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文化審議会

2001/09/19 議事録

文化審議会著作権分科会情報小委員会複製ワーキング・グループ(第3回)議事要旨

文化審議会著作権分科会情報小委員会複製ワーキング・グループ(第3回)議事要旨

平成13年9月19日(水)
10:30〜13:00
三田共用会議所大会議室

出席者

(委員)

紋谷座長、金子委員、木村委員、久保田委員、後藤委員、齊藤委員、佐々木委員、生野委員、松田委員、山地委員

(事務局)

天野長官官房審議官、岡本著作権課長、村田国際課長、尾崎マルチメディア著作権室長、その他の担当官

1.開会

2.議事

  •   山地委員から、一時的蓄積を複製と認めることにより不都合が生じる場合、久保田委員から、一時的蓄積を複製と認めたとしても例外として認めるべき利用はどんなものがあるかについて説明が行われた。
      以下、質疑応答が各委員よりなされた。

【その他の委員】

  違法複製物であることを知っている悪意のユーザーが業務上使うことをどうやって抑えればいいのかという点では、両者の問題意識はそんなに差異はないのではないか。

【説明を行った委員】

  一時的蓄積を複製と認めて許諾権を与えなくても、113条2項のような規定など、いくらでも手段はあるのではないか。複製とする必要性が理解できない。詳細に検証して、例外規定を設けていくと、複製としない限り救われないケースは残らないのではないか。

【説明を行った委員】

  技術の進歩によって著作権者の経済的利益を損なう利用形態が出現することに対する危惧感があり、まずは大きく権利を被せてほしいという意見である。善意無過失を除外すれば、複製と認めることにより、ユーザーに迷惑をかけることはビジネス上ほとんどあり得ないと考える。

【その他の委員】

  悪意でビジネス上使うことについては現行法でもある程度カバーされていると思う。技術の進歩によってどのようなものが複製といわれてしまうのか想定できないという問題点もあり、限定的な権利制限で果たしていいのか。善意無過失の証明は実際に立証することは難しいのではないか。

【説明を行った委員】

  善意無過失の証明は著作権法第113条の2に同じような規定がある。

【その他の委員】

  技術的なことに着目して整理するのは、能率的でないし煩雑でもある。通常の使用の過程でおこる蓄積は当然に著作権法の問題ではないが、この蓄積を再利用する場合には経済的価値が生ずるとして、複製権侵害で処理をする途はある。

【その他の委員】

  一時的蓄積から経済的価値を損ねるような場合、更に別の用途として用いる場合には必ず複製が生じるので、複製権で抑えられると考える。

【その他の委員】

  アクセスコントロールの問題ではないかという気がする。著作権の世界では馴染みにくいと思うが、その点にも踏み込んだ議論が必要になると思われる。

【その他の委員】

  アクセスコントロールの話は著作権法の概念を大幅に変える必要があるので、現実的な対応としてはRAMへの蓄積を複製と解することになるだろう。

【その他の委員】

  ほとんどの事例は現行法で十分対応が可能である。技術の進歩による危惧感については具体的な事例がないし、許諾権という強い権利を付与するのは時期尚早である。

【説明を行った委員】

  各事例について行為の主体は誰かということを明確にしていただきたい。インターネットカフェの事例にしてもインターネットカフェが複製をしているわけではない。仮にそうだというのであれば寄与侵害みたいなものを認めろということになり、一時的蓄積を複製とするかどうかの議論を超えてしまう。

【その他の委員】

  RAMへの蓄積を複製と認めなくても、おおもとの部分で権利を抑えればいいのではないかという話は確かにそうであるが、実効性の部分で抑えることができない問題もあるわけで、その点をどう考えるかということも検討しないと机上の空論になる。

【説明を行った委員】

  その点は勿論そうで、だからこそ、一時的蓄積を複製を認めないと困る実例をあげてほしいと言っている。今のところ理解できる事例は一つもない。

【その他の委員】

  一時的蓄積は複製でないという結論や、RAMへの蓄積はすべて複製であるという結論を出すことは避けなければいけないと思う。

【その他の委員】

  立法上何をもって複製とするかは大変難しい。結局各事案ごとに利用なのか使用なのかを司法裁判所に委ねるしかないと思われる。

【その他の委員】

  一時的蓄積を複製と認めなければならない事案は一つだけあって、違法な複製物をネットで入手し悪意で事業上使う場合を抑えなければならないという要請はあると思う。

【説明を行った委員】

  その点は全く同意できるが、一時的蓄積を複製とみなして許諾権を与えなくても現行法で十分対応可能であろう。

【その他の委員】

  ビジネス的に使用とは具体的にどのような場合があるのか、現行法として権利が働かないようなものとしてどういったものがあるのか、詰める必要がある。

【説明を行った委員】

  企業が1つの許諾を得て、同一構内の中でLANでつないで配信し各端末のコンピュータで新聞記事を見る行為、これはハードディスクにダウンロードしない限り、そういう利用ができるし、5,6人であれば上映権もかからない。

【その他の委員】

  その場合も見る行為を抑える必要ななく、LANの中のサーバーに蓄積する行為を抑えればいいのであって、典型的な複製権侵害になるのではないか。

【説明を行った委員】

  ハードディスクへの複製の許諾は一回だけだが、端末で繋がっている分だけ見れてしまう点が問題である。

【その他の委員】

  サーバーで蓄積して不正の自動公衆送信のところで抑えればいいのではないか。

【事務局】

  端末で繋がっている部分の差止め請求はできないのではないか。権利侵害が終わっているからである。その部分は同一構内の送信という論点で解決するのか、一時的蓄積の論点でいくのかということであろう。

【その他の委員】

  違法送信、それも条約非加盟国からの送信をわが国で受信すると、送信権の部分でチェックすることはできないので、受信の段階を抑えることになるのかという問題はある。

【その他の委員】

  条約非加盟国の違法アップロードについては国際的にはどのように解決しようとしているのか。

【事務局】

  加盟国を増やすことである。

【その他の委員】

  現行法で解決できない、一時的蓄積を複製としなければならないような事例が本当にあるのか甚だ疑問がある。

【その他の委員】

  違法と認識しつつビジネス的に使う者をやはり抑える必要があり、これは113条2項的な思想である。ユーザー側で抑えなければ違法なコンテンツや違法なソフトウエアが流れることは防止できないと考える。例えばみなし侵害規定を作ることにより真の目的はユーザー側に送信する違法サイトビジネスを立ち上げさせないという機能を著作権法にもたせることができるかどうかの議論になると思う。

【その他の委員】

  実務やビジネスの動向、裁判例などのファクターで判断する部分があるので、あまり画一的に結論を出すと、ビジネスの動きを含め社会が硬直化すると思われる。

【事務局】

  113条2項は著作権を侵害する行為をみなすと書いてあるが、これは複製権侵害とみなすという規定である。今問題になっている状況を防ぐ場合も複製権侵害とすることでよいのか。

【説明を行った委員】

  それでよいと思う。RAMかどうかは本質的な問題ではなく、一時的過渡的なものなのかどうかということが本質部分である。最後は司法の判断に委ねるしかないと考える。

【その他の委員】

  ネット上でビジネス的に使われるというのは頒布に相当するようなものと思われるので113条1項2号的な感じと思う。

【その他の委員】

  113条2項は、インターネットで配信されたものを受領してRAMに入っているものに対しては適用にならないと思う。

【その他の委員】

  複製か複製でないかではなく、著作権法上手当てが必要かどうかという観点で考えるべきである。

【その他の委員】

  プログラムだけでなく、コンテンツも同じルールにすべきではないのか。

【その他の委員】

  113条1項1号についても、将来の立法論としては輸入だけでなく送信なども含めるかということが出てくるのではないか。

【説明を行った委員】

  113条はみなし規定なので、複製と解すべきとの主張とは違うため、あまり言いたくはないが、違法と知って利用する行為を抑えることを検討していただけると幸いである。

【その他の委員】

  コンテンツを含めるということになると、コンテンツに使用権を認めることになる。デジタルのコンテンツの再生を複製権で制限することになるとアナログはどうするかという議論になり、視聴といった使用行為自体を抑えるというような話が進むのではないかという危惧がある。

【その他の委員】

  視聴それ自体の使用行為を抑えるべきとは思っていない。現行法で抑える手段は公衆送信権・送信可能化権等とあるが、著作権ビジネス秩序の構築のために、ユーザー側で違法なものを使わせないという法制を考えるべきではないのか。

【その他の委員】

  現行法で権利の及ばない使用行為に果たして権利を及ぼすことが本当にいいのか疑問がある。

【事務局】

  113条2項というものは、複製権侵害のものを使っている人に対しても複製権侵害を問うもので、違法送信についても同じ考えでいくのか、コンピュータプログラムに限らず、コンテンツに対しても適用させるのかという大きな問題がある。アクセス権についてどう考えるか、デジタルとアナログの関係をどう考えるか等、今すぐ結論が出る問題ではない。

【その他の委員】

  違法なものをビジネス上使うことについては、コンセンサスが得られるのではないか。例えばソフトウエアを会社の中でたくさんのコンピュータで使わせているとか、違法サイトから流れてきた音楽をPC上に流して、休み時間中に自由に使えるようにする等がある。

【その他の委員】

  音楽の例は演奏権で対処できるものと思われる。

3.閉会

  事務局から今後の日程について説明があった後、閉会となった。

(文化庁著作権課)

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