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文化審議会

2001/11/2 議事録

文化審議会著作権分科会総括小委員会(第5回)議事要旨

文化審議会著作権分科会総括小委員会(第5回)議事要旨

平成13年11月2日(金)
10:30〜12:00
三田共用会議所大会議室C・D・E

出席者

(委員)

北川分科会長、齊藤主査、大山委員、渋谷委員、道垣内委員、中山委員、野村委員、松田委員、紋谷委員、山口委員

(説明者)

上野幹夫  (社)日本書籍出版協会著作・出版権委員会委員長
早川義英  同幹事
久保田裕  (社)コンピュータソフトウェア著作権協会専務理事

(事務局)

天野長官官房審議官、岡本著作権課長、村田国際課長、その他の担当官

1.開会

2.議事

はじめに、議事及び配付資料の確認が行われた。

(1)著作権法制に関する基本的課題について

  事務局及び説明者から、それぞれの資料に基づき説明があった後、各委員による以下のような質疑応答、意見交換が行われた。

【委員】

新古書店が書籍の返品をすることはあるのか。

【説明者】

新品販売も併せて行っている店以外は、あり得ない。

【委員】

書籍の返品期間はかなり短いと思うがどのような実態か。新古書店の品を返品するとはどのようなケースか。

【説明者】

業界の慣例として6ヶ月間という期間があるが、実際には大部分が期間に関わらず返品できる。注文品はいつか返品できるという慣習となっている。出版社としてもなるべく長く本を店頭に置いてほしいという事情があり、特にコミック本、文庫本は事実上返品期間がない。よって、新古書店で扱われた品が何らかの形で新刊書店に還流した場合、それを返品するというケースも出てくる。

【委員】

中古品流通問題を考えるに当たり、新古書店が問題であり、伝統的古書店は問題ないということだが、伝統的古書と新古書を分けて対応すべきと考えているのか。

【説明者】

当協会としても難しい問題だと認識している。現実として両者を分けることは不可能であろうが、例えば、私案として、奥付で期間を示すことによって分けることも考えている。

【委員】

著作権の問題と並行して、一定の期間をおいた品を販売する中古市場というものを発展させるという視点も、必要ではないか。経済的利益のみが話題に挙がっているが、これは広く文化の問題でもあろう。新しい著作物のみを厚く保護しすぎるという考え方もある。

【説明者】

そのような観点から、文化の振興に資する活動も考えており、例えばゲームソフト会社であるエニックスでは9ヶ月間は中古販売を控えてもらい、その後は報酬請求権的な権利をもつという契約を結ぼうと努力している。ただ、現場では死活問題となっているので経済面を考えざるを得ない。

【委員】

伝統的古書店で、新品が安く買えるということがあるのか。またなぜそのようなことができるのか。

【説明者】

古書店の業界の中でも、古文書のような歴史的古書を扱うものと、単なる古本を扱うものとがあり、後者がまさにそれである。出版社としては、従来の流通の形態をおかすものとして懸念しているが、それよりも現在は新古書の問題が深刻化している。新刊書店と新古書店とで経常利益や粗利率を比較するとそれが表れている。

【委員】

新品が発売された直後に中古品として流通するというのは、ほとんど貸与に近い状況だと思うが、書籍、雑誌についての貸与権を当分の間適用しないとしている附則4条の2については、どう考えているか。

【説明者】

もちろん対外的にその廃止を訴えたいのであるが、それが認められても依然として出版社には権利がなく、実効性を確保する手段がないという点で、協会の一つの意思としてまとまりきっていない。

【委員】

中古品流通問題についての欧米やアジアの状況はどうなっているか。

【説明者】

ゲームソフト業界に関して、東南アジアにおいては、中古品よりも海賊版の問題が深刻であり、そちらで手いっぱいといった状況である。他方、アメリカでは中古ゲームの販売が伸びており、中古品流通の問題が深刻化していると把握しているが、アメリカではファーストセールドクトリンが非常に堅固に存在しているので、我々ソフトウェア業界にとっては日本より厳しい環境にある。

【説明者】

書籍業界に関して、ブックオフがアメリカ(ニューヨーク)に展開したと把握している。アジアでは貸本屋の割合が新刊書店と同等数あるが、製作、流通の段階において貸本用と販売用とを区別しており、価格の面でも考慮されている。また、マンガ喫茶が、他のサービスと一体となって複合アミューズメント化している。これに対し、ゲーム機やビデオ等は一時店内から撤去し、関係者間での話し合いの場を持とうという動きがあるが、書籍に関してはそれが全くない状況である。

(2)総括小委員会の審議経過の概要(案)について

【委員】

音の実演に関する人格権について、その表現の仕方を「音の実演に係る実演家の人格権について」と変えた方がいい。

【事務局】

ご指摘の通り修正する。

【委員】

条約の引用の仕方を、全ての部分において条文番号を引く形で統一した方がいい。

【事務局】

ご指摘の通り修正する。

【委員】

条約の「策定」という言葉は、適切な他の用語に変えた方がいいのではないか。

【事務局】

条約の「採択」という形に直す。

【委員】

「死後の人格的利益の保護」について、「少なくとも財産的権利が消滅するまで存続」するというのは、表現が曖昧だが、権利の存続期間についてどう捉えるのか。「少なくとも」が存続期間にかかるということなら、その点をもう少し詳しく書けないか。

【事務局】

これは条約上の文言そのままであり、「少なくとも」とは、それより長いのは構わないという意味である。著作者人格権にならって規定する予定であり、また、少なくとも国内法ではいつまで権利が存続するかをはっきり示しているので、問題はないが、条約の引用にはカギ括弧を付けてわかりやすくするなどの工夫をする。

3.閉会

  「文化審議会著作権分科会総括小委員会審議経過の概要(案)」については、本日の委員からの意見に基づく修正を主査に一任した上で、その他の部分については原案の通りとすることで、了承された。
  また、事務局から「総括小委員会審議経過の概要」の取扱い及び今後の日程につき連絡があり、閉会となった。

(文化庁著作権課)

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