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4 自由記載(現行の私的録音録画補償金制度の改善点、私的録音録画補償金制度の中期的な方向性など)

委員名 コメント
石井 紫郎  特になし。
市川 正巳 (中長期的な方向について)
 現在の補償金制度が立法目的との関係で、規制対象が広すぎたり、狭すぎたりしている問題を抱えていることは理解できる。しかし、現実的な問題は、音楽配信の隆盛等により、補償金制度を廃止するに足りる収入が権利者に入ってくるか、補償金制度という立法を基礎付けた私的録音等は急速に縮小するかにある。客観的な議論をするためには、実態を定量的に把握することができる実態調査結果が欲しい。
 おおざっぱな見通しとしては、音楽配信の隆盛及び技術革新等によっても、補償金制度を基礎付けていた私的録音等は依然として相当程度残るのではないか。そうであれば、料率を現在より下げる可能性があるとしても、補償金制度自体は存続させざるを得ないのではないか。その際は、数年ごとに実態調査を行い、各機器、各媒体ごとに私的録音等に供される割合を調査すべきことになる。

(現行制度の問題点について)
 現行補償金制度の様々な問題点が指摘されている。消費者に補償金を支払っていることを広く知らせることは、すぐにでもできることであろう。既得権者が譲らず配分割合をコンマ1パーセントも変えられないとか、権利者にお金が行き渡らずに無駄遣いをしていると疑われるようなことが仮にあるとすれば、国民の批判を招く行為であり、そのような疑いを受けない方向への改革を目指すべきことは当然である。
大渕 哲也  前記1のように、個別の課金が技術的にできないという前提のもとで、ラフな課金もやむを得ない面があるが、もちろん、このようなラフさは軽減できるに越したことはないので、そのための検討は尽くすべきであろう。また、前記1のように、技術の進展に伴い、個別の課金が可能なケースが増大する状況にあるのであれば、それに応じた一定の調整も必要となり得よう。
 なお、前記1で述べたような、個別の課金が可能なケースと可能でないケースについてのおおよその割合(今後の見通しを含む)等のデータは、私的録音録画補償金制度の今後を考えるに当たって非常に重要なものと考えられるので、関係各位におかれては、できるだけこのようなデータを示すようにご努力いただければ幸いである。
加藤 さゆり  パソコンなどの汎用機器・媒体は、2に述べるように、現在の補償金の対象とすることは不適当である。他方、現在の対象機器にハードディスク内蔵型などを追加しても、汎用機器・媒体が対象にならない状況では、私的録音・録画の一部しか依然対象にならず、不公平感が生じる。機器・媒体の購入時に一律に課金するという現在の補償金は、既に制度として維持困難なものとなっており、機器・媒体の政令指定の追加という方法ではなく、早急に、根本的な制度の見直しを行うべきである。
 (現在の制度が続く間)消費者が補償金について認識できるように対象機器・媒体について、消費者が支払う補償金の額を表示するとともに、制度の啓発を行うべきである。

(補償金の配分について)
 補償金が具体的にどう配分されているか、20パーセントの部分も含め、配分基準と実際の配分先について透明性を高めるとともに、配分のあり方について、例えば当審議会などで議論すべきである。
小泉 直樹  現行制度は、技術的制限手段がいまだ開発されておらず、個別課金が不可能であった平成5年の時点においては、ラフジャスティス、セカンドベストな解決としてそれなりの合理性が認められるものであった。ひるがえって、コピーコントロール、ネット上での音楽配信が現実のものとなりつつある今日、このような制度がはたして支払義務者として想定された消費者をはじめとする社会の合意を得られるものであるか、慎重に検討する必要がある。
里中 満智子  そもそも今の制度では透明性を維持できない。技術的に管理が不可能だった時代の制度なので制度そのものを見直すべき。公平な著作権管理を可能にする技術開発に基づいたクリアな管理を目指す制度に作り直すべき。我が国の文化を守り、かつ世界中の消費者にきちんと然るべき使用料を支払ってもらえるように技術開発に力をそそいだ方が発展的。今の組織は技術を生かす著作権機関に変身できないか。
潮見 佳男
 現行の補償金制度を著作権者と利用者とをダイレクトに結びつける制度へと変容させるべく、その技術的方策を踏まえ、検討をおこなうべきではないか。
 著作物の流通・配信システムの多様化、多彩な著作権者の登場、対象機器の属性、著作物利用形態ならびに当該機器の利用可能性を考慮に入れることなく、以前に作られた制度を拡充して便宜的に政令による追加指定を繰り返すようなことにでもなれば、「とりやすいところから、とる」という場当たり的な運用に堕してしまい、制度そのものの改革の機会を逸してしまうことになるであろう。
 そもそも、現行制度にも問題がある。たとえば、補償金の配分先と配分方法について、今のままでよいか、検討をすべきではないか。
 いずれの方向をとるにせよ、現在のメンバー構成で政令による追加指定・個別指定の問題を議論して、政令でその成果を実現するというのでは、利用者たる消費者の声が十分に反映されない。消費者の声を代弁する委員が1人というのは、あまりにもいびつである。
 同様に、機器メーカーの意見がヒアリングのような形でしか聞けないというのも、問題である。著作権関係団体の委員と同等の委員の数を、消費者関係委員と機器メーカー関係委員(事業者側委員)に割り振って初めて、各方面からの意見を対等に反映できる手続保障がなされるものと言うべきではないか。上記1から3の議論を仮におこなうのならば、委員会のメンバー構成に配慮をすべきである。ことに、「政令」による運用面での処理で対処するのであれば、立案面で国民の声を反映するだけの十分な機会の保障と国民各層への事前の照会が必要である。
 この点は不案内であるが、もし、今回の議論が今般の知財戦略大綱との関係で出てきたのであるならば、たとえば政令による追加指定がおこなわれるとどのような経済的効果・不利益が生じるのか、経済・社会にかかる国家戦略にどのような影響を及ぼすのか、市場にどのような変動をもたらすのかを慎重に見極める必要がある。
 現行の補償金制度というものは、国民にきわめてわかりにくいものとなっている。多くの国民は、現在対象となっている機器を購入する際にすら、補償金がかかっていることを知らずに購入しているものと思われる。また、補償金がどのように分配され、どのように利用されているかに至っては、国民の多くは限りなく無知に近いのではないかと思われる。仮に補償金制度を維持するのであっても、同制度がどのような仕組みになっているのか、対象機器を支払う際に補償金がどれだけ徴収されているのか、わかりやすく表示かつ周知させる必要があるのではないか。実は、このほうが、法制問題小委員会で扱うべきテーマとしては、対象機器の追加をめぐる議論以上に重要な点ではないかと考える(前述したように、著作物の流通・利用形態が多様化している今日では、いっそうのことである)。
末吉 亙
1. 私的録音録画補償金制度の抜本的見直し中長期的には、録音録画機器の具体的な利用状況、技術的保護手段の技術水準、コンテンツの流通環境などからみて、デジタルコンテンツの私的複製により権利者利益が害される程度等を検討し、私的録音録画補償金制度を抜本的に見直すべきである。例えば、1地上波デジタル放送のコピーワンスの普及、音楽コンテンツのオンライン配信による課金システムの普及、CD販売・レンタルにおける権利管理強化など、デジタルコンテンツの権利者利益を害さない環境の整備状況や、2国際的な動向を勘案し、私的録音録画補償金制度廃止時期を5年以内に決定する。当面5年間は、この抜本的な見直しの経過を毎年報告する。
2. 私的録音録画補償金制度の短期的な見直し補償金金額を消費者に明示する制度とする。還付制度を簡素化する。補償金の配分を合理的なものに見直す。
茶園 成樹  近時、著作物の利用形態は大きく変化してきており、今後さらに変化することが予想される状況のもとで、著作物の利用を促進しつつ、権利者が適正な報酬を受けることができるようにするという要請を実現するために、私的録音録画補償金制度に合理性が認められる領域を検討し、その検討に基づいて、同制度の内容・範囲を議論すべきと思われる。
 なお、同制度は本来的に過度な厳密さを求めることはできないものであるが、補償金を利用者が一般的・抽象的に他人の著作物の複製の機会を与えられることに対する対価と捉えて同制度を正当化することは、現在の著作物利用の状況に鑑みると、適切とはいえないであろう。
土肥 一史  
苗村 憲司  私的録音録画補償金制度に関する消費者への周知を図ること、補償金を権利者に対して合理的に分配することなど、現行制度の運用について改良の余地があると思います。
 なお、今年度の検討課題ではなく長期的課題としては、デジタルコンテンツの創作活動を大幅に活性化するためのインセンティブを与えるために最適の制度および技術のあり方を検討することが必要になると考えています。
中村 伊知哉  本制度がハードウェアとソフトウェアをめぐるマネーフローの調整問題であれば、必ずしも著作権法のスキームに縛られずとも、財政・税制措置等も含め、国民にとって望ましいバランスを図る施策を検討すればよいと考えます。
中山 信弘
1  仮にハードディスク内蔵型録音機器等に課金をするとしても、問題は山積しており、これらの問題に一切目をつぶり、単に政令でハードディスク内蔵型録音機器等を追加して済ませることは到底認められない。仮にハードディスク内蔵型録音機器等に課金するとしても、それは当面の緊急避難的な意味しか持ち合わせず、将来的には一定の期限を区切り、30条2項につき、抜本的な見直しを行うべきである。課金は、抜本的見直しに時間的余裕を与える意味しかないであろう。

2  現在の課金制度は、対価の徴収・分配の両面において、ラフジャスティスと言わざるをえない。他人の著作物の録音・録画をしないユーザからも徴収しており、多数の録音・録画をする者も、少ししか録音・録画しない者も同じ額の課金をしている。また録音・録画できないものも出現しているが、そのような点も考慮されずに課金されている。録音・録画をしないユーザに対しては補償金の還付制度は存在するが、これは誰が考えても利用できない、実効性のないシステムであり、現に全く利用されていない。このような還付制度は、憲法違反のそしりを免れるためのアリバイにすぎず、当初から機能しないことが予想されていた。また徴収した金の配分は、果たして公正になされているか、分配率が固定化していないか、真に著作権保護等のために使用されているか等の検証も必要となろう。また徴収した額の2割は共通目的基金に繰り入れられているが、これは著作権の利用料という私財であり、このように公共目的に使用することの法的意味も問題となろう。この問題は今に始まったものではないが、コピーコントロール技術が発展すればするほど、大きな問題となろう。ただ、以上のようなラフジャスティスが正当化できるとすれば、他に利用可能な手段がないという説明以外にないであろう。たとえラフであっても、他に方法がなければやむを得ないということになる。その意味で、30条2項が設けられた時代においては、この課金制度は一応の合理性をもっていたであろうし、またそれなりに機能をしてきたと言えよう。

3  その後の技術の発展により、このラフジャスティスが現在でも通用するのか、という点についての十分な検証が必要となる。現在においては、以下のような問題点がある。
 
1 . デジタル技術の発展により、コピーできない、ないしはコピー制限が可能となってきた。またデジタル地上波放送においては、コピーワンス機能が付加されると聞いている。そのうえ、オンライン配信等にように大本において権利処理をすることが可能となる技術が発展しつつある。未だ全ての場合において権利処理が可能という段階にはほど遠いが、従来と比較するならば、複製できない場合あるいは事前に権利処理が可能である場合が激増していることは間違いない。そうなると、30条2項の立法時にくらべ、ラフジャスティスのラフの程度が一段とひどくなっていると言える。
2 . 技術の発展により、各機器の間の技術上の区分が困難になりつつある。従来は録音・録画機器と媒体とが分離されており、条文上は明記されてはいないものの、30条2項の規定もそれを前提にしていたであろう。しかし媒体の容量が大きくなれば、敢えて機器と媒体を分離する必要は無く、一体化したiPod的なものが出現することは当然である。こうなってくると、ハードディスク内蔵型録音機器等を汎用機器・記録媒体から切り分けて政令等で定義をすることが可能か。「主たる目的」「専用」等の制限を付けることは、条文上は可能としても、意味があるのか。iPod photo、あるいはiPod類と携帯電話の融合したもの(日経6月16日夕刊の報道によれば、欧州では1年以内に携帯に直接音楽配信するビジネスが立ち上がるとのことである)の出現は十分に予想されることであり、それらをどのように区分するのか、あるいは区分することにどのような意味があるのか、という十分な検討がなされなければならない。
3 . 著作権振興等の目的のために、2割の共通目的基金への繰り入れは妥当か。この補償金の性格は、著作権の使用の対価という私的財であり、強制的に基金に繰り入れるのは筋が違うのではないか。対価という私法上の問題が、あたかも税法上の問題にすり替わったかの感がある。これは、徴収・配分においてラフジャスティスであるが故に、その代償として置かざるを得なかった規定で、徴収・配分が正確になればなるほど廃止に向かうべきであり、かりに公共目的上必要な支出であるならば税で賄うのが筋であろう。
4 . このことは、結局30条2項の根本的見直しということになるが、それはかなりの時間を要する作業であり、3年程度は必要ではないかと推測される。

4  現行制度を改正し、メーカ自体に課金するという制度も選択肢としてありうる。わが国現行法のシステムは、対価(補償金)を支払うのはあくまでもコピーをしているユーザであるが、現状では個々のユーザに課金することは不可能であるので、メーカはユーザのコピーに寄与しているであろうから、メーカ等に協力義務を課している(サンクションはない)。しかしこれは、当事者間の暗黙の了解のようなものがあって始めて成立するシステムで、あたかもガラス細工のように脆いものであり、仮にメーカ等が協力を拒否したら崩壊の危機に瀕する。徴収を確固たるものにするためには、メーカに課金する方が確かではあるが、ラフジャスティスの程度がひどくなれば、それだけメーカに課金する合理性は低くなるであろう。機器・記録媒体の購入者の大半が、対価を支払うことなく著作物の録音・録画をしているという状況があれば、メーカ等の寄与が大きく、ラフではあってもメーカ等に課金することは許される範囲内かもしれない。しかしコピーコントロール技術が発展してコピーできないものが増え、また大本での権利処理が可能なオンライン配信が激増している現在、現行法の立法時の時以上に、メーカに対する課金は合理的な根拠を失っているのではなかろうか。現行法では、一応形式的ではあるが、録音・録画をしない者については還付制度が存在しているが、メーカへ課金する場合には還付制度は考えられないであろう。このような現状の下で、メーカに直接課金することは、果たして憲法論に耐えうる十分な理論武装ができるか、疑問がある。

5  以上のように、技術の発展により、30条2項は制度疲労を起こしつつあるが、さはさりながら、現状において、直ちに30条2項を廃止して、新たな制度の定立をするほどには議論が煮詰まっていないし、またコピーコントロール技術等の帰趨、普及の状況を見きわめる必要もある。今後の展望については未だ絵が描けない状態であり、今後、積極的な議論が必要であろう。
浜野 保樹  私的録音録画補償金を継続するのであれば、支払った者が納得するための説明責任が生ずる。補償金の配分の根拠、使用細目などの開示が必要。
前田 哲男  私的録音録画を主たる目的として開発・設計、販売・購入、利用されている機器等の問題と、汎用機器・記録媒体の問題とは区別して論じるべきである。前者は、ハードディスク内蔵型録音機器等が急速に普及し、従来からの補償金対象機器等と市場で代替しつつある現状において、早急に結論を出すべき問題である。これに対し、後者の問題を検討するに当たっては、1DRMの進展等と私的録音録画補償金制度との関係、2私的録音録画補償金の支払及び返還の方法について、現行法とは異なる方法は考えられないか、3そもそも複製者(ユーザー)を本来的な補償金負担者とする現行法の考え方が適切かどうかなどの点について、中長期的視野に立った議論を行う必要がある。
松田 政行  制度を改・廃するには、立法時になかった新たな立法事実が求められる。新しい機器・媒体の市場における登場は、新しい立法事実とはいえない。むしろ、立法時に想定した事実である。
  1を例にとって考えるならば、インターネットを介した適法サイトからのみ受信し、複製をする(CDからの複製ができない)技術を導入するなど、技術的に著作権管理システムが完成する社会状況が生ずることによって本補償制度を改・廃すべき新しい立法事実となりうる。
 2011年に地上波デジタル放送が完全移行になることから、放送される著作物に関する一世代コピーに限る技術的制限が実施される。これを新しい立法事実の一つと捉えるべきではない。本補償金制度は、私的使用を目的とするデジタル方式の録音・録画を対象とするもので、そもそも一世代コピーがこの対象となるものである。その後のコピーは、通常私的使用の範囲を超えるものであり、これが制限されることは本補償金制度とは関係がない。
村上 政博  ネット配信の進み方をみながら抜本的な制度見直しも検討するべき。
森田 宏樹  
山地 克郎 現行制度は、次のような基本的問題を内包している。
1.  制度上の補償金の負担者は、30条の対象となる複製を行う一般消費者であり、機器や媒体の製造業者は、補償金の支払いの請求及びその受領に関する協力義務を負っているにすぎないが、現実問題として、価格への上乗せは困難であり、実態は業者の負担になっている。

2.  一般消費者の多く(殆ど)は、当該制度の存在を認識していない。従って、消費者が負担している、あるいは、負担すべきものであるという認識が無い。

3.  補償金の対象となるようなデジタルの私的複製を全く行わない一般消費者も、補償金を支払うことになっている。制度上は、そのような人に対しては「返還請求権」を与えているが、返還請求のために必要となる手間と費用が、返還されるであろう金額よりも、通常は遥かに多いことと、そのような複製をしないことの立証の困難さから、返還請求は、ごく最近、1件起こされたのみである(朝日新聞平成17年6月22日朝刊3面「初の返還決定、でも8円」)。従って、この返還請求権は、名目だけのものであり、全く実が無い。

4.  対象となる機器や媒体を、企業や官庁や自治体等の組織が購入するケースもある。しかし、企業等は30条の対象にはならないとするのが、現在の多数説である。従って、これらの企業や組織等は、全く私的複製を行わないにも関わらず、制度上は補償金の支払いを強要されている。

5.  複製制御や暗号化等のアクセス制御が施された機器や媒体が増加しているにも関わらず、そのことが制度(対象や料率)に全く反映されていない。

6.  上記3、4、5は、補償金の徴収が公平、公正ではないことを意味している。

7.  権利者への配分に際し、公平性を保つためのデータが捕捉されていない上に、上記3〜5のように、本来徴収する根拠が無い所からも徴収している(つまり、配分を受ける正当な権利者が存在しないにも関わらず徴収してしまった補償金であるため、権利者への妥当な配分率なるものは、そもそも存在しない)ため、公平、公正な分配は不可能である。

 上記問題に加えて、昨今では、以下のような社会状況も見られるところである。
 
 インターネットやブロードバンドネットワークの普及に伴い、ネットワークを通じたデジタル化された著作物のオンライン販売が急速に増大している。このようなコンテンツには、殆どの場合、DRM(Digital Rights Management)と呼ばれる複製制御機構が付加されており、著作権者が許諾した範囲での複製しか行えないようになっている。こうしたコンテンツに関する流通の急激な変化により、個別のコンテンツに対する著作権管理が厳格になされるとともに、著作権使用料の個別課金が可能となるケースが飛躍的に増大しつつある。

 我が国における放送コンテンツについては、2011年のデジタルへの完全移行期(アナログ放送の終了)に向けて地上波のデジタル化等が推進されつつあるが、現在放送されている地上デジタル放送には「コピーワンス(1回のみコピー可)」信号が付加されており、私的使用目的のダビングすら不可能という、国際標準から見ても、極めて厳格な著作権管理の仕組みが採用される等、技術的保護手段(複製防止技術)の飛躍的な進展が見られるところである(防御技術が進みすぎ、消費者にとっての使い勝手が悪くなり、消費者にソッポを向かれるのではないかという懸念を覚える程である)。

 これらの状況の変化により、私的複製の範囲が相対的に縮小しているという実態等にも鑑み、上記した多くの課題、問題を抱えている本制度を段階的に縮小し、例えば、アナログ放送が終了する2011年を目処に、これを廃止すべきと考える。
山本 隆司
【結論】  補償金制度は、廃止を検討すべきである。

【理由】  補償金制度は、ライセンス市場が成立しない私的複製において、その代替措置として、設けられるものであるが、現状においては、その著作物創作促進効果と、著作権のないものなどの自由利用抑制効果において、大きな問題を生じているように思われる。すなわち、著作物創作促進効果は、そもそも集めた補償金のうち共通目的基金20パーセントは著作者に分配されない。共通目的基金は、著作権制度の研究等に使用されるが、これは著作者が負担すべきものではなく広く国民が負担すべきものである。また、著作者に分配されるまでにSARAHやいくつかの権利者団体等によって管理手数料が差し引かれるので、補償金制度の持つ著作物創作促進効果には疑問がある。
 他方、自由利用抑制効果を、まず、補償金の主たる財源となっているMDについて考えてみる。MDに録音される音源としては、1著作権の存在しないPD音源や自作自演の音源、2レンタルCD、3ファイル交換ソフトによってダウンロードした音源、4自己の所有するCDが考えられる。このうち、1著作権の存在しないPD音源や自作自演の音源はごくわずかと思われるので、自由利用抑制効果は小さい。2レンタルCDをMDに複製することは、レンタルによってレンタル中に鑑賞の料金しか支払っていないので、新たな損害を権利者に与えていると考える。3ファイル交換ソフトによってダウンロードした音源をMDに複製することは、明らかに権利者に損害を与える。4自己の所有するCDを複製することは、CD購入によって自己使用の対価を支払済みなので、これをMDに複製することには新たな損害を権利者に与えていないと考える。したがって、2の利用に補償金を取ることは、自由利用抑制効果として捉えるべきであると考える。結論として、2自己の所有するCD・MDに複製することに対する自由利用抑制効果は、無視しうるものとは思えないので、補償金制度を正当化しないと考える。また、オーディオ用CD−R等に対する補償金制度は、欺瞞的である。オーディオ用CD−Rとデータ用CD−Rとは中身において何の違いもない。ただ補償金を掛けているかいないかの違いだけである。私もこの事実を知ったときから、保有するCDを複製する場合にはデータ用CD−Rを使っている。こうすることは違法でもないし、経済的に合理的な行動である。オーディオ用CD−Rを購入する消費者は、この事実を知らず、「オーディオ用」という以上オーディオ録音にはより高いクオリティをもたらしてくれるものと誤解しているのである。このような消費者の誤解によってのみ成り立つ制度は、存在すべきとは思われない。
野村 豊弘  現在の制度を前提として、新しい技術に対応して、修正(追加指定等)もやむを得ないが、将来的には、私的複製に関する権利制限との関係も視野に入れて、制度自体の見直しをすることも必要ではないかと考える。またコピーを制限する技術も考慮の要素とすべきである。


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