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文化審議会

2001/12/10議事録
文化審議会著作権分科会(第3回)議事要旨


文化審議会著作権分科会(第3回)議事要旨

1    日   時:平成13年12月10日(月)11時00分〜12時00分

2    場   所:東海大学校友会館「望星の間」

3    出席者:
(委   員) 北川分科会長,齊藤副分科会長,稲葉,入江,岡田,小熊,金原,國分,酒井,迫本,辻本,富塚,永井,野村,半田,松村,丸島,三田,村上,紋谷,山際,山口の各委員
(文化庁) 佐々木文化庁長官,銭谷文化庁次長,天野長官官房審議官,岡本著作権課長,村田国際課長,尾崎マルチメディア著作権室長ほか関係者

4    概   要
(1)   開会に当たり、文化庁長官より挨拶があった。
(2)   文化審議会著作権分科会審議経過の概要について、前回の会合において事務局から出された概要案が審議経過の概要と決定され、佐々木文化庁長官に提出された。
(3)   平成13年度使用教科書等掲載補償金の額について、使用料部会長からの報告及び事務局からの補足説明の後、諮問案のとおり議決された。
(4)   私的録画補償金の額の認可について、使用料部会長からの報告及び事務局からの補足説明の後、以下のような意見交換があり、諮問案のとおり議決された。

(以下委員○、事務局△)

○: 録画機器のうち、私的録画できない機器というのはどれぐらいあるのか。
△: DVD関係の機器は再生専用のものが主流で、録画用のDVD機器は政令で定められているものが市場に出回っているが,録画用の機器が市場のシェアをどれぐらい占めているのかは把握していない。
○: 補償金は録画できないものも録画できるものも両方とも補償金を支払うことになっているのか。
△: 録画できるものだけが政令で定められている。再生専用のデジタル機器については補償金の対象にはなっていない。
(5)   その後、次のような意見交換が行われた。

(以下委員○、事務局△)

○: 録画機器の中で、私的録画補償金について現在検討中のものなどはあるのか。
△: 特定の機器について具体的に検討しているものはない。ただし、私的録音録画補償金の制度自体については、様々な意見が出されている。このような補償金制度はいくつかの国が持っているが、我が国の場合、著作権法30条を改正し、複製権に根拠をおいているため、著作権制度の一部として補償金の制度が確立している。国によっては、著作権制度とは関係なく補償金を定めているところもあるが、日本の制度はその点を厳密に決めている。
また、MDなどは基本的に音楽を録音するためだけに利用されているが、MDは機器にしても、媒体にしても、他の利用手段がある。例えば、著作物を複製するだけでなく、データを記録することもできる。このような様々な利用手段について、どのように対応するかが将来に向けての検討課題だと考えている。
また利用者側にとっては、コピープロテクションの解除についての規制がある。コピープロテクションのかかっている著作物は、補償金を払っているのに、録音録画ができない。そこで、録音録画ができない部分で補償金の割引はないのかという意見がある。
一方、権利者側からは、コンピュータのハードディスクは、録音録画にも使用できるので補償金の対象にするべきだなど、両者から意見が出されている。これは、補償金制度の根幹にかかわることであり、現在(社)著作権情報センター等の協力を得て将来に向けた研究を行っている。
○: 学校教育の中での著作権思想の啓発活動が必要であるとあるが、具体的にはどのようなことを計画しているのか。
△: 平成14年度からの新しい学習指導要領には、情報化への対応を大きく打ち出されている。コンピュータやインターネットを使う上で、ルールを守っていくこと、モラルを広く児童生徒に指導していくことがうたわれている。
ルールを守ること、モラルには、著作権法も含まれるし、あるいはネット上で他人を誹謗中傷すること、プライバシーの侵害等についても、小学校から高校まで児童生徒の発達段階に応じてとりあげることになっている。このため、著作権に関係する部分については著作権の世界からもアプローチする必要がある。かつての一部の業界の一部の人間が権利者であり、利用者であった時代から、一億総クリエーター・一億総ユーザーという時代に変化しているので、すべての人が著作権について最低限の知識を持つ必要がある。著作権のことを児童生徒が発達段階に応じて学んでいくには、教え方のノウハウも、教材も必要である。こうした教材や教授法、それから児童生徒自身がアクセスして著作権のことを学べるようなサイトの構築などを、来年度以降総合的に展開していこうと考えている。
○: 教員研修のプログラムについて何か具体的な計画はあるのか。
△: 現在も文化庁では教員向けのセミナーを開催している。来年以降はさらにこのセミナーを充実させていく予定だ。従来は学校の先生が今朝の新聞をコピーして教室に配るといったようなことについて講習会を開催していたが、今後はインターネットのコンテンツを入手して校内LANにアップロードしてみんなで使うといった問題を中心に講習会を開催していくことを検討している。
また、文部科学省の教員研修でも情報化に対応する講義科目が盛んになってきており、その中には必ず著作権や肖像権の問題がとりあげられている。こういったことについては、文部科学省とタイアップしてやっていきたいと考えている。その他、県レベルでも著作権等に関する研修が増加していて、著作権課に講師派遣の依頼が頻繁にきているが、県レベルの研修などについても文部科学省と連携して対応したいと考えている。
○: コピープロテクションがかかっている機器はどれぐらいの割合で市場に流通しているのか。事実上私的録音できない機器に対して補償金を請求しているのだとしたら、矛盾しているのではないか。
△: コピープロテクションはコンテンツに対してかけているが,機器に対してかけるわけではないので、提供されるコンテンツにプロテクションがかかっていると、コピーができない仕組みになっている。世の中のあらゆるコンテンツにプロテクションがかかるようなことがあれば、補償金制度を根本から見直す必要がある。現在コンテンツにプロテクションがかかっているものとかかっていないものとが両方ある状態で、プロテクションがかかっているコンテンツの方が圧倒的に少ない。プロテクションがかかっているとコピーできないが、機器と媒体に着目して補償金をかけている状況である。コピープロテクションがかかっているコンテンツが何割ぐらいあって、どのような状況なのかということについては研究中である。
○: 機器に対してコピープロテクションがかかるということはないのか。
△: 機器は、コンテンツにプロテクションがかかっていると、反応する仕掛けになっているだけである。
なお、コピープロテクションの解除を抑止するために作った法律がある。ここにはコピープロテクションを解除してはいけないとは法律上書かれていない。解除するときは何らかの機器を利用するわけだが、この解除するための機器を作ったり売ったりしてはいけないということが法律でかかれている。この機器は解除用の機器であって、コピー用機器ではない。
○: 「視聴覚的実演」について人格権を付与することを前提として議論されているのか。
△: これは映像分野の諸問題に関する懇談会でも議論されていることだが、人格権を付与することを前提としてはいない。人格権について条約では、声望を害するような改変をしてはいけないということであり、現行の著作権法の著作者人格権とは違い、意に反してということではない。そのあたりのことについて映像分野の諸問題に関する懇談会では、人格権について、いわゆる「視聴覚的実演」についても条約に先がけて認めてもいいのではないかという意見もある。条約を批准する上では、「視聴覚的実演」の部分について人格権を及ぼす必要はないわけだが、「音の実演」を分けて人格権を付与するよりも人格権については「視聴覚的実演」もあわせて付与した方がいいのではないかという意見もある。しかしこういったことについて、利用者側の了解が得られるかどうかは、まだ協議中のため、審議経過の段階では最終的な結論を書いていない。
○: インターネットの利用は家庭でも進んでいるが、子どもの関心が非常に高い。教育分野の問題は来年以降取り上げるということだが、できるだけ早急に結論を得て欲しい。あと教科書等掲載補償金の資料に教科書定価の上昇率という表現があるが、この上昇率は、増減率という意味なのか。
△: 増減率という意味で捉えていただいて問題ない。私的録音録画補償金の制度でも、機器の価格の変動によって、補償金の価格が変動することになっている。
○: 著作者の立場から意見すると、教科書に作品が掲載される場合、拒否権がなく、それに対して補償金が支払われるわけで、これが一方的に決定されている。その金額が適正かどうかはわからないわけだが、紙の値段が下がったり、印刷費用が減少したからといって、補償金が下がるというようなものではないと考えている。
○: コピープロテクションの問題に戻るが、アメリカなどでは一代限りのコピーというものがあり、権利者にも利用者にも公平な制度だと思うが、技術的な開発はできないか。
△: 日本でもそのような技術はある。企業の中には、録音機器もコンテンツも両方扱うところがある。両方が発展していくには適正なルールが必要であり、事実上、ある程度のコピーはできても無制限ではないというシステムが作られている。例えば、着メロのビジネスなどは国際的にも注目されている。テクノロジーと、どこまでコピーできるかという技術と、契約システムを総合して構築されているシステムで、通信カラオケが十数年かかって達成したビジネス規模をわずか一年半で達成している。これからは、コピーできるか否かというオールオアナッシングではなく、システムを活用したビジネスモデルを作っていくべきではないかと考えられている。

(6) 閉会

(文化庁長官官房著作権課)

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