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第2章 国際小委員会

第2節 国際的ルール作りへの参画の在り方について

1  昨年までの放送条約の検討の経緯
   WIPOでは、近年のデジタル化・ネットワーク化に対応して、著作権及び著作隣接権に関する新たな条約の策定が進められている。既に平成8年(1996年)には、「著作権に関する世界知的所有権機関条約」(以下「WCT」という。)及び「実演及びレコードに関する世界知的所有権機関条約」(以下「WPPT」という。)が採択されており、現在、「放送機関に関する新条約(以下「放送条約」という。)案」及び「視聴覚的実演の保護に関する新条約(AV条約)案」が検討されている。
 放送機関の保護の在り方については、平成10年(1998年)から平成17年(2005年)11月まで13回に渡り、「WIPO著作権及び著作隣接権に関する常設委員会」(以下「SCCR」という。)にて検討がなされてきた。
 平成16年(2004年)6月の第11回SCCRでは、外交会議開催について一般総会に諮ることが決定されたが、平成16年(2004年)9月の一般総会では、一部の国から「検討が十分ではない」との発言があり、平成17年(2005年)の一般総会で再度議論されることとなった。
 アジアやアフリカ諸国等の地域会合での検討を経て、平成17年(2005年)9月の一般総会でも外交会議開催が提案されたが、再び一部の国から消極的な意見が出されたため、さらに2回SCCRを開催して、再修正された「条約テキスト案」及び「ウェブキャスティングについての作業文書」について議論を加速し、平成18年(2006年)の一般総会において平成18年(2006年)12月又は平成19年(2007年)の外交会議の開催を求めることとされた。この合意に基づいて、平成17年(2005年)11月に第13回SCCRが開催された。

2  本年の議論の進展
   本年5月には続けて第14回SCCRが開催された。第13回SCCRで複数の国から新たな提案が行われたため、第14回SCCRまでに議長がすべての提案を盛り込んだベーシックプロポーザル案を作成することとされた。第14回SCCRで、これがベーシックプロポーザル案及び作業文書として提示された。
 第14回SCCRにおける議論で、この二つの文書に分ける形式に対し、反発があったため、統合して一つの修正ベーシックプロポーザル案とされることとなった。また、議論の進展の障害になってきたウェブキャスティングを検討の対象外とすることが合意された。
 これら2回の会合では外交会議の開催を求める合意に至らなかったため、合意を得るため、9月にさらに追加して第15回SCCRが開催された。
 第15回SCCRでは、同月に開催される一般総会への提案が議論された。依然として、一部の国から外交会議の開催を時期尚早とする意見が出されたが、最終的には議長が議論を打ち切り、合意事項をとりまとめた。

【第15回SCCR合意事項】
1  外交会議を平成19年(2007年)7月11日から8月1日までジュネーブで開催する。会議の目的は、有線放送を含む放送機関の保護に関するWIPO条約の交渉を行い、決定することである。条約の範囲は伝統的な意味での放送と有線放送に限定される。
2  全ての加盟国が外交会議で提案を行うことができるという理解の下で、修正ベーシックプロポーザル案(SCCR/15/2)がベーシックプロポーザルを構成する。
3  外交会議開催に必要な形式を準備するため、平成19年(2007年)1月に準備会合が開催される。準備会合では、採択の手続き、参加国、参加NGO、その他の組織的事項を議論する。
4  準備会合と連続して2日間の特別の会合を開催し、重要事項について明確化する。WIPO事務局は、関連する加盟国と協力して、加盟国の要望により、外交会議に関する事項の意見交換会や情報会合を開催する。それらの会合は招待する国がホストを務める。

 同月には続けて、一般総会が開催され、第15回SCCR合意事項の承認が検討された。第15回SCCR同様に一部の国から外交会議の開催を時期尚早とする意見が強硬に主張されたため、第15回SCCR合意を一部修正して、外交会議の開催時期を遅らせるとともに、さらに2回SCCRを開催することとすること等によって、合意がとりまとめられた。

【一般総会合意事項】
‡@ 一般総会は、パラグラフ4の条件が満たされた場合、放送機関の権利の保護に関する外交会議を平成19年(2007年)11月19日から12月7日までジュネーブで開催することを承認する。会議の目的は、有線放送を含む放送機関の保護に関するWIPO条約の交渉を行い、決定することである。条約の範囲は伝統的意味での放送機関と有線放送機関の保護に限定される。
‡A 加盟国は外交会議で提案を行うことができるという理解の下で、修正ベーシックプロポーザル案(SCCR/15/2)はベーシックプロポーザルを構成する。
‡B 外交会議開催に必要な形式を準備するため、平成19年(2007年)6月に準備会合が開催される。準備会合では、採択の手続き、参加国、参加NGO、その他の組織的事項を議論する。
‡C 2回のSCCRの特別セッションを開催し、主要事項について明確化する。1回目は平成19年(2007年)1月、2回目は平成19年(2007年)6月に準備会合と連続して行う。これらのSCCR会合はパラ2に言及された修正ベーシックプロポーザル案を合意によって一部変更し、修正されたベーシックプロポーザルを外交会議に提出するために、信号保護アプローチによって、目的、範囲、対象を合意し、ファイナライズすることを目的に開催される。外交会議はこうした合意が成立した場合に開催される。合意がなされない場合には、その後の議論はSCCR/15/2に基づいて行われる。

3  放送条約への対応の在り方
   昨年の本委員会において議論されたように、放送条約はデジタル化・ネットワーク化に対応した、著作権関連条約の見直しの一部をなすものであり、他の著作隣接権とのバランスを確保するためにも、早期の採択が求められる。昨年来のWIPOにおける議論において、特段、我が国が新たに条約案に対する対応を検討する必要性は生じていないが、早期採択に向け、国際的な議論に引き続き積極的に対応していくことが必要である。
 また、当面、放送条約についての議論の対象外となったウェブキャスティングの保護についても内外の動向を注視しつつ、引き続き適切な対応を検討していくことが必要である。

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