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資料4

2003年11月14日


音楽CD等の還流問題に関する考え方

社団法人日本経済団体連合会

はじめに

   音楽CDについては、海外でのみ販売することを条件に正規にライセンスした製品が日本に還流する実態があることから、還流を止めるための輸入権を創設すべきとの意見が、レコード産業より出されてきた。これに対して、日本経団連では、1998年6月、著作権審議会第1小委員会において、輸入を含めた商品の流通の自由を最大限尊重すべきであり、輸入権の創設は現行の商慣行を混乱させる惧れが大きいとの意見を述べたところである。
   その後、還流問題への対応として輸入権を新設する上では、関係者間の協議が重要とされたことから、輸入権の創設を要望する日本レコード協会と意見交換を行ってきたが、本年7月には、協議を積極的に進める観点から、自民党著作権に関するワーキングチームにおいて、日本経団連として、輸入権の創設にあたって検討すべき論点を提示し、さらに、9月30日には、これらの論点について、日本レコード協会より回答を得たところである。
   これらの経緯を踏まえ、改めて音楽CD等の還流問題について検討を行い、以下の考え方を取りまとめた。

1.基本的考え方について

(1) 輸入を含めた商品の流通の自由を最大限尊重するとの観点から、市場分割につながる輸入禁止を認める権利の導入は問題が多いが、還流問題がレコード産業に与える影響の大きさに鑑み、還流問題解決のために、輸入を制限する最小限度の著作権法上の措置(以下、便宜的に輸入権と呼ぶ)を講ずることはやむを得ないと考える。

(2) 輸入権には、わが国音楽ソフトの世界市場における拡大をもたらす一方、国内の音楽ソフト価格の高止まりにつながるおそれもある。世界市場の拡大に寄与しているか、消費者利益にどのような影響を与えているかが不断に問われるべきであり、導入の理由が希薄化するなど前提条件が変化した場合や、消費者に与える影響が予想と異なった場合には、輸入権は役割を終えるべきである。

(3) 本来的には、コンテンツ産業が、真にグローバル市場で活躍する産業に育っていくためには、市場制限的な措置がなくとも、競争力を確保していくことが不可欠である。消費者に与える影響を小さくする観点から、業界として自らなすべきことを明らかにすることや、市場制限的措置を、将来に向かってできる限り少なくしていくことを目指すことが期待される。

2.レコード産業を特別扱いする理由について


   音楽CDの輸入権は、還流問題への対応というあくまでもレコード産業の状況に鑑みて、問題解決のために最小限度で認めるべきものである。著作権法においては、特定の権利者に保護を与えると、それが一般化されて他の権利者も同等にすべきであるとの主張がなされる傾向が強い。そのようにならないよう、音楽CDについて輸入権を認める基準の明確化が必要である。
   その意味で、日本レコード協会が指摘する、1還流の実態の存在、2日本語の商品がそのまま海外で通用するとの商品の特殊性という理由は、おおむね理解できるが、さらに、還流の実態がレコード産業全体に与える影響も音楽CDを特別扱いする理由として考慮すべきである。
   また、技術的保護手段によって還流を防ぐ手段が存在しないことも、支援措置を講ずる理由として考えるべきであるが、輸入権がかえって技術的保護手段導入への自助努力を阻害することがないようにしていくことが重要と考える。

3.制度設計について

   1   権利の対象
   還流問題への対応という観点からは、音楽CDとそれに類する製品に限定すべきであり、音声ガイドや音楽が組み込まれている製品、それらに含まれた音声が固定された部品の流通に影響が出ないようにすべきである。

   2   権利の内容
   還流を認めると権利者の利益が不当に損なわれる行為として、みなし侵害として捉えることが適当である。また、「頒布地域から日本が除外されている」ことが表示されているものに対して権利が及ぶこととするなど、洋楽CDや個人輸入に影響が出ないようにすべきである。

   3   権利の期間
   状況を踏まえて役割を終えるという観点からは、輸入権は、一定期間後に消滅させることとし、継続の是非については、その時点で改めて検討すべきである。そのために、例えば、附則において一定期間後に廃止を含めて見直すとの規定を設けるべきである。

4.輸入権と再販売価格維持制度との関係について

   音楽CDの再販売価格維持制度を実施しているのが、先進国では日本だけであるので輸入権を導入すべきではないとの意見も存在する。こうした批判を払拭するためにも、基本的な考え方で述べたとおり、輸入権を問題解決のための最小限度のものとするとともに、輸入権や再販売価格維持制度が消費者に与える影響をできる限り小さくするよう様々な努力を行うことが望まれる。


以   上


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