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文化審議会

2002/11/25 議事録
文化審議会著作権分科会国際小委員会(第5回)議事要旨

文化審議会著作権分科会国際小委員会(第5回)議事要旨(案)


  日  時 平成14年11月25日(月)14時00分〜16時00分

  場  所 文部科学省分館201,202会議室

  出席者 (委員)
齊藤、今村、上原、加藤、久保田、児玉、関口、大楽、前田、山地、山本の各委員
(文化庁)
丸山長官官房審議官、吉尾国際課長ほか

  配付資料  
資料1   文化審議会著作権分科会国際小委員会(第4回)議事要旨(案)
資料2 「視聴覚的実演の保護」についてのWIPOにおける検討状況について
資料3 「放送条約機関に関する新条約」についてのWIPOにおける検討状況について
資料4 文化審議会著作権分科会国際小委員会審議経過の概要(案)
        
  概  要
(1) 新条約の早期策定のために我が国が果たすべき役割について
  事務局から資料に基づき説明があった後、各委員より以下のような意見交換が行われた。

(○:委員  △:事務局)

11月に開催されたWIPO著作権等常設委員会においては、米国案が提出され「ウェブキャスティング」の保護を明確に規定したため、この取扱いが一番大きな問題となった。本問題に対しては、ECは現在までのところ態度を明確にしていない。また、米国提案においても保護の対象となる「ウェブキャスティング」の定義は明確にしていない。一方、「放送前信号」及び「暗号解除行為の規制」については、何らかの保護をするという方向で議論が進んでおり、日本においてもこのようなWIPOの議論に対応し、国内での検討を進めるべき。

  放送については、各国で技術の格差が大きいので、途上国もよく分からないままに米国など声の大きいほうに引っ張られてしまうことを懸念している。

  技術的なバックラウンドについては途上国にも分かるようにきちんと説明しており、米国が大きい声を出したからそちらにすぐ流れる、ということには必ずしもならないと思う。

  我が国の立場として、「ウェブキャスティング」を新たに隣接権の対象とすることについては当然検討すべきであるが、著作者、レコード製作者の権利が既にインターネットに対応したものに拡充され、視聴覚的実演の保護に関する新条約の検討も進んでいることを考えると、「ウェブキャスティング」の問題により放送機関の権利のインターネット対応がさらに遅くなることは適当でなく、このため「ウェブキャスティング」の議論は放送機関の保護に関する新条約とは切り離して行うことが適当との指摘を行っている。

  放送機関と「ウェブキャスティング」の議論を別個にしたほうがいいのでは、という日本の発言は、WIPOでは多くの支持を得ている。

  視聴覚的実演の保護に関する新条約について、「米国修正提案」の(1)について、誰に権利が移転したとみなすのか、といった点だけでなく、誰に権利が原始的に帰属するか、という点まで含む、と解釈していいのか。

  「権原(entitlement)」という概念の範囲については議場で明確には確認されなかったと理解している。しかし、米国の発言からは、原始的な権利の帰属も含めた幅広い概念である、という印象を持っている。

  外交会議においては、権利行使を誰が行うのかという意味で「権原」という言葉を使用したのでははいか。

  「権原」は与えられた権利を意味すると思うが、「付与」という言葉を用いているということは、誰に付与するか、ということまで準拠法の問題として議論するということで、これまでの移転の問題とは異なる可能性がある。もし、そうだとすると、従来の属地主義の考え方を全く変えてしまう考え方となり得る。

  視聴覚的実演の保護に関する新条約について、「米国修正提案」においては、準拠法の連結点として、1製作者が常居所/主たる事務所を有する締約国、2実演家の過半数が属する締約国、3撮影が行われている締約国」の3つが規定されているがその優先順位はどうなっているのか。

  特段の優先順位はなくそれぞれが、準拠法決定の連結点として考えられるというように考えている。また、当該提案は、限定列挙ではなく、例示列挙であり、これら以外の連結点も当然考え得る。


(2)小委員会の審議のまとめについて
  事務局から資料に基づき説明があった後、各委員より以下のような意見交換が行われた。

(○:委員  △:事務局)
  資料4p3「(2)重点対象国の絞込み」について、「我が国の著作物を文化的に受容れやすい土壌がある」の意味がわかりにくいので工夫が必要である。

中国、韓国、台湾で海賊版が多いのは事実だが、音楽やゲームなど、文字に依存する部分は余りないのではないか。漢字圏だから海賊版が流通する、という意見には、文化論的に抵抗感がある。また、7ページ「(1)問題の所在」「(2)準拠法」の「国境を越える著作権侵害」という表現について、国境を越えるのは行為であることから、「侵害行為」とすべき。

文化論について、漢字の問題というよりも、音楽の面では、韓国など特にメンタリティが同じだと思う。結果として文化的に重なるというよりも、共通の土壌があるのかもしれない。加えて技術的基盤がある、というのも重要ではないか。  

言語の共通、というよりも、その国でコンテンツを作る能力がなく、外国から持ってきたほうがコストがかからない国、といったほうがいいのではないか。例えば、インドネシアやマレーシアでは、日本の曲とは意識されずに、現地の歌詞がつけられて利用されている。海賊版を作るのは、実際コンテンツを作成していないために著作者の痛みが分からない国に多いのではないか。

「侵害行為」というように修正する。また、海賊版対策における重点対象国の記述については、ご意見を踏まえ適当な記述を考えたい。

3ページ「(3)海賊版対策を講じる上での問題点」について、放送番組は、アジア全体で二十数本のセットあたり二千〜三千万円で販売し、これをディストリビューターへの配分及び権利処理等した後にテレビ局とプロダクションで分けると、テレビ局の収入は一千万円あるかないかである。一方、一本の海賊版を取り締るのには五百万円かかり、コスト・パフォーマンスの面から、消極的にならざるを得ない。

5ページ「4欧米諸国との戦略的連携」について、「人的資源」という記述は、BSA等から人材を引き抜くことを推奨しているとの誤解を招く可能性があり、表現に工夫が必要である。また、11ページ「(2)今後の基本的な対応」一行目について、視聴覚的実演の保護に関する議論の焦点は、権利のインターネット対応ではなく、むしろ実演家の権利の製作者への移転ではないのか。

  放送機関の保護に関する新条約については、WIPOインターネット条約の一つとして、ベルヌ条約及びローマ条約で保護している著作権者及び著作隣接権者の保護をインターネットに対応したものにアップロードしよう、というのがそもそもの出発点である。確かに現在論点となっているのは「権利の移転」の部分であるが、それは付随してでてきた論点であり、あくまでも本条約の大義名分は、視聴覚的実演家の権利のインターネット対応であると考えている。

  「権利の移転」について国際条約上どのように定めるのか、それを受けて国内的にどのように権利者と利用者との間を調整していくのか、ということは慎重に検討すべきであり、我が国として結論を得ていないのではないか。

  「更新」という表現は適当ではない。放送機関の権利については「ウェブキャスティング」の問題等があるが、視聴覚的実演の保護に関する新条約については、むしろ積極的かつ早急に日本の立場を固めるべきだと思う。

  条約対応という意味での日本の立場は既に固まっている。「映像分野の著作権に係る諸問題に関する懇談会」で議論が行われ、我が国としての条文案も提出している。条約への加盟に際して、国内著作権法をいかに改正していくかという点については、文化庁の立場としては、視聴覚的実演に関する実演家の権利を歌手のような音の実演家の権利と同様のものにする、具体的には、第九十一条以降に記載している「ワンチャンス主義」の条文を削除することになると考える。ただし、実演家と製作者の間に契約秩序がないままこのような改正を行うと、映画製作に支障が出ることが想定されるため、米国のように実演家と映画製作者との間で団体協約的なものを定めて、この協約に沿った形でしか契約しない、という契約秩序を確立した上で、「ワンチャンス主義」の条項を削除していくことになると考える。

  その問題について、条約については、報告書に記載されている内容でかまわないと思うが、国内的にはまだ調整が必要である、ということを十分ご理解いただきたい。

  4ページ「(3)海賊版対策を講じる上での問題点」第3段落について、「捜査機関のモラルに問題がある場合があること」という記述は強すぎる気がする。また、3ページ「(3)海賊版対策を講じる上での問題点」について、コスト面の問題があるのはわかるが、権利者が自分の権利を守るのはあたりまえで、著作権だけ特別扱いはできない、という意見もあるかと思う。したがって、権利者も積極的に対応をしていく、その上で支援もいただきたい、という趣旨の記述にしてはどうか。

  「捜査機関のモラルに問題がある」という点について、この報告書は、文化庁ではなく、国際小委員会の報告書であること、知的財産保護フォーラム官民合同訪中団でも正式に指摘するつもりであること、から、記述しても問題ないと考える。

  「2  インターネット上の著作権侵害に対する準拠法及び国際裁判管轄」及び「3  新たな条約策定等への参画」については、具体的な姿勢を打ち出したほうがいいのではないか。具体的には9ページ「(4)今後の方向性」3行目にある「権利者の権利行使を容易にするようなアプローチ」について、提案もあったと思うので、記述してほしい。また、6行目「これらの点が訴訟上の争点となっている例は必ずしも多くない」という記述においては、この問題が複雑であるために訴訟の争点となっていないのか、それとも他の解決方法があるので争点となっていないのか、が不明である。

  5ページ「3国際機関の積極的活用」について、WIPOの正式訳称を「世界知的所有権機関」としているが、知的財産戦略大綱で「知的所有権」を「知的財産権」に統一しようとしている点について、文化庁はどのように対応していくつもりなのか。

  文化庁でも大綱に基づき、知的財産権に統一していくつもりだが、固有名詞については混乱を避ける意味で「所有権」という言葉を引き続き使っていきたいと考えている。いずれにしても、既に確立した国際機関の名称、既存の条約について、どこまで遡って「知的財産権」という言葉に変更するかについては、外務省で検討中であると聞いており、文化庁もその結果を踏まえ対応したい。

  7ページ「7在外公館等の積極的活用」について、「…模倣品への対策と…海賊版への対策は、本質的に類似の点が多いため、」という点については、同意できない。情報に価値がある海賊版と模倣品は異なるという認識の下、知的財産保護フォーラムと別個にコンテンツ海外流通促進機構を立ち上げたはずである。


  閉会
  事務局より、次回日程等について説明があった後、閉会した。



(文化庁長官官房国際課)

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