文化審議会著作権分科会（第23回）議事録・配付資料［資料5］ 4．意思表示システムについて

　著作物等の利用を円滑に行うための方策の一つとして、近時、あらかじめ著作権者等の利用許諾に関する意思を表示しておく仕組みが広がりつつある。例えば、著作物等を自由に利用してよい場合の簡易な意思表示システムとして、「クリエイティブコモンズ」や「自由利用マーク」等の仕組みが設けられている。
　これらの意思表示システムについては、「はじめに」に述べられたように、権利者情報データベース等に利用許諾条件を載せること等で活用できるのではないかとの指摘があるほか、専門的な法知識がなくとも利用が可能であり、利用者・権利者双方の時間や労力の節約にもなることから著作物の利用円滑化を図るシステムとして、その利用を促進すべきとの意見があった。
　一方、有償の契約条件を定めて許諾することを内容とする意思表示については、例えば、クリエイティブコモンズに関しては元々非営利で広く利用されることを想定しており、元々の思想から反対が多くなるかもしれないとの指摘もあった。

　これらの意思表示システムについては、自由利用マークについては周知徹底が不十分なためか普及していないとの指摘もあり、利用促進についてなんらかの方策が必要ではないかとの観点から、次のような指摘があった。
1. 　虚偽の表示、権限のない者による表示について罰則等を設けることや、表示を信じた者に対する免責を規定することにより、意思表示システムの信頼性を上げてはどうか。
2. 　意思表示システムを普及させるためには、流通関係者（出版社やレコード会社）にシステムの存在を著作者に告知する義務を課すことや、表示実績により出版社等に優遇措置を設けてはどうか。
3. 　ソフトウェアの分野では、DRMの中で著作権者が許諾条件を技術的に組み込むことができるようになっており、この電磁化された許諾条件をどこまで保護するのかという議論と同じように考えられるのではないか。
4. 　アナログの著作物も多数にのぼるため、DRMだけで対応するのは現状では難しい。
　一方、より使いやすいシステムを構築するという観点からは、ライセンスの種類の標準化、異種ライセンス間の相互互換性の確保が必要とする一方、法的な解決が必要か、市場の解決に委ねるべきか、慎重に検討すべきとの指摘や、クリエイティブコモンズは、法的な議論を積み重ねて導入した制度ではないがゆえに現行のような広がりを見せているという面もあり、民間の取組に任せることも一案ではないかとの意見もあった。
　そのほか、以下のような新しいマークを作ることについても検討してはどうかとの意見があった。
1. 　利用条件を定めて許諾する意思表示システム（前述）
2. 　博物館等の社会教育施設を対象とした自由利用マーク
3. 　著作権を放棄するための意思表示システム
4. 　意思表示システムに著作権法の裏付けを与え、著作権に含まれる権利のうち、何を望むかを選択して表明又は登録できる（法の規定にかかわらず、表明・登録した以外の権利は適用されなくなる）制度を設けてはどうか。
　これらのうち、権利の放棄等をするためにわざわざ意思表示をするインセンティブはないので、工夫が必要であるとの指摘もあった。

4．意思表示システムについて

（1）現状・対応の基本的な考え方

（2）利用促進のための措置