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文化審議会

2002/11/29 議事録
文化審議会著作権分科会司法救済制度小委員会(第7回)議事要旨


文化審議会著作権分科会司法救済制度小委員会
(第7回)議事要旨

1  日  時   平成14年11月19日(火)13時00分〜15時00分

2  場  所 経済産業省別館11階1111号会議室

3  出席者
(委 員)
久保田、後藤、高杉、道垣内、橋元、細川、前田、松田、山口、山本の各委員
(文 化庁)
丸山長官官房審議官、岡本著作権課長、堀野著作権調査官ほか関係者

  配付資料
  資料1   文化審議会著作権分科会司法救済制度小委員会(第6回)議事要旨
  資料2   著作権法における罰則規定の概要
  資料3   法人重課の導入〔著作権審議会第1小委員会専門部会(執行・罰則等関係)報告書平成  11年10月〕(抜粋)
  資料4   技術的保護手段(コピープロテクション)の回避等を禁止等する規定の適用事例
  資料5   著作権法違反事件罰金額区分別一覧(全地方裁判所)
  資料6   過去10年間における映像ソフト協会に係わる刑事告訴状況一覧
  資料7   社交場「刑事告訴事件」一覧
  資料8   ACCS会員関連刑事事件一覧表
  資料9   日本レコード協会関連刑事事件一覧
  資料10   懲役刑の引き上げ〔著作権審議会第1小委員会専門部会(執行・罰則等関係)報告書  平成11年10月〕(抜粋)
  資料11   著作権法違反被告事件における刑期区分別有罪人員(全地方裁判所)
  資料12   侵害罪の非親告罪化〔著作権審議会第1小委員会専門部会(執行・罰則等関係)報告書  平成11年10月〕(抜粋)
  資料13   著作権法違反事件受理処理人員の推移

  概要
(1) 著作者人格権や侵害罪以外の行為に係る罰則への法人重課の導入について
  事務局から「著作者人格権や侵害罪以外の行為に係る罰則への法人重課の導入」について説明が行われた。その後、以下のような意見交換が行われた。
(以下委員○、事務局△)

(著作者人格権や侵害罪以外の行為に係る罰則への法人重課の導入)
:略式起訴の場合には刑事訴訟法に基づいて現在、罰金の上限は50万円、かつては20万円であった。その結果略式起訴をするものについては20万円、50万円の罰金が多い。したがって、50万円を超える罰金額になるケースというのは、公判請求になったものが多い。著作権法による要因と言うよりは刑事訴訟法による要因によって罰金額が分布しているように思う。

:法人重課を導入した場合に、略式起訴でなく、正式起訴が増えるという感触はあるか。

:悪質なケースについては、個人の方に懲役刑が課されるのが通常であり、たまたま両罰規定が適用されるような場合には、法人も関係してくるが、法人重課と起訴の形は、あまり直接的には関係ないと思う。

:刑事手続の中で公判に持ち込むのは難しいという状況があって、どうしても略式で終わってしまうものが多い。

:この資料の中での事例は、音楽著作物の生演奏やカラオケパブについての事例がほとんどであり、通常は、違法行為の差止請求というような、民事で対応していく。刑事に持ち込む場合というのは、差止の仮処分執行がなされたあとも、引き続き侵害行為を続行するような悪質なケースであり、したがって、刑事告発のケースは民事に比べて少なくなる。また、訴える対象が小さい事業者である場合が多いということも、罰金額が小さいことの一因になっている。

:資料の中に、専門学校生が、ファイル交換ソフトを利用した事例があるが、このとき犯罪の特定と容疑者の特定はどうやったのか。

:犯罪の特定自体は、京都府警が先行して行っており、容疑者のハードディスクの中にいくつか音楽ファイルがあったということで、鑑定依頼が来た結果、鑑定、刑事告訴ということになった。

:それは、誰かの、密告のようなものがあったのか。何もないと、ファイル交換ソフトの使用などわからないのではないか。どうやって、犯罪の事実を調べたのか。どういうきっかけで侵害行為が発覚したのか。また、法人重課の問題であるが、ネットの利用がこれだけ盛んになってくると、個人の侵害の場合が、被害額が小さいとは言えなくなってくるのではないか。

:ファイル交換ソフトの使われ方の実態については、実際に、許諾なく音楽ファイルがアップロードされている様を目にすることは、日常的にあることなので、アップロード自体の把握は簡単にできる。

:どのサーバーに、誰がアップロードしているのか、わかるのか。

:権利者側は、容疑者の特定まではできないので、その点については警察に動いてもらう。

:技術的保護の解除装置の製造や、権利管理情報の改ざんなどの行為については、個人より法人によるものの方が多いとも考えられるが、その点について法人重課はないが、この点についてはどうか。

:神奈川県警の方で着手してもらったケースで、企業ぐるみで侵害行為を行っていたケースがある。そのような場合は、1億円の法人重課の規定が必要である。

:資料の中にある、CD-Rの事例であるが、CD-Rコピー機を販売した事業者が、実際に複製物を販売する行為に比べたら、より間接的な行為であるが、企業について、実刑としては重い方である150万円の罰金、代表者が懲役1年、執行猶予3年となったケースがある。119条の2号の侵害行為についても、同じような法人重課の規定があると良いのではないか。

:他の犯罪類型とのバランスもあるので、ただ、けしからんということで、罰金額をそれほど上げても良いものか。もう少し資料が必要なのではないか。また、法人重課でどこまでできるのかという相場があると思うので、それを踏まえることも必要である。また、1億円ということになった場合、それは実際払えているのか。法人なので、結局は倒産ということになると思うが、倒産させるほど、関係者は損害を被っていない場合もある。個人を罰しないと、抑止効果にならないのではないか。

:法人の場合は通常、まず、警告する。それでも侵害行為をやめない場合を刑事告発する。決して可罰性がないわけではない。罰金をきちんと払えているのかについてはわからない。

:コピープロテクションの回避や、権利管理情報の改ざんについては、今2件しか事例を知らないが、最近の実際の侵害行為の事例が増えているか減っているのか。また、著作者人格権について、法人に関わるような侵害事例が実際にあるのか。

:すぐに思い浮かぶのはコナミのゲームソフトの改変ツールの事例である。これは、まさに法人が開発して、法人が販売している例である。

:コピーガードの件については、かなり全国の警察から、映像ソフト協会に情報が届いているという事実はある。当時、侵害行為は一気になくなったが、最近はスタビライザーという名称で販売しているケースがあり、それが専らの機器と言えるのか問題があり、事件化は留保している。

:先程、指摘のあった、他の一般的な法人重課の実情と言うのは、あるとすれば、独禁法などか、そういう他の法令との関係でバランスを失しているというものはあるか。

:個人の侵害行為については懲役か、罰金かということになる。可罰性が高いものについては懲役が課されて、低いものについては、罰金ですむという段階的なものである。しかし、法人については、可罰性が高いものについても、罰金刑しかないという点でバランスを失しているのではないか。

(2) 懲役刑の引き上げについて
  事務局から「懲役刑の引き上げ」について説明が行われた。その後、以下のような意見交換が行われた。
(以下委員○、事務局△)

(懲役刑の引き上げ)
:特許権、商標権に比べて、著作権侵害の方が、法定刑が軽いということは言える。確かに著作権侵害というのは幅が広く、ささいな事件もあるが、海賊版のような大規模な侵害行為もある。そのような大規模な事件に対して、特許権侵害よりも低く法定刑が定められる法的根拠はないのではないか。近隣のアジアの法令を見てみても、日本は低い方であると思う。

:その点については賛成である。罪の重軽によって懲役刑か罰金刑か決まるという点について、累犯であれば実刑なのであるが、日本の場合執行猶予が多いわけで、そうなると本当に痛みを感じているのか疑問である。懲役と罰金を併課することが可能になるようにしてはどうか。

:著作権教育として、著作権保護の重要性を罰則があるからというのではなく、法定刑から推測される法益の重要性という点から、他の法体系とのバランスを見ながら、説くことが多い。その時に、なぜ特許法は5年で、著作権は3年なのか説明できない。特許法のならびで5年という方が説明もしやすいし、合理性もある。

:現行においては、著作権侵害で刑事事件になると、皆、あやまり、反論してくる人はいない。しかし、今後、グローバル化の中で、悪質な国際的な犯罪が考えられて、抑止効果の面から言えば、知的財産ということで特許法と横並びにしても、反対する人はいないのではないか。

:求刑する場合も、法定刑をにらんで行うのであるから、法定刑が低ければ、課せられる刑も当然低くなる。また、執行猶予をつけられるのは懲役3年までの場合だというが、そうなると、期間が3年よりも長くなれば執行猶予がつかない場合がありうるので、抑止効果があるのではないか。

:法益の重要性や、侵害の大きさと懲役の重さとのバランスを図るという点について思慮してもらいたい。

:懲役刑と罰金刑とそれぞれ引き上げるべきである。ネットワーク技術や複製技術の発達から、侵害行為の結果の影響がますます大きくなる。今までは、カラオケスナックでの侵害行為等、件数は多くても、その影響は限られた場所内でおさまっていたが、今後、技術の発達により、1箇所で行った侵害の影響は広くなるのではないか。

:他の知的財産法制とのバランスについては、今後、勉強したい。工業所有権の中でも、特許と商標は5年であるが、意匠や、実用新案は3年という整理になっている。また、懲役刑の引き上げを行った場合、より重い刑を適用すべき具体的な事例や、他の制度とのバランスについて、また、議論していただきたいと思う。

(3) 侵害罪の非親告罪化について
  事務局から「侵害罪の非親告罪化」について説明が行われた。その後、以下のような意見交換が行われた。
(以下委員○、事務局△)

(侵害罪の非親告罪化)
:著作権侵害が親告罪である理由の一つが私益であるということだが、刑法上の窃盗・横領・背任などは全部私益であるが、これらは親告罪にはなっていない。一般的には、強姦罪のような法廷に事件を出すとかえって被害者に苦痛を与える場合や、器物損壊のように被害法益が軽微な場合などに、親告罪となる。著作権侵害は、懲役が3年以下とされていることから、法益が軽微なものではないと考えられるため、親告罪にする必要はないのではないか。このような重大な犯罪行為が行われているのに、告訴期間を過ぎてしまい、引き続きどうどうと侵害行為が行われているというような状況は、著作権侵害に対する規範意識を失わせる原因となっているのではないか。6ヶ月という告訴期間はあまりにも非現実的である。刑事告訴をする場合も発見してから告訴するまでの間に、弁護士の依頼や料金の算段、被害事実についての資料の作成などをしなくてはならず、6ヶ月は短すぎる。

:同感である。特許権や商標権に比べて公益性が薄いわけでもなく、今、著作権教育を国民的規模で行おうとしていること、特許権よりも侵害の発見について一般の人の協力がより必要になるということからも、非親告罪にするべきである。さらに、著作権の利用は、非営利であることが多いとの事であるが、非営利であるから良いというわけではない。また、事後的に権利者が許諾をすることもあるとのことであるが、特許権も同じである。

:管理実務の観点から言うと、継続して侵害行為を行っている店舗に対して、侵害証拠の収集をしている間に、告訴期間の6ヶ月が過ぎてしまうと、また調査をやり直さなければならない不自由さがある。特に、録音物の中に外国作品が含まれていた時は、オリジナル出版社と下請け出版社との間の契約によって、訴権はオリジナル出版社に留保されている場合が多く、外国音楽については、訴えられないという不便さがある。親告罪から非親告罪になってくれれば、そのあたりの不便さも解消されるのではないか。

:権利者にとっては、非親告罪の方が良いと思われるが、著作権侵害は、著作権についての意識が十分でないことから日常的な活動の中で生じることも少なくないため、非親告罪化した場合に第三者による告発の濫発の恐れがあることも踏まえて検討する必要があると思われる。

:日常的な活動の中で生じる著作権侵害については、可罰的違法性がない場合も多いのではないか。

:音楽著作物の場合、ファンの間から、著作権侵害が訴えられるというように、著作権の場合には第三者が問題にするということがある。権利者は良くても、ファンが侵害を訴えているような場合、非親告罪になると、検察は対処に困るということもあり得る。先程の話のように、権利者が権利を行使しないことで、遡及的に合法となるものでないとしたら、権利者が権利を行使しないことを明示した後で、第三者が告訴した場合どうなるのかという問題もある。

:権利者が良いといえば、黙示のライセンスということになり、違法性がなくなるので]はないか。その問題は、非親告罪であれば、どんなケースであっても、あり得る話である。検察も全て起訴するわけではなく、実際の運営上は問題ないのではないか。

:告訴する時には、客観的な資料をつけなければ受け付けてもらえないし、警察が検挙する場合には、権利者に、許諾の有無について、確認を取るので、心配するような事態はほとんど起きないのではないか。

:告訴期間の6ヶ月は、いつから始まるのか。この期間は短すぎるのか。

:コンピュータプログラムの事例については、デッドコピー以外は中味をきちんと見ないと侵害の認定ができない。やはり、6ヶ月は短い。外資系とのやりとりなどになると、日本の法人と本社の間のやりとりにも時間がかかる。しかし、非親告罪になると、新しい分野での侵害や、難しい事例に、警察が対応してくれるのかという心配はある。また、ビデオレンタル店などに大量に出回っている侵害品などを、権利者が一つ一つ検証して、立件していくのは、非常に効率が悪い。親告罪であれば、権利者が確実に立証できるものを選んで、訴えているので、手続き上簡易にできる面がある。

:警察は、告訴状があってもなくても、実際に検挙するかどうかについては選別するので、捜査効率が下がるということもないのではないか。

:少しでも、マイナス面の可能性があるのであれば、考慮すべきだと思う。特に文化に関わるところであるので、文化的論争の武器に使われることはあるということまで考えれば、気をつけなければならないということはあるかもしれない。

:非親告罪になれば、期間についての問題は解決される。しかし、告訴の乱発という事態になれば、一般の人からの照会、警察からの照会が増えることへの懸念はある。また、非親告罪となり、権利者が行動を起こさなくとも警察が取締ってくれることで、逆に権利者の権利意識が低下することになってはならない。

  閉会
  事務局から今後の日程について説明があった後、閉会になった。


(文化庁長官官房著作権課)

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