ここからサイトの主なメニューです


「著作権法に係る検討事項(仮題)」の整理に向けた意見について

委員名 前田 哲男
 まず、従前の文化審議会著作権分科会において、引き続き検討する必要があるとされている事項(関係者間で協議が進められている事項として文化審議会著作権分科会審議経過報告(平成15年1月)又は平成15年第4回法制問題小委員会資料に記載のもののうち、平成15年1月以降に具体的な協議が行われている事項を含む。)は、来年度以降の集中的検討項目として取り上げるべきである。
 そうしなければ、過去における審議又は関係者間での協議により積み重ねられた成果を無にすることになってしまうからである。

 「知的財産推進計画2004」において検討するとされている事項のうち、著作権法改正を必要とする事項については、本小委員会においても、検討項目として取り上げるべきである。
 これらの事項には重要性が高いと思われるものが多数含まれている。加えて、仮に「知的財産推進計画2004」で検討すべきとされた事項を、本小委員会が検討の対象としてすらも取り上げないとすれば、取り上げないこととする十分かつ明確な理由が必要であるが、そのような理由は見出せない。

 WIPOで放送新条約の検討が進められているので、これに対応して我が国の著作権法を改正すべき点があるかどうかを検討項目として取り上げるべきである。

 以上1、2及び3で取り上げるべき事項のほか、次の各事項を取り上げるのが適切であると考える。

「2. 著作者の権利」関連
 1  通常の方法によりその名を映画製作者として表示されている者を映画製作者と推定する規定を設ける必要がある。ベルヌ条約15条(2)に規定されているが、我が国の著作権法に対応する規定がないからである。((15)関連)

「4. 著作権等の制限」関連
 2  デジタル技術の発展・普及により完全な複製物を容易かつ大量に作成できるようになった時代の状況下で、現行法30条が条約上要請されるスリーステップ・テストを満たしているかを再検討する必要がある。((42)、(43)、(44)関連)

 3  教育に関する制限について、教育現場の実情を調査して、充実した教育を円滑に実現するための必要と権利者の利益保護とを調和させる改正が必要かどうかを検討する必要がある。((62),(63)、(64)、(65)関連)

 4  行政手続や法令で定められた義務の履行のために必要と認められる範囲における複製に対する制限規定を設けるかどうかを検討する必要がある。現行法42条は、裁判手続に関しては主体を限定せずに複製を認めているのに、行政目的については内部資料に限定しており、同条によって許される範囲が狭くなっているため、社会の実情に沿わない点が生じているからである。((83)、(84)、(85)関連)

 5  インターネット等の通信過程の効率化・安定化を目的とするためのキャッシング等の複製であって、他の目的に転用されるおそれのないものに対する著作権等の制限について検討する必要がある。これらの複製を認めるべき現実の必要性は高いが、現行法下では、これを認める根拠規定がないからである。((90)関連)

 6  一般に周知又は閲覧させることを目的として、著作権者の意思に基づきインターネットで自由な閲覧に供されているwebページに掲載されている著作物について、
プリントアウトにより複製し、その複製物を企業等の内部資料として配布することは、各webページにおいて「禁プリントアウト」等の表示がない限り、行うことができるとすること
インターネットユーザーがそのパソコン内にキャッシングできるとすること
  を検討する必要がある。
 これらは日常的に広く行われていることであり、権利者の推定的同意があると認められるケースも多いが、例えばトップページに「このホームページに掲載されているすべての情報は,文化庁が著作権を有しています。法律で認められたものを除き,無断で転用・引用することを禁じます」という記載がある場合に、各ページのプリントアウト及び内部資料としての配布に推定的同意があるといえるか問題が残る。(一部(90)関連)

 7  機器の保守・修理等に必然的に伴う複製であって、その保守・修理等に必要な期間経過後には消去され、かつ、他の目的に転用されるおそれのないものに対する著作権等の制限について検討する必要がある。これらの複製を認めるべき現実の必要性は高いが、現行法下では、これを認める根拠規定がないからである。((93)関連)

 8  プログラム著作物の複製物の「所有者」について認められている複製・翻案行為に対する著作権の制限を、ファイナンシャルリースによって合法的に利用する者にも認めることについて検討する必要がある。それらの者は、レンタルを受ける者等とは異なり、実質的には所有者に近いが、形式的には所有者でない(リース事業者が所有者)ため、47条の2の適用を受けられないと解釈されるおそれがあり、立法的な手当が求められるからである。((96)関連)

 9  プログラムの著作物の著作権者等が予めバックアップ用のディスクを提供する場合は、当該ディスクも47条の2第1項に基づき作成されたバックアップコピーと同視し、同条第2項を適用することを検討する必要がある。利用者の便宜のためバックアップ用のディスクを予め著作権者等の側で用意して利用者に提供することは広く行われているが、本来1つの複製物が2つになって流通することを防止する必要がある点では、当該ディスクと同条第1項に基づき作成された複製物とで実質的な差がないからである。((97)関連)

 10  同一性保持権侵害とはならない例外を定めた20条2項4号において、「著作物の性質並びにその利用の目的及び態様に照らしやむを得ないと認められる改変」とあるのを、厳格な意味で「やむを得ない」と認められる場合だけでなく、これを柔軟に解釈できるようにすること(ただし、著作者の名誉・声望を害さない範囲に限る。)を検討すべきである。今日、著作物として保護を受けるものには実用的側面の強いものも多数含まれており、そのような著作物の性質並びにその利用の目的及び態様に照らすと、著作者の名誉・声望を害しない範囲である限り、厳格な意味で「やむを得ない」とはいえない改変であっても、同一性保持権侵害としないことが相当な場合があると考えられるからである。((98)(100)関連)

「6. 侵害とみなす行為等」関連
 11  侵害とみなす行為のうち、113条1項に漏れがないかどうかを検討する必要がある。113条1項を適用する際に、みなし侵害に含まれるかどうかの解釈に疑義の生じる場合があり(例えば、頒布目的なく輸入された無許諾複製物を、その情を知って頒布する行為等)、この問題点を立法的に解決するのが適切である。((110)関係)

「8. 裁定制度・登録制度・契約など」関連
 12  著作権等の原始的な取得者が誰であるかを示す登録制度の導入を検討する必要がある。現行法では、著作権等の譲渡による取得(一般承継によるものを除く。)については登録が第三者対抗要件とされ、そのための登録制度があるが、原始的な取得を登録する制度(不動産登記における保存登記に相当する制度)がない。しかし、権利執行の段階では、登録により原始的な権利取得を第三者又は執行関係機関等に対して明らかにしたい場面がある。

 13  著作権法61条2項の適用を懸賞募集等の場合など一定の場合に限定し、同項の適用を受けない場合を認めることを検討する必要がある。現在の著作権譲渡契約の実務では、著作権法27条及び28条に規定する権利を含めて譲渡することが広く行われており、特掲がない場合にこれらの権利が譲渡人に留保されたものと推定することが必ずしも経験則に合致しない場合も生じているからである。((136),(137)関連)



ページの先頭へ   文部科学省ホームページのトップへ