新たな留学生政策の展開について(中間報告)
〜 留学生交流の拡大と質の向上を目指して 〜
我が国は昭和58年にいわゆる「留学生受入れ10万人計画」を策定し,留学生の受入れの拡大と,総合的な留学生政策の実施に取り組んできた。その結果,我が国の大学等で学ぶ留学生の数は,平成14年5月には95,550人に達し,平成15年には,目標の10万人を超えるのは確実な状況にある。また,大学等への進学などを目指し我が国の日本語教育機関で学ぶ外国人学生の数も大幅に増え,平成14年7月には39,205人を数えるに至っている。
一方,我が国から外国に留学する日本人学生の数も着実に増え,平成12年には主要32か国だけで76,464人に達している。
留学生の受入れと派遣は,我が国が目指す国際的に開かれた社会の実現に大きく貢献する事業である。また,留学生の交流は我が国と諸外国との間の人的ネットワークを形成するとともに,相互理解と友好関係の深化を促すものである。特に,我が国の大学等に強く求められている一層の国際化や,国際競争力の強化のためには,諸外国との知的交流の深化にもつながる留学生交流の拡大が極めて重要である。
このような認識の下,本審議会は,平成14年11月28日に大学分科会の下に留学生部会を設置し,新たな留学生政策の在り方について鋭意検討を重ねてきた。
審議を通じて本審議会は,留学生交流の双方向での拡大が時代の要請である中で,日本から諸外国に留学する日本人学生についてはこれまで必ずしも明確な留学生政策に基づく支援策が講じられてこなかったという点に留意した。
また,留学生の数の拡大はそれ自体望ましいとしながらも,安易な数の拡大が招きかねない大学等の受入れ体制,教育研究内容,学生等の質的低下についても指摘し,必要な施策について意見を交わした。
さらに,平成16年4月には,独立行政法人日本学生支援機構が設立され,日本人学生,外国人留学生等を対象とした総合的な支援体制が確立される予定となっていることなども視野に入れて審議を進めてきたところである。
本審議会は,以上のような点を勘案しつつ,中長期的な施策の方向性を見据えた上で,我が国への留学生数が少なくとも3万人程度増加することが見込まれる,今後5年程度を目途に,できるだけ早期に実現すべき施策について,「中間報告」として取りまとめた。
本審議会においては,この「中間報告」に対して各界各層から広く意見を頂いた上で,それらを踏まえつつ,更に審議を深めることとしたい。
(諸外国との相互理解の増進と人的ネットワークの形成)
留学生の受入れ・派遣を通じた留学生交流は,グローバル化する経済・社会の中でますます重要となる我が国と諸外国との間の親密な人的ネットワークを形成するとともに,相互理解の増進や友好関係の深化を図る上で,非常に効果的である。特に,我が国から帰国した留学生は,政治・経済・学術等様々な分野で相手国と我が国との懸け橋として対日理解,友好関係の促進に貢献することが期待される貴重な人材であり,こうした人的ネットワークは,我が国が安定した国際関係を築く上での基礎となるものである。
(国際的な視野を持った日本人学生の育成と開かれた活力ある社会の実現)
日本人の海外留学は,多様なニーズに応じた教育研究の機会を提供するものである。特に,経済・社会のグローバル化に伴い求められる外国語運用能力の向上をはじめ,異なる文化に柔軟に対応できる能力を備えることを可能とするものである。
さらに,世界各国から優秀な学生が集まる外国の大学等において,国際的な競争環境の中で切磋琢磨(せっさたくま)し,学習や研究に打ち込むことは,真に国際的に通用するリーダーとなる日本人の育成につながるものである。
また,多くの日本人が我が国に受け入れた留学生との交流を通じて,多様な価値観,発想,習慣等に触れる機会を日常的に持つことや,留学後も引き続き我が国において就職した留学生が活躍することなどにより,国際的に開かれた活力ある社会の実現が期待される。
(我が国の大学等の国際化,国際競争力の強化)
我が国の大学等が,留学生の受入れ・派遣を進めることは,世界的な広い視点に立って大学等の教育研究の内容や水準を改善することを促す。そして,留学生自身の活力や異文化との交流等を通じて,大学等の教育研究の国際的な通用性・共通性の向上と国際競争力の強化を促進するものであり,ひいては,我が国の科学技術,産業等の国際競争力の維持,向上に資するものである。
(国際社会に対する知的貢献)
外国人留学生の受入れは,諸外国の人材を我が国において育成することを通じた知的国際貢献である。また,各国の英知を結集し人類共有の知的財産を創造することや我が国で学んだ留学生が母国で指導的立場で活躍することなどにより,国際社会における我が国の知的存在感を増大させるものである。
(世界の留学生数の動向等)
主要50か国における外国人留学生数(当該国に受け入れた当該国外からの留学生数)の総計は,国際的な経済・社会のグローバル化を反映し,1988年から1998年の10年間に,約94万人から約161万人へと約7割増加している。この間の留学生数を国別に見ると,アメリカ合衆国が約37万人から約49万人に,イギリスが約7万人から約22万人に,オーストラリアが約2万人から約7万人に,フランスが約13万人から約15万人に,ドイツが約9万人から約17万人に増えており,英語圏を中心に外国人留学生の受入れについて高い増加を示している。
これらの国々においては,近年,諸外国との相互理解の増進,大学等の国際競争力の強化等の観点から,外国人留学生の受入れに戦略的に取り組んでいる。また,アジアにおいても世界トップクラスを目指す高等教育機関が出現するなど,留学生の受入れ促進は各国共通の課題となっている。
(留学生数の現状)
我が国が受け入れている外国人留学生の数は,近年大きく増加しており,平成14年5月1日現在,95,550人で,過去最高となっている。そのうち国費留学生は,9,009人であり,全体の約1割を占めている。留学生全体の9割以上はアジアからの留学生であり,中国の58,533人を筆頭に韓国,台湾を加えると全体の8割に達している。これらの留学生の多くは,学位の取得を目指している。一方,いわゆる短期留学生の数は,6,171人で,全体の6.5%となっている。
海外に留学する日本人の数は,年々着実に増加し,平成12年には,主要32か国で,76,464人となっている。しかし,このうち国からの支援を受けて留学している者の数は,極めて少ない。留学先を地域別に見ると,全体の6割は北アメリカへの留学生であり,これにヨーロッパへの留学生を加えると全体の約8割に達している。
以上のように,我が国に受け入れた外国人留学生及び海外へ留学した日本人学生の数は増加している。しかし,我が国の大学等の在学者全体に占める割合で見ると,受入れは2.6%,派遣は1.5%にすぎない。これを国際的に比較すると,例えば,フランスでは,受入れは7.6%,派遣は2.6%となっており,我が国の水準は,まだ十分とは言えない。
(受入れ中心から相互交流重視へ)
諸外国との間の相互理解の増進,友好関係の深化を図るという意味では,本来,留学生交流は,双方向の相互交流であることが望まれる。しかし,我が国の留学生政策においては,国際貢献という観点から,特に途上国からの留学生受入れに重点が置かれてきており,日本人の海外留学についての政策的な対応は十分取られてきたとは言えない。また,地域別の留学生数を見ると,受入れはアジア中心,派遣は欧米中心であり,均衡が取れていない。
(留学生の急増に伴う質への懸念)
最近の受入れ留学生数の変化を見ると,4年前の平成10年には,51,298人であり,この4年間におよそ2倍という急激な増加が見られる。増加した留学生のほとんどは私費留学生であり,かつ約8割は中国からの留学生という状況である。
この背景には,
中国をはじめとするアジア諸国の著しい経済成長に伴う大学等への進学意欲の拡大,
我が国の18歳人口の減少等に伴う我が国の大学等の積極的な留学生の受入れ姿勢,
入国在留審査における諸手続の簡素化などが考えられる。
このような状況の中で,各大学等においては,入学者選抜,教育研究指導,在籍管理などの受入れ体制を十分に整えることなく,安易に留学生を受け入れ,結果として学習意欲等に問題のある留学生を在学させているのではないか,という懸念が増している。
(留学生交流の一層の推進)
経済・社会のグローバル化が今後ますます進展することが予想される中で,我が国が諸外国との友好関係を維持するとともに,国際競争力を強化していくためには,留学生交流は今後ますます重要性を増すと考えられる。
同様の観点から,平成12年4月に開催されたG8(注)教育大臣会合においては,今後10年間で学生,教員等の流動性の倍増を目標とする合意がなされている。
我が国の留学生交流の現状を見ると,特に受入れについては,いわゆる「留学生受入れ10万人計画」で目標としていた水準に達しつつある。しかし,大学等の在学者数に占める留学生数の割合は,受入れ・派遣とも欧米先進国と比較して低い水準にあることなどから,留学生交流を更に推進し,我が国の大学等の国際化を進めていく必要がある。
(注)G8
日本,アメリカ,イギリス,フランス,ドイツ,イタリア,カナダ,ロシアの主要8か国を指す。
(各大学等の取組を基本とした交流の拡大)
留学生の受入れが10万人に達しようとする状況を踏まえ,今後の留学生交流の推進においては,国のみならず各大学等がより主体的な役割を果たし,国は各大学等の取組を支援するという考え方に立って留学生交流の拡大を図っていくべきである。
特に,留学生の受入れに関しては,我が国の大学等が日本人学生にとっても留学生にとっても魅力あるものであることが不可欠の条件である。そのため,各大学等において教育研究内容の国際的な通用性・共通性の向上と国際競争力の強化,留学生交流の実施体制の充実を図ることが必要である。
(日本人の海外留学への支援)
これまでの留学生政策は,国際貢献という観点から外国人学生の受入れに重点を置いたものであった。しかし,今後は,諸外国との間の相互理解の増進,友好関係の深化という観点から,交流という面をより重視していくべきである。
取り分け,現在日本人学生の海外留学に対する国の支援は限られたものでしかない。しかし,我が国の国際競争力の強化やグローバル化した社会で活躍できる人材を育成するという観点から,より多くの日本人学生が短期留学も含め何らかの形で海外留学を経験することが望ましく,国として,それを推進する必要がある。
また,最先端の教育研究活動を行う海外の大学において,日本人学生が国際的な競争環境の中で学習や研究を行うことは極めて有意義であり,国としてこれを支援していく必要がある。
(留学生の質の確保と受入れ体制の充実)
近年,留学生の受入れが急激に増加していることに伴い,各大学等における入学者選抜,教育研究指導,在籍管理等の面において,留学生の増加に対応した体制を十分に取らず,その結果,真に勉学・研究を目的としているか否かなど,留学生の質の問題に対する懸念が増している。
留学生の受入れ体制の充実については,各大学等において主体的に責任を持って取り組むべき課題であるが,国が留学生に対する各種の支援策を講ずるに当たっては,各大学等の留学生の質の確保のための取組を促すようにすべきである。
その際,受け入れる留学生の最低限の質の確保だけでなく,より積極的に世界各国から優秀な留学生をいかに日本に引き付けるかという観点も重要である。
(日本学生支援機構設立等による支援体制の強化)
平成16年4月に,現在,特殊法人日本育英会が実施している日本人学生への奨学金の貸与事業と,(財)日本国際教育協会,(財)内外学生センター,(財)国際学友会及び(財)関西国際学友会が実施している留学情報の収集・提供,「日本留学試験」の実施,留学生宿舎の設置・運営,日本語予備教育,国による外国人留学生への奨学金の給付事業などを統合して,日本人学生と外国人留学生の双方に対する支援業務を統一的視点から総合的に実施する機関として,独立行政法人日本学生支援機構が設立されることとなっている。
留学生に対する各種の支援業務は,今後,日本学生支援機構を中核として総合的に実施する体制が確立されることになり,留学生に対するきめ細やかで充実した支援が行われることが期待される。また,各大学等の留学生関連業務に対する支援・協力も強化されるべきである。
文部科学省においては,日本学生支援機構との連携協力を図りつつ,留学生政策の企画調整機能の充実を図るとともに,外務省をはじめとする関係省庁との一層の連携の下,政府一体となった留学生政策を展開すべきである。さらに,企業,地方公共団体,各種民間団体等とも連携し,社会全体として留学生を受け入れる環境を構築すべきである。
(1) 大学等における教育研究の高度化と国際競争力の強化
(留学生交流の実施体制の確立)
留学生交流は,大学等の国際化,国際競争力の強化にかかわる重要な戦略としてとらえるべきものである。各大学等においては,留学生交流に組織的に対応するため,学長等のリーダーシップの下に,各教育機関としての明確な留学生受入れ・派遣に関する方針を定めるべきである。その上で,留学生センター等を中心として学内の関係部局が一致協力し,留学生交流を着実に実施できる体制を確立すべきである。
(特色のある教育内容の一層の充実)
多くの優れた留学生を日本にひきつけるためには,まず何よりも大学等の教育研究内容が質の高い充実したものにならなければならない。現在,各大学等においては,教育内容や教育方法の改善に積極的に取り組んでいるが,さらに国際的な通用性・共通性のある,日本人学生にとっても外国人留学生にとっても魅力のある教育研究が行われていく必要がある。
その上で,外国語による授業や試験の実施,秋季入学の導入など,外国人留学生に配慮した教育プログラムの実施を拡大するとともに,インターネット等を活用した遠隔地での教育研究指導の実施についても検討すべきである。また,学位授与の改善を引き続き進めるとともに,我が国の大学と外国の大学の双方で学位を得られるようなプログラムの開発についても期待される。
さらに,外国人留学生にもインターンシップの機会を提供することなどにより,教育効果をより高めるとともに,日本の経済,社会,文化などに対する外国人留学生の理解を深めることも重要である。
(国際化に対応した教員,職員の採用と外国語運用能力の向上)
大学等の国際化を進めるためには,教員の公募の対象を,我が国で学位を取得した留学生を含め海外に拡大することなどにより,優秀な外国人教員の積極的な採用を進め,教員構成の国際化を推進することが求められる。また,日本人教員の採用の際にも,豊富な留学経験や海外での活躍の実績を加味することが望まれる。このような多様な教員の参画により,留学生に対して教育研究のみならず生活面での指導の充実が図られ,より留学生のニーズにこたえるものになると考えられる。
また,事務職員についても,外国語運用能力や国際経験のある職員を採用したり,留学業務に関する研修の充実に努めたりして,各大学等における受入れ体制の質を高めることが必要である。
(大学等における情報発信機能と情報収集の強化)
より多くの優れた留学生を受け入れるためには,各大学等において,特色ある教育内容,指導教員等の教育研究の内容について,インターネットのホームページ等を通じた情報発信を一層充実することが重要である。
また,各大学等は留学生に関する入学者選抜をより的確に行うために,留学生を募集する現地の教育機関,留学あっせん機関等の状況について,在外日本公館を含む関係機関と連携し,積極的に関係情報の収集に努めるとともに,各大学等の間においても関係情報の共有化を図ることが重要である。
(留学生の在籍管理の徹底)
留学生の中には,一部ではあるが,実際には大学等に通学せず,不法に就労する者がいるとの指摘がある。大学等においては,安易に留学生を入学させることなく,真に留学を目的とする者を入学させることが求められる。また,自ら入学許可した留学生については,勉学状況の良好でない者への指導の徹底,改善の見込みのない者に対する退学等の処分の実施など,責任を持って在籍管理を行わなければならない。その際には,地方の入国管理官署との連携を図ることが重要である。
(自己点検・評価,第三者評価の実施)
大学は,その教育研究水準の向上に資するため,自己点検・評価を行うことに加え,平成16年度からは,文部科学大臣の認証を受けた評価機関による第三者評価を受けることが義務付けられている。
第三者評価の評価項目の内容は,各評価機関が自主的に定めるものであるが,留学生受入れの質の確保の観点から,例えば,留学生に対する教育プログラムの在り方や大学における留学生の受入れ体制等について,充実した評価が行われることが強く期待される。
(2) 多様な教育,研究に対するニーズに応じた海外留学の支援
(海外留学に関する情報提供の充実)
我が国の国際競争力の強化やグローバル化した社会で活躍できる人材を育成する観点から,日本人学生の海外留学を推進していく必要がある。そのため,日本人学生が留学目的に合った留学が行えるよう,日本学生支援機構を中心として,海外大学等の留学情報の収集・提供機能を強化するとともに,留学相談の充実を図る必要がある。
(海外留学の支援)
社会のグローバル化に対応するためには,より多くの日本人が海外留学を特別のこととしてではなく,短期留学も含め海外留学の機会を持つことが重要であり,国としての支援を充実する必要がある。その際,貸与制の奨学金の活用により,海外留学を希望する日本人学生のニーズにより適切にこたえていく必要がある。
また,国際的にも指導的立場で活躍できる日本人を育成することも重要な課題である。現在の国の支援による日本人学生の海外留学制度の充実を図り,世界の最先端の教育研究活動を行っている海外の大学等において博士等の学位の取得が可能な長期留学制度を設ける必要がある。
(短期留学の推進)
短期留学は,より容易に,諸外国との間の相互交流や国際理解,国際協調を促進することを可能とするものであり,一層の推進が求められる。
大学等において,短期留学生受入れのための日本語能力を要しない教育プログラムの充実や交換留学生のための単位の相互認定,授業料の相互免除等を基本とした大学間や複数大学の連合体(コンソーシアム)間の交流協定の締結とその積極的運用などを図ることが必要である。その際,アジア太平洋大学交流機構(UMAP)が開発したUMAP単位互換方式(UCTS)の活用が有効であり,UMAPの活動,UCTSに対する大学等の理解増進や普及を図る必要がある。
短期留学の推進に当たっては,日本人学生の派遣に対する支援を充実するとともに,アジア等への派遣,欧米等からの受入れを推進するなど,交流の地域の均衡に留意していく必要がある。
(外国政府との協力体制の強化)
我が国では,これまで世界50か国との間で38の文化協定や経済連携協定等を締結している。これらの協定では,学生交流の奨励に関する規定が盛り込まれるとともに,相手国政府との間で合同委員会が設けられている場合がある。このような政府間協議等の機会をとらえ,我が国の留学施策の情報を積極的に発信しつつ,相手国政府との留学生交流にかかわる協力体制の強化に努める必要がある。
(3) 渡日前から帰国後に至る体系的な留学生受入れ支援体制の充実
(独立行政法人日本学生支援機構の設立)
平成16年4月に設立される独立行政法人日本学生支援機構においては,留学生に対する奨学金の支給,国費留学生に対する日本語予備教育,留学生宿舎に関する業務等が実施されることとなっている。これまでこれらの業務は,国や関係する四つの公益法人において,個々に実施され,ともすると留学生にとって分かりにくい体制となっていた。しかし,日本学生支援機構の設立によって,統一的で,よりきめ細やかな支援が行われることが期待される。
さらに,海外に向けた情報提供の充実や留学生関連業務に関する研修の実施など各大学等における留学生受入れの体制を充実させるための協力・支援を行い,質の高い留学生受入れのための取組を強化することが期待される。
日本学生支援機構が,我が国の留学生支援の中核的な機関として,渡日前から帰国後までの体系的で一貫した留学生支援施策を実施できるよう,組織体制を整備するとともに,国際経験の豊富な職員を配置するよう努めるべきである。
(海外での情報提供,相談機能の充実)
多くの優れた留学生を日本に引き付けるためには,日本留学に関する情報提供機能の強化が必要である。
日本学生支援機構においては,インターネットのホームページ等において,奨学金や各大学等の教育研究内容の紹介など日本留学に関する情報の内容の充実を図る必要がある。その際,帰国留学生に関する情報が充実している外務省のホームページや関係機関のホームページとリンクするなどして,留学に関する総合的な情報窓口の機能を果たせるようにすべきである。
また,外務省,在外日本公館や日本学術振興会,国際協力事業団等の海外事務所等との連携や民間活力の導入を図りながら,日本学生支援機構の海外拠点の充実をも視野に入れつつ,海外における情報提供や相談機能の強化を図るべきである。
さらに,留学生受入れの地域の均衡を考慮し,日本への留学生の少ない地域の中から,戦略的に対象地域を選び出し,留学情報の提供を重点的に行うことも考えられる。
(日本語教育機関等に対する支援)
日本語教育機関で学ぶ者の約7割が,我が国の高等教育機関へ進学しているなど,多くの留学生にとって日本での留学生活の第一段階は日本語教育機関における学習である。したがって,日本語教育機関の質的向上や在籍者への支援は,留学生政策の一環として着実に充実を図るべきである。
日本語教育機関の学生については,現在,専修学校専門課程等を除き,在留資格は「就学」とされているが,その取扱いについて今後検討を行っていくべきである。また,教育施策上は,在留資格の区分にとらわれることなく,例えば,その呼称を「就学生」ではなく「留学生」とすることなどについて,検討していく必要がある。あわせて,交通機関における学生割引の適用や学習奨励費の給付の充実,医療に関する支援など,日本語教育機関の学生に対する施策が一層拡充されるよう,関係機関への働き掛けや検討を行うべきである。
(渡日前入学許可の推進など入学者選抜の改善)
質の高い留学生を受け入れるためには,入学者選抜の在り方が重要である。「日本留学試験」については,海外における試験の実施と普及に更に努めるべきである。また,日本の大学教育や入学者選抜における英語の位置付け等を踏まえ,英語を試験科目とすることなどについても検討すべきである。さらに,各大学が「日本留学試験」を活用して渡日前入学許可を積極的に実施するよう働き掛けることが必要である。あわせて,各大学においては,海外面接の拡充やインターネット等の情報通信技術を用いたインタビューの実施について検討すべきである。
日本の大学等に入学する留学生の多くは,我が国の日本語教育機関の修了者である。各大学等にとって,入学者選抜の際に,日本語教育機関と連携し,日本語教育機関における成績や出欠状況などを選考の資料とすることは,入学者の質を確保する上で有効である。
さらに,国として,日本学生支援機構を中心に,在外日本公館を含む関係機関と連携しながら,海外の教育機関,留学あっせん機関等の状況について情報収集を行い,各大学等に提供するなど,各大学等が的確に入学者を選抜できるよう支援を行う必要がある。
(国費外国人留学生制度の在り方と今後の方向)
国費外国人留学生制度については,引き続き留学生数全体に対し一定割合を確保するとともに,制度の根幹は維持しつつ,必要な見直しを行うべきである。
国費留学生の採用方法は,大使館推薦,大学推薦,国内採用の3種類があり,研究留学生については,その採用人数比は,およそ5:4:1となっている。大使館推薦については,外交政策上の配慮や発展途上国における人材育成の観点等も勘案しつつ,国別の均衡に配慮した受入れが可能である一方,大学推薦については,各大学の大学等間交流協定等に基づくものであり,各大学の主体的な留学生交流を促進し,大学の国際競争力の強化を図るものである。また,国内採用については,特に優秀な私費留学生を支援する機能を果たしている。これら3種類の採用方法については,それぞれの特徴を持ち,役割を果たしてきたところであるが,今後は留学生の質の確保という観点を踏まえつつ,適切な割合について検討すべきである。その際には,国費留学生制度の種類に適した採用方法についても考慮すべきである。
また,国費留学生への応募はだれにでも開かれた平等なものであるべきであり,募集・選考の過程の透明化を一層図るべきである。
さらに,優秀な留学生に対し国内採用による国費留学生への途を確保する一方で,各学年末などに留学生の成績の評価を行い,成績不良等の場合には,以後の奨学金の給付を打ち切るなど,成績管理を適切に行うべきである。
国費外国人留学生制度の一つであるヤング・リーダーズ・プログラム(YLP)については,プログラムの実施大学の拡大の在り方,学生選考方法への公募方式の追加等について検討を行った上で,着実に推進すべきである。あわせて,将来のナショナル・リーダーたるYLP留学生の間に人的ネットワークを確実に構築するため,留学後のフォローアップの充実を図ることが重要である。
さらに,各国からより優秀な学生を引き付けるため,YLP留学生であったことが留学生の誇りともなり,国際的にも一定の評価を得られるような方策についても,検討を行う必要がある。
(私費留学生支援制度の在り方と今後の方向)
我が国の留学生のうち,およそ9割は私費留学生が占めており,私費留学生に対する支援は重要である。その際,私費留学生の質の確保にも留意する必要がある。
大学等に在籍している者のうち,経済的援助を必要とする成績優秀者に対する奨学金である私費外国人留学生学習奨励費については,引き続きその充実を図るとともに,受給者の決定に当たって,「日本留学試験」を一層活用するなど,留学生の質の確保にも留意した制度の改善を図るべきである。
授業料減免学校法人援助については,各学校法人が私費留学生に対する授業料減免を実施することを奨励するために,国がその一部を負担する制度であり,私費留学生の授業料負担の軽減を図るものとして重要な役割を果たしている。この制度については,
運用によっては安易な留学生の受入れにつながるおそれがあるのではないか,
経済的に困難な留学生に対する支援として十分なものになっていないのではないか,などの指摘があることを踏まえ,真に援助が必要な留学生が適正に授業料の減免を受けることができるよう,改善を図っていく必要がある。
(留学生宿舎の整備の在り方と今後の方向)
留学生にとって,低廉で良質な宿舎の確保は重要である。近年の留学生数の大幅な増加を踏まえ,引き続き,大学や公益法人等が設置する公的な留学生宿舎の着実な整備と適切な維持管理が必要である。その際,留学生のみを入居させるより,留学生と日本人学生が混住し,交流の推進が容易な形態となるよう配慮すべきである。
なお,国立大学法人等の宿舎の整備及び維持管理に当たっては,PFI(注)を活用することも有効である。
民間宿舎への入居については,保証人の確保等の課題があり,「指定宿舎確保事業」や「留学生住宅総合補償事業」,(財)留学生支援企業協力推進協会を中心とした社員寮の活用,機関保証などにより,民間宿舎への入居が一層容易なものとなるようにする必要がある。
(注)PFI
公共施設等の建設,維持管理,運営等を民間の資金,経営能力及び技術的能力を活用して行う手法。
(留学生と地域社会との交流)
留学生の日本の社会や文化に対する理解を深めるためには,日本人学生や地域社会との交流が重要である。全国の各都道府県に設置している「留学生交流推進会議」には,大学等をはじめ地方公共団体,企業,各種の民間団体など幅広く関係者が参画しており,これらを通じて,地域社会との交流の促進を図るべきである。地域社会との交流を進めるに当たっては,特に民間団体が果たす役割が大きいことから,民間の活動を奨励する方策を検討すべきである。
あわせて,日本学生支援機構の留学生宿舎については,国際学生交流拠点機能を持たせることとされており,留学生と日本人学生の交流をはじめ,多彩な交流事業を体系的,継続的に実施することが望まれる。
(セイフティー・ネットの充実)
留学生が我が国での留学生活を送る上で,様々な不測の事態に直面しても,安心して留学生生活を送ることができるよう,医療費補助制度や緊急時の一時的な資金援助など支援の充実を図ることが必要である。その際,出産の場合など女性の留学生に配慮した支援の在り方について,検討すべきである。
(留学生に対する帰国後の支援の充実)
留学生交流の意義を高めるためには,留学生の帰国後の適切なフォローアップが必要である。そのため,元留学生による同窓会の結成とその活動の活性化を図るため,大学等がインターネットのホームページ等の活用によって支援することや,元留学生の再来日や指導教員の派遣,元留学生のデータベース化などを進めていくことが必要である。その際,外務省などの関係機関とよく連携することが重要である。
(留学生の卒業,修了後の就労)
大学等で学んだ知識,技術を生かして日本で就職することを希望する留学生が,近年増加してきており,企業の側でも,経営の国際的展開等に対応するため,留学生の採用数を増やしている状況にある。就職を希望する留学生を支援し,円滑な就職機会の確保を図るためにも,大学等における指導の充実,就職に関する適切な情報の提供,大学等と企業との間の連携の強化が望まれる。
また,研究人材の多様性を向上させる等の観点から,卒業,修了する留学生が引き続き日本で研究者として研究に従事できるような環境を整備することが必要である。このため,ポストドクター(注)制度による支援や競争的研究資金による雇用の充実など研究を継続できる経済的支援の充実を図ることが重要である。
(注)ポストドクター
主に博士課程修了後、研究者としての能力をさらに向上させるため、引き続き大学等の研究機関で、研究業務に従事する者をいう。
(4) 高校生留学の推進
(高校生留学の意義)
高校生留学は,異文化理解に極めて大きな意義を有し,さらには諸外国との友好親善の増進に寄与するものである。また,高校生の年代での留学体験は,大学生レベルでの留学やその後の国際交流活動の拡大につながるものである。例えば,語学指導等を行う外国青年招致事業(JETプログラム)の参加者の中には,高校生のときの日本留学がそのきっかけとなった者もいる。
(高校生留学の推進)
高校生留学の現状を見ると,大学生レベルに比べ,受入れ・派遣ともにその規模は小さく,不十分といえる。その理由として,例えば派遣については,高校生留学に対する理解の不足,帰国後の大学入試に対する本人や保護者の不安等が考えられる。また,受入れに関しては,ホストスクールやホストファミリー等の受入体制の未発達などが考えられる。今後は,高校生留学の意義の周知,受入れと派遣の均衡,受入れ・派遣国の多様化を考慮しつつ,上記のような課題を解決し,交流の人数の拡充を図るよう,国や自治体の取組の一層の充実が必要である。
(高校生留学の促進のための支援体制の整備)
派遣に関しては,留学の意義の周知を含めた留学情報の提供などにより教員や保護者の高校生留学への理解を促進するとともに,生徒にとって留学が実りあるものとなるよう,国際理解教育や外国語教育の推進,派遣前オリエンテーションの充実等により生徒の留学に関する資質や理解の向上を図ることが必要である。また,英語圏諸国だけでなく,より日本に近いアジアを含めた多様な国への留学を促進することが必要であり,そのため,まずは短期間の留学の促進が有効と考えられる。さらに,安全確保に配慮した適切なホームステイ先の確保も重要であり,あわせて,大学の入学者選抜においても,高校生留学の経験を積極的に評価することが期待される。
受入れに関しては,各学校,教育委員会,ホストファミリー及び民間の留学交流団体の連携・協力の下,受け入れる学校やホームステイ先の拡充を図ることが重要である。そのためにも,短期間の招致事業の実施を通じ,日本の高等学校や一般家庭に対する海外の高校生の受入れへの理解を増進させ,また,留学生の受入れに関する情報提供の充実により,海外の高校生の日本への留学の一層の促進を図る必要がある。
(教員の海外研修の活用)
高校生留学の重要性,必要性については,教員自らが海外での生活を体験することにより,一層理解が深まるものと考えられる。
教員を対象とした外国語運用能力,異文化コミュニケーション能力の育成を目的とする海外研修は,国及び地方公共団体等で種々実施されているが,今後は,こうした教員の海外研修制度を一層活用することにより,中・高等学校教員に対して,海外における生活体験の機会の増大を図ることが重要である。
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