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文化審議会

2001/06/28議事録

文化審議会著作権分科会情報小委員会著作物等の教育目的の利用に関するワーキング・グループ(第3回)議事要旨

文化審議会著作権分科会情報小委員会著作物等の教育目的の利用に関するワーキング・グループ(第3回)議事要旨

平成13年6月28日(木)
14:00〜16:00
三田共用会議所大会議室

出席者

(委員)

紋谷座長、金原委員、金本委員、神山委員、久保田委員、田名部委員、中村委員、三田委員、山地委員

(事務局)

岡本著作権課長、尾崎マルチメディア著作権室長、その他の担当官

1.開会

2.議事

  • 著作物等の教育目的の利用の実態について
     金原委員と神山委員から著作物等の教育目的の利用について権利者側からの意見についての発表が行われ、各委員による以下のような意見交換が行われた。

【事務局】

利用者側からの権利制限拡大という意見に反対ということについては理解できたが、現行の著作権法第35条についてはどう考えているのか。縮小すべきと考えているのか。

【説明を行った委員】

著作権の契約処理が出来れば、そもそも著作権法第35条はいらないが、既存の秩序もあるので、法制定当時の解釈・考え方での範囲であれば、縮小すべきとまでは言わない。

【説明を行った委員】

無償で利用できるケースというのは、ごく限られた範囲内で行われるべきである。ただそれにより著作物の利用を縮小すべきと言っているわけではなく、許諾をとって大いに利用してほしいと思っている。

【その他の委員】

複製技術の向上により、法制定当時との利用形態の相違があり、根本的に教育目的の著作物利用に係る権利制限を検討すべきである。権利制限の理由としてトランザクションコストがあげられるが、文芸に関して言えば、今後著作権管理システムを構築して、学校教育における著作物利用も適正に利用できると思われる。

【その他の委員】

著作権者がどうしても許諾しない場合はどうするのか。

【説明を行った委員】

一般の小中高等学校で使用する著作物で代替不能なものはないと思われるので、特に問題はないので許諾できるものを利用すればよい。著作権等管理事業法によれば、管理事業者には応諾義務があるので、正当な理由なしには拒否をすることはできない。

【事務局】

管理事業者に応諾義務を課しているのは、委託者は著作物を使ってもらいたいということで、権利を委託しているためであり、一般の著作権者における許諾と趣が違う。

【その他の委員】

教育の観点からは著作物利用が無料ということは望ましいことではない。ただ社会的に無料で利用できる制度もあるように、教育目的における著作物利用に関しても、ある一定の利用範囲に照らし考慮することが必要であり、その場合には社会的認知又は第三者機関の判断を求めなければならない。

【説明を行った委員】

著作物利用が結果として無料であるとしても、権利者による利用の許諾が必要である。

【説明を行った委員】

教育目的の利用であっても、無料でいいものもあるが、許諾して使用料を払うものまで様々あると思う。

【事務局】

調べ学習の場合、学習者が様々な文献やインターネット等を利用して情報を収集することになる。事前の許諾がなければ利用してはいけないと教えるのと、本来は許諾が必要だがこういう利用であれば認められていると教えるのでは、どちらが著作権教育に役立つか検討する必要があるのではないか。

【説明を行った委員】

学校と権利者との間で契約をした著作物の範囲で生徒が著作物を利用できるのであって、生徒一人一人が権利者と契約をすべきと言っているのではない。

【その他の委員】

権利制限することについての議論と学習行為としての著作権教育の議論は区別しなければならない。

【説明を行った委員】

そもそも調べ学習というものは、引用の範囲で出来るものではないのか。

【事務局】

著作権法第32条の引用は自分の著作物が主であるべきだという、主従の関係がないといけないので、引用の範囲では出来ないと思われる。また、インターネットで著作物を利用する場合に事前に許諾を得ることは無理であろう。

【その他の委員】

著作権教育で子供たちに理解させる最善の方策は、やはりお金を払うという行為だと思う。子供たちは実際に支払うのではなく、伝票などに著作物の利用について記録をつけて、権利者に対して学校の経費等で支払うという方法はどうか。事前の許諾を得るのは難しいので、事後的に伝票などを使って、著作権料を支払うシステムを構築することが望ましいと考える。

【説明を行った委員】

子供たちに記録を残させることは著作権思想の普及・啓発としては有効だと思う。権利者と出版社が何らかの組織をつくり、利用者との間における著作権使用料を取り決め、学校等に対して包括的な年間契約をして著作物利用ということもあり得るのではないか。

【説明を行った委員】

著作物利用に関しては、まず契約ですることが望ましい。

【その他の委員】

実際に契約をすることは非常に難しいことではないか。おそらくはいくつかの権利者団体と学校関係者で契約することになると思われるが、どこまで実態に即した契約ができるか疑問であり、そもそも教育現場で受け入れられるか。伝票により記録を残すことについても果たして運用できるのか。

【その他の委員】

まだ学校現場においてインターネット学習がそれほど普及しているわけではなく、子供たちがコピーをして授業で使用するケースは少ないと思われる。著作権法第35条の範囲外の利用はあまりないと認識しており、現状としてはあまり議論されていない。

【その他の委員】

伝票の作成の趣旨は、権利者に分配しやすくするためである。来年度の新学習指導要領により、副教材の比重が高まり、著作物利用が多くなると思われるので、適正な使用料によるシステムの構築が重要と考える。

【その他の委員】

著作権法第35条の今の規定を縮小すべきと考えているのか。

【説明を行った委員】

条項の趣旨の限定された範囲内の運用であれば問題はないと考える。

【説明を行った委員】

現状の35条の規定を忘れて、教育目的の利用に関してゼロから検討した方がいいと思う。

【その他の委員】

教育目的の著作物利用について、全体的に検討するということになるのか。検討する方向性が多少変わってくると思われるが。

【その他の委員】

35条については規定の考え方・趣旨に関する普遍の原理があると思う。まず、その原理を確認し、35条の規定に関してどこが変わって、どこが変わっていないかを検討した方がいいと思う。

【事務局】

すべていちから検討するということになると混乱すると思われる。次回のWGにおいて、権利者・利用者の意見・主張を整理して35条の規定のこの部分を外してほしいとか、この部分を拡大してほしいといったことを議論していただきたい。

【その他の委員】

教育現場においては、自由に著作物を利用できることが望ましいが、使用料を払うことも必要である。単に権利制限規定を拡大・縮小という議論ではなくて、具体的にどうするのかを考えていきたいと思う。

【その他の委員】

教育目的の著作物利用に関して、著作権法第35条の規定を基本に検討するとのことだが、複製権だけではなく、その他の支分権、例えば公衆送信権等の利用行為についても検討すべきだろう。

【事務局】

利用者や権利者から要望がある事項については検討するという方向で行っている。

【説明を行った委員】

昨今の情報伝達技術の発達により、著作物の利用形態もだいぶ変化しており、その中で教育目的における著作物利用についてどこまで権利制限をできるのかを念頭に検討されるべきである。仮に権利制限が拡大の方向になるとしても、何らかの使用料というものを考慮しないで議論するわけにはいかないと思う。

【事務局】

オールオアナッシングの議論ではなく、補償金制度の導入にしろ、契約でやるにしろ、立法による報酬請求権になるにしろ、多面的な検討を今後、権利者・利用者の要望を取りまとめ、かつ情報小委員会からのチェックポイントを踏まえ、検討していただきたいと考えている。

3.閉会

 事務局から今後の日程について説明があった後、閉会となった。

(文化庁著作権課)

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