| 著作権審議会権利の集中管理小委員会専門部会中間まとめ |
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はじめにーー問題の所在ーー 第1章 集中管理とは何か 第1節 集中管理の範囲 第2節 集中管理の意義 第3節 技術革新と著作権管理 第2章 現行制度及び集中管理の現状の概要 第1節 現行制度の概要 1 著作権に関する仲介業務に関する法律(仲介業務法) (1)制定の経緯 (2)仲介業務法の内容 (3)仲介業務法の運用 (1)小説 (2)脚本 (3)楽曲,楽曲を伴う場合の歌詞 (4)戦後の占領政策と仲介業務 2 商業用レコードの二次使用料等に係る指定団体制度 (著作権法第95条,第95条の2,第97条,第97条の2) 3 私的録音録画補償金に係る指定管理団体制度(著作権法第104条の2) 第2節 集中管理の現状の概要 1 著作権 (1)小説等の文芸作品 (2)脚本 (3)音楽 (4)美術 (5)写真 (6)放送番組,劇映画等 (7)学術論文 (8)キャラクター 2 実演家の権利 3 レコード製作者の権利 4 著作権等の共同行使 (1)私的録音録画補償金 (2)その他 第3章 著作権制度審議会答申の概要 第1節 見直しの背景 第2節 答申の骨子 第4章 外国の法制度及び集中管理団体の現状 1 ドイツ 2 スペイン 3 フランス 4 スイス 5 アメリカ合衆国 6 イギリス 7 カナダ 8 イタリア 第5章 著作権の集中管理制度のあり方 第1節 集中管理に関する法的基盤整備の必要性 第2節 法的基盤整備に関する基本方針 第3節 法的基盤整備の対象とすべき範囲 第4節 具体的な法的基盤整備の内容 1 業務の実施 (1)業務実施の開始 (1)規制の必要性 (2)同一分野における集中管理団体の参入規制 (3)集中管理団体の営利・非営利性 (4)業務実施の規制の方法 (5)権利委託に関する契約約款,使用料の分配方法及び手数料 (2)業務実施の開始以降 2 使用料等の規制 3 紛争処理制度 第5節 集中管理の分散化と新たな集中管理の可能性 第6章 著作隣接権の集中管理制度のあり方 第7章 指定団体制度等のあり方 第8章 その他の集中管理に関する問題 1 著作権等の集中管理と権利情報の集中管理 2 文化目的,社会目的等の共通目的基金の創設 3 著作権等に係る登録制度の整備 4 集中管理団体における職員の資質の向上 5 集中管理団体協議会(仮称)の設立 はじめに−問題の所在− ○ 著作権の集中管理は,著作権を保護する一方で著作物の利用の円滑化を図る最適な方法の一つとして,古くから発達してきた。 第1章 集中管理とは何か 第1節 集中管理の範囲 ○ 仲介業務法では,仲介業務を次のように定義している。 (定義) 第1条 (1) 本法において著作権に関する仲介業務と称するは著作物の出版,翻訳,興行,放送,映画化,録音その他の方法による利用に関する契約につき,著作権者のために代理又は媒介を業としてなすをいう。○ また,1989(平成元)年,世界知的所有権機関(WIPO)国際事務局が独自にまとめた研究報告書「著作権及び著作隣接権の集中管理」によれば,著作権等の権利の管理形態は,権利者自身が管理する「自己管理」と権利者が管理機関に権利の行使を委任する「集中管理」に大別され,その「集中管理」については,管理機関が権利者から権利行使の委託を受け,「著作物の使用を監視し,使用を希望する者と交渉し,適当な使用料と交換に許諾証を発行し,使用料を徴収し,権利者に分配する」ことと定義している。 ○ 本専門部会は,仲介業務法の定義及び上記WIPO国際事務局の報告内容を参考として,検討対象とする『集中管理』の範囲を次のように設定することとする。 ア 集中管理の典型的形態としては,多数の権利者から,著作物,実演,レコード,放送又は有線放送(以下「著作物等」という。)に係る権利の行使に関する委託等を受け,著作物等の利用を監視し,利用者と交渉し許諾を与え,使用料を徴収し,委託者に分配することを業として行うこととする。○ これに対し,自らの権利を自らが管理することや自らが経営する会社など本人と同一視しうる会社により自己の著作物の管理を行わせることを,『個別管理』と位置付けることとする。 第2節 集中管理の意義 ○ 著作権等については,排他的・独占的権利にもかかわらず,所有権などの有体物に対する支配権や,物の発明に関する特許権のようにそれを利用するためには一定の製造設備等が必要であり,権利者がその利用実態を把握しやすいものとは異なり,特別の製造設備等を有しない一般人でも無断利用が容易かつ広範に行われやすいとの特性を持つ。特に音楽の演奏のような無形的な利用については,誰でも利用することができ,また利用後に無断利用の証拠が残らないことから,個人で権利を管理することは事実上不可能に近い。 ○ このように著作権等はもともと管理が難しい権利であるが,集中管理は,その歴史が示すとおり,利用者側の著作権尊重の意識の低い状況の中で無断利用が横行したことを契機に,これに対抗し権利者自身が自らの権利を守るために始めたものであり,現在においても集中管理団体は権利者団体である場合がほとんどであることにもあらわれている。 ○ しかし,著作物利用手段の開発普及とともに,利用者の著作権等に対する意識も徐々に高まり,それに伴って,利用者が適法に著作物等を利用するために簡易迅速な手続きでかつ適正な使用料で使いたいとする要求も生じてきたところから,集中管理は,一方で利用者の要請に答えて行われるという側面も有するようになってきた。 ○ 特に,最近におけるデジタル化・ネットワーク化技術の発達により,この傾向は一層加速しつつある。 ア 特別の施設設備等を有しない者でも容易に著作物等の利用を行うことができるようになったこと○ アについては,著作物等の利用手段が社会の広い分野に普及することにより顕在化してきた。複写機器の普及による論文等の複写がこれに該当するが,カラー技術の進歩により,絵画や写真の複写の可能性が増してきた。録音録画機器の普及による私的録音録画も同様である。最近では,インターネットの普及により個人がホームページを簡単に開くことができるようになり,音楽,映像作品,コンピュータプログラム等が無断で利用される状況が生じている。また,反対にインターネットの普及により,利用者は世界のどこからでも情報を引き出すことができ,必要に応じ,印刷やCD−ROM等の記録媒体に複製することが簡単にできるようになった。さらに,デジタル技術の普及により,何度複製しても音質,画質等の品質が劣化しなくなってきた。 ○ イについては,放送,有線放送が代表例である。最近ではCS放送の普及によりチャンネル数が増え,専門チャンネルも普及すると,音楽などの従来からよく利用されていた著作物等はもちろんのこと,例えば美術作品,写真,映像作品なども大量に利用される可能性がでてきた。また,記録媒体の容量が飛躍的に大きくなり,例えば通信カラオケのように1万曲以上の音楽と映像をデータベースに蓄積し提供することも容易になった。 ○ ウについては,最近特に顕著になりつつある。例えば,データベースサービスのようにネットワークを介した利用においては,著作物等の蓄積,提供及び受信の一連の過程の中で,複製権,公衆送信権などが複合的に働くような利用が多くなってきた。 ○ エについては,記録容量の増,圧縮技術の向上等により,映像作品の利用可能性が増している。また,美術や写真についても,解像度が高くなると,展覧会や出版物を通して観賞するのに加え,静止画による観賞という可能性が出てきた。さらに,CD−ROMなどを用いたマルチメディア・ソフトのように動画,静止画,音声などが同一の媒体で利用できることになるとともに,ネットワークの普及により,従来はパッケージ商品として流通していたものが,国境に関係なくネットワークを介して流通することになるなど,著作物等の新しい利用可能性が生まれている。 ○ 以上のように著作権等の集中管理は権利を保護するという立場から出発し,次第に利用者からの要求に応えて簡易迅速な許諾手続きを提供するという立場を加味しつつ,現在では,権利を保護する一方で利用の円滑化を図る最適な方法の一つとして考えられている。著作物等の利用が社会の広範囲な分野で不可欠なものとなっている現在,分野によってその実態は異なるものの,集中管理によって許諾を前提とした権利処理を円滑に進める意義は大きく,健全な集中管理の発展が望まれるところである。 ○ なお,集中管理を行う理由の一つとして,個別管理に任せると権利者と利用者との力関係により権利者の不利になる可能性があるので,利用者から権利者を保護する必要があるためという考え方がある。この場合は,円滑な利用を求める利用者の要求に応えるという側面よりも,個別管理に任せると権利が買い取られたり安い使用料で許諾せざるを得ないので,著作者等は団結する必要があるという権利者側の事情がある。労働組合又は協同組合にも共通する考え方であるが,権利者団体である集中管理団体には少なからず見られる一面である。 ○ なお,著作権等の集中管理は,報酬請求権等の権利行使で著作権法上定められた一定の場合を除き,あくまでも著作者個人の権利の行使であることから,権利者が,集中管理団体に権利を委託するかどうかは任意のものであることはいうまでもない。 第3節 技術革新と著作権管理 ○ デジタル化,ネットワーク化の技術の発展はめざましく,CDーROM,DVDなどの大容量・高品質の記録媒体の開発普及,インターネットなどのネットワーク技術の普及によって,著作物等の多様な利用が可能となってきた。 ○ このような技術革新の急な中で,コンピュータ技術及びネットワーク技術による許諾システムや使用料徴収システムを組み合わせることにより,許諾を前提として使用料等の許諾条件をあらかじめ権利者自身が登録する方法により権利処理を行えばよく,このような方法の採用によって権利の集中管理の必要性は低下し,個別管理の可能性が生じてきたとの指摘があるところである。 ○ また,現在関係者の間で実用化に向けて検討が進められている著作権権利情報集中システム(J−CIS:Japan Copyright Information Service System)が実現し,権利の所在情報の検索が容易になると,さらに個別管理の可能性は高まるとの意見もあるところである。 ○ 集中管理は,簡易迅速な権利処理手続を利用者側に提示するとの要請から,特に音楽などの大量に利用される著作物については,演奏,放送等における権利処理のように自己が管理している全著作物の一定の利用行為に対して許諾を与える包括許諾方式を導入するとともに,個々の著作物について一定の利用行為ごとに許諾を与える個別許諾方式においても使用料は著作物ごとに差を設けず一律1曲いくらの定額使用料を導入してきた。また,包括許諾方式においても,事後に曲目報告を義務付けることにより,実質は個別許諾方式と同様の精度で分配を可能にしている。例えば,新しい技術である通信カラオケの例で見ると許諾は事業収入の一定割合の使用料の支払いを条件とする包括許諾方式ではあるが,システム全体として又は個々の店でどの曲が何回利用されたを正確に把握することは技術的には可能である。 ○ このように技術革新は現行の集中管理においても包括許諾方式によるのか個別許諾方式によるのかの選択肢を増やすととともに分配精度の向上に大きな貢献をすると思われる。また,技術革新により,集中管理であっても委託者の希望する使用料の額で徴収を行うことや許諾の条件を権利者ごとに又は曲ごとに変えることができる可能性も生じてきた。 ○ 技術革新によって個別管理の可能性が増えるのは事実であろうが,権利者が集中管理を選択する動機としては,例えば,個別管理のための事務の煩雑さや経費負担を回避したいこと,集中管理団体は無断利用者に対する監視業務を行ってくれること,集中管理団体を脱退することがかえって自己の地位を弱めることにつながることなどその理由は様々であると考えられる。 ○ したがって,集中管理か個別管理かの選択は,権利者の任意の選択に任されている限り,権利者自身が決定すべきものであるが,技術革新は確実に多様な管理方法や形態を可能にさせる方向に動いている。 第2章 現行制度及び集中管理の現状の概要 第1節 現行制度の概要 1 著作権に関する仲介業務に関する法律(仲介業務法) (1)制定の経緯 ○ 仲介業務法は,昭和14年に制定された著作権の仲介業務を規制する法律である。制定の直接の要因となったのは,当時,社会問題にまで発展したいわゆる「プラーゲ旋風」である。ドイツ人のウイルヘルム・プラーゲ氏は,BIEMなどのヨーロッパの主要な著作権の集中管理団体の代理人として,昭和6年頃から我が国で業務を行っていたが,国民の間では著作権思想がまだ普及していなかったこと,また,プラーゲ氏が当時としては高額な使用料を請求していたことなどから,民事訴訟や刑事告訴が多発したり,強硬な権利行使により外国曲の放送ができなくなるなど,大きな社会問題となっていた。 ○ このため,次のような理由から仲介業務法が制定された。 ア 我が国における堅実なる仲介業務団体を設立するため,仲介業務団体の数を制限し,業務遂行を容易ならしめるため適当な指導監督を加えることにより仲介業務団体を育成する必要があること (2)仲介業務法の内容 ○ 仲介業務法の概要は資料2のとおりであるが,基本的枠組みとしては,業務については許可制,著作物使用料については認可制を採用している。なお,法律に許可基準は一切なく,許可するかどうかは全て主務大臣(現在は文化庁長官)の裁量に委ねられる形となっている。 ○ 仲介業務法の適用対象となる著作物については,勅令(政令)で定めることになっており,小説,脚本,楽曲を伴う場合における歌詞,楽曲とされた。これは,規制対象を必要な分野に限定するという方針から,当時比較的頻繁に利用され,仲介業務を行おうとする団体ができる可能性があったものなどについて限定列挙されたものである。 ○ なお,仲介業務法は,制定以来現在に至るまで実質的な改正は行われていない。 (3)仲介業務法の運用 (1) 小説 ○ 昭和14年,「社団法人大日本文芸著作権保護同盟」(現 社団法人日本文芸著作権保護同盟)が設立され,同年仲介業務の許可を受けた。当初,小説の著作権については委託者が非常に少なく,昭和21年以降は業務を中断していたが,昭和43年に改めて仲介業務の許可を受けて業務を再開し,現在に至っている。 (2) 脚本 ○ 昭和49年に「協同組合日本放送作家組合」(現 協同組合日本脚本家連盟),平成3年に「協同組合日本シナリオ作家協会」が仲介業務の許可を受け,現在に至っている。 ○ 同一分野について二つの団体が認められたのは,両団体の歴史的経緯による例外的な措置であり,平成3年に日本シナリオ作家協会を許可した際,文化庁は,既に許可していた日本脚本家連盟と仲介業務を統合することを指導している。 ○ 日本脚本家連盟と日本シナリオ作家協会は,現在に至ってもなお仲介業務の統合を実現していないが,二重委託等の問題はなく,業務を共同で行うことも多いので,実務上,二つの団体が存在することによる不都合は生じていない。 (3) 楽曲を伴う場合における歌詞,楽曲 ○ 昭和14年,「社団法人大日本音楽著作権協会」(現 社団法人日本音楽著作権協会)が設立され,同年仲介業務の許可を受け,現在に至っている。なお,プラーゲ氏も昭和15年に許可申請を行ったが不許可処分とされた。 (音楽出版者の集中管理) ○ なお,音楽出版者は,当初は主として楽譜を出版し,これを宣伝普及することが業務であったが,戦後欧米型の音楽出版者に移行し,著作権の管理も行うようになった。このような音楽出版者の業務の仲介業務法上の取扱いについては,昭和36年10月に著作権制度調査会委員国塩耕一郎氏からの照会に対する文部省の回答という形でその解釈が示されている。 ○ 国塩氏は,その照会の中で音楽出版者の著作権管理業務を次のように定義した上で,音楽出版者が譲渡を受けた著作権を日本音楽著作権協会に委託し管理を行わせる場合は,仲介業務法に抵触しないかどうかについて照会した。 ア 音楽著作権を,著作権の全存続期間又は一定期間を限り,代金の支払いに関する特定の条件付きで譲り受ける。○ この照会に対し,文部省は,昭和36年12月に,「音楽出版者の行う行為が,条件付きで譲渡を受けた音楽著作物の著作権により自ら出版し,自ら写調物を発行する等当該出版者が直接その著作権を使用する行為にとどまり,他の使用者による使用についての契約等はいっさい社団法人日本音楽著作権協会が行うものであるならば」,音楽出版者の行為は,仲介業務法上,仲介業務とはみなさない旨の回答をした。 ○ したがって,これを換言すれば,仲介業務法では,音楽出版者が著作者からア及びイの方法により著作権を譲り受け他人に許諾を与える業務を行う場合には,同法第1条第2項でいう「著作権の移転を受け他人の為に一定の目的に従い著作物を管理する行為」に該当し規制の対象と解釈されることになると考えられる。 (4) 戦後の占領政策と仲介業務 ○ 戦後,外国の著作権は連合国最高司令部(GHQ)の管理下に置かれ,その仲介業務についてもGHQによる許可が必要とされた。当時,ジョージ・トーマス・フォルスター(フォルスター事務所,米国),レオン・プルー(株式会社フランス著作権事務所,フランス)など四者がGHQの許可を受けた。我が国が主権を回復した後,これらの者は一斉に仲介業務の許可申請を行ったが,昭和28年,文部省はこれに対し,申請の許可の決定を当分の間保留するとした上で,仲介業務法の趣旨を尊重し業務を継続している限り,違法なものとして取り扱う意思はない旨の暫定黙認の回答をしている。 ○ なお,主に外国曲の録音権に関する仲介業務を行っていたフォルスター事務所については,昭和49年,文化庁から正式に許可を受けたが,同年業務を廃止している。 2 商業用レコードの二次使用料等に係る指定団体制度 (著作権法第95条,第95条の2,第97条,第97条の2) ○ 著作権法上,実演家及びレコード製作者に認められた商業用レコードの二次使用料を受ける権利及び商業用レコードの貸与報酬を受ける権利については,著作隣接権のように許諾権ではなく,商業用レコードが放送又は有線放送されたとき又は貸レコード店で貸し出されたときに,当該放送局又は貸レコード店から二次使用料又は報酬を受けることができる権利である。これらの権利は,個々の実演家又はレコード製作者に与えられた権利ではあるが,個々の権利者が直接行使するとその数は膨大なものになり,支払い側の事務処理も大変煩雑になることから,一定の要件を備えた権利者団体がある場合で当該団体を文化庁長官が指定したときは,当該団体によってのみ権利を行使させる制度になっている。 ○ この制度により,本来個々の実演家等に与えられた権利が一つの包括的権利であるかのように行使されることから,権利処理は指定団体と個々の放送局・レンタル店等又はこれらにより構成される業界団体との協議によって額を決めることができる。 指定団体 ア 商業用レコードの二次使用料を受ける権利 実演家 社団法人日本芸能実演家団体協議会 レコード製作者 社団法人日本レコード協会 イ 商業用レコードの貸与報酬を受ける権利 実演家及びレコード製作者ともアと同じ なお,具体的な制度の内容については,資料3を参照。 3 私的録音録画補償金に係る指定管理団体制度(著作権法第104条の2) ○ 著作権法第30条及び第102条では,私的使用のための複製について著作 者等の権利を制限しているが,デジタル方式の機器及び記録媒体を用いた私的録音録画の場合については,一定条件の下,利用者は著作権者及び実演・レコードに係る著作隣接権者に相当な額の補償金を支払わなければならないことになっている(第30条第2項,第102条第1項)。この私的録音録画補償金を受ける権利については,前述の指定団体制度の場合と同様,個々の著作権者等が行使することは事実上不可能であることから,一定の要件を備えた権利者団体がある場合で当該団体を文化庁長官が指定したときは,当該団体によってのみ権利を行使させる制度になっている。 ○ この制度は,補償金の支払義務者は著作物等の利用者であるが,実際は協力義務者である録音録画機器及び記録媒体のメーカー等から徴収すること(第104条の5),補償金の額は文化庁長官の認可にかからしめていること(第104条の6)などの点で指定団体制度とは異なるが,個々の権利者の権利行使が事実上不可能なことから円滑な権利処理のために設けられた制度という点では同じである。 指定管理団体 私的録音 社団法人私的録音補償金管理協会 私的録画 社団法人私的録画補償金管理協会 第2節 集中管理の現状の概要 1 著作権 (1)小説等の文芸作品 ○ 日本文芸著作権保護同盟(委託者数919名,平成10年度使用料徴収額約3億 2,900万円)が集中管理を行っているが,その管理対象は,放送番組の製作・放送,ビデオ化,上演などの二次利用に限られている。また,委託者数も限られており,日本音楽著作権協会のようにほとんどの作家の権利を管理しているわけではない。なお,出版等の一次利用については,著作者自身と利用者である出版社等が直接契約する場合がほとんどである。 ○ 保護同盟における権利委託の方式は原則として信託であるが,文芸作品の場合はほとんどが個別許諾方式によることから,実務上は利用の申込みがあるたびに委託者本人の意向を確認した上で許諾契約を行っており,むしろ媒介に近いといえる。 ○ また,出版された後の翻訳,映画化等の二次利用については,出版の際の契約により,著作権者が二次利用の権利行使を出版社に委任している場合は,出版社が利用契約を行うことがあるが,この場合,利用の申込みごとに著作権者の了解を得るのが通常である。 ○ さらに,主に外国作品が国内で翻訳される場合の契約の代行を専門に取り扱う,いわゆる翻訳エージェンシーも何社か業務を行っている。 (2)脚本 ○ 日本脚本家連盟(委託者数1,393名,平成10年度使用料徴収額約12億360万円)及び日本シナリオ作家協会(委託者数328名,平成10年度使用料徴収額約2億4,500万円)の2つの集中管理団体があり,両団体でほとんどの脚本家の権利を管理している。 ○ 管理の対象範囲は,両団体とも主に放送番組の再放送,劇映画の放送,放送番組等のビデオ化などの二次利用であり,権利委託の方法は原則として信託である。権利処理の方法は,原則として個別許諾方式である。 (3)音楽 ○ 日本音楽著作権協会(委託者数11,283名,平成10年度使用料徴収額約984億8,300万円)が音楽著作権に関する我が国唯一の集中管理団体として,演奏,公衆送信,録音,出版など全ての利用形態を管理対象としている。商業的に利用される音楽については,個人で権利を管理している場合は少なく,同協会は実質的に市場を独占している。 ○ 同協会に権利を委託しているのは,主に作詞家,作曲家及び音楽出版者であるが,このうち音楽出版者が持っている権利は,同協会に権利を直接委託していない作詞家,作曲家から譲渡されたものである。権利委託の方法は,委託者の全作品の著作権全部の信託であり,作品ごとあるいは支分権ごとの委託はできない。また,外国の集中管理団体との相互管理協定の締結,または外国曲を管理している音楽出版者からの委託を受け,外国作品の我が国における利用についても管理対象としている。 ○ 利用許諾の方式については,利用形態によって,社交場の演奏や放送のように包括許諾方式によるものと,映画録音,出版のように個別許諾方式によるものとがある。 ○ なお,音楽出版者については,音楽出版社協会に加盟している約260社のほか,多数の未加入の会社等が存在する。また,音楽出版者の中には,外国の音楽出版者との契約により外国曲に関する我が国における著作権者(実際の管理は日本音楽著作権協会へ委託)として業務を行っているところも多い。 (4)美術 ○ 美術の分野は,仲介業務法が適用されず,自由に集中管理を行うことができるが,現状では,音楽,小説,脚本の分野のような集中管理団体が存在せず,大半を各著作権者が個別に管理している。 ○ 従来,美術の著作物の利用方法は,出版,展示などの一次利用がほとんどで,集中管理の必要性は低いと考えられていたが,近年,マルチメディアコンテンツへの利用などの二次利用が多くなっていることから,平成7年5月,日本美術家連盟,全日本写真著作者同盟及び日本グラフィックデザイナー協会の3団体が美術著作権機構という団体を設立し,集中管理体制の整備をめざしている。また,日本美術家連盟は,一部の放送局と協定を締結し,会員の作品の放送権の処理を行っているほか,展覧会での図録等への掲載に関する権利処理も行っている。 ○ なお,外国作品については,平成4年,フランス著作権事務所の美術部門を引き継ぐ形で美術著作権協会という団体が設立され,外国の15の美術著作権の集中管理団体と業務提携し,これらの団体の管理作品の日本における利用についての許諾の仲介を行っている。 (5)写真 ○ 写真の分野についても,美術と同様であり,音楽のような集中管理団体は存在しないが,前述した美術著作権機構が集中管理体制の整備をめざしている。 ○ なお,現在,全国に約200社の写真エージェンシーがあり,写真家からネガを預かり,書籍,雑誌,ポスター等への利用について,複製の許諾とともにネガの貸与を行っている実態がある。 (6)放送番組,劇映画等 ○ 映画の著作権を取り扱う集中管理団体はない。放送番組,劇映画等のビデオ化については,個々の映画の著作権者とビデオソフトの製造者との間の個別許諾方式による権利処理がほとんどである。この場合,原作,脚本,音楽などについては,前述の集中管理団体又は個々の著作権者との個別許諾方式による権利処理が行われている。 ○ ビデオレンタルについては,邦画の著作権者(12社)から権利委託を受けた日本映像ソフト協会が,日本文芸著作権保護同盟,日本脚本家連盟,日本シナリオ作家協会及び日本音楽著作権協会の権利者四団体と連名でビデオレンタル店に対し貸与許諾を与える「日本映像ソフト協会個人向けレンタルシステム」が運用されている。ただし,この場合,貸与使用料は日本映像ソフト協会が徴収せず,各ビデオソフトの供給ルートからビデオの提供を受ける際に商品の料金に上乗せして直接権利者へ支払うことになっている。また,各権利者団体への使用料の支払いは,使用料を受け取ったビデオメーカーが行うことになる。 なお,洋画及び邦画の一部は,供給を受けたビデオソフトを販売するか貸与するかは原則として店の自由とするフリーダム方式を採用している。 (7)学術論文等 ○ 学術論文等の著作権のうち複写に係る権利については,著作者,学協会及び出版社12団体によって日本複写権センター(平成10年度徴収使用料額約1億 6,100万円)が設立され,平成4年から業務を行っている。現在のところ,企業内における複写が主たる管理対象であり,約2,400社の企業等と利用許諾契約を締結している。 ○ なお,出版された学術論文等の翻訳等についても,著作権者との委託契約により,当該学術論文等を出版した出版社が権利処理を仲介している実態がある。 (8)キャラクター ○ 漫画,アニメーション等のキャラクターの分野についても,音楽等のような集中管理団体は存在しないが,著作権管理については,原作者自らが管理する場合,映画製作者が原作者(原画)の権利を含めて管理する場合,出版社が管理する場合,専門のエージェントが管理する場合などに分けられる。 ○ なお,キャラクターに係る著作権は,原作者,映画製作者,出版社などの関係者が著作権を共有していることも多い。 2 実演家の権利 ○ 商業用レコードの二次使用料及び商業用レコードの貸与報酬を受ける権利については,指定団体である日本芸能実演家団体協議会(平成10年度使用料等徴収額約60億242万円)が行使している。また,商業用レコードが最初に発売されてから1年間与えられる貸与権の行使についても同様である。これらの権利は,当該実演家が所属する団体やプロダクションの団体経由で同協議会に委託されるか,直接委託されている。二次使用料等については,同協議会と利用関係団体(放送二次使用料は日本放送協会及び日本民間放送連盟,貸与報酬等は日本コンパクトディスク・ビデオレンタル商業組合)の協議により定められている。なお,二次使用料の契約とあわせて,両団体の契約により商業用レコードに固定されている実演の放送番組への録音及び当該放送番組の保存・利用について,包括許諾方式による権利処理が行われている。 ○ また,放送番組のビデオ化,CATVへの番組提供,海外放送局への番組提供等についても,著作隣接権の処理を行っている。 ○ このほか,芸能プロダクションの団体である日本音楽事業者協会,歌舞伎俳優の団体である日本俳優協会,俳優の団体である日本俳優連合などにおいて,放送番組の二次利用,実演の放送等について権利処理を行っている実態がある。 ○ なお,プロダクション所属の歌手,俳優等については,当該プロダクションが著作隣接権の管理を行っている場合が多い。 3 レコード製作者の権利 ○ 商業用レコードの二次使用料及び商業用レコードの貸与報酬を受ける権利については,レコード会社及び音楽出版者から委託を受け,指定団体である日本レコード協会(平成10年度使用料等徴収額約60億 4,700万円)が行使している。 ○ 二次使用料等については,日本レコード協会と利用者又は利用関係団体(放送二次使用料は日本放送協会及び日本民間放送連盟,貸与報酬は日本コンパクトディスク・ビデオレンタル商業組合)の協議により定められている。 ○ なお,貸与権については,実演家の場合と異なり,個々のレコード会社が行使しているが,貸与許諾に係る使用料を受ける権利については日本レコード協会が行使している。 ○ また,複製権については,原則として各レコード製作者等が個別に管理しているのが現状である。ただし,日本レコード協会がレコードの放送番組への複製及び当該放送番組の保存・利用について実演家の場合と同様の方法により権利処理を行っているほか,放送番組のビデオ化など一部について権利処理を行っている実態がある。 4 著作権等の共同行使 (1)私的録音録画補償金 ○ 指定管理団体である私的録音補償金管理協会(平成10年度補償金徴収額約20億 1,400万円)が著作者,実演家及びレコード製作者の三者に係る私的録音補償金を受ける権利について共同行使をしているが,これは法律に基づくものである。 ○ 同協会が徴収した補償金は,一部を共通目的基金として著作権思想の普及等に使用されるほかは,日本音楽著作権協会,日本芸能実演家団体協議会,日本レコード協会の三団体に一定率が分配され,これらの団体を通じて各権利者へ分配されている。 ○ なお,私的録画補償金については,私的録画補償金管理協会が本年の3月に設立され,文化庁から指定管理団体としての指定を受けている。当該団体は,対象機器及び記録媒体を定めた著作権法施行令の施行日である7月1日以降に販売される機器等について補償金を徴収することから,まだ徴収・分配の実績はない。 (2)その他 ○ 有線テレビジョン放送の再送信,放送番組のビデオ化などについて,利用が限定的,公益性があるなどの理由により,複数の集中管理団体が共同で権利行使を行っている例がある。これらの場合,許諾は包括許諾方式であり,一般に利用ごとの使用料が低額であるので,代表団体が使用料を受領し他の団体に分配するという方式が採られている。なお,前述した「日本映像ソフト協会個人向けレンタルシステム」も共同行使の一例である。 (共同行使の実例) ア 有線テレビジョン放送(同時再送信) 第3章 著作権制度審議会答申の概要 仲介業務法の見直しについては,過去に一度著作権制度審議会において検討が行われている。この検討結果は最終的には法改正には至らなかったが,参考までにその概要を紹介する。 第1節 見直しの背景 ○ 昭和38年11月,著作権制度審議会は,文部大臣から,著作権等に関する仲介業務制度の改善について諮問を受け検討を開始した。 ○ 仲介業務法は,昭和14年に制定された法律であるが,次のような点で制定当時とは仲介業務団体の状況が異なり,このことが制度の見直しの背景にあったものと思われる。 ア 仲介業務法制定当時,許可された二法人のうち,大日本文芸著作権保護同盟は戦後業務を休止していたこと○ 以来,著作権制度審議会は,小委員会を設け審議を行い,昭和41年4月には審議結果を公表し関係団体の意見を聴取した上で,更に検討を重ね,昭和42年5月に答申を行った。 第2節 答申の骨子 1 規制の必要性 ○ 著作権の仲介業務に関する規制は従来どおり必要であるとし,次の三点を規制の理由としている。 ア 他人の財産を管理するものであるから,その業務の基礎が確実であり,かつ,その運営が公正に行われるものでなければならないこと 2 規制の対象 (1)著作権の範囲 ア 規制の対象は,規制の必要性の趣旨に鑑みて,特に必要とするものに限定すべきである。 (2)業務の態様 ア 仲介業務として規制すべき行為は,信託及び代理・媒介とする。 3 音楽の著作物に関する規制の態様 (1)業務実施の規制 ア 許可制が適当である。制度として単一制をとることは問題であるが,単一制の利点をできる限り取り入れられるよう許可基準を定め,かつ運用すべきである。 (2)業務運営の規制 ア 仲介行為の引受けに関する契約約款,著作物使用料の分配方法及び仲介機関の手数料の決定,変更を文部大臣の許可に係らしめること,業務報告書及び会計報告書の提出を義務付けること等,仲介機関の業務の運営に対する規制,監督を原則として維持すべきである。 (3)使用料に対する規制 ア 著作物使用料規程の認可制は維持すべきである。 4 文芸の著作物の放送権に係る規制 ○ おおむね音楽の著作物に関する仲介業務に対する場合と同様に措置してさしつかえないが,許可基準の運用に当たっては,文芸の著作物の性質及び利用の実態に応じた配慮が必要である。使用料率については認可制とすることが適当である。 5 著作隣接権に関する仲介業務について ○ 著作隣接権については,商業用レコードの二次使用料等に係る報酬請求権を除き,その性質上,集中管理にはなじまないと考えられる。これらの仲介業務については,将来における管理の実態に応じて,規制の要否を検討すべきである。 第4章 外国の法制度及び集中管理団体の現状 1 ドイツ ○ 1933(昭和8)年に「演奏権に関する仲介業務に関する法律」が制定され,演奏権の集中管理が主務大臣の許可制となった。その後,この法律は,1965(昭和40)年の「著作権及び著作隣接権の管理に関する法律」(以下「管理団体法」という)に引き継がれ,1985(昭和60)年,1995(平成7)年の改正を経て現在に至っている。 ○ 管理団体法では,対象範囲に限定なく全ての著作権又は著作隣接権(報酬請求権を含む)の集中管理は許可制である(第1条)。集中管理団体には,利用者の求めに応じ,相当の条件で許諾する義務,すなわち応諾義務が課されている(第11条)。使用料については,使用料規程を定め官報で公表することを義務付けており(第13条),また,利用関係団体との包括契約を締結する義務が定められている(第12条)。なお,使用料規程及び包括契約は届出制である(第20条)。また,集中管理団体が関与する著作物等の利用契約又は包括契約の締結・変更に関する紛争が生じた場合,当事者は仲裁所に仲裁を求めることができる(第14条)。 ○ このほか,管理の引受義務(第6条),利用者等に対する管理著作権の報告義務(第10条)などが課されている。なお,著作物の貸与報酬,私的録音録画補償金,複写複製補償金等に係る報酬請求権については,集中管理団体による行使が義務付けられている(著作権法 第27条,第54条)。 ○ 著作権の集中管理団体例であるが,音楽では,GEMAが演奏権及び録音権の管理を独占的に管理している。創設は1903(明治36)年である。言語の著作物では,VG WORTが業務を行っており,複写複製に係る権利も管理している。美術についてはVG BILD−KUNSTが業務を行っており,追及権の管理も行っている。 2 スペイン ○ 対象範囲に限定なく全ての著作権及び著作隣接権の集中管理については許可制である(第142条)。集中管理団体を規制したのは比較的新しく1987(昭和62)年制定の知的所有権法からであり,1996(平成8)年の全面改正を経て現在に至っている。制度としては,ドイツと類似している。使用料については,集中管理団体に応諾義務を課した上で,使用料規程の制定を義務付けており,また,利用関係団体が要求した場合には当該団体との間で包括契約の締結が義務付けられている(第152条)。使用料規程は届出制(第154条)であるが,使用料等の紛争が生じた場合の調停及び仲裁委員会の制度(第153条)が規定されている(調停は放送のケーブル送信が対象,仲裁は集中管理団体と利用関係団体又は放送事業者との間の紛争が対象)。このほか,管理の引受義務(第147条),会員のための福祉事業などの社会的活動に関する規定(第150条)などが定められている。 ○ なお,私的録音録画補償金,レコードの二次使用料及びレコード等の貸与報酬に係る報酬請求権の行使については,集中管理団体による行使を義務付けている(第25条,第108条,第109条)。 ○ 著作権の集中管理団体例としては,音楽についてSGAEが演奏権及び録音権を独占的に管理している。また,この団体は文芸,美術等についても管理している。 3 フランス ○ 従来,集中管理団体に対する規制はなかったが,1985(昭和60)年制定の「著作権並びに実演家,レコード・ビデオグラム製作者及び視聴覚伝達企業の権利に関する法律」により規制が実施され,この制度は1992(平成4)年制定の知的所有権法に引き継がれ現在に至っている。対象範囲に限定はなく,全ての著作権及び著作隣接権の集中管理が対象である。集中管理団体は民法法人として裁判所により許可されるが,文化大臣は当該団体の定款及び一般規則の草案に対し,重大な問題がある場合は大審裁判所に意見を述べることができる(第321の1条,第321の3条)。団体は権利者団体に限られる(第321の1条)。使用料については,認可制,裁定制等は採用していないが,レコードの二次使用料については裁定制度がある(第214の4条)。このほか,管理作品の目録提供義務などが課されている(第321の7条)。 ○ なお,レコードの二次使用料及び私的録音録画補償金に係る報酬請求権については,集中管理団体による行使が義務付けられている(第214の5条,第311の6条)。また,複写複製権(許諾権)も同様である(第122の10条)。 ○ 集中管理団体の例であるが,音楽の分野では,演奏権のSACEMと録音権のSDRMが業務を行っている。SACEMは1851年創設の音楽では世界で最も古い集中管理団体である。SDRMは,1935(昭和10)年にSACEMが設立した団体であるが,1974(昭和49)年からは,経営の合理化のため管理部門と職員をSACEMに統合し,事実上は単一の団体として業務を行っている。演劇の分野では,1777年創設のSACDが大多数の劇作家及び劇作曲家の権利を管理しているが,他にDRAMAという団体もある。文芸作品については,1837年創設のSGDLが業務を行っている。美術では,ADAGPが集中管理を行っている。過去にはSPADEMという団体があったが1996(平成8)年に業務を廃止した。この他,ピカソ,マチスはそれぞれ特別の団体が管理している。 4 スイス ○ スイスは,1940(昭和15)年制定の「著作権使用料徴収に関する連邦法」により音楽の演奏権に関する集中管理を許可制とし,許可は単一団体に限るとした。1992(平成4)年の改正著作権法では,集中管理に関する規定を同法に盛り込んでいる。同法では,集中管理を許可制としているが,対象範囲を非演劇用音楽の演奏,放送及び録音に関する排他的権利と文芸・美術作品の貸与報酬,私的録音録画報酬,放送のケーブル再送信及びレコード等の二次使用料に係る報酬請求権に限定している(第40条,第41条)。また,許可は分野ごとに単一団体に限るとされ,許可の効力は5年である(第42条,第43条)。使用料については,利用関係団体の意見を聴いた上で使用料規程を定め,仲裁委員会の認可を受けなければならない(第46条,第55条,第59条)。このほか,管理の引受義務(第44条)などが課されている。 ○ なお,私的録音録画及びレコード等の二次使用に係る報酬請求権については,集中管理団体による行使が義務付けられている(第20条,第35条)。 ○ 集中管理団体の例としては,音楽では,長い間演奏権のSUISAと録音権のMechanlizenzに分かれ業務を行ってきたが,1980(昭和55)年に両団体が合併し,現在ではSUISAが独占的に管理を行っている。 5 アメリカ合衆国 ○ 著作権制度では,集中管理の業務規制はない。ただし,例えば,1914(大正3)年に設立された音楽の演奏権の集中管理団体であるASCAPについては,司法省が反トラスト法違反で告訴した際の同意判決(Consent Degree)により,排他的権利の取得の禁止,利用申請に対する応諾義務,使用料協議不成立の場合の裁判所による決定,司法省の監督権限などが定められており,団体の行為が大幅に制限されている。 ○ 著作権法では,著作権使用料審判所(Copyright Royalty Tribunal)が使用料を決定する権限を与えられている(第801条)が,レコードの製作頒布(第115条),ジュークボックスによる演奏(第116条),有線放送による二次送信(第111条)などの強制許諾制が導入されている場合に限られる。 ○ 著作権の集中管理団体例としては,音楽の分野については,我が国の日本音楽著作権協会と管理契約を締結している団体だけでも,演奏権については,ASCAP,BMI,SESAC,APRS,AMRAの5団体が,録音権については,Harry Fox,SESAC,AMRAの3団体があり,同一分野にいくつかの団体が存在するという数少ない国である。なお,録音権については音楽出版社の自己管理も多い。論文などの複写については,CCCが企業等の内部複写を対象に独占的に管理を行っている。美術については,VAGA及びARSが業務を行っている。 6 イギリス ○ 著作権制度の中に業務実施に関する規制はない。ただし,使用料等を記載した「許諾要綱」(第116条)をめぐる紛争については,著作権審判所(Copyright Tribunal)(第145条)に申請して裁定を受けることができる。具体的には,集中管理団体から提案された許諾要綱については,利用関係団体は,著作権審判所へ裁定を申請でき(第118条),また,許諾要綱の効力発生後の紛争については,利用者又は利用関係団体は裁定を申請できることになっている(第119条)。なお,この審判所の前身は,1956(昭和31)年法による実演権審判所(Performing Right Tribunal)であり上演,演奏,放送に係る紛争だけを取り扱っていたが,1988(平成元)年法により著作権審判所に改組され,複製権,レコード・映画・コンピュータプログラムの貸与権,実演家の権利等に関する事項についても取り扱うことになった。 ○ 集中管理団体の例としては,音楽では演奏権のPRSと録音権のMCPSの2団体が業務を行っているが,業務の効率化・合理化の観点から協力関係を深めている。また,複写権についてはCLAが,美術についてはDACSが集中管理を行っている。 7 カナダ ○ 著作権制度の中に集中管理団体の業務実施に関する規制はない。ただし,集中管理団体が音楽の著作物,実演及びレコードの演奏,放送等の送信に係る使用料を徴収する場合は,事前に使用料表(Tariffs)を定め,著作権委員会(Copyright Board)(第66条)の承認を得なければならない(第68条)。また,その利用を除く著作物,実演,レコード,送信信号の利用については,使用料表の承認を求めることや使用者と協定を結ぶことができる(第70.1条,第70.12条)。さらに,集中管理団体と利用者の間で使用料等の紛争が生じた場合,同委員会に申請をして裁定を受けることができる(第70.2条)。このほか,管理著作物等に関する情報提供義務などが定められている(第67条,第70.11条)。 ○ 集中管理団体の例としては,演奏権では従来二団体であったのが1990(平成2)年に合併してSOCANができ現在に至っている。録音については,CMRRA,SODRACがある。 8 イタリア ○ 1941(昭和16)年に制定された著作権法でSIAE(1882年設立)が著作物の利用に係る唯一の集中管理団体であることが規定された(第180条)。法律によって集中管理団体が指定されている例である。 第5章 著作権の集中管理制度のあり方 第1節 集中管理に関する法的基盤整備の必要性 (集中管理の公益性) ○ 第1章第3節「集中管理の意義」で説明したように,著作物の利用手段の開発普及に伴い,音楽,写真,美術,文芸・学術論文,映像作品などの様々な著作物が多様な方法でしかも広い範囲で大量に利用される時代になっている。また,近年のデジタル・ネットワーク技術の発展・普及には急なものがあるが,これらの技術がこの傾向に拍車をかけており,著作物の利用可能性が従来に比べて飛躍的に拡大している。 ○ このように著作物の利用状況は大きく変化しつつあるが,これを権利処理の面から見れば,従来からの演奏,放送,録音録画等の利用態様への対応も含め,自動公衆送信等の新しい技術を活用したメディアの普及を促進するためには,簡易迅速な許諾手続により権利処理ができるシステムの構築が社会から強く求められている。 ○ 技術の進展は個別管理による対応の可能性を拡大させる一面も有しているが,権利者として多様化する著作物の利用状況に照らして,効率的・効果的な権利の管理のために集中管理をより積極的に推進することも十分考えられる。 ○ 集中管理は,著作権を保護する一方で利用の円滑化を図る最適な方法の一つと言われている。以上のような状況を想定すれば,今後も集中管理はその形態を変化させつつも,円滑な権利処理の手段の一つとしてその有効性は社会的に認められ続けるものと考えられる。 ○ 著作物の利用が国民生活にとって不可欠の時代にあって,国民が多様なメディアを通して著作物を享受できるようにするため,我が国において集中管理団体が健全に発展し,集中管理に関する円滑な利用秩序が形成されることは,権利者・利用者のみならず,著作物を享受する国民にとっても有益なことである。 ○ このことから,集中管理は権利者の保護を実効あらしめ,創作の振興に資するものであると同時に,利用者の利便を図って広く社会の利益となるものであって,公益性のある事業であると位置付けることができ,その健全な発展は,我が国文化の発展向上に寄与するものと考えられる。 (法的基盤整備の必要性) ○ そこで集中管理の法的基盤整備の必要性であるが,集中管理団体の業務の開始及び実施について次のような点に配慮すべきである。 ア 集中管理団体は,委託者の著作権(財産)を預かりそれを利用者に利用させ,それから得た使用料を委託者に分配することを業務にしている。集中管理団体が管理業務を開始するに当たって,権利者が安心して自らの著作権(財産)を委託することのできる基盤を有していることが重要である。 などから,我が国においても,集中管理団体の健全な発展を実現するためには,集中管理について一定の法的仕組みを整備することは必要なことであると考える。 第2節 法的基盤整備に関する基本方針 (法的基盤整備の基本方針に関する留意点) ○ 法的基盤整備の基本方針の検討に当たっては,次のような点に留意する必要がある。 ア 第一に政府全体の規制緩和政策との関係である。政府としては,我が国経済社会の抜本的な構造改革を図り,国際的に開かれ,自己責任原則と市場原理に立って自由で公正な経済社会としていくとともに,行政の在り方については,いわゆる事前規制型の行政から事後チェック型の行政に転換していくことを基本として,経済的規制は原則廃止,社会的規制は必要最小限に限定との原則の下,規制の撤廃又はより緩やかな規制への移行などを柱とする規制緩和推進計画を策定している。集中管理に対する規制の方法や範囲などの問題についても,この政府の基本方針を踏まえて考える必要があり,不必要な規制や過度な規制には注意しなければならない。 第3節 法的基盤整備の対象とすべき範囲 法的基盤整備の対象とすべき範囲については,次のア 著作物の種類,イ 利用の態様,ウ 権利委託の態様等の3つの視点から検討する。 ア 著作物の種類 ○ 著作物の種類によって実態として集中管理の必要性が高い著作物のみを対象とするかどうかである。 ○ 著作権法上,音楽,小説,脚本,論文,美術,写真,映画,コンピュータプログラムなど様々な著作物が存在する。現行の仲介業務法は,集中管理の実態に照らして必要性の高い分野のみを対象とするという考え方を採っているが, (ア)メディアの発達によってその必要性は急速に変化することから最初から著作物の種類によって規制対象を限定すると時宜を得た対応ができなくなるおそれがあること イ 利用の態様 ○ 実際に集中管理の必要性が高い利用態様のみを対象とする必要があるかどうかである。 ○ 著作権が働く利用態様には,出版・複写・録音録画などの複製,放送・有線放送などの公衆送信,演奏,貸与など様々である。これらのうち,必要性の高いものなどのみを対象とするという考え方もあるが,この点についても,「ア 著作物の種類」の場合と同様に利用態様で区別する合理性はないと考える。 ウ 権利委託の態様等 ○ 第三に,権利委託の態様等によって区別すべきか否かであるが,これについては次のように考えられる。 (ア)権利委託の対象者による区別について エ 音楽出版者等の取扱い ○ 音楽出版者は,レコード原盤の作成・提供や音楽の著作物の広告宣伝,売込み等により著作物の創作・利用を促進して,積極的に収益を求めることを業としており,我が国でもその業務は定着している。音楽出版者は,通常著作者から著作権の譲渡を受け著作権を管理しているので,自己のために自らの権利を行使するという性格を持つ一方で,その譲渡契約の内容は,一般に著作者に対する使用料の支払いや契約解除(権利の返還)などについての定めがあり,音楽出版者が第三者(現在は日本音楽著作権協会)から得た使用料は契約内容に従い著作者にも一部分が支払われることから,著作者が委託した著作権を管理しているという見方もできる。 ○ 前述したように現行仲介業務法では,このような音楽出版者の集中管理についても,規制の対象であると解釈しており,また著作権制度審議会答申においても,音楽出版者が行う演奏権等の直接行使については規制の対象とすべきであるとしている。 ○ しかしながら,音楽出版者は著作権者であるという捉え方が一般的であり,音楽出版者の権利行使は著作権者としての行使として考えられており,規制をしている国はほとんどなく,このような国際慣行を考慮すれば,一般的に音楽出版者の管理業務を規制するのは慎重に考える必要がある。 ○ 音楽出版者の業務の実態及び非一任型の集中管理団体との均衡,また緩やかな規制を基礎としていることを考えれば,少なくとも個別許諾方式による業務については規制の対象外とすることが適当である。さらに音楽出版者による著作権管理は,権利者自身による個別管理と理解すれば,包括許諾方式による管理についても規制の対象外とも考えられる。 ○ なお,キャラクター管理会社についても,非一任型の集中管理だけでなく,音楽出版者と同様の管理実態が見られるところであるが,同様の取扱いとすることが適当である。 オ まとめ ○ 以上のとおり,法的基盤整備の範囲に関する基本方針としては,デジタル化・ネットワーク化が急速に進むであろう新しい社会を見据え,仲介業務法及び著作権制度審議会答申のように,社会の実態等から見て集中管理の必要性が高い分野を対象とするという考え方はとらず,著作物の種類や利用態様により区別はしないこととする。 ○ しかし,権利委託の態様等による区別としては,不特定又は特定多数の委託者から信託・代理等を引き受ける場合であって,一任型の集中管理を規制の対象とし,これに該当しないものについては対象としないこととするが,一任型の集中管理の中で更に限定するかどうかについては,集中管理団体の現状等を踏まえた上で,関係者の意見も聴取し更に検討を行うものとする。 ○ なお,音楽出版者等の行う集中管理の中で,著作者との契約の実態等から,著作権者としての権利行使と同視しうるものについては,原則として対象外とすることとする。 第4節 具体的な法的基盤整備の内容 1 業務の実施 (1)業務実施の開始 (1) 規制の必要性 ○ 集中管理団体が業務を開始するに当たって,何らかの規制をするかどうかが 問題となる。 ○ 外国では,著作権制度の中で,集中管理団体の設立や業務の実施について規制している国と規制していない国とがあるが,規制していない国においても,例えばアメリカ合衆国のように反トラスト法により強い制約がある国もある。 ○ 第1節及び第2節における考察を踏まえて,集中管理団体の適正な業務執行を確保する等の観点から,緩やかな規制を基本として,具体的な法的基盤整備の方向性について検討する。 (2) 同一分野における集中管理団体の参入規制 (外国の法制) ○ イタリアは著作権法で特定の集中管理団体(CIAE)の独占を認めており(第180条),またスイスも著作権法で原則として著作物の類型ごとに1つの団体が認められるとしている(第42条第2項)。フランスは集中管理団体は権利者団体に限るので事実上単一又はごく少数の団体しか認められない仕組みになっている。ドイツ及びスペインは,集中管理団体の設立及び業務の実施に政府の規制があるが,法律上1つの団体による独占を認めてはいない。ただし,実態面で見ると,例えば音楽の分野で演奏権と録音権の分野に分かれて集中管理団体が存在する国があるものの,多くの国は分野ごとに1つ又はごく少数の団体である。また,演奏権と録音権の分野に分かれている国においても,例えば,イギリス,フランスのように事実上は単一の団体として運営されているものもある。我が国の実状とよく比較されるアメリカ合衆国は,演奏権及び録音権の分野でいくつかの集中管理団体が存在するが,同一分野でいくつかの団体が存在する国は,アメリカ合衆国,ブラジル,コロンビアなど少数の国にとどまっており,例外的な国である。 (参入規制の原則的廃止) ○ 同一分野において単一又はごく少数の集中管理団体による管理が適切であるとする立場から,参入規制を緩和した場合,次のような問題点が指摘されている。 ア 許諾手続きが複雑化・煩雑化する。コンサート事業者,放送局,レコード会社など著作物の大口利用者にとっては,それぞれの団体と許諾条件について交渉する必要が生じ,交渉に要する経費の高騰を招く。また,その経費は消費者に転嫁されることから消費者のコスト増にもつながる。(主に利用者側) ○ これに対し,参入規制を緩和すべきであるとする立場から,次のような意見が表明されている。 ア 権利行使の委託先の選択の幅が広がると,例えば著作物等に関する情報提供が充実するなど,権利者に対するサービスが向上する。また,競争原理の導入によって合理的,効率的な管理が徹底し,管理コストの低下が実現される。(主に権利者側) ○ このように参入規制のあり方については,様々な考え方があるが,前述した法的基盤整備に当たっての基本的方針に従えば,同一分野において複数の集中管理団体が存在することを否定することは適当でない。例えば音楽の場合,非一任型の集中管理団体等を業務実施規制の対象から除外することで,現行の仲介業務法の規制より,大幅に緩和されることになるが,これに加えて規制対象の範囲内の業務についても,一定の要件を満たした集中管理団体であれば,自由に参入を認める方向で考えるべきである。 (参入要件を厳しくする分野) ○ ただし,音楽の演奏,上映,放送,有線放送及び貸与,論文等の複写などの分野における集中管理については,従来の実態に照らして,次のような点において他の分野とは異なる特徴が認められる。 ア 一般に管理対象が全国に及んでおり,かつ利用者数が多数であること。なお,カラオケ演奏などの場合は,利用者が比較的零細な事業者であり,利用者当たりの使用料の額が低額の場合が多い。○ これらのことから,これらの分野については,契約交渉のための人材の人件費,支部や営業所の開設,維持費,交通費などの契約業務のための経費が膨大になるとともに,使用料の分配に当たっては,一定の分配精度を確保した上で,公正な分配を行うための経費も必要になり,またこれらの業務を円滑に実施するための人材の確保も必要になることから,他の分野に比べて人的・組織的基礎,経理的基礎等において,より高い水準の能力や条件整備が要求される。 ○ また,包括許諾方式によるメリットを生かすためには,著作権の集中度が高くないと,利用者側は権利処理が複雑・煩雑になり,集中管理団体も効率的な管理ができないことになる。 ○ 以上の点から,このような特徴を有する分野については,単一又はごく少数の団体により集中管理がされる方が効率的な管理が実現でき,権利者及び利用者双方にとって有益であると考えられるので,その規制に当たっては,他の分野と異なる基準を定めたり,異なる規制方法にするなど,参入要件を厳しくすべきであると考えられる。ただし具体的にどの分野がこれに該当するかについては今後更に検討する必要がある。 ○ なお,この分野についても,他の分野と区別する必要はなく,実際上単一団体しか存在しないこととなったとしても,それは市場が決めることであるとの意見もあるところである。 (3) 集中管理団体の営利・非営利性 (我が国の実態) ○ 我が国の実態としては,仲介業務法の下で許可を受けている団体は全て著作権者を会員とする権利者団体であり,非営利法人である。しかし,公益法人(社団法人)は,日本音楽著作権協会及び日本文芸著作権保護同盟の二団体だけであり,日本脚本家連盟及び日本シナリオ作家協会は協同組合であり,集中管理業務はもちろんのこと脚本家の執筆条件や報酬等について映画製作者や放送局と団体交渉し組合員の利益確保を行うことも業務の柱の一つとしている。 (外国の実態) ○ フランスは著作権法により集中管理団体は著作者,出版社などの権利者を会員とする団体でなければならない(第321の1条第2項)としているが,集中管理団体を権利者団体に限ると法律上明記している国は少ない。しかし,実態としては,もともと集中管理団体は,自らの権利は自らが守るということで権利者団体が会員の権利を預かり業務を実施してきたものであり,特に集中管理団体発祥の地の欧州ではこの形式の団体が一般的である。また,このタイプの団体は,それぞれの国により法人格の認められ方は異なるものの,おおむね営利性はない。フランスのSASEM,イギリスのPRS,ドイツのGEMA,アメリカ合衆国のASCAPなどがこのタイプに該当する。 ○ これに対して,権利者団体以外の団体による集中管理がある。このタイプの団体については,法人格としては営利又は非営利組織があるが,一般に非収益を目的として業務を行っているようである。また,アメリカ合衆国のBMIのように著作物の利用者である放送事業者により設立された特殊なタイプの団体もある。さらに,例えばアメリカ合衆国のSESACのように少数ながら完全な営利目的で運営されている団体もある。 (営利目的の集中管理の容認) ○ 我が国の場合,集中管理団体の発達は欧州の場合と同様,著作権者が会員となる団体が自らの権利を守るため会員の著作権を預かり集中管理を実施してきたという歴史的な経緯がある。先述の著作権制度審議会答申において,「仲介機関は公益法人が望ましい」としたのも,このような歴史的経緯を念頭に置いて出された結果であると考えられる。 ○ しかしながら,集中管理の場合,その歴史的な経緯などから見て,仮に非営利法人の権利者団体による集中管理が望ましいとしても,同審議会答申説明書で述べられているように,営利目的の集中管理を特に禁止する理由がない以上,制度として営利目的の集中管理を排除できないと考える。また,参入要件を緩和する立場からすれば,同一分野について同種の公益法人や協同組合が複数認められることは事実上難しく,集中管理は非営利法人に限ることとすると,実質的には最初に設立された団体の独占にならざるを得ない。 ○ 株式会社等の仲介業務については,同制度審議会答申説明書では, 「利潤の追求が第一の目的になることから,管理の効率の高い流行作品の管理に偏り,あるいは特定の作品を勧奨することによって増収を図ることも予想される。として,株式会社等の仲介業務に反対する意見を紹介している。しかし,このような危惧は,同制度審議会説明書でも紹介しているように,業務運営に一定の規制を課し,また不正の行為に対する行政措置等を定めることによって,ある程度解消することができると考える。 ○ なお,非一任型の集中管理等については規制の対象としないこととしているが,このような集中管理の場合は,権利委託に当たって,集中管理団体が預かる著作者の著作権の選別を行うのは当然であり,また権利行使に当たっても,著作権者の意向に沿った権利行使であることから,管理の引受け拒否や特定作品の勧奨,さらには許諾の拒否や高額な使用料の提示が行われたとしても,このような差別的な取扱いが直ちに不当な権利行使になるわけではない。 (4) 業務実施の規制の方法 (処分基準の明確化) ○ 規制の方法については,許可制,登録制,届出制などが考えられる。仲介業務法は,昭和14年に成立した法律であるが,同法には許可基準は一切定められておらず,主務大臣(現在は文化庁長官)の裁量権が非常に強い法律である。仲介業務法の制定経緯及び同法が成立した時代から考えて,同法はあえて許可基準を定めず,法の運用によって,同一分野における集中管理団体の独占を図ろうとしたところであるが,このような法の仕組みは今日においても適切であるのかという点については議論があるところである。制度の見直しに当たっては,集中管理団体の複数制を容認し,新規参入を認めることを原則としていることから,許可基準,登録の拒否要件,届出要件などの基準については,できるだけ明確化する必要があり,また申請時や届出時の必要書類,添付書類についても同様である。 (登録制の採用等) ○ それでは具体的にどのような制度を採用するかであるが,新規の参入に当たって,できる限り規制緩和の方向で考えるとしても,集中管理団体の適正な業務運営を確保するためには,業務の開始に当たって,当該団体が定められた基準を満たしているかどうかについて判断する最小限度の裁量権を主務官庁に認める必要がある。 ○ したがって,制度としては,参入を自由としつつも最小限度の業務基盤を有しているかどうかについて行政庁としてチェックするために登録制を採用することを基本とし,仮に許可制を維持するとしても,主務官庁の裁量権は必要最小限度のものとし,登録制に近い形の制度にすることが適当である。 ○ なお,前述したように,特定の分野について参入要件を厳しくすることとした場合については,集中管理団体の乱立とそれに伴う市場の混乱を抑制するため,例えば当該分野に係る業務について主務官庁の認可にかからしめるなどの方策も検討すべきである。 (登録基準) ○ また,登録の基準を定めるに当たっては,他の法令で見られるような組織構成等に係る一定の要件を定めることとなるが,その際次のような点について考慮すべきである。 ア 集中管理団体は法人に限ることとすること (5)権利委託に関する契約約款,使用料の分配方法及び手数料 (委託契約約款の作成) ○ 集中管理は相当数の著作権者から権利を預かり業務を行うものであるから,著作権者と集中管理団体との間で締結される権利委託に関する契約については定型的な契約条項を定め,それにより契約を締結することが,例えば委託者,利用者にとって集中管理団体が管理する権利の範囲や委託条件が明確化するなど権利保護と利用の円滑化の両面から望ましいことと考えられるので,分配方法及び手数料に関する取決めを含め権利委託に関する契約約款の制定を法律上義務付けることが適当である。 ○ しかしながら,当該約款は一般に集中管理団体が一方的に定めるものであるので,受託者に一方的に有利に定められることも考えられるところから,特に委託者保護の面から,次のような点について考慮すべきである。 ア 約款の内容については,信託・代理などの委託方法の別,委託する権利の範囲,契約の解除・終了・権利の返還,約款の変更,分配方法,手数料などに関する事項が考えられるが,約款の内容に盛り込む事項を法令等において明確化するとともに,主務官庁又は関係団体においては標準的な約款例を作成し提供するなど適正な契約約款が利用されるよう努める必要がある。 (委託する作品や支分権の選択制) ○ なお,権利者の作品全て(将来創作されるものを含む。)や,演奏権,放送権,録音権など複数の支分権又は著作権全部を管理する集中管理団体においては,委託者の委託する作品や支分権の選択を認めるかどうかの問題がある。特に信託の場合は,一旦全ての作品について著作権全部の信託を行うと,著作権が受託者である集中管理団体に移転するため,権利者がある支分権を他の集中管理団体に委託しようとしてもできないことになり,他の集中管理団体の参入について事実上の障壁となることになる。 ○ これについては,権利委託が権利者の任意なものであること,集中管理団体の自由参入を広く容認することなどの観点から,委託者に一定の選択権を認める必要があると考えるが,選択を認める作品や支分権の範囲など具体的な内容については,集中管理団体の効率的な管理の側面や著作者団体等の権利者団体の意見なども踏まえ,今後関係者間で慎重に検討をする必要があると考える。 (2)業務実施の開始以降 (主務官庁の監督権限等) ○ 集中管理団体の業務実施の開始については,緩やかな規制の方向へ転換するとしても,当該団体の業務の運営に当たり,主務官庁が当該団体の適切な業務運営を監督し,不正の業務があった場合はそれを是正する措置等について一定の権限を有していること等が必要と考えられるので,一定の調査権限,業務改善命令,業務停止命令等の権限を主務官庁に与えることが適当である。ただし,規制緩和の趣旨を踏まえて,主務官庁がこれらの権限行使に当たっては抑制的な姿勢で臨むべきことはいうまでもない。 ○ また,一定の秩序を維持するため,例えば,不正の手段により登録を受けた者,登録を受けずに規制対象の集中管理を実施した者などに対する罰則を設けることが適当である。 (集中管理団体の法律上の義務等) ○ 現行の仲介業務法は,仲介業務団体の義務についてほとんど規定していないが,集中管理団体の権利濫用を抑え,権利者・利用者を保護する観点から,独占禁止法等の他の法律からの要請とは別に,著作権制度審議会答申や外国の法制などを踏まえて,今後の集中管理団体に課されるべき法律上の義務等に関して,次のような事項について検討した。 ア 著作権者から委託の申込みがあった場合の管理の引受義務 ○ 著作権制度審議会答申においては,管理の引受義務について法律上の義務にすることを求めている。その理由として,制度として複数団体制をとるとしても,許可基準の中で団体の乱立を防止する措置を講じることとすれば,事実上は単一又はごく少数の団体により業務が行われることが予想されるので,「権利者は,その少数の仲介機関の全てに管理の引受けを拒まれるときは,その権利の効率的な管理の方途を失うにいたるものであって,複数制であっても,管理の引受けを強制する必要がある。」としている。 ○ 外国においては,ドイツ(第6条),スペイン(第147条),スイス(第44条)などに例がある(ただし,スイスの場合は,同法で分野ごとに認可されるのは1つの団体に制限されている(第42条))。 ○ 我が国の場合,仮に集中管理について登録制を採用した場合,一定の登録拒否要件に該当しない限り,集中管理団体の業務は認められることになるので,同一分野についていくつかの団体が設立されれば全ての団体に管理を拒否される可能性は少なくなること,非一任型の集中管理については規制の対象にしておらずこのような団体に権利を預けることも可能であることなどから,管理の引受けについて集中管理団体に全面的に義務付けをすることについては問題があると考える。 ○ しかしながら,集中管理の公益性にかんがみれば,例えば経済的利用価値の高い著作物以外は引き受けないなど,集中管理団体側の選択によって管理が決まるのは権利者保護の観点から適当でなく,管理の申込みについては正当な理由がなければ管理を引き受けることが望ましい。 ○ したがって,法律上の義務付けは行わないとしても,例えば,管理の引受けに関する事項については契約約款の必要記載事項とし,管理を拒否する場合の要件を明確化するなどの方法により,権利者保護に関する一定の配慮が必要であると考える。 ○ なお,前述のように,特定の分野について参入要件を厳しくすることとした場合については,管理の引受けについて法律上の義務とすることも考慮すべきである。 イ 管理著作物のうち特定のものの利用に関する勧奨の禁止 ○ 著作権制度審議会答申においては,特定著作物の勧奨の禁止を法律上の義務とすることを求めている。同制度審議会答申説明書では,「演奏権仲介機関は,画一的に同一条件によって全ての権利を管理すべき」であることが理由とされているが,これは営利目的の集中管理について利潤を追求するあまり特定の著作物の勧奨を行うことに対する危惧が1つの原因となっている。 ○ このような禁止措置については,集中管理は公正かつ平等に権利が管理されることが望ましいとしたとしても,例えば,利用者の相談に応じて利用者の希望に添った著作物を薦めることや利用頻度の低い著作物について利用の促進を図ることなどの利用者サービスについてまで法律上禁止することには問題があると考えることなどから,特定著作物の勧奨禁止については法律上の禁止措置はとらないものとすることが適当である。 ○ なお,非一任型の集中管理等は規制の対象外であるので,特定著作物の勧奨は問題にならない。また,規制の対象となる集中管理であったとしても管理の公平性と権利者・利用者サービスとの中で調整点はおのずと見いだせると考える。また,反対に例えば日本音楽著作権協会のように権利者団体が集中管理団体である場合は,管理の公平性の点から問題になると考えられるが,これも団体内部の意見調整により解決可能な問題である。 ウ 許諾の求めに対する応諾義務 ○ 応諾義務については,著作権制度審議会答申では,正当な理由がなければ,著作物の利用の許諾を拒んではならないものとすることを求めており,外国では,ドイツ(第11条),スペイン(第152条)などに例がある。 ○ このような措置は,特に集中管理団体の権利濫用の防止から,法律上の義務化を求められるものである。規制対象である一任型の集中管理の場合,そもそも委託者は許諾を前提として権利を預けていることから,正当な理由がないのに集中管理団体が許諾を拒否するのは委託者に対する背信行為であること,また集中管理団体が許諾の拒否を材料に利用者に不当に高額な使用料を求める可能性があることなどの理由から,応諾義務を法律上規定することは,権利者・利用者の保護を図る観点から適切であると考える。なお,この点に関しては,独占禁止法上の不公正な取引方法との関連に留意すべきであるとの意見もあった。 ○ なお,正当な理由がある場合は許諾を拒否できるのはいうまでもない。正当な理由としては,例えば,委託契約に定められた一定の条件に抵触する場合,著作権侵害による利用につき損害賠償金の精算をせずに同一の利用に関し許諾を求めてきた場合,商業用レコードを用いた複製等の場合にように同一の利用に関し他の権利者が許諾をしない場合などが該当する。 ○ なお,非一任型の集中管理の場合は,許諾をするかどうかの決定権は委託者に留保されていることから,使用料等の許諾条件の協議が成立しないなどの理由により許諾を拒否したとしても,著作権はもともと排他的,独占的権利であることから,そのことがただちに権利の濫用になるとは考えられない。 エ 利用者等に対する管理著作物・著作権に関する情報提供義務 ○ 著作権制度審議会答申では特に提言されていないが,外国では,ドイツ(第10条),フランス(第321の7条)などに例がある。 ○ 集中管理団体の複数化によって,例えば同じ著作者であっても個々の著作物ごとに又は支分権ごとに取扱い団体が異なる状況になる可能性があり,こうした場合,利用者はどの団体に許諾を求める必要があるかどうかについてその都度調査する必要がある。また,包括契約により許諾を受ける場合,当該包括契約によって,どの著作物が利用できるかを確認する必要もでてくる。また,権利者側から見れば,情報提供義務があると,自己の著作物が無権限で管理されていないかどうかをチェックすることができるなど,その効果は大きい。 ○ したがって,集中管理団体の複数化の中で,権利者又は利用者の便宜を図り,権利処理を円滑化を確保するためには,集中管理団体の情報提供について法律上義務化することが適切である。 ○ なお,現在関係者で著作権権利情報集中システム(J−CIS)の具体化が進められているが,J−CISが本格稼働すると,利用者等はJ−CISの統合検索システムを介して各集中管理団体で作成した管理著作物・著作権に関するデータベースにアクセスし,権利情報を得ることができる。集中管理団体の情報提供義務については,各集中管理団体がJ−CISへ参加することを促進するものであり,権利情報の集中提供化にも貢献するものと考える。 オ 業務及び経理の状況に関する公開義務 ○ 著作権制度審議会答申では特に提言されていないが,外国ではドイツ(第9条)などに例がある。 ○ 公益法人については,法律上の公開義務はないが,政府の指導により,事業報告書,収支計算書,貸借対照表,財産目録などの公開(閲覧)を求めている。また,例えば株式会社については,商法上,株主及び債権者は,計算書類並びにその付属明細書及び監査報告書の公開(閲覧,謄抄本の交付)を求めることができ(第282条),総会における承認後は貸借対照表等を公告することを義務付けている(第290条)。さらに,例えば,銀行については,銀行法で,貸借対照表・損益計算書の公告(第20条),業務及び財産の状況に関する説明書類の縦覧(第21条)が義務付けられている。 ○ 集中管理の場合,他人の財産を管理するものであるから,著作権者は権利を委託しようとする又は委託している集中管理団体の業務や経理の状況について確認できることが望ましい。また,特に複数団体制の下では,委託者に選択の幅ができることから,業務や経理の状況に関する情報は権利の委託先を選択するための重要な情報となる。 ○ 以上の点から,業務や経理の状況については,法律上公開を義務付けることが適当である。この場合,公開の対象者や公開すべき書類の範囲については,他の制度等の考え方も参考にし決めることとなるが,少なくとも集中管理団体の業務状況の概要は一般公開すべきである。 ○ なお,委託者との関係でいえば,委託契約約款の中で委託者の自己の権利に係る計算帳簿等の閲覧を認めるなど,委託者保護のための配慮がなされることが望ましい。 カ 兼職・兼業の制限と経理の区分 ○ 集中管理団体が公益法人その他の非営利法人の場合,一般に当該団体の会員が役員を選任し又は事業を決定すること,法人と理事との利益相反事項の禁止(民法第57条),自己契約・双方代理の禁止(民法第107条)などの法的規制もあることから,常勤役員の兼職や当該団体の兼業の問題は生じないと考えられる。 ○ しかしながら,株式会社等の集中管理を認めるとすると,役員の選任や事業の決定は原則として委託者の意思が及ばないこととなるので,例えば放送権を管理している集中管理団体の常勤役員が放送局の役員を兼ねること,録音権を管理している集中管理団体がレコード会社を営むようなことも生ずると考えられ,公平で適切な集中管理の実施を確保するため兼職・兼業に関する一定の規制が必要かどうかが問題になる。 ○ これについては,銀行法など金融関係法規のように厳しい制限を行う必要がないことは明らかである。特に兼業については,集中管理以外の事業の実施が当該法人の経営基盤を安定させ,間接的にではあるが,集中管理事業にも好影響を与えることも考えられる。 ○ しかしながら,当該団体が管理をしている権利に係る利用企業の役員との兼職や事業の兼業は,民法,商法等により利益相反行為や自己契約・双方代理などの規制があるとしても,他の利用者に不当な許諾条件を提示するなど不公正な権利行使の原因になる可能性がある。 ○ したがって,兼職・兼業の制限については,応諾義務や著作物使用料規程の制定義務にも関連することであるが,公正かつ適切な業務が確保されるよう,集中管理を行っている権利と競合する利用企業等の役員との兼職や事業の兼業を法律上制限することが適当である。 ○ また,一般に兼業を認めることとすると,集中管理に関する経理とその他の事業の経理とは区別する必要がある。信託の場合については,信託法上信託財産の分別管理義務(第28条)が定められているが,他の方法についても法律上明確化することも含め適切な措置がとられるようすべきである。 キ その他 (ア)経理の監督強化 2 使用料等の規制 (認可制の原則廃止) ○ 仲介業務法における著作物使用料規程の認可制は,集中管理団体の市場の独占からくる支配的地位の濫用を防止するために設けられたものであるが,参入要件を緩和し,複数団体を認める制度の下で,認可制を維持するかどうかが問題となる。 ○ 現行の認可制の実務としては,使用料には原価に相当するものがなく,使用料の算定基礎を担保するものがないので,文化庁は,各仲介業務団体に対し,認可申請にあたっては,利用関係団体の意見を十分聴取した上で申請案を作成し,提出するよう指導しているところであり,利用関係団体との話合いによりほぼ合意したものが申請されるのが実状である。 ○ また,申請後においても利用関係団体から意見を申し出ることができること,申請案は著作権審議会に諮問され学識経験者で構成された使用料部会で慎重に検討されることなどから,認可された使用料は個々の利用者にも十分受け入れられる金額である。独占的な集中管理団体の下で画一的に同一条件によって利用の許諾を行うという現状の下では,現行の認可制度は一定の機能を果たしていると評価できる。 ○ もちろん,現行認可制度及びその運用については,次のような意見もあり,改善すべき点もあると考える。 ア 利用関係団体との話合いに時間がかかり,使用料の設定や既存の使用料の改定に素早く対応できない。また、利用関係団体の意見を認めれば認めるほど使用料が低く抑えられる。○ アは主として権利者側からの意見である。利用関係団体との話合いを前提とする制度の運用が,我が国の著作物使用料が低く抑えられている原因の一つであるとする意見である。イは主として利用者側からの意見である。著作物使用料規程中に「その他」の規定を設け萌芽的利用に適用するのはやむを得ないと考えるが,最近はデジタル化の技術を基礎とした高品質,大容量のメディアが次々と開発普及する中で,アナログメディアより使用料を高くしようとする集中管理団体と萌芽的利用であり少なくとも当面は低い使用料に抑えたいとする利用者側との意見の相違が顕著になっている。 ○ ところで,複数団体制を前提とし,新規参入を認める以上,使用料は需要と供給のバランスの中で決まっていくことが建前となる。確かに,使用料の競争が行われると,使用料が機動的に設定されること,同一の利用方法について集中管理団体により使用料の額の差や定率制と定額制など算定方法の差が生じることなどの可能性があり,認可制を維持するとしても,どのような基準により認可するかどうか理論的にも問題となる。 ○ 以上の点から,新規参入を認める制度をとる限り,使用料については原則として認可制を廃止することが適当と考える。 (廃止に当たっての考慮事項) ○ ただし,認可制を廃止したとしても,現実には独占的支配力を有する集中管理団体が存在すること,新規参入を認め当初は多数の団体ができたとしても,集中管理団体の寡占化が進むと考えられること,集中度が低いとしても著作物の代替性の低さ等の特殊性から権利濫用がおこる可能性があることなどから,後述する紛争処理制度とは別に,次のような点について考慮すべきである。 ア 著作物使用料規程の制定義務 3 紛争処理制度 (紛争処理制度の必要性) ○ 著作物使用料規程の認可制を廃止することとした場合,集中管理団体が支配的地位又は優越的立場に立つことが多く,紛争が多発することが予想される。作物使用料規程の制定・改定に当たって,例えば利用関係団体の意見を聞くことを義務付けるとしても,基本的には集中管理団体が一方的に制定するものであることから,利用関係団体等から業界の実状を無視した高額の使用料設定であるとの主張が出てくるのは必至である。また,使用料以外の許諾条件について意見の対立も多くなると考えられる。 ○ もちろん,集中管理団体がその支配的又は優越的な地位を利用して,不公正な取引等があれば独占禁止法違反として是正措置が執られるところであるが,それに至らない場合でも,集中管理団体と利用関係団体等が対立し,長期にわたり使用料の不払いが続くことや著作権侵害の訴訟や告訴が多発するなど,権利処理業務は大きく混乱すると考えられる。 ○ 外国においても,ドイツ,スペイン,フランスなど業務規制を行っている国の多くは,または業務規制を行っていない英米法系の国にあってもイギリス,カナダなどは,使用料に関する紛争を未然に防ぎ又は紛争が起こった場合の簡易迅速な紛争処理解決制度等について整備しているところである。 ○ 我が国においても,紛争の解決制度としては,著作権法にあっせんの制度(第6章)があるほか,民事訴訟,民事調停等で解決する方法があるが,集中管理を巡る紛争の中で最も多い使用料の額をどの程度にするかという紛争については,民事訴訟で対応できない場合も多いと考えられ,著作権という特殊性,専門性等のある分野に鑑み,認可制の廃止の代わりに,著作権制度上,独自の紛争処理制度を整備することが使用料の自由化への必須の条件であると考える。 (具体的方策) ○ 具体的な制度を策定するに当たっては,次のような点について留意し検討すべきである。 ア 集中管理団体と利用関係団体との使用料に関する包括協定の締結 第5節 集中管理の分散化と新たな集中管理の可能性 ○ 円滑な著作物の利用を確保するためには,権利者側及び利用者側の双方にとって,簡易・迅速な権利処理システムの構築は重要なことであるが,著作物の種類又は利用態様にかかわらず,全ての分野について,同一条件で画一的に権利処理をすることが適しているわけではない。したがって,集中管理に関する規制緩和が進むと様々な態様の集中管理が出現する可能性がある。例えば,音楽の場合,現在は日本音楽著作権協会の独占であるが,利用態様によっては,音楽出版者が自ら権利を行使することが増え,また多数の非一任型の集中管理団体や特定少数の権利者のための団体の参入の可能性が高くなり,集中管理団体の独占が緩み分散化が進むことが予想される。また音楽以外の小説,脚本についても同様の可能性がある。さらに仲介業務法の規制対象外の著作物についても,著作物利用の需要が高まることによって,個別管理が中心であった分野に新たな集中管理団体が参入することや既存の集中管理の形態が変化する可能性がある。 ○ この場合,利用者側から見ると,独占的な集中管理団体である方が当該団体の窓口だけでほとんどの著作物の利用について許諾を受けることができ便利であるが,集中管理の分散化が進み,また個別管理のままであると許諾の申込みの窓口がどこかを調べるという煩雑さがあるところである。 ○ これについては,前述したとおり権利情報の集中管理により権利者(団体)の所在情報を提供することで利用者の便を図ることが可能であるが,この考えを一歩進め,権利の所在情報を提供するだけでなく,集中度の低い集中管理団体や権利者自身から使用料を含む許諾条件に関する登録を受付け権利処理の業務を代行するという権利処理代行センター(仮称)の創設も考えられる。 ○ 同センターは,非一任型の集中管理の範疇に入り,登録された条件により機械的に権利処理を行うだけであり,規制対象となる集中管理団体には含まれず,事実上集中管理団体又は権利者と利用者が直接取引をする場を提供することになる。取り扱う著作物については,特に決まりはなく,音楽だけ美術だけ写真だけというように著作物の種類で分ける場合もあろうし,多種類の著作物を取り扱う場合も考えられる。また,利用態様にも限定はないが,複製権に係る利用態様の場合が多いであろう。さらに同一分野について必ずしも単一のセンターが権利処理業務を行う必要はなく,ある著作物の利用について複数のセンターに登録することも可能である。このような窓口を設けて業務を行う類例としては,コンサート,交通機関等のチケットの販売を取り扱うチケット販売業者や旅行業者の窓口等がイメージされる。デジタル化・ネットワーク化技術の急速な進展の中で,登録,許諾,使用料の支払等の一連の権利処理手続きが全てネットワークを介して行われることも現実のものとして想定される。また,権利処理手続とは別に,著作物の複製物の提供も同時に行われることもあろう。 ○ このような新しい権利処理の形態については,特に利用者の便を考えれば積極的に推進していく意義もあると考えられる。これまでの検討結果に照らせば,この権利処理代行センター(仮称)は規制の対象からは除外されるが,最終的な結論を得るまでは,このセンターの考え方も視野に入れつつ研究を進めるべきであり,また,集中管理の新たな方法として関係者間における積極的な検討も望まれる。 第6章 著作隣接権の集中管理制度のあり方について (我が国の実態) ○ 著作隣接権の集中管理は,指定(管理)団体制度の対象となっている商業用レコードの二次使用料,商業用レコードの貸与報酬等及び私的録音録画補償金に係る権利の行使の場合を除き,実演及びレコードの分野で実施されている。実演の場合は,日本芸能実演家団体協議会が商業用レコードに係る貸与権や放送番組等に係る実演の利用を中心に著作隣接権の処理を実施しているほか,他の団体においてもいくつかの事例が見られるが,限定的な利用に関する権利処理の場合が多い。また,レコードの場合は,日本レコード協会がレコードの放送番組等への録音及び当該放送番組等の二次利用について著作隣接権の処理を行っているが,これは極く限られた利用に対し行われているだけであり,原則は各レコード製作者等の個別管理である。 ○ なお,実演家の権利については,著作権法では,俳優などの実演家の許諾を得て一旦実演が映画の著作物に録音・録画されると,出演契約等で以後の実演の利用に関し取り決めをしておかない限り,当該映画の複製,放送等の二次利用については権利が働かないことになっているので(第91条第2項,第92条第2項),集中管理の対象としては放送番組,生実演等の二次利用に限られている。 ○ また,プロダクション所属の俳優、歌手等の実演家については,当該プロダクションが権利を管理しているのが一般的であるが,所属の実演家とプロダクションの間の契約は多種多様のようであり,音楽出版者と著作者との契約と同様の譲渡契約の場合,権利行使を委任する場合など様々である。 (法的基盤整備の必要性) ○ 商業用レコードの二次使用料を受ける権利等に係る指定(管理)団体制度のあり方については、次章で検討することし,ここではそれ以外の著作隣接権の集中管理について検討することとする。 ○ 著作隣接権は,著作権と同様に無体財産であり,もともと管理が難しい権利であるが,デジタル化・ネットワーク化の進展に伴い,映像作品,レコードなどの視聴覚作品の利用による実演等の二次利用が今後益々増加し,利用者も広がると予想されることから,我が国において著作隣接権を取り扱う集中管理団体が健全に発展することは,著作隣接権の保護及び実演等の利用の円滑化に資するものと考えられる。 ○ その意味で,第5章の著作権の集中管理制度のあり方で検討した法的基盤整備の必要性に関する考え方については,著作隣接権の集中管理においても原則として同様であり,将来的には著作隣接権分野における集中管理団体についての法的基盤整備が必要となる可能性は高い。 ○ しかしながら,著作隣接権制度はまだ歴史も浅く,現時点において、著作隣接権の集中管理に規制を及ぼすことについては,次のような問題点があると考える。 ア 実演家の権利については、映画の著作物に録音・録画された実演に関し前述のような特別の取扱いがされている。映像作品に係る実演の二次利用の対価については,集中管理されている著作隣接権(録音・録画権)の許諾の対価としての使用料の場合と著作隣接権は働かないが契約上の追加報酬である場合の二通りが考えられるが,現行の契約実態としては,例えば放送局以外の番組製作者が製作した放送番組について,その点の法律上の解釈が関係者間で必ずしも一致していない実態がある。仮に制度として著作権の集中管理と同様の取扱いをした場合,例えば使用料規程の制定義務,審判所への裁定等の申請などの点で,使用料規程に盛り込むべき事項かどうか,審判所へ申請すべき事項かどうかなどの点で,権利者側と利用者側との間で紛争になる可能性があり,規制を導入することにより,かえって現行の集中管理に係る実務が混乱するおそれがあること ○ 以上の点から、著作隣接権の集中管理について,著作権の場合と同様の措置をすることは現時点において問題が多く,将来における法律解釈や契約慣行の定着,権利行使の実態等について見定めた上で,改めて法的基盤整備の問題について検討すべきであると考える。 ○ なお,ア,イ及びウについては,規制導入を留保する理由とはならず,著作隣接権の場合についても,著作権の場合と同様の措置を講じるべきであるとの意見があった。 第7章 指定団体制度等のあり方 (現行制度) ○ 前述したとおり,著作権法上,次の権利(以下「私的録音録画補償金受ける権利等」という)については,文化庁長官が指定する団体がある場合は当該団体によってのみ権利行使ができることになっている。 ア 私的録音録画補償金を受ける権利(第30条,第102条,第104条の2) (指定団体等による権利行使の義務化) ○ 私的録音録画補償金を受ける権利等は,著作者,実演家又はレコード製作者に認められた権利であるが, ア これらの権利は著作物等の利用の諾否を決めることができる許諾権ではなく,著作物等の利用が行われた場合に利用者に報酬等を求めることができる報酬請求権であることなどから,個々の権利者が自ら権利行使をすることは事実上不可能であり,個々の権利者に与えられた報酬請求権を有効に生かし,かつ権利者との報酬等の額に関する交渉等に係る権利者及び利用者双方の事務的負担を軽減するためには,これらの権利の行使について,指定団体等による行使を法律上義務付けることに異論はないと考える。 (複数団体の適否) ○ したがって,制度の問題としては,指定団体等が独占的に権利行使をすることの適否,換言すれば複数の指定団体等の適否である。 ○ 複数団体による権利行使については,前述したようにこの分野の特殊性から,次のような問題がある。 ア 私的録音録画補償金については,著作権法上,補償金の区分ごとに一つの団体を指定することになっており,また指定管理団体がある場合は権利者の意思にかかわらず強制的に権利を管理することになっているので,当該団体が全権利者に係る補償金を徴収することになっている。また,商業用レコードの二次使用料及び貸与報酬については,法律上は指定団体は一つに限ることになっていないので,指定団体は権利者からの委託があった場合にのみ権利行使できることになっているが,実際は非委託者の取り分も含め使用料を徴収し,非委託者からのクレームは指定団体が責任を持って対応するという慣行ができている。制度改正により,または別の団体の指定により複数団体による権利行使が可能となった場合は,指定(管理)団体は受託を受けた権利者の権利だけを行使することになるが,この場合,指定(管理)団体に権利を委託しない者の権利が有効に生かされず,かえって権利保護に欠ける制度になる可能性がある。 ○ 以上の点から,指定(管理)団体制度については,規制緩和政策等の観点から,複数団体による権利行使を認めるべきであるとの意見もあるが,複数団体を認めることの利点は乏しいと考えられ,権利の保護と権利処理の円滑化の両面から,現行の制度又は制度の運用を維持することが適当であると考える。 第8章 その他の集中管理に関する問題 緩やかな規制を前提とし,集中管理団体の複数団体化の容認等の新しい集中管理制度の導入に伴い,今後重要となるであろう集中管理に関連する以下のいくつかの運用上の問題も含めて検討を行った。 1 著作権等の集中管理と権利情報の集中管理 (J−CIS構想) ○ 我が国では,前述したように現在関係者間で著作権権利情報集中システム(J-CIS)の構築に向けての検討が進められている。このJーCIS構想は,情報化の進展に対応した著作権問題について審議している著作権審議会マルチメディア小委員会が,平成5年11月に公表した第一次報告書ーマルチメディア・ソフトの素材として利用される著作物に係る権利処理を中心としてーにおいて提言したものであり,円滑かつ簡便な権利処理のため,多様な分野の著作物にかかわる権利所在情報を統合し,それらの利用者に一つの窓口で提供するシステムである。また,この構想の実現については文化庁においても支援することとしており,平成7年度からは調査研究費を計上し,平成10年度からは科学技術庁とも連携して,構想の具体化について検討をしているところである。 (権利情報の集中提供化の推進) ○ 著作物等の利用が多様化しつつある現在,個別許諾方式による権利処理で対応可能な利用については,著作権等の集中管理による権利処理システムの整備だけでなく,一方で権利情報の集中提供化により,著作権等の個別管理がより有効に機能するような制度の整備も重要となっている。今後,ネットワークを通じた著作物等の流通において「権利認証機関」の位置付けが問題となると考えられるため,検討にあたっては,この動きにも留意しながら進めることが適切である。 ○ また,集中管理制度の改正により,集中管理団体の複数化が認められると規制対象の集中管理かどうかにかかわらず,どの著作物が又はどの権利がどこの集中管理団体で管理されているのかを明らかにする必要がある。そうしないと,利用者は著作物を利用する場合,どの団体に利用の申込みをすればよいのか迷うことになる。制度の改正に当たって規制対象の集中管理団体に利用者等に対する管理著作物・著作権に関する情報提供を義務付けることとしたのは,利用者の便を図ることが理由の一つであるが,規制対象とならない非一任型の団体等についてもJ−CISに積極的に参加するよう働きかける必要がある。 2 文化目的,社会目的等の共通目的基金の創設 (我が国の法制及び実態) ○ 著作権法では,私的録音録画補償金制度に関し,指定管理団体は,徴収した私的録音録画補償金(第104条の第1項の機器等の購入の際の一括の支払いの場合に限る)の2割以内で政令で定める割合(現在は2割)に相当する額を「著作権及び著作隣接権の保護に関する事業並びに著作物の創作の振興及び普及に資する事業」のために支出することを義務付けている(第104条の8)。 ○ これは,第104条の4第1項の一括の支払いの場合は,第30条第2項の利用行為ごとの徴収の場合と異なり,どの著作物等をどれだけ複製したかにかかわらず包括の一回の補償金で済み,しかも一回支払えば機器等が何年又は何回利用されてもそれ以上支払う必要がないこと,分配精度に限界があることなどから,全ての補償金を分配対象とするのは適当でなく,権利者全体の利益となるような事業に支出することにより,一種の間接的な分配を行うことが適切であるとの趣旨から設けられた規定である。 ○ 我が国の実態としては,私的録音補償金を徴収している(社)私的録音補償金管理協会が,前述の法律の定めに従い徴収額の20%を控除し共通目的基金として活用している。 ○ この他,日本芸能実演家団体協議会においては,商業用レコードの二次使用料収入等の10%を控除し共通目的基金として,事業助成等に利用している実態がある。 (外国の法制及び実態) ○ 私的録音録画補償金の分野では我が国を始め,フランス,オーストリアなどいくつかの国は法律により補償金からの控除による共通目的事業を認めている。また,法律上の規定がない場合であっても,ドイツなどのように任意の拠出金として控除を行っている国もある。 ○ 法制の例としては,フランスでは,レコードの二次使用料のうち分配不能金額の50%を,また私的録音録画補償金のうち25%を創作援助活動,生の興行の普及及び芸術家養成活動に使用しなければならないことになっている(第321の9条)。 ○ また,著作権協会国際連合(CISAC)で作成している演奏権管理協会間の相互管理標準契約書では,自己の会員の使用料から控除している場合に限り,外国団体への送金分から,協会が行う会員救済及び文化振興事業のために最大10%の控除が可能となっている。この制度を採用している団体としては,スペインのSGAE,スイスのSUISAなどがある。また,例えばイギリスのPRSは,会員の分配額から10%控除を行う一方で,外国団体への送金分については10%控除をしてくる団体への送金分に限り同率の控除を行い,会員の福利厚生事業の原資にしている。さらに,例えばフランスのSACEM,ドイツのGEMAについては会員の分配額に限り一定率の控除を行い文化事業等に使用している。 (共通目的基金のあり方) ○ 共通目的基金の問題に言及する前に,著作権等は私権であるので,集中管理団体の徴収した使用料は,管理手数料を控除した後,合理的な分配方法により個々の委託者に分配されるのが原則であることを,まず確認する必要がある。 ○ それを前提にして,分配されるべき金額からの一定額を控除し共通目的基金を創設することについては,次の2つの原則が遵守される必要があると考える。 ア 著作権等は私権であるので,控除はあくまでも委託者の承認に基づいて行われる必要があること○ アについては,法律により共通目的基金のための控除が義務付けられている私的録音録画補償金の場合を除き,委託者の承認がない控除は認められないということである。控除を実施する場合は権利者と集中管理団体の間で結ばれる委託契約又は委託契約約款の中で共通目的基金のための控除について規定を定めておく必要がある。集中管理団体の総会又は理事会の決議による控除についても,委託者が分配額から一定の控除がなされることがあり得ることを了承した上での決議である場合を別にして,認められない。なお,委託者が控除を拒否した場合に控除が認められないのは言うまでもない。 ○ イについては,共通目的基金は,集中管理団体である権利者団体が委託者である会員のため又は著作者,実演家等の全体の利益のために実施する場合に限られるということであり,株式会社等である集中管理団体が行う控除は一般に認められないと考えるべきである。控除の割合は,我が国及び外国の慣行から10%以下が適当である。ただし,実演家に係る商業用レコードの二次使用料については,著作権法上は,商業用レコードに録音されている演奏,歌唱等の実演に係る実演家に与えられた権利であるが,権利の創設の趣旨としては,レコードの普及によりレコードに録音されている実演家かどうかにかかわらず実演の機会が失われたことに対する補償いわゆる機械的失業に対する補償としての意味合いが強いことから,比較的高率の控除が認められると考えるべきである。控除した金額の用途については,共通目的基金の性格上おのずと制限があると考えられるが,具体的には共通目的基金を有する権利者団体の定款等に反しない事業であれば問題ないと考える。 3 著作権等に係る登録制度の整備 ○ 著作権法上,登録は,実名の登録(第75条),第一発行(公表)年月日等の登録(第76条),創作年月日の登録(第76条の2),著作権の登録(第77条),出版権の登録(第88条)及び著作隣接権の登録(第104条)がある。このうち,著作権の登録,出版権の登録及び著作隣接権の登録は,著作権等の移転,出版権の設定,著作権等を目的とする質権の設定など権利の変動がおこった場合の第三者対抗要件の登録である。 なお,コンピュータプログラムに係る登録については,著作物の特殊性に鑑み,プログラムの著作物に係る登録の特例に関する法律(昭和61年法律第65号)が制定され,登録原簿を磁気テープ等で調製できること(第2条),プログラムの著作物の複製物の提出を義務づけていること(第3条)などのほか,文化庁長官が指定する指定登録機関により登録業務を行わせること(第5条)ができることが定められている。 ○ 現在,プログラムの著作物については,ソフトウェア情報センターが,その他の著作物については文化庁が登録業務を行っている。 ○ 仲介業務法の規制対象の集中管理団体は,全て信託により著作権の管理を行っているのが現状であるが,例えば音楽の場合,現在は日本音楽著作権協会が独占的に著作権を管理していることから,一般に二重信託の問題は生じず,著作権等の集中管理の分野では,登録制度はほとんど活用されていないのが現状である。 ○ しかしながら,同一分野に集中管理団体がいくつかできた場合,委託者は,委託先を変えることが可能になり,また株式会社等の集中管理団体の場合であれば,例えば経営状況の悪化等により委託者に無断で委託された権利が処分される危険性があるなど権利の管理を巡って様々な問題が生じる可能性が出てくるため,権利保全のための登録制度が活用される可能性が広がると考えられる。 ○ 登録制度が活用されるようになると登録の件数が増加することになるが,登録事務の専門性に鑑み専門家を配置することやプログラムの著作物と同様登録事務を外部委託することも含め今後登録事務処理の体制の強化が必要となってくると考えられる。 ○ また,電子取引の普及により,コンピュータ技術とネットワーク技術を利用した許諾システム等の構築に伴い,登録の有無や権利の所在等に関する照会回答を電子的に行うシステムも構想されているが,そのようなシステムの実用化に備えて,例えば現在のバインダー方式の帳簿により登録原簿を作成しているのを電子的な方法により登録原簿を調整できるようにするなど制度の見直しを行う必要がある。 4 集中管理団体における職員の資質の向上 ○ 集中管理団体が増加することなどにより,当該業務に従事する職員の数も増加すると考えられるが,規制対象の集中管理かどうかにかかわらず,集中管理業務に従事する職員は著作権に関する正確な知識が必要であり,また,実務についての知識も要求される。著作権管理業務従事者に対する資質向上のための研修については,各集中管理団体で独自に実施しているほか,音楽出版社協会やコンピュータソフトウェア著作権協会が著作権管理者養成講座を実施している例がある。また,文化庁においては,全国7か所で著作権に関する基礎知識を身に付けてもらうため著作権セミナーを開催しているところである。 ○ 集中管理団体の健全な発展を確保するためには,当該団体で働く職員の資質の向上が不可欠であるのは言うまでない。集中管理に関する制度改正を経て,集中管理団体の新規参入が進むと事業者の中には,組織の規模や財政的な面で,著作権に関する教育研修を実施できない事業者も出てくる可能性があるので,例えば事業者団体において又は複数の事業者が協力して研修会を実施するなど,職員の資質の向上を図る方策を考えるべきである。 5 集中管理団体協議会(仮称)の設立 ○ 規制緩和により参入規制が緩やかになり,また業務の運営についても集中管理団体の自主性が尊重されるようになると,国の指導監督により業務の健全性を維持するのではなく,個々の集中管理団体の自助努力により,権利者・利用者からの信頼を確保していくことがより重要となる。この場合,個々の集中管理団体の努力だけでは限界があるのは当然であり,例えば,職員のため基礎的な研修の実施,委託契約約款・利用契約約款作成例の研究,著作物使用料規程の作成例の研究などについては,特定の集中管理団体のためではなく集中管理業務全体の利益のために実施すべき事項であると考える。したがって,どの程度の新規参入があるかは不明であるが,ある程度の新規参入がある場合については,集中管理団体で組織する集中管理団体協議会(仮称)を設立し,この協議会を核にして,集中管理団体全体の問題について取り組み,集中管理業務の健全な発展に資するための事業を行うことが望ましい。 |