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著作権審議会

 2001/07/17 議事録

文化審議会著作権分科会放送小委員会(第2回)議事要旨

文化審議会著作権分科会放送小委員会(第2回)議事要旨

平成13年7月17日(火)
10:30〜13:00
三田共用会議所大会議室

出席者

(委員)

北川会長、半田主査、上原委員、大塚委員、加藤委員、齊藤委員、多賀谷委員、田名部委員、寺島委員、道垣内委員、東郷委員、生野委員、宮下委員、山下委員

(事務局)

天野長官官房審議官、岡本著作権課長、村田国際課長、尾崎マルチメディア著作権室長、その他担当官

1.開会

2.委員及び事務局の異動について

  事務局から、社団法人日本レコード協会千葉卓夫委員から生野秀年委員に委員の変更があった旨報告があり、その後、事務局の異動の報告が行われた。

3.議事

(1)放送事業者の権利に関する新条約への提案について

  事務局から、5月に行われたWIPO常設委員会における放送事業者の権利に関する日本政府の提案について報告が行われた後、以下のような意見交換が行われた。

【委員】

  今回の会議で日本政府提案が議論されたことにより、サーバを介すか介さないかでインタラクティブ送信かどうかを判断するという日本型の考え方が、世界的に理解が進んだと思う。また、EUが提案をする準備をしており、そのドラフトを見ると、放送前送信の保護や異時の再放送等についても提案が入っていたが、今回は提案されなかった。その関係から、議長から、EUに対して10月までに条約文形式の提案をするようにとの特段の督促がなされたと理解している。

【委員】

  「放送」は英語で「ブロードキャスティング」だが、他に「ブロードキャスト」という言葉もあり、日本語訳では両方「放送」と訳している。実は、ローマ条約でも「放送」と訳しているが、いまさら言葉を分けられないのか。

【委員】

  放送機関の定義の部分だが、委託、受託という日本の放送事業の事情を考えると、放送事業者でない事業者も、「放送機関」という一つの概念でまとめきれるか疑問に思う。そこは条約の中でどう説明されているのか。

【事務局】

  放送の定義だが、この訳文で分かりにくい部分があれば訂正したい。また、放送機関の定義は、結論がでた訳ではないので、この部分も併せて議論いただきたい。

【委員】

  放送自体を行為として捉えるならば、その行為の対象は表現物なので、それを信号化した放送前の信号も放送後の表現物も内容としては重なる。放送という行為を捉えながら、ウェイトがその内容、コンテンツに入っていくので、概念を整理しなければ隣接権制度自体が空洞化してくると思う。

【事務局】

  少なくとも放送された部分は保護されるが、放送前の信号を全て保護している訳ではない。放送に使われたかどうかを事後的に検証した上で、放送に使われている部分のみ保護するということも一つの考え方としてあると思う。この部分も引き続き議論いただきたい。

【委員】

  条約文7条に関して、放送した後のものしかわが国では保護しないということか。

【事務局】

  条約文7条は、放送局によって放送されたものを、そのままサーバにアップロードして誰でも見られるようにすることであり、この放送という概念には、放送前信号を入れていない。

【委員】

  放送前信号を保護するかどうかの議論は、また別途あり得ると考えてよいか。

【事務局】

  放送前信号を保護することが別途決まれば、当然、スポーツ中継の放送前の信号を無断でアップロードする行為についても、ここで押さえるという形になると思う。したがって、放送前信号の議論の可能性を排除するようなものではない。

【委員】

  現地の会議で聞いていたところ、各国の放送事業者の理解は、日本の条約提案の条約文になっている部分に関しては、放送されたもののみの保護で、放送前信号の保護は前書きで「更に検討すべきである」という表現しか入っていないという理解をしていたと思う。

【委員】

  わが国著作権法で「放送」と言った場合には、放送する行為を言っているものもあれば、放送されたもの、放送用に固定したものを言っている場合もある。このような概念整理を今後、本小委員会でも行ってほしい。条約案の修正を行う時にも考えた上で行う必要がある。

【委員】

  わが国著作権法は、「放送」を「送信すること」ではなく「送信」と定義しているが、送信可能化は、「情報を入力すること」や「行うこと」という表現になっている。「〜すること」といった場合は、行為そのものであるが、「送信」といった場合には、「送信すること」、「送信そのもの」の2つの読み方が可能と思われる。このあたりの定義は区別しているのか。

【事務局】

  わが国著作権法では、「放送」という言葉を、「放送すること」と「放送された信号」という両方の意味で使っている。97年の法改正で、放送の中には無線の自動公衆送信は含まれないというところまでは整理したが、名詞か動詞かというところは解釈で判断するしかない状況であり、一度整理しなければならないと思う。

【委員】

  固定という言葉の意味も、放送との関係で洗い直しをする必要があると思う。今日における技術状況の中で、どういう技術を使って固定されたものなのかというチェックが必要になると思う。それも併せて検討いただきたい。

(2)放送番組の保存について

  事務局から、放送番組の保存について説明があった後、次のような意見交換が行われた。

【委員】

  放送でない送信の形態が出てきた場合、放送のための一時的固定の制度を残すと、他の事業者との関係でアンバランスが出てくると思う。当事者間の努力によって契約ルールを作る方法もあると思うが、今後は、保存している番組だけではなく、最初から番組の全てに対して二次利用ができる仕組みができてくると思う。

【委員】

  我々放送事業者は、ほとんどの場合、許諾を得て放送番組を保存しており、44条の一時的固定はそんなに活用していない。しかし、その番組の構想が後に役立つことも多いので、許諾が得られないから保存できないのでは困る。そういう意味で44条は是非必要である。

【委員】

  簡単に保存と言うが、保存することは非常に大変なことである。文化政策推進会議で発言されたのは、事情を知らない人が勝手に言っているのだと思う。

【委員】

  放送番組の保存は、そのほとんどが権利者団体と協定等を結ぶことによって、事前に許諾を得て録音、録画を行っている。しかし、許諾が得られない場合もあるので、一時的固定の制度はしばらく維持してほしい。番組によっては、最初から録音、録画の処理が済んでいるものや、それだけで成り立っているものも増えているが、放送番組の二次利用の問題は、法で一律に制限するのではなく関係事業者とも協同しつつ、ルールを作っていくことが望まれると思う。

(3)放送小委員会の検討事項に係る審議経過の概要(報告)に盛り込むべき事項として想定されるもの事務局から、放送小委員会の審議経過の概要に盛り込むべき事項について説明があった後、質疑応答が行われた。

【委員】

  例えば、ケーブルテレビやインターネットにしても、その一つ一つの機能を整理しなければ、既成事実に則っただけの解釈が拡大する可能性が高いと思うが、今回の経過報告は、どの範囲について整理するのか。

【事務局】

  本小委員会の報告書には、こういうことを議論したという報告、その中には検討事項や将来の事項、場合によっては、法改正事項などを盛り込んだ事項が入ると思う。放送小委員会の議論の範囲という意味であれば、放送だけで放送以外のことは議論しないということになる。

4.閉会

  事務局から今後の日程について説明があった後、閉会となった。

(文化庁著作権課)

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