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資料3

第16回著作権等常設委員会(SCCR)結果概要

1.概要

 今回のSCCRの会合は、2008年3月10日から12日にかけて、ジュネーブにて開催された。我が国からは、文化庁、総務省、在ジュネーブ日本政府代表部及びNGO等が参加した。
 今回のSCCR会合は、昨年のSCCRの2回にわたる特別会合で、放送条約の外交会議開催が合意に至らなかったことを受け、今後の議題及びその進め方について議論が行われた。とりわけ、チリが開発と知財の一連の流れで提案した「権利の制限と例外(Exceptions and Limitations)を新議題として定着させたい途上国とこれを回避したい先進国間での意見の対立があった。また、既存の課題である視聴覚実演条約、放送条約についても今後の進め方について議論がなされたほか、今後の新課題の提案も行われた。なお、議長については、本年(今回と次回SCCR)限定でリエデス氏の再任が決定された。
 主な概要としては、1視聴覚実演の保護については、これまでのセミナー等の理解増進活動に関し事務局が成果状況をとりまとめ、次回SCCRにて報告、2放送機関の保護については、引き続き条約締結に向けた作業を継続すべく、議長が論点整理ペーパーを次回SCCRのために用意、3権利の制限と例外については、今後、SCCRの議題として正式に取り上げ、具体的な議論内容、進め方について次回SCCR以降、議論していくことが合意された。なお、次回SCCRは、本年11月3日〜7日に開催することとなった。

2.結果概要

(1)視聴覚実演の保護、放送機関の保護について

 視聴覚実演の保護については、日本を含む多数の国から条約を早期締結すべき旨の発言があったほか、これまでの国・地域レベルでのセミナーの成果を事務局がとりまとめ、次回SCCRにて報告すべき旨の要請がなされた。
 また、放送機関の保護については、引き続き継続するか否か、継続する場合のスケジュールやベースなどについて議論が行われた。日本、ECを始めとする多数の国から条約の早期締結に向け、作業を継続すべき旨の表明がなされたほか、インドや米国からも議論を継続することについては同意する旨の発言があった。このほか、日本を始めとする多数の国のNGOから条約の早期締結への強い期待が改めて表明された。

(2)権利の制限と例外(Exceptions and Limitations)について

 本件については、チリ、ブラジル、ウルグアイ、ニカラグアから共同提案が行われた。具体的には、知識へのアクセスを保障するためには、著作物を権利者の許諾なく「フリーユース」できる権利制限についての明確なルールが必要であるとし、今後議論すべき3つの論点として、1メンバー各国における権利の制限と例外のモデルの同定(identification)、2権利の制限と例外がイノベーションにもたらす効果分析、3国際レベルでの権利の制限と例外に関する最低限の規範設定(norm-setting)(とくに社会的弱者の知識へのアクセス改善に関するもの)が挙げられた。また、第一段階として次回SCCRでのフォーラム等の開催や2008年における教育分野の権利の制限と例外に関するWIPOによる追加的なスタディの実施が提案された。
 途上国からは、多少の温度差はあるものの、保護と利用のバランスの観点、開発アジェンダの推進の観点から、チリ提案に対する支持が表明された。これに対し、先進国からは、各国における権利の制限と例外の導入・運用状況に関する情報交換については行う用意はあるとしつつも、国際レベルでの規範設定については、既に3 step-testをベースとした検証方法が定着しており、他の判断基準の定立や個別具体的な権利の制限と例外を規定することは必要ない旨の主張がなされた。

(3)今後の課題(Future Works)及び議題の優先順序について

 ECより、今後の課題として、準拠法、権利者不明の著作物(オーファンワークス)、著作権の集中管理、追及権(Resale rights)の4つが提案された。これに対して、多くの国から時間的制約から新たな議題の設定について否定的な反応、若しくは検討の余地はあるが更なる情報提供が必要との意見が示された。
 議題の優先順序については、ブラジル、チリからは、権利の制限と例外を最優先とし、放送機関の保護はサブとして扱うべきとの発言、アフリカからは、視聴覚実演の保護、放送機関の保護及び権利の制限と例外を同列で扱うべきとの発言があった。先進国は、視聴覚実演の保護、放送機関の保護を優先して議論すべき旨発言の上、権利の制限と例外については、各国の状況に関する情報交換は、今後の課題として適切ではあるが、イノベーションへの効果分析、規範設定については反対、また、検討時間が不足しており、次回SCCRでより詳細な情報を要求する旨意見が示された。

【参考】Draft Conclusion(ポイント仮訳)

視聴覚実演の保護

  • 本SCCRでの議論を次回一般総会に報告。
  • 発言国は、実質的な議論の実施に対する意思を表明、また、論点の解決に向けた糸口を探ることの重要性を強調。
  • 事務局は、これまでの活動と各国の状況を検証し報告書を準備。また、引き続き国・地域別セミナーを開催。また、次回SCCRでの情報会合を開催。
  • 次回SCCRのアジェンダとして維持。

権利の制限と例外

  • チリ等は、文書SCCR/13/5を深化させた新たな提案を実施。参加国は、チリ提案を全体又は部分的(in whole or in part)に同意。他の国は文書SCCR/13/5に対して賛成又は特定部分に対し反対を表明。数カ国は、新提案について十分な検討時間が付与されることを要請。数カ国は、視覚障害者の著作物へのアクセス改善に向けた早急な取組の必要性を強調。
  • 事務局は、教育(遠隔教育、trans-border)の権利の制限と例外に関するスタディを実施。
  • 事務局は、次回SCCRで権利の制限と例外に関する情報交換会合を開催。
  • SCCRは、国・地域別セミナーの開催も含め、次回会合でより詳細な作業計画を検討。
  • 次回SCCRのアジェンダとして維持。

放送機関の保護

  • 発言国は、一般総会のマンデートに基づく作業の継続への支持を表明、また、多くの参加国が条約締結に向けた関心を表明。
  • 議長は、次回SCCRのたたき台として、主なポジションと相違点に関する非公式ペーパーを用意。
  • 次回SCCRのアジェンダとして維持。

今後の課題(Future work of the Committee)

  • 多くの参加国が未解決の課題に先ずは取り組む旨の意思を表明。数カ国が今後の課題を提案。多くの参加国が本提案をアジェンダとして決定する前に更なる検証をしたい旨表明。他の国は権利の制限と例外を優先課題とすることを提案。数カ国は議題はバランス良く取り扱われるべきこと、また、SCCRの過度な作業負担は避けるべきことを表明。
  • 今回の議論をベースとして、今後の課題の検討及びSCCRの作業計画の検討を次回SCCRで継続する。

次回会合

  • 2008年11月3日〜7日にて開催