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文化審議会

2001/09/25 議事録

文化審議会第11回総会議事要旨

文化審議会第11回総会議事要旨

1.日時

平成13年9月25日(火)10時00分〜12時00分

2.場所

霞が関東京會舘シルバースタールーム

3.出席者

(委員)

高階会長、北原副会長、市川、岡田、川村、北川、齊藤、関口、富沢、乳井、黛、の各委員

(文部科学省・文化庁)

佐々木文化庁長官、銭谷文化庁次長、遠藤文化部長、木谷文化財部長、鈴木文化財鑑査官、高塩文化庁政策課長  ほか関係者

4.概要

(1)  配付資料についての確認があり、前回議事要旨については、意見がある場合は1週間以内に事務局に連絡することとされた。

(2)  事務局より、諮問に対する主な意見の整理(案)について説明があった。

(3)  その後、次のような意見交換が行われた。

  •   文化の創造に学問は大きな役割を果たす。文化の根幹には学問があるとも言えるものであり、文化の定義(p3、1つ目○)に、「学問」を加えるべきである。
  •   学問という言葉が失われつつあり、現在では「学術」が一般的に用いられてきているが、学術は「学ぶ術(すべ)」であり、「(根源的に)学び問う」学問とは異なるものである。文化は人間の根源であり、学問は文化に不可欠な要素である。
      また、従来は「科学・技術」と表現していたものが、現在は「科学技術」となっている。異なるものであった科学と技術を区別しなくなってきたことの意味を、正と負の何れにとるべきかの検討をしっかり行う必要がある。
  •   現在は「学問」と「教育」も混同されており、単なる学歴としての教育ではなく、学問の重要性を主張していくべきである。
  •   少子高齢化に関連し、参考資料として2050年における総人口の推計を用いているが、文化というものを考えるのならば、50年ではなく100年という長期を見据えて考えていくべきである。100年後を考えた場合には、異なる様々な文化を身につけた人々が日本に流入してくることが予想され、日本の人口はそれほど減らないだろうが、日本人は半数程度になっているだろう。それに伴い、日本文化を支える日本語や、日本人そのものが変容し、同時に日本文化も変容していくと思われるが、そのことについても考えていくべきである。
  •   文化の範囲(参考資料)における狭義の文化3(文化庁の所掌範囲)に著作権が位置付けられているが、GDPの2.3%が著作権関連産業となっているように、著作権は産業や、また、メディアとも密接につながっており、狭義の文化2にもまたがるものである。
      また、「企業と文化」(p2、3つ目○)のところでは、既に企業は文化をとりこんでおり、文化をとりこまないと企業が衰退していくという状況がある。
  •   有形・無形の文化財をはじめ、思想や行動様式など、人間が作り出し後世に遺したものは文化として基本的なものであり、非常に重要である。
  •   自然と文化が対立するような印象を与えるのはよくない。また、情報と文化という視点もある。
  •   人間と文化(p1)では、文化と国家、世界との関わりについても記述すべき。
      「(21世紀において期待される人間像)」(p3)は、「21世紀」よりも使いまわされていない表現、また、「期待される」よりも押し付け感や、型にはめるというイメージのより少ない表現を用いたほうが望ましい。
  •   社会が変化していく中で、どのような生き方が望まれるのかを考えていくことは必要である。それが押し付けにならないような表現を考え、提示していくべき。
  •   文化とは、それぞれの国や地域の自然の中から発生し、高めていくものである。我が国は人間を自然の一部に位置付け、そこから文化を生み出してきた。そして、それらを束ねたものが日本の伝統、歴史となっているのであり、そこに接することで我々は共鳴し、生きる喜びや感動する心を育んでいくのである。日本の文化の理念を考えていく際には、自然や伝統と調和した人間(p43)という視点は大切である。
  •   文化とは、人間として生まれてきたことに対し喜びの感情を持つことである。文章は、感情が読み手に伝わるように配慮すべきである。
  •   我が国はこれまで文化を重視してこなかったとのトーンで全体が記述されているが、それを強調しすぎるのはいかがなものか。また、例えばアニメなど、戦後日本は優れた文化を生み出してきているのであり、そのようなものに対する評価も必要である。
  •   ハイ・カルチャーだけでなく、マンガ、アニメなど大衆文化という視点も必要である。
  •   従来は人から人へ直接文化が伝達・継承されたが、現代は、マスコミを介在して人から人へ文化が伝わる時代である。そうであるなら、文化の伝達手段としてのマスコミと文化という視点もあるのではないか。
  •   21世紀は「環境の世紀」といわれる。限られた資源の中で人間が生きつづけていくには、抑制の効いた節度のある態度が求められる。「地球環境」的なニュアンスを出せないか。
  •   個を尊重することは創造力を育んでいく上でも大切であるが、それは個の価値観を尊重するということである。そのためには、前提として、個が確立していなければならない。それぞれの価値観なしに批判すれば、悪い意味での相対主義になってしまう。
  •   文化振興の中で、企業の果たす役割は非常に重要であるが、諸外国と比べた場合に、我が国はその認識が不十分である。文化振興の全てを税金で担うのではなく、企業も含め、自発的な文化への支援が必要であり、それを支援し、助長するような環境整備が求められている。
  •   企業活動の成果(収益)を文化へのメセナ活動に投じていくことは、企業をさらに発展させていくことにつながり重要であるとの記述があるが(p8、3つ目○)、例えば文化関連産業のように、今や企業活動そのものが文化と密接に絡み合っているのであり、そのような視点も必要である。
  •   アメリカへの同時多発テロ事件に対する米国の反応を見ていると、お互いの文化や思想について認め合い、許し合うという視点が欠けている。非常時においてこそ、人が人であるために許しは必要であり、それがなければ我々が抱えている現代の課題は解決されないのではないか。
  •   何が美しいか、何が大切かについての価値観は文化によって多様であるが、それぞれの文化を強調しすぎると、自らの文化にとって価値がないものの排除(破壊)につながってしまう。そこで重要でなってくるのが、「許し」や、お互い認め合うという「寛容性」である。
  •   普遍的なものではない部分もあるが、日本人にとっては大切であるというのが文化であり、異なるものをお互い認め合っていくことが必要である。
  •   文化を継承していく大きな流れの中で、日本も廃仏毀釈など様々な文化の破壊を行ってきた。また、現在でも経済効率を優先するために、貴重な文化遺産が取り壊されている。そのことへの反省が必要である。
  •   「文化の側が主導権を持ち」技術界・産業界を動かしていくべきとの記述があるが(p11、2つ目○)、一方で、既に文化関連産業や、著作権関連ビジネスのように、文化が動くことによって産業が動いているという事実もある。
  •   確かに「文化の側が主導権を持ち」では表現が若干強すぎるかもしれないが、技術界・産業界に対して文化の側からアピールしていくことは重要である。特に、生命科学や医学の急激な進歩に対し、文化の側からの提言が必要である。また、産業の中に著作権が浸透しないと、クリエーター側の権利を阻害することになる。
  •   文化は「人間形成を側面から支援する」(p6、3つ目○)とあるが、文化は、まず、人間がより心豊かに生きるための環境整備を支援するものである。
  •   少子高齢化のマイナス面のみならず、そのことによる社会の落ち着き、成熟化といった積極的な側面もとりあげていくべき。
  •   正負両面捉えるべきということでは、きずなが弱まり社会の構成員がバラバラになっている一方、個が確立してきているという面もある。
      また、若者を否定するばかりでなく、若者はどのような文化を生み出し、それがどのような影響を社会及び現在の文化に与えるのかという視点もある。
  •   継承されていくべき伝統的な価値が、若者文化の中でどのように位置付けられ、継承されているのかの検証が重要。
  •   伝統的価値が伝承されていないことを「家(イエ)」の意識の崩壊と結び付けて記述すると(p7、3つ目○)、イエ制度への回帰を訴えているように読み取れる。我々が訴えるべきは、伝統的価値の再評価であり、不必要な誤解を与えないようにする必要がある。
  •   文化が経済にリードされ、経済の発展のために文化があるという印象を与えるのはよくない。ただ、文化は市場になじまない(p10、4つめ○)ことについて、強く訴えていくべきである。
  •   現代は情報の価値が高まっている。しかし、情報はそれのみではあまり価値をもたず、学問などによって体系化され、知識となる。そして、それに経験や伝統が加わることによって、知恵へと発展するのである。若者は情報には敏感であるが、それを知恵へと発展させる学問や経験に乏しい。それを補うのは豊かな経験、伝統を身に付けた年配者であるが、少子高齢化など変化する社会の中で、どのようにそれを伝えていくのかが課題となっている。インターネットだけで伝わるものではなく、人間的な接触による教育、継承が必要である。
  •   現代においては、情報は既にデジタル的に整然とパッケージされたものとの思い込みがあり、情報を自ら組み立てたり、情報の行間を読み込んだりする発想に乏しい。アナログ的に情報を考えていくことが必要である。
  •   文化は、同世代における文化と、継承されていく過程(親−自分−子)としての文化との縦横両軸を整理して考えていくことが必要である。なお、縦軸で考えた場合、世代により文化は形を変えていくという面もある。
  •   「人間と文化」という場合に、「人間」には日本人としてという意味と、人類としてという意味があるのではないか。
      「文化の大切さ」(p6)の内容が、人間形成に資するという意味においての大切さに限られている。文化には、民俗のアイデンティティーや科学技術の発展の基盤など他の側面もある。
      p5のところでは(4つめ○)、教養と文化が表裏一体であるということを言えばよいのではないか。
  •   「文化は労働集約的な産業」(p8、1つ目○)とあるが、文化は知識集約的産業という側面もある。
      高度情報技術が一般に普及した反面、他人の知識にただ乗りすることも容易になっており、創作意欲を阻害し、文化の空洞化を招かないように配慮する必要がある。
  •   人間は古来より「うつし」や「学び」を行う中で、文化を創造してきた。これは文化の基本である。著作者の権利を侵害するものとして認められない「うつし」もあるが、その前段階として、このような文化の基本についての認識を持つことは大切である。
  •   「誰にとって」も考え合わせながら、「文化はなぜ大切なのか」を整理していくことが必要である。その際には、物質的に豊かになったから次は精神的な豊かさ(文化)が大切であるというのではなく、本来的に人間には文化は必要なのだという論理が必要である。
      現代の若者は孤独なようでいて、携帯電話などで仲間と常につながっている。しかし、安定した豊かな社会のためには、価値観の違いも受け入れながら安定した人間関係を構築していくことが必要であり、仲間以外の人、価値観の異なる人、さらには自然とも共生の感覚を回復し、つながっていかなければならない。そのためには、文化の果たす役割は極めて大きいのである。
      また、科学技術をさらに発展させる上で文化は重要であるし、科学技術で抜け落ちる部分を文化で補うという視点が重要である。

(4)  事務局より、次回総会の日程についての説明があり、閉会した。

(文化庁政策課)

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