ここからサイトの主なメニューです

「私的録音録画補償金の見直し」に対する意見について

委員名 潮見 佳男
1  ハードディスク内蔵型録音機器等について、政令による追加指定に関して、実態を踏まえて検討する。
 反対。現行の補償金制度の導入時とは異なる環境の下での著作物の流通・利用形態が大きな比重を持ってきている状況下で、対象となる機器の、しかも機能の一部の共通性(現在指定されている機器と同じような用い方がされる場合がある)という面のみを取り上げて、しかも「政令」による追加指定という形で処理するのは問題がある。
2  現在対象となっていない、パソコン内蔵・外付けのハードディスクドライブ、データ用のCD-R/RW等のいわゆる汎用機器・記録媒体の取扱いに関して、実態を踏まえて検討する。
 政令による追加指定という含みで検討をするのであれば、反対。もしこのような検討をするのならば、はじめに現行制度ありきというスタンスからではなく、補償金制度そのものを一から見直すことを視野に入れ、議論をおこなうべきである。このことを「政令による追加指定」という枠組の中で扱うとすれば、もはや運用の域を超える。「法の支配」という観点からは、法改正の必要性を抜きにしてこの問題を語るべきではない。
3  現行の対象機器・記録媒体の政令による個別指定という方式に関して、法技術的観点等から見直しが可能かどうか検討する。
 今日の社会における著作物の流通・利用形態を制度そのものの廃止ないし根本的な見直しという意味を含めるのであれば、賛成。個別指定の拡張という面にのみ特化した検討であれば、反対。
4  自由記載
現行の補償金制度を著作権者と利用者とをダイレクトに結びつける制度へと変容させるべく、その技術的方策を踏まえ、検討をおこなうべきではないか。
著作物の流通・配信システムの多様化、多彩な著作権者の登場、対象機器の属性、著作物利用形態ならびに当該機器の利用可能性を考慮に入れることなく、以前に作られた制度を拡充して便宜的に政令による追加指定を繰り返すようなことにでもなれば、「とりやすいところから、とる」という場当たり的な運用に堕してしまい、制度そのものの改革の機会を逸してしまうことになるであろう。
そもそも、現行制度にも問題がある。たとえば、補償金の配分先と配分方法について、今のままでよいか、検討をすべきではないか。
いずれの方向をとるにせよ、現在のメンバー構成で政令による追加指定・個別指定の問題を議論して、政令でその成果を実現するというのでは、利用者たる消費者の声が十分に反映されない。消費者の声を代弁する委員が1人というのは、あまりにもいびつである。
同様に、機器メーカーの意見がヒアリングのような形でしか聞けないというのも、問題である。著作権関係団体の委員と同等の委員の数を、消費者関係委員と機器メーカー関係委員(事業者側委員)に割り振って初めて、各方面からの意見を対等に反映できる手続保障がなされるものと言うべきではないか。上記1から3の議論を仮におこなうのならば、委員会のメンバー構成に配慮をすべきである。ことに、「政令」による運用面での処理で対処するのであれば、立案面で国民の声を反映するだけの十分な機会の保障と国民各層への事前の照会が必要である。
この点は不案内であるが、もし、今回の議論が今般の知財戦略大綱との関係で出てきたのであるならば、たとえば政令による追加指定がおこなわれるとどのような経済的効果・不利益が生じるのか、経済・社会にかかる国家戦略にどのような影響を及ぼすのか、市場にどのような変動をもたらすのかを慎重に見極める必要がある。
現行の補償金制度というものは、国民にきわめてわかりにくいものとなっている。多くの国民は、現在対象となっている機器を購入する際にすら、補償金がかかっていることを知らずに購入しているものと思われる。また、補償金がどのように分配され、どのように利用されているかに至っては、国民の多くは限りなく無知に近いのではないかと思われる。仮に補償金制度を維持するのであっても、同制度がどのような仕組みになっているのか、対象機器を支払う際に補償金がどれだけ徴収されているのか、わかりやすく表示かつ周知させる必要があるのではないか。実は、このほうが、法制問題小委員会で扱うべきテーマとしては、対象機器の追加をめぐる議論以上に重要な点ではないかと考える(前述したように、著作物の流通・利用形態が多様化している今日では、いっそうのことである)。


前のページへ 次のページへ


ページの先頭へ   文部科学省ホームページのトップへ