戻る

文化審議会著作権分科会「国際小委員会」
の検討状況について


1.検討事項(平成15年9月5日に国際小委員会で決定)

      ○ 国際的ルール作りへの参画のあり方について
  放送機関に関する条約
  視聴覚的実演に関する条約
海賊版対策のあり方について
その他
  インターネットを通じた著作権侵害に係る国際裁判管轄及び準拠法の問題等


2.「国際小委員会」委員名簿

   石井亮平 日本放送協会マルチメディア局著作権センター担当部長
  上原伸一 (社)日本民間放送連盟著作権委員会著作権専門部会法制部会主査
  加藤   衛 (社)日本音楽著作権協会常務理事
  久保田裕 (社)コンピュータソフトウェア著作権協会専務理事・事務局長
  小泉直樹 上智大学教授
  児玉昭義 (社)日本映像ソフト協会専務理事・事務局長
  駒田泰土 群馬大学講師
  関口和一 (株)日本経済新聞社編集委員兼論説委員
  大楽光江 北陸大学教授
  高杉健二 (社)日本レコード協会法務部部長
  道垣内正人    東京大学教授
  前田哲男 弁護士
  増山   周 (社)日本芸能実演家団体協議会実演家著作隣接権センター 法務調査部部長
  松田政行 弁護士・弁理士
   主査    紋谷暢男 成蹊大学教授
  山地克郎 (社)電子情報技術産業協会法務・知的財産権総合委員会委員長
  山本隆司 弁護士

3.小委員会の開催状況

      ○ 第1回   平成15年   6月   2日(月)
   ・ 主査の選任について
小委員会の概要について
著作権をめぐる最近の動向について
小委員会の検討事項について

第2回   平成15年   7月18日(金)
   ・ 小委員会の検討事項について
放送機関に関する新条約について(放送前信号の取扱い)

第3回   平成15年   9月   5日(金)
   ・ 小委員会の検討事項について
放送機関に関する新条約について(暗号解除の取扱い)

第4回   平成15年10月   3日(金)
   ・ 放送機関に関する新条約について(新条約に係る諸課題の取扱い)



4.主な意見の概要

   放送機関に関する新条約について、従前の審議会及びWIPOでの論点を踏まえ検討を行い、以下の意見があった。

(1) 放送前信号の取扱いについて
 
スポーツの実況中継などの放送前信号が傍受され、放送と同時又は先立って行われた場合、放送事業者が多額の放映権料や中継費用を費やして放送を行うインセンティブが著しく損なわれること等、経済的投資の大きさという観点から何らかの保護を要望する意見があった。

現行通信法制において放送前信号の傍受は違法とされているが、侵害行為の差止めを請求できる点で著作隣接権による保護が望ましいとの意見があった。

その際、保護すべきは、放送された番組と同一の信号とすべきであり、放送されない部分の放送前信号は保護すべきではないとの意見があった。

放送行為に対する著作隣接権は、公共性の観点から保護が与えられるため、公衆に直接送信されない放送前信号を著作隣接権で保護することに消極的な意見があった。


(2) 暗号解除の取扱いについて
 
2006年から全国的に実施される地上波デジタル放送にもアクセス・コントロール技術が施されることから、これを回避する行為に対して、何らかの措置が講じられることが望ましいとの意見が多かった。

利用者が著作物を享受する知覚段階で規制するのが望ましいが、そのための技術がなかったために、従来の著作権法では複製権など周辺行為を規制していた。技術が進展し、インターネット上で著作物が流通する現在、アクセス権の創設についても検討する必要があるとの意見があった。

(3) 放送機関に関する新条約に係る諸課題の取扱いについて
  1 譲渡権の付与
   ○ 我が国著作権法では、著作権者、レコード製作者及び実演家に譲渡権を付与している点、放送機関に同権利を付与することによる障害は想定しにくい点を考慮すると、同権利を付与していいのではないかとの意見が多かった。

権利行使をする上で複製権侵害の立証が難しい点、放送するコンテンツ保護をより実効的に行う必要がある点を考慮すると、譲渡権の付与は必要である、との意見があった。

海賊版に対し、複製権侵害で対応できるのに、その上譲渡権を付与する必要性、著作権者の譲渡権侵害で対応できるのに、放送機関にも同権利を付与する必要性を疑問視する意見があった。

   ○

譲渡権の国際消尽については、輸入権に関する議論と整合性が取れるように検討すべきであるとの意見があった。


2 利用可能化権及びインターネットによる同時再送信権の付与
   ○ 放送の無許諾再送信が受信されたことを立証することは非常に困難であるため、利用可能化権を付与したほうがより実効的であるとの意見が多かった。

3 異時放送権の付与
   ○ 同時の再放送についてだけ権利があって異時の再放送については権利が付与されていないのは、実態にそぐわないため、異時放送権も付与すべきではないかとの意見があった。その際、インターネットによる再送信権についても異時のものも付与した方が整合性が取れるのではないかとの意見があった。

4 技術的保護手段・権利管理情報に関する義務
   ○ 技術的保護手段の回避等の禁止については、デジタル放送をアナログ放送に転換するなど、技術的に回避せざるを得ない部分については適用除外とするよう考慮してほしいとの意見があった。また、無反応機器の販売等を禁止すると、世界中で異なる技術的保護手段に反応する機器の製造を義務付けることとなり、経済活動を阻害するおそれがあるので、無反応機器の規制については慎重に対処して欲しいとの意見があった。

5 遡及効
   ○ 基本的に保護すべき放送は、放送を行う際に問題となるのであって、既に放送してしなったものについて、遡及させないと対応できない例は少ないので、著作隣接権の原則に従って、不遡及としてはどうかとの意見があった。
ただし、条約締結前に放送を無許諾で固定したものが条約締結後に頒布された場合には、遡及効が有効に働くのではないかとの意見があった。

5.今後の検討予定について

        第6回    平成15年10月31日(金)
  放送機関に関する新条約について(ウェブキャスティングの取扱い)
  インターネットを通じた著作権侵害に係る国際裁判管轄及び準拠法の問題

        第7回    平成15年11月21日(金)
  審議経過の概要(案)について

        第8回    平成15年12月   1日(月)
  審議経過の概要(案)について





ページの先頭へ