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資料  3

文化審議会著作権分科会司法救済制度小委員会
(第4回)議事要旨


著作権法における損害賠償制度の強化について




平成14年10月23日

損害賠償制度の強化について

後  藤  健  郎

損害賠償制度の強化を目的として
  ◎「侵害のし得」の社会から脱却する
  ◎侵害に対する迅速な解決を可能にする

という観点により、現行法に「法定賠償制度」「3倍賠償制度」「(量の)推定賠償制度」の3つを追加して、侵害によって権利行使を選択できるものとすることが必要です。

以上の3つについては既にご提案いたしましたが、そのうち「法定賠償制度」と「(量の)推定賠償制度」について補足いたします。

1. 権利行使に対して迅速かつ簡便(立証責任の軽減)に対処できることを目的として、「法定賠償制度」を導入する。

(案1)侵害を受けた著作物1件につき、10万円を最低額として賠償を請求できる。

            (1) 諸外国との比較(別紙参照)
諸外国の法定賠償制度の立法例を参考に、当該国とわが国との「一人当りGDP値」および「最低月収」の割合により金額を補正した。
            (2) 権利行使のため、最低いくら必要とするかを参考とした。
  1弁護士報酬
弁護士に訴訟等の民事事件を依頼する際の着手金の最低額は原則として10万円。
  2日本知的財産仲裁センターの費用
仮に解決利益が算定不能の場合で2回の期日で解決した場合でも、申し立て費用を含め13万円(弁護士費用は別)。

(案2) 侵害を受けた権利者は、
100万円を賠償として請求することができる。但し、侵害者がそれだけの額がなかったことを反証することができる。

2. 著作権侵害の数量を立証することは極めて困難であることから「侵害の量を推定する推定賠償制度」を導入する。
  侵害の量の推定としては、
  業としての侵害行為を行っているものが、
  侵害の量を明らかにする資料等を保存していない場合には、
  権利者が立証した侵害の量の3倍(2倍)の量の侵害があったものと推定する。
  但し、侵害者がそれだけの量がなかったことを反証することができる。

以上


各国の法定賠償制度             日本の  :1人当たりGDP=37,436ドル    :最低月収=10万264円
No. 対応法 著作物1件あたりの
法定額/倍率
国民1人当たり
GDP(米ドル)
日本の1人当たり
GDPまたは最低月収補正額
備考 1人当たりGDP
(最低月収)
対日補正率
為替レート
2002/09/24
1 アメリカ合衆国 著作権法
第504条(C)
750ドル〜3万ドル 35,082 9万8千円〜394万8千円
(故意:1974万1千円)
故意:15万ドル上限
善意:200ドル下限
1.07 123円
2 カナダ 著作権法
第38条第1項
500カナダドル〜2万カナダドル 23,124 6万3千円〜252万7千円   1.62 78円
3 台湾 著作権法第88条 1万台湾ドル〜50万台湾ドル 13,122 11万4千円〜570万円
(故意:1140万円)
故意:100万台湾ドル上限 2.85 4円
4 ロシア コンピュータプログラム及び
データベースの法的保護に関する
ロシア連邦法第18条第1項
ロシア法の定める最低月収の10倍〜5万倍 1,800 100万3千円〜50億1300万円 最低月収450ルーブル 20.8
(55.7)
4円
5 ウクライナ 著作権及び関連する
その他の権利に関する
ウクライナ法第44条
ウクライナ法の定める最低月収の10倍〜5万倍 620 100万3千円〜50億1300万円 最低月収140フリブナ 60.38
(31.14)
23円
6 イスラエル 1992年最高裁判決 1万NIS(ニューイスラエルシュケル)〜2万NIS 10,618
(1992年)
138万1千円〜276万3千円 1992年当時の
日本の1人当たりGDP
=29,918ドル
2.01 49円
(1992年平均)
7 中国 著作権法第48条 50万元以下 789 3億5587万5千円   47.45 15円
    ※参考資料    
(1) 1人当たりGDP:財団法人国際貿易投資研究所『国際比較統計』より
(2) 日本の最低月収:厚生労働省発表『平成14年地域別最低賃金額の改定状況』および、特殊法人日本労働研究機構『労働統計データ・総実労働時間』より算出
(3) ロシア最低賃金:特殊法人日本労働研究機構『ロシアの労働・社会保障事情及び新労働法典について(2002年8月)』より
(4) ウクライナ最低賃金:京都大学原子炉研究所・原子力安全研究グループ『ベラルーシ・ウクライナ国内ニュース(2001年11月)』より

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