戻る
資料3


放送の暗号化の保護について

朝日放送・上原伸一

1>アメリカ、EUの例
アメリカ・・・1998年デジタル・ミレニアム著作権法により保護
  “アメリカ著作権法第1201条著作権保護システムの回避”
   ・ (a)(1)(A)何人も、本編に基づき保護される著作物へのアクセスを効果的にコントロールする技術的手段を回避してはならない。第1段に掲げる禁止は、本章の制定日に始まる2年間の終了時に発効する。
(a)(3)(A)「技術的手段を回避する」とは、著作権者の許諾なく、スクランブルがかかっている著作物のスクランブルを解除し、暗号化された著作物の暗号を解除し、またはその他技術的的手段を回避し、迂回し、除去し、無効にしもしくは損壊することをいう。
(a)(3)(B)技術的手段が「著作物へのアクセスを効果的にコントロールする」とは、当該技術的手段がその動作の通常の過程において著作物へのアクセスを行うには、著作権者の許諾を得て情報を入力し又は手続きもしくは修理を行うことを必要とする場合をいう。
アクセスコントロールのための技術的手段を回避する製品、サービス、部品等の製造、輸入、公衆への提供等の禁止等。
 
   *
以上、CRIC「外国著作権法令集(29)アメリカ編」山本隆史・増田雅子訳より

EU・・・ディレクティブ2001/29/EC で保護
  “第3章第6条技術的手段に関する義務”
   ・ 1.加盟国は、関係する者が、その目的のためであることを知り、または知るべき合理的な理由を有しながら行う、いずれかの効果のある技術的手段の回避に対して、適切な法的保護を与えるものとする。
3.本ディレクティブの適用上、「技術的手段」という表現は、法律に規定されたいずれかの著作権もしくは著作権に関連する権利、またはディレクティブ96/9/EC第3章に規定された sui generis 権の権利者により権限を与えられていない、著作物その他の目的物に関する行為を、その通常の稼働に応じて防止し又は禁止するよう意図されたいずれかの技術、装置または部品を意味する。技術的手段は、アクセス・コントロールもしくは暗号化、スクランブル掛けのような保護方法またはその他の保護の目的を達成する著作物その他の目的物の変形の応用によって、保護のある著作物その他の目的物の利用が権利者により制御される場合は、「効果がある」とみなされる。
技術的手段の回避を主たる目的とする装置、製品もしくは部品等の製造、輸入、頒布、販売、貸与等に対し適切な法的保護を与える。
 
   *
以上、CRIC「情報社会における著作権及び関連権の一定の側面のハーモナイゼーションに関する欧州議会およびEU理事会のディレクティブ2001/29/EC」
原田文夫訳より



2>日本における放送暗号化の実態
1991年4月〜BSアナログ放送開始(WOWOW、NHK)
   ・ WOWOWは有料放送=個別課金の為スクランブルを実施

1992年5月〜CSアナログ放送開始
   ・ 郵政省は、CSからの直接受信を認可、CS放送事業者は有料放送中心  
 ・ スクランブル、課金管理、加入促進等の為に“プラットフォーム”登場
   →
CSバーン(コアテック方式)、スカイポート(スカイポート方式)

1996年10月〜CSデジタル放送開始
   ・ 3つのプラットフォームが1つに
パーフェクTV、JスカイB、ディレクTV→スカイパーフェクTV1社に
スカイパーフェクTV・・・現在テレビ180CH、ラジオ104CHを運用中。無料CHも有り。又、部分無料放送も実施。
ミュージックバードは、コアテック方式でスクランブル実施。
2002年3月〜110°CSデジタル放送開始
プラットフォームは、プラットワン(22CH)とスカイパーフェクTV2(58CH、データ放送含む)の2つ。

2000年12月〜BSデジタル放送開始
   ・ WOWOW、NHKの他に無料放送5CH、有料放送1CH 計9CH。
2003年4月からは、CCI保護の為無料放送でもスクランブル開始。

2003年12月〜地上波デジタルテレビ開始
      ・ 東名阪の局から徐々にスタート。2006年には全国で実施。アナログとパラで放送を行う。2011年7月24日には地上波アナログ放送は終了。
BSデジタルの無料放送と同様にCCIの保護の為に無料放送でMULTI  2のスクランブルを行う。実施は2004年4月から。


3>WIPOにおける議論
暗号解除権を巡る議論から、保護の現実的対応へ
   ・ WCT、WPPTでの「技術的手段の保護」は、“この条約(又はベルヌ条約)基づく権利の行使に関して”と規定している為、同様な規程ぶりをするには“条約に基づく保護”が必要としてスイス等が暗号解除権を提案。
これに対し、新たな支分権の創設に抵抗有り。
論議が進むに連れ、デジタル環境下の現状に鑑み、“暗号化された放送に何らかの保護を与える”と言う方向に。*別紙参照

WCT、WPPTの技術的手段の保護にはアクセスコントロールは含まれないと言う解釈の定着。
   ・ アメリカは“含まれると解釈しうる”との立場

以上




ページの先頭へ