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文化審議会

2001/07/30議事録

文化審議会著作権分科会総括小委員会(第2回)議事要旨

文化審議会著作権分科会総括小委員会(第2回)議事要旨

平成13年7月30日(月)
10:30〜13:00
尚友倶楽部1・2号会議室

出席者

(委員)

北川分科会長、齊藤主査、大山委員、岡村委員、小泉委員、渋谷委員、山口委員

(事務局)

銭谷文化庁次長、天野長官官房審議官、岡本著作権課長、尾崎マルチメディア著作権室長、その他の担当官

1.開会

2.議事

  はじめに、事務局の異動について報告があった後、議事及び配付資料の確認が行われた。

(1)WIPO実演・レコード条約締結に伴う著作権法改正について

  事務局から資料に基づき説明があった後、各委員による以下のような質疑応答、意見交換が行われた。

【委員】

  音の実演家の同一性保持権に関し、「やむを得ない改変」とは具体的にどういうものを想定しているのか。

【事務局】

  音の人格権侵害とは、音の周波数を変える(声の質を変えるなど)ぐらいしかないというのが外交会議での議論である。それが「やむを得ない」場合とは、声紋分析など研究目的でデジタル処理する際に、一部分を切り取ることなどが考えられる。

【委員】

  歌いながら踊る場合、音だけを変えるのは音の人格権の侵害か。

【事務局】

  音だけを取り出して改変すればその通りである。映像と一体となったものを変えるのは視聴覚的実演の改変となる。

【委員】

  今回は条約に合わせた改正ということだが、国内法の体系も考慮すると、音に限って措置することが本当に適切かどうか疑問が残る。

【事務局】

  WIPO実演・レコード条約は視聴覚的実演に関する条約と深い関係があり、我が国としては両方成立すればまとめて国内法の措置をするつもりであったが、後者が未だ成立しない状況なので今回前者を先に措置することとした。既に我が国の著作権法は技術的保護手段や権利管理情報について規定を設けるなどほとんどの点において条約の基準を満たしており、今回は残りの数点に関して最低限必要な改正事項を挙げさせてもらっている。委員におかれては、このWIPO実演・レコード条約締結のために必要な改正事項以外の事項についても、適宜ご議論いただければ幸いである。

【委員】

  視聴覚的実演については現在はどのような状況なのか。

【事務局】

  人格権については、最近の情報化の進展に伴い改変が容易になったことから、権利者からは権利を強めるべき、利用者からは弱めるべきという意見がある。著作者に関しては「その意に反して」改変を受けないという権利者の主観を取り入れた強力な権利を規定していることについて、昨今改変が行いやすい状況となっていることから見直すべきかどうかといった議論がある。このように人格権の問題は関係者にとって大変センシティブな問題となっており、特に映像に関するコンテンツの創作、利用が増えてきていることから、視聴覚的実演に関する実演家の人格権に関しては、条約の成立前に前倒しで国内法を改正できるかについて、現在関係者間で協議を行っているところである。本小委員会では、法的観点から条約締結のために改正が必要となる事項とそれ以外の事項という二段構えでご議論いただきたい。

【委員】

  実演家の同一性保持権を弱める方向の関心が強いようであるが、仮に実演家の人格権の内容を「名誉声望保持権」とすると、かえって保護範囲が広がり、権利が強くなる可能性があることにも留意する必要がある。

【委員】

  実演家が存しなくなった後における人格的利益の保護について、生きている間は想定しなかった利用形態により、その実演家が生きているならば侵害となるような場合、提示されている規定案でカバーできるのか。

【事務局】

  「著作者が存しているときに侵害となるような」ではなく「著作者が存しているならば侵害となるべき」という文言であるので、技術の進歩に伴った侵害も現在の案文でカバーできると考える。

【事務局】

  現行著作権法第60条は著作者の主観を推定しているのに対して、第113条は著作者の主観に関わらず名誉声望を害する行為を侵害とみなしている。仮に実演家の人格権は客観的な名誉声望保持権だと考えた場合、死後の人格的利益の保護に関して、第113条に相当する規定は必要だが、第60条但書きに相当する規定は要らないという議論もあり得る。

【委員】

  主観を入れるかどうかで保護の強弱を一概に割り切ることはできないので注意する必要がある。また、著作権法における人格権の「その意に反して」について、権利濫用や信義則などの一般条項の適用も当然受けると考えるべきである。

【委員】

  死後において生きていたならば侵害となるべきということを立証するのは難しいと考える。生きている間に契約を結んだが死後において侵害となるべきとされた場合、どう考えるのか。

【事務局】

  死後の人格的利益について整理し直すと、まず、当事者間に契約があれば契約が優先される。契約がなかった場合、現在の著作者人格権は著作者の主観を考慮して権利侵害を判断する。そして著作者の死後の場合は、著作者が存しているとしたならばという前提で、かつ著作者の主観を考慮して人格権侵害を判断することになっている。

【委員】

  著作者人格権と実演家の人格権とを全く違うものとして捉えるのか。

【事務局】

  著作者人格権の方は、著作者の主観を取り入れている点で、ベルヌ条約の水準より高いレベルで保護を与えていることにより、実演家の人格権とは異なってくる。

【委員】

  なぜそのように保護の水準を変えるのかという説明がなければならない。

【委員】

  今日はご指摘をいただいたということで、今後時間をかけて詰めるべき大きな課題である。「意に反する」という言葉が強調されるようであるが、法律論としてはもう少し冷静に議論する必要がある。「同意」は常に主観的とは限らず、同意の推断や権利の濫用という概念もある。権利者の意に反するというやみくもな主張が認められることは考えられない。客観的人格権といっても意思を全く無視するわけにはいかない。

【委員】

  資料において、条約名が「WIPO実演・レコード条約」となっているが、「世界知的所有権機関」という用語は使わないのか。

【事務局】

  「WIPO実演・レコード条約」というのは仮称であり、正式名称は公定訳を作成する際に決まる。

【委員】

  共同実演について、現実として実演家全員の合意を得るのは難しいと思う。

【委員】

  レコードの保護期間の変更について、レコードの変更だけのために条文を複雑にするのか。もう少しすっきりした規定にならないか。

【事務局】

  規定の趣旨は、昔は固定してからすぐ売っていたのが、時代が移り変わるにつれて固定から発行までの期間が長くなってきたので起算点を変える必要があるということである。規定ぶりについては今後検討していきたい。

【委員】

  現行規定にある「行為が行われた日の属する年の翌年から起算して」という文言を入れないと、現在の案では保護期間が逆に短くなってしまうのではないか。

【事務局】

  ご指摘の通りであり、修正したい。

(2)著作権法制に関する基本的課題について

  事務局から資料に基づき説明があった後、各委員による以下のような質疑応答、意見交換が行われた。

【委員】

  著作権法にも、間接侵害行為に関する規定を早く追加すべきである。カラオケ装置、メモリーカード製造・販売などの行為に網をかける必要があるのではないか。また、スターデジオ訴訟の問題があり、一審判決も立法政策上の問題であると述べている。以上を論点として追加したい。

【委員】

  裁判外紛争処理制度について、WIPO仲裁センターでの処理件数はどのくらいか。

【委員】

  著作権については毎年数件という状況である。ドメインネーム関連の紛争については数多くあり、ホームページを見ると参考になる。

【事務局】

  スターデジオ訴訟に関しては、放送小委員会においてデジタル放送に係る実演家・レコード製作者の権利について検討中である。スターデジオのように、MDの録音時間である74分ぴったりの時間で、ナレーションを入れずに同じものを繰り返し流しているようなものは、録音することを前提としているものであって従来の放送とは異なると考えられることから、レコード製作者の放送に関する報酬請求権を許諾権に変えることが検討事項に挙がっており、現在、どのような形態の放送について許諾権を付与すべきかについて、実務的な方法も含めて関係者間で協議しているところである。その結果を踏まえて、少なくとも一部分について許諾権の導入を検討したいと考えている。

【委員】

  どれも大変大きな論点であるが、挙がっている論点の検討順序はどうするか。

【事務局】

  一つを集中的に議論して結論を得てから次に進むことにするといつまでたっても終わらないので、仮に挙がった項目全部を検討するのであれば、毎回1〜2つずつ議論して一通り検討するなど、進め方についてもご議論いただきたい。

【委員】

  タイプ別に分類できると思う。「契約秩序の構築と著作権法の役割」「紛争処理の在り方」は現実にある実務との絡みの問題である。一方、「著作権と著作隣接権との関係」などは法技術的な理論上の問題である。また、「「商業用レコード」という概念の必要性」などはデジタル化・ネットワーク化関連の問題である。

【委員】

  次回にどの辺りをやるかを決めてもらえると勉強しやすい。

【事務局】

  では次回は、既にある実務と絡んでわかりやすいということから、よろしければ「契約秩序の構築と著作権法の役割」「紛争処理の在り方」を中心に始めたい。

【委員】

  コピーガードキャンセラーの製造販売行為は、刑事罰は科せられるが、民事救済の対象にはなっていない。この問題もスターデジオ問題と共通する点があり、放置することはできない。

【事務局】

  分類すると、技術の進展に伴った権利侵害に対する救済措置ということであろう。

【委員】

  検討課題を3つに分類して整理すると、Aグループとして「著作権と著作隣接権との関係」「公衆伝達系統の権利の整理・統合」「権利制限規定全体の在り方」、Bグループとして「中古品流通と著作権との関係」「映像の著作物の保護の在り方」「「商業用レコード」という概念の必要性」、Cグループとして「契約秩序の構築と著作権法の役割」「紛争処理の在り方」ということになろう。今日提案があった間接侵害の問題はBグループであろう。今後の検討スケジュールはどのようになっているか。

【事務局】

  年末までに著作権分科会の審議のまとめを作成するために、10月には各小委員会のその時点での検討状況をまとめたい。ただ、本小委員会の「著作権法制に関する基本的課題について」は大きな問題であるので、その後も引き続き検討をお願いしたい。

【委員】

  次回の会合について、事前に議題と議案を見せてほしい。

【事務局】

  なるべく資料を事前に送付したい。

3.閉会

  事務局から今後の日程について説明があった後、閉会になった。

(文化庁著作権課)

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