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文化審議会

2003年9月25日 議事録
文化審議会著作権分科会法制問題小委員会(第4回)議事要旨

文化審議会著作権分科会法制問題小委員会(第4回)議事要旨

  日  時     平成15年9月25日(木)10:30〜13:00

  場  所 経済産業省別館10階1020号会議室

  出席者 (委員)  
中山主査、石井、入江、上原、金原、上出、児玉、後藤、菅原、瀬尾、常世田、土肥、生野、福田、松田、三田、山地の各委員、齊藤分科会長
(文化庁)
吉川著作権課長、吉尾国際課長、俵著作権調査官ほか関係者

  配付資料

資料1     文化審議会著作権分科会法制問題小委員会委員名簿(15.9.25)
資料2   文化審議会著作権分科会法制問題小委員会(第3回)議事要旨
資料3   保護期間について
資料4   レコード輸入権に関する関係者との協議の状況等について

【参考資料】
              関係者間で合意形成が進められつつある事項等(PDF:13.5KB)

  概   要

(1)    保護期間について
   事務局より資料に基づき説明があった後、以下のような意見交換が行われた。
   (委員:○、事務局:△)

:欧米諸国等との平準化が重要。インターネットでは瞬時に国境を越えて世界中に著作物が流通するので、日本だけが保護期間が短いということになると、コピライトヘブンとして国際的な批判を受けるのではないか。特に日本はインターネット技術が先進しているので、平準化により、保護期間を延長すべき。

:著作物と実演、レコード等の隣接権の保護期間に違いを設ける必要はないと思われるので、これらの整合という観点からも議論すべき。

:インターネット上に著作物が流出することからも、欧米等が70年で保護していて、日本だけが50年という理由はない。また、保護期間が満了すると、商業利用が一斉に起きる現象からも保護期間が短いのは問題がある。

:国際的な平準化が必要ならば、どうしても一番長く保護している国に合わせるしかない。そうすると批判が多いアメリカのミッキ―マウス法案のように日本も95年にするという乱暴な議論になってしまう。延長するなら、別の「哲学」が必要。

:保護期間を考える視点として、それが満了することが社会の文化に貢献するのか否かという議論をすることが重要。延長する期間としては、最長であるところに合わせる必要はないが、地域的に多数であるところのルールに合わせるのが妥当である。

:保護期間をグローバルスタンダードに合わせて平準化するのは、やむ得ない趨勢であると考える。

:国際的なハーモナイゼーションから保護期間を延長する意見が多いが、何らかの別の「哲学」が必要であると感じる。つまり、保護期間を延長することで、著作物の創作が本当により進むことになるのか、その部分の検討を慎重に行う必要がある。

:国際的に特にインターネット時代にハーモナイズするなら、一番強いマーケットである国に合わせざるを得ない。アメリカも延長するときは、深い議論を長い期間にわたって行われたので、業界の意見だけで延長すると後世に必ず批判を受けることになるだろう。

:映画監督協会としては、映画の著作物の保護期間を死後起算にする(監督に著作権を付与することも含め)ことを今後の課題として取り組んでいきたい。

:著作権と著作隣接権の保護期間を差別化する理由はないので、著作権と同様の保護を与えるようにすべき。

:保護期間を延長するなら、アメリカのミッキ―マウス法のような批判を受けない別の「哲学」が必要。また、商業利用されるから、パブリックドメインすることは意義がないという意見に対しては、商業利用があって初めて大衆がその著作物に接し得ることもあるということも付け加えておく。

:ECディレクティブにおいて、原則死後70年にしたのは、平均寿命が延びたことが一つの理由であったと思われる。また、映画の著作物の保護期間をどうするか、一般の著作物を70年に引き上げると、引き続き上げていかなければならなくなる。更に、団体名義の著作物と無名又は変名の著作物の保護期間を同様に扱うことが果たして妥当なのか。

:映画の著作物の保護期間は、映画製作の現状を踏まえ、今後検討していかなければならないと思っている。

:別の「哲学」として言わせてもらえれば、保護期間は「遺族の権利」を保護する視点もあるのではないか。例えば、一番早く死ぬ作家を一つのメルクマールにすべきということも考えられる。

:EU諸国が70年にした経緯を整理することが重要。EUの中で一番長い70年に揃えざるを得なかったので、70年のラインができ、その理由として、平均寿命が長くなったから延ばす、2代目、3代目といった遺族まで権利を引き継ぐという意図といったところが哲学であろう。また、著作物というものは、先人の文化遺産を引き継ぎ、それを素材とし、創作されていく側面から考えると、著作者が長い間、或いは遺族が独占していていいものなのかという問題もある。
  日本は映画の著作物を70年にしたことで、70年の道しるべができ、他の著作物の扱いもどうするのかという議論が当然出てくることになり、また、映画の著作物は死後起算という議論もあり得る。

:今後経済的分析を踏まえた長期的な検討が必要である。

(2)    「輸入権」について
   生野委員より、「輸入権」の創設状況等について資料に基づき説明があった後、以下  のような意見交換が行われた。
   (説明者:◎、委員:○、事務局:△)

:(販売地域の限定とその表示を示し)これはエイベックスのレコードのパッケージ上の表示例だが、現在既に台湾のパッケージにこれを表示していると理解していいか。

:その通りである。

:パッケージの表示に記載されてあるというのは、購入者に対して呼びかけていると認識しているが、購入者に対しては表示内容に関し禁止できないのではないか、仮にできるとすれば、「輸入権」を創設する必要はない。

:現実的には禁止できない。ただこのような形で日本への還流を防止する努力をしていること理解して欲しい。

:「事実として違法である」ということを事実でないのに記載することは法的に問題はないのか。

:表示については参考例であり、不十分な点は今後改善をしていきたい。条文案を理解していただくために、この例(販売地域の限定とその表示)を示したものである。

:日本に還流されるレコードと日本のオリジナル商品のレコードとで外見上何か違いがあるのか。また、確認であるが、洋盤レコードの並行輸入は制限しない形での「輸入権」の創設ということでよいのか。

:外見上は日本の商品と全く同じである。また、洋盤レコードの並行輸入には全く影響を与えない。

:来年1月1日から韓国で第4次文化開放があり、日本のJ-POPのCDが発売できるようになる。日本のアーティストのライブ等、近隣諸国での活躍の場が広がるように、産業基盤を成熟させる意味においても、レコードの還流に対して何らかの歯止めが欲しい。アーティストは一般的な国際契約ルールに従えば、外国でレコードが販売された場合、ロイヤリティは大体2分の1である。韓国や中国などはほとんど、レコードは日本の3分の1の価格で販売されているので、アーティストのロイヤリティは6分の1になる。還流が増えることでアーティストの経済的な利益が損なわれる可能性に憂慮している。

:今後、日本のコンテンツ産業の展開を見据えた場合、海外展開が主となると思われる。産業の障害と考えられる還流は、特にレコードに関して言うと、日本のレコード産業が枯れてしまう可能性が多々あり、それでは大変困るわけである。還流を防ぐことは日本のコンテンツ産業又は国際的な貢献にも繋がることにもなり、是非必要である。

:例えば、アメリカのレコードがある特定地域でライセンスを与えたものがあると思うのだが、それが日本に入ってきているということはあるのか。

:例えば、アメリカが東南アジアの国に洋盤をライセンスして、現地で製造されたものが日本に入ってきているが、量としては、微々たるものである。

:それも今回の「輸入権」の対象にしようという趣旨なのか。

:洋盤に関しては、オリジナル国で製造されたものが日本に入ってきて販売されているものについては対象にしようと考えていない。ただし、洋盤でも、オリジナル国から例えば中国のレコード会社にライセンスされ、そこで安価に製造されたものが、日本に大量に入ってくる場合は、邦盤と同様の問題を抱えることになるので、何らかの手当てが必要と考えている。但し、現状では、レコード店がアジアで製造された洋盤を取り扱っていることはないと聞いている。

:出版物についても、レコードと同様に「輸入権」を創設することができるのか検討してみたい。

:洋盤は従前どおりという話だが、法的にはどのようなテクニックを用いるのか。例えばアメリカで製造されたレコードと、アメリカのレコードが中国で製造されたものとをどように区別するのか。また、区別した場合、国際条約上、問題はないのか。

:制度上は権利付与については内外無差別という形で考えている。権利者が止めたいのであれば、当該地域のみの販売という表示をし、権利行使しない場合は、その表示をしなければよい。但し、洋盤についてはインターナショナル5メジャーから、止めるようなことはしないという言質を得ている。

:それは単に「止めない」と言っているだけで、止める気になればできるという権利をになるのか。

:基本的には「止めること」は可能ということになる。

:つまり、内外無差別にしなければいけないので、法律上は世界中の真正商品を商業レコードに関して止めることができるということになるということか。

:法律上はそうである。ただ、実際の運用では5メジャーの協力を得て現行ビジネススキームを維持しようということである。

:TRIPS協定上は、著作者の権利については、著作権法上認められているものは、他国の権利者にも同様の権利を与える内国民待遇の原則が定められている。他方、著作隣接権者の権利については、条約で明記されている権利についてのみ内国民待遇の原則が定められているので、条約で明記されていない「輸入権」については、自国だけの権利者に権利を設けたとしても条約上は違反にはならない。ただ、外交上の関係で批判が出る可能性はある。従って、法制度上、自国の権利者と他国の権利者について扱いを異にすることはできないと考えている。

:WTO、友好通商条約など、他の条約上との関係でも問題はないか。

:それは分からない。

:隣接権の条約では、通常当該条約によって定められた権利に関し、内国民待遇を求めており、当該条約で定められていない権利については内国民待遇の義務はないと一般的に解釈されている。隣接権以外の条約については、研究が必要。
   還流についてだが、現在どのくらいあるのか。

:現時点の調査では約70万枚、CDライセンス量の約20%が還流していると推定している。

:70万枚だと、各国でも数十万枚の単位が当該国の流通ルートから日本に流れる部分は何らかの業者に取りまとめられていることになる。そういう場合、レコード会社が調査してどのようなルートで流れているのか、またライセンス契約で流せないように契約上の管理をする方法はないのか。

:資料4−1の通り、表示、ライセンス量の限定、発売日の調整等を行っているが、その努力にも関わらず、還流の実態があるということである。

:ライセンシーが承知していて流していると思われるが、そうであればライセンス契約違反なので、契約解除などで対処できるはず。それができない事情があり、還流の実態があるのなら、立法による解決を図る必要もあるだろう。まず、ライセンス契約上で対処できないということを説明していただきたい。

:ライセンシーが承知して流しているとは思えない。ライセンス契約は信頼関係に基づいて行っており、ライセンシーが悪意を持って日本に流すことがあれば、ライセンサーがそれを見過ごすことはない。ただ、ライセンス契約の運用について、より一層努力していきたいと考えている。

:例えば、特許権侵害や著作権侵害では、メーカー等が現地において死ぬ思いで調査をしているという、それだけの努力をしているのか。

:単に横流しがあるのでは。

:ライセンシーが横流しをしているという意味か。

:何十本、何百本という本数ならともかく、実際、並行輸入するコストを勘案すれば、ライセンシーにかなり近いところで、何千本、何万本単位で横流しがされているはずである。そうであれば、レコード会社は流れをつかめるはずだ。

:横流しは考えられない。一旦市場に商品が流通した場合、どのようにでも商品は調達できるので、その辺りをコントロールすることは非常に難しい。

:輸入サイドで、如何に還流を防ぐかということであり、ライセンシーそのものは契約を遵守していると思うが、中間に業者が入るため、そこをコントロールできないため、「輸入権」が必要なのである。

:流通のコントロールが完全にできれば、「輸入権」は必要でなく、それができないがために、世界で65ヶ国が「輸入権」が導入され、法律上の担保がなされていると理解している。

:商業レコードだけに「輸入権」を認める理由が必要。約10年前には、パソコンのソフトも英語版で並行輸入のものが多々あり、それが日本市場の日本語市場を侵食することがあった。ところが、英語版が使いにくいこともあり、ソフトの値段が下がり、並行輸入するメリットがなくなったのである。視点を変えてみれば、日本のコンテンツは世界市場をターゲットにした価格設定等をするビジネスに切り替える時期に入っているのではないかと思っている。

:法体系上、理論的な整合性を説明する意味で、「商業レコード」以外にも何か影響を与えるものはないかということを十分考えなければいけない。

:理論的な整合性だけで「商業レコード」の輸入権を考えるのはどうか。

:整合性というのは、勿論、内容も含めてのことである。つまり、「商業レコード」に限る「理屈」があるのかということだ。

:「理屈」に関しては既に説明したとおりである。

:違う分野で同じ「理屈」のものはないのかという意味である。「輸入権」を創設した場合、他の分野へどういう影響を与えるのか。

:逆に海賊版の日本への流入というものはあるのか。あるとしたら、どのくらいなのか。

:日本レコード協会で調査した範囲では、海外で作られた日本のレコードの海賊版が日本に流入することはほとんどないと言ってよい。

:インターネット経由でファイル交換で流入することはあり得るのではないか。

:インターネット上での流入は多い。

:輸入を止めても、インターネットで無料に近い金額でコンテンツが流れる懸念もあるのではないか。

:ネット上の海賊行為を止める手立ては難しいが、正規の音楽配信については技術によりコントロールすることができる。

:ライセンス契約の問題はもう少し丁寧に説明する必要がある。また、許諾の範囲を超えたレコードのプレスが確認できるとすれば、ライセンシーは当然自分の市場規模は把握しているはずなので、何十万枚オーバーしている状態を如何に認識しているのか。

:「輸入権」というものは、場合によっては、著作権を用いた国際市場分割ができるわけで、国際カルテルの温床にもなりかねない。経済法的な観点からの検討も必要ではないか。

  閉会
事務局から今後の日程について説明があった後、閉会となった。


(文化庁長官官房著作権課)

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