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文化審議会

2002/10/11 議事録
文化審議会著作権分科会(第6回)議事要旨


文化審議会著作権分科会(第6回)議事要旨

  日時 平成14年10月11日(金)午後3時〜午後4時40分

場所 霞が関東京會舘「シルバースタールーム」

出席者 (委員)
北川分科会長,齊藤副分科会長,入江,大澤,岡田,小熊,角川,
國分,酒井,迫本,里中,瀬尾,辻本,富塚,永井,野村,半田,
松田,松村,丸島,三田,山際,山口の各委員
(文化庁)
河合長官,銭谷次長,丸山長官官房審議官,吉尾国際課長
岡本著作権課長ほか関係者

配付資料

 
  資料1 文化審議会著作権分科会(第5回)議事要旨
  資料2 「知的財産基本法(案)骨子」(平成14年9月19日 知的財産戦略会議)
  資料3−1 文化審議会著作権分科会「法制問題小委員会」の検討状況について
           −2 文化審議会著作権分科会「契約・流通小委員会」の検討状況について
           −3 文化審議会著作権分科会「国際小委員会」の検討状況について
           −4 文化審議会著作権分科会「著作権教育小委員会」の検討状況について
           −5 文化審議会著作権分科会「司法救済制度小委員会」の検討状況について

  概  要

(1)「知的財産基本法(案)骨子」について事務局から説明するとともに,各小委員会主査・主査代理から検討状況が報告された。
(2) その後,次のような意見交換が行われた。

  (以下委員○,事務局△)

○:  法制問題小委員会の検討状況の中にある「第38条第5項に規定されている非営利・無料の貸出に係る補償金の対象を「書籍等」に拡大すること」については,私共図書館界としては,反対である。映像資料のように図書館が補償金を負担することになれば図書資料費を圧迫する。「公貸権」については国による基金の設立を日本文芸家協会が要望しており,私たち図書館界でもこの問題についての研究は少なからず行ってきた。この機会に権利者とともに考えることは必要であるが,もう少し時間をかけて煮詰めていく必要があると考えている。

○:  過去においては,図書館は辞典や高額な図書など,一般の方々は中々入手できないものを貸し出すという方向にあったと思うが,昨今ではベストセラーを集中的に購入するという傾向にある。そういった点では著作者の権利を著しく阻害しているのでないか。「書籍等」の貸出についても,映像と同じレベルとは言わなくても,映像に準ずる形で補償金を認めていくべきと思う。

○:  著作権法26条の3で「著作者は,その著作物をその複製物の貸与により公衆に提供する権利を専有する」と書かれており,非営利・無料の貸与を含めて既に貸与権というものが確立されている。これが権利制限という形で制限されている。権利制限というものが半永久的に続くものであれば権利の剥奪であり,早急にこれを解決しなければならないというのが私たちの考え方である。図書館の経費への影響に配慮して,国家基金という方法を前提として図書館の方もと話し合いをしてきたが,現在の図書館関係者のご意見は,図書館は全く金を出さないということのようである。しかしながら,既に貸与権というものが著作権法に書かれているということは是非全国の図書館関係者にご認識いただきたい。

○:  色々な問題があるが,何故こういう権利があるか,何故図書館に制限があるか,何故補償金の問題が出ているか,そういう問題の原点を考えることが必要である。是非協議の流れは大切にし実りのある方向に持っていってほしい。

○:  図書館の利用者,書籍を読む読者など広くそうした人々がこういう問題に対してどう認識するかということなしに,当事者間で妥協点を探るというだけでは,社会的な合意なり認識なりを得るとは難しいのではないか。多くの国民にとってどうなのかということも踏まえるべきと思う。

○:  非常に高額な辞書であればともかく,一般のベストセラーまでを当然に図書館で提供し,そのために税金が使われることに疑問を感じる。ベストセラーなどは利用者負担ということをしていけないのか。また,ベストセラーでもなんでも,権利を制限して無償で読ませて良いのかという疑問がある。

○:  当事者は皆一般の国民のことを考えてやっていると思うが,国民が皆ベストセラーを置けという要求をしているとすると,私共があえて著作権の問題として「それはいけませんよ」というところまで考えていくのかという問題がある。

○:  知的財産基本法のなかにも一般人に対する教育,そして知的財産に対する啓発というものを唱っている。図書館で本を借りるのは無料でないということになれば,それが一つの啓発になると思う。是非とも考え方を変えていただきたいと思う。

○:  現在,図書館が各地にできるという好ましい時代を迎えつつある。利用者としては,書籍等について,書店で買い求めることも,図書館でアクセスすることもある。こういう状況を観察し,何処かにしわ寄せがあるとしたら金銭で調整する。そういうゆとりというのも重要ではないかと思う。いずれにしても,是非対立的に捉えずに冷静にお考えいただきいと思う。

○:  ベストセラーがかなりやり玉に挙がるが,図書館としては,利用者から求められたものについては提供しなければならないという役割を持っており,ベストセラーといえどもそれを貸し出さなければならない。ある図書館の調査によると,ベストセラーは全体の3%程度ぐらいで,図書館の中では圧倒的に古い本が利用されているのが事実である。図書館は,利用する権利,学習する権利,知る自由を保証する機関だと思う。ベストセラーは有料でもいいのではないかという意見があったが,もしこれが有料ということになれば,利用者,住民たちが自分たちが知りたいと言うことを抑制してしまうということに動いてしまう。図書館側としてはそれを一番懸念している。著作者及び出版関係の人と時間をかけて話し合いながら,図書館側としてどうしたらいいか考えている。

△:  日本の著作権法第38条5項に規定されている,映画・ビデオについて補償金を得る権利は,国際的には公貸権パブリックレンデイングライトというものである。「書籍等」については著作権法で規定している国もあれば,特別の法を創っているところもある。また,実行上日本と同じように図書館がお金を払っている国もあれば,国が創った基金が肩代わりしている国もある。法制問題小委員会では,一応法制としては問題に対応していくと言う方向性が出たところであるが,どの時点で法改正ができるかということは未だはっきりしているわけではない。特に「書籍等」の取扱いついいては,どのようなやり方がいいのかということについて権利者側と図書館側が協議するということになっている。「書籍等」の取扱いについては,直ぐに法改正をするというものではないと,法制問題小委員会でも整理されている。

○:  この問題については,今年のはじめから,当事者だけで話す検討会というものを設定し随時話を詰めてきたが,取り敢えず国家基金が出るならばという条件で話し合いのテーブルに付くと言うところまできたところである。我々は利用者を無視しているわけではない。両方の合意として利用者のためにやるということであり,その中でお互いどうするかということを今後とも議論していきたい。

○:  その場合も著作者の権利について例えば自由利用の意思表示をする,一つの方向で全部切ると言うのではなく,一人一人の著作者の自由意思というものが今後は考えられるのではないか。

○:  司法救済制度小委員会の「主な意見の概要」の1枚目に「決定」という言葉があるが,これらの事項について方向性が決定されてものと理解していいのか。

○:  1枚目の「決定」というのは今期審議する事項の「決定」という意味である。審議した内容は,主な意見の概要にあるとおりであるが,この中にも,意見として修練したものと,さらに報告書をまとめる段階で検討するものがある。

○:  司法救済制度小委員会の報告の中に「技術的保護手段の回避等に対する民事救済措置の導入」とあるが,不正競争防止法で民事救済措置が入っていると思うが,それとは別に著作権法上に置く意味合いはなにか。

○:  「技術的保護手段の回避等に係る違法行為の見直し」であるが,著作権法に施されているコピープロテクションの回避について,「回避する方法が,インターネット等により多数公表されており,このような情報を提供する行為も加えてはどうか」という意見がある。現在検討中であるが,小委員会全体の意見として,刑事罰の対象とする範囲,不正競争防止法との関係,情報全般についての表現の自由等を勘案しつつ,この導入はかなり難しいのではないかという意見の方が,むしろ強いと報告できると思っている。もちろん確定ではないが。不正競争防止法とは違う視点での情報を提供する行為をどうするかということである。

△:   各小委員会から出された「検討状況」は,これまでの意見の概要をまとめたものである。本日何かご意見があれば,それを踏まえて,最終的に各小委員会としての「まとめ」を行っていくことになる。まだ「決定」が出ている分けではなく,それぞれ方向性が出ているものと意見が対立し引き続き検討するものとがある。

○:  文部科学省から全国の中学生に配られている著作権のパンフレットがあるが,これがどのように活用されているかということにかねがね疑問に思っている。十分活用されるという方向を論議の中で進めていただければと思う。

○:  資料の活用を含めまず,現状の分析と把握を第一にし,その上でどのようなマテリアルが必要なのか,またどのような方法が必要なのか,重要なのか,適正なのかについて検討することとしている。

△:   新学習指導要領で中・学高校で著作権教育が必修になったが,先生方は知識も十分ではなく,また,配られたマテリアルをどう使いこなしていいかという問題もある。それらを踏まえ議論が深められている。現場の先生から色々な意見を聴取し,方策を検討していただいている。

○:  権利者による「自由利用の意思表示」についてであるが,権利者がOKと言っていっても,OKと言っている権利者が本当に権利を持っているのか,持っていない場合の保障はどうなるのか。また,流通している過程で他の著作物がくっついたり,可変したような場合には,他の著作権者の著作権を侵害しているリスクはないのか。その場合の保障はどうなるのか,その保障は誰がするのか。最終的なユーザーがリスクを自分が全部負うのか,誰にそれを持っていったらいいのかという現実的なリスクがかなりあると思う。その点について,流通・契約小委員会でどう議論さているのか。

△:   マークを制定することは極めて簡単であるが,これは法的にどういう意味があるのか,イーコマース,いわゆる「なりすまし」,誰かがかってに付けた場合はどうなるのか,そういった法的な面等について御検討いただいている。現時点ではそういうものを付けることはいいことだろう,それをどう分類にしたらいいか,法的効力はどうかというところをご議論いただいている。

○:  「自由利用」の意思表示は曖昧なところがあると思う。利用させてもいいといっても,「全てオープン」なのか,或いは「一部についてオープン」なのか,「ここまでは自分は許すがそれ以上は駄目」という場合もあるかもしれない。そういった場合はにどういった表示が可能なのかと言う場合もあるし,一人の人が一つの著作物を創る場合はいいが,複数で共同で創っている場合,どうなるのかという問題もある。さらに,ある著作物を前提にして手を加えて次の物ができていく場合に,自由利用の意思表示が何処まで及ぶのかという厄介な問題もあると思う。これは軽々に論じることができない問題があると思う。

○:  「コピープロテクションを倒す」こと,あるいわ「倒すための情報を公開する」こと,「インターネットにおける表現の自由」と言った問題は非常に複雑だし,30条問題も絡んでくる。個人がやることに対して,刑事罰ではなく,改変していって権利者が誰になっていくのかとか,共同著作物の問題について,オンブズマン制度みたいなものを検討してもらいたいと思っている。

○:  契約・流通小委員会のところで,「ライセンシー間の優先順位等を整理しつつ」とあるが,この意味は何か。また「登録を要件とする案等をはじめ」とあるが,この登録について説明願いたい。

○:  ライセンシー間の優先順位というのは,ライセンスを受ける人が二重にいると言った場合に,その優先順位をどうするかと言った問題がここに入ってくると思う。

○:  特許法では,通常実施権の許諾に対応してこれを登録できるわけであるが,著作権法についても,それら債権的な権利を登録できるかと言うことを検討している。

○:  通常実施権の登録制度はあるが,現在契約関係はパッケージ契約が多く,契約の中に特許権の表示がない。したがって,特許番号を特許庁に登録することすらできないという契約が非常に多い。契約の登録であれば可能性があるということで,おそらく著作権法にも登録制度がないので同じような問題を抱えていると思う。契約自身の登録で対抗要件が出るような,少なくても,そういう方向性で考えていただくとありがたい。

○:  契約の登録について,登録の在り方について法規制するにしても,民間が行っても構わないかと思う。契約の流通の場も民が行って複数のところが競合してよりよいビジネスモデルを創っていく,そしてビジネスモデルも場合によっては特許を取ると。そして競合してよりよいものが創られていくのがよいと思う。できるだけ民主導で,しかし行政のアドバイスも,あるいは必要に応じた法律を作るようということでやってはいかがか。


(文化庁長官官房著作権課)

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