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著作権分科会(第19回)議事録

1. 日時
  平成18年6月20日(火曜日)10時30分〜11時45分

2. 場所
  霞が関東京會舘「ゴールドスタールーム」

3. 出席者
 
(委員)
  青山,大林,岡田,金井,金原,後藤,佐藤,里中,瀬尾,田上,辻本,道垣内,常世田,土肥,中山,福王寺,松田,三田,村上,森,紋谷の各委員
(文化庁)
  辰野長官官房審議官,甲野著作権課長,秋葉国際課長
ほか関係者

4. 議事次第
 
1  開会
2  議事
(1)  「文化審議会著作権分科会法制問題小委員会(IPマルチキャスト放送及び罰則・取締り関係)報告書(案)」について
(2)  その他
3  閉会

5. 配付資料
 
資料1   「文化審議会著作権分科会法制問題小委員会(IPマルチキャスト放送及び罰則・取締り関係)報告書(案)」の概要
資料2 文化審議会著作権分科会法制問題小委員会(IPマルチキャスト放送及び罰則・取締り関係)報告書(案)

参考資料1 文化審議会著作権分科会委員等名簿
参考資料2 文化審議会著作権分科会(第18回)議事録
(※(第18回)議事録へリンク)
参考資料3 「知的財産推進計画2006」(平成18年6月8日知的財産戦略本部)における著作権関係部分の抜粋
参考資料4 「文化審議会著作権分科会法制問題小委員会(IPマルチキャスト放送及び罰則・取締り関係)報告書(案)」に対する意見募集について

6. 議事内容
 

【甲野著作権課長】 本日は御多用のなか、先生方におかれましては御出席をいただきまして誠にありがとうございました。定刻でございますので、これより文化審議会著作権分科会第19回を開催したいと思いますが、本日は、野村分科会長が御欠席ということですので、中山副分科会長に議事の進行をお願いしたいと思います。中山先生よろしくお願いいたします。

【中山分科会長代理】 それでは野村分科会長が海外御出張中ということでございますので、私が本日司会を務めさせていただきます。議事に入ります前に本日の会議の公開につきましては、予定されている議事内容を参照いたしますと、特段非公開にするには及ばないと思慮されますので、すでに傍聴者の方々には御入場していただいているところでございますけれども、そのような扱いでよろしゅうございましょうか。

(「異議なし」の声あり)

【中山分科会長代理】 はい、ありがとうございます。それでは本日の議事は公開ということにいたしまして、傍聴者の方々はそのまま傍聴をお願いいたします。なお、現在政府全体で「ノーネクタイ、ノー上着」という軽装を励行しているところでございますので、本日の分科会におきましても、軽装で差し支えないということで御了解いただきたいと思います。
 また前回会議を行いました平成18年3月1日以降に、事務局に異動がございましたので、事務局から紹介をお願いいたします。

【甲野著作権課長】 4月1日付けで人事異動がございましたので、御紹介をさせていただきます。文化庁長官官房国際課長でございますけれども、日本学術会議事務局参事官審議第一担当より秋葉正嗣課長が着任をいたしました。

【秋葉国際課長】 秋葉でございます。

【甲野著作権課長】 なお、池原充洋前国際課長は、文部科学省研究開発局参事官宇宙航空政策担当に転出でございます。以上でございます。

【中山分科会長代理】 それではまず、事務局から本日の配付試料の説明をお願いいたします。

【白鳥著作権調査官】 それでは、議事次第の一枚紙に、配付資料の一覧がありますので、あわせて御覧下さい。本日配付いたします資料は2点ございます。資料1が、「文化審議会著作権分科会法制問題小委員会(IPマルチキャスト放送及び罰則・取締り関係)報告書(案)」の概要でございます。資料2がその本体の「報告書(案)」でございます。なお、参考資料といたしまして、そこに書いてございます名簿、議事録、知的財産推進計画2006における著作権関係部分の抜粋、それから当報告書(案)に対しましての意見募集について、という資料を配付してございます。よろしくお願いいたします。

【中山分科会長代理】 はい、過不足ないでしょうか。よろしいですね。
 それでは早速議事に入ります。本日は、「文化審議会著作権分科会法制問題小委員会(IPマルチキャスト放送及び罰則・取締り関係)報告書(案)」が議題でございます。私が主査を務めております「法制問題小委員会」におきましては、現在、地上波放送のデジタル化への対応、他の知的財産権制度との調和の推進、模倣品・海賊版対策の強化という観点から、「IPマルチキャスト放送の著作権法上の取扱い等について」、「罰則の強化について」、「税関における水際取締りに係る著作権法の在り方について」の3点につきまして、集中的に討論を行っておりまして、6月7日に小委員会としての「報告書(案)」を取りまとめたところでございます。
 今後は、意見募集を行い、それを踏まえてさらに審議を進めていく予定でございますけれども、本日は意見募集に先立ちまして、本分科会へ報告させていただきたいと思います。通常の分科会におきましては、小委員会の主査である私から報告をするということになっておりますが、本日は分科会の議事進行を私が務めております関係で、「報告書(案)」の具体的な内容につきましては、事務局から説明をお願いいたします。

【甲野著作権課長】 事務局より御説明をさせていただきます。お手元に資料2を配付しておりますので、これを御参照いただければと思います。資料2の2ページをお開けください。最初に御説明をいたしますのは、「IPマルチキャスト放送の著作権法上の取扱い等について」でございます。問題の所在でございますが、近年、情報通信技術の発展に伴いまして、IPマルチキャスト放送という新たな形態のサービスが登場しております。これは、IPマルチキャスト技術を用いた有線電気通信の送信ということで使わせていただいている用語でございまして、従来の有線放送とほぼ同様のサービスの提供を実現するというものでございます。このIPマルチキャスト放送については、地上波デジタル放送への移行の際に伝送路の一つとして活用することが考えられておりまして、本年末にも実際に地上波デジタル放送の再送信が、このIPマルチキャスト放送により始められる予定となっております。また、いわゆる通信・放送の融合の観点からも、この技術、このサービス形態の普及が望まれているところでございます。
 このIPマルチキャスト放送は、放送法制上は平成13年に制定された電気通信役務利用放送法上「放送」と定義されまして、番組編成等にあたりましては放送事業者と概ね同様の規制がされているという位置付けがなされておりますが、一方、著作権法では、これは「有線放送」ではなく、「自動公衆送信」に当たると考えられているところでございます。これは、チャンネルを選択することにより求める番組が視聴できる、という点では両者同じでございますけれども、ケーブルテレビジョン等の有線放送については、各家庭の受信装置まで有線放送されるすべてのチャンネルの情報が常に届いているのに対しまして、IPマルチキャスト放送につきましては、次の4ページの図を御覧いただければと思いますけれども、途中段階であるIP局内装置までは全チャンネルの情報が届いているものの、そこから先は各受信者が選択した番組の情報のみが送信される仕組みになっているためでございます。著作権法上、「有線放送」と位置付けられるためには、同一内容が同時に受信される、ということが要件になっておりますが、選択されたもののみが各家庭に届くということでその要件を満たしていない、ということでございます。
 このようにIPマルチ放送については、「自動公衆送信」に当たるとされており、この結果、著作権法上、「有線放送」の場合には関係者の権利が働く場面が比較的少ないのに対し、「自動公衆送信」の場合には非常に多くの場合に許諾権が働くなど、有線放送の場合が有利な扱いがされているところでございますが、IPマルチキャスト放送についてはそのような有利な取扱いがされていないという状況になっているわけでございます。そうしたことから、IPマルチキャスト放送による著作物の利用の円滑化を行うために、これを著作権法上「有線放送」と同様の取扱いにすることが求められているところでございます。
 IPマルチキャスト放送と有線放送の事業の現状といたしましては、今開いていただいている4ページ以降に書かせていただいているので適宜御参照いただきたいと思います。
 また、法律がどのような形になっているかにつきまして、ただいま触れさせていただきましたが、それにつきましては10ページから記載をしているところでございまして、有線放送に比べると、事業者にとってはなかなか有利ではないという状況になっていることがお分かりいただけるかと思います。また国際条約の関係は、17ページ以降でございますので御参照いただければと思います。また、テレビ放送の同時再送信に係る著作権契約の現状が、22ページ以下に記載しているところでございます。
 そして26ページ以下に検討の結果が記載されているところでございます。
 まず、基本的な考え方について触れておりまして、基本的な考え方としては3点を挙げております。
 第一に、放送を受信して同時に再送信をする、いわゆる「放送の同時再送信」の部分につきましては、IPマルチキャストによります地上デジタル放送の同時再送信が本年末にも開始されるというスケジュールが組まれていることから、早急に有線放送と同様の取扱いとすることが必要であるというふうにしております。また、この「有線放送と同様の取扱い」でございますけれども、現在、有線放送の場合に認められている有利な取扱いの内容につきましても、有線放送事業の大規模化の傾向など実情の変化等を踏まえると、適切なものに改めることが必要であるとされております。また、放送の同時再送信以外の部分、いわゆる「自主放送」の部分につきましては、論点が広範にわたること、十分な準備期間を設けた上で検討する必要があること、条約の検討状況や今後の通信・放送の融合に係る放送法制の見直しの検討状況、IPマルチキャスト放送の今後の実態を見極める必要があることなどから、直ちに制度改正を行うということは不可能でございまして、今後引き続き検討を行った上でどうするのか結論を得るべきである、というふうにされました。
 これらの基本的な考え方を前提にいたしまして、具体的な措置内容として、27ページの(2)以下でございますけれども、6つの項目を挙げているところでございます。
 一つ目は、有線放送による放送を同時再送信する場合の規定の見直し、いわゆる有線放送並みにするといった場合の有線放送並み、をどうするかでございますけれども、これにつきましては、有線放送事業者の事業規模の拡大傾向等を踏まえると、零細事業を前提とした現在の有線放送に関する規定は見直して、実演及びレコードに係る権利関係については、原則として新たに報酬請求権を付与することが適切であるとされました。
 また二番目の、IPマルチキャスト放送により放送を同時再送信する場合の規定の見直しにつきましては、有線放送と同様に取り扱うという考え方を踏まえますと、原則として実演家及びレコード製作者に与えられている許諾権を、今有線放送についての見直しをしたところでございますので、報酬請求権に改めることが適切であるとされたところでございます。
 三番目は、非営利かつ無料で放送を同時再送信する場合の規定の見直しでございますけれども、放送の同時再送信のみのサービスを、非営利かつ無料で行うことについては、有線放送とIPマルチキャスト放送とで著作権法上区別する理由がないことから、基本的には有線放送と同様の権利制限を行うべきである、というふうにされました。しかしながら、29ページの真ん中ほどに書いてございますけれども、IPマルチキャスト放送の場合、従来型の有線放送とは異なり、全国規模で送信が可能なメディアであり、たとえ非営利かつ無料であっても同時再送信が大規模になれば、権利者の利益に影響を与える可能性も考えられるところでございます。そうしたことから一定の限定を加えることを考慮すべきである、とされたところでございます。
 4番目は権利制限の規定の在り方でございますけれども、有線放送に認められている学校教育番組の放送等の権利制限に関しましては、基本的にはIPマルチキャスト放送についても同様の取扱いとすることが必要と考えますが、放送の同時再送信に係る見直しをする際にこれをやるのかどうか、あるいは自主放送の場合にするのかどうか等々の判断は個別にそれを行う必要がある、というふうにされたところでございます。
 5番目は、著作隣接権の付与、一時的固定でございますけれども、IPマルチキャスト放送を行う事業者に対する著作隣接権の付与及び一時的固定を認めることの可否につきましては、今後自主放送について検討する際に、放送新条約の検討状況や他の条約の取扱いも踏まえて検討すべきである、とされたところでございます。
 最後30ページにいきますけれども、6番目が、これは法律論ではございませんけれども、契約の在り方につきましても一項目触れているところでございます。著作権法の改正が行われた場合でも、従来型の小規模な有線放送事業者に対しては、契約面において配慮されることが望ましいということ。また、契約ルールの策定または見直しに際しては、関係団体間の円滑な合意形成に向け、文化庁の適切な支援が必要であるということ。さらに現在、実演家及びレコード製作者の団体が進めている一任型管理事業の体制整備については、引き続き推進することが必要である、という指摘がなされているところでございます。
 以上の項目が、今回早急に見直し等々の対応を行う必要がある事項ということでございますけれども、最後の部分で、通信と放送の融合の進展等を踏まえた今後の検討の在り方につきまして触れているところでございます。
 まず、IPマルチキャスト放送のうち、「自主放送」の部分の取扱いについて、再度触れておりますが、事業の実態の推移や、放送法制における位置付け等にも留意しつつ、関係省庁間で連携をとりながら引き続き検討を行うことが必要である、というふうにまとめているところでございます。
 以上がIPマルチキャスト放送の取扱い等についての説明でございます。
 それでは続きまして、「罰則の強化について」御説明いたします。罰則の強化につきましては31ページ以降でございます。このたびの国会におきまして、特許や意匠等、産業財産権法におきましては、罰則の強化を内容とする法案が提出され可決成立したところでございます。著作権法におきましては、平成16年1月に取りまとめられた「文化審議会著作権分科会報告書」においては、「他の知的財産法における刑罰とのバランスを踏まえ、特許法及び商標法と同程度に引き上げることが適当」という旨の指摘がなされております。そのようなことから、今回改正されました他の産業財産権法との刑罰のバランスにつきましても考慮しつつ、刑罰の引き上げにつきまして小委員会で検討が行われたところでございます。
 また、この罰則の引き上げに関連した問題といたしまして、平成16年の著作権法改正により個人罰則の懲役刑を3年から5年に引き上げたことに伴いまして、著作権法の法人罰則につきましては、個人罰則の場合と比べて公訴時効の期間が短くなるという事態が生じていたところでございまして、法人罰則に係る公訴時効の期間の延長についても検討が行われたところでございます。その検討については、まずこの問題の状況について31ページ以降記載をしているところでございます。
 そして40ページ以降は、産業財産権法についての罰則の強化の動向でございます。この40ページの表を見るとお分かりかと思いますが、平成18年の法改正によりまして、実用新案法を除きまして侵害罪につきましては個人については懲役で10年以下、罰金は1000万円以下となったところでございます。また法人につきましては41ページの上の表にありますとおり3億円以下ということになりました。また秘密保持命令違反につきましても全体として3億円以下に統一がなされたところでございます。
 また、43ページが諸外国の状況でございます。こうしたことを紹介させていただいたことを踏まえまして、44ページ以降が検討の結果についてでございます。まず(1)の著作権侵害罪の個人罰則の引き上げでございますが、特許法等における刑罰、これは懲役刑でいえば10年以下、罰金刑1000万円以下とのバランスを踏まえて、懲役刑、罰金刑の引き上げを行うことが適切であるとされました。また法人の罰則についても、特許法における刑罰、これは罰金刑3億円以下でございますが、このバランスを踏まえて罰金刑の引き上げを行うことが適切である、とされたところでございます。
 続きまして(2)の秘密保持命令違反罪の法人罰則引き上げでございますけれども、産業財産権法における秘密保持命令違反罪の法人罰則、これは罰金刑3億円以下でございますが、このバランスを踏まえて罰金刑の引き上げを行うことが適当とされました。また(3)のその他の著作権法違反の罰則でございますが、これにつきましては、著作権侵害罪とのバランスと、各規定の趣旨を照らし合わせながら罰則の引き上げの必要性について判断することが適当とされました。
 最後に(4)の法人罰則に係る公訴時効期間の延長につきましては、法人についてのみ早期に公訴時効を完成させるという必要性がないことから、法人罰則に係る公訴時効につきましても、これを個人に合わせる形で延長を行うことが適当とされたところでございます。以上が罰則の強化でございました。
 最後に46ページ以下でございますが、「税関における水際取締りに係る著作権法の在り方について」の内容を御紹介いたします。
 近年、経済のグローバル化の進展によりまして、模倣品・海賊版が国際的に取引される事例も増大し、反社会的勢力等の資金源となることも考えられますことから、こうした模倣品・海賊版の国境を越えた移動を未然に防ぐということが日本の著作物の国際的信用を高めるためにも非常に重要である、と考えられるところでございます。このため、政府といたしましても、知的財産推進計画のなかに、本課題を盛り込みますとともに、昨年の7月に開催されましたグレンイーグルスサミットにおいても、模倣品・海賊版取引の削減に関する文書を合意したということを受けまして、産業財産権法におきましては、水際取締りについて検討を行い、所要の改正が今国会で行われたところでございます。従いまして海賊版に対する税関の水際取締りについても同様の対応が必要ということで、著作権法においても、これについて検討を行ったところでございます。
 報告書(案)では、ただいま申し上げました問題の所在につきましては、46ページ以下紹介をしているところでございます。現行規定がどういう形になっているかは48ページ以下に紹介をさせていただいているところでございます。各産業財産権法での考え方、対応は52ページ、そして諸外国の対応が53ページ、4ページでございます。そして55ページ以降に検討結果を書かせていただいているところでございます。
 まず輸出規定の必要性、これをどうするかでございますけれども、輸出行為につきましては、国内における侵害行為を抑止し、水際において確実に侵害物品の取締りを行うとの観点から、輸出行為の目的や対応等について一定の限定をかけつつも、輸出に関する規定を整備して輸出に関する規定を取り締まるという方向で整備をするとともに、輸出行為の予備行為として、侵害にいたる蓋然性が高い輸出を目的とする所持についても取締りの対象とすることが適当とされたところでございます。
 なお、「通過」行為につきましても検討がされたところでございますが、輸出行為として対象となっているということもありまして、通過について新たな規定を設ける必要はないとされたところでございます。
 57ページ以下は参考資料といたしまして、参照条文等をつけさせていただいているところでございます。
 以上が、今回の法制問題小委員会で取りまとめていただいた報告書(案)の内容でございます、以上です。

【中山分科会長代理】 はい、ありがとうございました。ただいまの報告書(案)の説明につきまして、御意見のある方はお願いをいたします。はいどうぞ、紋谷委員。

【紋谷委員】 2点ほど御質問したいと思います。一つは、最初の方の点でございますが、以前、中国の昆明で、「技術と著作権」の国際シンポジウムが開催されたときに、WIPOの事務局の人が説明したことに関してちょっと思い出したのですが、どうもこのような形でWPPTの15条をうまくカバーできるのか、このような説明がそのときなかったのですよね。このような形で解釈することに関して国際的にはどうなのかという点をお伺いしたい、それが第一点です。
 第2点が、罰則の件ですけれども、工業所有権法との関連性等もあるようですが、欧州先進国で罰則定めている国は、必ずしも全部ではないのですが、大体2〜3年の禁錮、特許に関しても2〜3年で、著作権に関しても先ほどの表を見ましたら、2〜3年ということです。ただ、イギリスがいつこのような形で改正されたのかは勉強不足でよく分からないのです。とにかく10年以下とすればそれ以下なのですから、別に運用次第では構わないといえば構わないですけども、もしもこのような形にする積極的な刑罰を定めたことに関する理由があればその点を御説明していただきたい、その2点です。

【秋葉国際課長】 今の紋谷先生の第1点目の質問に対する回答でございますけれども、これに関しましては、報告書(案)の18ページの(イ)のところに記述されているところでございます。条約の公定解釈というのはなかなか難しいところでございますけれども、私ども事務局の方で公表されている解説書、あるいはWIPOの著作権課長にメール等で問い合わせをいたしました。解説書については、62ページの資料2を御覧いただければと思いますが、WPPTの10条、14条の「利用可能化権」、あるいは15条の「公衆伝達権」のどちらに入るのかという解釈に関しましては、インターネット・ストリーミングのように、決まった時間に予め確定したプログラムに基づいて送信されているというような場合については、個々の視聴者が特定の実演、あるいはレコードに、自ら選択する時間にアクセスすることができない、ということで、それは利用可能化には該当しないということでございます。従いまして、WPPTの10条、14条で保護する必要はなく、15条の公衆伝達に該当し、報酬請求権で保護すれば足りるという解釈をとっているということでございますので、そのように記述されていると理解しております。

【甲野著作権課長】 罰則の強化についてでございますが、今回個人の罰則については懲役10年というふうにしているのは、これは、特許・商法等の産業財産権法におきまして、今国会においてこれを10年に引き上げる、ということが決まりましたので、それの横並びということで検討されたということでございます。なお、特許等の産業財産権法におきましても、いろいろ議論があったやに聞いておりますけれども、私どもが漏れ伝え聞いているところによりますと、窃盗の場合がやはり10年ということもあるのでそれ並みに合わせるということは必要でないか、という議論があって、最終的には10年に落ち着いたという経緯があると承知しております。

【中山分科会長代理】 これは特許法との並びでこうなったということですけれども、実は産業構造審議会の知的財産政策部会では議論を全く行っておりません。これは報告書の案が固まったあと、政治的な理由でこうなったわけでして、したがってなぜ10年が良いかという点については細かな議論をしておりません。ただ言われているのは、今課長がおっしゃいましたように、窃盗が10年だからということです。私は個人的には理由がないと思っていますけれども、一応ただいま事務局の方から説明のありました理由と、あとやはり日本が率先して刑罰を強化して世界に知的財産を重視しているということを知らしめる、そういうことのようでございます。ほかに何か御意見がございましたら。はいどうぞ、佐藤委員。

【佐藤委員】 IPマルチキャスト放送の著作権法上の取扱いにつきましては、地上デジタル放送の完全実施のためには、著作権法を改正しなくても権利の集中管理を行うことにより対応可能と考えております。したがってその意味で、今回の「報告書(案)」に全面的に賛成とはいえません。しかし、地上デジタル放送の全面移行というきわめて公共性の高い目的を達成するために、必要最低限の範囲で権利者の権利を制限して、かつ権利者への保障措置を講じたもので、権利の保護と利用のバランスに配慮したものと評価しております。これまでの文化庁をはじめとする関係者の御努力に敬意を表します。
 罰則の強化につきましては、インターネット等の普及によって違法複製物等が短時間に、かつ広範囲に流通し、権利者の被害が拡大する可能性があることや、著作権侵害の抑止力を高める観点から、罰則の強化には賛成であります。以上でございます。

【中山分科会長代理】 はい、ありがとうございました。他に御意見ございましたら。

【大林委員】 今回この報告書(案)を読ませていただきましたが、以前、実演家としては送信可能化権であれば権利の集中管理で十分対応できるのではないか、と申し上げていたと思います。音の固定物に関しましては、この権利、現行では許諾権です。許諾権というと、権利者が何か勝手なことをやると思われるのは困るのですが、権利の集中管理をやることによってそのような誤解を解くことができ、かなり様相が変わってくるだろうと私達は思っておりました。それが、送信可能化権は残した形で、有線放送の同時再送信に新しい権利規定として「報酬請求権」をという形になったわけですが、この部分に関しては皆さん努力されたのだなと思いますし、一定の評価をしたいと思っております。ただ、もう一度権利者にとっての大切な許諾権というものを、お考えいただけないのかということがあります。性善説で言えばそんなものはいらないわけでしょうが、いろいろな状況も生まれている中で罰則も強化されていることも考えれば、やはりそれだけではいけないだろうということがあります。著作権法は、使ったら対価を支払う、利用したら対価を支払う、というのが原則としてこれからも普及していけばいいと思っておりますが、IPマルチキャスティングについて、実演家に対しては、許諾権のある送信可能化権から、許諾権のない新しい権利規定に移して、対応していくということですので、ぜひ、これからの細かい議論の中で、慎重に御議論いただきたいと思います。以上でございます。

【中山分科会長代理】 はい、ありがとうございました。どうぞ。

【岡田委員】 今の大林委員の性善説という言葉を聞きまして、一言申し上げたいのですが、今IPマルチキャストに対して手を上げているところがそんなに多くないので、今の段階では捕捉が100パーセント可能かと思われますが、この後、技術がどのように発展して、そしてもう少しIPマルチキャスト放送というものが簡単になれば、すごく増えていって、捕捉が不可能になる可能性があります。その際にやはり性善説で対応していては権益の損失がたくさん生まれると思いますので、そこらへんまでよく考えた上での議論をしていただきたいと思っております。

【中山分科会長代理】 はい、ありがとうございました。他に御意見ございましたらお願いいたします。

【岡田委員】 先日の会議で佐藤委員から、レコード協会が集中管理の準備をなさっているとお聞きいたしましたが、それは進んでいるのでしょうか。

【佐藤委員】 基本的には、順調に進んでいるというふうに理解しております。

【中山分科会長代理】 はい、ほかに何か御意見ございましたら。

【田上委員】 まず質問からよろしいですか。今回、法制問題小委員会においては、かなり慌しい日程の下での議論の結果、一応IPマルチキャスト放送の取扱い案ができたようです。確かに、政策的にはかなり急がなければいけない情勢でしょうけれど、果たして実務的にはどうなのか。本当に年内にこの案で仕上げなければ立ち行かなくなるのか、現場に混乱が起きるのか。そこをまず伺いたい。
 一方で、事務当局の発言として「(今回の案は)ガラス細工」という評価があったと聞き及んでおります。様々な力が入りまじる難しい力学の中で、一見すると単純な形の案をまとめたのでしょうから、さぞかし御苦労もあったと思うのですが、実際の裏舞台はどのようなものであったのかもお聞きしたい。

【甲野著作権課長】 地上デジタル放送の再送信がこのIPマルチキャストという技術によって行われるというスケジュールが、総務省が示しておられますスケジュールのなかに、今年中にはということがございました。その前に法律関係をきちんとした形で確定をさせていかなければならないということもございましたので、たいへんお忙しい中、法制問題小委員会で議論をしてまとめていただいたわけでございます。これがありませんと、一部IPマルチキャスト放送は、法律関係としては有線放送じゃないか、などと言っているような人たちもありまして、契約をするにしてもそのベースが定まらないこととなります。そのようなことから急いでやっていただいたということで、それにより実務的にも円滑に契約が進められるのではないかというふうに思っているところでございます。そのような形で急いで検討していただいたわけでございますけれども、著作権法の制度は、改めてこちらから申し上げるまでもなく、権利者の権利をしっかり確保するとともに、利用を円滑にするという両方の目的を達しなければいけませんので、その両者がうまくバランスがとれるようにという形で御議論をいただいてまとめたものでこれということでございますので、表現はともかくといたしまして、いろいろな関係の方々がある程度理解をいただくといいますか、そうしたような線でまとめていただいたのではないかと思っております。

【田上委員】 そのお話を踏まえてもう1点伺いたい。とにかく、取扱い案をまとめなければならない、ということで、そのために、たとえば報告書(案)の26ページにありますように、「有線放送事業者と同程度の公共性等が確保されるのであれば、有利な取扱いをすることは差し支えない」という表現になります。あるいは単なる表現上の問題かもしれませんが、「この程度やってくれればまあいいよ」とも読めるのです。
 ここでは「公共性」がキーワードでしょう。難視聴地域の解消という課題は今後、いわゆるへき地だけではなくて大都市部の一部にも突きつけられるものでしょうから、その限りでは、意味がある旗印だろうと思うのです。ただ、問題はその先にありまして、では、事業者からみて、その大都市部の解消はペイするけれども、へき地の方はビジネスにならないから切り捨て、ということにならないか懸念するのです。公共性の担保というのはどういう形で進めていくべきなのでしょうか。

【甲野著作権課長】 今回このような形で取りまとめられる前に、事務方といたしましても、現在の法制でどの程度義務が与えられているのか、公共的な使命を果たすための義務がどれほどなのかということについて調査をしたわけでございますけれども、有線放送事業者、ケーブルテレビジョン等を行う事業者に課せられる法令と、それから電気通信役務利用放送法、IPマルチキャスト技術を用いて放送と同様の事業をやっていると、その両者を比べますと、ほとんどが大体一致をしておりまして、内容をきちんと公平に扱わなければならないですとか、そうしたような義務が課せられているところでございます。
 そのようなことで今回一定の有利な取扱いをしてもいいのではないかというような形にまとめられたわけでございますが、ただ一点違う点がございます。先生も御指摘のとおり、難視聴地域において、この事業者がきちんとそこのところに放送を流す義務があるのかどうかでございますけれども、ケーブルテレビジョン放送法の場合につきましては、そのような義務規定がございますけれども、電気通信役務利用放送法の場合についてはそのような規定はございません。ケーブルというか通信手段を自前で持っているか、持っていないかという違いがありますので、全く同様の法律の規定をおけることにはならないかと思いますけれども、これから先地上デジタル放送が届かないところにも再送信をするという役割が果たされているということもありまして、やはり今後早急に、関係方面ではどのようにそれを担保するのかというような検討がなされて、しかるべき制度が立てられるということが必要ではないかというふうに考えておりますし、またその旨、この報告書(案)の27ページのところにも、ちょうど真ん中のなお書き以下でございますけれども書かれているのではないかというふうに思っております。

【田上委員】 分かりました。ついでに言いますと、難視聴地域の解消ということもさることながら、公共性を維持するということは、どのような内容のものを伝えていくかということも大事だろうと思います。いずれにしても、権利者の方も概ねやむを得ない案と言っておられるようなので、今後もこのテーマを注視していくということで、話を終えたいのですが、一つだけ注文があります。
 今回、自主放送の部分については、時間がないので、次に本格的に時間をとって議論するという整理になっています。IPマルチ放送技術の波が、どういう形で今後進んでいくのかわかりませんし、他省庁の論議の進展状況もありましょうが、全体のテンポは総じて急です。ですから、法制問題小委員会に対して、他の検討内容が固まったので、時間がないけれども短期間で意見を取りまとめよ、というのも酷な話であります。ある程度先を見通して、前倒し、前倒しに議論を進めることを要望しておきたいと思います。

【中山分科会長代理】 はい、ありがとうございました。他に御意見ございましたら。松田先生どうぞ。

【松田委員】 私は法制問題小委員会でこの審議に携わった者として、次の審議につなげるべき感想と意見をちょっと述べておきたいと思います。今、田上委員が言われたとおり、専門家として審議しろと言われても、たいへん酷なことがありましたけれども、とにかく日程どおりがんばったというのは間違いないことでございます。確かに、この報告書(案)の限りにおいては、現段階のこの程度の改正が求められるということについては、私は現段階でもちろん賛成なわけです。委員として賛成もいたしました。そのときの視点で考えることは、確かに現行のケーブルテレビ、有テレですね、とこれから始まるであろうIPマルチキャストが視聴者の視点から見たときには、同じサービスとして評価できるであろうと。それについて、両方の不均衡があって、片方はもしかしたら競争制限になってしまうようなことがあってはいけないというのは、私は基本的にそのスタンスに立ちました。それはいいのだろうと今でも思っております。言ってみますと、技術的には違いがあっても、著作権法上の視点は、コンテンツがどのように利用されて、視聴者のところまで届くか、そのことについては利用者の方の視点で見て同じサービスと受け止められるのであれば、著作権法上は同じようなルールで当てはめるということがあっていいのだろうというふうな視点であります。これはたぶん、これからも同じことの議論が続くのではないかと、こういうふうに思っています。そして賛成いたしました。
 もう一つは、まだ審議が進んでいないところがありまして、これからの宿題がたくさん実はあるわけですけれども、そのときの視点としてもう一つ必要なのは、視聴者からの視点と、それからIPマルチキャストがどのように発展していくのかという視点であります。IPマルチキャストはどうも技術的な視点から見ましても、可能性としては全国一つの拠点から、サーバからといっていいのかもしれません。いろんな情報が全国津々浦々に流れる可能性のある、大メディアになる可能性はあるというふうに見ているわけであります。言ってみますとこれは、もしかしたら現行の、NHKの全国放送よりも大きいシステムのメディアになる可能性があるのかもしれないというふうに思っています。これを社会資本として、インフラとして有用に使うという政策もまた、私は重要なことだろうと思っています。しかしながら、ここのところで出てくるのは、視聴者のレベルだけではなくて、ケーブルテレビとの競争、それから既存のいろんな電波における放送局との競争、この関係で、IPマルチキャスト放送がどのようなポジションを取得するのだろうかという視点は、これからの議論のなかで必要なのだろうと思います。もちろん御批判があると思います。こういう議論は、著作権法の議論じゃないのだと。産業政策的な議論なのだという議論もあるかもしれません。しかしその点において、著作権法上の視点がないかどうかを見定めていくということも必要だろうと思っています。
 それから一つの感想として最後に、この前の案を出したときのあとの新聞報道がいくつかありました。テレビも報道しました。その中に、IPマルチキャストがインターネットの普通の送信でも、同時再送信をよりやりやすくなるような報道が一部ありました。これは、我々そんな議論は全然してないわけです。電気通信役務利用放送法の範囲内でどうなのかということだけしか議論しておりませんで、それをまったく外れたインターネットビジネスがもっとコンテンツを流しやすくなるよ、というような視点は少なくとも審議会の範囲内ではしていないわけであります。これは実はもっともな話ではあるのですけれども、先ほどの、サービスを受ける国民のレベルで考えたとき、同じサービスで受け止められるのであれば、同じルールでいいじゃないかという大原則があるとしたら、このことについては注意を払わなければいけないのだろうと思います。だってインターネットで何も免許もなくて送信していても、同じサービスだろう、国民に対しては、だから俺たちも流していいだろう、というような議論が必ず生まれるわけです。現にこういう種類の訴訟は多発しているわけです。ですから、これから先審議するについてもその点の視点はもちろん審議会はもっていますけれども、ぜひ、できれば報道する立場の方々もぜひ御留意願いたいと、こういう感想を持ちつつ、審議を終わった次第です。

【中山分科会長代理】 はい、ありがとうございました。今おっしゃったユーザーの視点と技術の発展形態ですね。この二つの視点、確かに非常に重要な問題だろうと思いますし、それにあえて言えばもう一つ、この問題は著作権法だけが関係しているわけではないので、放送法制のことも関連して考えていかなければいけない問題だろうと思います。
 マスコミもこれは、知的財産に関する記事は最近多いのですけれども、おっしゃるとおり、はっきりいって間違いが多数あるわけで、なかなかこれは、この審議会ではなんともしがたいのですけれども、なるべくマスコミも正確に報道していただきたいものだと私も願っております。どうぞ、青山委員。

【青山委員】 青山ですけれども、私も松田委員と同じように、法制問題小委員会に関与した一人でございますが、この最終段階で若干意見を述べさせていただきたいと思います。この報告書の案は、言うまでもなくIPマルチキャスト放送の同時再送信に関する部分に限って有線放送並みの扱いをすると。もっとも現行の有線放送ではなくて、その有線放送につきまして報酬請求権を与えるという形に見直したうえで、それと同程度の有線放送並みに扱うということにする、というのが第一の点の骨子でございます。さきほど田上委員から、たいへん慌しい期間にというお言葉がございましたので、関与した者から若干言わせていただきますと、私は法律の専門家ではありますけれども、著作権法の専門家ではない。そういう意味でまったく門外漢の立場から審議に参加させていただきましたけれども、たいへん短い期間であった、ということは間違いございませんけれども、しかしその中では非常に充実した資料と審議に基づいて慎重な議論がなされたのではないかというふうに思っております。
 派生する問題はたくさんございますし、今後検討しなければならない問題はたくさん抱え、そういう限界のなかで、今この年度末までに議論をまとめていかなければならないという制約のなかでは、この案が、でき得る最良のものではなかったのかなというふうに思いますので、私はこの形でパブリックコメントにかけていただいて、さらに議論を進めるということをお願いしたい、それに賛成したいというふうに思います。なお、今後の問題といたしました、著作権法の問題以外に、有線放送にせよ、IPマルチキャスト放送にせよ、その報酬請求権をどういう形で、絵に描いた餅ではなくて、実効性のある権利として著作権者に報いることができるかというその仕組みの方が、実は難しいというふうに思います。著作権法の改正はできても、そちらの方の仕組みができなければ、著作権が守られたということにならない。これは先ほどから何人かの方が指摘されているとおりでございますけれども、それは法律の問題というよりも、仕組みとか、これからの実務の取扱いの問題だと思います。これにつきまして、この報告書(案)の中でも最後に書かれておりますように、文化庁としてどのくらいのことができるかどうかはわかりませんけれども、しかし文化庁もそれに対する支援をするということが書いてありますので、ぜひそういう形で著作権の充実、保護ということに力を貸していただきたいというふうに思います。以上でございます。

【中山分科会長代理】 貴重な御意見ありがとうございました。確かに短時間で慌しく議論したというのはそのとおりだと思うのですけれども、しかしこと同時再送信に関しましては、おそらくこれで議論は尽くしたのではないかと思います。したがって短い期間ではありましたけれども、この報告書(案)は、私のような学者からみても、かなりよくできているのではないかと思います。ただ今後の問題はいろいろ残っているということだろうと思います。
 ほかに何か御意見ございましたか。

【金原委員】 この報告書(案)の内容に異議があるとかそういうことではないのですが、これまでの有線放送とIPマルチキャスト放送の違いというのは、自ずからやはりあるわけで、これが仮に同じものであれば、先ほど松田先生おっしゃったように著作権法上の取扱いも同じでいいだろうというふうに、それは私もそう思います。しかしIPマルチキャスト放送においては、この報告書(案)にもありますように、やはり大量のものがデジタル情報として伝達されるという根本的な違いがあるわけですので、将来これが、いままでアナログでは通信し得なかったような情報がデジタルによって達成されるようなことによって起き得る権利者への影響というものも、どこかの時点で、将来ですけれども、見直すことが必要なのではないかなというふうに思います。
 それから、やはりこれは報酬請求権ということですから、報酬が一体どうなるのか、そういうことによって権利者への配慮、使われる著作物に対する対価というようなものが、しかるべき方法と金額によって払われるという、そういう制度を作り上げるということが非常に重要かなというふうに思います。以上です。

【中山分科会長代理】 はい、ありがとうございました。ほかに御意見ございますか。よろしゅうございますか。予定されていた時間、若干早いようですけれども、御意見が尽きたということでございますので、本日寄せられましたいろいろな御意見を、あるいはこれから寄せられるであろう意見募集等を参考にいたしまして、引き続き法制問題小委員会においてこの問題についての検討を進めてまいりたいと思います。
 本日予定されておりました議事は以上でございますけれども、時間もあるようでございますので、この問題以外でも結構でございますので、何か特に御意見ございましたら頂戴したいと思います。どうぞ、佐藤委員。

【佐藤委員】 レコードの保護期間延長についてお願いしたいと思っております。レコードについて世界1位の市場であるアメリカが、発行後95年保護しているほか、50年を超える保護を与えている国も増えつつあります。また、国際レコード産業連盟、IFPIにおきましても、このレコードの保護期間延長問題は最重要課題とされております。このような状況を踏まえて、来年度の法制問題小委員会で著作権の保護期間期間延長について検討する場合には、著作権隣接権の保護期間延長についても併せて御検討いただきたいと、こういうお願いでございます。よろしくお願いいたします。

【中山分科会長代理】 保護期間につきましては、世界的にもいろいろ大議論あるところでありまして、法律学的にはもちろんですけれども、エコノミクス的な分析も含めて世界的に議論があるところでございますので、いろいろ慎重な議論がなされるのだろうと思います。他に御意見ございますか。はい、どうぞ、大林委員。

【大林委員】 今、佐藤委員の方からもお話がありました保護期間の延長、特に実演家は、実演をしてから50年ということですので、何度も申し上げているように、長寿社会になりますから、俳優等が、生存中に保護期間が切れてしまうということは本当にいかがなものかと思っております。ぜひ、これから取り上げて検討していただきたいと思います。それと、もう一つ、この報告書(案)の中では今回議論しないというふうに書かれていますが、音と映像の権利の格差の問題です。これは今や、オーディオ・ビジュアルの時代ですので、音はどう、映像がどう、というふうに分けてしまうのはおかしいのではないかということです。現行法は、「映画」の定義はないまま、「映画的著作物」の定義がなされ、映画的著作物の特別扱いがなされていますが、どうなのでしょうか。お金だけ払えば何でもできるという形ではなくお願いしたいのですが、これからは利用したら必ず対価を支払うという時代になっていくと思いますので、実演家の権利が狭められる方向ではなく、音と映像の扱いについてその違いが是正されるよう、ぜひ、今後の重要な検討事項としてよろしくお願い申し上げます。

【中山分科会長代理】 はい、ありがとうございます。ほかに御意見ございましたら。はい、どうぞ、辻本委員。

【辻本委員】 DVDのメディアの中古問題について少しお話をさせていただきたいのですけれども。中古問題につきましては、著作権法で保護できないということでございまして、中古はマーケットのなかでは非常にいいビジネスとして成立しているわけでございますけれども。御存知のようにDVD、デジタルのメディアにつきましては、これは本当に劣化しないわけでございます。特にゲームにつきましては、新品の発売は大体3か月で終わってしまいますが、その発売した新品の数の大体2年で10倍近い作品が中古として回転しながら流通しているのが現状の状態でございます。ということでございますので、これはできるだけ業界として努力して、ユーザーの利便性も考えて工夫したいということでありますが、これ以上ビジネス上のデメリットが発生しますと、我々の業界についてはやっぱり、将来DVDというメディアは、我々の制作に適さないと、だからこれは今後やはりネットとかなんとかをかみ合わせながらやらなければいけないだろう、というような方向性になる可能性もあるわけであります。これは時代の流れでございますからしょうがないのですが、せっかくDVDというメディアができたなかで、そういう権利の合理性がないために、そのメディアが次の時代に飛んでいっちゃうという世界でございますけれども。結果起こっていることは何かといいますと、やはり制作に対する非常にパワーが落ちてきております。やはりいろいろなものを作ったなかで、これからはやはり売れるもの、回収できるものから考えますと、年間ゲームで約1200タイトル作っておりますが、おそらく近い将来600、300というふうに数が減っていくのではないかとこう思うわけでございます。
 そういうことで、中古を禁ずるというよりも、やはりデジタルの著作物でありますから、再販につきまして、少し権利のあうところに何か工夫して対価を払うとか、いろいろな方向を一つ審議していただくと非常にありがたいなというふうに思っておるわけでございます。もう3〜4年、DVDが出ましてもう4〜5年になりますか。ますます盛んになりまして、今流通はほとんど、新品があっても新品を売らないで中古ということで、中古を売っているような状態で、ビジネス上におきましても新品を圧迫する、そういう傾向が非常に多いわけでありますし、流通はそういうことで、中古につきましては権利者に払わなくてもいいと、また仕入れについてもユーザーから自分の都合のいい価格でシェアできるということがございますから、これはビジネス上非常にハンディキャップのある取引だと思いますので、少しこのへんにつきましても再考していただくとありがたいなということがありますので一つよろしくお願いしたいと思います。

【中山分科会長代理】 デジタルの問題は中古問題だけではなくて、別の小委員会でも問題になっております録音・録画の課金問題等々含めて、著作権法全体に非常に大きな影響を与える問題だと思いますので、今後いろいろ慎重に検討を進められるものと思います。ほかに御意見ございましたら。はいどうぞ。

【森委員】 少し発言のタイミングを遅らせてしまったことをお詫びしたいのですが。放送事業者といたしましては、今回の報告書(案)の中身については概ね評価する、ということで意義を唱えるという立場でございませんので、あえて積極的なものをいたさなかったのでありますが、とりわけこの評価のなかで、個人的に考えましても「自主放送」につきましては、少し時間をかけて先送りして検討されるということは、私は大変良い判断であったというふうに考えております。やはりこのIPマルチキャストは極めて技術的にも進歩の早い、極めて流動的な技術という面がございます。国際的にも、このIPマルチキャストに係わる標準システムといいますか、方式をどうやって作るかというのが最近急に議題として取り上げられてきた、というようなこともございますし、基本的にはやはり、こういった手段を、通信・放送というそういった単純な仕分けで考えるのは難しいにしても、基本的にはその問題がどうしても最初に議論しなければなかなか先に進んでいけないテーマがこの中に含まれておりますので、これについてはできるだけ世論、国民に広く意見を聞きながら慎重にやっていくというのがやはり重要だというふうに私ども考えておりますので、その意味でも今回の結論というのは極めて私は常識にかなった結構なものではなかったかというふうに思います。
 それからもう一点、非営利、無料のシステムにつきましても、今回道を開いたということは、これは現実的には一番効果のある措置として私は出てくるのだろうというふうに思っておりますが、その場合やはりこれを悪用して小さく始まって全国へ伸ばしてしまうなんていうことがないような、やはり常識的な運用がされるということをちゃんと皆で監視していくということは、これは当然のことであり、今回の報告書(案)でもそこまでちゃんと目を配っていただいたということは大変結構だったというふうに評価をしております。本当にいろいろ御苦労様でありがとうございました。

【中山分科会長代理】 はい、ありがとうございました。ほかに御意見ございましたら。はい、どうぞ。

【金原委員】 これも一般論ですが、本日のこの議題のような、このような著作権法上の対応はそれぞれ必要だというふうには思っておりますが、伝達手段の進歩のようなものが今後際限なく続いていくだろうというふうに思います。そのたびに同じような議論が、将来永久に続くのではないかというふうに思いますが、ある程度の必要性は理解するものの、ずっとこういうことを続けていくと、どこかの時点で著作者、あるいは著作物を伝達する出版もそうですし、レコードもそうですし、あるいは放送もそうだと思いますが、そういう関係する人たちの創造性、あるいはそういうものを伝達しようとする意欲を抑制することのないようにしなければならない。そうなりますと本末転倒ですので、このような通信手段の進歩、あるいはその利用目的、公共性、あるいは教育でもそうだと思いますが、そのような場面で利用を促進するために著作権法を変えていくというようなことが、将来著作者の意欲を失わせないような、あるいはそれを伝達する事業者の意欲を失わせないような配慮を、ぜひ将来にわたってお願いをしたい。そうなりますと、将来の日本で著作物が作られなくなって伝達されなくなると、結局元も子もないことになってしまいますので、そのような配慮もぜひこの著作権分科会で考慮しながら審議を進めていく必要があるのではないかなというふうに思います。以上です。

【中山分科会長代理】 はい、ありがとうございました。ほかに御意見ございましたら。よろしゅうございましょうか。
 それでは、本日の議論はこれで終了とさせていただきたいと思います。事務局から連絡事項ございましたらお願いいたします。

【甲野著作権課長】 本日は御審議ありがとうございました。本日、御報告をいただきましたこの法制問題小委員会の報告書(案)についての今後の審議予定につきまして、御説明を申し上げます。この報告書(案)については、参考資料の4でも配付をしたところでございますが、明日から1か月間、広く国民の皆様に対しまして意見募集を行うことになってございます。その後、法制問題小委員会で再度御審議をいただいたあと、夏には、著作権分科会、この分科会に御報告をいただきまして、分科会で御議論をいただいたあと報告書として取りまとめ、最終的な取りまとめをいただくこととなっておりますので、どうかよろしくお願いをいたします。

【中山分科会長代理】 以上をもちまして、第19回文化審議会著作権分科会は終了させていただきたいと思います。御多用中ありがとうございました。


(文化庁長官官房著作権課)

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