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「著作権法に係る検討事項(仮題)」の整理に向けた意見について

委員名 苗村 憲司
1. 検討事項の整理を行うにあたっての視点について

 著作権法改正の必要性を検討するにあたっては、種々の視点から重要性、緊急性、実現容易性、理解・啓発容易性等を評価し、その結果に基づいて優先順を定める必要があります。考慮すべき視点は多様であり、相互に関連するものもありますが、少なくとも次の点を含めるべきと考えます。

1 インターネットを始めとするデジタル情報環境の劇的拡大により、著作物の創作、頒布、利活用の態様が根本的に変容したことを前提として、文化の発展を促進するために著作者等の権利と利用者の便益との均衡を図ること。
2 知的財産立国をねらいとする政策の実施に必要な立法措置を行うこと。
3 著作権制度およびその他の法制度に関する国際条約、国際合意等の進展に対応すること。
4 他の法制度の執行における支障を排除すること。
5 確立した社会慣行、利害関係者の合意内容等との整合性を図ること。
6 立法にあたって過度的措置とした事項およびこれまでの審議会において継続して審議すべきとした事項を解決すること。
7 現行法の解釈に関して存在する曖昧性を、判例、審議会の合意等に基づいて解決すること。
8 改正を重ねた結果として複雑となった著作権法の構造、用語等を明確化すること。

 上の18の順序は、おおむね重要性の順序に対応します。しかし、改正の緊急性という意味では34を優先するべきです。
 また、実現の容易性の視点からすれば57を優先することが効率的です。関係者間で進められた協議で合意された内容を法に反映させることもこの立場から見れば現実的と考えられます。しかし、これを優先することはアドホック的な改正を重ねることにつながり、著作権法の構造と規定内容を複雑で不均衡なものとする虞があります。国民の理解と啓発を促進するためには、むしろ8を優先すべきでしょう。
 以下では、関係団体からの著作権改正要望を参考として、優先すべきと考えられる事項の例を示します。(括弧内の番号は、前回資料で付された通し番号です。)

2. 重要性の順序から見て優先すべき事項の例

 (7)  書籍・ゲームソフトなど著作物の複製物の譲渡に関して、権利者に利益を還元する方策を検討する。
 (8)  頒布権が及ぶのは、劇場公開用映画等で公に上映されることを前提とする映画の著作物のみであり、それ以外の著作物に係る譲渡権は、譲渡により消尽することの明文化
 (11)  第29条を削除し、映画の「著作者」である「映画監督」へ著作権が帰属することとする。
 (13)  いわゆる「マンガ喫茶」でのコミックの利用に係る利益の著作者への還元
 (14)  「追及権」の創設
 (38)  デジタル時代に対応した一般的な権利制限規定の導入
 (62)  教育機関における公衆送信に対する著作権等の制限について、同時ではない自動公衆送信の場合も含める。
 (90)  キャッシング等通信過程の効率化を目的とするための複製に対する著作権等制限
 (91)  コンピュータのメモリへの瞬間的・過渡的蓄積など、機器の内部等で行われるもので機器の技術的構造上、不可欠に生ずる蓄積(瞬間的・過渡的なもの)に対する著作権等の制限
 (98)  同一性保持権(第20条)の内容を「意に反して」から「名誉声望を害する態様で」に改める。

3. 緊急性の順序から見て優先すべき事項の例

 (33)  ブロードバンドサービスを利用した電気通信役務利用放送が、著作権法上の「有線放送」であることを明文化する。
 (30)  デジタル放送のスクランブルなど放送に係る暗号化を技術的保護手段とする。又はこれを無断で解除する行為に対する権利を付与する。
 (46)  私的録音録画補償金の対象機器等の見直し(パソコン内蔵あるいは外付けのCD−R/RWドライブ、データ用CD−R/RW等のいわゆる汎用機器・記録媒体やハードディスク内蔵型ポータブルオーディオプレーヤー等の追加)
 (83)  行政手続や法令によって定められた義務の履行のために必要と認められる範囲における複製に対する著作権等の制限
 (84)  特許庁が特許出願に対し拒絶理由通知で引用した文献を、当該特許出願人が複製すること及び特許庁が出願人に提供することに対する著作権等の制限
 (85)  薬事法を中心とする薬務行政に従ってなされる行為に対する著作権等の制限

4. 実現容易性の順序から見て優先すべき事項の例

 (5)  「写真の著作物」にはVTRの静止画を含まないとする。
 (33)  ブロードバンドサービスを利用した電気通信役務利用放送が、著作権法上の「有線放送」であることを明文化する。
 (108)  映画の著作物に関して、50年を超える保護を希望する場合には「少額の手数料を納付するよう求める」などの方法を検討すべき。

5. 一般国民の著作権法への理解と啓発を進めるために優先すべき事項の例

 (141)  現行法を包括的に見直し、分かりやすい「新著作権法」を制定する。
 (142)  「譲渡」「頒布」「貸与」の用語の整理
 (143)  「使用」と「利用」の用語の整理



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