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国語審議会

 1998/3 議事録 
国語審議会総会 (第8回議事録) 

第21期国語審議会第8回総会

平成10年3月17日(火)

午後2時〜4時30分

東條会館新館「千鳥の間」



〔出席者〕
  清水会長,江藤副会長,秋岡,浅野,新井,井出,井上,宇治,神谷,北原,小池,幸田,小林,酒井,谷口,俵,土谷,津野,徳川,中野,西尾,福原,細見,前田(耕),前田(富),水谷,緑川,山口,渡邊各委員

計29名

  林田文化庁長官,霜鳥文化部長,大島国語課長,浅松主任国語調査官,花立課長補佐,氏原国語調査官,野村国語調査官,仲村主任教科書調査官,小森教科調査官,田中教科調査官ほか関係官
  国立国語研究所各部長


〔配布資料〕
  1  第1委員会における論議の概要−6
  2  第2委員会における論議の概要−6


              次          第

  1  開    会
  2  庶務報告
  3  前回の議事要録の確認
  4  議    事
        第1委員会における論議の概要について
        第2委員会における論議の概要について
        協    議
        その他
  5  閉    会



○  それでは,第21期国語審議会の第8回総会を開会する。
  6月の最終総会までに報告書をまとめて,公開資料として御意見を伺えるようなところまでは少なくとも持っていきたいと考えている。今日は,そういう意味で,第1委員会,第2委員会で大変な御努力で審議されていることについて,時間を掛けて伺おうと考えているので,よろしくお願い申し上げる。
  初めに,配布資料の確認と庶務報告を国語課長にお願いしたいと思う。


大島国語課長  初めに,本日の資料を御確認いただきたい。「第1委員会における論議の概要−6」が資料1,「第2委員会における論議の概要−6」が資料2である。
  なお,毎年東西2地区で国語に関する諸問題について研究協議する国語問題研究協議会を開催しているが,御参考までに,昨年開かれた国語問題研究協議会における意見の概要を席上に配布させていただいている。
  次に,資料の送付などについて御報告申し上げる。
  1月29日付けで国語審議会第2委員会第12回の議事要旨をお送りした。それから,2月20日付けで国語審議会第1委員会第10回の議事要旨と第2委員会第13回の議事要旨をお送りしてある。それから,3月11日付けで国語審議会第7回総会の議事要録,併せて,第1委員会第11回の議事要旨,第2委員会第14回の議事要旨を委員の先生方にお送りした。
  それから,12月16日に開催された前回の総会以降の第1委員会と第2委員会の開催状況を御報告申し上げる。
  第1委員会は,2月4日に第11回目を,2月27日に第12回目を開催した。ここで1点御報告申し上げることがある。この2月27日の第1委員会において,北原主査の御要請もあって,第2委員会と同じように副主査を設けてはどうかということが相談され,副主査に徳川委員が選出された。本日は主査,副主査の両先生が並んで席に着いていらっしゃる。
  それから,前回の総会で設置のお話があった敬語小委員会は,早速,昨年の12月22日に第1回を開催し,年明け早々の1月9日に第2回,2月9日に第3回,2月20日に第4回,3月9日に第5回を開催した。
  第2委員会は,1月21日に第13回,2月16日に第14回,3月3日に第15回を開催した。また,字体小委員会は,1月19日に第9回,2月16日に第10回,3月3日に第11回が開催された。それぞれの委員会における論議の内容については,後ほど両主査から御説明をいただくことになっている。
  それから,文化庁では,毎年,国語審議会の検討状況の御報告を行うと同時に,有識者からの御意見を伺う国語施策懇談会を開催しているが,本年度の国語施策懇談会は2月13日に国際交流基金の国際会議場で開催した。今回は「現代社会と敬語」というテーマで,特に第1委員会の御報告に関連する意見発表とシンポジウムを行った。国語審議会からは,北原第1委員会主査に説明や司会をお願いした。また,水谷第2委員会主査,上野委員,西尾委員,林雄一郎委員にも御参加いただいた。
  それから,国際標準化機構関係,いわゆる文字コード関係の国際会議の参加の問題であるけれども,前回の総会でも御報告したとおり,その国際会議に文化庁国語課として国立国語研究所の笹原研究員を派遣したところである。12月15日から12月19日にかけて,ちょうど前回の総会が開かれていた12月16日の前後にベトナムのホーチミン市で会議があった。
  笹原研究員の報告によると,まず全体会が開かれ,それから二つのワーキング・グループに分かれて検討が行われたようであり,国際規格に漢字のコードを追加していくためのいろいろな作業が継続されているということである。漢字の典拠を厳密に特定しようとする立場から,そういうものは余り厳密に考えない立場まで,各国の委員の立場にはいろいろと食い違いがあるというようなこととか,そういう異なった立場の委員の合意形成の在り方など,そういうようないろいろな問題もあるのではないかという感想も聞いている。次の会議は5月に徳島で行うということであり,引き続いて私どもも情報収集に努めていきたいと考えている。
  最後に,世論調査の件について報告する。本年度の世論調査は,11月27日から12月16日にかけて実施し,ただ今鋭意報告書を作成中である。報告書完成後,委員の先生方にはできるだけ早くお送りしたいと考えている。
  庶務報告は以上である。


○  ありがとうございました。
  今のISOの国際会議のことについて,江藤副会長の方から一言御発言があるということである。


○  今,国語課長から御説明のあったISOの国際会議関連で,一言だけ補足的に御報告を申し上げたいと思う。
  御案内のように,平成9年10月13日付けで日本文藝家協会が国語審議会に文字コード問題で要望書を提出させていただいたけれども,その後,協会員からの強い意向もあって,ベトナムでの国際会議には是非文字学の専門家に御参加いただきたいと考えていた。もちろん文化庁の方はそういう段取りを付けておられたわけだけれども,このことについて文部省と工業技術院を所管している通産省の間に齟齬があってはならないから,何とかしろという要望があって,私,町村文部大臣のところにこの件について陳情に行ったところ,町村大臣から,これは閣議の時に自分から堀内通産大臣に雑談交じりに通じておくから,堀内さんにも是非お会いなさいという御指導をいただいて,昨年暮れ12月15日からこの会議が始まったが,それに滑り込みみたいな形で堀内通産大臣にお目に掛かることができたその結果,笹原国立国語研究所研究員に初めて漢字コード問題のISOの国際会議に出席していただいた。今後とも通産省は文化庁と密接に連絡をとりながらやっていきたい,そして笹原氏には国際規格における漢字コードを検討する国内審議委員会に参加していただきたいというような,通産省側からの大臣名における意思表示が私あてに送られてきたので,そのことをちょっと御報告申し上げておく。


○  今後コミュニケーションが少しよくなるだろうということであるので,どうぞ御了承願いたいと思う。
  それでは,議事に入る前に,前回の議事要録の御確認をいただきたいと思う。これは事前にお配り申し上げてあるので,お読みいただいたかと思うが,また御自身の御発言のところで修正箇所がもしあったならばお申し出いただきたい。あるいは,後ほど事務局の方へ御連絡をいただくということで,御了承いただいたことにさせていただきたいと思う。そのような扱いでよろしいか。
  それでは,お手元に差し上げてある議題に入りたいと思うが,先ほども申し上げたように,これまでの御議論を基にある程度まとまった御報告を各委員会からいただきたいと思う。
  初めに,第1委員会の論議の概要について,北原主査からお願いする。


○  第1委員会であるが,先ほど課長からお話があったように,私,ちょっと忙しくなって,今までは欠席なしだったけれども,今後は危なくなった。そこで,徳川委員に副主査をお願いして,これからやっていきたいと思うので,よろしくお願いする。この前の総会で御報告したものには個人の意見を並べたような部分がたくさんあったが,その時にお約束したように,今回初めて文章化して,通した形で報告することになった。前回のものは「論議の概要−5」であるが,今回は「論議の概要−6」ということで,初めて文章として続けてみた。その間,第1委員会及びその中に設けた敬語小委員会で,先ほど国語課長からお話があったように,何回も議論を重ねた。今回のものは最後の敬語小委員会での議論を基に,また徳川副主査及び事務局で練り直して下さったものである。後で読んでいただくけれども,ちょっと概要だけ説明させていただく。
  Iの章のタイトルには変更がない。「コミュニケーションと言葉遣い」というのはこの前と同じであるが,その下の「1  現代日本社会と日本語の状況」,「2  人間関係と適切な言葉遣い」の順序を入れ替えた。中身も非常に変わったというか,付け足しが増えている。
  具体的に言うと,1の「現代日本社会と日本語の状況」というところは,「(1)社会構造の変化と価値観の多様化」ということで,現代社会がどういうふうな状況になっているかをi)からv)までに分けて掲げた。それから,(2)は「国際化・情報化」として,i)からiii)の特徴を挙げてみた。
  それから,「2  人間関係と適切な言葉遣い」というのがあるけれども,ここでは,まず(1)で人間関係とコミュニケーションについて一般論的に述べ,(2)で,そういうコミュニケーションの中で言葉遣いの問題が非常に重要であることを述べ,さらに(3)では,1の「現代社会と日本語の状況」と関係付けて,現代日本におけるコミュニケーションの在り方を述べた。(4)では,2のまとめとして「コミュニケーションと敬意表現」について述べ,IIにつなぐという構成になっている。
  長いので,取りあえずIのところを朗読してもらいたいと思う。


浅松主任国語調査官  それでは,最初の1枚目のところは省略して,2ページ目の「まえがき」のところから読みたいと思う。

                  〔「第1委員会における論議の概要−6」朗読〕


○  ありがとうございました。
  Iは,長くてお分かりになりにくかったかと思う。全部大事だけれども,特に4ページの下の方の「(3)現代日本社会における様々なコミュニケーション」は,現代日本社会の状況を踏まえて,それがコミュニケーションにどのように反映されているかということを第1委員会で分析したものである。i),ii),iii),iv)と,ix)まで書いてあるけれども,文言に関することのほか,こういうとらえ方でいいかどうかという辺りを考えていただき,御意見をいただければ有り難いと思う。それを踏まえて,6ページの「(4)コミュニケーションと敬意表現」。先ほど申したように,コミュニケーションをそういうふうにとらえて,その中心的な存在である敬意表現というところに絞る。そしてII   に行こうという流れである。
  続いてIIの方も朗読してもらおうと思うが,1ページの「内容」のところを御覧いただきながら,構成を確認してから朗読していただくといいかと思うので,1ページに戻っていただきたい。
  まず,「敬意表現の在り方」という題名にした。これは「概要−5」では「敬語の役割」となっていたところで,大分変わっている。敬語と敬意表現というのは違った意味で使っており,今度は「敬意表現の在り方」として,「役割」というのも「在り方」に変えた。敬語というのは,今朗読していただくと分かるけれども,尊敬,謙譲,丁寧というように分類されるものであり,第1委員会では,この前からお諮りしているように,そういう狭い敬語を含んだ様々な敬意にかかわる表現を「敬意表現」というふうに呼ぶことにした。この前は,「敬意表現」又は「待遇表現」という言い方をしていたが,「待遇表現」というのは専門家の間では非常によく使われる言葉であるけれども,一般の方には余りなじみがないというので,「敬意表現」という言葉で言うことにした。先ほど申したように,これは狭い敬語を含  んだ敬意の表現にかかわるものを広く指すということである。
  1の「敬意表現と敬語」で,敬意表現と狭い尊敬・謙譲・丁寧の敬語との違いを説明しようということで,最初に「敬意表現とは何か」という項目がある。(2)のところで狭い方の「敬語の概要」を述べ,(3)のところで敬語以外の敬意表現にはどんなものがあるかということを少し具体的に説明している。
  2の方に行って,「敬意表現と敬語」を押さえた上で,2では敬意表現の理念,敬意表現はどうあるべきかということと標準はどうあるべきかということについて二つに分けて,(1)が理念,(2)が標準の在り方というふうに進めている。10ページのところに「敬意表現の理念と標準の在り方」が続いて書いてあるけれども,これが今回の審議の結論になっていると思うので,この辺をひとつ御審議いただきたいと思っている。
  最後に,「付」というのが二つあって,一つは「敬意表現の教育」,国語教育におけるものと日本語教育におけるものに分けて書こうということである。場所がちょっと置きにくいので,「付」としているけれども,これは極めて大事なことである。標準を示すだけではなくて,それをどういうふうに普及させていくかということが非常に重要な問題なので,それを「付1」として述べることにした。「付2」は,理念とかかわるわけだけれども,多様な敬意表現を認めなければいけないだろうというのが第1委員会の考えているところであり,その一例として,多様というのはこんなに多様なんだということを示した。こんなに多様では大変じゃないかというような御意見が出てくるかもしれないが,そういう御意見があったら是非出していただきたいと思う。
  説明はここまでとし,朗読してもらう。


浅松主任国語調査官  それでは,IIのところを読む。

                  〔「第1委員会における議論の概要−6」朗読〕


○  第1委員会の報告は以上であるので,会長にマイクをお渡しする。


○  徳川副主査,補足していただくことがあるか。


○  特にない。皆様の御意見を承りたいと思う。


○  それでは,また後ほどいろいろ御論議をいただく段階で補足説明もいただくということにして,時間の関係もあるので,大変恐縮だが,第2委員会の説明も同じようにいただいた後で,まとめて御論議をちょうだいしたいと思う。
  それでは,第2委員会の論議の概要について,水谷主査から御説明いただきたいと思うが,第1委員会同様にひとつ詳しくお願いする。


○  第2委員会は,先ほど課長の方からも御紹介があったけれども,資料の冒頭の部分にあるように会議を重ねてきた。その会議を通して,今お手元にある1ページから始まって,最後の方に資料が並んでいるが,そのような形にまとめた。
  前回から今回にわたる中で一番心掛けたことは,文章の形を答申の形にできるだけ近づけようということで,1ページにあるように「表外字字体表試案(案)」として,「前文」と「はじめに」を付けた形に構成し直した。中を御覧いただくと,ほとんどの部分は,実は前回お出ししたところと変わっていない。多少変更はあるが,概して言うと,資料の少し手前,ページで言うと6ページの上半分のところまでは内容的にほとんど変化がない。形を整えるために表現に工夫をしたということである。したがって,この部分に関しては,後ほど朗読してもらうが,ワーディングなどにも是非御注目いただいて,こう変えたらという御助言が賜れればと思っている。
  どんなところをどう変えたかというと,例えば2ページの「前文」から始まっているが,最初の辺りの体裁もちょっと変わった。すっきりした形にしているが,2ページの下から7行目の後半,「表外字が簡単に打ち出せるようになり」というのは,「表外字の字体については」という言い方では不十分であろうということで表現をちょっと変えただけである。
  それから,下から4行目の「なお」から始まる部分は,今までのお話の中では「表外字使用が日常化し」といった言い方で簡単に触れられていたものに,具体的な例を与えて理解しやすくする努力をした。追加した中身がここに3行にわたって増えているわけである。そういったような形で手を加えている。
  どの部分に手を加えたかということをざっと申し上げていく。3ページの上から6行目から「今回の表外字字体表は」というパラグラフがあるが,その次の「送られた」から始まる行の「法令,公用文書,新聞,雑誌,放送等,一般の社会生活において,表外字を使用する場合の字体のよりどころ」も,さっきの二つ目の例と同じであるが,もともとは「表外字の字体の標準を」と簡単に済ましていたところを分かりやすく加えた。次の行も,「いわゆる康熙字典体」となっているところ以下であるが,これも誤解を避けるためにより説明的な表現に直した。
  そのページでは,あとは下から14行目辺りに「また,小学校・中学校・高等学校の」というのがあるが,この2行を付け加えた。そこから5行下の半ばのところからの「すなわち,常用漢字表の表内字と表外字において」の辺りも表現を変えている。
  下から5行目の2「現代の文字生活における常用漢字表の意義と表外字の位置付け」は,変更したところも,実は中身としては,今まで総会あるいは第2委員会の中で委員の先生方から出ていた御意見をより拾い上げる形で加えていったものなので,今までになかった意見が入っているということはない。2の後の表外字の位置付けについても意見が出ていた。それをここへ加えたということである。
  そのような形で全体が進んでいるが,4ページの二つ目のパラグラフ−・「ところで」から始まる部分は,かなり新しい,今までに紹介していなかったものが入っている。
  また,4ページについては,真ん中の〔表外字字体表の性格〕の「1  適用範囲等」は,文言,表現が少し変わっている。「必要に応じて」とか,仮名の「も」を加えたとか,そんなレベルで動いている。
  それから,4ページの下の「2  表外字字体表が示す字体の範囲」から後は,実は構成が変わっている。内容は変わっていないが,以前書きつづっていた順序を組み立て直した。それがおしまいまで続いていく。
  問題になるのは6ページの真ん中のところ,「3  明朝体の字形と筆写の楷書字形との関係」というところがあるが,この最後の2行半については表現を変えた。内容も少し加わっている。
  さっきも言ったことの繰り返しになるけれども,ここまでは,ほとんどが表現上の問題で努力をした結果になっている。今日,もし時間があってお知恵をお借りすることができるならば,ここまでの分の表現に関することのほかに,内容的に,その次の〔その他の関連事項〕の「1  固有名詞に用いられる漢字の字体についての考え方」,「2  学校教育との関係」,「3  国際社会との関係」−・冒頭に国際的な文字コードの問題が入っているけれども,ここについては前に出ていた形と同じままで残してある。議論がなかなか煮詰まらないので,これから議論を煮詰めていくために,今日御意見を少しでもいただけるよう願っている。
  その後は非常に具体的なことになるが,(付)として「表外字における字体の違いとデザインの違い」。ここで,次の7ページにちょっとした表が付いている。常用漢字の字体についての解説そのものがコピーしてあるのだが,このような形で,字体の差ではなくデザインの差として一括して認められる例を提示しようという考えを今持っている。この7ページの表は常用漢字を使った例である。常用漢字表では,ここにあるように,例えば「硬」という字については「石へん」の形,あるいは「吸」の場合は「口」が縦に細長いものと短いもの,こういった差はデザインの差なんだということを示す材料として,常用漢字の字体について提示していたわけである。このような表をもし提示するとするならば二つ課題があって,6ページにも述べてあるが,この表は常用漢字であるから,今回の場合は常用漢字以外,表外字を使って表にすべきだろうか。それから,常用漢字のときには触れられていなかったのだが,7ページの右の方に,例として「牙」と「喰」というのが出ているけれども,何通りかの「牙」という字の形の違いをデザインの差とするかどうか,こういった新しい問題点も追加していく必要があるのではないか。この辺りで,委員会の中では今議論を重ねているところである。そこで,この在り方についても,是非御意見を伺わせていただきたいと思っている。
  そして,その後に「参考」として「「表外字字体表」作成のための検討資料−X2  頻度資料順」。この資料関連のものについては,前回もここで御紹介したが,今私どもが到達している問題意識等を含めて,小林副主査の方から御報告をさせていただきたいと思う。
  文章の部分を先にまとめてしまった方がいいかと思うので,今のところまで朗読をお願いしたいと考える。


氏原国語調査官  それでは,2ページ目から読みたいと思う。

                  〔「第2委員会における論議の概要−6」朗読〕


氏原国語調査官  少し補足させていただく。先ほど水谷主査の方からも御説明があったが,7ページ目は常用漢字表の「字体についての解説」に載っているものである。今回の表外字字体表では,それに右側の四角で囲った「          」と「      」をデザイン差に該当するものとして加える方向で検討している。「(5)その他」のところに,常用漢字である「芽」の例があるが,その「芽」を見ていただくと,四角で囲った「牙」のうち,一番右に当たる形はここには出てこない。従来,この「牙」の2画目,3画目に当たるところをLのような形で1画に作るような字形は旧字体ということで,常用漢字表のときにはデザインの違いに入れていなかった。
  それから,「喰」については,3の「点画の性質について」の「(2)傾斜,方向に関する例」に該当するものである。「喰」のつくりの3画目を縦に置くのか,横に置くのかというのは,縦か横かという方向に関する例であるが,これも常用漢字表のときには字体の違いだという認定の下に,入れていなかったものである。後で小林副主査から御説明があると思うが,「牙」にかかわるものと,表外字の「闇」の部分字形である「音」の1画目など,縦横の関係で出てくるものが随分あるので,今回この二つを入れたらどうだろうかということでここに入っているものである。


○  それでは,例示について御説明願う。


○  例示について御説明申し上げる。
  「参考」のところをめくっていただきたい。私ども第2委員会及び字体小委員会の方で,どういう資料を使って今のような案文に至ったかということである。
  使った資料は,「「表外字字体表」作成のための検討資料−X2」である。これは「X1」を整理したもので,「X1」は先ほどの案文の中にあった,表外字の字体を検討するための土俵をどうしていくかというときに,凸版印刷等の資料を整理して以下のように定めたわけある。すなわち,凸版印刷で3200字までのところを考えていけば,一般の社会生活で使用されるほぼすべての表外字の字体を検討することになると考えられ,頻度から考えてその辺りがよろしいだろうという判断の下に,凸版3200位までをまず扱うこととした。それを基本にして,大日本印刷と共同印刷の資料で2000位までに,独自に現れるものを加えた。さらに,「140字」と書いてあるのは,法務省が平成3年から戸籍で新たに使える字体として認めた略字の表であるが,それを添えると土俵がほぼ見えてくるであろうというこ  とで,それも加えた。このようにして作成した「X1」及びそれを整理した「X2」という資料を検討の対象として,今までやってきたということである。
  字体問題を考えていくときに,表紙の下側に四角の枠でくくったところに,前にも御覧いただいたものであるけれども,どういうところに気を付けたかということが書き並べてある。
  異体関係のものとデザインの差と考えられるようなものとがあり,S1 は「しんにゅう」,S2 は「しめすへん」,S3 は「食へん」,Kは「くさかんむり」等々,デザインの差のものも細かに見ていこうというふうに,先ほどの案文に至るところを細かく検討していったわけである。
  めくっていただいて,「X2」というのは,字体及びデザインの問題として検討すべきものを絞り込んで16枚ほどになっている。約500字弱であるが,それに絞り込んで検討していくということでめどが立ってきたものを見ていただいている。
  字体の問題として,一番上に挙例として出ている「砺」というのは,「礪」に対する異体という関係で見ていく字である。
  次の「頃」という字は,「問題」というところに説明が書いてあるけれども,左側のつくり方が,ここでは「ヒ」のハネた形になっているが,別の形で出てくるものもあって,そういうところも目配りをしていこうということである。
  その次の「薩」の字は,右側のつくりの中が「×型」と「立型」とある。こういうところにも目配りしていく。もちろん「くさかんむり」にも目配りしているわけである。
先ほどの案文の中に出てきたことにかかわるが,5字目の「籠」の字に※が付いているのは,この字が,実際の活字としては,この資料のものと形が違っていることを表している。要するに,「立」の第1画が点ではなくて横型なのである。それを「メモ」というところに書いておいた。それが※の意味である。この字は,そういうデザイン上の違いの問題と,もう一つ異体関係のある字体も同時に出てくるという例である。
  そういう関係を細かく見ていくと,更に三つ下に行って,24番の「闇」という字の中の「音」という字の上側「立」のところが,点であるか,横棒であるかということなど,次々と出てくる。
  それで,大変面白いということで御紹介するが,左側の番号で39の「餅」であるが,明治以来,活字の標準字体として使われている字体がそこに見出しとして出ている。「食へん」は旧字体型だが,つくりは新字体の形をしているのが明治以来ずっと使われており,対応字体の中の左側のへんもつくりも旧字体型タイプのものは,康熙字典には出てきても,実際に使われた形としては出てきていないという大変貴重な研究結果も得られている。
  そういうようなことで,次の紙を,私どもが字体の問題やデザインの問題を考えるときに,細かいところまでをよく見ているという例として御覧いただきたいと思う。
  2枚目のところの「メモ」に,1枚目にもあったが,「29字」と書いてあるのは,この委員会が発足するときから問題にしていた,多くのワープロで略字でしか出てこないJISの29字。それが,凸版の資料ではいわゆる正字体,いわゆる康熙字典体という形で登場しているというのを御覧いただきたいと思う。
  こういう形だとちょっと見にくいので,めくっていただくと,タイトルとして「問題項目順」というふうに再整理したものがある。めくっていただくと,「祠」という字からずっと示してある。一番上から5字については「しめすへん」の問題である。その次,10字ほどはずっと「食へん」の問題である。その次の4字は「青」というつくりの部分の問題であるというようなことで整理をし直して,一字一字検討していくということである。
  この資料の左から三つ目に「漢字(字体)」として示している欄の下の方に行くと,「ホ」というふうに書いてある。これは先ほど申したように,法務省の通達で,平成3年から,戸籍上で,表外字であるけれども略体を使ってもよろしいということで示されている140字の表の文字については,「ホ」という注記をする形で示している。
  めくっていただいて,同じようにずっと続いているが,上の方を御覧いただくと,先ほどの「牙」の字が7字ほど連続して出てくる。「食へん」と「牙」のところを御覧いただきたいと思って,これを抜き刷りとしたわけである。
  それから,蛇足であるが,「ダ」というふうに書いてあるのは,大日本印刷の資料の中に出てくる字だということである。
  もう1枚めくっていただくと,3枚続いて,タイトルのところに「氏又は名の記載に用いる文字の取扱いに関する通達等の整理について(通達)」と書いてあるのは,さっきから言っている140字の表で,法務省の方で示しているものである。これも私どもの表外字の検討範囲に加えているということである。公的に使われているものなので,これも土俵の中に入れて目配りしている。
  この表では,同じ文字について,略体のものといわゆる康熙字典体とがそれぞれ並んでいるが,○で囲ってあるものは,注として手書きで書いてあるが,凸版の3200字の中に入っているものだということである。凸版・大日本・共同に入っていないのは,1行目では,i),ii)と書いてあるものである。それらをずっと3枚目まで見ていただくと,○の35まで登場するわけだが,更に1,2枚目のところで□でくくってあるものは,例の29字の中にあるので,これも既に検討しているものということになる。○で囲ったものと□で囲ったものは既に検討済みなので,この表から,実際に私どもが字体の問題を検討するということで目配りをしたのは30字になるということを見ていただきたくて御提示申し上げた。


○  それでは,第1委員会のコミュニケーションと言葉遣いの問題,それから,第2委員会で今お話があったように大変御苦労いただいて整理して,ある標準の下で検討を進めてまいった表外字字体表,これがいずれ公表されることになるわけであるが,何か御質問,御意見があったら伺わせていただきたいと思う。  


○  ちょっと末梢的なことであるが,第1委員会の6ページに,9「マスコミュニケーション」というところがある。この2行目に「番組制作者は」という文言があるが,番組制作者というのは一体だれか。先般から低俗性番組とか,何を持って低俗とするのかとか,最近は,中教審で問題になっているVチップとかSチップとかということをかんがみていろいろ検討しているが,「番組制作者」というのは,プロデューサーのことなのか,現場にいるディレクターなのか,あるいはその下で実際に働いている人なのか,実は本当に分からないわけである。
  そこで,私は,各放送局あるいは各新聞社の社長,つまり,経営者に問題があると考えているので,「番組制作関係者は」と「関係者」をお付けになった方がいいんじゃないか。そうしないと,特定の職種の人だけに責任を負わせるということになりかねないので,関係者一同全部が気を付けろというふうに御指摘になった方がいいと思う。


○  こういった御意見をちょうだいして,この次の第1,第2合同委員会の時には,更に各委員会の方で詰めたものをお出しする形になるので,ほかにもどうぞ。


○  これも些細なことかもしれないけれども,敬意表現というのは,言うなれば,素人的に言えば言葉遣いのことであるが,それとは別に,言葉自体に敬意がこもった言葉と敬意がこもらない言葉との別があるように思うが,そういうのはどこへ記述されることになるのか。
  私,最近非常に気にしているのは,あるいはいつかも言ったかと思うけれども,著名な人から駆け出しの人まで含めて,テレビのドラマなんかで男性の一人称がやたら「おれ」というのが多いことである。幾ら何でも若造が大先輩に「おれ」と言うのはおかしいんじゃないか,あるいは下の者が上役に対して「おれ」と言うのはおかしいじゃないかと思われる場面でも,頻繁に,しかも手慣れたベテランの劇作家などが,せりふに「おれ」と書いていらっしゃるようである。ともかく「おれ」というのは敬意に欠ける言葉で,「私」とか,「僕」とか,いろいろあると思うけれども,そういうのは敬語ではないが,一種の丁寧語ということになるのであろうが,それは一体どこに記述されることになるのか,ちょっとお尋ねしたいと思う。
  「おれ」「私」「僕」,その他似たようなケースはほかにも多々あろうかと思う。


○  具体的な言葉については,次期の国語審議会の審議にゆだねることとして,IIIでやることになると思うけれども,今おっしゃったようなことは,正に相手,場面に配慮して,いろいろな表現を選ぶというところに相当すると思う。今,おっしゃったことの内容は,いわゆる代名詞も敬語にかかわるので,特に二人称は「あなた」と言うか,「おまえ」と言うかというのは,相手によっても決まってくるような面がある。一人称の自分について言う場合もそれと対応して,「おまえ」に対するのは「おれ」であろうし,「あなた」に対するのは「私」であろうしというようなことを取り上げていくことになると思う。


○  ちょっと補足させていただく。
  7ページの一番下のところに「敬語の概要」というのが述べられているけれども,敬語の内容の説明がやや簡素であって,今のような代名詞の使い方のことは触れていないけれども,ここに補充する。「これからの敬語」でも二人称は「あなた」と言えというようなことが書いてあって,「これからの敬語」でも既に扱っている問題であるから,7ページ以下の「敬語の概要」のところを更に検討させていただきたいと思っている。よろしいか。


○  ありがとうございました。


○  第2委員会の方にお願いしたいのであるけれども,6ページの3「明朝体の字形と筆写の楷書字形との関係」という項目で,3行目の括弧内の,「(←活字字形としての「噂」などを,手書きするときはどのように書くのか,というようなことに対する,審議会の考え方を述べる必要があるか)」という部分に関して,私は是非お願いしたい。つまり考えを述べていただきたいと思っている。今までは「噂」だと「口」に「尊」を書けばいいと思っていて,そう書いていたけれども,活字の上の方が全部「八」になっていると,こういうふうに書かないといけないんじゃないかと思い出して,ちょっと気持ちが揺れたりしているので,これは私の個人的な意見であるが,ここを述べていただくと有難いという意見である。


○  ほかにはどうか。これと似たような問題で,ここに出ていなくて,こういうものはどうだということにお気付きだったら,今ついでに教えていただきたい。


○  ほかには「食へん」のことが気になる。


○  「食へん」は例として挙がってきているが…。


○  それがすごく気になっている。


○  了解した。御意見に感謝申し上げる。


○  それから「牙」も気になる。


○  第1委員会の言葉とコミュニケーションの問題である。私,第1委員会をサボっていて申し訳ないのであるけれども,最近,若者たちの間で,例えば「ムカつく」とか「キレる」というような言葉が非常にはやったり,それが即行動に出ているわけだけれども,3ページの「世代差の顕在化」というところで,「若者文化の優勢は言語生活にも反映される」という辺りに多少は触れているが,最近の若い人たちの言葉遣いと行動がどういうふうにかかわっているのか。言葉遣いと行動のギャップというか,差というか,その辺の問題にもう少し突っ込んで,言及した方がいいのではないかという気もするけれども,その辺のお考えがあったらお聞かせ願いたいと思う。


○  今の「キレる」とか「ムカつく」という問題と,敬語ないしは敬意表現との関係をどのように考えていくかは,これから検討させていただきたいと思うけれども,どこで出てきたか,良い言葉を使っていると良い人になるとか何か,やや楽天的かもしれないけれども,そういうことが書かれているところで結び付くのか,あるいはもう少し別の面で結び付けていくのかは,これから検討させていただく。ただ,直感で言うと,敬意表現と「ムカつく」は少し距離があって,その問題を国語審議会が扱わないというのではないけれども,我々の第1委員会に課せられている話題とはちょっと別なことではないかと思った次第である。これは第1委員会でまた改めて検討させていただく。


○  今の御指摘は世代差ということを述べているわけであるけれども,今おっしゃってくださったコミュニケーションの大切さというのはむしろ4ページ辺りのところで,ここでは余り若者だけを取り上げないで,コミュニケーションは双方向的なものだから言葉遣いに注意しなければいけないという,その辺で一般論化しておいてよろしいのではないかと思うが,また議論をしていけばいいかと思う。


○  さらに,勝手に付け加えさせていただくけれども,5ページの真ん中に「世代を超えたコミュニケーション」というところがある。さっきは問題点の指摘のところで,今度は,それにどう対応していくかということをここに書こうとしているわけであるが,確かに若者たちは発展途上にあって,もちろん完全ではないと思っているし,これからの発展を期待するわけであるけれども,高齢者の側にも今までのままでやっていっていいかどうかというようなことをここに書いている。
  例えば,昔なら女性に対して「まだ結婚しないの」とか「子供生まれないの」とかいうようなことは,決して非難されない表現としてされていたと思うけれども,現代になると,その辺は既に問題になってきて,高齢者の側も心構えを少し新しくする必要があるのかもしれないというようなことを,ここの・のところに書いている。
  今,御発言があったこととちょっと関係ないことを言ってしまって申し訳ないと思う。


○  第1委員会のことで,ちょっと感じたことを申し上げたいと思う。
  4ページであるけれども,(2)「コミュニケーションと言葉遣い」というところがある。
  第1委員会では非常に分かりやすく書いていただいて勉強になったわけであるけれども,(2)の「コミュニケーションと言葉遣い」については,あえて要らないような気もして,(3)を(2)にして,(1)から飛んだ方が非常によく分かるんじゃないかなという気が私はした。繰り返しになるのではないかなと思ったわけである。
  もう一つは,(3)のi)であるけれども,後ろから2行目に「一般的に広場の言葉によって」という表現があるが,これはどういうことなのか,私はちょっと分からなかったということを申し上げておきたい。
  それから,飛ぶけれども,9ページの上の方に(3)「敬語以外の敬意表現」ということがある。全体を読んでみると非常によく分かるけれども,「例えば」というところの4行目辺りが非常に分かりにくい。後のi),ii),iii),iv),v)というものの例示であるならば,あえてこういうようにまとめてここに再び出す必要はないのではないかなと思った。
  もう一つ,ついでに申し上げたいけれども,11ページの「敬意表現の教育」というところは,「敬意表現」という新しい概念を学校でどう教えるかということで,非常に関心を持たれるところだと思う。この中で,敬意表現を教育としてどう教えるかということも書かれているけれども,学校自身の現場での言葉遣いというか,先生間のコミュニケーションというか,そういうものが子供たちにとってはモデルになるということだから,教えるという意味と同時に,現場でどういう人間関係なり,教師間でコミュニケーションができているかということも,非常に大きなモデルとしての教育であるということを,是非1行なり2行なり付け加えていただきたいというように思う。
  第2委員会に関しては,私も勉強しなくてはと思うけれども,表現が非常に難しくて,正直申し上げて,なかなか分かりにくい。括弧とか,前の例がどうだった,こうだったというような脚注というか,そういうようなものは番号を付けておいて,最後に分かりやすく例示するような形で,すっと読めるというか,括弧を少なくしていくような文章に是非していただきたいなというのが,これはかなわぬお願いかと思うけれども,そういう印象を持った。


○  更に加わると覚え切れなくなるので,今のところでお答えしてよろしいか。
  ただ今,御覧いただいている第6バージョンというものは,今までの論議の結果を整理したわけであるけれども,御指摘のように,ちょっと重複が多いんじゃないか,あるいは多くないかもしれないが,とにかく重複部分があるんじゃないか,ちょっとくどいかもしれないと思われる。いろいろなものを積み重ねてあるので,そういうことになっているので,更に検討させていただきたいと思う。
  それから,例を挙げているのが,これで十分なのかという点もあって,今度は重複じゃなくて足りないというものもあるかと思っている。
  それから,教育のことを御指摘いただいた。ここでは「敬意表現」という言葉を使っているが,子供たちも,いわゆる敬語に関してはまだ未熟であろうが,対人関係で遠慮深くとか,断定的に言わずに文末をぼかすとか,そういう表現をしているのではなかろうか−子供同士,強い子供と弱い子供がいるとか,あるいは先生と子供の間でも。ここで述べる敬意表現に関するものが,自分たちが使っている言葉の中に実はあるんだということを教育の場で意識化していただくように,先生方は大変でいらっしゃると思うけれども,ただ枠を示して覚えろというのではなくて,そういう国語教育になっていくといいんじゃないか。それを目にして,将来一人前の人間として敬意表現が使えるようになっていくことを期待するというのではどうかという気持ちがあるが,さっきちょっとおっしゃった教師間の表現とか,そういうことにも関心を持ってもらうのも大事だろうと思うので,更に検討させていただきたいと思う。


○  二つほどあるが,私も第1委員会に籍を置きながら,その時にもう少し突っ込んだ議論をしてくればよかったと思って,こういうところで恐縮である。
  敬意表現という文字あるいは音を聞いたときに,「敬」という字が入っている限り,やはり敬意あるいは敬語を含んだ敬意というところが印象に残る。待遇表現という言葉は,先ほど専門性を持っているというふうにおっしゃったように伺ったけれども,私ども日本語教育の立場から申すと,待遇表現あるいは接遇表現という,どちらかと言うと「敬」とか「下を向く」ということよりも,大変ニュートラルな表現を使って言葉の運用を掘り下げてきている。例えば,7ページのi)「敬意表現とは何か」というところを読んでいくと,「敬語も含みつつ,その周辺の広い範囲の言語表現を総称した言い方である」。確かにそうではあるが,実態としては,こういう言葉を使っていいか,蔑視表現という言葉があるかどうか分からないが,どうしても人間であるから,さげすむような言葉遣いというものも実際に世の中にはあると思う。それをここでは大変きれいに,「親しくない人(ソトの人)に対して距離を置く言葉遣い」,あるいは「下位の者へのやさしい配慮」というように包み込んでおられるが,やさしくない気持ちというものもどうしてもあるので,そういうときの言葉を敬意表現の中に入れて考えられるということを,今後もう少し焦点を当てて議論していかなければならないのではないかと思った。
  第2には,国際化の時代に,できるだけ簡潔に明確に表現をする。結論がすぐ分かる,結論が先に来るような表現をするということを推進してきて,そういう言葉遣いが進められてきているわけであるけれども,簡潔に,結論を明確にという方向付けと,その中に敬意表現を含めていくという言葉遣い,その運用をどのように絡ませていくかということも,まだまだ議論が足りないところではないかと思い,その2点を申し上げた。


○  敬意表現という言葉遣いについては,それなりの議論をしているが,また,更に第1委員会で議論していったらと思っている。皆様に笑われてしまうかもしれないが,そこでは敬意という言葉は確かに使っているが,例えば「広さ」という言葉は「狭さ」のことも表す。「この部屋の広さは」というのは,絶対的には広くなくても使うから,敬意でもいいかとかというような議論もあったが,更に検討させていただく。
  「敬語の働き」というのが8ページの半分から下のところにあるが,ここでは「上位の人を高める」というのが最初にあるけれども,「親しくない人との距離をとる」とか,そういうのも働きとして出ている。
  実は「敬語」という言葉それ自体が,「敬」という字が付いているけれども,敬意だけではない働きを持っているわけである。本当は敬語という言葉もやめたらというような気持ちを持っている人もいるかもしれないが,既に長いこと使われているし,伝統的に敬意ということがその裏にある面を全く否定することはできない。そこで,更に広い範囲のことを言うときに何と言ったらいいかというのは,実は第1委員会あるいは敬語小委員会の悩みの種である。
  それから,国際化のことについて述べられたけれども,その辺も更に検討したいと思うので,委員会の論議に御参加いただきたい。


○  私も参加していないのにこんなところで申し上げるのは大変に恐縮であるけれども,第1委員会の方で,4ページの(3)の・に「「ソト」の人とのコミュニケーション」とあって,「ソトの人」という言い方を,わざわざ「ウチの人ではない人」というふうに説明をされているが,何かちょっとこなれていないというか,ピンと来ない表現のような感じがした。「仲間内」とか「内輪」とは言うけれども,「仲間外」とか「外輪」と言わないからかなと思ったのであるが,わざわざ言葉を作っているのに,ここで言いたいこととは少しずれているような感じを受けた。
  それから,先ほど徳川副主査の方からも少しあったが,10ページの上の方の・の話題の取り方の中に,「既婚・未婚」とあるが,さらに,結婚するとすぐに「子供はまだなの,どうしてなの」という言葉が大変傷つく言い方の代表というか,それが女性のプレッシャーになっているということは社会的にもかなり言われているので,せっかく例を挙げてあるので,そこにそのことも一言付け加えていただいたらいいなと思った。
  9ページに戻るが,その真ん中辺りの「i)  慣用的な決まり文句による表現」の例として,中ほどに「申し訳ございませんが」という表現があるが,これは日本語として正しいのか。私は何か変な日本語が最近増えてきたなと思って,今急速な勢いで,本当に街の中でも広がっている言葉だと思うが,「申し訳ない」の「ない」の部分だけをこういうふうにしてよろしいのか。今ちょっと知識がなくて,自分としては大変違和感がある表現のように思っていたので,ちょっと確認していただけたらと思った。


○  たくさん御意見をいただいているけれども,この第6バージョンはお持ち帰りいただいて,更にお読みくださって,いろいろ変なことがあったり言葉遣いでおかしいところがあったら,どうぞ国語課の方に御連絡いただきたいと思う。国語審議会として発表するものであるから,変な言葉を使うのは非常にまずいと思う。私あるいは北原主査個人の発表物ならいいけれども,是非丁寧に御指摘いただければと思っている。
  「ソト」という用語のことだけれども,ウチとソトというようなことに関しては,日本文化の一つの特徴としてウチ・ソトということを使うと思い込んで,ここで使っているが,また検討させていただきたいと思う。子供のことも考えさせていただく。
  この次に第1委員会があるので,申し訳ないが,よろしくお願い申し上げる。


○  副主査が全部答えてくださるので,更に付け加えることもないと思うけれども,「申し訳ございません」というのは,「申し訳ない」だけではなくて「申し訳ありません」という言い方があって,「ありません」を丁寧に言えば「ございません」になる。そんなにおかしい表現ではないと思うが…。答えが悪かったら申し訳ございません。


○  ほかに,第1委員会,第2委員会のことについて……。


○  私も,第1委員会の方も第2委員会の方も余り参加していなくて,こういうことを言うのは非常に恐縮であるが,最初の「コミュニケーションと言葉遣い」のところで,国際化とか,情報化とか,いろいろ書かれているが,敬語との関係で,一体どういう位置付けでこういうことが書かれているのか,必ずしも明快に分からないと私は思う。それと同時に,後の方で同じことを書いてある部分があるので,もっと簡単にされていいんじゃないか。ここら辺りは,一般的な国語あるいは言語の状況についていろいろ書かれているのであれば,書くことはもっとたくさんあるような気がするし,そうすると,こういう格好でどういうふうに敬語との関係が位置付けられているのかが,余りはっきりしない。これは一つの意見として考えていただければいいと思っている。
  それから,言葉の非常に細かいことで恐縮であるが,この第1委員会の答申を読んでいると非常に目障りなのが一つあって,いろんなところに中ポツを非常にたくさん使っておられる。第2委員会の方はほとんど使っておらず,はっきり論旨が分かるわけであるが,中ポツの使い方というのも,かつて外来語のときに議論されているような形跡がある。中点というか,同種のことを並べるときには中ポツを使うというのは私たちも承知しているわけであるけれども,およそ関係のないようなことも中点で書いておられる。これは論理的にどういうふうに考えて書かれているのかというのがよく分からない部分があるので,その辺はできたら論理的にきちんと分かるように,修正する必要があれば修正していただきたいなと思う。
  第3点目に,この中で常用漢字以外の言葉も結構使われている。これは政府の答申であるので,常用漢字以外を使ってもいいのかどうか,その辺はまた御検討いただければいいかと思う。


○  最初のことだけについて−国際化であるが,確かに御指摘のように,敬意表現だけではなくて,現代社会の言葉遣いがどうなっているかということをとらえようとしていて,すべてが敬意表現のための分析ではないけれども,非常に多様な現代の社会を押さえて,どういう言葉遣いにすべきかという辺りが難しいところである。国際化ということで,分かりやすい敬語の一方,日本人あるいは日本語のアイデンティティーというか,国際化であるがゆえに日本的な表現も大事にしなければいけないというようなことで国際化をとらえているということであるが,まだ時間もあるようだから,もう少し考えたいと思う。


○  ちょっと付け加えさせていただきたいと思う。
  国際化と情報化のことがくどく出るというふうにお感じになるかもしれないが,それは一つはIのところの書き方の問題があって,Iの中の「1  現代日本社会と日本語の状況」というところに国際化・情報化のことが出てきて,2の「人間関係と適切な言葉遣い」の(3)「現代日本社会における様々なコミュニケーション」というところでまたそのことに触れる。こういうことがあって,どういう方向付けをするかというのを後で書いているものだから,何か2度出てくるというふうにお感じになるのかもしれないと思われる。この辺ももう一度考えさせていただくけれども,国際化のことが出てくるのは,一つは国語教育もあるが,日本語教育,海外で日本語を学んでいる人が数百万人いるというものに対応することも配慮するということであろう。
  それから,情報化の方は,ネチケットとか何とかという言葉があって,新しいネットワークの中で思わぬトラブルが生じたりしているけれども,そういうことへの配慮を先取りしようとしている。ただ,言葉が足りなくて,お読みになる方に御理解が届かないという危険はあるかもしれない。
  それから,常用漢字の使い方とか中黒の使い方などは,もう少しお化粧をきれいにして再登場したいと思っている。


○  第1委員会の小委員会に属していて,第2委員会には,そちらの方に大いに興味があるのであるが,ほとんど出席できなくて残念である。
  大きなところで伺いたいと思う。印刷標準字体の例が出たが,これとJIS規格の例示字体との関係がどうなっているかということについて伺いたい。それは実はISOの規格,ユニコードではどうなっているかともかかわるが,私がちらちらと見た限りでは,JISの方の例示字体よりもっと古いというか,康熙字典体に戻るのがあるように思われる。ということは,ずっと前の話だと,通産省の方では国語審議会の結果に従うということであるから,この間定まったばかりのJISの規格がまた4〜5年後に変わるということになるのか。
  全体の方針としては,今日は大変よかったかと思う。常用漢字の字体は変えない。それから,常用漢字以外の表外字についても通用のものを採用するということで,その方針は結構である。
  ところで,その時の資料にしたのが,要するに,印刷された活字。今は出版物でも活字を使わないのであるが,我々が近ごろ目にするのは,ワープロから直接プリンターで打ち出された文字じゃないかという気がする。そうすると,「牙」というのは,古い文庫本なんかでは見るけれども,ワープロから打ち出されたもので見るとしたら,JIS規格の字形になっているんじゃないかと思う。これは国際規格ともかかわるので重要な問題だと思う。時間がないので,お答えは結構である。
  それから,徳島での会議には,日本から,国語審議会の関係者はオブザーバーとしてもう少し大勢参加できるんじゃないかと思うが,第2委員会の方の議論を見ると,ある発言の中で,国際的なことは視野に入れる余地がないというようなことが発言されていたようである。そういうお考えの方がいらっしゃるかもしれないが,勉強のつもりで,徳島の会議に第2委員会の方がお出になるということについてはどうお考えであろうか。これは質問として出させていただく。


○  後の方のことについてだけ触れさせていただく。広く物を見なければいけないというのは確かなことであるから,委員会の中でも,私が行けるかどうか分からないで勧めるのは悪いが,参加するように勧めたいと思う。
  最初の方の資料に関連する部分のところは,事務局の方から一言お話ししておいた方がいいんじゃないかと思う。


大島国語課長  JIS規格の例示字体との関係については,私どもと通産省の担当課との間では,国語審議会の考え方が打ち出され,固まったら,それをJIS規格に反映させるんだという話を聞いているし,それは別にJIS規格が5年ごとに見直すという通例にこだわることなく,必要が生じた時点でやるという話を事務的にはしているつもりである。
  ただ,第4次規格自体は別に字体を変えるというふうな形の取り扱いをしたものではないけれども,包摂云々というような話もあって,ややこしい複雑な要素が入ってきたと思うが,そもそも昭和58年のJIS規格の改正の中で,ある意味でJISの調査会の一方的な考え方で字体を変えてしまって,世の中に迷惑を掛けた面がある。だから字体をいろいろ変えるのはいかがなものか,規格の性質上,継続性をできるだけ重要視したいという立場での御意見も,一部の委員にはあるように聞いている。しかしながら,事務的には,あれは飽くまでも例示字体で,字体について,国の文字としてこういう在り方が正しいんだということを決めるのは国語審議会の方であるというふうに了解が付いていると考えている。
  徳島については,先般ベトナムに行った笹原研究員からその様子を聞いたところであるけれども,少なくとも同研究員にはお願いをして参加してもらう。また,可能であれば,国内でやることでもあり,それ以外の者の出張ということの必要性も考えてみたいと思う。


○  もう少し御議論をいただきたいと思うけれども,終了の時間となったようである。
  第1委員会,第2委員会には大変御苦労いただいて,報告書というような形では一応何かまとまりが見えてきたという感じがしている。先ほどもちょっと話があったように,これは御覧をいただいて,更にこういった点はどうなんだということがあれば,事務局の方へお知らせいただきたいと思う。
  第1委員会は前から報告という格好で取りあえずまとめ,また,第2委員会の方もできれば答申まで持っていきたいという考えもあったけれども,6月までが私どもの任期であるので,報告という形で公表をする。そして,いろいろな外部の団体の意見を伺った上で,来期にまとめが答申されるというような形になるかと思っている。そういうような形でこれから進められていくかと思う。


○  ただ今問題が提起されたJIS規格との関連について,一言だけ申し上げたいと思う。
  JIS規格というのは5年ごとに必ず改訂されるもので,そういうふうに法令で決まっている。したがって,今,大島課長から御説明があったように,その5年の間でも,こちらの言い分があれば聞くという体制ができつつあると私は信じているけれども,こちらがぼやぼやしていると,5年ごとに,産業界の経済的要請を基にして,いろいろな略体字ができるとか,いろいろなくくりがなされてしまうとかということは起こり得るわけである。
  したがって,今期はもうすぐ終わるけれども,22期,23期と国語審議会はずっと続くであろうから,その際に,文化庁側から,笹原研究員お一人に頼るのではなくて,これは文字文化の問題である,単なる産業界の経済的要請のみによって四捨五入が行われては困るのであるということを常に言い続けなければいけないだろうと私は考えている。
  第21期もそろそろ終わりであるから,この機会を借りて,ちょうどいい御質問があったので,一言だけ付け加えさせていただいた。


○  大変貴重な御意見をちょうだいした。先ほども申し上げたように,更に何か御意見があれば,事務局の方へお知らせいただきたいと思う。
  それでは,これで終わりたいと思うけれども,次回の総会を最終総会にしたいと考えている。日程を申し上げると,6月24日の午後2時から4時ということで,お願いしたい。それに先立って,先ほどもちょっと申し上げたが,6月4日の2時から4時半くらいまで時間をとらせていただいて第1委員会,第2委員会の合同委員会を開き,今日の御意見等々も踏まえながら整理したものを持ち寄って,今期の報告書になるものをまとめたいと考えている。第1委員会,第2委員会合同であるので,なるべく多くの委員に参加していただくという格好になるかと思うが,その点をどうぞよろしくお含みいただいて,御予定いただければ有り難いと思う。
  それでは,これで今日の会議は終わることにする。

(文化庁国語課)

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