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文化審議会

2003年10月31日 議事録
文化審議会著作権分科会国際小委員会(第5回)議事要旨

文化審議会著作権分科会国際小委員会(第5回)議事要旨

1  日  時     平成15年10月31日(金)10時30分〜13時00分

2  場  所     文部科学省分館201・202特別会議室

3  出席者
    (委員) 齊藤著作権分科会会長、紋谷主査、石井、上原、加藤、児玉、駒田、関口、大楽、高杉、道垣内、前田、増山、松田の各委員
    (文化庁) 森口審議官、吉尾国際課長、吉川著作権課長ほか

4  配付資料    

       資料1   文化審議会著作権分科会国際小委員会(第4回)議事要旨(案)
  資料2   ウェブキャスティングの実態について(音教授ご説明資料)
  資料3   ウェブキャスティングの実態について(論点の整理)(PDF:63KB)
  資料4    インターネットを通じた著作権侵害に係る国際裁判管轄及び準拠法の問題について(道垣内委員ご説明資料)
  資料5   インターネットを通じた著作権侵害に係る国際裁判管轄及び準拠法の問題について(駒田委員ご説明資料)
      著作権分科会報告用レジュメ
著作権分科会報告用レジュメ2
  参考資料1   文化審議会著作権分科会各小委員会の検討状況について

5  概  要
(1) 開会

(2) 議事
1    ウェブキャスティングの実態について
   音上智大学教授及び事務局から資料2、3に基づき説明があった後、各委員により以下のような意見交換が行われた。

(○:委員   △:事務局)

韓国では放送事業者の権利が強いとのことだが、最近では著作権者等の権利主張も強くなっており、インターネット上での利用に際してはきちんと権利処理するよう強く求められている。
米国において、ストリーミングの場合、同時にアクセスできる件数はどれくらいか。韓国については九千件と聞いたことがある。
詳細なデータは持っていないが、米国ではかなり零細なウェブキャスターも存在している。ただ、ビジネスの発展に伴い、回線も太いものに変えていっている。また、韓国のある放送事業者は、ウェブキャスターへの年間達成評価は百億ウォンとしている。ただし、昨年有料化したので、多少下がったかもしれない。
韓国の場合、放送局の二次サービスという形態が多いが、米国の場合、ベンチャーが多い。反対に、韓国でパーソナル・ウェブキャスターを行っている例、または米国で大手放送局が行っている例があるのか。
韓国でも大学の研究者等によるパーソナル・ウェブキャスターもあるが、ビジネスとしてはなりたっていない。一方、米国では大手もベンチャーとして参入しようとしているが、権利処理の問題で利用できるのはニュース番組だけとなっている。
韓国では権利処理よりもブロードバンド化が重視されているが、画質面でも劣るため流されてもあまり被害がないとされていたが、その後変化はあるのか。
今年に入り有料化した放送局もあったが、これにもっとも抵抗したのは20代の男性だった。つまり、画質が劣っても若者は利用したいと考えている。有料になり、無料のときよりもアクセス数が半減した。
韓国では違法サイトが数多く存在し、若者の人気を得ている。韓国における違法サイトの状況を教えてほしい。一方米国ではローカル局のラジオが他地域での広告料を見込んで一斉にウェブキャスティングを開始したが、採算を取れずやめたと聞いたが、その変遷を説明してほしい。
韓国に違法サイトがあるのは事実であり、かつ、もっともインターネットを活用しているのは若者だと思う。学会などでも問題視はされているが、実際には流通している。
米国が、受動的に入ってきてしまう放送と、能動的にアクセスしなければ得られないウェブキャスティングと一緒に取り扱うという根拠はどこにあるのか。
公式な説明は、21世紀の今日、テクノロジーの進展に沿って対応すべき、としているが、背景としては国内での業界の圧力があるのではないか、と推測している。
大きな配信業者及びISPが加入しているDIMAという団体が、ウェブキャスティングを入れるべきだ、と昨年の夏から積極的に要望しはじめたことから、米国提案に反映されたと思われる。DIMAの主張では、ユーザーの使い勝手からみれば、放送もウェブキャスティングも大して変わらないので保護すべき、としている。
欧米では有線放送とストリーミングとの違いがどこにあるのか、という議論が従来からある。そのため、EC提案には、同時同内容のウェブキャスティングは保護する、となったように思う。
ウェブキャストを放送と同一視できるか、という観点から見ると、放送事業者に関しては、他の権利者の権利を制限している部分を精査すべきである。また、放送法制との関係も慎重に検討すべきである。したがって、日本提案と同様、放送新条約とは別問題として取り扱うべきである。


2    インターネットを通じた著作権侵害に係る国際裁判管轄及び準拠法の問題について
   道垣内委員及び駒田委員から資料4、5に基づき説明があった後、各委員により以下のような意見交換が行われた。

(○:委員   △:事務局)

公法的な性質を有する特許法等と異なり、著作権は私権の一つに過ぎないので、著作権については、「属地主義」としないほうがよく、むしろ著作権の準拠法はベルヌ条約に基づく「保護国法」であると考える。したがって、準拠法所属国と権利所在地が直結するのではなく、一般的な債権等の扱いと同様にすべきである。つまり、たまたま準拠法所属国と権利所在地が一致するとしても、準拠法とは区別して議論すべきである。
著作権とは、その領域の空間上で存在する、と従来から理解されており、それゆえ各国ごとに保護期間等も異なるのだから、「属地主義」を必ずしも否定する必要はないのではないか。また、「属地主義」を取ればすなわち「発信国主義」を取るということではなく、むしろ効果理論的にどこで被害が発生しているのかという観点から準拠法を決定できるのではないか。
インターネット上の問題で権利・効力の領域限定という「属地主義」を取ると必然的に「発信国主義」を取ることになるのではないか。効果理論は独禁法の域外適用などにも適用されているが、これはすでに「属地主義」の概念を脱しているのではないか、と考える。
昨年報告書にもあるように、ベルヌ条約5条2項の「保護国法主義」を取ると、「属地主義」と同じ帰結になることが多いが、インターネット等を考えると「属地主義」では捉えられない問題もあると思う。従って、ベルヌ条約5条2項の解釈を国際的に議論することが必要になってきていると思う。また、保護期間が異なる現状においては、インターネット上で送信された著作物が発信国では保護期間が満了しているが、受信国では保護期間が満了していない、ということもあるので、個人的には受信国法が適用されるのではないかと思う。
権利者としては、国際的なルールが早急に作成されるよう、WIPO等への積極的な働きかけをお願いしたい。


6.   閉会
  事務局から、次回日程等について説明があった後、閉会となった。





(文化庁長官官房国際課)

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