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資料1

文化審議会著作権分科会法制問題小委員会(第3回)議事要旨



1  日  時     平成14年9月5日(木)14時〜16時

2  場  所 文部科学省別館第5・6会議室

3  出席者
(委員)石井、上原、岡村、金原、久保田(説明者)、児玉、齋藤、菅原、瀬尾、土屋、中山、野村、生野、福田、増山、松田、三田、山際、山口、山地の各委員
(文化庁)岡本著作権課長、尾崎著作物流通推進室室長,堀野著作権調査官ほか関係者

4  配付資料  
    資料1   文化審議会著作権分科会法制問題小委員会(第2回)議事要旨
    資料2 「中古品流通」の問題への対応
    資料3 「アクセス権」「知覚権」「デコーディング権」等について
    資料4 文化審議会著作権分科会「審議経過の概要」(平成13年12月)(抄)
    資料5 「私的使用のための複製」によるオリジナルの中古市場への流出への対応
(生野委員提出資料)
    資料6 アクセス権について(上原委員提出資料)
    資料7 ソフトウェアにおけるアクセスコントロール(久保田委員提出資料)

5  概要
(1) 「私的使用のための複製」によるオリジナルの中古市場への流出への対応について
事務局からこの問題への対応についての説明が行われた後、生野委員より説明が行われた。その後、各委員から以下のような意見交換が行われた。
(以下  説明者:◎、委員:○、事務局:△)

○: 分科会においても報告があったが、ゲームソフトについても実態としてCD−RW等でゲームソフトのコピーが取られ、MODチップ(改造チップ)、或いはMODチップ搭載のマシンで機器が動く状況があることを付け加えたい。

○: 音楽の主要なメディアであるCDの流通に影響が出るのは、いわゆる創造の循環を阻害する問題である。従って、コピーコントロールの付与や補償金などの対策を早急に検討する必要があると思う。

○: CCCD(コピーコントロールCD)のCDは、比較的簡単にコピープロテクションが破れるのかという技術的度合いがわからないので、教えてもらいたい。

◎: 強力にコピーコントロールをかけると、一般のCD再生機器にも影響が出るので、絶対にプロテクションが破れないことではないと認識している。ただ一定の技術レベルには達している。

○: 現在の技術状況から言うと、CCCDを強力にしてしまうと再生に問題が出るという話なので、ソフトな防御手段であると考えられる。そうなると、当面は、私的録音補償金による対応が必要ではないか。

○: CCCDと私的録音補償金との関係はどう理解すればよいのか。私的録音補償金が永続的であって、常にプロテクションと私的録音補償金の2つが補完しあって、機能すべきなのか。或いは将来的には全てのCDについて、コピーコントロールにおいて実施するまでの間の限定的な対応としての私的録音補償金を考えているのか。

◎: 全ての会社がコピーコントロールをかけるような状況になるにはいましばらく時間がかかるので、現在CD−RやRWにおいてコピーされている状況で手当てをする場合に、私的録音補償金についてどう扱うかの議論をしてもらう趣旨で、今回の資料にあげた。

○: 補償金制度そのものについては、別途議論する機会はあるかと思う。

○: 私的録音補償金の制度は、緊急的な措置として有効な手段だと思う。ただCDのジャケットやその他多岐に渡る分野についても私的録音補償金がかかる可能性があるのではないか。私的録音補償金とコピープロテクションの二つの関係がどうあるべきか検討してもらえると参考になる。

△: 私的録音補償金の議論は、11月に予定している。そこではコピープロテクションがかけられているCDはコピーが取れないので、実態に合わせて、その分補償金を減らすべきであるとの意見がある一方で、実態に合わせるというのであれば、汎用機にも補償金をかけていくべきだという意見もあるので、それを議論する予定である。

△: CCCDの普及の見通しやレコード協会として関係各社に導入させていく計画、及びセキュアなメディアへの根本的な移行について、現在どのような見通しがあるのか。

◎: コピーコントロールと私的録音補償金はあくまで理想と現実の関係であり、理想はコピーコントロール技術が徹底することである。それまでの現実的な対応として、私的録音補償金による解決があると考えている。セキュアなメディアへの移行の問題については、DVDオーディオやSACD(スーパーオーディオCD)が現在出ているが、まだ広く普及はしていない。また現在CDがこれだけ普及している中で、DVDオーディオやSACDなどのセキュアなメディアがCDにとって替わるだけのインセンティブを、どれだけユーザーに示すことができるかというマーケティング上の問題もある。これらの問題についてレコード協会でも研究を行っているが、いつの時点で切り替わっていくとは言えない。

○: 30条に定める私的使用のための複製では、放送からの複製する形態やレンタルから複製もある。これらの形態では、オリジナルが手元にないことになる。またCDを個人が買い受け、手元にコピーを残し、最初に買ったCDを転売する場合も、手元にオリジナルがないことになる。プログラムの著作物については、47条の2の2項の規定により、バックアップのための複製を認めつつも、滅失以外の事由で所有権を持たなくなった場合には、複製物を廃棄するとの規定がある。この発想をコピーコントロールに持ち込むことが可能かどうか。47条の2と30条の規定の発想を理論的に考える方法もあるのではないか。

○: コピーコントロールのかかるCDとかからないCDがあると、消費者は使い勝手の良いコピーコントロールのかからないCDを選ぶ傾向がある。従って、コピープロテクションをかけることについて、各レコード会社に任せるのではなく、レコード協会が方針を決めないと、コピープロテクションは進まないのではないか。レコード協会としては、この点で強い指導力を発揮するつもりがあるのか。

◎: レコード協会として、コピーコントロール技術の導入のサポートは積極的に行いたいと考えている。しかし、コピーコントロール技術を導入するか否かは権利者であるレコード会社が技術、コスト等を考慮して個別に判断すべき問題と考えている。ただレコード協会では、コピーコントロールを導入したCDに関しては、ユーザーに対しコピーコントロールCDと分かる表示や推奨マークの制定をしている。

○: コピーコントロールの導入率が10パーセント以下というのは、メーカーがコピーコントロールを導入すると売上げが低下すると懸念しているためなのか。或いは、コピーコントロールの導入コストまたは技術的な問題なのか。

◎: コピーコントロールCDは、各メーカーが、どのタイミングで、どういう技術であればユーザーフレンドリーな形で導入できるかを検討している最中であり、コピーコントロール技術が良くないから導入しないわけではないと認識している。また今年の3月から導入を始めたばかりの商品であり、これからも導入メーカーは増えていくと思う。

○: 今日の主題から外れるかもしれないが、現在、音楽のインターネット配信によって、MDに音楽を取り込んだ場合に課金されるが、取り込んだMDを複製して販売した場合に、最初に取り込んだMDがオリジナルになるのか。インターネット配信の場合のコピーコントロールについてどう考えているのか。さらに、将来はパソコンに私的録音補償金がかかる可能性が高いとなると、コピーコントロールについて、機器メーカー側にも、努力するよう働きかけることも有効ではないのか。

◎: レコード協会などが実施している合法なインターネット音楽配信においては、コピープロテクション技術が導入されている。

○: パソコンメーカーとしては、いいコンテンツを提供してもらえないと機器も売れないので、コピープロテクションに協力するインセンティブはある。ただコピープロテクションの抜け道を塞ぐことが難しいこと、コストアップになることから完璧な技術はできていない。またコピープロテクションをかけることで、エンドユーザーからみると操作がしにくくなるという問題もある。

○: ビデオの場合は、コピーガードを採用するかどうかは、各権利者の自由となっている。映像ソフト協会としては、コピーガードの技術の標準化に向けて、積極的に力を注いでいる。現在著作権法においても、技術的保護手段を迂回する者が製造、流通、頒布することについて規制する法律によって、コピーガードの技術を守っている。CDについても同様の措置でコピーガード技術を守るようにすれば、各会社が採用すると思う。

○: コピーガードのCDで、一部のカーナビで聞けない現象が起きているとの噂があるが、今後その現象は技術的に防止できるのか。パソコンでコピーをとる場合、どの時点でガードするのか。例えば、自分の持っているCDをパソコンの内部にコピーしておいて聞くことは、これからできなくなるのか。

◎: 技術的なことの詳細はよく分らないが、コピーコントロールが導入されたCDとカーナビの相性の関係があるため、明確な回答はできない。パソコンでのコピーがどの時点で止まるかについては、コピーコントロールCDは、CDDAというオーディオ部分とCD−ROMの部分があり、パソコンで複製する場合、CD−ROMの部分を先に読み込むが、それをコピーしても暗号化されており、暗号を解く鍵もないので、再生ができない。鍵を破ることも現実的にはありえない。

○: パソコンのハードディスクにコピーした場合には、聞けないということでよいのか。

◎: そうである。

(2) 『「アクセス権」の創設又は実質的保護』について
事務局からこれまでの審議会での検討状況などについて説明が行われた後、上原委員、久保田委員より説明が行われた。その後、各委員から以下のような意見交換が行われた。
(以下  説明者:◎、委員:○、事務局:△)

○: テレビ放送とゲームについて、例えば小説は現段階でアクセス権と関係ないが、現在「電子ブック」の研究がされており、その中に組み込まれたデコーダーを使って、アクセスして読むというシステムが研究されている。将来は、こうした「電子ブック」が一般人の生活に密接になることが予想されるので、「アクセス権」というのは、広く重要な権利である。

○: 放送のアクセスコントロールについて、NHKとしては放送法や受信料の関係もあるため、デジタル放送にしたからといって、直ちにスクランブルをかけることは考えていない。ただ、受信された放送のコピーコントロールについては、放送局の権利と同時に、放送の中に含まれている著作者の権利を保護する立場からも議論している。

△: 放送番組の場合は、送信されるデータそのものの全てが暗号化されているが、ゲームの場合は、最初の部分にカギをかけて止めているだけなのか。放送の場合は「デコーディングライト」、すなわち「暗号を並べ換えて解読してはいけない権利」で対応できるが、仮に最初の部分だけにカギをかけて止めているとすれば、デコーディングライトでは対応できない。そうなると「アクセス権」でなければ対応できないこととなる。

○: コピーコントロールの問題は、放送にしてもゲームにしても無体物の窃盗だろうと思う。その窃盗にどういう対処ができるのか。複製権に基づくコピーコントロールの解除も1つの考え方である。今のところ受信権という発想はないが、仮に受信権の発想があるなら、みなし侵害という対応が1つ考えられるのではないか。

○: デジタル上で正しく著作物を流通させるために、将来様々な技術が開発されると思う。しかし、技術が開発される一方で、その技術を回避する者がでてくるのが一番の問題なので、権利者が正しく流通させるためにした工夫に利用者が手を加えることを制限していくような少し大まかな法制がよいのではないか。1つの問題について、1つずつ法制を検討すると、いたちごっこのような状態になってしまう。

○: 「アクセス権」や「デコーディング権」(暗号解除権)を設けるのではなく、デコーディング行為自体が技術的保護手段の回避と理解できれば、現行著作権法120条の2のような刑事罰による対応も1つの手法として考えられるのではないか。

○: 「アクセス権」ができると、例えば、ある本屋の店頭に立ち読みは「マナー違反です」と書いてあるのを「法律違反です」と書くようにするのかどうかということになる。この問題は、著作権法の領域とビジネスの領域の接点にある難しい問題であり、2つの領域の相互の関係とどう考えるべきであろうか。

△: 知覚行為をコントロールする方法として、データの中身そのものの全体を暗号化して、中身を読めなくする方法と、データの入り口に鍵をかけるというやり方がある。「アクセス権」を創設すれば、暗号を解除する行為と入り口のカギを破る行為の両方をおさえることができる。「デコーディング権」は、前者を用いている放送を前提とした言い方である。

○: 質を落としてコピーさせるとは、複製させていることと同じなのか。

◎: 現在でも家庭用コピー機でコピーをとる場合とプロ用のコピー機でコピーをとる場合とでは、画質のクオリティの違いはあるが、複製であることに変わりはない。

○: プログラムやデータといった、いわゆる情報の複製のコピーは終わっているが、残りの物理的な形状のコピーが終わっていないために稼動しないという場合は、コピープロテクションが施されていると言えるのだろうか。例えば、音楽CDには、プログラムの部分とデータの部分とID番号などの文字的情報の部分がある。現時点では、そのID番号のような部分の複製を防止する技術の方が多いのではないか。

○: 情報の中身であるコンピュータプログラムや音楽CDには、著作権法が及ぶが、複製防止のためにうつID番号そのものについては、文字的情報ではあるが、著作物ではないと通常考えられる。ただID番号のような複製を防止する技術の方が現時点では多い。

○: その技術は、アクセスコントロールになるのか。

○: ID番号は、デコードの技術になるので、その意味でアクセスコントロールの一部だと考えている。

6  閉会
    事務局より、次回は9月27日に開催することが説明され、閉会した。

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