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著作権分科会 国際小委員会(第2回)議事録・配付資料

1. 日時
平成18年7月24日(月曜日)14時〜16時

2. 場所
経済産業省別館944号会議室

3. 議題
(1)  前回の議論と今後の論点の整理
(2)  ACCSの海外活動(ACCSプレゼンテーション)
(3)  研修事業の改善のためのフォローアップ協力の活用について(JICA(ジャイカ)プレゼンテーション)

4. 配付資料
資料1   国際小委員会(第1回)で委員からいただいた御意見
資料2 議論していただきたい点
資料3 著作権に係る国情別、アジア地域における国際協力戦略の考察
資料4 日本が行う著作権保護に係る国際協力事業
資料5 ACCSの海外活動(ACCSプレゼンテーション資料)(PDF:412KB)
資料6 研修事業の改善のためのフォローアップ協力の活用について(JICA(ジャイカ)プレゼンテーション資料)
参考資料1 国際的枠組みを活用した海賊版対策について
参考資料2 日米、日EU、日韓の取り組みについて
参考資料3 米国・EUにおける模倣品・海賊版対策及び中国への対応について
参考資料4 文化審議会著作権分科会国際小委員会(第1回)議事録
(※(第1回)議事録・配付資料へリンク)
参考資料5 文化審議会著作権分科会国際小委員会審議予定

午後14時開会
道垣内主査 時間になりましたので、これから文化審議会著作権分科会国際小委員会の第2回の会合を開催いたします。本日はご多忙の中ご出席いただきまして、ありがとうございます。議事の内容の公開を一層進めるという著作権分科会の方針に基づきまして、本日も公開で議論すべく、既に傍聴の方にはご入場いただいているところでございますが、本日も議事を公開するということでよろしゅうございますでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

道垣内主査 それでは、本日の議事は公開ということにさせていただきます。したがって、傍聴の方はそのまま傍聴していただくことにいたします。
 議事に入ります前に、事務局におきまして人事の異動がございました。事務局からその点をご紹介いただきまして、新しく着任された長官官房審議官からのごあいさつもいただきたいと思います。よろしくお願いします。

事務局 文化庁長官官房審議官は、7月11日をもちまして辰野裕一から吉田大輔に交代になりました。前任の辰野は、文部科学省の高等教育局担当の審議官となっております。
 それでは、吉田審議官から一言お願いいたします。

吉田審議官 ただいまご紹介いただきました長官官房審議官を拝命いたしました吉田でございます。
 この委員会の委員の多くの方々は、私、5年半前までは著作権課長という立場にありましたので、そのとき以来の知り合いということでございますけれども、5年半ほどこの著作権の現場を離れておりまして、いろいろと変わっている点がいろいろあろうかと思いますけれども、また皆様方のご指導を得て、また職務に精励したいと思っております。どうぞよろしくお願い申し上げます。

道垣内主査 よろしくお願いします。
 では、次に、事務局から配付資料の確認をしていただきます。

事務局 それでは、お手元の配付資料のご確認をお願いできますでしょうか。議事次第の紙の下の方に配付資料一覧とございますが、資料1、資料2、資料3、資料4、資料5、資料6と、以上が資料であります。それから、参考資料として、参考資料1、参考資料2、参考資料3、参考資料4、参考資料5とございます。不足等ございましたら、事務局の方にお申しつけいただければと思います。

道垣内主査 よろしゅうございますか。
 では、議事次第の(1)から本日の議題に入りたいと思います。
 前回に続きまして、アジア地域等における著作権分野の国際協力のあり方について、特に海賊版対策に係る国際協力のあり方についてご議論いただきたいと思います。前回、事務局から報告のあった放送条約につきましては、前回以降、この条約に関する国際会議等はございませんので、9月のSCCRやWIPO一般総会以降、また改めてご議論いただくということになった次第でございます。
 前回皆さんにお話しいただきました議論をもとに、論点を事務局において整理していただきましたので、その資料説明をお願いいたします。
 また、事務局の説明の後、場合によってはまた皆さん方からご発言いただくということもあろうかと思います。しかし、議論自体はプレゼンテーションの後でしょうかね。前回、強制的にお話しいただいたにもかかわらず、非常に皆さんに活発にお話しいただきましてよかったと思っていますので、今回ももしご発言が途切れるようなことがあれば、そのようなこともお願いしたいなと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、資料のご説明からお願いいたします。

事務局 それでは、前回の議論と今後の論点の整理ということで事務局から説明をさせていただきます。
 最初に、資料1でございますが、これは前回の委員の皆様のご議論を簡単に整理したものでございまして、1の海賊版対策を行う上での考え方、著作権意識の高い諸外国との連携:囲い込み、能力構築援助の再構築、途上国における著作権意識の向上、権利執行の支援:省庁間連携、オンライン上の海賊版対策、その他というような7項目に皆様のご意見を簡単にまとめさせていただいたものでございます。
 これに基づきまして、資料2としまして、この委員会で議論をしていただきたい点ということでまとめております。事務局からの説明は、この資料2に基づいて説明をさせていただきたいと思います。これに加えまして、委員の皆様のご議論に資するために資料3、4及び参考資料の1から3を作成いたしました。これはまた資料2の説明の中で言及をさせていただきたいと思います。
 それから、また本日はこれらの諸問題に関する理解をより深めるために、事務局からの説明に続きまして2件のプレゼンテーションを行っていただきます。
 1件目は、昨年来独自の上海事務所を開設されまして、海外における海賊版対策に積極的な活動をしておられますACCSの久保田専務理事から、ACCS上海の活動を中心にご報告いただきます。
 また、2件目は、途上国の能力構築支援について専門的知見を有し、キャパシティービルディングからキャパシティーディベロプメントへとの新しい考え方を導入されているJICA(ジャイカ)のフォローアップ事業につきまして、JICA(ジャイカ)東京センターの山田経済開発チーム長からご紹介をいただきます。
 それでは、資料2に戻りたいと思います。
 議論していただきたい点といたしまして、第1点目は海賊版対策の理念ということであります。
 アジア諸国における海賊版対策はいかなる理念のもとに進めるべきか、ご議論いただきたいと思います。海賊版対策は、我が国権利者の保護を目的とすることは当然としながらも、著作権の保護は途上国の文化振興・経済発展に貢献し、国際文化交流を進展させるものであるという視点が指摘されております。日本と相手国との両者に利益をもたらす構造を提供していかなければ、途上国の理解を得ることは困難ではないかという考え方もあろうかと思います。
 また、2点目は施策の戦略的な展開ということです。
 上記の理念を実現させるためにはどのような具体的施策を進めていくべきか、お考えを伺いたいと思います。特に短期及び中長期において実質的な効果があらわれるような手だてを、より戦略的に展開していくことが重要なのではないかと考えられます。
 3点目以降は、具体的な施策の内容に関することになります。
 3番目、侵害発生国との効果的な協議のあり方。
 これまで中国を初めとする侵害発生国とさまざまな形で協議を進めてまいりましたが、その具体的な成果は必ずしも明らかではないという意見もあります。そこで、どのような枠組みで協議を進めていくことが効果的であるか、議論をいただきたいと思います。成果を目に見える形にしていくためには、著作権意識の高いアメリカやEU諸国など先進諸国と連携をして侵害発生国における対策を加速化することが重要なのではないかという考えがあります。
 そこで、以下の3つの施策を実施することが必要ではないかと考えました。1海賊版不拡散条約の制定、2WTO、APEC(エイペック)等の国際機関の枠組みの活用、3日米、日EU、日韓の海賊版に係る情報・意見交換ということでございます。この3点につきまして、参考資料を使って説明をさせていただきたいと思います。
 最初に、参考資料1でございます。参考資料1としまして、国際的枠組みを活用した海賊版対策についてまとめました。
 最初がG8サミットでございまして、これは海賊版不拡散条約の制定にかかわることでございますが、2005年7月、G8グレンイーグルズサミットにおきまして小泉首相が提唱した模倣品・海賊版対策の重要性ということがG8首脳の間で認識が共有され、成果文書「より効果的な執行を通じた知的財産権海賊行為及び模倣行為の削減」として取りまとめられました。上記文書で言及された専門家会合が英国で行われまして、本年3月にはロシアでまた開催をされております。今後、G8がとるべき共同行動が検討されまして、この法的枠組みを設けようという話については今後実施するプロジェクトというものには追加されませんでしたが、G8間で今後も検討していくということになりました。先般行われましたサンクト・ペテルスブルグでのサミットにおきましても、議長声明には入らなかったものの、知財に特化した声明の中におきましては、この法的枠組みをつくるということについての検討を継続するということが言及されております。
 2点目がAPEC(エイペック)モデルガイドラインについてでございます。
 2005年6月にAPEC(エイペック)貿易担当大臣会合におきまして、「APEC(エイペック)模倣品・海賊版対策イニシアティブ」が承認されました。この中で要請をされた3つのガイドライン、模倣品・海賊版取引削減ガイドライン、不正な複製防止ガイドライン、インターネット上の模倣品販売防止ガイドラインが同年11月に閣僚会議で承認されております。そして、本年5月に行われました高級実務者会合におきましては、日本はアメリカ、韓国、香港とともに「効果的な公衆周知キャンペーンガイドライン」を提案しております。また、政府機関におけるソフトウエア・著作物不正使用の防止についても提案がされております。
 3つ目がWTOでございます。
 TRIPS協定履行義務が発生した国の法令等が同協定の義務を履行した内容となっているかどうか、他の加盟国が確認する作業が法令レビューとして行われております。中国、台湾につきましては2002年9月に会合が行われまして、日本からはしかるべく質問を提出しております。また、中国についてはWTO協定及び中国加盟議定書上の義務の履行状況について継続的なレビューを行うことが決まっておりまして、加盟後8年間にわたり毎年レビューを行い、最終的なレビューは10年目に行われることとされております。日本からは刑事罰適用の閾値の問題など、毎年質問を提出しているところでございます。
 続きまして、日米、日EU、日韓の取り組みにつきまして、参考資料2をごらんいただきたいと思います。
 日米の間では、2001年6月の日米首脳会談において立ち上げられた「成長のための日米経済パートナーシップ」のもとに置かれました「経済改革及び競争政策イニシアティブ」の情報技術分野の分野別作業としまして、著作権関係の協議を2001年から毎年行っております。2003年以降は、デジタルコンテンツの海賊版対策に係る協力のあり方についての協議をしております。
 日EUにつきましては、2003年5月の日EU定期首脳協議において、海賊版や模倣品に対処するための方策を含む知的財産保護に関する定期的な協議を開始することが決定しまして、2003年から毎年開催をされております。2004年6月には「アジアにおける知的財産権の執行に関する日・EU共同イニシアティブ」が発表されました。また、2004年10月には北京におきまして「中国における知的財産権保護に関する日・EU共同セミナー」を開催しました。 日韓につきましては、2003年に課長級の非公式協議を開催しました。それから、2003年以降は日韓文化交流局長級協議におきまして著作権関係の協議を実施しております。そして、本年から日韓著作権協議という形で2カ国間の協議を行おうということで、本年11月の予定としながら検討しているところでございます。
 さらに、アメリカとEUにおける海賊版対策及び中国への対応について、参考資料3という形でまとめさせていただきました。
 アメリカの海賊版対策の主な施策としましては、1988年にスペシャル301条の設立ということがあろうかと思います。これは1990年から本格的な始動をしております。また、2004年10月には「STOPイニシアティブ」が発表されております。
 この下の図でございますが、中国への対応について、アメリカの措置と中国の対応ということがどのように進んできているかということをごらんいただければと思います。全部はご紹介いたしませんけれども、アメリカがまず、スペシャル301に基づいて中国を優先監視国に指定をしたというところ、そして中国側が著作権が施行されたものの国内著作物のみを保護しているという状況に対応して優先国に指定するということでございます。優先国に引き上げるというのはさらに厳しい監視をするという意味でございますけれども、そうした後に、今度は米中覚書を締結するということがあると、今度はその覚書に基づいて米国著作物も保護されるということになったので、それに基づいて優先国から監視国に対応を引き下げる。このような形で、アメリカと中国の間では、アメリカが監視の態度を一つ固めると、また中国側が何らかの対応があって、それに基づいてレベルを下げるというようなことで一進一退のような形で続いているということを示そうと思ったのがこの表でございます。
 2004年には米中通商貿易合同委員会(JCCT)の知的財産作業部会が設置をされておりまして、現在はアメリカがサイクル外審査の実施をしているところでございます。
 2ページ目に参りましてEUでございますが、EUの海賊版対策の主な施策としましては、1995年に貿易障害手続、いわゆるTBRが発効しております。2003年には輸入模倣品を押収・破棄するEU税関の権限を拡大する規則についての委員会提案を採択しております。また、2004年2月に知的財産権のエンフォースメントに関する指令案について合意をしておりまして、2004年11月には「第三国における知的財産権のエンフォースメント強化戦略」を導入しています。
 対中国につきましては、WTO加盟に至るまで二国間交渉を継続したほか、2001年9月にはEU・中国のサミットで知的財産権は特定共同優先事項とするということを決めております。また、2003年10月には第1回EU・中国の知的財産権対話会合を開催、また2006年6月には民間レベルで商標権者と市場のオーナーとの間で模倣品問題解決のための覚書について合意をしております。
 また、アメリカとEUが協力しての事項としましては、2005年6月に米EUサミットにおいて「EU‐US Working Together to Fight Against Global Piracy and Counterfeiting」を共同宣言の一つとして発表しております。また、本年6月、米・EUサミットにおいて前年の共同宣言に基づき作成されたアクションプログラムを承認しております。
 それでは、資料2に戻りたいと思います。
 資料2の4でございます。4としましては、現地に影響を及ぼし得る能力構築支援ということでございます。
 前回の委員会でもご紹介をさせていただきましたとおり、文化庁では途上国に対してこれまでにも著作権に関連するさまざまな能力構築支援を行ってきました。ただ、これらは研修に参加した個人の能力構築にとどまっているのではないかという問題点を指摘する意見もございます。そこで、能力構築支援が現地の政策の向上につながるにはどのようにしたらよいか、ご議論をいただければと思います。
 その方法の一つとして、来日型研修のフォローアップを充実させるなど、よりきめ細かい支援を行うということがあろうかと思います。この考え方が「キャパシティービルディングからキャパシティーディベロプメントへの転換」という言葉で言いあらわせるのではないかと考えますが、この件については、後ほどJICA(ジャイカ)の山田様の方からプレゼンテーションをしていただきます。
 これに基づく具体的な施策としましては、1各国に応じた的確な研修ツールの選択、2研修成果の現地への到達をモニターしフォローアップする仕組みの構築、3エンフォースメント担当者に対する具体的・技術的な訓練、4集中管理団体の構築及び運営に関する支援ということが考えられようかと思います。
 これまで文化庁が行ってきた事業がどのようなことを行ってきたかということを図示するために、2つのマトリックスをつくっております。これが資料の3と4でございます。
 最初に資料3ですが、「著作権にかかる国情別、アジア地域における国際協力戦略の考察」と名前が大げさですけれども、これは著作権に関する法的整備の状況や実際に海賊版がどれぐらい出ているかなどという状況などをまとめまして、仮にアジアの国々をグループ分けしてみたというものでございます。そして、それぞれの国情ごとにどのような事業が行われているか、また行うべきかということを表にまとめてみようとしたものでございます。
 見方を説明しますと、最初のところ、国名がシンガポール、韓国、香港とありますが、これは一応海賊版に対する対応が一番進んでいるグループではないかと考えたものでございます。その国はどのように考えたのかということで、国の分類という所に分けた理由といいますか、この国の分類の特徴が示されておりまして、それらの国とはどのような対応を行っていくべきかという政策目標、そしてどのような施策を行っていくべきかという対応施策、そして現状行われている事業やこれから行い得る事業としてどのようなスキームを行っていけばよいかということが適合スキームというところに入っております。そして、関連しまして、そういった国々と文化交流という観点ではどのようなことを考えるべきかということが日本文化発信の課題として次の欄にありまして、最後にそれぞれの国で特徴的なことについて特記事項という形で入っております。
 一応全体の国を6つに分けておりますが、一番下にサモア、トンガ、パプア・ニューギニア、フィジーという1つグループがあります。これらの国々は基本的にはその1つ上のイラン、カンボジア、ミャンマー、ラオスなどとほぼ同じような状況の国々ではありますが、限りある政策資源を効果的に活用するという観点では、いわゆるアジア地域の諸国と南太平洋地域の諸国というのは幾らか区別をして考えるべきではないかということから、仮に別のグループとして取り扱っているというものでございます。
 この資料3についても議論の参考としていただければ幸いです。
 それから、資料4でございます。
 これは、既存の国際協力事業としての文化庁の事業及び文化庁からWIPOに対して拠出金を出して行っているAPACEプログラムの各事業がどのような事業であるのかということをご理解いただくために、1つは二国間協議や多国間の協議、来日研修、現地セミナーなど事業の手法を縦軸としまして、横にはその事業の対象者となっているのはどういう方々なのかということで、一番左側が政策決定者、特に政治家、国会議員や政府担当官などを対象としているもの、それから政府の著作権エンフォースメントの担当者ということで税関や警察官などを対象としたもの、また集中管理団体や権利者団体を対象としたもの、権利者自身を対象とするもの、そして一般国民を対象とするもの、これを横軸としまして、それぞれ現状行われております事業と今後行おうとしている事業が、どういう位置づけにあるかということを図示したものでございます。こちらについてもご考察の一助としていただければと思います。
 議論していただきたい事項に戻りますが、資料2でございます。
 5つ目が、途上国における自律的な著作権保護への誘導ということです。
 前回の小委員会でご紹介いたしましたが、アジア諸国における各国の著作権法整備や条約への加盟ということは幾らか進んできているのに比べまして、権利侵害が実質的にはなかなか減少していないのではないかという問題が常に指摘をされているところでございます。この問題をどのように解決していくべきか、ご議論をいただきたいと思います。
 1つには、各国における国民レベルでの著作権意識の向上が不可欠ではないかと思われます。そこで、1当該国との協力のもと、一般国民の著作権意識の向上の推進を行う、2上記のためのスキーム構築、教材開発、方法論の確立などの援助を行うということ、そして3意識啓発事業の実施における当該国の権利者との連携ということがあろうかと思います。これらの意識啓発事業につきましても、この資料3、資料4の中に入っています。
 ご議論いただきたい点の最後の点、6番目でございますが、国内権利者との対話の強化ということでございます。
 著作権の主体は文化コンテンツの創作者や文化コンテンツ関連企業にあるということでございますので、この政策の策定に当たっては、常に国内事業者のニーズをとらえていくことが必要かと思われます。このようなコミュニケーションをどのようにして改善していくべきでありましょうか。それには、やはりコンテンツ関連産業、権利者団体や著作権以外の知的財産政策との連携を強化していくことが重要であろうかと考えます。そのために、1権利者みずからによる組織的、積極的な対応、2コンテンツ海外流通促進機構(CODA)への支援を初めとする官民連携の強化、3政府窓口等を通じた関係省庁間連携の強化ということが必要かと思われます。本日はこの権利者みずからによる組織的、積極的な対応の好例としまして、ACCSの方からのプレゼンテーションをお願いしたいと思います。
 それでは、事務局からの説明は以上とさせていただきますが、最初に申し上げましたプレゼンテーションをこの後行っていただきたいと思います。
 それでは、最初にJICA(ジャイカ)の山田様の方から、研修事業の改善のためのフォローアップ協力の活用について、プレゼンテーションをお願いいたします。

山田経済開発チーム長(JICA(ジャイカ)) 独立行政法人国際協力機構東京国際センターの山田と申します。きょうはお招きいただきましてありがとうございます。
 本日、私どもが行っています研修事業の改善のためのフォローアップ協力の活用ということで、資料6を配付させていただいております。こうして見ますと、内部的な内容とかを簡略化し過ぎたために、若干素っ気ない表現になっておりまして、背景の説明が足りなかったなというふうに反省しておりまして、説明させていただきます。
 私ども独立行政法人国際協力機構(JICA(ジャイカ))といいますが、政府の開発援助、途上国の支援の援助を、ODAを活用しまして日本人の手による技術協力といわれているものの実施を行っている団体でございます。
 特に私どもの方では、日本人の専門家を国内においてその協力を行う研修事業というものを実施しております。こうした研修事業では、開発途上国政府の行政官、それから専門家、大学の教員等を招聘し、日本での事例の紹介、それからほかの途上国の事例を聞きながら、いかに自分たちの国のものを発展させたらいいかということを考えてもらうということを行っておりまして、こうした研修コースというものを年間460ほど行っております。文化庁さんのご協力を得まして、著作権制度整備というコースを平成10年度から実施しているところです。ご案内のように、途上国の著作権・知的所有権担当行政官を招聘し、途上国制度の整備、著作権の啓蒙普及を図ることを目的としています。
 私どもは3年ほど前に独立行政法人化しまして、何が変わりましたかというと、成果を重視する、それから説明責任をきっちり行うということになっております。そして、今年度末までの3年間半の間に政府より、この集団研修について、この研修については帰国した後、途上国側の努力で有効に活用するということをきちんと考えて実施する、そしてその成果を出すように求められております。そういったこともございまして、このような研修事業の改善ということを行っているんですが、このフォローアップ協力事業というのは、従来、本体事業ではない、附帯事業だということでございます。これは、途上国に供与をした機材などが壊れた場合のスペアパーツを供与するとか、そういったその都度その都度対応していたものを、この研修の場合についてはハードではなくてソフト型の支援、研修で学んだことを現地でいかに活用できるかということの補足的な調査を行う、あるいは現地でセミナーを行う、そういったものに対しても協力をする。これを附帯事業というふうに考えないで、本体事業として、最初から計画するときにきちんと組み込んで行ったらどうかということを考えております。
 資料6の3ですが、こうしたことで本体である研修とフォローアップを組み合わせて、帰国した研修員の活動を計画的に実施していく、その目的達成のために現地において普及展開のためのセミナーや政策提案作成のための追加的な調査などを行うことが必要とされるコースについては計画段階から組み込み、本邦研修と一体として実施、評価を行うということが1つです。
 それから、もう一つは、めくっていただきますと、研修目的達成のため、本邦の関係者と帰国研修員の間のネットワークを継続的に維持、緊密化することが必要とされる研修コースについて、本邦協力機関の活動支援により帰国研修員の登録、情報提供、電子会議室の運営などを通じて、帰国した後こういったことがわからないというものに対して継続的に支援を行うというようなことを考えております。
 現在、私どもが文化庁様の方に提案させていただいていますのは、この著作権制度整備コースに参加することで、参加した国々において、例えば海賊版の市場流通がなくなったり、不正行為そのものがなくなることが望ましいのですが、そこまで一足飛びに進むのは難しいでしょうから、研修で学んだことを自国の執行担当官に普及するためのセミナーの開催、それから模倣品の追放キャンペーン、そういったものの実施によって国民一般に対する啓蒙普及を研修員に考えてもらう。そして、考えてもらって、その組織で了解されたものを日本側に申請してもらって、こういったフォローアップをやってほしいという協力をしてもらう。
 従来ですと、その研修員が学んで帰ってしまうと、その後どうしたかというのがわかりにくかった、あるいは研修員が異動してしまうと日本で学んだことが散逸してしまう、そういったことがありますので、我々も研修員個人に協力しているわけではなくて、研修員が所属している組織あるいはその国に協力しているものですので、その国や組織からそういった啓蒙普及や追加的な支援をしてほしいという要請を受けて対応していきたいというふうに考えております。
 こうした概念普及をJICA(ジャイカ)が技術協力して行うことによって、我々は、先ほど冒頭申し上げましたように、独立行政法人として成果をきちっと出して説明をするということだけにとどまらず、例えば文化行政で行っています著作権侵害発生国との間での政府間協議や連携、あるいは途上国においても、WTO加盟にあたりこうした知的所有権の保護というのは大事なことですので、そういったことにも有機的に絡んでいきたいものと思っております。
 簡単でございますが、私の方からは以上でございます。

事務局 どうもありがとうございました。
 それでは、続きまして、プレゼンテーションの議題でございますが、ACCS上海の活動について、久保田様からお願いをいたします。

久保田委員 コンピューターソフトウエア著作権協会の久保田でございます。きょうは時間をいただきましてありがとうございます。
 協会の方の「ACCSの海外活動」というテーマをいただきましたが、活動はまだまだ緒についたばかりで、ご報告できる内容はまだ少ないのですが、皆さまのご参考になればと思います。
 まず、当協会ですが、85年に著作権法にプログラムが明示された年に設立されまして、現在活動は21年目を迎えました。活動の内容としましては、教育・啓発活動、調査研究活動、そして権利執行支援活動。これらは著作権ビジネス支援というものを土台に据えた活動であります。国内においての権利保護の考え方としましては、法と電子技術と教育というこの3点から、著作権保護、情報保護について活動してまいりました。海外におきましても同様に、電子技術、教育、法というこの3点からアプローチをしたいと考えて活動をはじめました。
 現在、ACCSの会員企業は300社ほどですけれども、コンピューターのプログラムではゲームメーカーやビジネスソフトメーカー、さらにはコンテンツの制作会社、また出版等も会員として参加しておりまして、最近ではアニメの制作会社なども会員になっている関係から、コンピューターソフトウェアの著作権保護というよりも、デジタルコンテンツ全般の権利保護という観点から活動をしております。
 では、まず、「ACCS上海」の設立の趣旨についてお話をしたいと思います。
 「ACCS上海」は、中国における著作権をはじめとした知的財産権に関わる基礎資料・現地情報の収集、版権局などの関係機関等とのパイプづくりを目指して、設立しました。一例ですが、日本では非常にマスコミを通じた広報啓発がうまく機能していますが、中国ではなかなかこれが難しいということなどを痛感しております。しかしながら、関連企業等の中国における情報発信等とうまく連携しつつ、多少なりとも中国の市民に情報が届くようにという努力はしております。
 ACCS上海については、2003年7月に理事会において設置の承認が行われまして、同年10月には、当協会会員のソフトウェア開発会社が上海に拠点を持っていることから、そこに机を借りるというスタイルで、業務がスタートいたしました。そして、2004年5月に上海市版権局から、上海市における知的財産の関連サービスビジネスの拠点になる「知識産権園」ビルディングへの入居の要請をいただいたことを縁としまして、そこに事務局を持つということになりました。2005年5月には事務所を設立し、正式業務がスタートいたしました。
 この「知識産権園」は2004年4月に設立されておりますが、科学教育による上海市の振興という計画に基づきまして、上海市知的財産局と上海市の楊浦区政府が共同発起しまして、上海市工商行政管理局、上海市版権局、上海市職工技術協会等の協力を得て設立されたことです。ACCS上海はこの中の8階のかなり大きなフロアをお借りしまして、現在事務局の運営を始めております。
 続きまして、活動の概要なんですけれども、大きなポイントとしましては5つございます。
 まず、日中間のコンテンツビジネスの振興支援という活動です。ACCS会員会社を初めとした、コンテンツ企業が、中国に進出していくときの橋渡し役を務められればと考えております。現地では法的に契約が成立してもなかなかビジネスが進んでいかないという状況も聞いておりますが、中国は「人治主義」の面があることから、我々と当地のビジネス「顔役」、また政府機関との「仲介人」のようなポジションがとれればということも当初考えておりまして、つまりビジネス上の「お見合い」をしてもらい、そこに人的な担保をさせる形で支援ができないか、ということを考えております。
 次に、内外の関係部局との連携ですが、これはとりわけ我々のパートナーが上海市版権局ということで、著作権を中心に情報交換等を密に行っています。また、ビジネスソフトの権利保護という観点からは、現地の団体であるチャイナ・ソフトウエア・アライアンスや、当地にはBSAチャイナ、そしてマイクロソフトチャイナ等があり、我々の会員会社の中にも、アメリカの外資系ソフトメーカーのオートデスク等がおりまして、そのような企業が中国に支社を持っていることから、そういったところとの情報交換を密にしながらアプローチしていこうと考えております。
 それから、教育機関などに対する講演活動ですが、とりわけ中国の大学生はインテリ層ですから、彼らがきちんと著作権などの知的財産に対する認識を持ってくれれば、波及的に一般市民にも浸透していくと考えています。また、「ウミガメ族」というように、中国はアメリカなど海外で学んで帰ってくる優秀な学生もたくさんいるそうですから、そこで情報交換をすることが一番効果的ではないかと考え、これまでに上海市などの10の大学で講演を実施しまして、著作権、また情報モラルという観点からの講演活動をスタートさせております。
 先ほどJICA(ジャイカ)の山田さんからご説明にあったように、著作権法からだけではなくて、情報保護の観点からアプローチしますと、デジタル情報についてはどの国家もセキュリティーや情報安全という観点からアプローチしますので、例えばファイル交換ソフトの問題など、情報保護の観点から説明すると、著作権に対する認識も非常に高まるということを実感しております。
 また、ゲームやアニメなどの海賊版についての情報収集や対策の強化という活動ですが、上海市内やそのほかの大都市でも、夜になると海賊版をバッグに入れて売っている人たちが街角にたくさん出てきますし、大学の構内等でも自転車に海賊版を積んで売りに来るというような光景はまだ目にする状況でもあります。また、名のあるデパートや書店でも海賊版が売られているという状況がありますので、こういったものを実態調査をしながらきちんと対策を取りたいというこで、情報収集を強化しております。
 さらに、今一番力を入れているのが、現地の日系企業のソフトウエア利用への注意喚起という活動です。日本においては、協会設立以来ビジネスソフトの適正な管理という観点の活動を続けてまいりまして、私はもっと良くなっていると考えますが、BSAの発表データによっても、今では違法コピーの稼働率が27〜28パーセントまで下がってきています。こういう20年かけてきたソフトウエア管理、ライセンス管理のノウハウを、中国に進出している日系企業に向けて伝えていき、それがまた中国の企業にも波及していくことを目指しながら、セミナーを開いたりしています。後ほど詳しくお話ししますが、これにつきましては中国のチャイナ・マイクロソフトなども協力いただける予定です。
 続いて、詳しい説明になりますが、日中間のコンテンツビジネス振興支援としましては、研修生招聘事業への協力として、これは昨年ですが、AOTSの「中国ゲーム産業知的財産研修コース」カリキュラムの策定や講演を行いました。また、上海では、「アニメ文化芸術系活動」への支援として、昨年開かれた著作権に関するシンポジウムにおいて、当協会のACCS上海事務局の運営員が司会とコーディネーターを務めました。
 次に、内外の関係部局との連携ですが、現地の政府機関や著作権団体などと連携して情報交換などを実施しています。北京におきましてはチャイナ・ソフトウェア・アライアンス(CSA)などです。また、国家版権局、上海市版権局などとは情報交換を密に行っております。
 また、日本におきましては、政府機関としましては文化庁、経済産業省、警察庁を初めとしまして、いろいろ情報を提供していただいたり、支援をしていただいています。また各種団体としては、ACCSではコンテンツ海外流通促進機構(CODA)のメンバーとしまして、積極的にJETROなどとも協力しながら、海外での活動を行っているという状況です。
 特に今年は、国際知的財産保護フォーラム(IIPPF)の官民合同訪中ミッションに、CODAを代表して参加をし、国家版権局に5つの要請をしてまいりました。そのうち一つは、技術的保護手段の保護及び回避装置の取り締まりの強化、これはいわゆる「MODチップ」等への取り締まりの強化の要請です。そして、著作権管理団体の使用料の適切な徴収・分配や、録音録画物の新たな検査監督体制の構築も要請しました。また、カラオケの著作権など、MTV著作権の管理における著作者の正当な報酬の確保という点も要請項目です。最も強調してきたのが、インターネットの利用における著作権侵害品の違法アップロードに関する対策の推進です。日本では、侵害行為を迅速に停止するためのシステムとして、信頼性確認団体というものを設置して、削除要請が非常に素早く処理されている、というような例を説明しまして、中国でも信頼性確認団体などを設置して、権利者が削除の要請をすれば瞬時に侵害行為等を除去できるようなシステムがつくれないか、というようなメッセージを残してまいりました。
 また、昨年は、杭州市で開かれたWIPOのリージョナルシンポジウムにおいて、日本のソフトウエアの法的保護についての講演を実施しておりますし、そのほか、大連市で開かれた中国国際ソフトウエア版権保護フォーラム等での講演も行っております。
 教育機関などに対する講演の詳細です。2004年5月に活動をスタートし、今年は北京の清華大学や上海の華東政法学院で講演を行っております。講演後にはアンケートも行っており、その回答を見ると、中国の学生は非常に著作権や知的財産に対する認識は高いようです。背景としましては、中国政府が、10年ぐらい前までは超大国で資源もたくさんあってというような教科書を作っていたようなんですが、最近はエネルギーも水、資源もとても厳しい状況の中で知的財産が国の土台になるのだ、というようなことが教科書にもメッセージとして書かれるようになったことがあるようです。
 学生自身も、ソフトウエアやコンテンツ産業がきちんと立ち上がらないと将来の中国は成り立たないという認識があるようで、アンケートの回答でも、ほとんどの人が知的財産権を重要だと考えています。ただ、それでも、あなた自身は今後も違法コピーをしますかという質問では、多少は、まだわからないといったような回答もあります。しかし、おおむね著作権など知的財産制度に対する認識や知識は非常にしっかりしたものを持っていると思います。先日の清華大学の講演では、中国における映画のパロディー事件についてもお話をしましたが、非常に活発に意見交換も行われました。中国でもパロディーについての著作権法上の評価などがきちんと学生の中で議論される、そういった認識はあるということが言えようかと思います。
 このような講演については、協会の賛助会員ですが、日本のローファームである弁護士法人フラーレンを中心に教育研究グループを設置して、中国の教育機関での講演活動のコーディネーションをしていただいております。
 次に、ゲーム、アニメなどの海賊版についての情報収集、対策の強化ですが、現在は調査活動を中心に行っており、まだ法的な対応は控えている段階です。今年はデパートなどのきちんとした販売店で海賊版が売られていることについての対応を考えた活動を始めておりますが、今のところは情報収集中です。
 ちょっと古いデータですが、2003年に上海の復旦大学の構内の路上で海賊版が売られておりますし、上海市内を夜歩きますと、繁華街で違法DVDを持った人たちが寄ってきて「買いませんか」というようなことが、今でもあります。ただ、最近、胡錦濤さんがアメリカに行ってから、コンピュータソフトウエアにつきましては、パソコンへのOSのプレインストール推進などが約束され、電機店などでビジネスソフトの海賊版が売られているという状況は改善されたということも聞いております。
 それから、日本国内にも影響するネットワーク上での侵害の対策に着手しようと活動しています。現在、中国サイトにおける無断アップロード対策として、版権局が自身のホームページに用意している情報受付フォームへ投稿してみましたが、権利者側の身分証明や証拠の公証、詳細な情報の提供などを求められ、一時中断せざるを得ない状況になりました。その後5月に、中国政府より「著作権行政苦情申し立てガイダンス」が公開されましたため、これに即して申し立てを行う準備をしています。
 日系企業向けのソフトウエア利用への注意喚起ですが、先ほどお話しし忘れましたけれども、中国では版権局が行政罰の執行として、企業内の違法コピーの調査ができる権限を持っているわけですが、日系企業が一番狙われているようです。背景には、日本の企業は損害賠償をすぐ払う、というようなことが言われています。このような「狙い撃ち」を阻止するためにも、協会としては日系企業におけるソフトウエア管理を徹底させるべく、パンフレットの作成や配付、そしてセミナーを行っておりますし、今後も強化していきたいと考えております。
 このパンフレットにつきましては、日本でもソフトウエア管理、ライセンス管理のパンフレットを作成して配付しておりますが、2万部を印刷中で、これを配付しながら活動をしていく予定です。
 続いて、イタリアでの海賊版の販売対策に移りたいと思います。
 イタリア・ローマで購入した海賊版を今から皆さんのお手元に回します。これは正規の店舗で売られていまして、後ほど映像でも見ていただきますが、ビデオショップやアニメショップなどきちんとした体裁の店舗で売られているものです。
 イタリアでの海賊版の販売対策につきましては、2004年9月に会員企業から、イタリア各地で日本製コンテンツの海賊版が大量に売られていてビジネスが成り立たない、という相談を受けたのが始まりです。当時は事務局もイタリアやヨーロッパがそんな状況だとは思ってもいませんでしたので半信半疑だったんですが、余りに悲壮感を持って訴えられるものですから、協会も重い腰を上げたというのが事実でございます。
 そして、2004年12月には会員企業から証拠品の入手をしまして、海賊版がかなり売られているという状況を認識しました。そして、2005年1月には最初の現地実態調査を行い、このときにイタリアの財務警察に摘発の要請をしました。これは、バッサーノという地方の警察署に持っていきましたが、かなり意識が高く、きちんと日本の権利者が権利行使をしてくれればいつでも協力しますよという回答もいただき、日本の警察と同じような信頼関係がありました。そして、8月に第2回の現地実態調査をしまして、10月には財務警察に告訴状の提出をしました。ことし2006年1月には検察に著作権の証明書類の提出をしまして、3月に捜索、証拠品の押収ということになりました。後ほど詳しい話はしますが、このように対策が進んだわけです。
 ただ、途中で、事件バッサーノからローマ市警察の方に移管されたために、警察とのパイプが全く切れてしまいまして、ここからは本当に、書類だけで警察とつながっているような関係になりました。日本では摘発の支援をするためいろいろ警察と情報交換をする中で動きやすくなるのですが、ローマ市警察に移ってからは何の情報もとれなくなり、弁護士と、そして頼りになったのは日本大使館の方から情報収集をしていただくという関係の中で、事件が進みました。
 第1回の現地の実態調査でローマの5店舗を調査しましたところ、海賊版の販売が4店舗でされました。ミラノでは4店舗を見まして1店舗のみ、ボローニャでは3店舗見まして1店舗でした。このように、きちんとしたお店にもアニメなど日本のコンテンツの海賊版が売られているという状況でした。
 第2回の現地実態調査はローマで行い、ゲームを中心にコンテンツ、アニメを調べましたが、このときの調査結果としてはゲームソフトの海賊版は店舗では確認されませんでした。
 しかし、目抜き通りでは、路上で日本のゲームソフトの海賊版が大量に売られていて、警察官が通るとさっと逃げていくというような状況を確認しています。これは日本の電気街でも同じですが、そういう状況でゲームソフトの海賊版は売られておりました。
 このような現地調査の結果で判明したのは、中国などでの状況との大きな違いとしまして、海賊版がほぼ正規品と同じ金額で売られているということです。大体、平均25ユーロ、1ユーロ140円から150円ぐらいとして、大体3,500円ぐらいで海賊版が売られています。イタリアのユーザーは、海賊版を正規品と同じような感覚で買っていると言えます。
 今、皆さんのお手元に海賊版が回覧されていると思いますが、ここにイタリア著作者出版者協会(SIAE)という、イタリアで著作物を流通するときには必ずそこを通さなければならない、半政府的な、ほとんど政府の機関と言ってもいいんでしょうか、その団体がシールを発行してイタリア国内に流通させるわけですが、海賊版にも、SIAEのシールが付けられています。
 イタリアでは、日本のアニメもアニメ音楽も非常に人気が高く、これは大使館にいらっしゃる矢野参事官に聞いたお話ですけれども、「釣りキチ三平」が週3回にわたって24時間のうちに何回もテレビ放送されているというような状態です。多分これも契約的には違反だろうと思いますが、そのくらい日本のアニメがたくさん現地では放映されていて、少し前のデータですが、2002年ではヨーロッパにおいてはイタリアが日本の放送番組の地上波での放映時間が3位で、約1,000時間という調査結果が出ています。
 また、海賊版を見ていただければわかるように、どこでつくっているかというと中国、香港、台湾などのアジア地域であろうと思われます。パッケージをよく見ると、日本の片仮名の「シ」が「ツ」になっていたりしますし、版が粗雑なものだったり、パッケージがカラーコピーだったりと、真正品と見比べると違いがよくわかります。特に、きょうは比較のために音楽CDの正規品を1つ持ってきておりますが、それを見ていただくと違いがわかろうかと思います。
 イタリアの捜査機関とのやりとりですが、これは先ほどざっとお話をしましたけれども、鑑定書等について詳しくご説明したいと思います。
 鑑定書としまして、海賊版と国内真正品との相違を具体的に比較したものを提出しました。権利者に鑑定内容などを確認してもらい、署名を行いました。そして、日本語で作成したものをイタリア語に訳して提出しました。委任状は、イタリア人の弁護士に対する権利者からの委任状ということです。これもイタリア語で作成しまして、和訳したものを権利者に確認いただき、署名したものを提出しております。
 またイタリアでは特別委任状というものがありまして、これはイタリア係争法上の手続で、権利者や弁護士が、警察、検察からの出頭要請を受けたときに、指定された日時に出頭できない場合には代理出頭してもらう特別代理人を指定する必要があるそうです。我々はこの会員会社のイタリア法人の会計士に依頼をしまして、書類を作成しました。
 また、権利証明書、これは本来必要のない書類だったのですが、検事からの要請で、告訴人に告訴品の著作権が本当に帰属しているかを証明するものとして、作成しました。各作品の原作者、出版社、初版本発売日、制作者、監督、作曲家、コピーライト表示、放送日、発売日、発売元を各権利者に確認いただきまして、ACCSの理事長名の書面を作成しました。
 また、添付書類は、初版本の奥付のコピーや、映像に収録されている制作スタッフ等が表示される場面をキャプチャーした画面のプリントです。それから、日本で商標登録があるものはその証明書を添付しました。こういった書面を、イタリア国内にいる資格を持った方へ翻訳依頼を行い、裁判所において翻訳証明をもらって提出しました。国内以上の作業がかかるわけですが、こういった書類を出すことによって事件を立てることができました。
 告訴会社は5社ですけれども、そのほか、アニメということで中間法人日本動画協会のバックアップ等もいただき、そのほかにも当協会の会員会社も含めて個別に25社から、この活動のために支援をいただきました。
 摘発は2006年3月20日、21日に行われました。現地ではまだ、警察広報が出ておりませんのでメディアには発表しておりませんが、日本では、テレビ1件、新聞5件、ネットで8件、この件について報道がされております。
 ちなみに押収物ですが、アニメ、ゲームなどの海賊版DVDが400枚以上、音楽CD、Tシャツなども押収されています。ちなみに、余り定かな数字ではないですが、現地の正規流通業者によりますと、イタリアで流通しているゲームやゲーム音楽を除く日本コンテンツは、年間約28億円の規模だそうです。また、今回摘発された店舗を経営する業者がイタリア市場で流通させていた海賊版は、売り上げベースでその60パーセント程度を占めると推定されているそうですが、これは具体的に数字を我々が確認しているわけではないので、「言われている」という程度の参考にしていただきたいと思います。
 そして、海外での日本コンテンツの保護という関係からですが、イタリアにおいては今後も財務警察とのパイプを太くして、政府機関への継続的な働きかけをする。そして、SIAEとの連携をすることによって、海賊版の流通をストップさせることができないかということを、JASRAC(ジャスラック)さんと共同して、SIAEに働きかけたいと考えています。
 それから、イタリア国内での日本製コンテンツの知的財産権の普及啓発については、ルッカという町では大きなアニメやゲームソフトのフェアが毎年行われていますが、こういった各地での大きな催し物にきちんと知的財産や著作権についての認識を高めるブース等を出展することによって、普及啓発をしていきたいと考えております。
 また、前回の小委員会でも、海外での日本のコンテンツの権利保護については、契約という問題も大きいということを指摘しましたけれども、弁護士の福井健策さんのお話によると、1990年以前の日本のコンテンツ契約内容には問題が多いと言うことを私も聞いていますが、できる限りマルチな展開ができるような強い契約書づくりということも、一つ非常に重要なのではないかなと考えております。
 最後になりますが、最も大事なことは、権利者が権利の上に眠らずにしっかりと自分の権利主張をしていくということですが、やはり民事ではなかなか難しい側面もあるので、できる限り秩序維持の観点から刑事手続を使って権利主張をしていくというのも非常に重要ではないかと考えております。
 では、映像の方をご覧下さい。
(映像)
 これは、ローマ市内の店舗Aです。
 映像に映っている調査マンはベネチア大学で日本語を勉強している人で、今「家畜人ヤプー」を訳しているという、非常に日本のことが大好きな人です。この店舗の2階にある商品はほとんどが真正品なんですけれども、地下におりると、ほとんど日本のコンテンツで、しかも海賊版ばかりが並べてあります。この(映像の)左前方にあるのは、全部日本のアニメ作品なんですけれども、すべて海賊版です。「あしたのジョー」などもあったと思います。
 ちなみに、井上雄彦さんの「スラムダンク」などの漫画も非常に人気が高くて、今、彼は車いすのバスケットの漫画も描いていますが、日本と同時発売でイタリア語版が出ています。これはきちんと権利処理をしているケースですが、そのようにイタリアでは非常に日本コンテンツの人気が高いということです。
 これは「マジンガーZ」ですね。
 これは余談ですが、「攻殻機動隊」のような、日本で爆発的にヒットした映画などは、なかなか現地では正規の映画館でかからない。かなり米国のアニメ企業から圧力がかかっているようなんですが、イタリアではポルノ館のようなところでしか日本のアニメが上映されないということも、現地で耳にしました。
 Bの店舗の方に行けますか。
 こちらはウナギの寝床みたいな細い建物で、本当に狭いところに日本のフィギュアなどもたくさん売っています。音楽CDはどこのお店でもレジのところに箱で置いてありますが、ここではゲーム音楽など、ほとんどが海賊版といった状況でした。
 なお先程見ていただいた店舗Aでは、最後に調査に行ったとき、店員にカメラから道具から全部取り上げられまして、「お前には売らない」と言われて、体の大きい若者が僕らが調査している後をずっとついて回るような、非常に嫌な状況にもなりました。日本のおじさんがこういうところへ行くと、やはりわかりますよね。
 (映像)これは音楽CDの海賊版です。
 イタリアでは、正規品を扱うきちんとした店舗で海賊版が売られているというのは非常にショックでしたが、これは伝聞ですけれども、フランスでも同じような状態だというような報告を受けております。
 以上でございます。

道垣内主査 どうもありがとうございました。
 1時間くらいいろいろなお話を伺って、あと、それでも相当時間がございますので、今までのご報告を踏まえてご議論いただきたいと思います。全体としては、前回ご意見をいただいた論点整理について、どなたか、自分が大切だと思う点が入っていないということがあれば、そういうことを含めても結構ですし、さらにそれをもとに資料2が論点整理をしたもので、恐らくこれをずっと審議していって、この項目立てで報告書ができていくということになろうかと思いますので、こういうフレームワークでよいのかということもご議論いただきたいと思います。そして、その4と5に当たる具体例として、JICA(ジャイカ)とACCSの活動についての貴重な情報についてお話をいただきましたので、この報告書をまとめていく上で必要な、より詳細な点について明らかにしていただきたい点があれば、ご質問、ご確認等いただければと思います。
 まずはそのようなことで、どなたか特にご発言があればそれを伺った上で、さらに時間があれば前回のように、どっちからかわかりませんが、山本先生の方からこちらの方向に、ということでご発言頂きたいと思います。まず、どなたからでも、何かございましたらどうぞご発言いただけますか。どうぞ。

山本委員 海賊版対策との関連で、各国のレベルをどういうふうに上げていくのかということでいろいろ苦労されているというように思うんですけれども、私もJICA(ジャイカ)の方の研修でエンフォースメントについてお話しさせていただいたり、あるいはCRICの方でもなさっている特別研修でお話しさせていただいたりする過程で、各国から来ている方にそれぞれの国でのエンフォースメントはどうなのかというような話を聞いていて、やはりそれぞれの国ごとに状況が違うように思います。つまり、国によって民事的な救済中心の国もあれば、刑事的な制裁中心だ、あるいは行政的だというようないろいろなパターンがあって、やはり国情によって違うんだろうなと。
 それからいうと、先ほどご説明もありましたけれども、国際的な取り組みで各国にレベルアップを求めていくというような努力をされているとは思うんですけれども、総論的な問題だけではなしに、やはり各国の著作権制度がどうなっていて、そこでエンフォースメントを日本の著作物を保護してもらうためにはどういう対応をしていくのがいいのか、制度的にもこの国についてはどういう制度をどういうふうにしてくれという個々の各国ごとの要求みたいなものを明確にしていかないといけないのではないのかなというような、そういう問題意識を持っております。そういう観点からの個別的な取り組み方と、各国ごとの取り組み方というものについても問題意識として挙げていただければいいんじゃないかと。
 例えば大楽先生の方でそういう研修会の過程で各国でのカントリーレポートとかをまとめていただいているんですが、そういう各国ごとの蓄積されているようなノウハウ、知識を整理して各国ごとの要望につなげていくような、そういう努力が必要ではないかなというのが私の意見です。

道垣内主査 今の点について、どなたかご意見はございませんか。例えばACCSとかの活動で、ここの国ではこういうことをしたらうまくいったとか、さっきのイタリアでは最初の方はうまくいっているようなお話でしたけれども、何か補足いただけますか。財務警察という普通の警察とは違う組織があるんでしょうか。

久保田委員 イタリアは郵便警察など、日本でいう麻薬取締官のような感じで、庁の下にそれぞれ警察機構があるみたいです。郡の警察もあるし、なかなかイタリアは複雑ですが、我々がなぜ財務警察にスポットを当てたかというと、脱税の問題があるんです。これは昔、BSAというアメリカの団体が現地で摘発したときにも、脱税も摘発するということになると警察が動くということで、我々のねらった大きなローマのA店というのも相当巨額の脱税をしていると考えられたことから、バッサーノの警察が食いついたというところが、事件の背景にあります。

道垣内主査 わかりました。途上国を含めて、一般には刑事の方が効果的なのでしょうかね。その辺がよくわからないのですが、例えば日本では警察にお願いしても余りやってくれそうにないですけれども。

久保田委員 いや、そんなことないですよ。

道垣内主査 そんなことはないんですか、すみません。

久保田委員 日本の警察は知的財産の秩序維持に関して非常に重要な役割を担っている。もしかすると世界で一番優秀かもしれないと考えています。

道垣内主査 そうですか、すみません。

久保田委員 特に我々の協会は前田先生とも一緒にやっていますけれども、日本の警察とは非常に信頼関係もありますし、事件処理も速いです。

道垣内主査 そうですか。私からもう少しお聞きします。JICA(ジャイカ)の研修で警察関係の方の研修みたいなことはされているんですか。

山田経済開発チーム長(JICA(ジャイカ)) 知的財産権については、警察関係はないです。麻薬等はあるんですが、著作権制度整備コースは執行官が対象の研修ですので、その国から検察とか警察の方が参加することはあります。

道垣内主査 そうですか。

事務局 今の件について。昨年のAPACEプログラムの一環の東京特別研修では、警察官の方を中心にお願いしたいということで、各国から警察官の方に来ていただきまして、それ以来、知的財産権の方が何人かいらっしゃいましたけれども、去年の東京特別研修は警察官中心のプログラムを組みました。

道垣内主査 そうですか。ありがとうございました。
 今の点でもよろしゅうございますし、ほかの点でも結構ですが、いかがでしょうか。

上野委員 上野でございます。きょうのテーマは海賊版対策ということですから私は素人なんですけれども、論点ペーパーの4と5に関しましては、これはある意味では教育というにかかわりましょうから、大学というところにいる私にとりましても必ずしも無縁ではありませんので、若輩者ではございますが一言だけコメントをさせていただきたいと思います。
 私もJICA(ジャイカ)の研修講座などでお話しさせていただくことがありますけれども、JICA(ジャイカ)の活動が非常に大きな成果を上げているということは言えると思います。
 その上で、本日の問題意識ないし問題提起といたしましては、個人の能力を高めるということだけではなくて、それが現地の政策の向上ですとか、あるいは国民の意識の向上にどうやっていったらつながるだろうかというようなお話だったと思います。
 確かに、受験生が帰国した後の情報の伝達といいましょうか、情報の広がりというものがなかなかうまくいかないというようなことはあるのかなというふうに思います。その意味では、きょうご指摘あったようなフォローアップということは非常に意義のあることだと思います。
 ただ、私の経験といたしましても、例えば私が配付したレジュメがそのまま現地で配付されて、わかるかなと。それだけでは、正確な情報というのは、伝わりにくいものがあるんじゃないかと思います。やはり自分で教わることと、またそれを人に教えるということは、同じではないように思います。
 ですから、そういう意味では、持ち帰ってそのまま現地で教えるときに使えるような教材、そういう教材になるような共通のテキストといいましょうか、そのようなものを用意することが重要なのかも知れませんね。きょうの論点テーマの中にも教材開発というのが何度か出てきておりますけれども、そういう意味では現地で使いやすい、むしろどんどんコピーしてほしい教材といいましょうか、そのようなものが有用なのではないかと思います。そのようなことがうまくいけば、現地での情報の伝達、ひいては国民レベルにおける意識の向上というものにもつながってくるのかなというふうに思います。その点だけ述べさせていただきます。

道垣内主査 ありがとうございました。
 私、研修の内容を余り存じ上げないのでわからないのですが、模倣品とか海賊版はいけません、あるいは著作権はこうなっていて違法ですという話は余りおもしろくないと思うんですけれども、摘発するノウハウとか、海賊版を減らしていくノウハウとか、何かそういうのでないと、聞いてなるほどと私なら思わないんですが。多くの国の人たちも、いいと思ってやっているわけではないんでしょう。そもそも違法という意識すらないんだということになると、レベルとして違うかもしれませんが、例えば、中国とかの場合にはどうなんですか。どちらの段階ですか。さきほど表がありましたけれども、上から3番目ぐらいになってくれば、悪いことはわかっているのでしょう。ですから、それをどうやってなくしていくのかという、そんなうまい話というのはあるのですか。そういうテキストがあるといいなと思いますけれども、どうなんでしょうか。

−−委員 私が見聞きした模倣品の関係の話でいうと、例えばいつだったか忘れましたけれども、有名なトヨタの模倣品のメーカーがあって、そこなんかはやはり日本でいうと本田宗一郎とか松下幸之助とか、そういう世界。まるで新しい中国の産業界の若きリーダーみたいな人が模倣品メーカーだったんです。それで、やはりトヨタなんていうのは日本から外資で中国人を搾取して日本の武器産業に金を還元する悪の象徴みたいなところで、やはりそういうものの反対キャンペーンをやるということが非常に愛国心をかき立てるというか、そういうようなキャンペーンがやられたり、なかなか中国なんかでは地域の産業と模倣品などの海賊版というのはすごく密接に絡んでいて、外資をやっつけるという民族手法に負う面が、引っ張るみたいなイメージがあるので、やはりそういう知的財産の意義自身からほぐしてやっていかないと、知的財産を保護するのは当たり前のことだというところからできていないんじゃないかなという印象を持ちました。

道垣内主査 そうですか。先ほど手が上がっていらっしゃるお2人いらしたんですが、久保田委員、いかがでしょうか。

久保田委員 大学などで我々が講演する相手と一般市民とは相当意識に差があるのではないでしょうか。「ミッション・インポッシブル3」など見たら、上海ってどこだというぐらいに先進的な映像を見せられて、ところが1時間か2時間車を飛ばせば、のどかな地方になるような国だから、購買層の意識と、知的財産で飯を食べていこうとしている人たちとは相当大きな差がある。これは多分日本でも同じような状況ではないのかなと思いますが、ターゲットをきちんと分けないと難しくて、例えば、我々は警察の方を対象にしゃべったときには、各国のソフトウエアの違法コピー率の数字を見せると、勝手にアメリカが言っている数字で信じられない、自分たちとしては鋭意努力していて、知的財産の重要性についても認識していると、逆にこちらが怒られてしまいました。
 だから、そこは今、上野さんが言われたように、どこをターゲットにして授業をするのかということでも、それぞれ戦略は相当変わってくると考えないと、一網打尽でうまくやっていくことは考えにくいのではないかと。特に中国は、本当にそれはピンからキリまでだと思います。

道垣内主査 私が申し上げたのは、取り締まる側に何かノウハウを提供できるのがいいんじゃないかと思ったんですが。

久保田委員 日本のシステムはかなりうまく機能していると思うんです。ACCSのような協会があって、また警察庁の下に不正商品の対策、JVAが事務局をされている不正商品対策協議会のような団体があって、情報の流れがよくなっているという意味でのスキームは。特に企業内の違法コピーなどの対応をどのように行ってきたかなど、当時は80億ドルの違法コピー被害をアメリカに指摘されていたんですけれども、10年たった現在はもう世界のトップレベルに来ているという中でノウハウをきちんと体現したものがありますから、自分の国はまだコンピューターのレベルがそこまでいっていないというところは別にして、いろいろお話すると、役に立つと言って帰っていただける部分は多いです。

道垣内主査 わかりました。どうぞ。

−−委員 久保田さんに質問したいんですけれども、大変充実した活動をしておられて敬意を表するんですが、上海とか、その他海外での活動の原資は何なんですか。業界の共益としてやっておられるのか、あるいは政府の補助なんかも入っているのか。お聞きしたいのは、民間の努力で完結できるものなのか、あるいは官民の役割をどういうふうに考えておられるかをお聞きしたいと思います。

久保田委員 イタリアでの摘発をやるために会員会社を初め関連の企業を回って、全部「奉加帳」を回して資金を集めました。そういう意味では、協会の活動として海外対策費というものを多少ストックしていますが、こういう特別プロジェクトとかをやるときは、賛同していただける会員会社やそのほか関連企業から資金を集めています。ただし、全然足りないということで協会から持ち出しみたいになって会員会社から叱られるということになるんですが、イタリアに関しては540万円集めまして、実際は1,500万ぐらいかかっています。
 中国の方は、これもやはり会員企業から上海での活動費として、こんなことをやりますからスポンサードしてくださいというお願いをして、資金をいただいております。
 そういう意味では、行政機関からお金をいただくのは、業務委託など、文化庁からお金をつけていただいたりして我々が現地調査をする場合があります。

浜野委員 久保田さんのところだけではなくて、後藤さんも、菅原さんのところもそうなんですけれども、日本で海賊版が減ったのは、正規版の選択肢が用意されていたからだと思います。ファンはどうしても欲しいわけですから、正規版が用意されていれば、少し高くても買うし、海外でも海賊版と正規版の値段がそんなに変わらない場合も少なくありません。
 映画賞の関係で映画は劇場公開を優先するために、例えば韓国で「トトロ」を劇場公開したら、パッケージの海賊版で、劇場公開は興行的に失敗しました。「トトロ」を見たいのに海賊版の選択肢しかなかったから見たわけです。
 井上雄彦さんの「スラムダンク」は、数年前に台湾で作者の許可なく続編が始まってしまったことがあります。突然連載が終わってしまったので、台湾の人は見たくて見たくて仕方がないから、そのニーズがそれを突き動かして、日本でもやっていない違法版のシリーズが始まったわけです。
 正規版の選択肢がないのに厳しく取り締まると、さらにアンダーグラウンドの方に流されるだけで、正規版の流通を整備しながらやらないと、選択肢がなければ、ニーズがある以上、どんな手段を使っても違法に手を入れるようになり、そこに違法なマーケットも成立してしまいます。

久保田委員 実は、最初にそれをお話ししようと思ったんですけれども、我々がイタリアで刑事手続をやったりするのも、実はそれはトリガーで、やはり権利者の方に今、先生がおっしゃったようなこと、きちんとした流通を組んでもらうためでもあります。権利者にきちんと自らの権利の認識をしてもらって、ちゃんとやればこんなに売れるんだということをお伝えしたという思いがあって、そのときにはマーケティングが絶対重要になってきます。現地ではJETROにも行きましたが、ほとんど日本コンテンツの流通がどうなっているかを知らなかった状態です。正規の流通をきちんとつくりながら、権利主張もしていくというふうにしないとならないですが、一番大事なのはやはり契約だと思います。素性もよくわからない地元の業者と変な内容の契約をして、結局、債務不履行なのか、対応できない契約の中で海賊版も出てきてしまうというのが、イタリアの事件の反省としてはあります。
 それは、やはり権利者たちと、関連の販売店の問題です。そこがきちんと正規の流通をつくってもらいたい。これは我々の業界でいうと、アスキーがMSXをやったときに、海外のゲームファンが、プラットホームであるMSXが全然流通しなくて、勢い海賊版に流れていったのと同じような状況だと思うんです。やはり流通はすごく重要だと思います。

道垣内主査 菅原委員。

菅原委員 そのあたりですと、原権利者というよりコンテンツホルダーがどうそのビジネスを見ているかというところで、いろいろと議論になるんですね。例えばアジアとかを見たときに、どうしてもすぐ海賊版の元ネタとされてしまうというおそれがあると、そういうところにはなかなか出ない。ちょうどニワトリと卵みたいな関係もあると思います。ただ、今、久保田さんがお話しになったようにこれだけ海賊版が出ているということは、浜野先生からご指摘あったように、ニーズがあるとすれば、それは逆に今度は正規流通に向けた一つのマーケティングの指標にもなるというような感じがいたします。
 それで、原権利者といっても、これもジャンルによって違いますので、例えばこれから議論していく上では、もしかしたら、山本先生からも各国の制度とか対応とかいうお話がありましたけれども、著作物だとか権利の種類や管理体制によって分けて考える必要があると思います。 それぞれの状況の違いというのも整理しておいた方がいいのかなと思います。つまり、対応がかなりが違うと思うんです。
 音楽の場合で申し上げますと、CISACという国際連合、これは管理団体に国際連合がありますので、基本的に各国にそういう団体があります。ただ、そこがどれだけ訴追能力を持っているかどうかというのは別ですけれども、相互管理契約によって、お互いのレパートリーを管理し合いますから、そちらでの違法対応というのはそこの国の団体が行うというのが原則になっているわけです。ただ、これは今音楽ぐらいであって、ほかの著作物でそこまでネットワークができているかというと、これはなかなか多くはないというところもあると思います。
 それと、資料の中にありましたけれども、いろいろな国際機関との関係で、税関の国際的な団体があるはずですけれども、そういうのもやはり視野に入れていったらいかがだろうかと思います。それは、先ほどお話しした著作者の国際連合、CISACが、ちょっと正式名称はわからないですけれども、WCO、世界税関機構というのでしょうか、そことのタイアップを始めているということもございますので、そのあたりも組み入れていくとよろしいんじゃないかと思います。
 以上です。

道垣内主査 よろしいでしょうか。イタリアでも中国でもいいのですが、正規品の流通業者は本来は味方ですよね。しかし、それが敵に回っている場合もあるというお話でしたね。しかし、そこは契約できちっと押さえておけば完全な味方になるでしょうか。

橋本委員 出していないんですよね。

−−委員 正規品が出ていないんですよ。

道垣内主査 ああ、そもそも出ていないんですか。

橋本委員 ゲームとかアニメって、あるいっとき、多分ドラマとか映画に比べると数ランク下みたいに見られていたところがあって、秋葉系とかおたく文化というようなことで、そういうものが自己増殖的に勝手に出ていった部分があったんです。実際に中国でいうと、ゲームのプラットホームだって売られてないわけです。正規に売られていないのに、何でゲームの模造品があるんだということで、そういうところから、過去の経緯がありますよね。
 だから、方向的にいうと、浜野先生がおっしゃったとおり、正規品がないところで取り締まりに行くということ自体、ちょっと論理矛盾みたいなところもあると思います。つまり、自分たちで出さないものが侵害されているという微妙な事実というか、だから出したくなかったんだというニワトリと卵というか、そういう何か負の財産みたいな世界があって、イタリアで28億のマーケットがあるんだったら、もっとちゃんと正規品を出せばいいですよねというのが普通の感覚なんですけれども、なかなかそういう流通になっていないという現実があると思いますね。
 例えば海外でつくられた音楽CDというのは5年間輸入してはだめですよみたいな、そういう話というのは、ぱっと聞くと何か変だなというのはありますね。同じものが、要するにその国の流通だけを前提としているから、日本に入れてはだめですよというのは普通の財貨の流通で考えると非常に考えにくい、わかりにくい世界というようなところがありますね。
 排他的に選択して出していくということをもって、何かがプロテクトできたのかというと、答えはできなかったということだと思います。だから、製品の積極的な流通というのが一つの根本的な欠けている部分で、それをしっかりやることによって徐々に海賊版というのは減ってくるんじゃないかというのが私の意見です。

上原委員 先ほど来のお話も大変難しいお話だとは思います。これは海賊版だからもうかっているんです。正規版で出すともうからない。海賊版の方々は、要するに何の権利処理もしていませんから、原価は要するにブツだけです。知財へのお金はかけていません。したがって、マーケットで幾ら売れていようが、利益が出るか出ないかという問題とは別になります。したがって、そこで我々が正規品を出せるか出せないかというと、マーケットに対して赤字になるところにはやはり作業はできないということになります。なおかつ、赤字になった上に、先ほどの菅原さんのお話ではないですけれども、元ネタのいいのを出してあげることになってしまう。正規品の質の良いのが出てくるから、そこからどんどん海賊版が流通していくということになる。つまり、価格自体はイタリアでは同じ値段で売られていたとしても、これにはもとの、要するに原著作者たちに対する対価は払われていませんから、全部海賊版の人たちのもうけになっていくわけです。
 そこの違いがあるので、要するにビジネスとして考えていったときに、確かに正規版を出せばいい、あるいは正規版がないところで退治するのは大変だという話はあるわけですが、一方で、海賊版を退治するために赤字でコンテンツを輸出しなければいけないというのはまた逆転した話になってしまうということになるわけで、そこのバランスをどうとるかというのが一番難しいところですね。
 しかも、橋本委員の先ほどのお話の中に、若干の誤解があるんじゃないかと思うんですが、アニメというのは日本側の、少なくともテレビ番組の中では一番海外への進出が組織的に進んでいるものでありまして、アニメ業界は権利処理から海外への販売というものについても一番組織だって行っているところであります。したがいまして、正規版ということにおいても、日本の映像文化という意味ではアニメの世界が一番広く世界じゅうに出ているところでございまして、これが余り低く見られているということはないんじゃないかと僕は思います。むしろ、アニメの評価は世界的にも非常に高いですし、一時期はアメリカの方へもかなり進出をして、アメリカの大手が中途半端な制作をしていた時期に日本の会社の現地法人が相当制作していたという時期もあったりするわけですので、逆に言うと、まだアニメの世界というのは一番よく出ている方という世界です。むしろ、さらにドラマだ何だということになるとますます正規品が少ない世界になっているということだと思います。
 実際、私もアニメの海外販売をアニメの制作会社の人と一緒にやったことがありますが、確かにおそいんです。商売がまとまるのにかなり時間がかかるんです。向こうでどのくらい売れるかというものを見て、それで、大体売れるときというのは国ごとではまずなくて、ヨーロッパの場合は割と国ごとが多いんですが、それでも売れるのがおそくなると地域ごとになる。アジアは大体一部国を除くと、ほとんど地域ごとになっちゃうんです。南米は大体もう南米地域というくくり方になります。さらにいろいろな問題がありまして、1つはやはり言葉の問題です。言葉を全部訳していかないとできませんので、この際、海賊版で したような言葉を入れるというところがありまして、それを全部正規版できちんとやっていってどのくらいマーケットの中でもうかるかというと非常に難しい問題があります。
 したがって、正規版が出ていないとどうしても欲しくてしようがないからだめですよという部分は、確かに人間の欲求なり、あり方として真実だと思いますが、では正規版を出さなければならんという形で直ちにイコールに持っていけるのかというと、なかなかそれは簡単にいかない。
 先ほどのジブリの件でも、確かに実態としてはそういう部分があろうかと思いますが、日本の国内においては、例えばビデオを出す前に先にテレビの放送をやるとか、テレビの放送をやる前に先にビデオを出すとかいうウインドウごとのセールスというのは成り立っているわけです。アメリカはアメリカの国内でそういうウインドウごとのセールスというのを順にかけて、順に売ることによって回収を図るということも行っているわけで、この順に売って回収を図るということができないと大型の娯楽映像作品というのはできないわけであります。それが韓国においてはできないという状況で、単に正規品が出ていないから悪いということを言われてしまうとやはり映像産業としては非常に苦しいわけで、韓国ぐらいのマーケットを持ったところですと、そういうウインドウによる産業展開、ビジネス展開ができないとなかなか進出ができないという部分が、これはまたニワトリが先か卵が先かになるのかもしれませんけれども、現実の問題としてはあろうかと思います。
 逆に言うと、法的な問題からいえば、相手方の権利者がアクションを起こさなければ意味がないということになるんですが、実は我が国の中においても相当な数の海賊版があるんですよね。フィリピンなんかへ行きますと、日本では海賊版が少ないのは何故かと聞かれ、結局いろいろな話があって日本の警察が優秀だからかといわれると、こちらもそうだと言って、終わったりします。実際には我々の方の努力もあるんですが、実際そういう部分も多いので、事実として間違いではないと思います。ただ、フィリピン人の人たちはたくさん日本で働いているんですが、フィリピンで発売になったCDは1週間後には必ず日本のブラックマーケットに出ていると。これは日本で何とかしてくれないのかという話があるんです。それに対しては、まさに日本の作品が向こうで、韓国なりで出ているのと同じ状態なわけで、もし日本がフィリピンへ行って同じことをフィリピンの関係者に言うのであるならば、向こう側から言われたときに、では日本はどう対応するんだという問題がまさにないと、これは対応し切れない部分が出てくるんじゃないだろうかということもあります。
 実はフィリピンだとか、台湾だとか韓国だとか比較的その国の人たちがたくさん多く日本にいるような国に関してはブラックマーケットが相当できていて、それについての苦情というのは現地の正規事業者のところで話を聞くと、かなり出てくるところなので、それ自体は向こうがちゃんとしたアクションを起こしてくれなければこちらとしては何もできないとは思うんですが、一応あるという実態があって、それで、わあわあと文句を言われると、日本が出ていったときもまた同じ話になるので、その辺はじゃあどうするんだろうかということもやはり多少考えておかなきゃいけないんじゃないだろうかなと思うんですが、その辺については、何か今まで対応しているのでしょうか。
 別に、文化庁が対応するのかどうか。恐らくは向こうからのアクションがあれば警察なり何なりが対応するということなんだろうと思うんですけれども、やはりそのところの相互関係という問題は、我が国も考えておく部分はあるというところはあろうかと思うんです。

道垣内主査 幾つかの点をおっしゃったと思いますけれども、その中で1点だけ。本日後生か頂いたソフトは、全部ちゃんとイタリア語になっているんですか。パッケージは全部日本語か、あるいは韓国語でしたけれども。

久保田委員 僕も全部見ているわけではないですけれども、「工殻機動隊」なんかの映像は全部イタリア語になっていました。

上原委員 スーパーインポーズですか、吹きかえですか。

久保田委員 吹き替えです。

道垣内主査 そこまでするのに、パッケージは何でイタリア語にしないのかなと思いますけれども。ありがとうございます。わかりました。

上原委員 中国あたりはスーパーインポーズですね。中国とか香港。

高杉委員 高杉です。海賊版対策のために正規品のライセンスの促進が重要であることはもっともなことで、橋本委員からちょっとお話がありましたけれども、特にアジア地域については価格差の問題があるため、音楽レコードの還流防止措置ができたことによってレコード会社各社も積極的にライセンスを行っていると私は思っております。事実、中国は還流防止措置ができる前の1.5倍ぐらいのライセンス数になっておりますし、現地での販売価格も中国の製品と同じ20元ぐらいまで価格を下げて販売をしています。
 しかしながら、正規品が急激にふえない理由はまだ残っておりまして、例えば中国でいいますと、歌詞の検閲制度もございますし、それから権利についてのやはり認証制度がございまして、レコードの発行についてライセンサーが権利を持っていることを指定機関が証明しないと発行ができないということがございます。これらについて今改善を私どもも取り組んでおります。
 また、韓国においては、これは自主規制というレベルですが、やはり音楽の場合にはプロモーションのために放送が非常に大きな役割を果たしているんですけれども、韓国国内においては残念ながらまだ日本の音楽が放送でオンエアされるには至っていないということがございまして、やはり聴かれなければ売れないということにどうしてもつながってきますので、この点は私どもだけではなくて行政の方の力もおかりして日本音楽のライセンス促進のために積極的な取り組みを進めていきたいというふうに思っております。
 それから、久保田さんの資料にありましたとおり、イタリアの事例等は結局、製造国が中国、香港、台湾で、まさにこれらの国が自国で海賊版を販売するのみならず、海賊版の輸出国になっているということについては、今後の海賊版対策をとる上で重要なことではないかというふうに思いますし、政府のレベルでも、ヨーロッパの方に中国等から海賊版が出るとことを抑える方策を検討する必要があるのではないかと思います。
 以上です。

大楽委員 今までの議論とちょっと流れが変わるんですけれども、道垣内先生、よろしいでしょうか。

道垣内主査 はい、どうぞ。

大楽委員 山本先生の方から、「カントリー・レポート」に関するご発言がありました。例えばJICA(ジャイカ)著作権研修の中で、毎回参加者から著作権事情についての各国報告と参加者間での情報交換のセッションがありまして、ここ何年かお手伝いをさせていただいております。
 つい先日も、6月末から7月2週目にかけて、まずカントリーレポートで1日、6カ国の参加者から各国報告を受け、それをもとに、先ほどJICA(ジャイカ)の山田さんからご報告いただきましたような、フォローアップ補助金の獲得のための各国アクション・プランという形式での発表の日が設けられました。今回はエンフォースメントを中心として著作権意識向上対策も含めたプランを、研修中に策定・発表・検討する、という作業に同席させていただきました。
 そのお手伝いをさせていただくようになってから申し上げてきたのは、たとえば今年は、バングラデシュ、中国、インドネシア、メキシコ、ミャンマー、パナマから、それぞれ代表が参加されましたが、こういった「カントリー・レポート」は、各参加者から最新の各国著作権制度やエンフォースメントに関する情報を寄せていただく良い機会なので、情報収集の場としても位置づけてはどうか、ということです。そして、文化庁でもそのように意識しておられると思います。
 ただ問題は、参加者が必ずしも著作権法制度の専門家ではない場合もある、ということです。今年も、たとえば中国の寧波からの参加者は検察官でした。「僕らは忙しい」と。「暇な時間もないではないけれども、忙しい。強盗もあるし、殺人なんかもあってね!」と言うんです。それで、来日に当たって急遽著作権法も勉強してきた、ということだったようです。このような場合には、なかなか全面的な情報収集というのは難しいかもしれません。しかし、可能ならば、最新状況のいろいろな情報を携えてきていただいて、それを何らかの形で日本国内にフィードバックするというルートがあることは望ましいと思います。他方、この「カントリー・レポート」は、少なくとも参加者間で、日本以外の他国での著作権事情について情報交換するいい機会にはなっていると思います。
 それから、もう一つ特筆したいのは、先ほどJICA(ジャイカ)の方からご報告もありましたが、フォローアップのアクションプラン作成作業が、今回から画期的な効果を生み出していると思われる、という点です。
 たとえばインドネシアの代表の女性は、意匠登録と著作権登録のご担当でした。工業所有権と著作権との区別も定かかなという印象だったんです。この方がアクションプラン作成の際、最初に目標としたのは「著作権登録手続の迅速化」でした。それはちょっと、と懸念してたのですが、ディスカッションの中で彼女は目覚めまして、最終的には、非常に見事なアクションプランを作成しました。国内の主要部門に著作権保護等執行の意識を高めるための、大変具体的かつエンターテイニングで、しかも相当フィージブルなものにまとめて、発表されたのです。そのプラン自体が、帰国してすぐに採用され、これらにまた申請書となって返ってくるかどうか分かりません。しかし、研修成果が、目の前で即実行可能なようなアクションプランに結実していくというのは、すばらしいことだと思いました。以上です。

道垣内主査 ありがとうございました。

後藤委員 後藤でございます。私は、山本先生のおっしゃった、各国の深掘りというか、各国の制度をもう一回見直すということは非常に大切だと思います。
 私もCODA.CJマーク副委員長というのをやっていまして、昨年1年間、2005年4月から2006年3月のエンフォースメントの成果としまして、中国においては行政処罰ということで666件の取り締まりをし、185万枚の海賊版を押収いただき、香港においては155件の取り締まりが行われまして25万枚の海賊版が押収されている。台湾においては、270件の取り締まりが行われて18万枚の海賊版が押収されています。ただ、エンフォースメントを実施していくにあたり、向こう側の執行体制とか、取締環境の不備とか、いろいろ諸問題は出てまいります。
 一方で問題なのが、日本側の弱い部分というのも出てまいります。例えば、日本のコンテンツは映像等に限れば、国内完結型の収益構造になっている。いわゆる海外に出なくても国内1億3,000万人を対象にすれば十分利益が上がるという構造になっている。そして共同著作物が多いとか、さらに侵害されているものはテレビ番組や、アニメが多いといったようなことがございます。
 そうすると、どういう問題があるかということでございますけれども、いわゆる契約の不備というか、いわゆる海外でエンフォースメントするまでを想定してつくっている契約書というのが、まずないです。あるかもしれませけれども、具体的に実務の伴った契約書というのはどうなのかという点や、さらに共同著作の場合は迅速な権利証明、それと権利行使の同意があるのかどうかというのが迅速に求められます。それが非常に厄介です。さらに、放送の場合は、特に香港でございますけれども、サンプル版を全部出さなきゃいかんということで、人気のあるものは話数が非常に多いですから、その提出は非常に大変です。特に昔の作品なんかになると、関係者の皆さんは大変でアップアップしちゃうという点があります。
 ということで、今後の議論でございますけれども、やはり日本国内の問題と、コンテンツホルダーの問題も整理しつつ、今後、将来のこの報告書、どこまで書くかは別問題ですけれども、日本の中でも問題があるということの認識をご指摘いただきまして、将来に続けられるものをつくっていただければというふうに思います。
 以上です。

道垣内主査 わかりました。活発にご議論いただいて、うまく対応がとれてきちんと議論が尽くされていない点も多いのではないかと思うのですが、ほぼ時間です。何かまだご発言のない方で何かございましたらどうぞ。
 特にございませんようでしたら、今後の議論の中でまた議論していただきまして、報告書に、できる限り先ほどの、一般的なことを書くのではなくて国別あるいはそのノウハウとかヒントとか、そういうことが書き込めるようになればいいなと思います。
 それでは、事務局から連絡事項、その他をお話しいただいて終わりにしたいと思います。よろしくお願いします。

事務局 それでは、最後に今後のスケジュールでございます。
 参考資料5を見ていただけますでしょうか。前回が第1回目、本日7月24日が第2回目でアジア地域等における海賊版対策の国際協力のあり方についてご議論いただきました。8月24日の著作権分科会で、小委員会でどういった検討を行っているかというご報告を主査よりお願いしたいと考えております。
 それから、9月に放送条約関係でSCCRと一般総会が行われます。そこでは、外交会議が開かれるかどうかについてある程度結論が出るかと思いますので、それを10月にご報告させていただきまして、また本日いただいた議論に関連いたしまして、また海賊版の方の議論を深めていただければと思います。11月ごろにはもう報告書案の作成、取りまとめていくためのご議論いただき、12月に最終という方向で考えております。
 以上でございます。

道垣内主査 ありがとうございました。では、次回は少し涼しくなってからということですね。またよろしくお願いします。
 では、きょうはこれで終わります。ありがとうございました。

午後16時閉会

(文化庁長官官房国際課)

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