然権利制限の対象外とすべきであって、責任の所在と帰属性から考えてもそこには一定の線引きが必要であることは言うまでもない。また、厚生労働省はこの要望事項にかかる複写利用がどの程度の量であるかを明らかにしておらず、権利制限を拡大した場合に権利者の被る制約が現状と同程度であるかどうかは全く判断できない。著作権法第42条には「ただし、当該著作物の種類及び用途並びにその複製の部数及び態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。」という但し書きがあり、「著作物の経済的市場における使用と衝突するようなケース、あるいは、著作物の潜在的販路に悪影響を与えるようなケースには、たとえ内部資料としてであっても複製物を作成できない。」(加戸守行:著作権法逐条講義四訂新版、283ページ)とあり、非常に限定的に解釈されるべきである。複写量が多い場合には、上記に加えてベルヌ条約が求める「著作物の通常の利用を妨げず、かつ、その著作者の正当な利益を不当に害しない」という条件と矛盾する。

2副作用・感染症報告制度・治験副作用報告制度において、期間内に副作用等の発現に係る研究論文等の複写を作成、調査し、国等に提出することについて

「審議の経過」10ページに「国等への迅速な情報伝達により国民の生命、健康への被害を未然に防止するという観点から、権利制限を行うことが必要とする意見が多かった」とありますが、薬事行政の必要性という理由で著作権者の権利が制限されてしまうことにいささか疑問があります。国民の健康に資するという使命は製薬企業も出版社も同じであり、営利企業である製薬会社は自ら製造・販売している医薬品について、承認や継続販売するために必要な経費は必要なコストとして負担するのが当然と考えます。一方的な権利侵害と考えます。

行政利用の文献、製薬企業が厚労省に提出する文献、製薬企業が医療関係者に無料で頒布する文献の3項目の複写すべてに反対です。
1.まず、権利制限規定を拡大する理由が「公共の利益」となっていますが、もし、このことが理由になるとすれば、あらゆる項目が該当することになります。言ってしまえば公務員の方は自分たちは公共に奉仕しているのだから、自分たちが行っていること、ないし自分たちの言うことはすべてが公共であると、思っていませんか?今回の厚労省の提言はまさにそのように思えます。まして、提案しながらどのように製薬企業が複写しているか実態も明らかにしないでです。
2.次に、行政目的であれば、すべて自由に利用できるという発想はおかしいのではないですか?行政であっても他人の権利を利用するのであれば、それなりの配慮をするのが法治国家ではないですか。欧米の国家はこのような場合支払っているではないですか。学術文献を戦後から永年、無断で著作権料の支払いもなく勝手に利用しているのは、お隣の中国とわが日本国(JSTとNL)ぐらいではないですか。
3.著作権は私の権利です。自由主義社会がこの権利を無視すれば崩壊します。製薬企業は出版業と同様私企業ではないですか。製薬企業が自らの営業に利用している無断複写をなぜ、今になって法的に無料で利用させるのですか。副作用情報といいながら、薬に関係のないすべての文献を無断で複写して頒布しているのです。製薬企業が他人の作った学術文献を大量に無断で複写して、医療関係者に配布していることを、法治国家として許してはいけないことだと思います。医学・医療の商業誌は、製薬企業が配布をする医療関係者を読者対象として制作しているのです。発行するそばから製薬企業がコピーをして読者であるべき医療関係者に無料で配布をすれば、本来の読者は誰も雑誌を買わないでしょう。現在、そのような状況になっているのです。医学雑誌が危機に瀕しているのです。小生の編集していた某誌は毎年赤字でも発刊しています。某製薬はかつてこの雑誌を50部購入していました。しかし電子的にコピーして配布しているから今は1部です。隣の中国のNLと同じことを行っているのです。こんなことが続けば商業誌はなくなります。ひいては研究者の発表の場は狭められていくのです。

権利制限すべきです。
文献の複写に関しては複数の管理団体が併存しており、管理著作物を調べる際には全ての団体を調査せざるを得ず、利用者の負担は大きい。
特に、日本複写権センターからJCLSが分離独立した際に、管理著作物の移動が行われているが、出版物に記されている管理団体の表示は、出版された時点のもので、その後の移動は反映されることはない。従って、出版物を見てもどこが管理してるのかは判断できないことになっている。そのため、管理団体の確認には非常に手間がかかってしまう。
2002年1月に社団法人情報科学技術協会は管理団体の統合を提言しているが、3年半以上経ったにもかかわらず、状況は好転していない。
http://www.infosta.or.jp/oshirase/cccteigen.html
また、管理団体が存在していると言っても全ての学術文献が管理されているわけではない。これらについては、さらに権利処理に時間がかかってしまう。
このような状況下では、個別の権利処理を製薬企業に求めるのは、非常に大きな負担を強いることになる。
一刻も早く権利制限すべき事項だと思います。

「問題の所在」として3項目が列記されていますが、いずれも現在の著作権利用制度の未整備に起因するものであると思います。その制度の整備を行わずして、著作権の制限を検討するのは本末転倒であると考えます。

学術論文は本来、学術的な目的のために執筆されており、薬剤承認や副作用報告を目的とはしていません。安易な複写の容認は、それを複写して足れりとする風潮に拍車をかけるものです。こういった異なる目的のためには、適切な引用の下に新たな文章を起草することこそがふさわしいと考えます。
4付記
私も研究者の一人として多くの論文や解説を執筆していますが、ほとんどの場合、著作権は出版社に帰属するという契約がなされています。従って、上記意見は自らの利益の保護を目的とするものではないことを付記しておきます。

「審議の経過」10ページ1および2に関し、これは利用者の一方的な意見で、著作者、出版社などの権利者の損害を考えていない、無謀な論理です。

「権利制限見直し」反対の意見を申し述べます。
「審議の経過」10ページ12およびに関しては、利用者側の一方的な意見であり、権利者(著作者・出版社など)の損失を全く考えていない論理である。
著作権法42条は行政目的にのみ権利制限を認めているもので、文献にも「内部資料として必要と認められる限度」であり、「複製物が作成部局内での使用にとどまる場合に限定され、外部から提供されることには適用されない」というのがそもそもの立法趣旨である。(加戸守行:著作権法逐条講義四訂新版)」とある。また、同文献には、「経済的市場における使用と衝突するようなケース、あるいは、著作物の潜在的販路に悪影響を与えるようなケースには、たとえ内部資料としてであっても複製物を作成できない。」とあり、非常に限定的に解釈されるべきである。製薬企業等における複製量が多大と想像されるので、ベルヌ条約第9条2項の「そのような複製が当該著作物の通常の利用を妨げず、かつ、その著作者の正当な利益を不当に害しないことを条件とする」と大きく矛盾する。

要望事項1「承認・再審査・再評価制度において、申請書に研究論文等を添付する必要があるため、研究論文等の複写を作成し、国等に提出すること」ならびに2「副作用・感染症報告制度・治験副作用報告制度において、期間内に副作用等の発現に係る研究論文等の複写を作成、調査し、国等に提出すること」について、これらの手続は製薬企業がその責任において行うべきものである。製薬企業の活動そのものというべき医薬品をめぐる必要な手続は国に対する情報提供のコストも含めて全て製造者である製薬企業が負担すべきものである。
医薬品の審査や評価あるいは製薬企業による副作用の報告といった薬事行政に伴って利用される多くの学術論文誌あるいは医学専門誌は、医薬品の情報を研究者や製薬企業、あるいは厚生労働省に伝達することもその出版の販売対象としている。従ってこれらの出版物は行政目的に利用されることも通常の利用範囲内であり、薬事行政の必要性という理由で権利制限されることは、こうした出版物の発行と販売にとって非常に影響が大きい。

「副作用・感染症報告制度・治験副作用報告制度において、期間内に副作用等の発現に係る研究論文等の複写を作成、調査し、国等に提出すること」では「迅速な情報伝達・・・」という主として時間的な観点からの「権利制限を」主張されている。
これについては当社を含め多くの権利者は複写利用を拒否しておらず、その権利を日本著作出版権管理システム(JCLS)等の管理団体に委託しており、利用者は事前に年間契約を締結すれば、包括処理、あるいは事後の報告で権利処理をおこなうことが可能であります。

また、薬事行政に係る権利制限の項で議論されている2副作用・感染症報告・治験副作用報告に関わる研究論文の複写提出、3医薬品の適正使用に必要な情報を提供するために研究論文等を複写し、医療関係者に提供すること等については、情報の伝達の迅速性が必要です。過去の医療事故等の反省を踏まえてスピードをもって医療に関する情報を伝達し不測の事故を予防あるいはリスクを極小化する必要があります。
従ってこれ等については、商業目的の利用とは言えず、取り扱いは著作権の権利制限の中に入れるべきだと考えます。
如何に国民の衛生・健康に貢献する仕組みを効率的に構築するか、ということは全国民の共通の願いであるといっても過言ではないと思います。
その一つとして図書館関係及び薬事行政に係る情報の取り扱いについてもより公益的な視点からの議論、判断をお願いします。

要望事項1「承認・再審査・再評価制度において、申請書に研究論文等を添付する必要があるため、研究論文等の複写を作成し、国等に提出すること」ならびに2「副作用・感染症報告制度・治験副作用報告制度において、期間内に副作用等の発現に係る研究論文等の複写を作成、調査し、国等に提出すること」について、これらの手続は製薬企業がその責任において行うべきものと考える。製薬企業が医薬品の販売によって利潤を得ており、製薬業務が企業の活動そのものである以上、こういった医薬品が国によって承認され、継続販売するために必要な手続は国に対する情報提供のコストも含めて全て製造者である製薬企業が負担すべきものである。
医薬品の審査や評価あるいは製薬企業による副作用の報告といった薬事行政に伴って利用される多くの学術論文誌あるいは医学専門誌は、医薬品の情報を研究者や製薬企業、あるいは厚生労働省に伝達することもその出版の販売対象としている。従ってこれらの出版物は行政目的に利用されることも通常の利用範囲内であり、薬事行政の必要性という理由で権利制限されることは、こうした出版物の発行と販売にとって非常に影響が大きい。
著作権法第42条は行政立法機関内部における複製利用について権利の制限を行っているものであるが、民間から提出する、あるいは民間に提出するものは明らかに行政立法機関内部の利用ではなく、また趣旨も異なる。行政立法機関以外が行う複製は当然権利制限の対象外とすべきであって、責任の所在と帰属性から考えてもそこには一定の線引きが必要である。
また、厚生労働省はこの要望事項にかかる複写利用がどの程度の量であるかを明らかにしていないが、当然権利制限を考慮する場合には複製の総量を明確にすべきである。

問題の所在12に関して、現行法第42条により厚生労働省等が文献の複写を行政目的で権利者の許諾なく行えるからといって、営利企業である製薬会社にも認めることになれば、権利者が被る制約は量的にも現状と同程度であるとは到底いえず、著作者の利益を不当に害することになる。

医薬品については、特許における産業発展の公益性に比べて、人の生命身体に関わるものであるので、より社会負担としての権利制限はより甘受すべきであるように思われる。
2副作用・感染症報告制度・治験副作用報告制度において、期間内に副作用等の発現に係る研究論文等の複写を作成、調査し、国等に提出することについて
そして、これらについては、提出先が国であることから、42条との均衡からも無許諾・無償の権利制限を認めることは、必要性こそあれ、不都合ではないように思われる。

1「承認・再審査・再評価制度において、申請書に研究論文等を添付する必要があるため、研究論文等の複写を作成し、国等に提出すること」、2「副作用・感染症報告制度・治験副作用報告制度において、期間内に副作用等の発現に係る研究論文等の複写を作成、調査し、国等に提出すること」については、製薬企業等が開発した医薬品の承認・販売にあたり、企業として必要な手続きであり、かかる費用は自ら負担するのが当然と考える。また行政省が内部資料として行なう複写と利潤を追求する私企業が行なう複写とはまったく目的を異にするものであり、同じように考えることはできない。1および2について権利制限の対象となれば、容易に想像できるその複写枚数の多さから、権利者の利益を不当に害することは必至であり、それらについては権利制限の対象外とすべきである。

1副作用・感染症報告などにおいて、関係文献等の複製を行うことはエビデンスの所在を明らかにする意味でも、必須の事項と考えます。


12については国民の生命、健康への被害を未然に防止し、学術情報の流通が円滑に行われるのを推進するため、「立法または行政の目的」として複製が許容されるよう、第42条に定める権利制限を認めるのは賛成である。
権利制限の対象は複製物の用途・使用目的によって判断すべきである。

13のいずれについても権利制限を行うべきである。
国民の健康にかかわる重要な問題であり、制度上必要とされる書類の複製が迅速に行われなければ、国民に重篤な影響が及ぶ。
研究のための複製についても、元となる論文・書籍が購入不可能な場合で著作権者不明などの理由で複製が困難な場合は、補償金をプールするなどして複製が可能になるような対処が必要と思われる。


123に反対します
「審議の経過」には見直しについて「権利者の利益と社会一般との調整を図りつつ」とありますが、薬事の場合、著作権者の権利のみを制限し、製薬企業等の利益を保護することになり社会一般との調和なぞ全く図れません。

現在、製薬企業が主体となって設立した財団法人が無許諾で複写物を製薬企業に提供し続け、それに対し日本著作出版権センター(JCLS)が許諾を得て使用料を払い製薬企業に提供するように求めましたが全く改善はされていません。今回の見直しは資本力で優る製薬企業等が力ずくで弱者の権利を奪っているこの現状を著作権法で追認させようとするものです。
学術書誌、医学専門書誌にとって医薬品情報、学術情報を研究者、製薬企業等へ販売する事は売上げの大きな部分を占めています。製薬企業等が許可なく複写できるとなれば、経済的に弱小な著作権者、出版社に与える影響は非常に大きく書誌発行が存続できなくなることも予想されます。その結果情報を利用し国民の生命・健康を守るという社会の仕組みは永続しなくなるおそれがありますのでこの権利制限見直しについては強く反対いたします。
現在、学術、医書出版社は日本複写センター、学術著作権協会、日本著作出版権管理システム等の管理団体に全出版物を委託していますので利用者が事前の包括契約や事後の処理によって迅速に利用することには何らの支障もありません。P11の「現状のシステムの下では、製薬会社による情報提供に支障がでる状態にあると思われる」と懸念を述べられていますが、その理由として「権利者が探索できない場合には」しか述べられていません。このような理由ではシステム全体を懸念する根拠に乏しいと思われます。現在少なくとも管理団体によって複写可能になっている著作物については利用料を払うべきであると考えます。
ベルヌ条約9条2項の趣旨のとおり「特別な場合」、「著作物の通常の利用を妨げないものであり」、「著作者の正当な利益を不当に害しないものである」以外、他人の著作物を利用するに際しては、何らかの代償を払わなければならないのは当然なことです。現在製薬企業等で複写されている数千万頁とも言われている膨大な頁数の状態からすると上記ベルヌ条約9条2項の趣旨に反しています。製薬企業等も複写の利用料を負担して123の企業活動をしなければならないのは、社会一般から期待されているところだと思いますので権利制限の見直しには強く反対します。

1.要望事項12に関して、医薬品の審査、評価あるいは製薬企業による副作用の報告といった薬事行政に伴って利用される多くの学術論文書誌あるいは医学専門書誌は、医薬品の情報を研究者や製薬企業、あるいは厚生労働省に伝達することもその出版目的としている。これらの出版物にとっては行政目的に利用されることもその通常の利用範囲内であり、薬事行政の必要性という理由で権利制限されてしまうことはこれらの出版物の発行と販売にとって非常に影響が大きい。

「○問題の所在」の12については、安全性の確保は根源的かつ公益性が高いことから、「○審議の状況」記載の意見に賛同致します。

1及び2については、権利制限の対象としていただきたい。
理由・・医療機器は、医薬品と同様に人の生命及び健康への重大な影響を未然に防止するため、医療機器の品質、有効性及び安全性の確保を目的とした必要な各種関連情報の収集は、公益の目的に適うものであり、権利制限するべきものではない。

「文化審議会著作権分科会法制問題小委員会審議の経過」(以下「審議の経過」といいます。)では、薬事行政に関し3項目について著作権制限の拡大をご検討されていますが、そのいずれも著作権制限を拡大すべき理由は存しないと考えます。
確かに、国民の生命、健康への被害を未然に防止することは重要なことです。
しかし、「審議の経過」の中で論じられている3項目は、いずれも製薬会社が責任を負うべき自社製品の安全性等に関する情報提供について、他人の著作物を利用しようというものです。自らの製品の安全性についての情報提供義務は、製薬会社自身が負うべきであり、著作権者が義務を負うものではありません。
また、著作権法30条以下の著作権制限規定をみても、財産上の利益につながる著作物の利用について、著作権を制限することはほとんどありません。そして、財産上の利益につながる著作権制限を定める例外的場合(33条、34条、36条)でも無償での利用を認めた例はないと思われます(33条2項、34条2項、36条2項)。
したがって、製薬会社が自らの製品を販売するための承認手続や自らの製品の安全に関する情報提供等、営業上の利益のために著作権を制限するというのは、著作権法体系上、相当ではないと考えます。
第2の項目の「副作用・感染症の報告制度」等についても、自社が販売している医薬品の情報を提供することは、営業上必要な行為なのですから、著作権を制限する必要はありません。製薬会社は、販売されている論文等をそのまま添付すれば足ります。
また、文献のコピーの利用については、日本複写権センター、学術著作権協会等が複製許諾手続を用意しているところであり、著作権制限をしなければ著作物を複製できないわけではありません。例え、すべての文献がこれらに複製許諾を委託していないとしても、このような著作権者の努力こそ支援すべきであって、問答無用で権利制限をしてしまうことは適切ではないと思われます。

特に、医学・薬学文献の著作権者は、自らが副作用情報等を必要とする人となる可能性が高いと思われますので、文献複写の許諾システムを構築しやすい条件があるのではないでしょうか。
しかも、仮に薬事行政に係るこれらのケースについて、著作権制限を拡大しても、大して実益があるようには思われません。
営利企業である製薬会社は、その事業活動において文献複写をする場合の多くが著作権者の許諾を要するのですから、「審議の経過」で検討されている3項目について著作権の制限が認められたとしても、日本複写権センターや学術著作権協会等との包括契約が不要になるわけではありません。したがって、新たに権利制限が設けられた複製について、どう勘案して複製使用料を設定したら良いのかという問題を惹起するだけで、いたずらに問題を複雑にするように思われます。
また、ベルヌ条約の求める「著作物の通常の利用を妨げず、かつ、その著作者の正当な利益を不当に害しない」という条件に矛盾しないとしても、それは条約違反に該らないというだけで、現行法上の著作権に新たな制限を設けることを正当化できるものではありません。
なお、現時点で民間の許諾システムが不充分であるため、著作物複製の許諾を得ていては、国民の生命、健康に被害が生じるおそれがあるのかもしれません。しかしその場合には、緊急非難(刑法37条)に該当し刑事責任は生じないと考えることもできます。
もっとも、民法上の緊急避難(民法720条2項)は「他人の物」から生じた危難でなければなりませんから、製薬会社が自社の製品に関する副作用情報を提供する場合には該当しません。しかし、製薬会社が自ら招いた国民の生命、健康への危難なのですから、副作用情報提供の費用は製薬会社自身が負担すべきであり、著作権者が負担する理由はありません。むしろ、製薬会社が無許諾複製について複製使用料相当額の損害賠償責任を負うのは当然であると思われます。
したがって、著作権の制限によるのではなく、著作権者の許諾が迅速に得られるようなシステムの構築を支援することのほうが適切だと考えます。

要望事項の13について、いずれも権利制限を認めることは妥当とは思われない。国民の生命、健康への被害を未然に防止するという観点を考慮したとしても、42条で行政の内部資料としての複写を認めていることを敷衍させて、権利制限を行うことは適切ではない。そもそも製薬企業が公共の福祉に貢献する要素は当然あるとしても、私企業である以上、利潤を追求するのであるから、その責任と負担で複写利用すべきものである。
また、「権利制限を認めたとしても、権利者にとっても結果的に被る制約は現状と同程度であると考えられる。したがって、権利制限を認めても、著作物の通常の流通を妨げず、かつ、著作者の正当な利益を不当に害することにはならないと考えられる。」とのコメントは、何を根拠に述べているのか理解できない。現状で行われている複写の実態を調査もせず、また、製薬業界にその具体的な利用状況のデータの提出・報告を求めることなく、権利制限が必要あるいは望ましいというような判断はどこから出てくるものなのか、到底納得できるものではない。
さらに、「権利者の許諾を得るのに時間がかかりすぎる」ということが要望の理由として挙げられているようであるが、実際は現在の複写権管理団体においては事後申請で運用されており、大部分の場合そのようなことはないといえる。行政としては、現在の複写権管理団体を通して必要な手続きをして利用するよう、製薬業界を指導することこそが必要なことであろう。

1.1承認・再審査・再評価制度に伴う複写、2副作用・感染症報告制度・治験副作用報告制度に伴う複写については、1行目に、「国等への迅速な情報伝達により国民の生命、健康への被害を未然に防止するという観点から、権利制限を行うことが必要とする意見が多かった」とあるが、医薬に係る著作物は、医薬品情報を関係官庁、病院、研究者等に伝達することを当然の目的の一つにして出版されているものであり、製薬企業が複写する場合は、医薬の販売によって利潤を得ている以上、12の複写に要するコストは当該製薬企業が負担すべきである。

<下記についての権利制限を要望いたします。>
1)承認・再審査・再評価制度において、申請書に研究論文等を添付する必要があるため、研究論文等の複写を作成し、国等に提出することについて
2)副作用・感染症報告制度・治験副作用報告制度において、期間内に副作用等の発現に係る研究論文等の複写を作成、調査し、国等に提出することについて

<理由>
・複製される論文は、定期刊行物として発行されている学術誌に掲載されており、その学術誌の多くは複製を行う製薬企業が事前に定期購読している場合が多い。
したがって、複製を定期購読の代替として利用されることはなく、著作物の流通や学術誌の販売などに悪影響を与えるとは思えず、ベルヌ条約第9条にも抵触しないと考える。
・また、現行の著作権許諾システムでは、複製対象となる著作物の網羅性の欠如、事務的手続きの煩雑さと権利許諾機関ごとにことなる許諾方法という実態があり、十分に機能していない。このことを考慮すると薬事法関連での複写と提出を現行の著作権許諾システムを通して権利処理することは、かえって緊急性のある生命と健康にかかわる情報流通を阻害することになる。
・また、現行の著作権許諾システムでの処理実績には、薬事法関連以外の処理実績も含まれており薬事法関連の権利制限を行っても、現行の著作権許諾システムそのものを否定することにはならない。
・医薬品の審査・許認可行政に客観性(客観的な科学的エビデンス)を担保するものであり、公共性は高い。
・医薬品の審査・許認可業務の迅速化に貢献する。

12について、権利制限は必要、認めていただきたいと思います。
「国民の生命、健康を守る」ことを優先していただきたい。
国民医療費の節減にもつながると思います。

[意見]12及び3については、権利制限することが適当と考えます。
理由・・人の生命及び健康への重大な影響を未然に防止するため、医薬品と同様に医療機器の製造販売承認申請時等において、医療機器の品質、有効性及び安全性の確保を担保するための研究論文等の複写を作成し、行政へ提出すること及び医療機関への研究論文等の複写を作成し、情報提供することは、公益の目的に適うものであるため。
特に1及び2については、提出先及び提出部数も限定されること、3については一文献あたりの複写は通常一部であることから、著作権者の正当な利益を不当に害することにはならないと考えられる。

「問題の所在」1から3のいずれも権利制限を行うことが必要であると考える。理由は、1及び2に関しては、10頁の該当箇所記載のとおり。

2副作用・感染症報告制度・治験副作用報告制度において、期間内に副作用等の発現に係る研究論文等の複写を作成、調査し、国等に提出することについて
これらの報告制度は、医薬品が国民の生命・健康の維持や疾病の治療に必須のものであり、迅速に対応しないと生命・健康の維持に重大な影響を及ぼす可能性があることから設けられた制度と理解しております。
副作用報告等については、短時日で早急に報告書を提出することを義務付けしており(2-3週間)、学術文献の複写物を提出することも多いものと推察されます。これらの報告書提出は営利を目的とした行為ではないこと、迅速に対応することが要求されており、複写の許諾を採ってからでは対応が間に合わない可能性もあることなどの理由から、著作権に対する権利制限をすることに賛成致します。
関連する情報収集が速やかに行われ、素早く当局に報告される体制を構築されてこそ、これらの制度が生きてくるものと思われますので、権利制限は是非、実施して頂きたいと思います。

薬事行政に係る権利制限に関して、
1承認・再審査・再評価制度において、申請書に研究論文等を添付する必要があるため、研究論文等の複写を作成し、国等に提出すること
2副作用・感染症報告制度・治験副作用報告制度において、期間内に副作用等の発現に係る研究論文等の複写を作成、調査し、国等に提出すること
3医薬品等の製造販売業者は医薬品等の適正使用に必要な情報を提供するために、関連する研究論文等を複写し、調査し、医療関係者へ頒布・提供することについて、議論されています。
これらは、薬事法で規定される医薬品、医薬部外品、化粧品及び医療機器(以下、医薬品等という)の使用によってもたらされる国民の生命、健康の被害を未然に防ぎ、医薬品等の品質、有効性および安全性を確保するために、「医療関係者」および「医薬品等の製造販売業者」に課せられた制度に関連しています。すなわち、製造販売を行う医薬品等の承認・再審査・再評価手続における申請書への研究論文等の添付(1)、医薬品等の副作用や感染症発生、治験に関する副作用の報告義務(2)、医薬品等の適正な使用のための情報の収集、提供(3)に関連しています。
審議会の議論にも記されていますように、国民の生命、健康への被害を未然に防ぐためには、医薬品等に関して必要な情報が迅速に伝達されることが不可欠であり、1および2は権利制限の対象と明記しても、現状と大差なく、権利者の利益を不当に害することにならないと考えられます。欧米でもフェア・ユースとして実質的に権利制限の対象となっております。

これまでに2度要望を提出させていただいておりますが(添付資料参照)、この度も日本製薬団体連合会から提出されております意見書の内容に前向きの対応をしていただくよう、要望いたします。
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著作権法改正に関する要望事項
要望の趣旨 薬事法を中心として行われる薬務行政にしたがいなされる行為は、医薬品の有効性及び安全性の確保を図るという公益的見地から必要とされる行為であり、その行為は著作権法の制限規定に定められるべきものである。
法改正を必要とする理由 周知のとおり、国民が生命を維持し健康を追及することは、基本的人権として憲法において保障されている。
医薬品は、人の生命、健康に直接関わるものであり、それが適正に使用されることにより、品質、有効性及び安全性が確保されることが重要である。
このため、薬事法では、医薬品の使用によってもたらされる国民の生命、健康への積極的、消極的被害を未然に防止するため、医薬品に関する事項を規制し、医薬品の適正使用を推進し、その品質、有効性及び安全性を確保するために必要な各種関連情報の収集・評価・報告・保存を製薬企業等に義務付けている。
医薬品の効果や副作用等の評価を適切に実施するためには、製薬企業における副作用、感染症等の情報収集・分析・報告・保存などが十分にしかも迅速に行われることが必要である。
製薬企業としては、迅速に正確な情報を得るために公表された文献等を探索・精査し、これらの義務を果たしている。そして、これら必要な情報の入手には、迅速性、正確性の面から複製物に頼らざるを得ない状況であるが、定められた報告期限を考慮すると、著作権法の規定に従って事前に複製の許諾を得ることは不可能であり、許諾を条件とすると前記義務の履行は果たすことができなくなる。
このような薬事法を中心とて行われる薬務行政にしたがいなされる行為は、医薬品を適正に使用し、その品質、有効性及び安全性の確保を図るという公益的見地から必要とされる行為であり、その行為は著作権法の制限規定に定められるべきものである。
改正条項及び内容著作権法制限規定を新設
薬事法またはその関連法令、ならびにこれらに基づく行政の通達により、行政官庁への報告が求められる場合、その報告のために必要な範囲で、著作物を収集、保存する場合、複製、譲渡及び公衆送信することができる。
また、当該行為は委託することができる。

1承認・再審査・再評価制度において、申請書に研究論文等を添付する必要があるため、研究論文等の複写を作成し、国等に提出すること」ならびに「2副作用・感染症報告制度・治験副作用報告制度において、期間内に副作用等の発現に係る研究論文等の複写を作成、調査し、国等に提出すること」について、「審議の経過」10ページに「国等への迅速な情報伝達により国民の生命、健康への被害を未然に防止するという観点から、権利制限を行うことが必要とする意見が多かった。」とある。しかし、医薬品の審査、評価あるいは製薬企業による副作用の報告といった薬事行政に伴って利用される多くの学術論文書誌あるいは医学専門書誌は、医薬品の情報を研究者や製薬企業、あるいは厚生労働省に伝達することもその出版目的としている。これらの出版物にとっては行政目的に利用されることもその通常の利用範囲内であり、薬事行政の必要性という理由で権利制限されてしまうことはこれらの出版物の発行と販売にとって非常に影響が大きい。製薬企業が医薬品の販売によって利潤を得ている以上、こういった医薬品が国によって承認され、継続販売するために必要な手続は、国に対する情報提供のコストも含めて製造者である製薬企業が負担すべきである。

「審議の経過」10ページに「現行法でも、第42条は、内部資料として必要な限度で行政目的の複製を認めていることから、厚生労働省等が内部資料として、さまざまな文献の複写を権利者の許諾なく行うことは可能であることから、こうした制限規定を置いたとしても、権利者にとっても結果的に被る制約は現状と同程度であると考えられる。したがって、権利制限を認めても、著作物の通常の利用を妨げず、かつ、著作者の正当な利益を不当に害することにはならないと考えられる。」とある。しかし、要望事項12については現状では第42条の範囲内ではないので、この部分について権利制限を拡大すれば、程度の差はあるとしても必ず権利者に影響が出ることになる。それが何故「権利者にとっても結果的に被る制約は現状と同程度であると考えられる」のか理解できない。著作権法第42条は確かに行政目的においては権利制限を認めているが、それは「内部資料として必要と認められる限度」であって、「複製物が作成部局内での使用にとどまる場合に限定され」(加戸守行:著作権法逐条講義四訂新版、283ページ)、外部から提供されることには適用されないというのがそもそもの立法趣旨である。それを行政庁が所有あるいは必要とする著作物であるからという理由で、複製物の外部への提供や外部からの入手までに著作権法第42条の概念を適用するのはあまりにも乱暴な論議である。行政庁以外が行う複製は当然権利制限の対象外とすべきであって、責任の所在と帰属性から考えてもそこには一定の線引きが必要であることは言うまでもない。また、厚生労働省はこの要望事項にかかる複写利用がどの程度の量であるかを明らかにしておらず、権利制限を拡大した場合に権利者の被る制約が現状と同程度であるかどうかは全く判断できない。著作権法第42条には「ただし、当該著作物の種類及び用途並びにその複製の部数及び態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。」という但し書きがあり、「著作物の経済的市場における使用と衝突するようなケース、あるいは、著作物の潜在的販路に悪影響を与えるようなケースには、たとえ内部資料としてであっても複製物を作成できない。」(加戸守行:著作権法逐条講義四訂新版、283ページ)とあり、非常に限定的に解釈されるべきである。複写量が多い場合には、上記に加えてベルヌ条約が求める「著作物の通常の利用を妨げず、かつ、その著作者の正当な利益を不当に害しない」という条件と矛盾する。

「○審議の経過」にも記述されているとおり、薬事法では、医薬品の使用によってもたらされる国民の生命、健康への被害を未然に防止することを目的として、医薬品の品質、有効性及び安全性を確保するために必要な情報の収集、評価、報告、使用、保存を行うことを、製薬企業と医療関係者に義務付けている。
「○問題の所在」に記されている各項目のうち、12については、「○審議の状況」で述べられている意見に強く賛同する。すなわち、国民の生命、健康に関する安全性の確保は極めて根源的かつ公益性の高い課題であって、これを維持・追求するためには、これらの行為について権利制限を行うことが必要である。

12につきましては、著作権法42条の範囲内での運用で可能ではないかと思われます。

12について、権利制限をすることに賛成です。
出版物の権利処理が迅速にできない現状で、国民の生命や健康を守るために、正確な情報の提供・入手が必要です。

3医薬品等の製造販売業者は医薬品等の適正使用に必要な情報を提供するために、関連する研究論文等を複写し、調査し、医療関係者へ頒布・提供することについて 「審議の経過」10ページに「国民の生命・健康を守るために、薬事法に規定された努力義務を果たすために行われる医療関係者への情報提供であり、複製した者が複製物から直接的な利益を得るものではないことから、権利制限の対象とすることに賛成する意見があった。」とありますが、これらも上記と同様、製薬会社の責任として行うべきと考えます。医療現場の状況を考えると、必ずこの部分は拡大解釈され、あらゆる情報が権利者を無視した形で提供されることになります。なぜなら、すべての医療情報が国民の生命・健康を守るために少なからず必要とされるものだからです。極端なことを言えば、製薬会社に1冊ずつ本があれば、全国の医療従事者に無料で配布することも可能です。これは著作権者の利益を無視するだけでなく、われわれ出版社の生業そのものを否定するものであり、同じ営利団体として不公平感を感じるとともに、学術出版の成立基盤すら崩してしまいます。その結果はいうまでもなく、学術出版の衰退、学術の進歩に対する弊害であり、結局は国民の健康へも影響していきます。

院外処方せん発行率は50パーセントを超え、病院薬剤師と保険薬局薬剤師は国民の健康が薬によって向上するよう日々研鑚をつまなくてはいけないと思います。また、DI室をもたない保険薬局では多くの保険薬剤師が現場で情報入手に困窮した場合、製薬会社に資料を依頼し、迅速に入手できることで患者ケアに役立っています。
許諾システムを介した医療情報入手手段が成立してしまうことは以下のデメリットがあると予想されます。
1薬剤による有害事象が生じた場合、確定情報遅延による有害事象の遷延化
2医師、看護師等との協議において治療方針への参画ツールとしての情報遅延
3医師からの問い合わせ等による返答遅れによる薬剤師職能の信頼低下
インターネットが普及しているとはいえ、医療現場でインターネットにつながっているパソコンを常に薬剤師個人が利用している薬局は多くはないはずです。国民により良い医療サービスを供給し、薬剤による有害事象を未然に防ぐためにも権利制限を認めていただくことを希望します。

薬物療法を通じて国民の健康を守るべき薬剤師にとって、個別の医薬品の適正使用にかかわる情報は適時性をもって利用できることが必要不可欠なものです。
中でも副作用、相互作用に関する文献、用法・用量の設定根拠に係る文献等の適正使用情報は、特に緊急性を要することが多い現状にあります。30分、1時間といった短時間に臨床判断を迫られる医療の現場において、許諾システムを経て臨床に文献が提供される場合、貴重な情報が患者の治療や副作用原因薬剤の特定が間に合わなくなることにより失われる国民の健康や命が危惧されます。
副作用・相互作用症例、その治療に係る文献をはじめとした医薬品の適正使用に必要な文献の製薬企業による医療従事者への提供に関して、『著作権者の通常の利用を妨げず、かつ、著作者の正当な利益を不当に害しないことを条件として、薬事行政等に係る権利制限』の対象に含めて頂けますようお願いいたします。

(意見の詳細)
1)安全性情報の不確実性
適切な臨床試験(治験)を経て承認・販売された医薬品であっても、下記例のように死亡例を含む重篤な副作用・相互作用が市販後に明らかになることが現実にあります。
1)ソリブジンと5Fu系抗がん剤の併用による骨髄抑制
2)トログリタゾンによる劇症肝炎
3)ピオグリタゾンによる心不全
4)ゲフィチニブによる間質性肺炎
また、市販直後調査というわが国のシステムで承認・販売後の新薬の安全性情報が収集されるのも、治験では限界のある安全性情報を市販後に収集するのが目的です。医薬品の安全性情報に関しては、全てを収集するには一定の使用経験が必要で、新たな医薬品との相互作用も考えると半永久的に不確定性を有することになります。

2)個々の患者間、並びに一人の患者における発現の差異
市販後の薬剤の安全性情報については、緊急安全性情報、厚生労働省による「医薬品医療機器等安全性情報」、日本製薬団体連合会発行の「Drug Safe Update」などの公的・準公的な刊行物からも入手しております。
しかし、副作用の発現は個々の患者の様々な生理機能、病態により異なるため、患者間で、あるいは一人の患者でさえ病期により発現が異なります。全ての状態に対応する文献をあらかじめ入手して準備するのは天文学的なパターンへの対応が必要となり、人的対応は困難です。
したがって、生じた有害事象が病態の進展か、医薬品による副作用か、薬物間相互作用によるものか、随時・その場で判断することが避けられない現実があります。

3)適時性をもった安全性情報の必要性
以上、述べましたように医薬品の安全性情報が日時更新蓄積され、患者側要因も日時変化する中で、全ての安全性情報の根拠文献を蓄積し続けることは医療現場の薬剤師にとって困難というより非現実的です。
また、全ての医療機関がオンライン検索とオンラインライブラリーと契約することも現実には困難です。
このために、適時性をもって医薬品の文献が製薬企業から医療現場に提供されるよう、薬事法に関連した権利制限の対象として取り扱い、国民の健康と命を守る上で欠かせない情報(文献)が適時性をもって医療現場に供給できる体制を確保すべきと考えます。

以上、ご賢察の上、副作用・相互作用症例、その治療に係る文献をはじめとした医薬品の適正使用に必要な文献の製薬企業による医療従事者への提供に関して、『著作権者の通常の利用を妨げず、かつ、著作者の正当な利益を不当に害しないことを条件として、薬事行政等に係る権利制限』の対象に含めて頂けますようお願いいたします。

米国では、薬物有害事象に対する医療費は年間8兆4千億円と言われており、年間200万人が副作用の重篤化により入院治療を余儀なくされ、その内、毎年10万人が死亡していると報告されている。これらの副作用の治療費が医療費の増加につながっている。
そこで、米国では、副作用減少への取り組みを政策の1つとして議論している。わが国でも副作用の発生状況は同様であり、その適切な対策が医療現場ばかりでなく国家としても求められている。
副作用による医療資源損失を概算してみると、薬剤性肝障害では、厚生労働省副作用重篤度分類グレード2では、2週間程度の入院療養を要し約20万円前後の医療費が必要であり、グレード3にまで重篤化すると1ヶ月程度の入院加療を要し治療費は50万円前後も必要であった。
副作用を重篤化させないためには、迅速な医薬品情報提供を基にした高度な医学・薬学的判断が必要になる。その対応の遅れが副作用の重篤化、医療資源の損失の拡大に直結する。その高度な判断を行うには、多岐にわたる多くの医薬品情報が必要になる。
これらの多くは、医学薬学雑誌に掲載される学術論文であり、医療現場でこれら多岐にわたるすべての情報を自らが検索して入手するのは困難で、薬事法により常に情報収集と提供が義務付けられている製薬企業に対し情報の提供を依頼せざるを得ない。これらの医薬品情報にも著作権に配慮する必要はあるが、医療現場でその情報を活用する場合において著作権を重要視するあまり、迅速な情報の入手・利用が妨げられることは医薬品の安全対策に支障を来すことになる。
国民を守り、医療費を抑制する観点から、医療上で必要な情報等の収集・利用において、製薬企業を通して医療機関への文献の複製など一連の行為については、著作権の制限が必要であると考える。

行政利用の文献、製薬企業が厚労省に提出する文献、製薬企業が医療関係者に無料で頒布する文献の3項目の複写すべてに反対です。
1.まず、権利制限規定を拡大する理由が「公共の利益」となっていますが、もし、このことが理由になるとすれば、あらゆる項目が該当することになります。言ってしまえば公務員の方は自分たちは公共に奉仕しているのだから、自分たちが行っていること、ないし自分たちの言うことはすべてが公共であると、思っていませんか?今回の厚労省の提言はまさにそのように思えます。まして、提案しながらどのように製薬企業が複写しているか実態も明らかにしないでです。
2.次に、行政目的であれば、すべて自由に利用できるという発想はおかしいのではないですか?行政であっても他人の権利を利用するのであれば、それなりの配慮をするのが法治国家ではないですか。欧米の国家はこのような場合支払っているではないですか。学術文献を戦後から永年、無断で著作権料の支払いもなく勝手に利用しているのは、お隣の中国とわが日本国(JSTとNL)ぐらいではないですか。
3.著作権は私の権利です。自由主義社会がこの権利を無視すれば崩壊します。製薬企業は出版業と同様私企業ではないですか。製薬企業が自らの営業に利用している無断複写をなぜ、今になって法的に無料で利用させるのですか。副作用情報といいながら、薬に関係のないすべての文献を無断で複写して頒布しているのです。製薬企業が他人の作った学術文献を大量に無断で複写して、医療関係者に配布していることを、法治国家として許してはいけないことだと思います。医学・医療の商業誌は、製薬企業が配布をする医療関係者を読者対象として制作しているのです。発行するそばから製薬企業がコピーをして読者であるべき医療関係者に無料で配布をすれば、本来の読者は誰も雑誌を買わないでしょう。現在、そのような状況になっているのです。医学雑誌が危機に瀕しているのです。小生の編集していた某誌は毎年赤字でも発刊しています。某製薬はかつてこの雑誌を50部購入していました。しかし電子的にコピーして配布しているから今は1部です。隣の中国のNLと同じことを行っているのです。こんなことが続けば商業誌はなくなります。ひいては研究者の発表の場は狭められていくのです。

権利制限すべきです。
文献の複写に関しては複数の管理団体が併存しており、管理著作物を調べる際には全ての団体を調査せざるを得ず、利用者の負担は大きい。
特に、日本複写権センターからJCLSが分離独立した際に、管理著作物の移動が行われているが、出版物に記されている管理団体の表示は、出版された時点のもので、その後の移動は反映されることはない。従って、出版物を見てもどこが管理してるのかは判断できないことになっている。そのため、管理団体の確認には非常に手間がかかってしまう。
2002年1月に社団法人情報科学技術協会は管理団体の統合を提言しているが、3年半以上経ったにもかかわらず、状況は好転していない。
http://www.infosta.or.jp/oshirase/cccteigen.html
また、管理団体が存在していると言っても全ての学術文献が管理されているわけではない。これらについては、さらに権利処理に時間がかかってしまう。
このような状況下では、個別の権利処理を製薬企業に求めるのは、非常に大きな負担を強いることになる。
一刻も早く権利制限すべき事項だと思います。

NPOとして1990年から15年間、患者の主体的な医療参加と医療現場におけるよりよいコミュニケーションづくりを目指してきました(2002年にNPO法人化)。活動の柱ともいえる電話相談に3万5千件以上対応してきたことを踏まえ、患者・家族のなまの声を聴いている立場として意見を述べたいと思います。
薬事行政に係る文献複写については、薬事法の目的が医薬品などの有効性や安全確保のために必要な規制をおこない、患者の安全性や主体性、そして患者と医療従事者のよりよいコミュニケーションの構築ということを考えた場合、必要不可欠な行為であると考えます。
実際に電話相談に届いている内容のなかにも、医薬品の安全性などについて確認したい場合、薬事法の関係で製薬会社から直接患者に情報提供できないため、ドクターを介して文献を手に入れたいと望んだという内容がありました。そのときに、文献が届くまで1ヶ月を要したことで(その原因はドクターが製薬会社に資料請求を失念していたことが後で判明)、何か悪い情報を隠したり、操作しようとしているのではないかと不安に陥ったという声が聞かれました。
また別の相談では、ドクターが製薬会社に依頼してすぐさま文献が得られたことで、自己決定の材料となり、ドクターとの信頼関係が深まったという声もあります。
このような相談の声から考えても、製薬会社から医療従事者への迅速な情報提供がなければ患者の不信感に発展することがあり、コミュニケーションの構築に影響を及ぼしていることがわかります。また、そのような情報提供によって、患者の自己決定を支えることにもなるのです。
患者の立場から考えても、ドクターが文献を必要とする場合のなかには、急を要することもあると容易に推察できます。著作権の確認のために時間がかかることで、患者のいのちが守られない事態が起きれば、取り返しのつかないことになってしまいます。

とくに、医学文献などは患者の病気を救い、いのちを守るために広く情報を知らしめたいということを目的として著されたものと考えられます。治療の進歩のために書かれた文献が、小説などの作品として書かれた著作物と同様に扱われることに、患者の立場としても非常に疑問を覚えます。
このような患者の立場からの意見も汲み取っていただき、薬事行政に係る文献複写、とくに10ページ目の審議の状況3に記載の、医療現場における医師薬剤師等が自らの研究・治療のために、(記載にはないが、医師薬剤師等における行為そのものも当然対象とすべき)並びに、医薬品等製造販売業者は医薬品等の適正使用に必要な情報を提供するために、関連する研究論文等を複写し、調査し、医療関係者に頒布・提供することについては、著作権の権利制限のなかに入れるように希望いたします。

「問題の所在」として3項目が列記されていますが、いずれも現在の著作権利用制度の未整備に起因するものであると思います。その制度の整備を行わずして、著作権の制限を検討するのは本末転倒であると考えます。
10ページには、「権利者の許諾を得るのに時間がかかりすぎる場合」、「権利者が探索できない場合」の可能性が示されていますが、具体的な数字を伴わず根拠が薄弱です。
学術論文は本来、学術的な目的のために執筆されており、薬剤承認や副作用報告を目的とはしていません。安易な複写の容認は、それを複写して足れりとする風潮に拍車をかけるものです。こういった異なる目的のためには、適切な引用の下に新たな文章を起草することこそがふさわしいと考えます。
4付記
私も研究者の一人として多くの論文や解説を執筆していますが、ほとんどの場合、著作権は出版社に帰属するという契約がなされています。従って、上記意見は自らの利益の保護を目的とするものではないことを付記しておきます。

病院薬剤師の日常業務の一つに、院内で使用する医薬品の情報を收集・整理し、医師や看護師などの医療従事者に対し情報提供する業務がございます。基本的な情報は薬事法で定められた「添付文書」をはじめ製薬会社から提供される「医薬品インタビューホーム」及び「製品情報概要」などを收集整理し、必要な際にそれらの情報を提供しています。しかしながら、これらの情報源では対応しがたい内容の問い合わせも多くあります。例えば、肝臓や腎臓に障害を持つ患者様、妊娠中または授乳中の患者様、小児・乳幼児期の患者様らへの用法・用量の調節、あるいは合併症を有するハイリスクな患者様へ医薬品を投与した際の副作用等々、基本的な情報からは読み取ることが困難な問題が極めて日常的に発生しており、製薬企業より詳しい情報提供を求めざるを得ない状況です。
著作権は保護されなければならないことは十分理解しているつもりですが、国民は適正な医療を、かつ、安全に受ける権利を有することが最近の司法の判断でもあるように思います。医学・薬学に関連する必要な情報が迅速に入手できずに、患者様の不利益を未然に回避できない状況はあってはならないことであり、安全で適正な医療を担保するための製薬企業から医療機関への情報提供は著作権より優先されるべきであると思います。どうか、医薬品等の製造販売業者が医薬品等の適正使用に必要な情報を提供するために、関連する研究論文等を複写し、調査し、医療関係者へ頒布・提供することについては権利制限を認めて頂きたいと存じます。

1)国民の生命、健康への被害を未然に防止することについて
「審議の経過」10ページに、本件の要望は「国民の生命、健康への被害を未然に防止するため、あるいは国民の生命、健康を守るために必要な権利制限である」という趣旨の記載がある。医薬品の適正利用が国民の生命、健康に大きく関わることについて、そのこと自体を否定するものではない。しかし、「国民の生命、健康への被害を未然に防止する」ことは他の業種でも多く見受けられることであり、特段製薬企業だけに限定されたことではない。医学専門書誌は医薬品と同様、医療従事者が利用することを目的に発行されているものであり、最新の医療技術、医薬
品情報を適切に提供することによって「国民の生命、健康への被害を未然に防止するため」になくてはならないものである。航空機産業や自動車産業、あるいは運輸業も事故を未然に防ぎ、安全に運行することによって「国民の生命、健康への被害を未然に防止」している。食品産業も同様であり、建築業も地震・災害から身を守る安全な環境を作ることが求められている。それぞれの企業は関連する法律、規制、基準のなかで業務を行っており、その遂行にあたって法律に違反することは勿論、他人の権利を侵害することも許されない。製薬企業だけが例外ではなく、その業務のために必要な著作物の権利制限を行い、製薬企業を特別扱いすることは適切ではない。

2)製薬企業の義務について
製薬企業が医薬品の販売によって利潤を得ている以上、製薬企業の商品である医薬品が国によって承認され、継続販売するために必要な手続は、国に対する情報提供のコストも含めて製造者である製薬企業が負担すべきである。特に要望事項3「医薬品等の製造販売業者は医薬品等の適正使用に必要な情報を提供するために、関連する研究論文等を複写し、調査し、医療関係者へ頒布・提供すること」については、その内容は製薬企業が製造販売している医薬品の適正使用にかかる情報である。製薬企業が医薬品の販売によって利潤を得ている以上、製薬企業が薬事法に規定された情報提供の努力義務を果たすのは当然の義務であり、その義務の履行のために必要なコストは当然のこととして製薬企業が負担すべきである。製薬企業はこういった情報の提供によって医薬品の継続販売と適正使用が可能になり、その販売によって利益が確保され、製薬企業が企業として継続存立することになる。

3)複製の量について
厚生労働省は要望事項全てについてどの程度の量の複製が行われているか明確にしていないが、ベルヌ条約との整合性を検証する上でも全体の複製量を明示すべきである。それが不在のまま審議することは適切であるとは言えない。
また、要望事項3「医薬品等の製造販売業者は医薬品等の適正使用に必要な情報を提供するために、関連する研究論文等を複写し、調査し、医療関係者へ頒布・提供すること」に関連して、日本製薬団体連合会は9月30日開催の法制問題小委員会において「製薬会社4社において実態を調査したところ、これらの複製は年間約150万ページであった」と報告しているが、この数字は明らかに膨大という域をはるかに超えるものである。その内訳は不明であるが、4社で150万ページであるならば製薬業界全体では年間3-4千万ページにもなるであろうと思われ、その数字は100ページの月刊雑誌(年間1200ページ)を3万冊以上複製していることになる。このことはもはやベルヌ条約で求める「特別の場合であり」、「著作物の通常の利用を妨げないものであり」、更に「著作者の正当な利益を不当に害しないものである」の全てに違反していると言わざるを得ない。製薬企業としてこれだけの量の情報が必要ならば、製薬企業自らが用意すべきである。

4)医学専門書誌の通常の利用を妨げることについて
医学専門書誌は医薬品の効果、安全性、その他の医薬情報を含む最新の医療技術を医療従事者に提供することをその出版目的としており、読者である医療従事者の先生方に有償で購入して頂くことによって発行を継続しているものである。医学研究、医薬品の開発・適正利用が公共の利益に適うものであることは当然であるが、公共の利益達成は他の権利制限への免罪符ではない。特に医学専門書誌は医学研究という公共の利益達成目的のために発行されているものであり、知的財産の有効活用という目的があったとしても製薬企業によってこれらの出版物が無断で複製され、無償で医療従事者に提供されたのでは医学専門書誌出版社にとっては販売の道を閉ざされてしまい、継続発行は困難になる。医学専門書誌が発行できなくなれば医療従事者は情報入手ができなくなり、医学研究は衰退する結果を招くことは明らかである。このことはベルヌ条約が求める「著作物の通常の利用を妨げないもの」に明らかに違反している。

5)権利処理について
弊社を含む多くの医学専門書誌出版社は複製にかかる権利を日本著作出版権管理システム(JCLS)に委託しており、利用者は事前にJCLSと年間契約を締結すれば複写の都度の許諾を得る必要はなく、全て事後の報告で権利処理と使用料の支払を行うことが可能である。また、これらの学術論文のデータベース検索と複写サービスは複数の文献複写業者が提供しており、これらの文献複写業者の全てはJCLSと複写利用契約を締結しているので、その利用によって複製物の入手とその権利処理が可能となっている。従って、「権利者の許諾を得るのに時間がかかりすぎる」(「審議の経過」10ページ)という実態は存在しない。実際問題として製薬企業の多くは上記の文献複写業者を利用して必要な文献の殆どを入手しているが、製薬企業はその一部を除いて文献複写業者に対する使用料の支払を拒否している状況にある。また製薬企業は例外的な1-2社を除いて弊社あるいはJCLSに対して複製許諾を求めてきたことはなく、依然として著作権法に違反した複製行為によって権利者の利益を侵害している状況にある。
「権利者が探索できない場合は利用ができない」(「審議の経過」10ページ)という状況も起こり得るであろうが、それについては先ず許諾を得られるものについて権利処理を行った上で対応策を考えるのが筋であろう。そういったものがあることを奇貨として全てに権利制限を求めるのは本末転倒である。

そもそも、薬事法77条の3に規定されている医療関係者への情報提供の努力義務は、論文等の提供まで義務づけているのか明らかにしておく必要があるのではないか。
また、同法の努力義務は、特定の論文の入手を希望する医師等についてのみ情報提供することを定めたものではなく、関係する全医療関係者に情報を提供することを定めたものではないのか。仮に、関係する医療関係者への情報提供を義務づけているとすれば、医療関係者は膨大な数(厚生労働省のホームページによると平成10年末の時点で、医師、薬剤師だけで全国に44万人)であり、このような膨大な複製・頒布は問題があるのではないか(実態とすれば、「通常の使用料に相当する額の補償金を著作権者に支払う」ことを条件とすれば、「権利者の利益を不当に害する」ことにならないとは思われるが、医学関係者向けの論文を医療関係者に大量に複製・頒布することは「通常の利用を妨げる」ことにならないか検討していただきたい。)。
なお、現在の3の記述は極めて広い範囲の者への頒布・提供を認めるものと読めるが、対象者が限定されているのであれば、その旨を明らかにした上で、検討していただきたい。

また、3に関しては、複製した者(製薬会社=営利企業)が、直接的ではないにしろ利益を得るために行っていることは明らかであり、権利制限の対象とするのは不合理である。
さらに、権利者側では発行物のすべてについて日本著作出版権管理システムをはじめとする著作権等管理事業者に管理を委託していることから、権利者の許諾を得るのに時間がかかり情報提供に支障が出る状態にあるとはいえない。
医学研究の進歩は医学専門書誌抜きには考えられず、その複製物を「国民の生命、健康を守るため」の美名のもとに利用する製薬企業だけが潤い、医学専門書誌出版社が存続の危機にさらされるようなことはあってはならない。

要望事項3「医薬品等の製造販売業者は医薬品等の適正使用に必要な情報を提供するために、関連する研究論文等を複写し、調査し、医療関係者へ頒布・提供すること」について、これらの情報は製薬企業が製造販売している医薬品の適正使用にかかる情報である。従って、上記及びと同様、製薬企業が医薬品の販売によって利潤を得ている以上、製薬企業が薬事法に規定された情報提供の努力義務を果たすのは当然の義務であり、その義務の履行のために必要なコストは当然のこととして製薬企業が自ら負担すべきである。
医学系の学術論文を掲載している医学専門誌は医学研究、臨床報告等の医学の進歩と生命の維持に欠かせない情報を提供しており、その社会的役割と使命は高い。医学研究の進歩は医学専門誌の存在なくしては不可能であり、今後も継続して発行されることが必要である。医学専門誌は医薬品の効果、安全性、その他の医薬情報を含む最新の医療技術を医療従事者に提供することをその出版目的としており、読者に有償で購入して頂くことによって事業として成立している。製薬企業によってこれらの出版物が複製され、無償で医療従事者に提供されたのでは医学専門誌出版社にとっては販売の道を閉ざされてしまい、継続発行は困難になる。これらの医学専門誌が発行されなくなれば研究者は発表の場を失い、医薬品の情報を含む研究成果は研究者に伝達されなくなり、日本の医学研究が衰退する可能性も否定できなくなる。
日本製薬団体連合会の調査では要望事項にかかる複製利用は製薬企業4社において年間約150万ページであったとしているが、4社で150万ページであるならば製薬業界全体では年間数千万ページにもなり、これほどまで膨大な複製利用は、その目的、状況の如何に関わらず、権利制限の対象とすべきではない。このことはベルヌ条約が求める「特別の場合であり」、「著作物の通常の利用を妨げないものであり」、更に「著作者の正当な利益を不当に害しないものである」の全てに明らかに違反していると言わざるを得ない。もしこの権利制限が法制化されれば日本はベルヌ条約違反として海外から批判を浴びることになるであろう。またこういった複製の約半数は海外の学術論文であることを考えると、海外の権利者、出版社が国際的な問題を提起することは必至である。

「審議の経過」10ページに「権利者の許諾を得るのに時間がかかりすぎるのではないか、権利者が探索できない場合は利用ができない。」とあるが、殆どの医学専門誌の出版社は複製にかかる権利を日本著作出版権管理システムに委託しており、製薬企業を含む利用者は事前に年間契約を締結すれば、事後の報告で権利処理を行うことが可能である。また、これらの学術論文のデータベース検索と複写サービスは複数の文献複写業者が提供しており、これらの文献複写業者は日本著作出版権管理システムと複写利用契約を締結しているので、その利用によって複製物の入手とその権利処理が可能である。従って権利者の許諾を得るのに時間がかかるという実態はない。

また、薬事行政に係る権利制限の項で議論されている2副作用・感染症報告・治験副作用報告に関わる研究論文の複写提出、3医薬品の適正使用に必要な情報を提供するために研究論文等を複写し、医療関係者に提供すること等については、情報の伝達の迅速性が必要です。過去の医療事故等の反省を踏まえてスピードをもって医療に関する情報を伝達し不測の事故を予防あるいはリスクを極小化する必要があります。
従ってこれ等については、商業目的の利用とは言えず、取り扱いは著作権の権利制限の中に入れるべきだと考えます。
如何に国民の衛生・健康に貢献する仕組みを効率的に構築するか、、ということは全国民の共通の願いであるといっても過言ではないと思います。
その一つとして図書館関係及び薬事行政に係る情報の取り扱いについてもより公益的な視点からの議論、判断をお願いします。

「医薬品の適正使用に必要な情報を提供するために、関連する研究論文を複写し、調査し、医療関係者へ頒布・提供すること」は薬事法に規定された、努力義務であり、複製した者が複製物から直接的な利益を得るものではないことから権利制限の対象とすることについて。
製薬企業が医療関係者に対して行う情報提供の内容は自社が製造販売している医薬品の適正使用に係る情報であります。この情報提供により該当する医薬品の継続的な販売によって、製薬企業は利潤を得ている以上、製薬企業が薬事法に規定された情報提供の努力義務を果たすのは当然の義務であり、その義務履行のために必要なコストは当然のこととして、製薬企業が負担すべきと考えます。

医薬品等の製造販売業者による研究論文等の配布に関しては権利制限の対象とすることを認めて頂きたいと考えます。その骨子は以下の如くであります。
『文化審議会著作権分科会法制問題小委員会審議の経過(以下本意見書に於いては審議の経過と略させて頂きます)−(3)薬事行政に係る権利制限について−3医薬品等の製造販売業者による研究論文等の配布』でも権利制限の対象とすることに賛成する意見があったと述べられているとおり、本項に該当する情報提供が権利制限の対象とならなかった場合、企業から複写資料が医療機関に届られるまでに数日を要することが予想されます。急性期医療における数日間という時間は、処置のタイミングを逸する或いはケースによっては生死を分けるに十分な時間となります。当然紙ベースの資料が届く前に、口頭等による概要情報が提供されることはもちろんですが、情報の信頼度という点で原著に勝るものはありません。医療機関側聞き取りミスによる誤情報提供という可能性もあります。
審議の経過(3)3の後半では『権利制限を認めた場合、〜中略〜、かつ部数も多数になる可能性があることから、慎重な検討が必要ではないかとする意見があった。
また、仮に権利制限するとした場合でも〜後略』とのご意見もあるようですが、本項の特例を認めて頂いた際には、当然情報提供を受ける側も、医療の現場ということで特例を認められたということを認識すべきであります。この様な認識に立てば必要以上の部数の要求や、複写の複写といったようなことは起こらないはずであります。
繰り返しになりますが、医療の現場で患者を前にし、著作権法保護のために情報が遅れることにより患者の生命・予後が危険にさらされる可能性が生じるということを権利者は求めるでしょうか。
医療の特殊性ということに特段の御配慮を頂き、是非医薬品等の製造販売業者による研究論文等の配布に関しては権利制限の対象とすることを認めて頂きたいと考えます。
末筆になりましたが、本件の検討に参加された皆様のご健康を祈念いたします。

要望事項3「医薬品等の製造販売業者は医薬品等の適正使用に必要な情報を提供するために、関連する研究論文等を複写し、調査し、医療関係者へ頒布・提供すること」について、これらの情報は製薬企業が製造販売している医薬品の適正使用にかかる情報である。従って、上記1及び2と同様、製薬企業が医薬品の販売によって利潤を得ている以上、製薬企業が薬事法に規定された情報提供の努力義務を果たすのは当然の義務であり、その義務の履行のために必要なコストは当然のこととして製薬企業が自ら負担すべきである。
医学専門誌は医学研究、臨床報告等の医学の進歩と直接つながる情報を提供しており、医学研究の進歩はこれらの医学専門誌の存在なくしては不可能であり、今後も継続して発行されることが必要である。医学専門誌は医薬品の効果、安全性、その他の医薬情報を含む最新の医療技術を医療従事者に提供することをその出版目的としており、読者に有償で購入して頂くことによって事業として成立している。製薬企業によってこれらの出版物が複製され、無償で医療従事者に提供されたのでは医学専門誌出版社にとっては販売の道を閉ざされてしまい、継続発行は困難になる。
日本製薬団体連合会の調査では要望事項3にかかる複製利用は製薬企業4社において年間約150万ページであったとしているが、4社で150万ページであるならば製薬業界全体では年間数千万ページにもなり、これほどまで膨大な複製利用は、その目的、状況の如何に関わらず、権利制限の対象とすべきではない。このことはベルヌ条約が求める「特別の場合であり」、「著作物の通常の利用を妨げないものであり」、更に「著作者の正当な利益を不当に害しないものである」の全てに明らかに違反していると言わざるを得ない。もしこの権利制限が法制化されれば日本はベルヌ条約違反として海外から批判を浴びることになるであろう。またこういった複製の約半数は海外の学術論文であることを考えると、海外の権利者、出版社が国際的な問題を提起することは必至である。

「審議の経過」10ページに「権利者の許諾を得るのに時間がかかりすぎるのではないか、権利者が探索できない場合は利用ができない。」とあるが、殆どの医学専門誌の出版社は複製にかかる権利を日本著作出版権管理システムに委託しており、製薬企業を含む利用者は事前に年間契約を締結すれば、事後の報告で権利処理を行うことが可能である。また、これらの学術論文のデータベース検索と複写サービスは複数の文献複写業者が提供しており、これらの文献複写業者は日本著作出版権管理システムと複写利用契約を締結しているので、その利用によって複製物の入手とその権利処理が可能である。従って権利者の許諾を得るのに時間がかかるという実態はない。

「権利制限見直し」反対の意見を申し述べます。
特に3の「審議の経過」10頁に「国民の生命・健康を守るために・・・以下省略」に関しては、現状の医療関係者への情報提供の中身は、製薬企業の自社製造販売医薬品の適正使用に関する情報が主であり、販売促進の一端(サービス)としての意味合いが大きく、提供する情報の多くは、医学系の学術論文を掲載している医学専門書誌からの複製物と思われる。故に、読者層が限られている医学専門書誌の販路と重複し、医薬品情報の複製物頒布により、本来購読するべき読者の減少に繋がり、ひいては医学専門書誌の継続発行をも危うくすることになる。
また、「審議の経過」10頁に「許諾を得るのに時間がかかりすぎるのではないか、権利者が探索できない場合は利用ができない。」とある。この点に関しては、複写利用を拒否するものではなく、主たる医学専門書誌出版社は、あらかじめ複数の文献複写業者に複写に関する業務委託をしており、希望すれば文献複写業者から複写物が簡単に提供され、「権利者の許諾を得るのに時間がかかりすぎる」事態は少ない事例と思われる。
最後に、製薬企業等が医薬品等の適正使用に必要な情報を提供する行為に関しては、既存の出版物を複写提供するのではなく、製薬企業等が学識経験者等に依頼してオリジナルの情報を提供すれば良いことであり、「薬事行政に係る権利制限の見直し」の必要は全くないと考える。

3の「審議の経過」10ページの「国民の生命・健康を守るために、薬事法に規定された………」に関して、現在の医療関係者への情報提供の内容は、製薬会社の自社販売医薬品の適正な使用に関する情報であり、販売促進を促す意味合いでありその提供される情報は、医学学術論文を掲載している医学専門書籍のコピーと思われる。
購読者の限られている医学専門書籍の販売路線とぶつかり、医薬品情報のコピーが頒布されると、購読者の減少に繋がり、医学専門書籍の継続的な発行が出来なくなる恐れが有ります。

13のいずれについても権利制限を行うべきである。
国民の健康にかかわる重要な問題であり、制度上必要とされる書類の複製が迅速に行われなければ、国民に重篤な影響が及ぶ。
研究のための複製についても、元となる論文・書籍が購入不可能な場合で著作権者不明などの理由で複製が困難な場合は、補償金をプールするなどして複製が可能になるような対処が必要と思われる。

意見
これらの審議過程においては、医療関係者(医師、薬剤師)が薬の適正使用、安全性や有効性の確認のために、自ら学術文献を収集し、複写し、使用するという行為が対象とされていません。
薬事法77条の3は、医療関係者すべてについて薬の適正使用、安全性および有効性の確認のために、自ら学術文献を収集し、複写し、使用することも対象としているため、製薬企業による情報提供時の複写に限らず、医療関係者が自ら患者治療のために行う(製薬企業以外の複写業者等に依頼する場合を含む)複写に関しても制限対象とすべきであると考えます。

2.11頁の但し書き「ただし、権利制限を認めた場合、複製主体も頒布先も特定されておらず、学術論文全部分の複製になることも予想され、かつ部数も多数になる可能性があることから、慎重な検討が必要ではないかとする意見があった。また、仮に権利制限するとした場合でも、複製部数が多いために権利者への影響が大きく、無償とすることは困難ではないかなどの意見があった」に関して
意見
学術文献の通常の利用において、各医療関係者が必要とするのは、必要な情報が記載されている文献のみであり、通常1部を自ら複写するか製造販売業者等に依頼するものです。個々の著作物の複製部数は通常1部であり特定の権利者に大きな影響(権利侵害)を与えるとは考えられません。
学術文献については、殆どの論文著者は自ら掲載料を支払ってでも、自分の研究成果が多くの医療関係者に情報として伝わり、より多くの患者治療に活用されることを望んでおり、著作権(財産権)を主張することにより医療情報の流通を阻害することを望むものではありません。また、論文著者が学術誌等に論文を投稿し、掲載された場合に著作権(財産権)は当該学会あるいは出版社に譲渡され、あるいは学会・出版社にその複製権が委託されており、これら団体の利益を確保する目的で著作権が主張されるならば、これは明らかに医療情報の公益性を犯すものと言わざるをえません。

3.11頁の「現在、権利者側は、著作物の複製利用促進の観点から、日本複写権センター、学術著作権協会並びに日本著作権出版権管理システム等の管理団体に対して複写にかかる権利の委託を行い、利用者に許諾を与えると同時に利用料を徴収し、権利者に分配するという、権利委託と許諾システムに積極的に取り組んでいる。したがって、当面は、構築されているシステムが利用料の徴収の観点から有効に機能していくか注視することとするが、現状のシステムの下では、製薬会社による情報提供に支障がでる状態にあると思われることから、著作物の通常な利用を妨げず、かつ、著作者の正当な利益を不当に害しないことを条件として、権利制限を認めること等について、検討を行うことが適当である」に関して
意見
「現状のシステムの下では、製薬会社による情報提供に支障がでる状態」とありますが、医療機関に関係する医師、薬剤師による学術文献の収集、複写および活用にも重大な支障がでる状態といえます。薬事法では製薬企業のみならず、医療関係者にも情報収集義務が課せられており、これが阻害されれば結果として患者への適切な治療の提供に支障を来たすことになります。また、著作権法31条でいう図書館等を利用できる医療関係者は限られており、製薬企業による情報提供部分のみではなく、医療関係者自ら各種図書館で複写入手したり、複写業者に依頼して収集する部分についても権利制限が適用される必要があると考えます。

以上の理由により、これらに関する部分について、権利制限に入れることを強く要望します。

3は医薬品製造販売業者としての義務ではあるが、複写総量も多くなる可能性があるので権利者への配慮と、迅速性が要求されるため著作権処理する上での簡便な処理方法が求められる。
権利制限の対象は複製物の用途・使用目的によって判断すべきである。

まず、イ)については、利益を得る得ないという問題ではなく、医薬品等の製造販売業者が自らの責任と費用で必要な情報を提供すべきものであると考える。「国民の生命・健康を守る」という美名のもとに、自らの情報収集・提供の労を惜しみ責任を回避しているに過ぎない。ロ)およびハ)については、当社では、書籍において権利者(著者)と100パーセント出版権設定契約を締結しており、複写に係る権利の管理の委託を受け、また管理の再委託も承諾いただいている。その契約に基づき、2005年8月末現在JCLS(日本著作出版権管理システム)に1,007タイトルを再委
託しており、リビングタイトルはすべて委託済みである。また、雑誌では2001年より著者と著作権譲渡契約を交わしており、著作権者としてJCLSに委託している。これまで著作物の利用に関連して、医薬品等の製造販売業者と話をする機会が数多くあったが、JCLSの許諾システムに問題があるとか、許諾に時間がかかりすぎるといった指摘を受けたことはこれまで一切ない。さらに上述のような契約を交わしているので、ロ)およびハ)のような事態はまったくあり得ない。
医学書出版社は、医学書や医学雑誌の出版活動を通して、わが国の医学教育・研究の発展、また臨床における治療の進歩に、大きな貢献をしていると自負している。権利制限の対象となると、今後このような分野の出版は低迷し継続が困難となり、著者の著作へのインセンティブも低下、延いては医学・医療の発展・進歩にも影響が出ててくることが懸念される。「医薬品等の製造販売業者は医薬品等の適正使用に必要な情報を提供するために、関連する研究論文等を複写し、調査し、医療関係者へ頒布・提供すること」を権利制限の対象とすることについては、以上の理由によって断固反対の表明をしたい。

私達薬局薬剤師が、製薬メーカーに、データー等資料を請求するほとんどは、その医薬品の安全性、有効性を確認するためであり、すべて患者の安全性のために使用するものであります。また、今回審議されている、文献の複写は、国民が安全に医薬品を使用するためには必要不可欠なものであります。これに一定の「しばり」が作られることにより、小委員会でも検討されている通り、迅速な対応に支障が出ることは明らかだと考えます。
また、医薬品製造に関わる文献を、一般の書籍と同等に考え、同じ「しばり」を設定するのは、無理があると思われます。

薬事行政に関わる文献複写については、薬事法の目的が医薬品等の有効性、安全性確保のために必要な規制を行い、公衆の衛生、国民の健康の向上をはかることであることを考えた場合、当然に必要な行為であると思われます。
患者は医師、薬剤師等の医療機関にその身を預けざるを得ない立場であり、医師、薬剤師等を信用せざるを得ません。
当然、医師・薬剤師等は常に患者のことを考え、医療現場で日夜努力されていると信じています。
その治療のために、学術文献が大切な役割を演じているのでありますから、その流通経路が権利によって阻害され、結果として、患者のために必要な治療ができないという最悪の事態が発生すれば、患者の生命はどうなるのでしょうか。
現在、がんや治癒が難しい病気に苦しんでいる患者は数多くいます。
患者が最良の治療を受けるためには、医師などによる研究成果に基づく新たな治療の展開、製薬企業等による新たな薬の開発は必須の条件です。
情報公開によるエビデンスに則った情報を元に、患者がリスクを負い治療法を自己決定する事は、基本的な患者の権利と考えます。
人間の生命が大切なのか、法による権利行使が大切なのかは議論する余地はありません。
是非とも、これらのことを念頭にいれていただき、薬事行政に関わる文献複写、『薬事行政に係る権利制限について』審議の状況3に記載の、医療現場における医師薬剤師等が自らの研究・治療のために、(記載には抜けているが、医師薬剤師等における行為そのものも当然対象とすべき)並びに、医薬品等製造販売業者は医薬品等の適正使用に必要な情報を提供するために、関連する研究論文等を複写し、調査し、医療関係者へ頒布・提供することについては、著作権の権利制限の中にいれるようお願いいたします。

病院薬剤師の重大な責務として、医薬品の安全かつ有効な使用のために必要な医薬品関連情報の収集、評価ならびに提供があります。臨床の場における医薬品情報は情報の質の確保とともに、刻々と変化する患者の病態に応じた適時性、即応性が求められる所です。
多くの患者に共通する普遍的な情報は医薬品添付文書、製品情報概要、使用上の注意の解説、医薬品インタビューフォームなどの形で製薬企業から提供されてはいますが、これらは個々の患者に対応した個別化情報ではありません。医療現場で最も必要な情報は、個々の患者の現在の病態に焦点を合わせた情報です。高度情報化時代にあっても、このような個別化された良質な情報提供のためには医学、薬学領域の原著、総説論文などの学術論文、文献は必須の情報源です。
とりわけ、医薬品によると考えられる重大な有害事象の発生時、特殊な病態下にある患者への薬物療法施行時などでは、極めて切迫した状況下で迅速な情報提供を要求される場面が日常的に発生しています。しかし、これに対応するに要する文献をあらかじめ個々の医療機関で独自に収集整備しておくことは到底不可能です。日本の第一線の医療を担う大多数の病院、診療所において、所蔵する図書は極めて限られたものであり、インターネットを活用したオンライン情報の入手環境もまだまだ未整備な状態にあります。これを補い、薬剤師の薬学的判断を的確にサポートしてくれる最大の情報源は製薬企業を置いては他にありません。製薬企業は自社の製品に関する直接的情報はもとより、関連する情報を常日頃から網羅的に収集、整理しており、その精度ならびに対応の迅速性において他に勝る医薬品文献情報データベースはまず考えられません。
事実、私の勤務する小規模な民間病院においても、大学病院や大規模病院に比肩しうる情報提供業務が可能であるのは、製薬企業からの緊密な情報支援体制があって始めて成り立っていると言えます。それによって如何に多くの患者が救われたか知れません。
今回の著作権法で規定されようとしている権利者の許諾の要件は、緊急性を要する状況下における迅速かつ適正な情報の提供はもとより、恒常的な場面においても製薬企業の情報提供の努力義務の円滑な遂行が極めて困難な状況に陥ることは明らかであると思われます。このような不利益の発生は患者にとって極めて不幸なことであり、ぜひとも回避されるべきことと考えます。
申し上げるまでもなく、医薬品は最新の安全性、有効性に関する情報が常に担保された状況下でのみ医薬品としての存在が許されます。これが法律によって著しく制限を受けることには大きな疑問があります。
従って、医学、薬学領域の著作物は特別な性質を有する著作権物として位置づけ、公益性の高いものとして扱い、権利者の正当な利益を保護しつつ、利用者に一定の権利制限を認めていただくことを強く要望する所であります。

1.
>8頁および10頁の「○問題の所在」および「○審議の状況」における
>「3医薬品等の製造販売業者は医薬品等の適正使用に必要な情報を
>提供するために、関連する研究論文等を複写し、調査し、医療関係者へ
>頒布・提供することについて」(薬事法第77条の3)に関して
これらの審議過程においては、医療関係者(医師、薬剤師)が薬の適正使用、安全性や有効性の確認のために、自ら学術文献を収集し、複写し、使用するという行為が対象とされていない。
薬事法77条の3は、医療関係者すべてについて薬の適正使用、安全性および有効性の確認のために、自ら学術文献を収集し、複写し、使用することも対象としているため、製薬企業による情報提供時の複写に限らず、医療関係者が自ら患者治療のために行う(製薬企業以外の複写業者等に依頼する場合を含む)複写に関しても制限対象とすべきと考える。
2.
>11頁の但し書き「ただし、権利制限を認めた場合、複製主体も
>頒布先も特定されておらず、学術論文全部分の複製になることも
>予想され、かつ部数も多数になる可能性があることから、慎重な
>検討が必要ではないかとする意見があった。また、仮に権利制限
>するとした場合でも、複製部数が多いために権利者への影響が
>大きく、無償とすることは困難ではないかなどの意見があった」に関して
学術文献の通常の利用において、各医療関係者が必要とするのは、必要な情報が記載されている文献のみであり、通常1部を自ら複写するか製造販売業者等に依頼するものである。個々の著作物の複製部数は通常1部であり特定の権利者に大きな影響(権利侵害)がでるとは考えられない。
学術文献については、殆どの著作者は、自ら掲載料を支払ってでも、自分の研究成果が多くの医療関係者に情報として伝わり、より多くの患者治療に活用されることを望んでおり、財産権としての著作権を主張するものではない。

3.
>11頁の「現在、権利者側は、著作物の複製利用促進の観点から、
>日本複写権センター、学術著作権協会並びに日本著作権出版権管理
>システム等の管理団体に対して複写にかかる権利の委託を行い、
>利用者に許諾を与えると同時に利用料を徴収し、権利者に分配する
>という、権利委託と許諾システムに積極的に取り組んでいる。したがって、
>当面は、構築されているシステムが利用料の徴収の観点から有効
>に機能していくか注視することとするが、現状のシステムの下では、
>製薬会社による情報提供に支障がでる状態にあると思われることから、
>著作物の通常な利用を妨げず、かつ、著作者の正当な利益を不当
>に害しないことを条件として、権利制限を認めること等について、
>検討を行うことが適当である」に関して
現状のシステムのままでは製薬会社による情報提供に支障がでる状態とあるが、医療機関に関係する医師、薬剤師による学術文献の収集、複写および活用にも支障がでる状態といえる。結果として、患者への最適な治療の提供に支障を来たすこととなる。
知的生産活動の産物である学術文献は、全人類の共通の財産であり、著作権を保護し、流通促進することは非常に重要で、行き過ぎた利用料徴収は、全人類の利益にはならないと考える。また、これらの研究論文を作成している我々も製薬会社も、行き過ぎた利用料徴収は望まない。

以上の理由により、これらに関する部分について、権利制限に入れることを強く希望いたします。ご検討のほどよろしくお願いいたします。

本件の審議に関しては、
(1)医薬品等の製造販売業者が自社製品の販売促進活動の一環として、当該製品等に係るパンフレット等として研究論文等を複製して配布する場合
(2)医療現場で、医師や薬剤師が患者の使用する医薬品に関して迅速に必要な情報を収集するため自らあるいは医薬品等の製造販売業者等に依頼して研究論文等を複製する場合
とを明確に分けて議論いただきたい。
すなわち、(1)については著作権利者の利益を尊重すべきであると考えるが、(2)については、医薬品等の製造販売業者や医師・薬剤師の利益のためではなく、国民一人ひとりの生命・健康という利益を守るために行うものであり、これらに該当する複製については著作権利者の利益よりも優先させるべきと考える。
ついては、上記(2)の体制を確保するため、著作権法に次の趣旨の権利制限規定を早急に設けるようご検討いただきたい。
○薬剤師等の医療関係者は、医薬品の適正使用やその確保のための調査・研究等に必要な場合は、公表された著作物を無許諾・無償で複製・利用することができること
○薬剤の適正使用やその確保のために薬剤師等医療関係者から依頼を受けたものは、著作権者の権利を不当に侵害せず、又自らが不当な利益を享受しない範囲において、無許諾・無償で著作物を複製し、薬剤師等へ提供できるものとすること
なお、小委員会における意見では、複写権管理団体による権利委託と許諾システム構築に積極的に取り組んでいるとのことであるが、医療現場で複写文献を利用する立場からすると、このような許諾システムを利用して医薬品等の適正な使用のために必要な、多様な情報を迅速的確に入手することは実際上極めてきわめて困難であり、患者や情報を必要とする者に適切に情報提供する上で障害となっていることを付言する。

頒布・提供するとなると、国への提出とは同視することはできない。許諾権の制限は妥当であるとしても、補償金の導入など何らかの措置が必要のように思われる。

医薬品の適正使用について病院薬剤師等が積極的に取り組んでいるところでありますが、医療現場においては薬物相互の薬物相互作用、副作用の発現等の事例が突発的に日々発生しており、個別的事由を有する事例がほとんどであります。
このような事例においては、製薬企業から提供されている医薬品の製品説明パンフレット等だけでは対処できず、個別の事例に応じた情報が必要となります。これらの情報源としては、医学薬学雑誌に掲載される学術論文、文献があります。これらの情報をすべて薬剤師自らが検索して入手するのは困難であり、情報量の豊かな製薬会社に情報提供を依頼することにより、最適な事例を迅速に入手することが可能となります。薬事法第77条の3においては、薬剤師等の医療従事者に情報の収集および提供義務が課されております。
また、医療現場で必要な情報については、当該情報にかかる著作権を重要視するあまり、迅速な情報の入手・利用が妨げられることは診療に支障を来たすことにもなりかねません。
以上のことから、薬剤師等が医療上で必要な情報等の収集・利用において、薬剤師等による文献の複製ならびに提供依頼先の製薬企業等における文献等の複製などの一連の行為については、著作権の制限を加えるべきと考えます。
なお、法制問題小委員会での議論において、本件の権利制限により、医学薬学関連の雑誌の出版に影響があるとの意見があるようであります。しかし、各病院および薬剤師は、調剤、疾患、治療および医薬品に関する多くの知見を必要とされており、薬事法第77条の3に係わらず多数の学術雑誌に掲載されております多岐にわたる論文から多くの知見を得るために、多数の学術雑誌、学術専門書を購入しています。従って、本件の権利制限規定を拡大したとしても、それ故に学術雑誌、学術専門書の購入を中止すると言うことは考えられませんので、出版に対する影響は無いと考えます。

3「医薬品等の製造販売業者は医薬品等の適正使用に必要な情報を提供するために、関連する研究論文等を複写し、調査し、医療関係者へ頒布・提供すること」に関して、医学専門書誌の出版に携わる一員として反対の意見を表明致します。
「文化審議会著作権分科会法制問題小委員会審議の経過」10ページに、「国民の生命・健康を守るために、薬事法に規定された努力義務を果たすために行われる医療関係者への情報提供であり、複製した者が複製物から直接的な利益を得るものではないことから、権利制限の対象とすることに賛成する意見があった。」とあります。
製薬企業が製造する医薬品は、国民の生命・健康を守るために、薬事法に規定された条項を遵守して、国民に提供されなければならないことは自明のことです。製薬企業は、本来その前提に立って医薬品を製造し、営利を得て企業活動を行っているものであり、民間企業として自由な営業活動が認められています。そうした立場の企業が、医療関係者への薬事法上の情報提供について特別な権利を得ることは、民間企業における自由な競合関係を大きく阻害するものです。
医学専門書誌出版社は、これら専門領域において有益な情報提供を行い、国民の生命・健康を守る仕事の一端を担ってきております。その基幹的な業務について権利が制限されるとすれば、まさにわれわれ出版業者の存亡に関わります。現実に、小資本の医学専門書誌出版社のみが存亡の危機に立つ一方、製薬企業にとって、もしそのような権利の制限が行われなかったとしても、製薬企業の存亡とは関わりないものであることは明らかです。
また、医療関係者への必要な情報を検索し提供する手段は、周知のごとく電子的手段により驚異的に進歩しており、日に日に迅速化しています。
医学専門書誌出版社にとって製薬企業は大事な顧客でもあり、利害を異にする事柄について、表立って意見を申し立て難い立場にあります。
どうか以上の意を汲んでいただき、公正かつ十分な審議を尽くされますようお願い致します。

意見:医薬品の適正使用に必要な情報を提供するために、製薬企業が行う研究論文等の複製・頒布について、著作権の権利制限が認められるべきと考えます。

理由:イデアフォーは1989年に乳がんを乳房温存療法で治療した患者を中心に、患者本位の医療の実現を目指して発足した市民団体です。自分たちの体験から医療情報の乏しさ、医療の閉鎖性に愕然とし、インフォームド・コンセントの推進、乳房温存療法のみならず広く医療情報の収集と提供を目的に掲げ、活動をしてまいりました。そのような活動のひとつに、臨床試験への取り組みがありました。納得できない臨床試験に抗議するために、患者としてはじめて、「臨床試験ワークショップ」を開くなど、臨床試験さらに広く臨床研究について学んできました。
学習の成果として、私たちが共有した認識は、治験、臨床試験さらに臨床研究を含めて、これらは患者の体を使った実験であるということです。抗がん剤の臨床試験に限ってみると、それは患者にとってしばしば過酷なものであり、患者個人の身において利益と不利益のバランスをとることは到底できません。状来の自分と同様の病で苦しむ患者に貢献する行為であるということが、この天秤のバランスを保つためにはどうしても必要なことなのです。
医師や研究者は、あえて倫理的なリスクを犯して、臨床研究を行うのはなぜでしょうか?それは、そこから得られた知見が、多くの医療従事者に共有され、一人でも多くの患者により良い医療がなされることを願ってではないでしょうか。その意味で患者も医療関連論文の著作者も、思いは同じであると考えております。
医薬品の適正使用に関する研究論文等は、多くの場合このような臨床研究から得られたものと考えられます。したがって、そこから得られた成果は、速やかに臨床の現場にもたらされ、患者がより良い治療を受けるために生かされなければならないはずです。本来は、医学論文のデーターベースが整備され、医療従事者はもちろん患者も含めて、個人で必要な情報を簡便に引き出せるシステムが作られるべきなのです。しかし、今の日本の現状はそうなってはいないようです。
そのような状況で、医学研究の成果を臨床の現場にもたらす役割を担っているのが、製薬企業であり、その重要な手段が、研究論文などの複製・頒布であるということです。ここで著作権法を遵守した場合、権利者の許諾を得るために時間がかかりすぎる、権利者が探索できない場合は利用できないなど、臨床現場で個々の患者がより良い治療を受けるために利用するという、医学研究の著作物の本来の目的が、妨げられている危険性があると述べられています。

そのような危険性を排除して、臨床研究の成果が、本来の目的に円滑に生かされるよう、上記の意見を述べさせていただきました。

123に反対します
「審議の経過」には見直しについて「権利者の利益と社会一般との調整を図りつつ」とありますが、薬事の場合、著作権者の権利のみを制限し、製薬企業等の利益を保護することになり社会一般との調和なぞ全く図れません。
3について
p10に「国民の生命・健康を守るために、薬事法に規定された努力義務を果たすために行われる医療機関関係者への情報提供であり…。」とあり、あたかも公益のためには無許諾無報酬で利用し、その実現には費用も著作権者個人に負担させて当然という意図を感じ取れます。まさに調整ではなく著作権者の権利を蹂躙することになり到底納得できるものではありません。
現在、製薬企業が主体となって設立した財団法人が無許諾で複写物を製薬企業に提供し続け、それに対し日本著作出版権センター(JCLS)が許諾を得て使用料を払い製薬企業に提供するように求めましたが全く改善はされていません。今回の見直しは資本力で優る製薬企業等が力ずくで弱者の権利を奪っているこの現状を著作権法で追認させようとするものです。
学術書誌、医学専門書誌にとって医薬品情報、学術情報を研究者、製薬企業等へ販売する事は売上げの大きな部分を占めています。製薬企業等が許可なく複写できるとなれば、経済的に弱小な著作権者、出版社に与える影響は非常に大きく書誌発行が存続できなくなることも予想されます。その結果情報を利用し国民の生命・健康を守るという社会の仕組みは永続しなくなるおそれがありますのでこの権利制限見直しについては強く反対いたします。
現在、学術、医書出版社は日本複写センター、学術著作権協会、日本著作出版権管理システム等の管理団体に全出版物を委託していますので利用者が事前の包括契約や事後の処理によって迅速に利用することには何らの支障もありません。P11の「現状のシステムの下では、製薬会社による情報提供に支障がでる状態にあると思われる」と懸念を述べられていますが、その理由として「権利者が探索できない場合には」しか述べられていません。このような理由ではシステム全体を懸念する根拠に乏しいと思われます。現在少なくとも管理団体によって複写可能に
なっている著作物については利用料を払うべきであると考えます。
ベルヌ条約9条2項の趣旨のとおり「特別な場合」、「著作物の通常の利用を妨げないものであり」、「著作者の正当な利益を不当に害しないものである」以外、他人の著作物を利用するに際しては、何らかの代償を払わなければならないのは当然なことです。現在製薬企業等で複写されている数千万頁とも言われている膨大な頁数の状態からすると上記ベルヌ条約9条2項の趣旨に反しています。製薬企業等も複写の利用料を負担して123の企業活動をしなければならないのは、社会一般から期待されているところだと思いますので権利制限の見直しには強く反対します。

[3]の「医薬品等の製造販売業者は医薬品等の適正使用に必要な情報を提供するために、関連する研究論文等を複写し、調査し、医療関係者へ頒布・提供することについて」について、「審議の経過」に『権利制限を認めた場合、複製主体も頒布先も特定されておらず、学術論文全部分の複製になることも予想され、かつ部数も多数になる可能性がある』(11ページ)との懸念が示されていますが、優先させるべきは人命であると考えます。
通常、著作物の利用については、事前に許諾を得るべきものと思いますが、この場合には事後許諾を認めることを明示するなど、何らかの配慮が必要と考えます。
なお、「審議の経過」に『仮に権利制限するとした場合でも、複製部数が多いために権利者への影響が大きく、無償とすることは困難ではないか(11ページ)』との指摘がされていますが、補償金等の措置を講じた場合、それらが薬品や治療行為の対価に上乗せされ、近年の医療保険の負担率の増加に加え、患者の負担が更に増える可能性も否定できません。
「著作者等の権利の保護を図(1条)」ることは重要であり、有償であることを否定しませんが、慎重な検討が必要と考えます。

2.要望事項3に関して、医療関係者への情報提供の中身は製薬企業が製造販売している医薬品の適正使用にかかる情報である。製薬企業が医薬品の販売によって利潤を得ている以上、製薬企業が薬事法に規定された情報提供の努力義務を果たすのは当然の義務であり、その義務の履行のために必要なコストは当然のこととして製薬企業が負担すべきである。製薬企業は複製することによって直接的な利益を得るものではないが、こういった情報の提供によって医薬品の継続販売と適正使用が可能になり、それによって企業利益が確保されることになる。
3.要望事項3に関して、医学専門書誌は医薬品の効果、安全性、その他の医薬情報を含む最新の医療技術を医療従事者に提供することをその出版目的としており、その販売対象は通常医療従事者以外には想定できない。製薬企業によってこれらの出版物が複製され、無償で医療従事者に提供されたのでは医学専門書誌出版社にとっては販売の道を閉ざされてしまい、継続発行は困難になる。日本製薬団体連合会はこれらの複製は4社で年間150万ページであったとしているが、たった4社でこの数字ということは業界全体では膨大な数字になり、ベルヌ条約違反である。

薬事行政に係わる文献複写については、薬事法の目的が、医薬品等の有効性、安全性確保のために必要な規制を行い、国民の健康の向上をはかることであることを考えた場合、当然必要な行為であると思われる。
患者は医師、薬剤師等の医療関係者にその身を預けざるを得ない立場であり、医師、薬剤師等を信頼して治療を続けている。当然、医師、薬剤師等は常に患者のために医療現場で日夜努力していると信じている。その研究や治療のために、学術文献が重要な役割を担っているのであるから、その流通経路が製薬企業経由であっても、権利によって阻害されることなく、患者のために必要な研究や治療ができるようにするのが、患者の命を守ることである。
現に、リウマチは治癒が難しい病気であり、苦しんでいる難治の患者は数多い。この病気の治癒のためには、医師等による研究成果に基づく新たな治療の展開、製薬企業等による新たな薬の開発は必須の条件である。人間の生命が大切という観点に立てば、法による権利行使は議論する余地はない。
どうか、これ等のことを考慮し、薬事行政に係わる文献複写、特に10頁目の審議の状況3に記載の、医療現場における医師薬剤師等が自らの研究・治療のために、医薬品等製造販売業者は医薬品等の適正使用に必要な情報を提供するために、関連する研究論文等を複写し、調査し、医療関係者へ頒布・提供することについては、著作権の権利制限の中に入れるよう、患者の立場から要望します。

「○問題の所在」の3についてですが、このような行為も、医師、薬剤師を始めとする医療関係者が、必要とする情報をタイムリーに収集し使用し、国民の生命・健康の維持・追求を図るという公益的見地から求められているものですが、現在、我が国で、著作権の許諾を得る手続きが確立していないため、情報提供活動に支障を来たしております。そこで、このような目的をもつ文献等の複写についても、著作権の免責に入れるべきと考えます。

3については権利制限する必要はないと考えます。
理由・・複製部数及び頒布先が特定されないことによります。

医療の現場において薬剤師等が医薬品の適正使用に必要な情報の提供を受けることについて、権利制限(第42条)を認めていただきたく、以下の意見を述べさせていただきます。
医療現場の日常において、取り扱う医薬品にその適正使用情報が伴っていない場合は、その医薬品を使用することはできません。「疑わしきは使用せず」の医療の世界においては、医薬品が使用される間中を通して産出される適正使用情報は重要であり、検証可能で再現性の高い文献情報は重要な情報源となっています。
 一般的な医薬品情報は、当該医薬品に係わる添付文書、総合製品情報概要、医薬品インタビューフォームなどから収集(医薬品医療機器情報提供ホームページ等から入手)できます。しかし、医療の現場においては患者の病態に適した個別の薬物治療が不可欠であり、一般的な上記のような情報源以外にも、患者に最適な薬物治療を行う根拠となる資料の一つとして文献の活用は不可欠といえます。
特に、緊急性が求められる患者の薬物治療においては、迅速に、安全性情報を収集・評価することが必須となっています。
根拠となる最新の文献情報を入手することは、患者に安全な医療を提供する医療関係者の責務であり、現場の薬剤師のみが医薬品情報を収集するだけでは不十分であり、製薬企業の方にも緊急に医薬品情報の提供を求めざるを得ません。具体的には、次のような場合、迅速に研究論文を入手し活用することは不可欠の状況にあります。
*小児薬用量が医薬品添付文書に記載されていない医薬品使用の場合
*妊婦・授乳婦へ医薬品使用の場合
*肝機能低下・腎機能低下が認められる患者への医薬品使用の場合
*医薬品インタビューフォームに未記載の適正使用情報(安定性・配合変化・吸着など)
*緊急に適応外使用とならざるを得ない倫理審査用資料作成の場合
・承認の投与経路以外での使用の場合
・承認の効能効果以外での使用の場合
・未承認薬の使用の場合
・新しい治療法以外に救命が困難である場合など
*当該医薬品の有害事象発生に係わる情報など
以上のことから、医療において必要な文献等の情報収集に権利制限を認めていただくことを強く希望します。

「文化審議会著作権分科会法制問題小委員会審議の経過」(以下「審議の経過」といいます。)では、薬事行政に関し3項目について著作権制限の拡大をご検討されていますが、そのいずれも著作権制限を拡大すべき理由は存しないと考えます。
確かに、国民の生命、健康への被害を未然に防止することは重要なことです。
しかし、「審議の経過」の中で論じられている3項目は、いずれも製薬会社が責任を負うべき自社製品の安全性等に関する情報提供について、他人の著作物を利用しようというものです。自らの製品の安全性についての情報提供義務は、製薬会社自身が負うべきであり、著作権者が義務を負うものではありません。
また、著作権法30条以下の著作権制限規定をみても、財産上の利益につながる著作物の利用について、著作権を制限することはほとんどありません。そして、財産上の利益につながる著作権制限を定める例外的場合(33条、34条、36条)でも無償での利用を認めた例はないと思われます(33条2項、34条2項、36条2項)。
したがって、製薬会社が自らの製品を販売するための承認手続や自らの製品の安全に関する情報提供等、営業上の利益のために著作権を制限するというのは、著作権法体系上、相当ではないと考えます。

第3の項目の「医薬品等の適正使用に必要な情報を提供するための複製」についても、医薬品を販売する上で営業上必要な行為です。営業上必要な行為について著作権を制限することは、著作権法体系になじまないと思われます。
また、文献のコピーの利用については、日本複写権センター、学術著作権協会等が複製許諾手続を用意しているところであり、著作権制限をしなければ著作物を複製できないわけではありません。例え、すべての文献がこれらに複製許諾を委託していないとしても、このような著作権者の努力こそ支援すべきであって、問答無用で権利制限をしてしまうことは適切ではないと思われます。

特に、医学・薬学文献の著作権者は、自らが副作用情報等を必要とする人となる可能性が高いと思われますので、文献複写の許諾システムを構築しやすい条件があるのではないでしょうか。
しかも、仮に薬事行政に係るこれらのケースについて、著作権制限を拡大しても、大して実益があるようには思われません。
営利企業である製薬会社は、その事業活動において文献複写をする場合の多くが著作権者の許諾を要するのですから、「審議の経過」で検討されている3項目について著作権の制限が認められたとしても、日本複写権センターや学術著作権協会等との包括契約が不要になるわけではありません。したがって、新たに権利制限が設けられた複製について、どう勘案して複製使用料を設定したら良いのかという問題を惹起するだけで、いたずらに問題を複雑にするように思われます。
また、ベルヌ条約の求める「著作物の通常の利用を妨げず、かつ、その著作者の正当な利益を不当に害しない」という条件に矛盾しないとしても、それは条約違反に該らないというだけで、現行法上の著作権に新たな制限を設けることを正当化できるものではありません。
なお、現時点で民間の許諾システムが不充分であるため、著作物複製の許諾を得ていては、国民の生命、健康に被害が生じるおそれがあるのかもしれません。しかしその場合には、緊急非難(刑法37条)に該当し刑事責任は生じないと考えることもできます。
もっとも、民法上の緊急避難(民法720条2項)は「他人の物」から生じた危難でなければなりませんから、製薬会社が自社の製品に関する副作用情報を提供する場合には該当しません。しかし、製薬会社が自ら招いた国民の生命、健康への危難なのですから、副作用情報提供の費用は製薬会社自身が負担すべきであり、著作権者が負担する理由はありません。むしろ、製薬会社が無許諾複製について複製使用料相当額の損害賠償責任を負うのは当然であると思われます。
したがって、著作権の制限によるのではなく、著作権者の許諾が迅速に得られるようなシステムの構築を支援することのほうが適切だと考えます。

要望事項の13について、いずれも権利制限を認めることは妥当とは思われない。国民の生命、健康への被害を未然に防止するという観点を考慮したとしても、42条で行政の内部資料としての複写を認めていることを敷衍させて、権利制限を行うことは適切ではない。そもそも製薬企業が公共の福祉に貢献する要素は当然あるとしても、私企業である以上、利潤を追求するのであるから、その責任と負担で複写利用すべきものである。
また、「権利制限を認めたとしても、権利者にとっても結果的に被る制約は現状と同程度であると考えられる。したがって、権利制限を認めても、著作物の通常の流通を妨げず、かつ、著作者の正当な利益を不当に害することにはならないと考えられる。」とのコメントは、何を根拠に述べているのか理解できない。現状で行われている複写の実態を調査もせず、また、製薬業界にその具体的な利用状況のデータの提出・報告を求めることなく、権利制限が必要あるいは望ましいというような判断はどこから出てくるものなのか、到底納得できるものではない。
さらに、「権利者の許諾を得るのに時間がかかりすぎる」ということが要望の理由として挙げられているようであるが、実際は現在の複写権管理団体においては事後申請で運用されており、大部分の場合そのようなことはないといえる。行政としては、現在の複写権管理団体を通して必要な手続きをして利用するよう、製薬業界を指導することこそが必要なことであろう。

2.3医薬品製造業者による医薬品の適正使用に必要な情報提供に伴う複写については、1行目に、「国民の生命・健康を守るために、薬事法に規定された努力義務を果たすために行われる医療関係者への情報提供であり、複製したものが複製物から直接的な利益を得るものではないことから、権利制限に賛成する意見があった。」とある。製薬企業にとって著作複製物の提供は、医薬品の「生命の安全」を客観的に証明し、保証するために不可欠なものである。情報提供が製薬企業としての責務であるとしても、これらの情報提供は、企業の信頼性の向上、ひいては販売の増大につながる重要な役割を果たしている。複製物から直接的な利益を得るか否かは問題とすべきことではない。
3.10ページ下から3行目、「権利者の許諾を得るのに時間がかかりすぎるのではないか、権利者が探索できない場合は利用ができず、結果的に患者にしわ寄せがいくのではないか」との意見については、その著作物が管理著作物である限り管理団体の検索機能を利用すれば、瞬時に権利者を見つけることができる。これまで事前、事後等の事由によって許諾を拒否した事例はない。さらに、日本複写権センター、日本著作出版権管理システム、学術著作権協会の管理団体ではそれぞれ著作物を検索するシステムを構築中であり、今後、利用者の利便性はさらに改善される。
4.「権利者が探索できない場合」についても権利を制限すべきではないが、集中処理機関に代表されない著作権者に対しては、その分野の集中処理機関が許諾できるような法を整備すれば対処できる。北欧の例では、著作権者が不明の場合、または見つけ出すのが困難な場合は、管理団体が使用料を一定期間預かり、その後、その供託金は他の権利者への分配等に使われる。複製した者は、複製によって権利者に与え得る損害に対して免責される(ノルウエーのRROへの問合せに対する返答による)。
5.11ページ上から4行目、「仮に権利制限するとした場合でも、複製部数が多いために権利者への影響が大きく、無償とすることは困難ではないか」と報告されているが、薬事関連複写を権利制限した場合は、本会に委託している権利者は重大な不利益を蒙る。
本小委員会の審議では、権利制限により権利者が蒙る不利益について権利者および利用者の持つ事実に基づく論議が不充分である。
本会の2004年の管理事業において、薬事関連複写が複写枚数ベースで全体の45パーセント、受取使用料ベースで全体の61パーセントを占める。2004年度の受取使用料総額は国内、海外著作物合わせて5億6千万円であるが、薬事関連複写が権利制限された場合は、その61パーセント、3億4千4百万円を失うことになる。(下表)
本会の複写許諾事業に占める薬事関連複写許諾事業の割合(2004年)

  本会全体複写A 薬事行政関連複写B B/Aパーセント
複写許諾した枚数 1800万枚注釈1 810万枚注釈2 45パーセント
許諾料収入(受取使用料) 560百万円 344百万円注釈2 61パーセント
注釈1複写権センターでの包括許諾受入使用料中の本会委託著作物分を複写ページ数に換算したものを含む
注釈2日薬連傘下の製薬企業が行った複写実態調査の結果による複写枚数と支払われた使用料

6.上記表の薬事関連複写枚数810万枚は、9月30日の法制問題小委員会で日薬連担当者が述べた4社による薬事関連の年間複写枚数150万枚とどのように符合するか不明であるが、いずれにしろ他の管理団体の医歯薬関係の管理著作物の複写枚数を合わせると膨大な量が複写される。これが権利制限の対象になれば、権利者は多大な損害を蒙る。日薬連担当者は、薬事法関連の複写部数は原則1回につき1部であると述べたが、前記の日薬連が関与した複写実態調査では、雑誌1タイトルについて平均年間300論文、複写が多いタイトルについては雑誌1タイトルで延べ21,000論文が複写される勘定であった。ベルヌ条約第9条(2)の「著作物の通常の流通を妨げない」に抵触することは明らかで、国際的にも強い批判を招くことになろう。
このように薬事関連複写の権利制限は、権利者が蒙る直接的な損害のみならず、それ以外の分野の企業との許諾契約にも影響し、本会の管理事業団体としての運営も重大な支障を受ける。
7.今回の権利制限に関する流れは、ベルヌ条約第9条(2)にも違反するもので、国際的にも強い批判を招くことは必至であり、国際間の紛争の種となることが懸念される。

<下記についての権利制限を要望いたします。>
3)医薬品等の製造販売業者は医薬品等の適正使用に必要な情報を提供するために、関連する研究論文等を複写し、調査し、医療関係者へ頒布・提供することについて

<理由>
・国民の生命・利益を守る上で必要な情報提供であり、極めて公共性が高い。
・複製される論文は、定期刊行物として発行されている学術誌に掲載されており、その学術誌の多くは複製を行う製薬企業が事前に定期購読している場合が多い。したがって、複製を定期購読の代替として利用されることはなく、著作物の流通や学術誌の販売などに悪影響を与えるとは思えず、ベルヌ条約第9条にも抵触しないと考える。
・また、現行の著作権許諾システムは、複製対象となる著作物の網羅性の欠如、事務的手続きの煩雑さと、権利許諾機関ごとに異なる許諾方法という実態があり、十分に機能していない。このことを考慮すると薬事法関連での複写とその頒布・提供を現行の著作権許諾システムを通して権利処理することは、かえって緊急性のある生命と健康にかかわる情報の提供を阻害することになる。
・また、現行の著作権許諾システムでの処理実績には、薬事法関連以外の処理実績も含まれており、例え薬事法関連の権利制限を行っても、現行の著作権許諾システムそのものを否定することにはならない。
・さらに、薬事法関連で複写される論文は、同一論文の複数部数大量複写ではなく、必要に応じて個々の論文を複写するので、海賊版のような違法複製行為につながることはない。
・20部以上の複製は著作権者からの直接の許諾を要するもので、管理事業団体の関与は無い。また、このケースでの著作権者拒否事例は見聞していない。

3について、権利制限を認めていただきたいと思います。
無償とすることに懸念があるのでしたら、許諾システムが速やかに適正に機能するよう組み立て直していただきたい。
すなわち、
・管理団体は一本化する。
・全ての国内外出版物について、その管理団体が一括して取り扱う。
・管理団体あるいは出版社が中間搾取によって膨大な利益を獲得するような料金設定は許可しない。
現状ではどの出版物が、いつの発行から、どの団体に管理されているのかすぐにわかりません。
また、全ての出版物が管理団体によってカバーされているわけではありません。
医療の現場では「時間」が生死を分かつ場面も多々ございます。
医学文献・医学情報は流通を妨げず、医療現場で実際に利用されることこそ、その使命を果たすものと認識しております。

[意見]12及び3については、権利制限することが適当と考えます。
理由・・人の生命及び健康への重大な影響を未然に防止するため、医薬品と同様に医療機器の製造販売承認申請時等において、医療機器の品質、有効性及び安全性の確保を担保するための研究論文等の複写を作成し、行政へ提出すること及び医療機関への研究論文等の複写を作成し、情報提供することは、公益の目的に適うものであるため。
特に1及び2については、提出先及び提出部数も限定されること、3については一文献あたりの複写は通常一部であることから、著作権者の正当な利益を不当に害することにはならないと考えられる。

「問題の所在」1から3のいずれも権利制限を行うことが必要であると考える。
3に関しては、権利者への影響が大きく無償とすることは困難ではないかとの意見が紹介されているが、著作権とは国民の生命・健康といった利益と比較考量したとき、優位すべきものなのか、疑問である。加えて、そもそもここでいう「権利者」の多くは、著作物の真の創作者から強制的に権利を剥奪することによってその地位を得た者であって、かかる「権利者」の利益を保護するために、医薬品等の製造販売業者による情報提供に係る努力義務履行を消極ならしめる結果を招来することは不適当である。

3医薬品等の製造販売業者は医薬品等の適正使用に必要な情報を提供するために、関連する研究論文等を複写し、調査し、医療関係者へ頒布・提供することについて
いくら優れた医薬品が開発されても、その使用方法が適正な方法で使用されなければ、本来の効果が発揮されません。医療行為が実施される末端の医療機関の医師や看護師に研究論文等の情報が正確に、迅速に提供されることが必要です。これらの情報が営利行為という側面以上に、国民の健康・生命を守り、医療の質を向上させ、科学的知識の普及を通じて、学問の発展に寄与していることも考慮すると、権利制限をして頂くことに賛成致します。

■「3医薬品等の製造販売業者は医薬品等の適正使用に必要な情報を提供するために、関連する研究論文等を複写し、調査し、医療関係者へ頒布・提供すること」について、「審議の経過」10頁に「国民の生命・健康を守るために、薬事法に規定された努力義務を果たすために行われる医療関係者への情報提供であり、複製した者が複製物から直接的な利益を得るものではないことから、権利制限の対象とすることに賛成する意見があった。」とある。
「医療関係者への情報提供」の必要性は認めるものの、医療関係者への情報提供は主に製薬企業が顧客である医療従事者を対象に自社製品の販売促進、各種サービスの一端として情報提供されるものと推測される。さらに製薬企業による「医療関係者への情報提供」内容の多くは、医学専門書誌出版社発行物からの複製(複写)物であり、複製は膨大であると思われる。
■「審議の経過」10-11頁に「医薬品等の製造販売業者による情報提供が果たしている社会的役割にかんがみ、権利者側においては、利用者側の利便への一層の配慮が求められる。」とあるが、我々医学専門書誌出版社発行物の多くは、学術研究およびそれに伴う医薬品の情報を扱ったものであり、「医療関係者への情報提供」と目的を同じくするものである。
製薬企業によって小部数発行である医学専門出版物が複製され、無償で医療従事者に提供されることが法的に認められると、医学専門書誌出版社にとっては販売部数に甚大な影響があり、継続発行は困難になる。これらの複製を権利制限の対象とすることは著作物の通常の利用を妨げ、著作者、出版社の正当な利益を不当に害することになり、明らかにベルヌ条約第9条第2項に違反するものと考える。
■「審議の経過」10頁に「権利者の許諾を得るのに時間がかかりすぎるのではないか、権利者が探索できない場合は利用ができない。」については、我々は複写利用を拒否しているのではなく、著作者との契約により著作権者として発行物のすべてを日本著作出版権管理システムはじめ複数の文献複写業者に管理を委託しており、「権利者の許諾を得るのに時間がかかりすぎる」ことは全く該当しない。また、文献検索は独立行政法人科学技術振興機構や特定非営利活動法人医学中央雑誌刊行会などの活動によって保証されており、さらに多くの複写文献提供業者(DS ドキュメントサプライヤー)から複写文献の入手も可能となっている。さらに、当社の所属する日本書籍出版協会、自然科学書協会では会員社に対し文献複写管理者の利用を進めている事実にかんがみても、「権利者の利用や探索ができない」という指摘はあたらないものと考えられる。

薬事行政に係る権利制限に関して、
1承認・再審査・再評価制度において、申請書に研究論文等を添付する必要があるため、研究論文等の複写を作成し、国等に提出すること
2副作用・感染症報告制度・治験副作用報告制度において、期間内に副作用等の発現に係る研究論文等の複写を作成、調査し、国等に提出すること
3医薬品等の製造販売業者は医薬品等の適正使用に必要な情報を提供するために、関連する研究論文等を複写し、調査し、医療関係者へ頒布・提供すること
について、議論されています。
これらは、薬事法で規定される医薬品、医薬部外品、化粧品及び医療機器(以下、医薬品等という)の使用によってもたらされる国民の生命、健康の被害を未然に防ぎ、医薬品等の品質、有効性および安全性を確保するために、「医療関係者」および「医薬品等の製造販売業者」に課せられた制度に関連しています。すなわち、製造販売を行う医薬品等の承認・再審査・再評価手続における申請書への研究論文等の添付(1)、医薬品等の副作用や感染症発生、治験に関する副作用の報告義務(2)、医薬品等の適正な使用のための情報の収集、提供(3)に関連しています。

一方、3については両論が併記されておりますが、医薬品等の適正な使用のための情報の収集、検討、利用、提供は、医療関係者と製造販売業者との共同作業であり、医薬品等を使用する国民の福祉、健康向上の観点からすれば、研究論文等の流通が妨げられるものであってはならないと考えます。したがって、権利制限の対象とする方向に賛成しますが、合意が得られない場合は、
権利者・利用者双方にとってバランスの取れた「研究論文等の流通促進システム」をご検討くださるようお願いします。

これまでに2度要望を提出させていただいておりますが(添付資料参照)、この度も日本製薬団体連合会から提出されております意見書の内容に前向きの対応をしていただくよう、要望いたします。
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著作権法改正に関する要望事項
要望の趣旨 医薬品の適正使用にかかる情報の収集、提供については、医師、薬剤師などの医療関係者及び薬事法で義務の課せられている製薬企業の行為をその公益的見地から著作権の適用除外とすべきである。
法改正を必要とする理由 医薬品の適正使用とは、まず、的確な診断に基づき患者の状態にかなった最適な薬剤、剤形と適切な用法・用量が決定され、これに基づき調剤されること、次いで、患者に薬剤についての説明が十分理解され、正確に使用された後、その効果や副作用が評価され、処方にフィードバックされるという一連のサイクルと言える。人の生命・健康に関わる医薬品は単なる化学物質ではなく、適切な情報が付帯されてはじめて医薬品としての存在価値が生じ、医療上貢献できることとなる。したがって、医療現場における医師や薬剤師は適正な医薬品情報を常にタイムリーに得られなくてはならない。
この医薬品情報については、諸外国においては、医師・薬剤師が自ら文献等の情報を検索し、タイムリーに正確な情報として、その複製物を入手している。このような医師・薬剤師の行為は、当然、医療行為の一環として行われるものであり、イギリス、ドイツ、スペインでは、著作権法の除外となっている。またアメリカにおいても、Fair Useに該当するものと考えられる。
一方、わが国においては、医師・薬剤師の行為が著作権法の適用除外とはなっておらず、また前記、医薬品情報の入手については、医師・薬剤師よりも、より迅速に多くの情報を収集できると考えられる製薬企業に情報収集、提供義務が薬事法で課せられている。

前述のように医薬品の情報は、医療現場における医師や薬剤師に迅速に提供されなければならず、正しい情報を迅速に提供されることが公益にかなうものである。情報提供義務の課せられた製薬企業としては、正しい情報を迅速に提供するために、文献等の複製物を提供している。これら義務の遂行には、迅速性、正確性の面から複製物に頼らざるを得ない状況であるが、著作権法の規定に従って、事前に複製の許諾を得ることは不可能であり、許諾を条件とすると迅速な情報提供ができなくなってしまう。これは、正確な情報が迅速に提供されることにより医薬品が適正に使用され、その有効性・安全性が保たれ、国民の生命・健康を守るという薬事法の法目的が達成されないこととなってしまうことを意味するものである。さらに、国民が生命を維持し健康を追及することは、基本的人権として憲法によって保障されているものであり、そのような権利さえも脅かすことになりかねないものである。
日本の著作権法にFair Useの考えが導入されていない以上、上記のような医薬品の適正使用にかかる情報の収集、提供について、医師、薬剤師などの医療関係者及び薬事法で義務の課せられている製薬企業の行為をその公益的見地から著作権の適用除外とすべきである。
ちなみに、我が国の特許法第69条第3項においては、医師・薬剤師による調剤行為は、患者たる国民の健康を回復せしめるという特殊な社会的任務に係るものであることなどを考慮して、特許権の効力が及ばない範囲とされている。
改正条項及び内容著作権法制限規定を新設
薬事法の規定により医薬品の適正使用にかかる情報を収集、提供する場合必要な範囲において資料等を複製、譲渡及び公衆送信することができる。また、当該複製、譲渡及び公衆送信する行為は委託することができる。

■「3医薬品等の製造販売業者は医薬品等の適正使用に必要な情報を提供するために、関連する研究論文等を複写し、調査し、医療関係者へ頒布・提供すること」について、「審議の経過」10頁に「国民の生命・健康を守るために、薬事法に規定された努力義務を果たすために行われる医療関係者への情報提供であり、複製した者が複製物から直接的な利益を得るものではないことから、権利制限の対象とすることに賛成する意見があった。」とある。
「医療関係者への情報提供」の必要性は認めるものであるが、医療関係者への情報提供は主に製薬企業が顧客(医療従事者)を対象に自社製品の販売促進、各種サービスの一端とした情報提供が多いと思われる。さらに製薬企業による「医療関係者への情報提供」内容の多くは、医学専門書誌出版社発行物からの複製(複写)物であり、複製は膨大であると想像される。
■「審議の経過」10-11頁に「医薬品等の製造販売業者による情報提供が果たしている社会的役割にかんがみ、権利者側においては、利用者側の利便への一層の配慮が求められる。」とあるが、我々医学専門書誌出版社発行物の多くは、学術研究およびそれに伴う医薬品の情報を扱ったものであり、「医療関係者への情報提供」と目的を同じくするものである。
また、医学専門書誌出版社は製薬企業に比べて規模も小さく、それぞれの書誌の読者対象が限られるため発行部数も一般書誌と比べると非常に少部数発行が現状である。
製薬企業によってこれらの出版物が複製され、無償で医療従事者に提供されることが法的に認められると、医学専門書誌出版社にとっては販売部数に甚大な影響があり、継続発行は困難になる。これらの複製を権利制限の対象とすることは著作物の通常の利用を妨げ、著作者、出版社の正当な利益を不当に害することになり、明らかにベルヌ条約第9条第2項に違反するものと考える。
■「審議の経過」10頁に「権利者の許諾を得るのに時間がかかりすぎるのではないか、権利者が探索できない場合は利用ができない。」については、我々は複写利用を拒否しているのではなく、著作者との契約により著作権者として発行物のすべてを日本著作出版権管理システムはじめ複数の文献複写業者に管理を委託しており、「権利者の許諾を得るのに時間がかかりすぎる」ことは全く該当しない。
■医学研究の進歩は医学専門書誌抜きには不可能であり、その複製物を利用する製薬企業だけが潤い、医学専門書誌出版社が存続の危機にさらされるようなことはあってはならないと考える。

3医薬品等の製造販売業者は医薬品等の適正使用に必要な情報を提供するために、関連する研究論文等を複写し、調査し、医療関係者へ頒布・提供すること」について、「審議の経過」10ページに「国民の生命・健康を守るために、薬事法に規定された努力義務を果たすために行われる医療関係者への情報提供であり、複製した者が複製物から直接的な利益を得るものではないことから、権利制限の対象とすることに賛成する意見があった。」とある。しかし本件における医療関係者への情報提供の中身は製薬企業が製造販売している医薬品の適正使用にかかる情報である。従って上記1及び2と同様、製薬企業が医薬品の販売によって利潤を得ている以上、製薬企業が薬事法に規定された情報提供の努力義務を果たすのは当然の義務であり、その義務の履行のために必要なコストは当然のこととして製薬企業が負担すべきである。医薬品に限らず全ての商品が適正に使用されるために必要な情報はその製造販売者が使用者に対して提供すべきであり、製薬企業も、薬事法における情報提供の努力義務の有無にかかわらず使用者に対して必要な情報を、製薬企業の責任において企業の存続と利益確保のためにも提供すべきであることは言うまでもない。また、製薬企業は複製することによって直接的な利益を得るものではないが、こういった情報の提供によって医薬品の継続販売と適正使用が可能になることから、その販売によって利益が確保され、製薬企業が企業として継続存立することになる。

「審議の経過」10ページに「権利者の許諾を得るのに時間がかかりすぎるのではないか、権利者が探索できない場合は利用ができない。」とある。しかし、多くの権利者は複写利用を拒否しておらず、その権利を日本複写権センター、学術著作権協会、日本著作出版権管理システム等の管理団体に委託しており、利用者は事前に年間契約を締結すれば、包括的処理、あるいは事後の報告で権利処理を行うことが可能である。現在これらの管理団体は合計で医学系の学術専門書誌のうち、国内出版物について書籍約17,000点、雑誌約1,000点、海外出版物について書籍約124,000点、雑誌約8,000点の委託を受けており、薬事法にかかる複写利用も含めて年間で約9億円の複写使用料を徴収している。また、これらの学術論文のデータベース検索と複写サービスは複数の文献複写業者が提供しており、これらの文献複写業者は上記の管理団体の全てと複写利用契約を締結しているので、その利用によって複製物の入手とその権利処理が可能となっている。従って、「権利者の許諾を得るのに時間がかかりすぎるのではないか、権利者が探索できない場合は利用ができない。」という状況は殆ど存在しない。むしろ実態としては、製薬企業の多くは上記の文献複写業者を利用して必要な文献の殆どを入手しているが、製薬企業の一部あるいは多くは権利者が設定する複写使用料が高額であるとしてその支払を拒否している状況にある。本件において要望されている目的を果たすために利用者の便宜を図ることは重要であるが、それは権利制限ではなく、文献複写サービスと複写管理団体が全ての需要に応えられる体制を確立することによって達成すべきである。

「審議の経過」10-11ページに「医薬品等の製造販売業者による情報提供が果たしている社会的役割にかんがみ、権利者側においては、利用者側の利便への一層の配慮が求められる。」とあるが、医学系の学術論文を掲載している医学専門誌も医学研究、臨床報告等の医学の進歩と生命の維持に欠かせない情報を提供しており、その社会的役割と使命は高い。医学研究の進歩は医学専門誌抜きには不可能であり、その意味では医薬品の開発と両輪を成している。製薬企業と医学専門誌出版社は医学研究において医療従事者を中心として役割分担を行っており、双方ともに配慮が必要である。医学専門書誌は医薬品の効果、安全性、その他の医薬情報を含む最新の医療技術を医療従事者に提供することをその出版目的としており、その販売対象は通常医療従事者以外には想定できないものである。製薬企業によってこれらの出版物が複製され、無償で医療従事者に提供されたのでは医学専門書誌出版社にとっては販売の道を閉ざされてしまい、継続発行は困難になる。厚生労働省は本件にかかる複写量を明らかにしていないが、一般的に、製薬企業によるこれらの複製は膨大であり、業界全体で年間数千万ページの複写が行われているとも言われている。これらの複製を権利制限の対象とすることは著作物の通常の利用を妨げ、著作者、出版社の正当な利益を不当に害することになり、明らかにベルヌ条約第9条第2項に違反する。

●上記について反対です。
●業者が重要な結果が示された研究論文をピックアップして大量に配布できることになれば、読み手側は雑誌をわざわざ講読しようと思うでしょうか。販売部数が落ちることが予想されます。
●業者が直接的な利益を得ないとしても、「複写代の免除」という間接的な利益があり、出版社が不利益を生じるのは明白。雑誌の質の維持に影響が出たとき、結局は国民の不利益に繋がる恐れがあるのではないでしょうか。
●「権利者の許諾を得るのに時間がかかりすぎるのではないか」というが、時間がかかりすぎるというのは具体的にどの程度を指すのでしょう。
「日本著作出版権管理システム」では、ホームページ上で簡単に手続きを行なうことができるようです。業者に手続き面での不便をかけるとは思えません。

1これらの審議過程においては、医薬品製造業者の医療関係者への提供だけが対象となっているかのような印象を受ける。薬事法第77条の3については、医療関係者(医師、薬剤師)が薬の適正使用、安全性や有効性の確認のために、自ら学術文献を収集し、複写し、使用することも対象としており医療全体に係わる問題であるが、この部分の記載がない。
これでは、制限の対象が薬の製造販売業者の行為としてのみ検討されていることになり、医療関係者の行為が対象となっていないのは問題と考える。
なお、昨年の第3回法制問題小委員会で資料3として配布された「著作権法改正要望事項に対する各府省の意見について」の中の「著作権法改正要望事項に対する意見について(回答)」(厚労省提出)には、本件問題が製薬企業だけの問題ではなく、医療関係者全体の問題として回答されている。また、本年度第4回法制問題小委員会議事録にも記述されている。
2)11頁上から2行目の但し書き「ただし、権利制限を認めた場合、複製主体も頒布先も特定されておらず、学術論文全部分の複製になることも予想され、かつ部数も多数になる可能性があることから、慎重な検討が必要ではないかとする意見があった。また、仮に権利制限するとした場合でも、複製部数が多いために権利者への影響が大きく、無償とすることは困難ではないかなどの意見があった」及び11頁下から2行目「著作物の通常な利用を妨げず、かつ、著作者の正当な利益を不当に害しないことを条件として、権利制限を認めること等について、検討を行うことが適当である」に関して
1学術文献においては、1つの論文全体を複写することは通常行われていることであり、学術文献を利用する側にとっては必要なことである。学術文献の通常の利用において、一冊の雑誌全部を複写することは考えられないことであり、医療現場において医師、薬剤師等が必要とするのは、最適な治療を行うためにそれぞれの患者の病態の理解と病態に合わせた適切な診断と治療法の選択に必要な情報や他剤との相互作用や副作用等の必要な情報が記載されている文献のみであり、それは通常1部を自ら複写するか製造販売業者等に依頼するものである。個々の著作物の複製部数は通常1部であり、特定の権利者に大きな影響が出る(権利者の利益を不当に害する)とは考えられない。
2現在、製薬会社等では医学薬学関連の雑誌を購入しているが、これは薬事法第77条の3の情報提供義務履行に対応するために購入しているわけではないので、薬事法第77条の3の情報提供にかかる文献の複写について、著作権の権利制限の対象となったからといって、雑誌や書籍の購入に影響を与えることは考えられない。
また、欧米の出版社の中には、一定期間以前の雑誌の文献をホームページで無償で一般に公開しているところもあり、文献の複写が行われると出版そのものに影響が出て、成果の発表の場がなくなるというような考えは相当でない。さらに、薬事法第77条の3の情報提供にかかる文献の複写について、著作権の権利制限が認められたとしても、他の理工系分野と同様に研究開発等の社内利用のための複写はそのまま残るわけであり(基本的に他の分野では社内利用のための複写が主である)、他の分野の社内利用のみ複写使用料が支払われているという状況であっても専門誌は発行が維持されていて、発表の場が無いなどの問題が生じているということはない。また、現存の著作権の管理団体についても、本件権利制限が認められたとしても、上記のように他の分野と同様に製薬企業の社内利用のための複写は残り、当該社内利用にかかる複写料収入は維持されることになる。
このように、本件権利制限により出版が影響をうけるということはなく、また著作権の管理団体のシステムそのものが無くなるような影響も無いと考えられる。したがって、本件権利制限が認められたとしても、著作物の通常な利用を妨げず、かつ、著作者の正当な利益を不当に害しないと考えられる。
3医学系学術文献(原著論文)については、殆どの著作者は、自ら掲載料を支払ってでも自分の研究成果や治療体験を公表することにより、多くの関係者に評価され、より多くの患者への最適な治療の提供に活用されることを望んでいる現状をよく理解して頂きたい。

3)11頁の「現在、権利者側は、著作物の複製利用促進の観点から、日本複写権センター、学術著作権協会並びに日本著作権出版権管理システム等の管理団体に対して複写にかかる権利の委託を行い、利用者に許諾を与えると同時に利用料を徴収し、権利者に分配するという、権利委託と許諾システムに積極的に取り組んでいる。したがって、当面は、構築されているシステムが利用料の徴収の観点から有効に機能していくか注視することとするが、現状のシステムの下では、製薬会社による情報提供に支障がでる状態にあると思われることから、著作物の通常な利用を妨げず、かつ、著作者の正当な利益を不当に害しないことを条件として、権利制限を認めること等について、検討を行うことが適当である」に関して
1薬事行政に関わる事項は、学術文献の社外利用だけであり、社内利用については問題とされていない。したがって、社内利用だけを取り扱っている日本複写権センターを本件対象の管理団体として取り上げるのは適切ではないと思われる。
また、著作権等管理事業法に基づき登録を受けているのは、学術著作権協会のみであり、日本著作出版権管理システムは、非一任型の管理団体であり、利用者側との条件協議は困難な状態にあることを理解して頂きたい。
2上記のように、管理事業法に基づき、利用者側からみて現実に処理可能な包括契約にて利用料を徴収しているのは、学術著作権協会のみであり、国内文献に関しては10パーセント程度しか管理できていない。また過去及び現在も著作者に著作権が留保されている文献については、管理団体として何ら権利委託に向けた努力が行われていないばかりか、著作権を持つ著作者の合意も得ずに一方的に著作権を管理する旨の宣言をして、出版社が著作権の管理委託を行っているものも見受けられる。このような状況では、許諾システムがうまく機能しているとはいえず、現状のままでは、今後改善されうまく機能する見込みも全く無いと言わざるを得ない。
3現状のシステムのままで製薬会社による情報提供に支障がでる状態とあるが、医療機関に関係する医師、薬剤師による薬事法第77条の3の義務履行(学術文献の収集、複写および活用)にも支障がでる状態といえる。

4)11頁下段の出版物の委託状況を示した表および12頁の日本複写センターの権利者と利用者一覧表に関して
1日本複写権センターは社内利用を対象としたものであり、当該一覧表に表示することは誤解を生じさせる。
2当該一覧表に記載されているものが、本件の対象とするかの如く受け取られる恐れがあるが、本当に真の権利者から委託を受けているものかどうか定かでない。
以上から、社会的責任の大きい生命関連企業の団体として、国民の生命と健康を守るため薬事法と文化の発展に寄与する著作権法の両方を遵守しつつ、必要な情報を調査し当局への報告・申請や医療現場への情報提供が迅速に実施できるよう、「審議の経過」で1.(3)にあげられた部分について権利制限に組み入れられることを強く要望致します。

「3)医薬品等の製造販売業者は医薬品等の適正使用に必要な情報を提供するために、関連する研究論文等を複写し、調査し、医療関係者へ頒布・提供すること」に関して、反対の意を表します。
いま「国等への迅速な情報伝達により国民の生命、健康への被害を未然に防止するという観点から、権利制限を行うことが必要」として、多くの学術論文や医学専門書籍、雑誌の記事をいま製薬会社へ「無償で許諾なく複写してもよい」と権利拡大されようとしています。
医学書専門書誌が対象とする読者数は限られており、また一書誌の対象専門読者数は少ないため、一書誌の発売部数は一般書と比較すると非常に少部数となります。また医学書専門出版社は製薬企業に比べると規模が小さく、製薬企業が無償で医療従事者に書誌を複写し提供されることが法的に認められたならば医学専門出版社としては企業の存続に大きな影響を及ぼすことになります。
著者、出版社が人をかけ、時間をかけ、費用をかけ出版内容を精査し、ようやく医学、医療に役立つ本を発行しても、無償・無断でコピーされては出版社の経営は成り立たなくなりますし、わが国の医学・医療の進歩、発展にもつながらなくなります。

3については、権利制限は認めるべきではなく、現行制度のなかで(日本複写権センター)活用の仕方、費用等のあり方を検討すべきであると思います。
また、このような問題は、薬事行政だけではなく、他の許認可申請における添付・疎明資料の複写提出にも影響がでてくると思われますので慎重な対応が必要であると思われます。

「○審議の経過」にも記述されているとおり、薬事法では、医薬品の使用によってもたらされる国民の生命、健康への被害を未然に防止することを目的として、医薬品の品質、有効性及び安全性を確保するために必要な情報の収集、評価、報告、使用、保存を行うことを、製薬企業と医療関係者に義務付けている。
「○問題の所在」の3(医薬品等の製造販売者が医薬品等の適正使用に必要な情報を提供するために、関連する研究論文等を複写・調査し、医療関係者へ頒布・提供する行為)についても、権利制限の対象とすべきである。
かかる行為も、医薬品が適正に使用されることを通じて、国民の生命・健康の維持・追求を図るという公益的見地から必要とされる。医薬品は、適正に使用されて初めて「医薬品」としての存在価値が生まれ、国民の健康に寄与できるものである。そして、医薬品が適正に使用され、その効能・効果を発揮するためには、正確な情報が医療関係者や患者に適時・適切に伝わっていなければならない。のみならず、このような情報の伝達を欠けば、患者の生命・健康に被害を及ぼし得るものである。したがって、医師、薬剤師を始めとする医療関係者は必要とする情報をタイムリーに収集し使用する必要があり、かかる情報の伝達、流通が些かでも阻害されることがあってはならない。
そして、正確な情報を迅速に提供することは、上述のとおり、製薬企業に課せられた義務であり、その正確性・迅速性を担保するためには研究論文等の複製による情報の提供が必須となる。
なお、当協会の知る限りにおいて、欧米においては、医療関係者等による文献複写は、フェア・ユースとして、実態上、著作権の効力は及ばない。また、製薬企業等に対し薬事法で情報提供義務を課すというのは、我が国固有の制度であるが、国民の健康福祉の観点から極めて優れた制度であり、その円滑な運用が望まれる。
したがって、「○問題の所在3」による文献等の複写についても、著作権の権利制限に入れるべきと考える。

3について、権利制限をすることに賛成です。
現況の権利処理機関では対応できない部分について、患者と直に接する医療従事者への情報提供は必須です。

審議経過報告書の10ページから始まる審議の状況3には、製薬企業から各医療従事者への学術論文の複製・提供について意見が提出されており、その多くは医療における医薬品情報の重要性をご理解され、権利制限を設けることにおおむね賛成されています。一方、複製主体や頒布先が特定されず、論文全部分の複製や部数が多数になることから無償とすることは困難であるとの意見も出されています。
医薬品に関わる情報は、医薬品として承認される前に収集された臨床試験の情報と、市販後の薬物治療の中で得られる有効性・安全性に関する情報がありますが、後者は半永久的に報告され続けるものであります。近年市販されている医薬品は、難治性の疾患に対して有効性が高い一方、副作用も多く、また高齢化社会に伴って複数の疾病に罹患している患者においては多くの薬剤が投与され、そのことが市販前には判明しなかった副作用や薬物同士の相互作用の原因ともなっています。薬剤師はこのような状況下において、医薬品の情報を常に収集し、適正な薬物療法を遂行するために努力しています。しかしながら、薬剤師一人一人の努力のみでは、膨大な医薬品情報の中から最適な情報を迅速に収集することは難しく、各医薬品の情報収集に努める製薬企業の力を借りざるを得ません。仮に権利者の許諾を得るのを待つのであれば、必要な情報を得るまでに長時間を要することが予想され、救える命も救えない可能性があります。医療は時に取り返しのつかないものであり、常に最善を尽くす必要があります。
しかしながら、権利者の有益性を優先することで失われる命があったのならば、遺族にとってまた関わった医療従事者にとって悔やんでも悔やみきれないことと思います。
大学において学生には、医薬品に関する情報は教科書や参考書などから安易に引用するのではなく、常に原著論文(学術論文)を読み、薬剤師として理解・評価するように教育をしています。しかし、大学病院のように図書館を有する医療機関では迅速な情報収集は可能でありますが、一般病院では製薬企業の力を借りなければなりません。また、インターネットの普及に伴い、海外の医学系雑誌の一部は出版社の厚意によりオンラインにて入手することは可能ですが、日本の雑誌のほとんどはオンライン入手が困難な状況にあります。

大学病院における医療は国内の最先端にあたりますが、ほぼ同等の医療が多くの公立病院・民間病院においても受けられるのが実情です。そこには各医療従事者の努力とともに、最新の情報を提供する製薬企業の努力があるからです。
医療従事者は常に最新の医薬品情報を収集し、臨床に適用していますが、このような努力を法律的に制限された場合に、不利益を被るのは患者です。薬は、有効性と安全性に関する根拠のある情報が具備されていてこそ医薬品として用いることが可能であり、その情報を権利者のために優遇することは公共の利益に著しく反すると思われます。従いまして私は、著作物の権利者の正当な利益を不当に害しないことを条件として、権利制限を認めることを強く望みます。

○権利制限の対象とすることには賛成である
○権利制限を認める場合は頒布先、複製主体を特定する枠を設けるべきではないのか。
○情報を最終的に受け取るのは患者であるので、その患者の不利益にならないよう、十分な検討を望む。

9月30日開催の法制問題小委員会におけるオブザーバー発言について
9月30日の法制問題小委員会において、厚生労働省及び日本製薬団体連合会から、複写の実態調査の一例が報告され、大手・中堅製薬メーカー4社では月間22,000件、13万ページ、年間で150万ページの複写が行われたとされます。また、その際の補足意見として、1回あたりの複写は1部との説明がありました。この実態調査の中身が不詳なので推測になりますが、1医療従事者が製薬メーカーに複写を依頼するのは1部であったとしても、文献単位で見た場合には1文献1部ではないと考えます。1文献について複数の医療従事者が複写を要請したならば、その総量は1部×複写要請者数となり、文献によっては数十部から数百部の複写がなされると考えられます。しかも、実態調査は4社とのことですから、製薬メーカー全体では1文献について膨大な数量の複写が行われているとみなさなければなりません。上記のデータでは、1文献あたり6ページ程度ですが、4社の150万ページは25万件になります。25万タイトルの論文が各1部ずつしか複写されない、ということは到底考えられません。当社の過去の実例をみても、1文献で数十部から数百部の複写報告というものが見受けられます。多くの文献がそれぞれ極めて大量に複写され、その総計が4社で150万ページになったと考えられます。したがって、この数量はベルヌ条約にいう「特別の場合であり」「通常の利用を妨げず」「著作者の正当な利益を不当に害しない」という規定に違反することは明白であると考えます。

「審議経過」には、1利用者が複写を希望する際、許諾の手続きに手間と時間がかかる、2管理委託されている著作物が明確ではない、3正当に権利が委任されているかの保証がない、等々の意見があります。当社は複写権に関する管理事業者ですが、このような問題は、事実誤認である、と強く主張いたします。当社では、事前に複写に関する基本的な利用許諾契約があれば、その都度の申請あるいは支払は必要なく、事後の利用報告に基づいて複写使用料の支払いを受けていること、また管理著作物については常時ホームページ上で公示し利用者の便を図っていること、また委託の条件として、著作権の譲渡を出版者が受けているか又は権利行使に関する委任を受けたものに限っていますので正当に権利行使をしている、以上が実態です。当社は文献複写業者(DS)9社・団体(医薬関係の文献複写に関してはすべてと言って差し支えありません)と複写利用許諾契約を締結しており、これらDSは学術論文のデータベース検索も行っています。したがって、製薬メーカーはこれらDSに対してデータベースの検索および複写を依頼すれば、個々の許諾申請をする必要もありません。実際に製薬メーカーの殆どはDSに文献の複写を依頼していますが、複写使用料の支払いを拒んでいることこそ問題であると考えています。また、製薬メーカーの社内業務用としての複写については著作権法上「私的利用」には該当せず(確立した学説です)当然に許諾の対象となり、当社では、このような社内利用に関する包括利用許諾も用意していますが、製薬メーカーは契約を保留している実態も合わせて理解いただきたいところです。膨大なる外部頒布に加え、社内での利用の面も併せ、権利制限の対象となることに反対せざるを得ません。

全般 医薬品などの情報を扱う医学系専門誌は、医学系の研究者や製薬企業などへの情報伝達を出版目的としている。しかるに薬事行政の必要性という理由で権利制限されることは、医書系の出版社にとって大きな損失になる。製薬企業が医薬品の販売によって利益を得ている以上、国や研究者に対する情報提供のコストは製薬企業が負担してしかるべきである。

医学系書誌を専門出版している出版社の出版物が、公共の利益という名目のために本来の読者であるドクターや医学研究者に無償で提供されてしまうならば、ただでさえ発行部数の少ない医書系の出版社はその経営基盤を失いかねない。その結果、著作者の発表の機会が損なわれることになり、医療情報の伝達に支障をきたすであろう。

出版物の複写に係る権利処理については、すでに複数の著作権管理団体が活動しており、当社でも株式会社日本著作権管理システムに対して権利委託を行っている。

薬事行政における情報提供が国民の健康に関わる重要な要請であることも理解するが、薬事行政において利用される専門書はもともと学術研究、医学医療といった公共の利益に適う場面で利用されることを目的に出版されている。私は医学系学術出版社で医学雑誌の編集・制作に従事しているが、臨床系の医学雑誌に多数掲載されている(新薬の治験も含まれる)『症例報告』『臨床経験』という類の論文は、医師・研究者に加えて薬事行政の関係者も読者対象に入っている。したがって、このような出版物がその本来の利用者に無償で提供されてしまうと、もともと発
行部数の少ない医学書の出版が困難となる。その結果、科学技術情報の伝達に影響が出るばかりでなく著作者の発表の機会が失われてしまう。これは明らかにベルヌ条約の第9条(2)の「スリーステップテスト」にいう「著作物の通常の利用を妨げる」場合に該当する。

医薬品等あるいは生体反応等に関する研究論文を発表するためには、その背景として厖大な仕事量を要している。その結果が一編の論文としか表し得ないが、たとえば製薬会社であれば、多数の論文を様々にアレンジして第3の結果を抽出することができる。この際最初の論文は一編の論文としてしか評価されないが、集積する論文から得られる価値は莫大なものとなる。これを無料で可能とすると一編の論文はあまりにも悲劇である。製薬会社も相応の負担をするべきである。

NPOとして1990年から15年間、患者の主体的な医療参加と医療現場におけるよりよいコミュニケーションづくりを目指してきました(2002年にNPO法人化)。活動の柱ともいえる電話相談に3万5千件以上対応してきたことを踏まえ、患者・家族のなまの声を聴いている立場として意見を述べたいと思います。
薬事行政に係る文献複写については、薬事法の目的が医薬品などの有効性や安全確保のために必要な規制をおこない、患者の安全性や主体性、そして患者と医療従事者のよりよいコミュニケーションの構築ということを考えた場合、必要不可欠な行為であると考えます。
実際に電話相談に届いている内容のなかにも、医薬品の安全性などについて確認したい場合、薬事法の関係で製薬会社から直接患者に情報提供できないため、ドクターを介して文献を手に入れたいと望んだという内容がありました。そのときに、文献が届くまで1ヶ月を要したことで(その原因はドクターが製薬会社に資料請求を失念していたことが後で判明)、何か悪い情報を隠したり、操作しようとしているのではないかと不安に陥ったという声が聞かれました。
また別の相談では、ドクターが製薬会社に依頼してすぐさま文献が得られたことで、自己決定の材料となり、ドクターとの信頼関係が深まったという声もあります。

このような相談の声から考えても、製薬会社から医療従事者への迅速な情報提供がなければ患者の不信感に発展することがあり、コミュニケーションの構築に影響を及ぼしていることがわかります。また、そのような情報提供によって、患者の自己決定を支えることにもなるのです。
患者の立場から考えても、ドクターが文献を必要とする場合のなかには、急を要することもあると容易に推察できます。著作権の確認のために時間がかかることで、患者のいのちが守られない事態が起きれば、取り返しのつかないことになってしまいます。
とくに、医学文献などは患者の病気を救い、いのちを守るために広く情報を知らしめたいということを目的として著されたものと考えられます。治療の進歩のために書かれた文献が、小説などの作品として書かれた著作物と同様に扱われることに、患者の立場としても非常に疑問を覚えます。
このような患者の立場からの意見も汲み取っていただき、薬事行政に係る文献複写、とくに10ページ目の審議の状況3に記載の、医療現場における医師薬剤師等が自らの研究・治療のために、(記載にはないが、医師薬剤師等における行為そのものも当然対象とすべき)並びに、医薬品等製造販売業者は医薬品等の適正使用に必要な情報を提供するために、関連する研究論文等を複写し、調査し、医療関係者に頒布・提供することについては、著作権の権利制限のなかに入れるように希望いたします。

私は医学書専門出版社の販売部門で仕事をしております。医学書専門雑誌の販売営業活動は時間と労力とコストのかかる困難な仕事です。
執筆される先生方や編集部の熱意にこたえ、より多くの読者に雑誌の内容をご紹介し継続的なご購読をお願いする仕事は年を通して行われます。
そもそも医学専門雑誌の販売部数は平均すると数千部であり、販売活動の結果としての利益はほとんどありません。執筆者の、医学・医療の発展への熱意に支えられた雑誌が、なかば無
尽蔵にコピーされることは販売担当者としては身の切られる思いです。
現在政府は日本を「努力すれば報われる社会」に改革しようとしておられると理解しています。この方針を私は支持します。しかし血のにじむような企業活動のなかで生み出された価値がいとも簡単に複製されるというのは「改革」の名に反するのではないでしょうか。
医学・医療の発展に寄与したいとの思いは製薬メーカーも医学書出版社も同様です。そしていずれも民間企業としてこれを進めているのですから、一方的に医学書専門出版社の努力が踏みにじられることは納得できません。
ぜひ医学書出版社の正当な、かつ、ささやかな利益を確保願いたく、ご検討方よろしくお願い申し上げます。

権利制限は行政のこといっているのでない。薬業のこといっているのであって、民間営利企業活動の支援のために権利制限をするのは、出版業を営む者にとっては権利侵害である。

1)国民の生命、健康への被害を未然に防止することについて
「審議の経過」10ページに、本件の要望は「国民の生命、健康への被害を未然に防止するため、あるいは国民の生命、健康を守るために必要な権利制限である」という趣旨の記載がある。医薬品の適正利用が国民の生命、健康に大きく関わることについて、そのこと自体を否定するものではない。しかし、「国民の生命、健康への被害を未然に防止する」ことは他の業種でも多く見受けられることであり、特段製薬企業だけに限定されたことではない。医学専門書誌は医薬品と同様、医療従事者が利用することを目的に発行されているものであり、最新の医療技術、医薬品情報を適切に提供することによって「国民の生命、健康への被害を未然に防止するため」になくてはならないものである。航空機産業や自動車産業、あるいは運輸業も事故を未然に防ぎ、安全に運行することによって「国民の生命、健康への被害を未然に防止」している。食品産業も同様であり、建築業も地震・災害から身を守る安全な環境を作ることが求められている。それぞれの企業は関連する法律、規制、基準のなかで業務を行っており、その遂行にあたって法律に違反することは勿論、他人の権利を侵害することも許されない。製薬企業だけが例外ではなく、その業務のために必要な著作物の権利制限を行い、製薬企業を特別扱いすることは適切ではない。

2)製薬企業の義務について
製薬企業が医薬品の販売によって利潤を得ている以上、製薬企業の商品である医薬品が国によって承認され、継続販売するために必要な手続は、国に対する情報提供のコストも含めて製造者である製薬企業が負担すべきである。特に要望事項3「医薬品等の製造販売業者は医薬品等の適正使用に必要な情報を提供するために、関連する研究論文等を複写し、調査し、医療関係者へ頒布・提供すること」については、その内容は製薬企業が製造販売している医薬品の適正使用にかかる情報である。製薬企業が医薬品の販売によって利潤を得ている以上、製薬企業が薬事法に規定された情報提供の努力義務を果たすのは当然の義務であり、その義務の履行のために必要なコストは当然のこととして製薬企業が負担すべきである。製薬企業はこういった情報の提供によって医薬品の継続販売と適正使用が可能になり、その販売によって利益が確保され、製薬企業が企業として継続存立することになる。

3)複製の量について
厚生労働省は要望事項全てについてどの程度の量の複製が行われているか明確にしていないが、ベルヌ条約との整合性を検証する上でも全体の複製量を明示すべきである。それが不在のまま審議することは適切であるとは言えない。
また、要望事項3「医薬品等の製造販売業者は医薬品等の適正使用に必要な情報を提供するために、関連する研究論文等を複写し、調査し、医療関係者へ頒布・提供すること」に関連して、日本製薬団体連合会は9月30日開催の法制問題小委員会において「製薬会社4社において実態を調査したところ、これらの複製は年間約150万ページであった」と報告しているが、この数字は明らかに膨大という域をはるかに超えるものである。その内訳は不明であるが、4社で150万ページであるならば製薬業界全体では年間3-4千万ページにもなるであろうと思われ、その数字は100ページの月刊雑誌(年間1200ページ)を3万冊以上複製していることになる。このことはもはやベルヌ条約で求める「特別の場合であり」、「著作物の通常の利用を妨げないものであり」、更に「著作者の正当な利益を不当に害しないものである」の全てに違反していると言わざるを得ない。製薬企業としてこれだけの量の情報が必要ならば、製薬企業自らが用意すべきである。

4)医学専門書誌の通常の利用を妨げることについて
医学専門書誌は医薬品の効果、安全性、その他の医薬情報を含む最新の医療技術を医療従事者に提供することをその出版目的としており、読者である医療従事者の先生方に有償で購入して頂くことによって発行を継続しているものである。医学研究、医薬品の開発・適正利用が公共の利益に適うものであることは当然であるが、公共の利益達成は他の権利制限への免罪符ではない。特に医学専門書誌は医学研究という公共の利益達成目的のために発行されているものであり、知的財産の有効活用という目的があったとしても製薬企業によってこれらの出版物が無断で複製され、無償で医療従事者に提供されたのでは医学専門書誌出版社にとっては販売の道を閉ざされてしまい、継続発行は困難になる。医学専門書誌が発行できなくなれば医療従事者は情報入手ができなくなり、医学研究は衰退する結果を招くことは明らかである。このことはベルヌ条約が求める「著作物の通常の利用を妨げないもの」に明らかに違反している。

5)権利処理について
弊社を含む多くの医学専門書誌出版社は複製にかかる権利を日本著作出版権管理システム(JCLS)に委託しており、利用者は事前にJCLSと年間契約を締結すれば複写の都度の許諾を得る必要はなく、全て事後の報告で権利処理と使用料の支払を行うことが可能である。また、これらの学術論文のデータベース検索と複写サービスは複数の文献複写業者が提供しており、これらの文献複写業者の全てはJCLSと複写利用契約を締結しているので、その利用によって複製物の入手とその権利処理が可能となっている。従って、「権利者の許諾を得るのに時間がかかりすぎる」(「審議の経過」10ページ)という実態は存在しない。実際問題として製薬企業の多くは上記の文献複写業者を利用して必要な文献の殆どを入手しているが、製薬企業はその一部を除いて文献複写業者に対する使用料の支払を拒否している状況にある。また製薬企業は例外的な1-2社を除いて弊社あるいはJCLSに対して複製許諾を求めてきたことはなく、依然として著作権法に違反した複製行為によって権利者の利益を侵害している状況にある。
「権利者が探索できない場合は利用ができない」(「審議の経過」10ページ)という状況も起こり得るであろうが、それについては先ず許諾を得られるものについて権利処理を行った上で対応策を考えるのが筋であろう。そういったものがあることを奇貨として全てに権利制限を求めるのは本末転倒である。

4国際的なハーモナイゼーションについて。
医学・薬学についても情報はグローバルな展開がなされております。
欧米諸国、特に科学的研究の先進諸国の著作権制度との整合性をも求めたい。
海外論文については夫々の国の著作権法に基づき、擁護されているのに、日本だけが特殊例外を設定するのは如何なものでしょうか。
5医学・薬学の専門誌を発行している出版社の立場から。
医薬品の製造商品・再審査・再評価あるいは製薬企業による副作用報告といった薬事行政に伴って利用される多くの学術論文誌、医学専門誌は医薬品の情報を研究者や製薬企業、あるいは厚生労働省に伝達することもその出版目的としている。これらの出版物にとっては行政目的に利用されることも通常の利用範囲内であり、薬事行政の必要性という理由で権利制限されてしまうことはこれらの出版物の発行と販売にとって非常に影響が大きい。極論すれば、企業活動の存立基盤の大きな部分を喪失する事になり、ひいてはこのような情報の伝達手段である書誌が存立しえなくなる事にもなります。この事は別の観点からみれば公益に反する事にもなるのではないでしょうか?
製薬企業が医薬品の販売によって利益を得ている以上、その医薬品が国によって商品され、継続販売するために必要な手続きは、国に対する情報提供のコストも含めて製造者である製薬企業が負担すべきと考えます。

まず、ごく当たり前のことを述べさせて頂きたい。弊社は医学書出版社であり、医学雑誌、医学書を商品として販売している。医学的知識が収載されている文献を、お金を対価として提供し、そのようにして得たお金により、会社を運営し利潤を得ている。それは、たとえばトラックを製造している会社と全く同じ構造であり、特別な要素はない。医学的知識を提供する事は、生活必需物資を運搬する事と同様に、公共の利益に貢献するものである。そして同時に出版社は利潤を追求することを使命としている。一般に、商業的意図の高い出版物ほどレベルが低く、レベルの高い出版物は商業的意図とは離れた、使命感から出版されているような印象をもたれることがあるが、少なくとも医学書に関して言えば、そのような事は断じてない。どれほどレベルの高い医学書も利潤追求を目的に刊行されているのであり、そうでなければ株式会社としての存続は不可能である。ごく一般的な商品と同様、医学書についても商業的にみあうのか、どうかによって出版されるかどうかが決まるのである。
ところで、医学文献の利用者は、医療に直接関係する人間が多く、最新の知識を提供する事の重要性は、当然認められるものと考える。その重要な知識の提供は、私企業によってになわれている。市場に食料を運搬するトラックが、私企業によって製造されているのと全く同様に。さらに、そのような医学や理工学の知識は、非常に専門性が高く、潜在的な読者数はかなり限られたものにすぎない。専門性が高くなればなるほど、潜在的読者数は少なくなり、同時に対象となる読者にとってはその知識の価値は高くなる。医学や理工学書の出版は、そもそもこのような基盤に立っているのであり、現状でも、商業的に成立するかどうか、ぎりぎりのレベルにあると実感している。
このような出版物の著作権を制限すれば、どうなるか。より専門性が高く、貴重なものから出版自体が不可能になり、知識の伝搬の機会が失われていくだろう。この作用は非常に直接的に働くと感じられる。
このような理由から、医学、理工学が対象となる著作物の権利制限は、ぜひ行わないで頂きたい。これは、公共の利益に貢献するシステムを崩す事につながると思われる。

医学専門誌は高度に細分化されており、その発行部数は概ね1,500部から3,000部程度である。医学専門誌を発行する出版社は編集内容を検討し、編集委員を委嘱して論文審査、学術的考察を加え、誌面を作り上げ、印刷製本して読者に届けている。それには当然相当の経費もかかり、少ない発行部数全部が1冊単位、あるいは年間の定期購読によって販売され、その収入があって初めて事業として成り立っている。その情報が必要に応じて無許諾無報酬で大量に複製利用されたのでは医学専門誌は成立しなくなる。製薬企業もこれ程膨大な複製利用の多くを医学専門誌に頼らなければならないという現実を踏まえ、利用料の支払を拒否することなく、日本著作出版権管理システムと契約し、あるいは利用する文献複写業者に複写利用料を支払った上で適切に許諾と権利処理を行うべきである。

薬事行政において利用される専門書はもともと学術研究、医学医療といった公共の利益に適う場面で利用されることを目的に出版されている。このような出版物がその本来の利用者に無償で提供されてしまうと、もともと発行部数の少ない医学書の出版が困難となる。
その結果、科学技術情報の伝達に影響が出るばかりでなく、著作者の発表の機会が失われてしまう。
これは明らかに、「スリーステップテスト」にいう「著作物の通常の利用を妨げる」場合に該当するというべきである。
出版物の複写に係る権利処理については、現在すでに複数の著作権管理団体が活動しており、当社でも、JCLSに対して権利委託を行っている。
出版物の複写に関して許諾を受けたい者は、これらの著作権管理団体との間で許諾契約を締結することによって複写を行うことが可能である。実際に複写の需要があるもののうちで、管理団体に権利委託されているものの割合は相当高いといえる。
また、その複写報告ならびに著作権使用料の支払いは、事後でもよく、複写物入手の迅速性に関しても問題がないといえる。

医学専門の出版社勤務の者です。特許審査手続きや薬事行政における専門書はもともと学術研究、医学医療といった公共の利益に適う場面で利用されることを目的に出版されています。医療に携わる人々向けなので、読者は限定されます。
従って生産部数は小部数です。このような小部数生産の出版物が利用者に無償で提供されると、出版自体が困難になり、理工書や医学書などの専門出版社の存続自体にもかかわる問題であり、断固反対。

現在、審議されているいわゆる「権利制限の見直し」について、意見を提出します。
著作権を公益目的のために制限する著作権制限規定の意義は高く、その見直しは著作権者にとって好ましいものではなく、慎重に検討されるべきと考えます。
特許審査手続や薬事行政において利用される専門書はもともと学術研究、医学医療といった公共の利益に適う場面で利用されることを目的に出版されています。このような出版物がその本来の利用者に無償で提供されてしまうと、もともと発行部数の少ない医学書の出版が困難となります。
その結果、医科学研究領域における著作者の発表の機会が失われてしまいます。
薬事行政における情報提供が国民の健康に関わる重要な要請であることは理解できますが、そのために複写される出版物の著作権者の著作権が制限され、それによって著作権者および出版物の伝達者である出版社の利益が損なわれるべきではないと考えます。
出版物の複写に関して許諾を受けたい者は、しかるべき手続き(許諾契約)を締結することによって複写を行うことが可能です。
また、その複写報告ならびに著作権使用料の支払いは、事後でも良く、複製物入手の迅速性に関しても問題がないといえます。

今回のように出版物がその本来の利用者に無償で提供されてしまうと、専門出版社への経済的損失は多大なものになります。
読者と書き手が同一である専門書出版の場合、情報の正確性・信頼性に対す要求は強くかつ高いレベルが求められます。その要求に応えられない出版社は、これまでも(これからも)淘汰されてきました。
一方、専門書出版社は、営利企業であるが故に継続的に専門書出版を維持することができます。また、良質の専門書出版を維持するには、それに見合うだけの投資が必要です。本来のあるべき淘汰の流れとは別の次元の問題(無償提供)によって、専門書出版が衰退するようであれば、読者である専門家だけではなく、最新の専門知識の最終的な享受者となる国民の損失につながることになります。
本件の検討に際し、慎重な判断を求めます。

特許審査手続き、および薬事行政に関わる権利制限について権利制限が必要と主張する論点について、共通して言及されているのは、公共の福祉のためには、各種手続きの迅速化が必要ということである。まず、この点に反論する。
1国の各級機関、および地方行政が担っている様々な行政手続きについて、公共の福祉を伴わないものが存在するのか。もし、存在するとすれば、その行政機関が行っている行政手続きこそ、速やかに廃止するのが、公共の福祉にかなうものである。
2特許権が、排他的独占権として極めて強力な権利である、という位置づけについては、同意する。しかし、そのために、著作権が制限されることがあり得る、という論拠にはならない。
「人間の知的創造活動の成果としては、独創的なアイデアである「発明」や「考案」、ユニークなデザインである「意匠」、音楽や小説、絵画などの「著作物」などがあり、それぞれが特許法、実用新案法、意匠法、著作権法によって保護されています。」というように、どちらかが優先されるという性質のものではない。特許審査が、長期にわたるため、その迅速化が求められていることは、承知している。しかし、それは、特許行政全般にわたる問題であり、著作権に関わる分野について、特に行政手続きが遅滞しているという具体的事例は報告されていない。もし、そういう事例が極めて多く存在するということであれば、特許庁による著作権管理団体への情報開示と、意見交換こそ必要なのではないか。
3国民の健康ならびに生命に直接関与する分野については、すべからく優先されるのか。
医薬品等の顕著な有用性についての積極的な情報提供は、医薬品等の製造販売業者が、日々、努力していることは、周知の事実である。一方、医薬品等の当該の副作用情報が迅速に情報提供されていないということが、著作権保護によってもたらされた手続きの煩雑さに求められるというのは、一般国民の常識からずれた論議であるといわねばならない。薬害エイズがもたらした貴重な一例の反省がされていないのではないか。
以上により、
特許審査手続きならびに薬事行政における権利制限の拡大に、反対である。

当社は医学、医療に係る専門家を対象にした専門書を発行している出版社です。かかる専門家はそもそも多数ではありません。さらに近年の医学の発展に伴い専門分野はいよいよ細分化し、一分野毎の読者層はますます減少しています。薬事行政に係る公的な立場から著作権者の私権である権利を制限しようとする見解は全く理解できないわけではありませんが、もしそうなったら少なくともある分野の医学書の出版は不可能になります。従ってその分野の学問の進歩は停滞せざるを得ません。製薬企業はほとんどが株式会社であり利益を追求する組織です。その企業目的のために必要な文献の入手のために幾許かの費用を支出するのは自然ではありませんか。製薬企業の規模に比しその額は企業の存立を危うくするほどとは思えません。
尚出版物の複写に係る権利処理については、現実に複数の著作権管理団体が活動しており、当社ではJCLSに権利を委託しています。

2また、病院においては、治療や診断、研究、調剤などに関する最新の知見が必要です。更に最近では、医学部を卒業したばかりの研修医の教育を担う場としての役割もあります。そのために、病院図書館(図書室)ではこれまでも多くの学術専門書や医学の和雑誌・洋雑誌を購入・所蔵しております。
従って、薬事法に係わる権利制限を拡大したとしても、それによって書籍・雑誌等の購読を止めることは考えられませんので、出版社などへの影響があるとは考えられません。

Dear Sir/Madam,

The reasoning applied in the Interim Report implies that requesting rightsholder permission for the use of copyrighted materials in discharge of obligations of certain information and filing obligations imposed by law is an unreasonable burden for pharmaceutical companies.

Pharmaceutical companies are private and independent entities seeking commercial profits out of sales of their pharmaceutical products. To obtain the authorisation to legally market their drugs, they must comply with certain formalities and any cost related to these should be absorbed by the company itself and usually forms part of a products overheads.

Literary scientific works are in most cases easily and almost instantaneously available through collective licensing bodies such as JAACC and JCLS, or other document suppliers, so that obtaining a license is by no means a time-intensive burden.

Researchers employed by pharmaceutical companies are one of the key markets for most copyrighted scientific materials. If reproductions could be made by pharmaceutical companies without any compensation for the rightsholder, this would deprive authors and publishers of their income, and hence of any incentive to publicise peer-reviewed articles, reliably informing the public and researchers about new scientific developments.

In particular, the proposed limitation on copyright permitting the manufacturer or distributor of a pharmaceutical product to reproduce copyrighted works for distribution to healthcare professionals (Case 3) would amount to a violation of Japan's obligations under both the Berne Convention Article 9 and WTO TRIPS Article 13: this limitation would cover a broad range of circumstances often not directly distinguishable from marketing activities, and not only “certain special cases”(Step 1).

Moreover, the compulsory licence would interfere with the normal exploitation of the work (Step 2) as the supply of works for information/marketing purposes is an important market for rightsholders, including publishers. The use pursuant to the exception would enter into competition with the ways the rightsholder normally extracts economic value from that right, i.e. through collective licensing. Given the economic importance of this market to the righstholders and the commercial motivation of the users (pharmaceutical companies), the limitation would unreasonably prejudice rightsholders (Step 3). In support of our analysis, see WTO Panel in its Report on Section 110(5) US Copyright Act,15 June 2000, NT/DS160/R on the application of the three-step test, in particular para.6.183.

The alleged obstacle that the Pharmaceutical industry encounters is de facto merely a financial burden, which is infinitely small in comparison with the large sums that a drugs admission process costs. Such small financial burden cannot tip the balance in the three step test against the rightsholder.

As you will know, the three step test is cumulative. The proposed limitation must satisfy each of the three elements before it can be held to be consistent with Japan's obligations under Berne and TRIPS. As the proposed exception would fail on each leg of the test, IPA strongly recommends that the legislation proposal be reconsidered.

Yours faithfully,


【意見】
権利制限を認めるべきである。ここで想定されているケースは国民の生命・健康に関わることであり、著作権を理由に国民の生命・健康を危機にさらすことは回避しなければならない。

【理由】
●議題に挙がっている要望は、薬事行政において重要性・緊急性の高いものであることは議論の余地が無いと言える。著作権を保護するあまりに、こうした必要な薬事行政の執行が妨げられることは国民の生命・健康を危機にさらすことに等しく、これを回避しなければならない。権利制限を定めるのに十分な正当性がある。
●医薬品製造販売業者による医療関係者への頒布・提供に権利制限を認めることについては、他の要望と異なり反対意見が若干見られたが、これにも権利制限を認めるべきと考える。ただし、許諾権を制限することは当然として、報酬請求権を残すか補償金制度の創設も検討することは一向に値するだろう(全く無償にするのは困るという権利者側の言い分も解らないではない)。
●ただし現行の著作権許諾システムに任せてしまい、権利制限を見送ることだけは避けていただきたい。なぜなら、こうした許諾システムは十分に機能しているとは言い難く、また取り扱っていない著作物については全く意味を為さないからである。

4.多くの権利者は複写利用を拒否しておらず、その権利を日本複写権センター、学術著作権協会、日本著作出版権管理システム等の管理団体に委託しており、利用者は事前に年間契約を締結すれば、包括的処理、あるいは事後の報告で権利処理を行うことが可能である。また、これらの学術論文のデータベース検索と複写サービスは複数の文献複写業者が提供しており、これらの文献複写業者は上記の管理団体の全てと複写利用契約を締結しているので、その利用によって複製物の入手とその権利処理が可能となっている。
5.よって本件に係る権利制限を新たに新設する必要性はない。

薬事行政に係わる文献複写については、薬事法の目的が、医薬品等の有効性、安全性確保のために必要な規制を行い、国民の健康の向上をはかることであることを考えた場合、当然必要な行為であると思われる。
患者は医師、薬剤師等の医療関係者にその身を預けざるを得ない立場であり、医師、薬剤師等を信頼して治療を続けている。当然、医師、薬剤師等は常に患者のために医療現場で日夜努力していると信じている。その研究や治療のために、学術文献が重要な役割を担っているのであるから、その流通経路が製薬企業経由であっても、権利によって阻害されることなく、患者のために必要な研究や治療ができるようにするのが、患者の命を守ることである。
現に、リウマチは治癒が難しい病気であり、苦しんでいる難治の患者は数多い。この病気の治癒のためには、医師等による研究成果に基づく新たな治療の展開、製薬企業等による新たな薬の開発は必須の条件である。人間の生命が大切という観点に立てば、法による権利行使は議論する余地はない。
どうか、これ等のことを考慮し、薬事行政に係わる文献複写、特に10頁目の審議の状況3に記載の、医療現場における医師薬剤師等が自らの研究・治療のために、医薬品等製造販売業者は医薬品等の適正使用に必要な情報を提供するために、関連する研究論文等を複写し、調査し、医療関係者へ頒布・提供することについては、著作権の権利制限の中に入れるよう、患者の立場から要望します。

薬事法では、医薬品の使用によってもたらされる国民の生命、健康への被害を未然に防止するため、・・8頁最終行まで。
[意見]
1)□の下、1行目から11行目までに、4つ”医薬品”という用語が使用されているが、”医薬品等”に変更願います。
2)□の下12行目の”製薬企業”を”医薬品等の製造販売業者”に変更願います。
理由・・1)医療機器も医薬品と同様、薬事法の規制を受けており、医療機器においても製薬企業と同様に適用されることから、医療機器を含めた表現とするため。
2)他の表現と整合させるため。

・日常の調剤業務においてつねにホットで迅速な情報が求められている。製薬会社からのそれに関する資料の妥当性と信憑性のためには、適切な研究論文等の複写の添付が不可欠である。そのため、薬事法上の手続きについては、第42条の権利制限を認めるべきである。
・著作物への影響という点で考えても、参考となる文献を掲載している出版物については、購入阻害よりも促進的に働くのではないかと思われる。

・著作権法第42条では、必要な限度で行政目的における権利制限を認めているが、この部分に関する権利制限が拡大すれば、権利者に影響が出ること必至である。同じ行為であっても行政庁以外の製薬企業等に権利制限が拡大すれば、著作権法第42条の但し書きである「著作物の種類及び用途ならびに複製の部数及び様態に照らし複写の著作権者の正当な利益を不当に害することとなる場合はこの限りではない」に抵触する可能性が強いと考える。著作権法における著作権制限規定は、私権である著作権を公益目的のために制限するものであるが、この規定の適用はあくまで行政庁に限定されるべきものであり、私企業である製薬会社等まで広げることは著作権者にとって好ましいものではなく、慎重に検討されてしかるべきものである。このことはさらに、ベルヌ条約が求める「著作物の通常の利用を妨げず、かつ、その著作者の正当な利益を不当に害しない」という条件と矛盾する可能性が高いことを明記したい。

・医薬品の審査・評価あるいは製薬企業による副作用の報告といった薬事行政に利用される多くの学術論文誌や医学専門誌は、本来公共の利益に適う場面で利用されることを目的に発行されている。製薬企業等も当然その利用者の一部であり、権利制限の拡大により、このような本来の利用者にこうした出版物が無償で提供されてしまうことは、もともと発行部数の少ないこれらの出版物の発行を困難にする可能性がある。このような貴重な医学情報源の存続に関わる今回の見直しについては、さらなる慎重な検討を重ねるべきものと考える。また、この規定見直しが実施されると、現在でも膨大である論文誌の複製利用がさらに促進され、当社が権利委託を行っている日本著作出版権管理システム(JCLS)が行っている複写許諾管理機能が大きく損なわれる危険性が高まることも付記したい。

薬事行政における情報提供が、国民の健康に関わる重要な要請であることは、十分理解しております。しかし、「特許審査手続きにかかわる権利制限について」申し上げたと同様、そのために複写される出版物の著作権者の著作権が制限され、それによって著作権者および出版物の伝達者である出版社の利益が損なわれるべきではないと考えます。あわせて、出版物の複写に係る権利処理については、現在既に複数の著作権管理団体が活動しており、当社でも、日本複写権センターに対して権利委託を行っております。出版物の複写に関して許諾を受けたい場合は、著作権管理団体との間で許諾契約を締結することによって複写を行うことが可能です。

*医療を後方支援している病院図書館も、著作権権利制限の対象としてはグレーゾーンに属しております。
病院図書館には、毎日、臨床上の判断を決定するために医師、薬剤師、看護師、コメディカルスタッフなど、多くの職種が訪れます。
皆、私利私欲はございません。
目の前の患者、家族の苦痛を取り除く、和らげるにはどうしたらよいか、ただそれだけです。
また、大学を卒業した臨床研修医をはじめ、臨床薬剤師となるための実習生も当館を利用しております。
臨床研修を大学で受ける医師、大学附属ではない病院で受ける医師、研修場所が違うだけで文献複写が自由、不自由ということが生じるのは果たして国家の利益となるのでしょうか。
医療従事者は他職種と比較して、異動が多いと思われます。
異動先が文部科学省管轄の大学であろうと、厚生労働省管轄の民間病院であろうと、生涯、学習教育環境がなくては命を救えません。
病院図書館においても、文献複写の権利制限を公式に認めて頂きたくお願い申し上げます。

これらからまでの要望事項については、いずれも法改正を行うことが適当と考える。
及びについては、この報告書にもあるとおり、権利者の経済的利益二及ぼす影響は現状と変わらないうえ、国民の利益にも資するものと考えられる。
について、慎重な検討を望む意見もあるが、その根拠は全く理由にならない。それは、この権利制限を設けたところで、この権利制限を活用すると見られる製薬会社等がその購読する雑誌の購読を止めることは到底考えられないこと、必要な論文を購入して文献提供をすることが現実的にあり得ないこと、仮にそうだとしたところで、欧米諸国と比較して我が国においては権利者団体の委託割合がかなり低く(ある調査では約3割程度)、包括的に許諾契約が締結可能な欧米諸国とは事情が異なり、医師が使用を考えている薬剤の効能を判断するために緊急に文献を複写する際に的確に対応するだけの時間的余裕がみられないことから、最悪の場合には患者の生命の危険に及ぶ可能性があり、それと著作権者の利益とを勘案すると、この法改正を実現し、緊急の状況にも対応可能な状況をつくることは国民厚生上も望ましいと考えられる。
したがって、からまでのいずれについても、法改正を早急に行うことが望ましいと考える。

現状の管理事業者が複数ある状態では、きちんとした著作権処理そのものが非常に困難で、情報提供に支障がでる可能性が高い。
薬事行政に係る権利制限を行っていただき、スムーズな情報提供ができる環境を構築していただきたい。

医学書は本質的にかなり限定された集団を対象として出版されるものだが、そのターゲットとなる対象集団が無償で入手できるようになってしまえば商業ベースとして成り立たなくなることは自明である。少なくとも医学書出版社に勤務する者としては、そのような見直しは歓迎できるものではない。執筆者としても(たとえば政府刊行物とは異なり)商業出版物に寄稿する以上、自らの著作権は保護されるべきと考える。

私は険調剤薬局に勤務している薬剤師です。
医薬品を安全で安心して提供するためには、医薬品情報が欠かせません。
その医薬品情報は迅速かつ正確でなければなりません。
また緊急性を要するものは特に迅速的確な情報が必要となります。
我々はその情報を製薬企業より得ることで、患者さんへの健康被害を防ぐ役割を担っております。
著作権の制限により、これ等の行為に支障がきたすことは、患者さんの健康被害へつながると考えます。
我々薬剤師の業務上必要不可欠となりますので、著作権の適用外となることを願います。

これまでに2度要望を提出させていただいておりますが(添付資料参照)、この度も日本製薬団体連合会から提出されております意見書の内容に前向きの対応をしていただくよう、要望いたします。
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著作権法改正に関する要望事項
要望の趣旨 著作権法42条に規定される行政目的の複製は、行政機関による内部資料のための複製に限らず、行政目的の複製の範囲を広くすべきである。
法改正を必要とする理由 行政目的の複製については、行政目的であれば内部資料とする場合に限定する必要性はなく、また、行政機関内部での複製のみならず、外部での複製についても明確に著作権の適用除外とすることによって、行政目的が迅速に達成され、公益にかなう。これによって権利者の利益を不当に害するようなことは無い。さらに、行政目的の複製は、行政機関による複製に限る必要はなく、行政目的の範囲であれば、第三者による複製であっても、権利者の利益を不当に害するようなことは無い。すなわち、行政機関への報告、申請等の書類の提出物については、提出者による複製行為(委託による第三者の複製も含む)も行政目的のためであり、著作権の適用除外としても、権利者の利益を不当に害することは無い。
改正条項及び内容著作権法42条
著作物は、裁判手続のために必要と認められる場合及び立法又は行政手続の目的のために資料(申請、報告等に添付される資料も含む)として必要と認められる場合には、その必要と認められる限度において、当該手続きを行う者は、複製、譲渡及び公衆送信することができる。また、当該複製、譲渡及び公衆送信にかかる行為については、第三者に委託することができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びにその複製の部数及び態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りではない。

これまでに2度要望を提出させていただいておりますが(添付資料参照)、この度も日本製薬団体連合会から提出されております意見書の内容に前向きの対応をしていただくよう、要望いたします。
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著作権改正要望についての意見
当会では、文化庁からの著作権法改正に関する意見公募がなされた折、以下のような内容の要望書を提出しております。
「日本製薬団体連合会より3件の要望が出されておりますが、当会としましても、そのような改正が為されることが望ましいと考えます。国民の健康上の安全確保や公衆衛生の向上、また患者への適切な治療の観点から、然るべき措置が講じられるよう要望いたします。」
今回、日本製薬団体連合会より、文化審議会著作権分科会法制問題小委員会では、薬事法に基づく文献複写の問題が、あたかも、製薬企業の利益追求のための問題であるかのような議論がなされていると聞き及びました。これが事実であるとすると、同委員会においては、薬事法が公衆の衛生、国民の健康の向上を図る上で必要な措置を医療関係者(医師、薬剤師、医薬品製造業者等)に義務付けていることが十分に理解されていないと考えられます。
そこで、現実問題として医薬品を適正使用するために必要とされる文献情報については、1)治療行為を行う上で重要であること、2)医師も薬事法の義務を負う当事者として、収集と利用の義務を負っていること、3)日本の現状では医師自ら、事例に合った最適な情報を入手することは大変難しく、迅速に情報を入手し、患者の治療の判断をより早く行うには、当該分野の医薬品に関する情報に精通している製薬企業に情報提供を依頼せざるを得ないこと等があります。
以上の事実を踏まえて、日本製薬団体連合会から提出された意見書の内容について前向きの対応をして頂きたくお願いいたします。

著作権者・隣接者が悪意を持って公表しない、または著作権者・隣接者が公表したくても、その事により不利益を被る者が著作権者・隣接者を脅迫、さもなくば口封じして闇に葬ろうとする場合があります。
また、このような患者の命にかかわる情報が多数記載されている以上、「公共の福祉」の一環として、これは公文書と同じ扱いにするのが妥当ではないでしょうか。

○特許審査手続や薬事行政において利用される専門書はもともと学術研究、医学医療といった公共の利益に適う場面で利用されることを目的に出版されている。このような出版物がその本来の利用者に無償で提供されてしまうと、もともと発行部数の少ない理工学書、医学書の出版が困難となる。その結果、科学技術情報の伝達に影響が出るばかりでなく、著作者の発表の機会が失われてしまう。
○出版物の複写に係る権利処理については、現在既に複数の著作権管理団体が活動しており、当社でも、日本複写権センターおよび株式会社日本著作権管理システムに対して権利委託を行っている。出版物の複写に関して許諾を受けたい者は、これらの著作権管理団体との間で許諾契約を締結することによって複写を行うことが可能である。実際に複写の需要があるもののうちで、管理団体に権利委託されているものの割合は相当高いといえる。
また、その複写報告ならびに著作権使用料の支払いは、事後でも良く、複製物入手の迅速性に関しても問題がないといえる。

そもそも著作権法第42条の「裁判手続のために必要と認められる場合には、その必要と認められる限度において、複製することができる」をもってして、13の「問題の所在」を導き出すのは理解に苦しむ。第40条第1項の「準司法手続」として特許審判、海難審判、行政不服審査があげられていることから明らかなように、著作権法第42条は薬事行政、薬事法とは本来無関係なものであり、それでもこの条文をもって権利制限を行おうという姿勢には製薬企業側からの要望に安易に迎合しているとしか国民には映らないであろう。薬事法上の手続きを、第42条における「裁判に準ずる手続」とはいえないと明確に示しながら、それに続いて唐突に「しかし、医薬品の効果や、副作用等の評価を適時・適切に実施するためには、製薬企業における副作用、感染症等の情報収集・分析・報告等が十分に、しかも迅速に行われることが必要であり、その際には、関連する研究論文等の複写の作成・頒布が必要となる場合が多い」と、資本主義社会において製薬企業が利潤を得るために当然負担しなければならないコストを一方的に著作権権利者の権利制限を認める理屈を展開する当該の審議会には、外部からの「力」を感じざるを得ない。こういった解釈ができるようになれば、著作権法そのものがザル法として形骸化の道を歩むのではないかとの強い懸念を持つ。
公共交通機関の乗り物製造に携わる企業、自動車業界、食品産業のみならず、国民の生活環境に影響があると考えられるあらゆる製造業が「国等への迅速な情報伝達により国民の生命、健康への被害を未然に防止」するためのコストを自ら負担している現状において、製薬企業だけが特権的に著作権者の権利制限によるコストの軽減を受けられるのは、到底世論に理解されないだろう。

弊社は医学書出版社であり、医学雑誌、医学書を商品として販売している。医学的知識が収載されている文献を、お金を対価として提供し、そのようにして得たお金により、会社を運営し利潤を得ている。それは、たとえばトラックを製造している会社と全く同じ構造であり、特別な要素はない。医学的知識を提供する事は、生活必需物資を運搬する事と同様に、公共の利益に貢献するものである。そして同時に出版社は利潤を追求することを使命としている。一般に、専門性の高い出版物は商業的意図とは離れた、使命感から出版されているような印象をもたれることがあるが、少なくとも医学書に関して言えば、そのような事は断じてない。どれほどレベルの高い医学書も利潤追求を目的に刊行されているのであり、そうでなければ株式会社としての存続は不可能である。ごく一般的な商品と同様、医学書についても商業的にみあうのか、どうかによって出版されるかどうかが決まるのである。
ところで、医学文献の利用者は、医療に直接関係する人間が多く、最新の知識を提供する事の重要性は、当然認められるものと考える。その重要な知識の提供は、私企業によって担われている。市場に食料を運搬するトラックが、私企業によって製造されているのと全く同様に。さらに、そのような医学や理工学の知識は、非常に専門性が高く、潜在的な読者数はかなり限られたものにすぎない。専門性が高くなればなるほど、潜在的読者数は少なくなり、同時に対象となる読者にとってはその知識の価値は高くなる。医学や理工学書の出版は、そもそもこのような基盤に立っているのであり、現状でも、商業的に成立するかどうか、ぎりぎりのレベルにあると実感している。
このような出版物の著作権を制限すれば、どうなるか。より専門性が高く、貴重なものから出版自体が不可能になり、知識の伝搬の機会が失われていくだろう。この作用は非常に直接的に働くと感じられる。
このような理由から、医学、理工学が対象となる著作物の権利制限は、ぜひ行わないで頂きたい。これは、公共の利益に貢献するシステムを崩す事につながると思われる。

反対します。
まず「概要」の文頭に「制度と実態の乖離が見られるなどにより緊急に検討を要する以下の課題について検討を進めた。」とあるが、そもそも制度を守っていないことが問題である。もし守るに値しない制度なのであれば実態を優先すべきであろう。では制度を守るべきか実態を優先すべきかについて、「医薬品の効果や、副作用等の評価を適時・適切に実施するためには、製薬企業における副作用、感染症等の情報収集・分析・報告等が十分に、しかも迅速に行われることが必要であり、その際には、関連する研究論文等の複写の作成・頒布が必要となる場合が多い。」との記述があるが、医薬品を扱う以上至極当たり前のことであり、製薬会社はそれもひっくるめて医薬品を製造販売しているのである。このような状態で著作権権利制限の制度を守っていないのは明らかにルール違反と言わざるを得ない。
また「内部資料として必要な限度で行政目的の複製を認めていることから、厚生労働省等が内部資料として、さまざまな文献の複写を権利者の許諾なく行うことは可能」かもしれないが、製薬会社と厚生労働省を同一に論ずることは、「「立法又は行政の目的」のために必要な場合については、「内部資料として必要」と認められる限度においてのみ複製が許容されている(第42条)。」という法の目的を逸脱している。

また、医薬品等の適正利用に必要な情報は、製薬会社だけが提供者ではありません。
医薬品の適正使用のためには医療従事者自身が必要な情報を入手するための病院図書館でも同様に権利制限がなされるべきと考えます。

学術文献は多くの患者さんの命の上に練り上げられ、新たな患者の命を救う道しるべとなるものです。また、研究者が次の研究に向かう際の基礎になる部分です。まず、これを最大限保護し、利用していただきたい。
輸入抗がん剤が次々と保険適用になり、翻訳という一つの過程に時間がかかることは必至、また、セカンドオピニオン外来(海外勤務経験のある医師があたることが多くなると思います)等が充実し、終末期の患者は治験においてもそうですが、混合診療自由診療枠でオーダーメイド的な治療を要求するようになると思います。患者は自分の闘病が意味のあるものであって欲しいと願っています。症例を参考にしたり、いわゆる匙加減の部分で、せっかく臨床医のクリエイティブな発想が何の裏付けもないのでは、延命完治への医療を遅らせてしまいます。著作権をしっかり管理していただかないと、がん患者には時間がありません。速やかに治療を受けられることが延命につながります。
がん診療拠点病院の義務として治験があり、院内登録により、どこで、どういう治験がされているのかが分かる。このような医療現場の改革に合わせて、治験も特許の公告・公開のように初めからエビデンスを存在させたらどうでしょうか。経過が治験と平行して明らかになる。医師同士、すでに著作権の発生している文献からの意見交換も可能。また進行中の治験をすぐに記録し、終わったところまで著作物として保護する。治験時から情報交換がなされれば、同じ様な事例を検討することができるのだから、医療機関の壁を超えて共著で将来的には海外との医療機関とも連携し有力な論文ができる。
末期、セカンドオピニオン、治験、の流れの中で、著作権が確立されれば、いろいろな可能性が見えてくると思います。

著作権法改正:薬事行政に係る権利制限について

委員各位

国際的な科学論文誌Natureの発行元であるネイチャー・パブリッシング・グループ(NPG)とNPGの日本国内での権益を代表するネイチャー・ジャパン株式会社は、貴小委員会で検討されている、国内の製薬会社が研究論文等の写しを医療関係者に提供するケースで著作権保護の適用に制限を加える旨の提案に対し、深い憂慮の念を表します。

貴小委員会での聴聞会で明らかになったように、日本の製薬会社は、著作権で保護された科学、医学文献所収の研究論文のコピーを既に毎年数十万部の単位で、著作権許可や著作権料の支払いなしに作成し、医療関係者に頒布しています。このケースで、著作権料が支払われたのは、ごく一部に過ぎません。

著作権保護の適用制限に賛成する立場の人々は、製薬会社が当該情報を医療関係者に提供して、一般市民の生命と健康を守るために役立っていることを根拠に挙げています。しかし、実際のところ、研究論文等を頒布する主たる動機は、頒布先の医療関係者に取り入って、自社の医薬品を拡販しようというマーケティングなのです。

このような事情に鑑みると、貴小委員会で著作権の制限を検討することは、まったくもって不適切だと言わざるを得ません。むしろ貴小委員会では、著作権を強化し、営利目的での著作物の利用に対して、いずれのケースでも十分な対価が必ず支払われるようにする方向への議論を進めるべきだと考えます。著作権は、科学、医学文献の発行と配布を支える柱の1つであり、貴小委員会では、著作権保護を確かなものとし、当該文献をいつまでも利用できるような環境を確保すべきだと思います。

また、貴小委員会では、製薬会社が研究論文等の複製に対する許諾を容易に得られないことや著作権者の許諾を得るために医療関係者への重要情報の配布が遅れることも主張されました。

インターネットを利用できる現代において、このような主張には根拠がありません。すなわち、必要な文書は、素早くウェブサイトでダウンロードでき、日本複写権センター、学術著作権協会、日本著作出版権管理システムといった著作権管理団体と文献配信会社が提携して、迅速な著作権使用許諾と文献配信ができるようになっているのです。

貴小委員会では、著作権使用許諾を迅速に得られないことが著作権制限の根拠となるかどうかを議論するのではなく、既に上記活動を行っている著作権管理団体による著作権使用許諾過程の迅速化と効率化を奨励し、支援する方向を模索すべきです。

最後に、世界をリードする科学、生物医学、臨床医学文献の発行元であるネイチャー・パブリッシング・グループは、製薬業界による医療関係者への研究論文等の提供というケースで著作権を制限するという趣旨のいかなる提案に対しても、強く反対していることを改めて表明します。

今後、NPGは、この件に関して、貴小委員会での動向を注意深く見守っていく所存です。そして、貴小委員会が、上記ケースにおいても著作権保護義務を果たす姿勢を堅持されることを切望いたします。

(英文)
We at Nature Publishing Group (NPG), publisher of Nature the international science weekly, and Nature Japan K.K., the company representing the Group's interests in Japan, would like to express our deep concern regarding proposals being considered by the committee to limit the application of copyright protection in the case of Japanese pharmaceutical companies providing copies of research literature to medical professionals.

As presentations to the committee have shown, Japanese pharmaceutical companies already reproduce hundreds of thousands of research papers each year without copyright permission or payment from the copyrighted scientific and medical literature and distribute the copies to medical professionals. Copyright payment is only made in a small minority of cases.

Arguments have been presented in favour of limiting copyright protection on the grounds that the information is being provided by pharmaceutical companies to medical professionals to help protect the lives and health of citizens. But the prime motivation for distribution of literature is in fact as a marketing tool to win the favour of medical professionals to gain further orders from those medical professionals for the pharmaceutical company's drugs.

It is, in such circumstances, totally inappropriate for the committee to be considering limitation of copyright. Rather, the committee should be moving to re-enforce copyright to ensure that such exploitation of copyright for commercial gain be paid for in full in all cases. Copyright is a pillar supporting the publication and dissemination of scientific and medical literature and the committee should be ensuring the protection of copyright to ensure the continued availability of such literature.

It has also been argued to the committee that pharmaceutical companies have difficulty gaining permission for the reproduction of research literature and seeking copyright permission can hold back the dissemination of important information to medical professionals.

This argument is without grounds in the current day and age of Internet access, where documents can quickly be downloaded from web sites and copyright clearance organizations, such as the Japan Reprographic Rights Center, the Japan Academic Association for Copyright Clearance and the Japan Copyright Licensing System are in place alongside document delivery companies to provide rapid copyright clearance and delivery of documents.

Rather than trying to argue that slowness in copyright approval provides grounds for limiting copyright, the committee should be seeking to encourage and support the fast and efficient processing of copyright clearance by those organizations already engaged in these activities.

Thus, in closing we would like to say that Nature Publishing Group, publisher of some of the world's leading scientific, biomedical and clinical medical literature is strongly opposed to any suggestions that copyright be limited in the case of dissemination of literature to medical professionals by the pharmaceutical industry.

NPG will from now on monitor very closely the actions of the committee in this matter, and we sincerely hope that you will uphold your obligations to protect copyright in this particular situation.

Yours sincerely


Dear Sir or Madam,

The Association of American Publishers (AAP) appreciates this opportunity to comment on the section of the Interim Report of the Legislation Committee dealing with the topic referenced above.
AAP, representing publishers of all sizes and types located throughout the United States, is the principal trade association of the book publishing industry. The association's over 300 members include most of the major commercial book publishers in the United States, as well as smaller and non-profit publishers, university presses and scholarly societies. AAP members publish hardcover and paperback books in every field and a range of educational materials for the elementary, secondary, post-secondary and professional markets. Members of the association also produce computer software and electronic products and services, such as online databases and CD-ROM. AAP considers the protection of intellectual property rights to be among its top priorities.

This section of the Interim Report discusses three proposed exceptions to copyright protection. All three would allow pharmaceutical companies to copy and distribute academic and research papers without permission of the right holders, and without compensation to them. It is claimed that such exceptions are needed to allow these pharmaceutical companies to comply with legal or regulatory obligations (1) in obtaining or renewing government approval of pharmaceutical products;(2) in reporting adverse drug reactions to government agencies; and (3) in informing health care professionals about proper uses of pharmaceutical products.

AAP member companies involved in the scientific, technical and medical publication fields are owners of copyright in many of the papers and other materials that would be affected by these proposals. We urge the Legislation Committee not to recommend any of the changes to the Copyright Law discussed in this section of the Interim Report.


Pharmaceutical companies are businesses. They have chosen to enter a line of business which is heavily regulated by the government in order to protect the public health and safety. We acknowledge that these regulations may, in some circumstances, require pharmaceutical companies to copy and submit to government agencies certain copyrighted research materials relevant to the safety and efficacy of their products. To the extent that this is so, pharmaceutical companies already have at their disposal several mechanisms through which they can expeditiously obtain permission from, and pay compensation to, the publishers of these materials (or other right holders). They can obtain a license directly from the publisher; they can obtain copies from licensed document suppliers who pay compensation to the publishers; in many cases, they can instantly obtain authorization for copying of the materials through a collective licensing system such as the Japan Copyright Licensing System (JCLS) or the Japan Academic Association for Copyright Clearance (JAACC).

It is true that pharmaceutical companies have to incur some costs in order to use any of these licensing mechanisms; but these are nothing more than foreseeable costs of doing business in the field which these companies have chosen to enter. Furthermore, these payments contribute to the socially vital function of compensating the authors and publishers of these papers, and rewarding their considerable investments in conducting and reporting on the research, and in soliciting, editing, reviewing, compiling and distributing these reports.

Proposals (1) and (2) of this section of the interim report would undermine all these methods of licensing copyrighted research materials by granting pharmaceutical companies a free, blanket statutory license to make and distribute these copies. In effect, these proposals would force the publishing industry to subsidize the pharmaceutical industry by absorbing some of the latter's ordinary and routine costs of doing business. Not only would this be unfair and unjust, it is also completely unnecessary. As summarized above, there are already ample means for pharmaceutical companies to fulfill their responsibilities without any change in the law.

Proposal (3) is an even more extreme example of the same principle. Providing information to health care professionals on the proper use of pharmaceutical products is simply a marketing expense of a pharmaceutical company. Even though it is required by law, it is a business expense that any rational business person would anticipate and factor into a pharmaceutical company's business plans. This cost should not be transferred from the pharmaceutical company, which stands to profit by it, to the publisher, which does not. AAP understands that pharmaceutical companies conceded at the September 30 meeting of the Legislation Committee that the volume of copying that could be covered by this exception is huge.

By calculations of Japanese publishing organizations, as many as 30 million page copies or 400,000 journal articles annually could be affected. In other words, the subsidy that this proposal would force upon publishers would be extremely burdensome.
AAP does not believe that any of these changes could satisfy the three-step test for exceptions and limitations under Berne Article 9.2 and TRIPS Article 13 which Japanese law must respect. Pharmaceutical companies are an important part of the normal market for subscriptions to scientific and medical journals and similar publications; thus it is difficult to classify the proposed exceptions as “special cases.” Licensing fees for the reproduction and distribution of journal articles and other research results are an integral part of this market. Clearly, adoption of proposals (1) and (2) would significantly harm this market, and adoption of proposal (3), removing a huge volume of copying from the licensing system, would severely damage it.

The conflict with normal exploitation of the works would be substantial. Finally, the prejudice to the legitimate interests of the right holder would be excessive, since publishers would be forced to subsidize the business activities of unrelated companies.
AAP thanks the Legislation Committee for considering its views, and we would be glad to provide further information if that would assist the Committee.

Respectfully submitted,


1)著作権の集中的権利処理機構(クリアランス・センター)は、著作権者の利益の確保と著作物に係る円滑且つ迅速/的確な文献複写等の利活用を促すものであり、多数の著作権者の権利を管理・行使することを可能とするものです。この構想を叶えるものとして、「日本複写権センター」が、その役割を担うと同時に機能を果たされているところですが、中心となるべき学術出版社の多くが離脱し、JCLSを設立されました。今日、複数存在する複写管理団体が、相互補完しながら、全ての著作権者からの権利委託を受け、委託点数においても、その全ての著作物を網羅的且つ遡及的に対象とする権利処理を管理・行使することを可能とするなら、利用者にとっての権利制限に係る(3)薬事行政に係る権利制限についてのみならず、「出願人」の非特許文献(雑誌・書籍等の複写に係る(2)特許審査手続に係る権利制限についての要望2件は、それでも尚且つ論拠を持ち得るのであろうか。同根同種と窺える権利制限の論拠は、不幸にも文献複写をめぐる学術出版社と製薬企業等の対立の構図を映しているものの、日本複写権センターが、クリアランス・センターの構想を実現しさえすれば、本件権利制限にいうところの要望を叶えて余りある存在であろうことは疑いない。2006年、同センターは、15周年の節目を迎える。本件権利制限に係る要望に応える改組転換が望まれるところであり、またこれは急務と認識される事態といってよい。具体的検討事項を以下に列挙する。

1一律1価制を2価制にする。2複写使用料は、算定根拠を印税方式から製作原価方式とする。3権利委託者は、一般の出版社も出版社単位で可能とし、届出制とする(現行は、書協等の加盟社のみ)。4著作物の権利委託は、著作物単位の権利委託を随時、可能とする(現行は、出著協に依存)。5医学系学協会(約500機関)、医学系学術出版社(約300社)、に加え、製薬企業等の系列・子会社等出版社の発行する雑誌および書籍等も権利委託が望まれる。6医薬品等の「添付文書」は、著作物性に鑑み、複写利用の方途を講じる。7同センターとして有すべき機能拡充、人材確保、運営予算の増額等。なお、権利制限の要望に関しては、1文献複写の利用実態(年間複写頁数、用途別複写頁数、文献複写意外の複製に係る利用実態も、検査・調査の上の公表が望まれる。)
2)現行の政令指定図書館(著作権法第31条)の内、文献複写業務を実施する情報提供事業者である科学技術振興機構、財団法人日本医薬情報センターおよび業界団体等の専門図書館約40施設は、文献複写の利用実態の検査・調査の上の公表が望まれる。また民間の文献複写事業者「ドキュメントサプライヤー」との不公平な競合の影響で、民業圧迫との指摘が報告されている。これらの施設では、文献複写の適法・無償が業務として常態化しているとされ、著作権者の利益侵害さえ拡大しているとの指摘があることから、「政令指定図書館」の指定取消しが望まれる。
おわりに
現行の著作権制度と文献複写の利用実態との乖離に端を発したとされる権利制限に関しては、著作権者、複写管理団体および利用者による問題解決への努力が払われてきたところであり、制度と利用実態との「乖離」の実態および内容の検査・調査の上の公表が待たれる。「知的財産立国」に向け、工業所有権と同様の価値有りとする著作権等知的財産権の管理の強化と遵法の環境整備が急がれる時代となったと痛感します。

「現在権利者側は、日本複写権センター、学術著作物協会並びに日本著作出版権管理システム等の管理団体に複写の委託を行い、〜許諾システムに積極的に取り組んでいる」ということだが、このようなやり方だと、権利者が許諾を与えなかった場合に、論文等が出てこず、医薬品の審査に支障をきたすということが起こりうる。薬事行政に係る権利制限は、国民の生命、健康にかかわる事であるから、この権利制限とぶつかる許諾の有無を認めるべきではない。「複製主体や頒布先が特定されておらず、かつ部数も多数になる」から権利制限は慎重にという意見もあるが、量の問題ではなく、公益にかかるか否かの問題である。仮に公益目的以外の複製が行われたとすれば、権利侵害として訴えられ、この損害規模は大きくなるから、審査に真に必要な複製だけが行われる。

理工学書、医学書は学術研究、医学・医療の進歩・発展に役立てられる、つまり、公共の利益に適う場面で利用されることを目的として出版されている。公共の利益に適うことを目的とした複写利用が権利制限の対象となり、本来の利用者に自由に無償で提供されてしまうと、もともと発行部数の少ない理工学書、医学書の出版は困難となるばかりか著作者の発表の機会が制限され、科学技術情報の伝達に影響を与え、学術研究、医学・医療の進歩・発展を大きく阻害することになる。殊に高度に専門的な領域を扱う出版物は先ず出版不可能な事態となる。

薬事行政における情報提供が国民の生命、健康に関わる重要な要請であることも充分理解している。しかし、薬事行政の必要性という理由で、また製薬企業の存続、利潤の追及のために、複写される出版物の著作権者の著作権が制限されるべきではない。医薬品も医学専門書も医学・医療の進歩・発展という公共の利益に貢献するという共通の目的を持った商品であるにもかかわらず、製薬企業の利益のみを保護し、著作権者、出版社の利益を侵害しようとするのは公平な判断とはいえない。著作権者および出版物の伝達者である出版社の利益が損なわれることがあれば、将来医学・医療情報の円滑な伝達を損ない、医学・医療の進歩・発展を阻害する懼れさえ生じかねない。

さらに、「許諾の入手」についても、現在既に複数の複写管理団体が存在しており、これらと契約することにより出版物の複写の簡便な権利処理が可能となっている。実際に複写の需要のあるものの中で、管理団体に権利委託しているものの割合は相当に高いといえる。当社においても日本出版権管理システムに対して権利委託を行っている。

2.特許審査手続、薬事行政それぞれにおいて利用される医学専門書誌等はもともと学術研究等公共の利益に適する場面で利用目的に出版されています。このような出版物の著作権が制限された結果、いかに学術研究等公共の利益と言う理由であっても、著作権者側に対して不利益な悪影響を及ぼすことは明白であります。今後著作権の制限見直しを審議する場合には我々医学専門書出版者の立場も充分考慮した上で判断されることを要望いたします。

文化審議会著作権分科会法制問題小委員会での審議全体を通して、権利制限を要望している厚生労働省および日本製薬団体連合会から、今まで複写の総量等についてのデータの掲示がないままに権利制限の可否について検討が行われています。当社に対しても貴庁より複写の実態について各種データの提出を求められ対応したところですが、複写利用者側の複写総量やその内容が明らかでない以上、適切な審議が可能であるとは思えません。今後、「最終まとめ」が作成されるまでに、複写利用者側にデータの提出を求め、公平なる審議がなされなければならないと考えます。9月30日になって、ようやく複写実態のごく一部のデータが開示されましたが、不十分であると考えます。「最終まとめ」までに9月30日のデータ以上の製薬業界全体の複写に関するデータを求めて改めて審議が行われないのであれば、今回は継続審議とし、結論を急ぐべきではないと考えます。

薬事法では、製薬企業だけでなく医薬関係者に対しても、医薬品の使用による国民の生命・健康への被害発生・拡大を防止する目的で、医薬品の品質や有効性・安全性を確保するために必要な情報の収集・評価・報告・提供・利用を行うことが義務付けられております。これらの情報の中には、国内外の学術雑誌に掲載された研究論文等が含まれており、製薬企業ではその研究論文等を複製して国や医療機関に提供しております。この国民の生命・健康に関わる薬事法上の義務は、その重大性に鑑みて迅速かつ遺漏なく履行されなければならないのであって、上記情報の収集・伝達が阻害されるような事態はあるまじきことです。従って、薬事法上の義務が著作権法上の権利よりも優位に立つ(私権は必要かつ最小限の範囲で、公共の福祉の制限を受ける)べきであると考えますが、これは一般社会通念に照らしても妥当であろうと思われます。このような観点から、製薬企業や医薬関係者が薬事法上の義務を履行する限り、研究論文等の複製には著作権者の許諾を要しない旨の規定を、著作権法に盛り込むべきであるという意見を申し述べる次第です。

(英文)
The Pharmaceutical Affairs Law obligates not only Pharmaceutical companies but also medical professionals to collect, estimate, report, provide and use the necessary information to secure the quality, effectiveness and safety of drugs in order to prevent occurrence and expansion of any damage to the human life and health by using medicines.

The above information includes research papers published in domestic and foreign journals, and pharmaceutical companies reproduce research reports to submit to the government and medical institutions. This responsibility related to the human life and health obliged under the Pharmaceutical Affairs Law should be executed immediately and completely considering its significance. It should never be disturbed to collect or communicate such information. Hence we naturally consider that the obligation under the pharmaceutical Affairs Law should take precedence over any right under the Copyright Law (private rights should be restricted by the public welfare within the necessary and minimum extent). In view of the above, we eagerly request that such provision should be incorporated into the Copyright Law as follows: reproduction of any research paper etc. shall be allowed without any license from copyright holders as long as the pharmaceutical company or medical institute performs the obligations under the Pharmaceutical Affairs.



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