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資料10

DMCA技術的手段の規定に関する判例

【Lex Mark Case】
原告: レックスマーク社
他社製のカートリッジを自社製プリンタで使用できなくするためにプリンタとカートリッジの双方にチップを埋め込んで販売
被告: スタティックコントロール社
レックスマーク社のプリンタでも使用可能となるチップ(レックスマーク社製チップの複製物を含む)を開発、製造

原告は被告を、カートリッジにインストールされたプログラムの複製権侵害及びプリンタ本体にインストールされたプログラムへのアクセスコントロール回避行為に係るDMCA違反として提訴。地方裁は、被告に差止め命令を下した(2003年3月)が、連邦控訴裁は地方裁の判決を覆して被告の責任を否定した(2004年10月)。

(控訴審における争点)
(1) トナー・カートリッジにインストールされたコンピュータ・プログラムの著作物性
著作権法の保護の対象となる「表現」とはなりえないと判断。

(2) トナー・カートリッジのプログラム複製行為に関してのフェアユースの可能性
プログラムの複製行為をフェアユースと判断。フェアユースたりえるかどうかは、被告が対象となる著作物を利用することによって利益を得ているかどうかを考慮すべきとした。

(3) プリンタ本体にインストールされたコンピュータ・プログラムへのアクセスコントロールの取り扱い(DMCA違反の可能性)
 
DMCAのアクセスコントロールではないとして、スタティックコントロール社のDMCA違反を否定。何ら保護が施されていない複製可能なコンテンツである消費財について、その使用を制限するための技術的手段は、DMCAのアクセスコントロールではないとした。


【Skylink Case】
原告: チェンバレン社
遠隔操作で開閉を行うガレージを販売。リモコンと開閉扉のプログラムにアクセスコントロールを施していた。
被告: スカイリンク社
チェンバレン社製の扉を開閉することができるリモコンを開発し、販売。

原告は被告を米国著作権法第1201条(a)(2)違反として提訴。地裁は原告の要求を退けた(2003年11月)。控訴裁も地方裁の判決を認め、控訴を棄却(2004年8月)。

(争点)
 スカイリンク社がDMCA上の責任を有するためには、原告であるチェンバレン社は、以下の点を証明する必要がある。
(1) チェンバレン社がプログラムの有効な著作物の権利者であること
(2) プログラムが技術的手段によって保護されていること
(3) 第三者のアクセスが可能となってしまったこと
(4) そのアクセスが許諾なく行われていること
(5) 可能となったアクセス行為が、著作権法により保護されている権利の侵害、あるいは侵害の助長となっていること
(6) 第1201条(a)(2)に規定される(A)〜(C)のいずれかに該当すること

 (1)(2)及び(3)について、裁判所は条件を満たすと判断。
 (4)については、開閉扉の使用者は、チェンバレン社の製品を購入した時点で既に、製品に含まれるプログラムにアクセスする許諾を得ていると考えられるため、条件を満たさない。
 (5)については、使用者がアクセス回避行為をすることが著作権法第1201条(a)(1)違反を構成しない限りは、スカイリンク社に第1201条(a)(2)に基づく責任を負わせることは合理的でないと判断。
 以上から、以下の結論(概略)を導き出している。

「DMCAは、権利者保有者に新たな権利を創出しているわけではない。また、著作権法が付与してきた権利を剥奪するものでもない。回避行為に係る規定(第1201条(a)(1))、装置の取引に係る規定(第1201条(a)(2))とも、賠償責任の新たな事由を創出したに過ぎない。よって原告は、問題となっている回避装置が、権利侵害を可能としているか、あるいは著作権法上禁止されている行為を可能としていることを合理的に証明しなければならない。本件においては、開閉プログラムの無許諾の使用とスカイリンク社のリモコン販売の関係について、チェンバレン社がきちんと証明できなかったとした地方裁の判断は正しかったと言える。」


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