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文化審議会

2004年1月14日 議事録
文化審議会著作権分科会(第12回)議事要旨


文化審議会著作権分科会(第12回)議事要旨


1    日   時   平成16年1月14日(水)午前10時30分〜午後1時

場   所 東海大学校友会館「阿蘇の間」

出席者 (委員)
石田,市川,入江,岡田,小熊,角川,金原,後藤,齊藤,迫本,里中,清水,瀬尾,常世田,土肥,永井,中山,野村,松田,三田,山口,依田の各委員
(文化庁)
素川次長,森口長官官房審議官,吉川著作権課長,吉尾国際課長
ほか関係者

配付資料
1      文化審議会著作権分科会(第11回)議事要旨
2−1   著作権法(抄)
−2   諮問(平成15年度使用教科書等掲載補償金額)
−3   平成15年度使用教科書等掲載補償金の算定について
3−1   「拡大教科書」の作成に係る権利制限について
−2   諮問(平成15年度使用拡大教科書掲載補償金額)
-3   教科用拡大図書の補償金の定め方(案)
4−1   文化審議会著作権分科会報告書(案)
−2   文化審議会著作権分科会報告書(案)に関する意見募集の結果

5   概   要
(1)    平成15年度使用教科書等掲載補償金の額及び平成15年度使用拡大教科書掲載補償金の額について,使用料部会長から報告があり,事務局の補足説明の後,以下のような意見交換が行われ,分科会として諮問案のとおり議決した。

   (以下委員○,事務局△)

   ○ この拡大教科書補償金の算定方法について,特に異議は申し上げなかったが,資料に鉄道やバスや船舶は5割引であるとか,航空運賃が3割7分引だから半額にしろと,そういう論拠であろうと思う。しかし,ここに書かれている鉄道やバス,船舶というのは大企業で,それに対して著作者というのは一人ひとりの個人です。公共のためだということで,個人の私権にかかわるようなことを値引きしろという発想そのものに対して私は異議を申し立てたい。個人に公共のために犠牲を強いるということであれば,戦争中,宝石や貴金属を個人から取り上げるというようなことと等しいものであり,この考え方はご検討いただきたいと思う。ただ,拡大図書を作っている会社は,形が株式会社でも,営利目的というよりは,世のため人のために拡大図書を作っているわけで,著作者も社会的存在であるので,権利者側が過大な要求をすることによって,公共のために営利は出ないけれども本を作っている方々に犠牲を強いるということはしたくない。そういう意味からこの算定方法を認めたということであり,バスと同じように値引きをしたというふうに理解されるのは困るということだけ申し上げておきたい。

   ○ 私は今の意見と反対の考え方を持っており,身体に障害のある方が社会で健常者と同じように生きていくためには,公あるいは大企業だけが負担をするのではなく,国民全体が広く犠牲を甘受する必要がある。その犠牲も大きい犠牲では困るが,この程度なら国民全体が負担をすることによって,はじめて健常者と非健常者が平等な生活を送ることができる。甚だしく著作者の利益を損なうということでしたら話は別ですが,この程度でしたら,むしろ積極的に割引を行うべきではないかと考えている。

   ○ 結論は同じですが,そういうことを人から言われたくないということで,例えば,著作者団体は録音図書の作成について全部無償で応じるということをやっている。著作者が主体的にサービスをするということを認めていただきたいと思う。

   ○ 公共図書館の立場から申し上げるが,録音テープの作成についても同様ですが,健常者は図書館に行って本を借りられるが,視覚障害がある方については,メディア変換が必要で明らかに不公平な状態にある。拡大写本については,公共図書館でもボランティアを養成して作成しているが,許諾が必要になっている。そういう意味では,学校の教育現場と同じように公共図書館の現場でも,著作権者に報告するということで,自由に作成できるという状況になるべきではなかろうかと考えている。拡大写本の場合,録音テープよりも作成が困難である。弱視の方はお一人おひとり障害の程度が千差万別で,周辺の視野がない方もいれば,中心の視野がない方,あるいは,黒いところに白い字の方が見やすいという方もいらっしゃる。こういう非常に個別の障害の範囲に応じて,ボランティアが字の大きさとか字の太さまで検討して作成する。基本的に拡大写本は特定の方に対しての作成ということが多い。ですから,印刷をして,100部でも同じものをつくるということは,多くの弱視の方が見られるという反面,お一人おひとりにとっては不自由だという面がある。公共図書館においては,特定の方に1部だけつくるということも珍しくない。権利者の方に大きな損害を与える可能性はほとんどないということで,ぜひ検討していただく分野ではないかなと思っている。

   ○ 本日出された原案を認めることについてはやぶさかではないが,次年度以降のことについて,日本美術著作権機構から著作権課に要望書が出ていると思いますので,その要望を十分お汲み取りいただきたいと思います。とりわけ資料にあります美術の著作物・写真の著作物一覧表をご覧いただくとおわかりになると思いますが,これは掲載サイズにほぼ比例して使用料が算出されているわけで,これは我々からすると,一点の作品が切られて使われるわけではなくて,丸ごと使われているということに変わりがないわけです。例えば1ページが4,095円,2分の1ページが2,100円,4分の1ページが1,260円と,ほぼ整形して使われているというのに極めて不合理な状態で,本当は大小にかがらず同額でもいいくらいに私は思いますけれども,せめて2分の1が1ページの70%,4分の1が40%ぐらいのところまでいってほしいというのが我々の願いでありますので,この点についてはぜひ慎重にご検討いただきたい。

   ○ ただいま拡大教科書と通常の教科書と両方についていろいろご意見いただきましたが,拡大教科書については,先ほど事務局からご説明しましたように,平成16年度については,原則こういう方向でということではありますが,改めて検討するということです。教科書については,3年間こういう形でやってきておりまして,来年につきましては,また検討するという段階で,本日のご意見を部会の中でも検討したいと思います。


(2)    文化審議会著作権分科会報告書(案)に関する意見募集の結果について,資料に基づき事務局から報告され,その後次のような意見交換が行われた。

   ○ 今回の意見募集は,著作権にかかわる問題について,国民的な関心の中で多様な意見が寄せられ,決められていくという民主的なプロセスを経るという意味で,きわめて重要なことだったと感ずる。事務局からの説明があったが,賛成・反対の意見を単に数字に還元してしまうと,質的な面が捨象されてしまう。したがって,私なりに寄せられた意見をこう読んだということについて,配布した資料で補足させていただく。政府の審議会において1000件を越える意見が寄せられることは稀であり,通常,1カ月間のパブリック・コメントであっても数十件,多くても数百件というのが概ねの傾向である。また,米国政府はじめ国際組織からも英文で意見が寄せられたことも特徴的だ。したがって,今後の審議会において,通常政府が行っているようなパブリック・コメントを,来年度以降も行うべきだと思う。 
   第2に,寄せられた意見の分類を見ると,反対意見が賛成意見に含まれているなど,集計上のミスが散見される。数字についてはきちんとして頂きたい。内容では,賛成意見において,事業者団体が傘下の会員などに呼びかけて,そのコピーに署名して送っているというような意見もかなりあったが,賛否両論とも,それぞれの個人の考えをしっかり記述している意見が多かった。私は反対意見の立場だが,レコード会社の社員や販売店の方がどのようなお考えを持たれているのかということを知る上でも大変勉強になった。反対意見については,数値上は賛成意見より少ないものの,多くの消費者,利用者の声が多様に寄せられているという特徴がある。そうした意味では,本日の審議会においては,国民に対する責任,あるいは意見募集をしたことに対する責任を果たすという関係で,これらの意見を踏まえた審議が必要だと思う。最後に,反対意見の団体の中に全国消費者団体連絡会の意見がもれているので,この点も含めて後で精査して頂きたい。

   ○ アメリカの反応がこんなに素早くとれるのかなと思って,改めてアメリカの対応力の素早さに敬服したということを,まず印象として申し上げたい。また,アメリカは保護期間の延長,国際的な保護と執行の強化,あるいは,侵害の被害に対する効果的な防止について,日本の審議会がそれを認識して検討していることに非常に力づけられたということで,アメリカがこの問題について非常に関心を持ちながら,共通の立場でいるということを確認しました。また,アメリカが民間からの提案が非常に重要であることを指摘しているということも心憎いなという感じがしました。いずれにしろ,この問題は日本国内の問題だけではなく,国際的な視野に立って検討していかなければいけないのではないかということを痛感しました。

(3)    文化審議会著作権分科会報告書について,事務局から説明の後,以下のような意見交換が行われ,報告書(案)を一部修正した上で報告書と決定され,分科会長から文化庁次長に提出された。

   ○ 国民に広く意見を募集して,その結果を踏まえてどう考えるかということで,きちんと審議をいただき,結論を得るべきと考える。あらかじめ事務局から結論部分について多少の修正が出ると思っていたが,特段そういうことではないようなので,きちんと審議会として議論をするためのたたき台となる文言があった方が良いと思い,本日あえて書面にて意見を提案させていただいている。大変簡単な修正提案だ。報告書の「おわりに」の部分に「『日本販売禁止レコード』の還流防止措置については,引き続き慎重に検討を進めることとする」という文章を挿入し,前文にある「等」とか「速やかに」というふうに,ちょっと曖昧にしたり,あるいは拙速にやっているような印象を受けるような文言については,少し整理した方がいいという提案だ。
   提案理由の第1は,絶対数で300ぐらいの反対意見がパブリック・コメントに寄せられるというのは,かなり大変な内容であって,社会的な理解や合意という点で言うと,なお慎重に検討することが国民的に必要ではないかということだ。
   2点目は,この問題は今朝の新聞でも報道されており,私の調べた範囲では「社説」で書かれている新聞は他になかったので資料で例示的に紹介したが,「慎重な検討が求められる」という報道もあり,社会的な関心がようやく広がりはじめた段階で拙速に結論を出すことについては避けるべきではないかということだ。昨年末に岩波新書で発行された『著作権の考え方』という本は,前の著作権課長が書かれたもので,大変勉強になる本だが,その中でもこの「関係者間協議」という枠組をつくった趣旨が書かれており,本来消費者を含むいろいろな関係者がきちんと協議をして,その上で結論を得るというスキームとして準備していたことが読み取れる。この間,私どもの団体を含めて消費者団体の参加を何度もお願いしているが,関係者間協議ということでいえば,消費者は当事者ではないという扱いを受け続けている。あらためて消費者団体を含めた協議をきちんとすべきだというのが第2点目である。
   3点目は,意見募集で出てきた意見を見てあらためて感じたことだが,最近の新聞報道でも,インターネットを通じた音楽配信サービスが世界的に広がっている。資料にも紹介したが,ハードグッズのCDという形で音楽コンテンツが流通するという枠組は,グローバル化,デジタル化,IT化の中で,大きく変わろうとしてきている。そうした時に,ハードグッズとしてのCDの輸入を規制しようなどということにこだわっていると,本当の意味での大きな流れを見失ってしまうのではないかという危惧を強く感じている。日本でもこれから相当な広がりを見せるだろうと思っており,中長期的にそうしたことを含めた検討が必要であり,ハードグッズの輸入規制にこだわっているとこうした問題を見失ってしまうのではないかと思う。
   4点目は,法制問題小委員会の報告の15ページにもあるように「慎重に検討すべき」という意見があることを踏まえるべきということだ。特に洋盤についても法的には適用されてしまうという問題については,何ら解決されていないのではないかと思う。もし結果として洋盤の値段が上がってしまうようなことがあっては,大きな禍根を残すことになる。いずれにしても,慎重に検討すべきではないかと思う。
   それから,事務局に3つ質問がある。第1に,先ほど申し上げたように洋盤の扱いについては,法制問題小委員会でも相当議論されたわけだが,その後何か新しいことは出ていないのか。内外無差別の原則から,法的措置でいえば阻止することはできないということではなかったかと思うが,そのへんの状況についてもう一度確認をさせていただきたい。第2に,先ほどの申し上げた音楽配信サービスの関わりで,今回の問題はどうかかわるのか,あるいはかかわらないのか。最後に,関係者間協議に消費者を加えるべきだと私は何度も申し上げているが,本日は文化庁次長が出席されているので,その点についてどうお考えなのかを次長にお答えいただきたい。

   △ 洋盤に関するご質問については,基本的に保護すべき対象のレコードが国際条約で定められているので,内外無差別という点は遵守しなければ条約違反になるということです。ですが,「みなし侵害」規定を使って今回の問題を処理しようということで,事務局で法制局等と詰めております。洋盤というか,直輸入盤が入ってくることを外国の権利者が阻止することについては,経済的な合理性がないとは思いますけれども,あえてそのような措置をしようと思った場合に絶対不可能ということにはならないと思います。しかし,通常そういう措置はとらない,あるいは,とる合理性がないので,ある程度の条件設定はできるのではないかと思われます。これは,条文を具体的に詰めた後でないと明確にご判断いただけないと思いますけれども,内外無差別を前提としながら,「みなし侵害」で工夫をしていくということです。それから,配信サービス等については,新しい流通の方法が検討課題になるということはあろうかと思いますが,CDの形で音楽が流通しているという現実,目の前の問題もあろうかと思います。来期以降こういう新しい流通のあり方の中で著作権法を考えていくことは必要な課題だと考えますので,またご議論いただければと思っております。

   △ 関係者間協議につきましては,関係者というのはどのテーマを取り上げているかによって異なってくるのでありましょうし,誰と誰が範囲内であるかということについては,文化庁がこの範囲が関係者であるという,個別のテーマについて範囲を設定するということではなく,やはり権利者及びそれに関係する者の中で,この範囲が関係者だというふうに出てくるのではないかと思うわけでございます。広く意見を聞くということは一般的にはよりいい結論を出すための方法としてあるのかもしれません。繰り返しになりますけれども,関係者の範囲というのは,それぞれの団体間の中で個別に決まってくるものではないかというふうに思います。

   ○ 意見をお聞きしていると,この問題を価格という一点で話されているように思えるのですけれども,日本の音楽がアジアを足掛かりに世界に打って出るということは,音楽文化の普及であると同時に,音楽文化の輸出でもあるわけですよね。この輸出が成功して経済的な利益を生んだときにそれは国益にもなることでして,国益になるということは,国の利益はいずれは消費者に還元されていくものだと思います。安いものを手に入れたいという一点で反対なさるのは,将来的な国の利益から考えて損失ではないかと思います。私もアメリカの反応の速さにはびっくりしました。日本が知的財産立国となろうとしているときに,その後押しをしてくださっているものと理解いたしました。ぜひとも一日も早く「日本販売禁止レコード」の還流防止の法律を制定していただきたいと思います。

   ○ 「おわりに」の修正案文を拝見いたしまして,最初の「廃止(削除=等)」,もしくは(削除=速やかに)ということに関して,法制問題小委員会の検討の中で「速やかに」もきちんと理由があったと考えております。「等」の廃止に関しては,結構だと思います。ただ,(削除=速やかに)というのは,速やかな理由がそこで得られたために,「速やかに」という一言が入っていると理解しておりますので,これは削除の対象ではないのではないかと思います。次の「『日本販売禁止レコード』の還流防止措置については,引き続き慎重に検討を進めていくこととする。」を入れますと,本文の方と異なってしまうと思います。要は,「還流防止措置については検討する」ということと,「還流防止のために何らかの措置が必要であるという意見が多数であった」というのは矛盾しているということです。「措置自体は必要であるが,具体的な対応に関しては検討する」という形の本文に対して,こちらの「おわりに」というところで矛盾してしまうのは正しくないだろうと。私の意見ですけれども,消費者を含めた広い範囲の協議というのは具体的な段階でも常に必要になってくると思います。必要性はあると思いますし,今回のパブリック・コメントでも非常に貴重な意見が出ています。これぐらい反論があると,「慎重に」ということはよろしいかと思いますけれども,「これを何とかしなければいけない」という結論が得られたこともまた事実でございます。小委員会の結論に対して,それが「まかりならん」と分科会が戻すならわかりますけれども,この場で変えてしまうとすると小委員会の検討は何だったのかとなりますし,小委員会で出た結論をこの場で文言を変えてしまうのは進行上いかがなものかと思いますので,この本文と齟齬を来す「おわりに」の「日本販売禁止レコード」以下の挿入は必要がない。その前の「等」の削除はよろしいかと思いますが,「速やかに」というのは理由がありますので,これは削除しない。本文に関しても,検討の結果としての事実をおまとめいただいたこの内容でよろしいのではないかと思います。

   ○ 「『日本販売禁止レコード』の還流防止措置については,引き続き慎重に検討を進めていくこととする。」のくだりですが,これは読み方によっては,速やかに法律を制定してはいけないと,もう少し考えなさいというふうにもとれます。私は速やかな法律の制定を求めているものですから,この文言を入れることには反対です。

   ○ 先ほどの意見でも「等」の部分は取ってもいいのではないかというお話もあった。私が危惧しているのは,この「等」に何でもかんでも含められて,「日本販売禁止レコード」のことも,あるいは他のことも,すべてこの「等」に入っていたと拡張解釈される危険性があるということだ。先ほどあったご意見のように「速やかにすべき」というのは,貸与権についての結論部分だったはずだ。このへんのことを明確にしておかないと,後からいろいろなことが「等」に含まれていたみたいなことになる。そうすると,私どもとしてはだまし討ちにあったような感じになるので,そこについてはきちんとご検討いただきたい。

   △ 「等」に関して誤解があるかと思います。この報告書の中で著作権法改正に絡むことで言えば,罰則の強化というところが司法救済小委員会の報告の中にございます。これには2つの内容がございまして,罰則や罰金について,特許法及び商標法と同程度に引き上げること。もう1つは,罰金刑と懲役刑をあわせて科すことを可能とすべきであるということが書いてございます。この2点につきましても,法改正が必要でございますので,そういうことも考えて,「おわりに」のところの作文がされているということでございます。

   ○ この文章の理解として,今,事務局が言われた理解として「等」が入っているということで,よろしいのか。つまり,「還流防止措置」についても,後で実は入っていた,あるいは入っていなかったといった議論はしたくないので,ぜひ確認させてほしい。今の説明のように,後段の他の小委員会に関わる法改正事項を含めるという趣旨で,ここに「等」を入れたという中身で理解してよいのであれば,私はそれで構わない。そういう意味では,「還流防止措置」については「慎重に検討を進めていく」ということの趣旨を踏まえていると理解したが,それでよいのか。それから,先ほど事務局から関係者間協議についての答弁があったが,消費者団体や消費者,音楽愛好家のみなさんの意見を踏まえるべきだと問題提起させていただいている。ぜひ消費者団体との間を含めて今後そうした運営をしていただきたい。

   △ 日本で販売を禁止されているレコードの還流防止措置については,多数の委員の方からこれは速やかに行うべきだという内容を含んだ報告書が文化庁にいただけるという段階だと思います。私の方で勝手に「等」の解釈をするわけにはまいりませんが,先ほど「『等』を入れているというのは罰則のこともあります」と申し上げましたけれども,日本へのレコードの還流の問題については多数の委員の方が速やかに行うべきだという内容を含んでいると思います。ただ,それを明示することは,この報告書の書きぶりの中で避けていると思いますけれども,私の先ほどの説明を,還流防止措置に関しては速やかに行わないものと,逆にとらえられるとちょっと間違っていると思いますので,あえて申し上げました。

   ○ この分科会でも法制問題小委員会でも,速やかに著作権法を,還流防止措置について法的対処,立法的対処をとるべきだという意見があり,そうでない意見もあったことは間違いなくて,法制問題小委員会の意見の取りまとめにつきましては,まさにこのとおりでいいと思っております。しかし,「おわりに」というところを取りまとめるときに,この分科会で最大の議論の対象は「日本販売禁止レコード」の還流防止措置であったことは事実だろうと思います。であるなら,「等」に含ませて考えられるかどうかというような疑問を残さずに,「日本販売禁止レコード」の還流防止措置は速やかに法改正すべきであるという意見があるので,それを記載するかどうかということもはっきり決議したらいかがでしょうか。

   ○ 法改正の方法等につきましては,さらにこれから詰めていくということでございます。先ほどの委員の貴重なご発言の中に,「輸入権創設に疑問あり」という社説をご紹介されましたが,これは事を拡大して抽象化してしまいますね。これをもって世論形成とか,議論をするというとちょっと不正確になります。法改正と言いましても,輸入権を創設するというようなことは含まれていないと推測します。先ほど例として「見なし侵害」ということを出されましたが,それに限らず,商業レコードに限定した改正が模索されるのではないかと推測しております。これは私の勝手な個人的な推測でございます。「輸入権」そのものをズバリと出すということではなさそうな気がいたします。

   ○ 私はここではどっちの意見に賛同するということではなく,皆さん方の意見を聞いていれば,「還流措置について速やかに著作権法を改正すべきである」という点の意見が現実にあり,今「引き続き検討すべきである」という意見も出てきたわけです。そして,事務局のお話では,「暫定措置の廃止等についてはレコードの還流防止措置について排除したわけではない」というご答弁のように聞こえるわけです。両方の意見が明確にあって,「結論を出してください」と委員が言っているのに,最後の「おわりに」という結論部分において最も集中して審議した議論を,ある意味では何も書かないで,玉虫色にしているというのはいかがなものかということで,審議の方法について動議を出しているわけです。還流防止措置についての賛否を「おわりに」に記載すべきであると考えます。

   ○ この問題が非常に重要だからこそ,意見募集をしたわけですから,そういう表記がないと,誤解を招くことが出てくると思います。小委員会の結論と,意見募集で出てきた結論がそんなに大きくは違わない。賛成意見は多いけれども問題点もあるという意見が,意見の中でも多数を占めていると思いますので,小委員会の結論とイコールかとは思いますが,意見募集の結論を踏まえてどうするかという方針を明記した方が誤解がないし,あえて年末に意見募集をした甲斐もあったというふうに考えます。

   ○ 先ほど「等」の削除は賛成ということを申し上げましたが,「等」を削除すると,結果として,もう一つの結論も明記しなければいけないことになってくると思います。そういう含みを持たせてこのままにするのであれば,「等」は生きるであろうし,「等」を削除する場合は,もう一つの結論を明記するという意見にまとめさせていただきます。

   ○ 法制問題小委員会の関連部分について,いろいろな意見が書いてありまして,「以上のようにさまざまな意見は見られたが,日本の音楽レコードの還流防止のため,何らかの措置が必要であるという意見が多数であった。他方,具体的な方法論については,欧米諸国等の云々で,これらの慎重意見を踏まえた検討が必要である」と書いてありまして,ここでは「何らかの措置が必要であるという意見が多数であった」という書き方しかしていませんので,まず「何らかの措置」ということが,著作権法改正というふうに限定されておりません。また,「意見が多数であった」という言い方がこの中でされていますので,先ほどの「おわりに」のところの「著作権法改正が必要であった」と書いてしまうと,本体部分と食い違ってくるんですね。私は内容の是非を申しているのではなくて,本体部分と先ほどの委員のご提案の「おわりに」とが食い違ってくると思うんです。ただし,「おわりに」の部分で,還流防止のところは大事ですので,何らかの言及が必要であるということには賛成です。ですから,本体と食い違わない形で,「おわりに」を記載したらいかがでしょうか。

   ○ 今,分科会長が出された報告書案を承認するかどうかという手続きをやっているわけですが,一部について変更意見が出た場合,変更の動議として出されているならば,それをまず先議して,可決か否決かして,その後に議長提出案を承認するというのがルールだと思います。2つの意見があって,一方は提案として出されているので,これが動議なら,先議すべきと思います。

   ○ 手続きについてのご提言がありましたが,委員から積極的な修正のご提言があったところですが,討議の過程におきまして,委員から了解なさるというご発言がありましたので,動議として採択しなくてもいいと判断したところでございます。改めて今度は,還流防止措置につきまして,速やかに法改正をすべきであるということに特化して意見を問うべきとの動議がありましたが,この動議に賛成の方,手を挙げていただきたいと思います。議事の進め方でございます。内容についての賛否ではございません。
[賛成者挙手(21名中11名賛成)]
過半数を得たわけでございますので,先議の結果如何によりましては,報告書の一部が手直しされるかもしれませんということでよろしいですね。

   ○ 議論の大半は還流問題であったことは間違いないんです。その意味で何か書いておかないと,大半の議論についてまとめがないということになります。法制問題小委員会の内容は,「還流防止については何らかの理解を示すという意見が大半であった」と,これは間違いなくそのとおりです。しかしながら,著作権法を改正するかという点については,真っ二つに分かれておりまして,特に有識者は,ほぼ全員に近いぐらいは著作権法の改正は反対だったというのが実情です。したがいまして,この問題をここで議論してどちらに決めるのは大変でございますので,法制問題小委員会の状況をここでまとめて正確に書くようにしていただければと思います。

   ○ 先ほど私がお配りした資料の後半部分について「何らか触れる」ということについては,例えば「日本販売禁止レコードの還流防止措置については,法制問題小委員会の内容を踏まえて,引き続き検討を進めていくこととする」というような趣旨で文章を入れていただき,細かい部分については分科会長と小委員会の主査の協議で決めていただくということで一任するという提案をしたい。先ほど「等」が拡張解釈されそうな趣旨の発言があったので,今の提案はきちんと取り上げていただきたい。

   ○ 理論的には小委員会と違う結論をここで出すことも十分可能だと思うんですけれども,これまでの議論の経緯からして意見を集約することはほとんど不可能だと思いますし,いろんな意見があることも事実ですので,分科会の報告書としては,法制問題小委員会の結論と矛盾しないような形で書いていただければいいのではないかと思います。文言は分科会長にお任せしたいと思います。

   ○ 分科会は小委員会の上位機関ですから,小委員会の意見をひっくり返すことは理論的には可能ですけれども,今回は不適切だと思います。なぜかというと,まず1つは,5つの小委員会における検討の結果,適当であるとの結論を得たというのは,もしそうであれば小委員会の検討の結果を踏まえて分科会全体として,これこれの結論を得たところであるというふうに,それを明記すべきなんですが,本来の分科会は小委員会の意見をたたき台にし,ここで本格的な検討をして結論を出すことが前提になっていると思います。しかし,現状では5つも小委員会があって,そこで検討してはっきりした結論も出ないものを,ここで賛否をとってしまうというのは,理論的には分科会が上位であっても,現実的には非常に不適切だと考えます。したがいまして,小委員会の検討の結果と矛盾しない形をここで書くべきであって,分科会としてこのように微妙な問題で賛否をとるのは不適切であると考えます。

   ○ 法制問題小委員会における意見というのは,本報告書における内容の重要な一部,つまり「おわりに」に書いてあるから重要であって,前に書いてあるからそうではないという意味では決してないと思います。慎重な活発な議論を踏まえた上でこれができたわけですので,この内容は本報告書の重要な一部であるという認識がひとつございます。それから,最後の「おわりに」のところにきちんと書くかどうか。もちろん書くという選択肢はあろうと思います。しかしながら,この「おわりに」にある部分は「このように5つの小委員会における検討の結果」と始まっておりまして,そのとおり5つの小委員会の検討がございました。その筆頭の部分はこのとおりでございまして,「書籍・雑誌の貸与に係る暫定措置の廃止」が,本報告書の一番最初の部分にあるわけでございます。したがいまして,それを「等」と受けていると,そういうふうに読むことは十分できるのではないか。具体的に縷々書いていくという選択肢はもちろんありますが,実際に何が書けるかということもございますから,私としては報告書(案)をそのままに書くという案に賛成せざるを得ないと思っております。

   ○ そうしますと,還流防止問題も著作権法で改正をするという趣旨になってしまうと思うんです。前の書籍・雑誌の問題は著作権法で改正するという結論だったと思うんですけれども,還流防止は何らかの方向も含めてという意味があると思うので,そこの文章は工夫が必要ではないかと思います。

   ○ 「おわりに」に言及が必要だと思うんですけれども,それ以前の素朴な疑問として,「おわりに」の「速やかに著作権法を改正することが適当であるの結論を得た」というこの結論は誰の結論かという問題があります。この文章をそのまま読めば,5つの小委員会における検討の結果という流れから言えば,これは5つの小委員会の結論だと思うんです。もちろん上位の分科会としての結論としても構わないわけですけれども,前提問題として,「この結論を得た」というのは誰の結論だと皆さんは思っていらっしゃるのか。そこを確認しておかないと意味が変わってくると思います。もし分科会としての結論であれば,そこを「分科会として」というふうに主語を明確にすべきであって,かつ,「5つの小委員会における検討の結果」ではなくて,「検討を踏まえて」とすべきだと思うんです。分科会としての結論をきちんと出すのは構わないと思うんですが,時間的に不十分なので不適切であって,むしろ法制問題小委員会の結論に沿う形での結論を分科会全体としての結論にすべきだ考えています。

   ○ 15ページにございます4行は,著作権法に限定した書きぶりでもないし,かなり苦心した表現でございます。法制問題小委員会でご苦労なさったところでございます。こういうものを踏まえますと,これを改めてまた「おわりに」というところへ書くまでもなく,全体を読んでいただく中でひとつの方向性を読み取っていただきたい。個々に直していきますと,内容との整合性が保たれなくなるという面もございます。改めて具体的な方法等につきましては,鋭意慎重に検討していくことではないかと思いますので,この報告書(案)をご承認いただきたいと思います。

   ○ 還流防止措置は著作権法外の問題も含めて検討するということが法制問題小委員会の結論であります。小委員会としても意見が真っ二つに分かれたわけです。したがって,「著作権法の改正等」とここに「等」を入れれば,「還流防止措置は著作権法改正には反対も多かった」という趣旨のことが入っていいのかもしれません。

   ○ いろいろお考え下さった提案がございましたが,いかがでしょうか。異議がないようですので,全体として「等」入れることにいたしまして,報告書としてご承認いただき,次長に提出したいと存じます。




(文化庁長官官房著作権課)

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