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資料  3−5

文化審議会著作権分科会「司法救済制度小委員会」
の検討状況について


1. 検討事項(平成14年7月22日に司法救済制度小委員会で決定)

「損害額」等関係
損害賠償制度の強化(「法定賠償制度」「倍額(3倍)賠償制度」の導入)
侵害者の譲渡数量等に基づく逸失利益の算定ができる制度の導入
弁護士費用の敗訴者負担の導入
   
「裁判手続」関係
積極否認の特則の導入(侵害行為の特定において、相手方が権利者の主張を
  否認する場合には、その理由として自己の行為を具体的にすること。)
侵害者が不明な場合の訴訟制度の検討
   
「侵害とみなす行為」関係
侵害とみなす行為に係る違法対象行為の見直し
   
「間接侵害規定」関係
間接侵害規定の導入の必要性
   
「プロバイダ等」関係
プロバイダに対する差止請求制度の必要性
プロバイダに対する発信者情報開示の義務化の必要性
プロバイダ等に対する間接侵害規定の導入の必要性
   
「技術的保護手段」関係
技術的保護手段の回避等に係る違法対象行為の見直し(「ノウハウ」の流布、「暗号」の解読、「パスワード」の流布)
技術的保護手段の回避等に対する民事救済措置の導入
   
「罰則」関係
著作者人格権や侵害罪以外の行為に係る罰則への法人重課の導入
懲役刑の引き上げ
侵害罪の非親告罪化
   
「裁判外紛争処理」関係
裁判外紛争処理の在り方

2.「司法救済制度小委員会」委員名簿

  井上由里子 神戸大学助教授

  久保田 裕 (社)コンピュータ・ソフトウェア著作権協会
専務理事・事務局長

  後 藤 健 郎 (社)日本映像ソフト協会業務部長代理(法務担当)

  潮 見 佳 男 京都大学教授

  高 杉 健 二 (社)日本レコード協会法務部部長代理

  道垣内正人   東京大学教授

  橋 元  淳 (社)日本芸能実演家団体協議会
実演家著作隣接権センター事務局長代行

  細 川 英 幸 (社)日本音楽著作権協会常務理事

  前 田 哲 男 弁護士

主 査 松 田 政 行 弁護士・弁理士

主査代理   山口三惠子 日本弁護士連合会知的所有権委員会委員、弁護士

  山 本 隆 司 弁護士

(計12名)

3. 小委員会の開催状況

第2回  平成14年  7月22日(月)
「プロバイダ」等関係
  ・ プロバイダに対する差止請求制度の必要性
「損害額」等関係
  ・ 侵害者の譲渡数量等に基づく逸失利益の算定ができる制度の導入
「裁判手続」関係
  ・ 積極否認の特則の導入
   
第3回  平成14年  8月23日(金)
「侵害とみなす行為」関係
  ・ 侵害とみなす行為に係る違法対象行為の見直し
「間接侵害規定」関係
  ・ 間接侵害規定の導入の必要性
「損害額」等関係
  ・ 損害賠償制度の強化(「法定賠償制度」「倍額(3倍)賠償制度」の導入)
   
第4回  平成14年  9月12日(木)
「損害額」等関係
  ・ 侵害者の譲渡数量等に基づく逸失利益の算定ができる制度の導入
「裁判手続」関係
  ・ 積極否認の特則の導入
「技術的保護手段」関係
  ・ 技術的保護手段の回避等に係る違法対象行為の見直し(「ノウハウ」の流布、「暗  号」の解読、「パスワード」の流布)
   
第5回  平成14年  9月30日(月)
「損害額」等関係
  ・ 侵害者の譲渡数量等に基づく逸失利益の算定ができる制度の導入
「裁判手続」関係
  ・ 積極否認の特則の導入
文化審議会著作権分科会「司法救済制度小委員会」の検討状況について

4. 主な意見の概要
(1) プロバイダに対する差止請求制度の必要性等
  プロバイダに対して直接訴訟を提起し、コンテンツの削除を求められるようにしたいという実務上の要請がある。プロバイダ責任法が成立したが、プロバイダに侵害物の削除権限があるといえるのかが明確ではないため、プロバイダに対する差止請求制度が必要。また、プロバイダ責任法については、プロバイダによる発信者情報の開示を促すような制度に改善すべき。
  現行法でもプロバイダに対する差止請求が認められる余地がかなりあると考えられる。プロバイダ責任法は施行されたばかりであり、今後の実務を踏まえて引き続き検討を行うべき。

(2) 侵害者の譲渡数量等に基づく逸失利益の算定ができる制度の導入
  損害賠償を請求する場合に、権利者の立証負担を軽減し、損害額の割合的認定を可能とするため、特許法と同様に、「損害額」=「侵害者の譲渡数量」×「権利者の単位当たり利益額」という推定規定を創設する方向とすべき。
  その際、「譲渡」に限らず、何らかの形で「無形的利用」にも適用されるようにすべき。また、損害額について「権利者の能力に応じた限度額」を要件とするとともに、侵害者に「権利者が全部又は一部の数量を販売できない事情」などの抗弁を認めることとすべき。

(3) 積極否認の特則の導入
  著作権等の侵害訴訟において、プログラムの著作物など、侵害物件の解析が困難な場合があることから、権利者の立証負担を軽減し、審理を促進するため、特許法と同様に、侵害者が侵害行為を否認する場合には自己の行為の具体的態様を明らかにしなければならない旨の規定(「積極否認の特則」)を創設する方向とすべき。
  その際、具体的態様を明らかにすることができない「相当の理由」がある場合は、適用しないこととすべき。

(4) 侵害とみなす行為に係る違法対象行為の見直しについて
  海賊版を頒布の目的で所持する行為だけでなく、上映目的で所持する行為を「侵害とみなす行為」の対象とすべき。また、頒布目的なく輸入された海賊版を後に頒布目的で所持する行為が「侵害とみなす行為」であることを明確化すべき。
  現行法において「侵害とみなす行為」の対象となっていない行為については、立法当時からの事情の変化や必要性を踏まえて検討を行うべき。
  そもそも「侵害とみなす行為」の”頒布目的”や”情を知って”という要件は不要ではないか。主観要件がなくとも、善意で頒布した流通業者は、差止請求はされても、故意・過失が無ければ損害賠償を請求されることはない。
  損害賠償請求は認められないとしても、一般の人々が知らず知らずのうちに、違法行為を行っている状態に置かれるような制度は適当ではない。

(5) 間接侵害規定の導入の必要性について
  差止請求権を定めた著作権法第112条第1項の「侵害する者又は侵害するおそれのある者」に侵害の教唆者又は幇助者も含まれる旨を明確化するとともに、「専ら著作物の改変のみに使用される機器を製造・販売する行為」を侵害とする旨を規定すべき。
  損害賠償請求の場合では、判例において教唆者又は幇助者に対する請求が認められている。差止請求の場合にのみ条文に書き込むことが他の条文では、教唆者又は幇助者は対象にならないという反対解釈を導くおそれもあることから、必要性及び他の条文への影響を踏まえて検討すべき。「専ら著作物の○○のみに使用される機器を製造・販売する行為」を侵害とすることについては、「改変」のケースについて侵害を認めた判例のみをもって一般的な規定の創設を行うのは適切ではない。今後の判例の蓄積を踏まえ、具体的にどういう行為や技術が問題となるかを見定めてから検討すべき。

(6) 損害賠償制度の強化
  「侵害し得」の社会からの脱却、侵害に対する抑止機能の強化の観点から、「3倍賠償制度」「法定賠償制度」あるいは「権利者が立証した量の3倍の量の侵害があったものと推定する規定」を設けるべき。
  「3倍賠償制度」などの導入については、他の法領域との比較において特に知的財産権侵害行為のみを対象とする理由があるかを検討しなければならない。「法定賠償制度」についてはその必要性及び効果等を踏まえて検討を行うべき。損害賠償制度の強化については、司法制度改革推進本部においても、議論が行われることとなっており、そのような民事法制一般の議論も踏まえ、引き続き検討を行うべき。

(7) 技術的保護手段の回避等に係る違法対象行為の見直し
  著作物に施されたコピープロテクションを回避する方法が、インターネット等により多数公表されており、このような情報を提供する行為も刑事罰の対象とすべき。
  刑事罰の対象とする情報提供行為の範囲をどう画するのか、言論の自由等との抵触についてどう考えるか、技術的保護手段の技術レベルの適正化により解決できるのではないか、といった観点からより幅広い議論が必要であり、刑法や不正競争防止法とのバランスも踏まえつつ、引き続き検討を行うべき。

5. 今後の検討予定について(10月から1月にかけて4回程度開催予定)

「裁判手続」関係
侵害者が不明な場合の訴訟制度の検討

「罰則」関係
著作者人格権や侵害罪以外の行為に係る罰則への法人重課の導入
懲役刑の引き上げ
侵害罪の非親告罪化

「裁判外紛争処理」関係
裁判外紛争処理の在り方

小委員会の審議のまとめ


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