はじめに

 録音録画機器は家庭内に広く普及している。最近ではアナログ複製からデジタル複製への急速な転換が進み、機器や記録媒体も高品質で大容量の複製を可能とするものに転換しつつある。

 音楽や映画などの著作物等をこのような便利な機器等を使用して録音録画し個人的に楽しむことができるのは、著作権法の権利制限規定(「私的使用のための複製」(第30条))により、権利者の許諾なく著作物等を複製することが認められているからである。

 この第30条は、昭和45年の現行著作権法の制定時に創設された。創設時の第30条は、無許諾かつ無償の複製を認めていたが、その後録音録画機器等が急速に普及し、権利者の許諾を得ない大量の録音録画が家庭内で行われる事態が生じ、このような状況が権利者の経済的利益を不当に害しているのではないかという問題が生じた。

 このような問題を解決するため、平成4年、私的使用のための録音録画が無許諾でできることは維持しつつ、権利者の被る経済的不利益の解消を図るため一定の補償金を利用者から徴収するという私的録音録画補償金制度を発足させた。

 この私的録音録画補償金制度は、平成4年以降、権利の保護と利用の円滑化の調和に一定の役割を果たしてきたが、平成18年1月の文化審議会著作権分科会報告書において、録音録画機器等や著作権保護技術の発達の状況の変化などに照らして、私的録音録画補償金制度の抜本的見直しが提言された。

 私的録音録画小委員会は、このような経緯により組織され、昨年4月から審議を行ってきたところであるが、このたびこれまでの議論を整理し「中間整理」として作成した。

 この「中間整理」という位置付けは、私的録音録画問題を解決するための方策について一定の結論を得たところから、その内容を記述するという性格のものではなく、今までの議論から課題を抽出し、その課題に対する議論を整理した上で、課題に対する対応策の基本的考え方、委員間の合意の形成の状況とその論点などについてまとめたものである。

 今後、本小委員会では、この中間整理に対する関係者及び一般国民の意見等も踏まえた上で、一定の結論を得ることを目指して更に議論を進めていくことにしている。

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