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文化審議会

2001/05/11議事録

文化審議会著作権分科会情報小委員会(第2回)議事要旨

文化審議会著作権分科会情報小委員会(第2回)議事要旨

平成13年5月11日(金)
10:30〜13:00
尚友倶楽部会議室1,2号室

出席者

(委員)

紋谷主査、金子委員、金原委員、木村委員、久保田委員、児玉委員、後藤委員、杉野委員、田名部委員、筒井委員、名和委員、半田委員、松田委員、松村委員、水島委員、三田委員、山地委員

(事務局)

佐々木文化庁長官、銭谷文化庁次長、林長官官房審議官、岡本著作権課長、尾崎マルチメディア著作権室長、その他の担当官

1.開会

2.議事

(1)  事務局より、本日の議事及び配付資料の説明があった。

(2)  事務局より、権利制限の全体的な検討についての説明があり、その後以下の通り質疑応答、意見交換が行われた。

【委員】

 公益性と権利者の利益が対立概念のようになっているが、そもそも著作権法においては、著作者にインセンティブを与えることにより、新しい文化を生み出し、文化を発展させるということが基本的な考え方であって、対立概念ではないことに留意したい。
  社会的状況の変化により、著作物の利用形態がデジタル利用になり、著作権者の利益が損なわれるおそれが多分にある。適正な補償金システムを確立することによって、利用者が著作権者の許諾なしに自由に著作物を利用できる方向に進んでいくことが必要なのではないか。

【委員】

 著作権を濫用する場合もあり、必ずしも公益性と権利者の利益が対立概念ではないとはいいきれないのでないか。また、著作権法第31条の対象となる図書館については施行令1条の3により定めているが、そこに定められていない病院の図書館等については特に公益性を考慮するといれるべきと思われるので、この図書館の範囲についても検討していただきたいと考える。

【委員】

 日本の制限規定は限定列挙となっており、細かい部分については対応できていないと思う。欧米のようにフェアユース、フェアディーリングとかの一般の権利制限規定を盛り込むべきなのかどうか。

【事務局】

 フェアユースなどの包括的な権利制限規定は、何が対象かどうかを裁判で決めることなので、物事を裁判で決めるという社会制度が整っていないと出来ない。又は、当事者間でガイドラインを作ることになる。そもそも権利制限規定というのはその規定に完全に適合する場合に権利が制限されることなので、行為を行う人が自己責任においてリスクを負わなければならない。

【委員】

 ぎりぎりの状況では、フェアユースなどを検討するにあたり、考慮しなければいけないのは、著作権侵害をしたら刑事罰があるということである。

【委員】

 権利制限規定を縮小する場合に考慮すべきことは、著作権法の内外において権利の濫用をコントロールする仕組みがあるかどうかである。それでなければ権利が膨張するのではないか。

【委員】

 著作権法は物権法の特別規定であり、民法の権利濫用法理は働くとされた判例もあるので、現行の法体系上により司法の判断で解決ができると思う。

【委員】

 権利制限を考えるにあたっては、公益性だけではなく、権利者と利用者のバランスという観点が前提となる。

【委員】

 社会の変化は、利用形態の変化だけではなく、保護手段や契約の面にも変化をもたらしている。著作権法の限られた中だけで解決しようとするのではなく、民法や独禁法、技術的な保護手段、契約などの組み合わせによって考えていかなければならないと考える。

【委員】

 著作権者の利益を保護するという視点と著作物は流通して初めて価値が出るという視点の両方のバランスを考慮に入れた上で権利制限の問題を検討しなければならないと考える。

【委員】

 著作権法の役割として文化を創る段階でインセンティブを与え、文化を発展させるということと、出来上がったものをできるだけたくさんの人に伝達して文化を広めるという2つがあると思う。この2つを究極に考えると対立してしまい、特にデジタル化とインターネットの技術で顕著になる。

【委員】

 権利制限を考える上で、通常の利用を妨げず、著作者の正当な利益を不当に害さないという点にたって検討するのであるが、今までの権利が制限されてきた図書館や教育の役割がかなり変わってきているのではないか。特にインターネットという手段を得て様々な分野での利用行為が変化してきている。よって、権利制限というのは著作権法全体においてどういう立場で全体的にどうかということを念頭において、考えなければならない。

【委員】

 新しい利用形態、問題が生じるたびに、著作権法を改正するのなら、矛盾が生じるとか、公平さを欠くといったことが出てくる懸念があり、抜本的な解決を図る必要があるのではないか。そもそも著作物を無断で使うというのがおかしいのであり、契約での処理を広げた方がよい。個別契約の困難を解決するために、著作権法とは別に著作権契約法みたいなものをつくることがよいと考える。

【委員】

 情報を利用すれば対価を支払うということから、権利制限の問題を的確に捉えていかないといけない。何か権利制限が規定されたときに、全部そこを突破口として利用する場合も考えられ、著作権法だけでなく、思想の普及なり、契約システムの確立などによって、解決しないといけないだろう。

【委員】

 権利制限規定に関し、誤った思想が広がっているのではないか。正確な権利制限規定の趣旨・解釈について、普及させることについて努力することも重要なのではないか。

【委員】

 日々変化する技術等により、社会の変化のスピードは速くなってきており、あまり法律で細かく規定するのではなく、変化に柔軟に対応できるよう、契約、技術などの組み合わせによって考えていった方がよい。

【委員】

 権利の濫用という話もあるが、図書館での利用だから、教育目的に使うのだから自由に使っていいのではないかという、公益性の濫用という考え方がある。権利制限を拡大にするにしろ、縮小にするにしろ、権利制限規定の啓蒙活動をすることが必要だと考える。

【委員】

 報酬請求権を考えるにあたっては、文化的生産のインセンティブということを権利者と利用者の対立構造の上に加えて考える必要がある。

【委員】

 著作権法第35条の教育目的による複製で対象となる著作物の内容によって、複製できる範囲も変わってくると思われる。

【委員】

 その点に関しては、著作権法第35条の但し書きによって、当該著作物の種類及び用途並びにその複製の部数及び態様に照らし云々とあり、問題はないと考える。

【事務局】

 情報に関するアクセスコントロールについて、国際的な議論としてはあるが、現行の著作権法には情報にアクセスすることに関して制限を設けてはいない。また、この小委員会においては、現行の著作権法に規定しているシステムをどうするのかということがポイントであり、特に権利制限規定においては今までオールオアナッシングの話になっていたが、これからは補償金システム、契約システムといった様々な方策を検討していただきたい。著作権を保護することによる文化振興という公益性、それが制限されることによる公益性があり、特に著作物の流通をどう促進させるか、またその費用負担はどうするのかという問題などを踏まえ、一般的な議論に加え、このようなシステムについてもどのようにバランスをとるのかということに関しても検討していただきたい。

3.閉会

  事務局から今後の日程について説明があった後、閉会になった。

(文化庁長官官房著作権課)

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