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「私的録音録画補償金の見直し」に対する意見について

委員名 山地 克郎
1  ハードディスク内蔵型録音機器等について、政令による追加指定に関して、実態を踏まえて検討する。
本補償金制度は、下記4に後述する通り、多くの基本的問題を内包しており、廃止も含めて制度自体の根本的な見直しが必要である。このような状況にある制度に対して、基本的議論をすることなく、機器の追加等により制度の肥大化を図ることは、制度自体の見直しを遅延させることにも繋がりかねないため、政令による追加指定は不適切である。
また、追加の候補に挙げられているiPodについては、「携帯できる外付けHDD(Hard Disk Drive:外部記憶装置)」として利用することが可能であるため、汎用機器と解される(デジタルARENA)。従って、録音専用機器と解すことは事実誤認であり、政令による追加指定は不適切である。
2  現在対象となっていない、パソコン内蔵・外付けのハードディスクドライブ、データ用のCD-R/RW等のいわゆる汎用機器・記録媒体の取扱いに関して、実態を踏まえて検討する。
当該機器等を本制度の対象とすることは、録音、録画を行わない人からも徴収することになるという問題を含めて、下記4で述べた基本的問題を大幅に拡大することになるため、容認できない。
3  現行の対象機器・記録媒体の政令による個別指定という方式に関して、法技術的観点等から見直しが可能かどうか検討する。
見直すための検討をすること自体を否定するものではないが、現状の「政令による個別指定方式」を批判する意見の中には、妥当性を欠くものもあると考えられるので、まずは、批判内容の妥当性の考察が必要である。
仮に、見直すとした場合には、その方向性として、対象機器等を政令以外の省令・告示等により指定する方式もあろうが、これは文部科学省一省の単独指定の可能性を高めることになる。本制度が多くの関係省庁・関係産業界との協力・連携の下に運営されていることを考えれば、本方式を採用することは不適切である。
4  自由記載
現行制度は、次のような基本的問題を内包している。
1.  制度上の補償金の負担者は、30条の対象となる複製を行う一般消費者であり、機器や媒体の製造業者は、補償金の支払いの請求及びその受領に関する協力義務を負っているにすぎないが、現実問題として、価格への上乗せは困難であり、実態は業者の負担になっている。

2.  一般消費者の多く(殆ど)は、当該制度の存在を認識していない。従って、消費者が負担している、あるいは、負担すべきものであるという認識が無い。

3.  補償金の対象となるようなデジタルの私的複製を全く行わない一般消費者も補償金を支払うことになっている。制度上は、そのような人に対しては「返還請求権」を与えているが、返還請求のために必要となる手間と費用が、返還されるであろう金額よりも、通常は遥かに多いことと、そのような複製をしないことの立証の困難さから、返還請求は、ごく最近、1件起こされたのみである(朝日新聞平成17年6月22日朝刊3面「初の返還決定、でも8円」)。従って、この返還請求権は、名目だけのものであり、全く実が無い。

4.  対象となる機器や媒体を、企業や官庁や自治体等の組織が購入するケースもある。しかし、企業等は30条の対象にはならないとするのが、現在の多数説である。従って、これらの企業や組織等は、全く私的複製を行わないにも関わらず、制度上は補償金の支払いを強要されている。

5.  複製制御や暗号化等のアクセス制御が施された機器や媒体が増加しているにも関わらず、そのことが制度(対象や料率)に全く反映されていない。

6.  上記3、4、5は、補償金の徴収が公平、公正ではないことを意味している。

7.  権利者への配分に際し、公平性を保つためのデータが捕捉されていない上に、上記3〜5のように、本来徴収する根拠が無い所からも徴収している(つまり、配分を受ける正当な権利者が存在しないにも関わらず徴収してしまった補償金であるため、権利者への妥当な配分率なるものは、そもそも存在しない)ため、公平、公正な分配は不可能である。
上記問題に加えて、昨今では、以下のような社会状況も見られるところである。
インターネットやブロードバンドネットワークの普及に伴い、ネットワークを通じたデジタル化された著作物のオンライン販売が急速に増大している。このようなコンテンツには、殆どの場合、DRM(Digital Rights Management)と呼ばれる複製制御機構が付加されており、著作権者が許諾した範囲での複製しか行えないようになっている。こうしたコンテンツに関する流通の急激な変化により、個別のコンテンツに対する著作権管理が厳格になされるとともに、著作権使用料の個別課金が可能となるケースが飛躍的に増大しつつある。
我が国における放送コンテンツについては、2011年のデジタルへの完全移行期(アナログ放送の終了)に向けて地上波のデジタル化等が推進されつつあるが、現在放送されている地上デジタル放送には「コピーワンス(1回のみコピー可)」信号が付加されており、私的使用目的のダビングすら不可能という、国際標準から見ても、極めて厳格な著作権管理の仕組みが採用される等、技術的保護手段(複製防止技術)の飛躍的な進展が見られるところである(防御技術が進みすぎ、消費者にとっての使い勝手が悪くなり、消費者にソッポを向かれるのではないかという懸念を覚える程である)。

 これらの状況の変化により、私的複製の範囲が相対的に縮小しているという実態等にも鑑み、上記した多くの課題、問題を抱えている本制度を段階的に縮小し、例えば、アナログ放送が終了する2011年を目処に、これを廃止すべきと考える。


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