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文化審議会

2002/07/30 議事録
文化審議会著作権分科会法制問題小委員会(第2回)議事要旨

文化審議会著作権分科会法制問題小委員会(第2回)議事要旨



1   日時 平成14年7月30日(火)10時30分〜13時
     
場所 三田共用会議所大会議室
     
出席者 (委員)
石井、上原、岡村、金原、児玉、齋藤、清水、菅原、瀬尾、土屋、中山、生野、福田、増山、松田、三田、山際、山口、山地の各委員
(文化庁)
丸山長官官房審議官,岡本著作権課長、尾崎著作物流通推進室室長,中園国際著作権専門官ほか関係者
     
配付資料
 
資料1 文化審議会著作権分科会法制問題小委員会(第1回)議事要旨
資料2 「知的財産戦略大綱」(2002年7月3日  知的財産戦略会議)(著作権関係部分の抜粋)
資料3 「知的財産戦略について」〔総合科学技術会議知的財産戦略専門調査会の中間まとめ〕(平成14年6月13日  総合科学技術会議知的財産戦略専門調査会)(著作権関係部分の抜粋)
資料4 「法制問題小委員会」平成14年度審議事項(案)
資料5 「法制問題小委員会」平成14年度審議スケジュール(案)
資料6−1 著作権審議会第1小委員会審議経過報告(抄)(平成8年9月)
資料6−2 著作権審議会第1小委員会審議のまとめ(平成11年12月)
資料7 条約及び各国等の法令に規定する保護期間
資料8 参照条文
資料9 我が国の知的財産戦略に関する提言(抜粋)(平成14年4月10日)
資料10 映画・映像ビジネスへの投資循環と新たな作品創造のために(抜粋)(平成14年4月10日)
資料11 福田委員提出資料(映画著作権の保護期間延長が必要)
資料12 児玉委員提出資料(法人著作物の保護期間について)
概  要
(1) 「知財戦略大綱」等について
  事務局から先日公表された政府の「知財戦略大綱」等について、報告がなされた。
(2) 「著作権分科会」(第5回)の概要について
  齋藤主査から7月19日(金)に開かれた「著作権分科会」(第5回)の概要について、報告がなされた。
(3) 「法制問題小委員会」審議事項案及びスケジュール案
  事務局から「法制問題小委員会」審議事項案及びスケジュール案について、説明が行われた。
(4) 「保護期間の延長」について
  事務局から、これまでの「保護期間の延長」に関する審議会での検討状況について説明が行われた後、「映画の保護期間の延長」について福田委員から、「団体名義の著作物の保護期間の延長」について児玉委員から、それぞれ説明が行われた。その後、以下のような意見交換が行われた。(以下  説明者:◎、委員:○、事務局:△)

○: 「映画の著作物」の定義は著作権法にはないが、ここでは何を考えているのか。

◎: 主として「劇場用映画」である。

○: 「映画の著作物」とは何かを定義しなければ、その保護期間の延長の議論はできないのではないか。

○: 保護期間の延長を要望する理由の第1として、「映画の黄金期の作品の著作権が消滅しようとしている」ことを挙げているが、(現在の法制は、)知的財産権が利用価値のあるうちに権利が切れることにより社会全体の「ウェルフェア」が増すという前提にたっている。従ってこれは理由にならないのではないか。

○: 「他の著作物の保護期間との違い」については、大いに議論すべきである。

○: 「主要先進国との比較」について、例えば、欧州では、日本の作品が50年しか保護されないが、逆に日本では欧州の作品が50年で使えるという面もあり、一方的に日本が不利とは言えないので、社会全体にとって何がいいかを検討する必要がある。

◎: ビデオの業務に携わっている立場からすると、パブリックドメインになったからといって、誰でもビデオにして棚に並べれば売れるというものではない。実際には、権利者が解説を付けるなどの努力をしなければ売れないものであり、そうした努力が文化の振興につながると理解しているので、そのような意味での保護期間の延長を要望している。

○: ブロードバンド時代になり著作権が切れた優秀な作品を放送に近い形での供給やオンデマンドで供給するビジネスが成り立つと考えられるが、これに対する影響をどのように考えているか。

◎: 将来的には保護期間の切れた著作物の再利用も視野に入れているが、映画は創意工夫の上で上映されているので、徒らに野放図な状況になると円滑な利用もままならないと考えている。

◎: オンデマンド配信の研究をしているが、過去の名作のニーズは高い。おそらく各社とも過去の名作から配信を始めると認識しているので、保護期間の延長を要望したい。

○: 過去の作品が見られるという点からいえば、誰が配信しても差異はない。配信を行うの者として最適なのは、著作権者である映画製作者なのか、それとも流通市場を担う人たちなのかを検証した方がよいのではないか。

○: (保護期間の延長については、)理由ないし哲学、考え方がはっきりしないと歯止めがなくなるのではないかと懸念する。それがないと、いずれ70年が100年になり、あるいは、映画の著作物以外の著作物に波及する懸念があるので、考え方を明確にしていただきたい。

○: 産業界には2つの意見があると承知している。1つは、孫の代まで財産権を与えるという考え方、もう1つは保護期間が切れるので延長するという考え方である。後者に同情的な業界人は多く、映画であれば延長してもよいという意見はあるが、他の著作物一般に広がることには懸念がある。

○: 映画監督の立場としては、保存されたネガや原板からきちんと複製されたものを上映して欲しいと考えている。オリジナルのネガは、映画会社が所有権を持っているが、まずは、オリジナルを管理しているところが、長い間管理できる状態を作っておいて欲しい。パブリックドメインといっても誰でも勝手に加工して使える状況が好ましいものではないことを理解した上で議論していただきたい。

○: 欧米各国において保護期間が70年になっていることから、日本においても保護期間を70年にすべきだと考えているが、今回の要望は、映画の著作物については、常に映画以外の著作物より長い保護期間にして欲しいという要望なのか。

◎: 今回の提言の趣旨は、死後起算と公表時起算のギャップを埋めて欲しいということなので、少なくとも現時点ではそのようなことは考えていない。

○: 欧州では著作権の保護期間の終期は、著作者の死後70年となっているが、日本ではなぜそのような要望が出てこないのか。

○: 映画は29条により映画製作者に著作権が集中する法制をとっている。そのため、著作者はいるが公表時起算にしなければならないという政策的な側面があるのではないか。

△: ベルヌ条約においては、映画の著作物の保護期間を公表後期間としてもよいということと、映画の著作物の財産権を持つ者を自由に決めてよいということは、別々の条文に根拠がある。このため、両者は連動するものではない。

○: 70年の保護期間が妥当かどうかは、日本独自に考えるべき問題である。

○: ディレクターズカットと呼ばれるもののように、元のフィルムを使って新しい作品が制作されることがあるが、このようなものの制作年はいつになるのか。

◎: 公表されていないものについては、現在でも製作時起算となっているので、現在と同様の取扱いでいいのではないかと思っている。

○: 映画については、原版管理の問題があるので、特殊性を感じている。映画の著作物については、どうすれば過去の遺産を正しく残し、それを適正に利用できるかを考えなければならない。

○: 国として著作権を考える場合、著作権が50年で切れて、よい作品が海外に流出したときに、日本がどれくらいの経済的損失を受けるのかという視点があってもいいのではないかと思う。

○: 著作者が存命であるうちに著作権が切れるというのはいかがなものか。やはり、映画の著作物とそれ以外の著作物の保護期間のギャップは埋めるべきであると思う。

○: 「主要先進国との比較」について、外国の作品が見られるようになるので、保護期間が短くてもよいという趣旨の発言があったが、映画が作られた国では自由利用が許されないのに日本では許される状況があると、国際的な非難を浴びるのではないかと考えるので、国際的な基準にあわせるべきだと思う。

○: 結論的にどちらがいいということではなく、そういうことを考慮すべきだということである。国際的基準の1つである条約では、保護期間は50年となっており、日本は条約に従っているので、国際的非難を受けることはないと考えている。それよりも、どうすれば国全体の「ウェルフェア」が増すのかを議論すべきである。

○: 国レベルで損失を試算したらどうなるのか数字が出せれば、お願いしたい。

○: 業界団体の発言を聞くことも重要ではあるが、政策判断のためには、国全体の「ウェルフェア」がどうなるかについて、提案者から説明してほしい。

○: 原板を維持するためにはお金がかかるので、そのために経済権が与えられることは重要であるが、一方で、原板をきちんと維持していれば、それを基に契約でかなりの部分を押さえていくことも可能なので、その当たりを考えながら議論することも重要である。

○: 映画自体の保護期間が切れたとしても、必ずしも原作などの保護期間は切れていないので、誰でもすぐに使えるわけではないということにも留意しつつ、検討する必要がある。

○: 映画の保存管理は重要な問題ではあるが、それは著作権法の問題ではなく、アーカイブの問題である。

◎: 映画の保護期間の延長を考える場合、2つの側面から考えている。1つは、映画の著作物の再生産であり、もう1つは、過去の映画を文化遺産として保護していくことである。パブリックドメインになって自由に使えることは一見重要であるが、文化遺産として保護するという観点からは、一元的な管理が必要である。確かに著作権の問題とかけ離れているところはあるが、なかなか難しいところである。

○: 著作権は、産業政策的な経済財に変わりつつある。経済財としては、工業所有権があるが、こちらの方では、保護期間を長くして欲しいという意見はそれほどないことにも留意する必要がある。

◎: 保護期間の延長問題は、同一性保持権の確保ということもあり、文化そのものを傷つけることがないようにしたいということも大きな前提となっている。

○: 保存管理に関しては、著作者人格権の問題となるが、そのような保護は永久なので、保護期間の延長の議論とは無関係である。したがって、ここでは財産権だけを議論すればよいのではないか。

○: 現在、知的財産の強化を唱える人たちの声を聞いていると、かつてアメリカが知的財産を世界戦略としてうまく組み立てて成功したものを、日本にも作ろうという考え方が根底にあるような気がする。これが、国策であるといわれれば仕方がないが、しかし文化というものはそういうものなのかということを冷静に検討することも、審議会の役割ではないか。

○: 「知的財産戦略大綱」は知的財産の強化をうたっているが、そこで非常に強く書かれているのは、エンフォースメントの強化である。知的財産の強化というときには、実体的な権利の強化と手続的にきちんと保障することの2つの側面があるが、大綱は、後者を考えている。

◎: 戦後の日本映画はハリウッドとの戦いであった。ハリウッドはすごい圧力で我々の市場を席巻している。このような経済的な側面があることも理解していただきたい。

○: 映画の著作物の定義規定についてさらに議論する必要があるのではないか。

△: 映画の著作物の定義をどうするかという議論と保護期間を何年にするかという問題は、別の問題と考えている。

○: 先程29条と54条は必ずしも連動する必要はないとのことであったが、54条を削除という選択肢もあるのか。

△: 理論的にはあり得るが、現在提案されているのは、54条の「50年」を「70年」に変えるということである。

○: 現在議論になっているのは、劇場用映画だけのような気がするが、ゲームソフトなども対象になり得るので、今後対象を整理して議論する必要があるのではないか。

○: 70年に延びたとして、50年で切れたものの保護を復活することはあるか。

△: いったん保護期間が切れたものの保護を復活するということは、行わないこととされていると承知している。

○: 今後保護期間で議論をする時に、隣接権も合わせて検討いただきたい。

閉会
  事務局より、次回は9月5日に開催することが説明され、閉会した。


(文化庁著作権課)

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