ここからサイトの主なメニューです

今後の不登校への対応の在り方について(報告)
−目次−

1章  はじめに−本協力者会議の基本姿勢
  不登校の現状に関する認識
  正しい理解に基づく確実な取組の必要性
  不登校の要因・背景の多様化と教育の果たす役割
  本協力者会議の審議経過と報告のねらい

2章  不登校の現状
  不登校の定義や現状
(1) 不登校の定義や不登校児童生徒数の推移等
(2) 不登校となった直接のきっかけ
(3) 不登校状態が継続している理由(不登校の態様・タイプ)
(4) 不登校児童生徒への指導の結果
(5) 進路の状況等
  不登校の要因・背景の多様化・複雑化
(1) 不登校の背景と一般的な社会の傾向等
(2) 不登校との関連で新たに指摘されている課題
(3) 不登校の要因・背景の特定の難しさ
(4) 多様な要因・背景と適切な対応策
  不登校の実態把握の在り方
(1) 適切な実態把握の必要性と調査の在り方
(2) 実態把握と対応の在り方との関係
  高等学校における長期欠席の課題への認識
  「ひきこもり」問題との関連

3章  不登校に対する基本的な考え方
  将来の社会的自立に向けた支援の視点
  連携ネットワークによる支援
  将来の社会的自立のための学校教育の意義・役割
  働きかけることや関わりを持つことの重要性
  保護者の役割と家庭への支援

4章  学校の取組
  魅力あるよりよい学校づくりのための一般的な取組
(1) 新学習指導要領のねらいの実現
(2) 開かれた学校づくり
(3) きめ細かい教科指導の実施
(4) 学ぶ意欲を育む指導の充実
(5) 安心して通うことができる学校の実現
(6) 児童生徒の発達段階に応じたきめ細かい配慮
  きめ細かく柔軟な個別・具体的な取組
(1) 校内の指導体制及び教職員等の役割
(2) 情報共有のための個別指導記録の作成
(3) 家庭への訪問等を通じた児童生徒や家庭への適切な働きかけ
(4) 不登校児童生徒の学習状況の把握と学習の評価の工夫
(5) 児童生徒の再登校に当たっての受入体制
(6) 児童生徒の立場に立った柔軟な学級替えや転校等の措置
  不登校児童生徒の実態に配慮した特色ある教育課程の試み

5章  関係機関との連携による取組
  入所・通所型の施設の取組
(1) 適応指導教室の整備充実
(2) 社会教育施設の体験活動プログラムの積極的な活用
(3) 公的機関と民間施設やNPO等との積極的な連携
  訪問型の支援の取組
(1) 公的な機関等による訪問型の支援の推進
(2) 訪問型の支援の実施に当たっての配慮
  ITの活用

6章  中学校卒業後の課題
  高等学校に関する取組
(1) 高等学校入学者選抜等の改善
(2) 高等学校における長期欠席・中途退学への取組の充実
  中学校卒業後の就学・就労や「ひきこもり」への支援
(1) 中学校卒業後の青少年の進路の相談や受け皿づくりへの期待
(2) 中学校卒業後のひきこもり傾向にある青少年への支援

7章  教育委員会に求められる役割
  不登校や長期欠席の早期の把握と対応
  学校等の取組を支援するための教育条件等の整備
(1) 教員の資質向上
(2) きめ細かな指導のための適切な人的措置
(3) 保健室や相談室等の整備
  学校における指導等への支援
(1) モデル的な個別指導記録の作成
(2) 転校のための柔軟な措置
  適切な対応の見極め(「アセスメント」)及びそのための支援体制づくり
  学校外の公的機関等の整備充実
(1) 適応指導教室の整備充実やそのための指針づくり
(2) 教育センターや教育研究所等における教育相談機能の充実
  訪問型支援など保護者への支援の充実
  官民の連携ネットワークの整備の推進
(1) 他部局との連携協力のためのコーディネート
(2) 関係機関のネットワークづくりと不登校対策の中核的機能の整備充実
(3) 民間施設等との連携協力のための情報収集・提供等

8章  国に求められる役割
  不登校の実態把握のための概念整理や調査の在り方の検討
  不登校への対応に関する全国の情報収集・情報提供
  関係省庁との連携協力
  不登校施策の改善へ向けた不断の取組

  添
1. 適応指導教室整備指針(試案)
2. 不登校に対する連携モデル(試案)
3. 民間施設についてのガイドライン(試案)

参考資料

  料
1. 不登校問題に関する調査研究について
2. 不登校問題に関する調査研究協力者会議の審議経過
3. 今後の不登校への対応の在り方について(報告骨子)

 



今後の不登校への対応の在り方について(報告)


第1章  はじめに−本協力者会議の基本姿勢


  不登校の現状に関する認識

  
        文部科学省の調査によると、我が国の小・中学校の不登校児童生徒数は、平成13年度には約13万9千人に上っており、過去最多を更新し続けている。
  このように不登校が増加し続けている現状にあって、豊かな人間性や社会性、生涯学習を支える学力を身につけるなど、すべての児童生徒がそれぞれ自己実現を図り、また、社会の構成員として必要な資質・能力の育成を図るという義務教育制度の趣旨から、不登校に関する取組の改善を図ることは、我が国社会にとって喫緊の課題であって、早急に具体的な対応策を講じ、実行する必要がある。
  不登校については、特定の子どもに特有の問題があることによって起こることとしてではなく、どの子どもにも起こりうることとしてとらえ、当事者への理解を深める必要がある。一方で、不登校という状況が継続すること自体は、本人の進路や社会的自立のために望ましいことではなく、その対策を検討する重要性についても認識を持つことが求められる。
  こうした観点から、本協力者会議は、教育行政上の課題として「不登校問題」の解決に向けて調査研究を行うことを設置の趣旨としている。しかし、個々の不登校の事例に着目すると、その要因・背景は多様であり、そうした児童生徒の行為すべてを「問題行動」と決め付けるかのような誤解を避けるため、本協力者会議は、「不登校問題」という語の使用を控えることとした。
  
  正しい理解に基づく確実な取組の必要性

        不登校については、平成4年3月の「学校不適応対策調査研究協力者会議」の報告「登校拒否(不登校)問題について」(以下、「平成4年報告」という。)があるが、この報告における不登校に対応する上での基本的な視点や取組の充実のための提言自体は、今でも変わらぬ妥当性を持つものである。
  しかしながら、不登校児童生徒数は、現在、調査開始以来最多となっており、この提言が、関係者の間において正しく理解され十分に実践されているのか、また、時代の変化とともに、新たに付加すべき点がないかを今一度検証し、実行に移すための方策を検討することが急務だという基本的な認識に立ち、本協力者会議は検討を行った。
  
  不登校の要因・背景の多様化と教育の果たす役割

        不登校の要因や背景としては、後に述べるように、家庭、学校、本人に関わる様々な要因が複雑に絡み合っている場合が多く、さらに、その背後には、個人の生きがいや関心の「公」から「私」への私事化、社会における「学びの場」としての学校の相対的な位置付けの変化、学校に対する保護者・子ども自身の意識の変化等、社会全体の変化の影響力が少なからず存在している。
  そのため、この課題を教育の課題としてのみとらえて対応することに限界があるのも事実である。しかしながら、そうした点も考慮した上で、義務教育段階の児童生徒に対して教育が果たすことができる、あるいは果たすべき役割が大きいこと、また現在の取組には改善の余地があることに着目し、特に教育関係者が取り組む事柄について示すのが、本協力者会議の意図である。これは、不登校児童生徒に向き合って懸命に努力し、成果を上げてきた学校関係者等の実践例等を参考に、学校や教育関係者等が一層充実した学校における指導や家庭への働きかけ等を行うことにより、不登校に関する取組の改善を図り、まずは公教育としての責務を果たそうと考えるものである。
  また、言うまでもなく、不登校は、その要因・背景が多様であることから、学校のみでは解決することが困難な場合も多い課題である。その観点から、本協力者会議においては、学校の取組の強化のみならず、そのために必要な学校への支援体制や関係機関との連携協力等のネットワークによる支援、家庭の協力を得るための方策等についても検討を行った。
  
  本協力者会議の審議経過と報告のねらい

        本協力者会議は、文部科学省初等中等教育局長の諮問機関として、平成14年9月に発足し、不登校児童生徒の学校復帰及び自立を支援する観点から、1不登校問題の実態の分析、2学校における取組の在り方、3学校と関係機関との連携の在り方、4その他不登校問題に関連する事項について調査研究を行うという役割を与えられた。
  本協力者会議は、できるだけ実証的・客観的に現状と課題を検証すること、様々な立場から実践に携わっている関係者からヒアリングを行うなど幅広く意見を聴くことに特に意を用いて検討を進めてきた。また、本協力者会議の発足に先立って公表された不登校経験者に対する追跡調査(以下、「不登校経験者の実態調査」という。)の知見を積極的に生かすなど、不登校の当事者の意識や要望等に配慮するとともに、国民の幅広い理解と協力が得られるよう、会議の公開やパブリックコメントを実施するなど、開かれた会議運営に努めてきた。
  本協力者会議の報告は、学校や教育関係者等における取組の充実に資するための指針となる提言である。国、各教育委員会や学校等において関係者が本報告を活用し、今後の不登校に関する取組の充実を図ることに期待したい。
  なお、本報告の提言に基づく個々の学校現場における具体的な指導方法や事例の紹介、家庭との連携協力の在り方等については、今後、別の検討の場へ委ねることとした。
  


第2章  不登校の現状

  不登校の定義や現状

(1) 不登校の定義や不登校児童生徒数の推移等

  文部科学省の「学校基本調査」及び「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」(以下、「問題行動等調査」という。)においては、「不登校児童生徒」を何らかの心理的、情緒的、身体的あるいは社会的要因・背景により、登校しないあるいはしたくともできない状況にあるため年間30日以上欠席した者のうち、病気や経済的な理由による者を除いたものとして調査しており、本協力者会議においても同様に不登校を定義して検討を行った
  文部科学省の調査によると、国・公・私立の小・中学校で、平成13年度に「不登校」を理由として30日以上欠席した児童生徒数は、小学生2万6,511人、中学生11万2,211人の合計13万8,722人であり、調査開始以来最多となっている。これを全体の児童生徒数との割合で見ると、小学校では275人に1人(0.36%)、中学校では36人に1人(2.81%)となっており、小・中学校の合計では全児童生徒数の約1.2%を占めている。
  学校数について見てみると、全公立小・中学校中、不登校児童生徒が在籍する学校の割合は、平成3年度は約39.3%であったのが平成13年度は約57.6%となっており、半数以上の学校に不登校児童生徒が在籍しているという状況となっている。同時に、1校当たりの平均の不登校児童生徒数も平成3年度には約4.8人であったのが平成13年度には約7.0人に増加している。
  また、学年別に見ると、学年が上がるにつれて不登校児童生徒数は増加しており、特に小学校6年生から中学校1年生、中学校1年生から2年生の間で大きく増加している。
(参考資料)
(1)不登校児童生徒数の推移
(2)不登校児童生徒の在籍学校数等
(3)学年別不登校児童生徒数
   
(2) 不登校となった直接のきっかけ

  不登校となった直接のきっかけについては、「学校生活に起因するもの」が36.2%、「家庭生活に起因するもの」が19.1%、「本人の問題に起因するもの」が35.0%となっている。それぞれに含まれる事項毎に見ると、「(特に直接のきっかけとなるような事柄がみあたらない)本人に関わる問題」(28.6%)、「友人関係をめぐる問題」(19.7%)、「親子関係をめぐる問題」(9.7%)等が多い。またこれらの推移を見ると、「友人関係をめぐる問題」の比率が伸びている。
  これを小・中学校別に見ると、小学校においては「本人の問題に起因するもの」のほか、「家庭生活に起因するもの」の割合が高い。中学校においては「学校生活に起因するもの」の割合が最も高く、「本人の問題に起因するもの」が続く。また、個別の事項では、小学校と比して中学校では「学校生活に起因するもの」のうち「学業の不振」の割合や「友人関係をめぐる問題」の割合が高くなっている。
  また、調査方法等が異なるため単純な比較は困難であるが、不登校経験者に直接聞いた「不登校経験者の実態調査」においては、「友人関係をめぐる問題」が最も多く、44.5%を占めており、続いて「学業の不振」が27.6%、「教師との関係をめぐる問題」が20.8%であるなど学校生活に関わるものが顕著となっている。さらに、同じ調査の中で行われたインタビュー結果では、いじめや体罰等の存在を指摘する声があった。
(参考資料)
(4)不登校となった直接のきっかけ別の推移
(5)本人に尋ねた不登校のきっかけ
  
(3) 不登校状態が継続している理由(不登校の態様・タイプ)

  文部科学省においては、不登校の要因や背景についても可能な限り把握し、適切な対応を図るために、不登校状態が継続している理由(不登校の態様・タイプ)についても調査をしており、平成13年度においては、「不安など情緒的混乱」が26.1%、「複合(複合的な理由によりいずれの理由が主であるか決めがたい)」が25.6%、「無気力」が20.5%となっている。推移を見ると近年「複合」の割合が伸びており、不登校の要因・背景の複合化や多様化がうかがわれる。また、小・中学校別に見ると、小学校においては、「あそび・非行」型の占める割合が0.7%であり最も少ないのに対して、中学校においては13.6%を占めている。
(参考資料)
(6)不登校状態が継続している理由別推移

(4) 不登校児童生徒への指導の結果

  不登校の増加に対して、学校関係者は手をこまねいていたわけではもちろんない。様々な取組によって、平成13年度では、不登校児童生徒のうち25.6%の者が登校する(できる)ようになっており、21.4%の者が「登校には至らないものの好ましい変化がみられるようになった」との報告がなされている。また、「『指導の結果登校するようになった児童生徒』に特に効果のあった学校の措置」としては、小・中学校とも「家庭訪問を行い、学業や生活面での相談にのるなど様々な指導・援助を行った」、「登校を促すため、電話をかけたり迎えに行くなどした」が多く挙げられている。
  (参考資料)
(7) 不登校児童生徒への指導結果の状況
(8) 「指導の結果登校するようになった児童生徒」に特に効果のあった学校の措置


(5) 進路の状況等

  不登校生徒の進路の状況については、中学校卒業後5年間にわたって追跡調査した「不登校経験者の実態調査」から、様々な知見が得られる。その結果によれば、不登校経験者は、総じて進学率が低く(高等学校等65%、大学等13%)、就職率や高等学校中退経験の割合が高いといった傾向が示されている。また、中学校卒業から5年後の時点(約20歳)では、「就学・就労ともにしていない者」が23%であり、同年齢全体のいわゆる「無業者」の割合に比して高い数値となっている。意識調査の結果と併せて考察すると、就職・就労の経験を通じて、夢や希望を見出して生活している者が少なくない一方で、それらを経験する機会を逸したまま、進路を模索する状態が続いている者が見られる。
  (参考資料)
  (9)不登校生徒の卒業後の進路


  不登校の要因・背景の多様化・複雑化

(1) 不登校の背景と一般的な社会の傾向等

  不登校の実態について考える際の背景としては、近年の子どもたちの社会性等をめぐる課題、例えば、自尊感情に乏しい、人生目標や将来の職業に対する夢や希望等を持たず無気力な者が増えている、学習意欲が低下している、耐性がなく未成熟であるといった傾向が指摘されている。
  また、学校に行かなければならないといった義務感や学校へ行かないことに対する心理的負担感が薄れてきている傾向も指摘されている。「不登校経験者の実態調査」では、「学校へ行きたかったが、行けなかった」という葛藤を抱える事例は依然として少なくなく、不登校当事者自身も悩み苦しんでいることが分かるが、一方で、「学校へ行かないことに何ら心理的負担はなかった」、「自分自身は不登校を悪いこととは思わないが、他人の見方が気になった」といった者が相当の割合を占めている。なお、こうした回答の中に、家庭や地域などの「他人の見方」によって不登校児童生徒が心理的に強い圧迫を感じるような事例や様々な事情でやむを得ず欠席に至っている事例が含まれているということを忘れてはならない。
  「平成4年報告」が指摘するように、不登校は、特定の子どもに特有の問題があることによって起こるという固定的な概念でとらえるのではなく、「どの子どもにも起こりうる」ものとなっているという現代の社会状況等も視野に入れ、近年の子どもたちの状況を正しく把握した上で総合的かつ効果的に対策を講じることが必要である。
(参考資料)
(10) 同世代の人達について問題だと思う点
(11) 低年齢少年の価値観  1「自分に自信がある」か、2「自分がだめな人間だと思うことがよくある」か
(12) 学校を休んでいたときの気持ち


  保護者の側については、近年の都市化、核家族化、少子化、地域における人間関係の希薄化などを背景に、一部では、無責任な放任や過保護・過干渉、育児への不安、しつけへの自信喪失など、家庭の教育力の低下が指摘されている。これらは、アで述べた子どもたちの社会性等をめぐる問題の背景ともなっている。また、保護者自身にゆとりがない等の傾向や、学校に通わせることが絶対ではないとの保護者の意識の変化等についても指摘されているところである。
(参考資料)
(13)家庭の教育力が低下していると思う理由

  学校については、1で触れたように学業不振や友人関係等に関する学校生活上の問題、例えば、学校におけるいじめや暴力等の問題、更には個を大切にし、学ぶ意欲を喚起する等の配慮が十分に行き届かないような教育活動や教職員の児童生徒に対する共感的理解の不十分な例なども指摘されており、学校の取組として改善すべき余地があると考えられる。特に、いじめについてはいじめを苦にした自殺が相次いで発生するといった深刻な様相を呈した後、改善の兆しが最近見られるようになったものの依然として発生件数は相当数に上っている(平成13年度25,037件)。また、暴力に関しては、近年増加傾向が続き、平成13年度は初めて減少したものの、取組の一層の充実が求められている(平成13年度33,130件)。
  また、このように学校をめぐる様々な課題が存し、不登校児童生徒が増加してきている一方で、多くの児童生徒は、学校生活を楽しいと感じている(小学生約92.4%、中学生約89.2%)。学校関係者には、こうした児童生徒の声の背後にある期待や切実な願いに応えていくことが求められる。
  なお、一部では受験競争等のストレスが不登校の増加の背景にあるとの指摘もなされている。両者の関連性は明らかではないが、こうしたストレスの問題については、学校・行政それぞれの立場から、教育相談体制や進路指導の充実、入学者選抜の改善等の取組を進めることによって適切に対応していくことが望まれる。
(参考資料)
(14)いじめ、暴力行為の発生件数の推移
(15)学校生活への満足感

(2) 不登校との関連で新たに指摘されている課題

  児童生徒をめぐる課題の中には、最近の社会的な関心の高まりに伴って、不登校との関連性が注目されるようになってきているものが見られる。
  学習障害(LD)、注意欠陥/多動性障害(ADHD)等の児童生徒については、周囲との人間関係がうまく構築されない、学習のつまずきが克服できないといった状況が進み、不登校に至る事例は少なくないとの指摘もある。最近文部科学省が教員を対象に行ったアンケート調査の結果によれば、LD、ADHD等の児童生徒は、小・中学校の通常の学級の在籍者の約6%に達するとの見方もあるところである。
  また、保護者による子どもの虐待については、近年深刻の度を増してきており、平成13年度の児童相談所における相談処理件数は23,274件に達している。虐待を受けた子どもの約半数は小・中学生が占めており、虐待の内容は、身体的虐待、性的虐待、保護の怠慢・拒否(ネグレクト)、心理的虐待と様々である。このうち、ネグレクトには、保護者が学校へ行かせないなど登校を困難にするような事例が含まれており、不登校の背景にそうした疑いがあるものも見られる。また、いずれの種類の虐待であっても、子どもの心身の成長に重大な影響を及ぼすものであり、人間関係をつくれなかったり、非行に走る要因になることなどが懸念される。
  もちろん、LD、ADHD等の発達障害のある児童生徒や虐待を受けた子どもが直ちに不登校になるということでは決してないが、これらの課題に適切な対応をとることは、不登校対策上、重要な意味を持つものと考える。

(3) 不登校の要因・背景の特定の難しさ

  このように、個々の児童生徒が不登校となる背後にある要因や直接的なきっかけは様々であり、また、不登校の状態が継続している間にもその要因や背景が時間の経過と共に変化する、本人にもはっきりとした理由がわからない場合が少なくない等、不登校の要因や背景は一つに特定できないことも多い。こうした点は、個々の不登校の事例についてはもちろん、社会全体の不登校児童生徒数の増加を論じる上でも留意する必要がある。

(4) 多様な要因・背景と適切な対応策

  不登校への対策を考える上では、その背後にある要因・背景と、最初に不登校を引き起こすことになった直接のきっかけ等を整理してとらえ、その対応にあたっては、不登校児童生徒やその保護者等の状況や支援のニーズへ配慮した上で、効果的な対策を講じることが求められる。
  その際、多様な不登校の要因や背景に応じた対策を講じることが必要である。すなわち、不登校は、「学校に行きたいけれども行けない」等の心の問題としてとらえられることが多いが、不登校としてとらえられている中には、あそび・非行による怠学、LD、ADHD等による不適応、病気、虐待等を要因としたものも含まれ、不登校対策はそれらの多様な実態を視野に入れたものでなければならない。例えば、あそび・非行型の不登校といじめにより心に悩みを抱える不登校とでは対応策は大きく異なる。多様な要因や背景のある不登校を一括りに扱い、論じることは問題であり、個々の要因に応じた適切な対応策が求められる。

  不登校の実態把握の在り方

(1) 適切な実態把握の必要性と調査の在り方

    多様な不登校の実態への対応策を検討するためには、まず適切な実態把握を行う必要がある。
  不登校の実態把握に当たっての問題点としては、例えば心因性の病気、虐待等の家庭の問題、保護者の考え方や事情による意図的な長期欠席等、調査上における取扱いが必ずしも十分に明確にされておらず、結果として不登校の概念規定やそれに基づく実態把握が曖昧となっている点や、LD、ADHD等の判断や診断を受けた場合の調査上の取扱いが明確でない点、また、対策が異なるあそび・非行による欠席等を不登校として整理することについての疑問等が指摘されている。また、不登校が継続する理由については、「問題行動等調査」の中で、単一の選択肢の回答を求めている関係上、近年の調査結果においては、「複合」(特定できない等)が占める割合が高く、不登校の要因や背景の実態が見えにくくなっている等の指摘がなされているところである。
  今後、国や各教育委員会における実態調査の在り方について、「不登校」の概念規定も含め、必要に応じて見直しのための検討を行っていくべきであると考える。

(2) 実態把握と対応の在り方との関係

  不登校の要因や背景を把握することは、適切な対策を考える上で必要である。一方で、不登校の継続する理由や態様(タイプ)は、時期によって変わることもあり、また、対応は個人個人でそれぞれ異なることから、不登校の要因や背景につき把握することはあくまでも一つの目安であるととらえ、固定観念に基づく対応や安易なタイプ分類による硬直的な対応とならないよう注意する必要がある。

  高等学校における長期欠席の課題への認識

  従来は、不登校については、主に義務教育段階の課題としてとらえられ、高等学校における生徒の長期欠席については、行政として必ずしも十分に実態把握がなされてこなかった。しかし、高等学校進学率が約97%に達する現状においては、高等学校における長期欠席の実態があることを認識することは、高等学校における生徒の不適応への対応を図る観点からも、また、中学校時に不登校であった生徒のその後の支援を考える観点からも重要である。高等学校における不適応への対策を検討するために、まずは、高等学校における長期欠席の実態を把握することが今後必要であると考えられる。

  「ひきこもり」問題との関連

  近年社会的な関心が高まってきている、いわゆる「ひきこもり」については、様々なとらえ方がされており、公的な定義はないが、ある調査(社団法人青少年健康センター調査、平成12年11月実施)では、「6ヶ月以上自宅でひきこもって社会参加しない状態(学校や仕事に行かないまたは就いていない)が持続しており、統合失調症等ではないと考えられるもの」とされている。この調査結果によれば、年齢層は、一部に学齢児童生徒を含むが、多くはそれ以上の者であり、20歳代や30歳代の者も相当の割合を占めている。この「ひきこもり」は、児童生徒の社会的な自立を目指すという、本協力者会議の基本的な考え方に照らして、見過ごしにできない問題である。
  不登校と「ひきこもり」の関連性については、前述の調査によると、「ひきこもり」の1年間の相談件数のうち約40%が小・中・高等学校での不登校の経験を持つといった結果が示されている。これは現在「ひきこもり」状態にある者の経験について分析したデータであり、不登校から必ず「ひきこもり」状態になると誤解してはならない。しかし、一方で、不登校の深刻化からその後長期にわたる「ひきこもり」につながるケースもあり、「ひきこもり」を防止する観点からも、不登校への早期の適切な対応は重要であり、また、社会全体で不登校に関する課題に取り組む意義は大きい。
  なお、「ひきこもり」については、家族の不安・焦燥感が本人への圧力や叱咤激励につながり、更にそれが本人の焦りを招き「ひきこもり」状態を継続させるといった悪循環が生じることがあり、これを脱するためには、本人や家族の努力のみに任せるのではなく、専門家等の第三者の関わりが欠かせないという指摘がある。この点は「ひきこもり」状態を示す不登校児童生徒やその保護者への対応を考える上でも示唆となろう。


第3章  不登校に対する基本的な考え方

  将来の社会的自立に向けた支援の視点

  不登校の解決の目標は、児童生徒が将来的に精神的にも経済的にも自立し、豊かな人生を送れるよう、その社会的自立に向けて支援することである。その意味においても、学校に登校するという結果のみを最終目標にするのではなく、児童生徒が自らの進路を主体的にとらえ、社会的に自立することを目指すことが必要である。

  不登校の時期は児童生徒にとって、場合により、いじめによるストレスから回復するための休養期間としての意味や、進路選択を考える上で自分を見つめ直す等の積極的な意味を持つこともある。しかし、同時に、現実の問題として、不登校による進路選択上の不利益や社会的自立へのリスクがある場合もある。
  こうした点は、不登校経験者の声からも確かめることができる(「不登校経験者の実態調査」)。既に中学校卒業後の進路の状況については触れたが、自らの不登校経験に対する意識を見ると、成長した点等を積極的に評価する回答がある一方で、「生活リズムの崩れ」、「学力・知識不足」、「人間関係に不安」等を理由に、後悔したり、様々な苦労を経験したという回答も相当数ある。なお、卒業後に進学や就労など様々な体験を経ることによって、多くの者が進路の形成を図りつつ将来への夢や希望を持ってきているということにも留意しておきたい。
  関係者はこうした点を認識した上で、児童生徒の将来の自立に向けた支援をする必要がある。その意味から、不登校を「心の問題」としてのみならず「進路の問題」としてとらえ、どのように対応するかが大切な課題である。
(参考資料)
(16)不登校経験に対する評価
(17)不登校経験に伴う苦労の内容

  こうした観点から、義務教育段階にある不登校児童生徒、更には中学校卒業後に「ひきこもり」状態にあるなど、進学も就労もしていない青少年に対し、「心の問題」の解決を目指した支援のみならず、本人の進路形成に資するような指導・相談や、それに必要となる学習支援や情報提供等を積極的に行うことが重要であると考える。

  連携ネットワークによる支援

  不登校への対応に当たっては、多様な問題を抱えた児童生徒に、態様に応じてきめ細かく適切な支援を行うこと及び社会的自立へ向けて、進路の選択肢を広げる支援をすることが大切である。そのためには、学校、家庭、地域が連携協力し、不登校の児童生徒がどのような状態にあり、どのような支援を必要としているのか正しく見極め(「アセスメント」)を行い、適切な機関による支援と多様な学習の機会を児童生徒に提供することが重要である。
  連携ネットワークによる支援に関しては、不登校の解決を中心的な課題とする新たなネットワークを組織することもあろうが、学校や関係機関等からなる既存の生徒指導・健全育成等の会議等の組織を生かすなどし、効果的かつ効率的に連携が図られるよう配慮することが重要である。

  その際に、学校や教育行政機関が、公的機関のみならず、多様な学習の機会や体験の場を提供する民間施設やNPO等と積極的に連携し、相互に協力・補完し合うことの意義は大きい。
  また、義務教育段階の児童生徒の進路形成を支援する観点から、児童生徒と関わりを持ち続けるよう、例えば、学校の教員等が民間施設と連絡を取り合い、互いに訪問する等の具体的行動をとる等の公的機関と民間施設等との連携協力は重要である。

  また、連携ネットワークにおいては、不登校への事後的な対応のみならず、幼稚園・保育所・小学校間、小・中学校間、中・高等学校間等の連携を重視して、個々の児童生徒が抱える課題に関する情報交換や対策の協議を日常的に行うなどして、不登校を生むことのない、一人一人の児童生徒が自己の存在感や自己実現の喜びを実感できる学校教育の実現に向けて日頃より連携を図ることが望まれる。

  将来の社会的自立のための学校教育の意義・役割

  不登校対応の最終的な目標である児童生徒の将来の社会的自立を目指す上で、対人関係にかかわる能力や集団における社会性の育成などの「社会への橋渡し」、あるいは学びへの意欲や学ぶ習慣を含んだ生涯学習の基盤となる学力を育てることを意図する「学習支援」の視点が重要である。
  そのような「社会への橋渡し」や「学習支援」の観点から、特に義務教育段階の学校は、基礎学力や基本的な生活習慣、規範意識、集団における社会性等、社会の構成員として必要な資質や能力等をそれぞれの発達段階に応じて育成する機能と責務を有しており、その役割は大きい。

  したがって、学校・教育関係者は、すべての児童生徒が学校に自己を発揮できる場があると感じ、楽しく通うことができるよう、一層の学校教育の充実のための取組を展開していくことがまずもって重要である。同時に、児童生徒の不登校のきっかけとなった問題等には学校に起因するものも多くあることを、危機感を持って認識し、その解消に向けて最大限の努力をすることが必要である。


  働きかけることや関わりを持つことの重要性

  個々の不登校児童生徒に対しては、主体的に社会的自立や学校復帰に向けて歩み出せるよう、周囲の者が状況をよく見極めて、そのための環境づくりの支援をするなどの働きかけをする必要がある。児童生徒の自分の力で立ち直る力を信じることが重要であることは当然であるが、自分の力で立ち直るのを何も関わりを持つことなく、また児童生徒の状況を理解しようとすることもなく、あるいは必要としている支援を行おうとすることもなく、ただ待つだけでは、状況の改善にならないという認識が必要である。
  不登校の背景や態様は様々であり、働きかけの方法自体は個々の児童生徒によってそれぞれ異なる。例えば、無気力傾向が見られる場合には、児童生徒が達成感や満足感を繰り返し味わううちにエネルギーが蓄積され、元気になるといったきっかけづくりを支援すること、また、非行による怠学傾向がある場合には、規則的な生活のリズムを身に付けさせたり、学ぶ意欲を出させるきっかけづくりを行うことや、状況に応じては毅然とした教育的指導を行うこと、あるいは、保護者による虐待等の問題がある場合には、地域の民生委員や児童相談所等との連携を図り、家庭に対して必要な関与をすることなど、本人の状態やその環境を踏まえた上での適切な働きかけを行うことが重要である。

  なお、一部では、「平成4年報告」における「登校拒否(不登校)はどの子どもにも起こりうるもの」、「登校への促しは状況を悪化してしまうこともある」という趣旨に関して誤った理解をし、働きかけを一切しない場合や、必要な関わりを持つことまでも控えて時機を失してしまう場合があるということも指摘されており、そのような対応については、見直すことが必要である。

  言うまでもなく、登校への働きかけの在り方を短絡的にとらえ、画一的に「する」とか「しない」といったように対応するべきではない。児童生徒を全人的に受け止めることなく、また状況への配慮や理解し共感しようとする姿勢なしに、強引な登校への促しを行うことが不適切であることは当然であり、そのような機械的な働きかけにより児童生徒やその保護者等追い詰めるようなことがあってはならない。
  登校への働きかけの適否を考える上で大切なのは、不登校児童生徒の状態や不登校となった要因・背景等を把握した上で、適時・適切に、かつ個々の状況に応じて対応するといった視点である。
  また、このように児童生徒と関わりを持とうとしたり、働きかけをする際には、ことさらに、登校への促しということだけを強調するのではなく、人間関係等の悩みを克服し、社会とのつながり等を通じて児童生徒が主体的に立ち上がっていくための支援をするという視点を忘れてはならない。

  登校への働きかけの在り方を考えるに当たっては、不登校の当事者の声に耳を傾けることも大切である。既に指摘したとおり、不登校経験者に対する調査結果において、不登校経験に対する様々な自己評価がなされる中、後悔したり、現在の状況に及ぼすマイナスの影響を感じたりする者がいることを踏まえると、個々の不登校の状況に即した対応が大切であることが改めて確認される。また、しばしば不登校児童生徒が、「そっとしておいて欲しい」という気持ちと、「放っておかれると淋しい」という相反する複雑な感情を抱いているということにも留意しておくべきであろう。

  保護者の役割と家庭への支援

  家庭はすべての教育の出発点であり、人格形成の基礎を培う重要な役割を担っており、家庭の教育力の充実を目指して様々な施策の推進を図ることは極めて重要である。しかし、不登校の解決を目指す上では、不登校の原因を特定の保護者の特有の問題のみに見出そうとするのでなく、子育てを支える仕組みや環境が崩れている社会全体の状況にも目を向けつつ、不登校児童生徒の保護者の個々の状況に応じた働きかけをしていくことが大切であると考える。

  不登校の要因・背景は多様化しており、虐待等の深刻な家庭の問題を抱えて福祉や医療行政等と連携した保護者への支援が必要な場合もあれば、子どもの非行への対応、基本的な生活習慣や教育環境の改善のための支援を必要としている場合や、保護者自身がしつけや子育てに対する自信がなく支援を必要としている場合等もある。また、不登校となった子どもへ対応するための十分な情報を保護者が持たず悩んでいる場合もある。

  このような保護者を支援し、不登校となった子どもへの対応に関してその保護者が役割を適切に果たせるよう、時機を失することなく児童生徒本人のみならず家庭への適切な働きかけや支援を行う観点から、学校と家庭、関係機関の連携を図ることが不可欠である。
  その際に、保護者への働きかけが、保護者の焦りや保護者自身を追い詰めることにつながり、かえって事態を深刻化させる場合もあることから、保護者に対しては、児童生徒への支援等に関して、共通する課題意識を持って取り組むという基本的な関係をつくることが重要である。その意味から、不登校に関する相談窓口に関する情報提供、不登校児童生徒への訪問等における保護者への助言、不登校児童生徒の保護者が気軽に相談できる体制を整えること等が教育関係者等に求められる。また、その際に、「親の会」等の既存の保護者同士のネットワークとの連携協力を図ることや、そのような保護者同士のネットワークづくりへの支援をすることにより保護者を支援すること等も考えられる。なお、保護者との関係においては、「支援する」といったことだけではなく、「親の会」に学校の教員やスクールカウンセラー等が積極的に参加し、保護者の経験から学ぶなど、関係者が相互に意見交換をするという姿勢も大切である。

  また、不登校となった児童生徒の保護者のみならず、保護者全般に対する不登校への理解を深めるためのセミナー等による啓発を行うことや、就学時検診や乳幼児検診等の保護者が集まる機会を活用した子育て講座、思春期の子どもを持つ保護者向けに作成された資料等の活用など、子育てについての悩みや不安を持つ保護者に対する支援の充実を図ることが期待される。


第4章  学校の取組

  魅力あるよりよい学校づくりのための一般的な取組

  学校における不登校への取組については、ややもすると児童生徒が不登校になってからの事後的な対応への偏りがあったのではないかという指摘も一部にあり、学校は、児童生徒が不登校とならない、児童生徒にとって魅力ある学校づくりを主体的に目指すことが重要である。
  具体的には児童生徒にとって、自己が大事にされている、認められている等の存在感が実感でき、かつ精神的な充実感の得られる「心の居場所」として、さらに、教師や友人との心の結び付きや信頼感の中で主体的な学びを進め、共同の活動を通して社会性を身に付ける「絆づくりの場」として、十分に機能する魅力ある学校づくりを目指すことが求められる。すべての児童生徒にとって、学校を安心感・充実感の得られるいきいきとした活動の場とし、不登校の傾向が見え始めた児童生徒に対しても、不登校状態になることを抑止できる学校であることを目指すことが重要である。

(1) 新学習指導要領のねらいの実現

  平成14年度から実施されている新学習指導要領は、児童生徒に学習指導要領に示す基礎・基本を確実に身に付けさせ、豊かな人間性や自ら学び自ら考える力などの「生きる力」を育成することを基本的なねらいとしている。児童生徒にとって魅力ある学校づくりのためには、この新学習指導要領の趣旨を実現することがその基本となると考えられる。各学校においては、この新学習指導要領の下、創意工夫に満ちた教育課程を編成し、各教科、道徳、特別活動はもとより、新設された「総合的な学習の時間」を有効に活用し、体験活動を推進するなど、社会性の育成を目指した様々な取組を一層積極的に展開することが望まれる。
  特に、学級活動、児童会・生徒会活動、学校行事等の特別活動の充実は、学校生活の基盤となる児童生徒間や教師との人間関係を形成し、児童生徒の学校における居場所づくりや帰属意識を高める観点から重要である。新学習指導要領では、特別活動に関して、学級や学校の生活への適応指導、児童生徒の自発的・自治的な活動、ガイダンスの機能などの充実が図られている。こうした趣旨を踏まえ、例えば、児童生徒にとって環境が変わる入学時や年度初めにおいて、オリエンテーションの期間を意図的に設け、学級活動、児童会・生徒会活動、学校行事等を効果的に関連付けるなど、人間関係づくりや学校生活への適応に関する指導の充実を図るための取組を一層工夫することが考えられる。また、学級活動において、生き方を考えさせる指導の工夫をしたり、児童会・生徒会活動の中で、規則・規律について主体的に考えさせる取組の充実を図っていくことも意義があろう。

(2) 開かれた学校づくり

  新学習指導要領の下での教育活動の実施に当たっては、活動の場を学校内に限定することなく地域の様々な場で活動を展開するとともに、指導者についても教員に限らず外部の多様な人材の協力を得るなど、地域社会の教育力を積極的に生かしていくことが重要である。児童生徒の「心の居場所」や「絆づくりの場」としての学校を実現する上でも、このような取組を通じて、学校と社会とのつながりを強め、開かれた学校づくりを推進することが不可欠である。
  社会の変化を背景に、学校においてはより一層、今日の児童生徒の興味や関心に合った学習や活動の場を提供することが求められているところである。このような課題に応えるためには、地域の団体、企業、NPO等との連携により学校外の社会との結び付きを強めるような様々な体験活動の実施や、地域のボランティアや専門家等の学校外の多様な人材の協力を得ること等を通じた開かれた学校を目指す取組により、児童生徒に多様な学習の機会を提供し魅力ある学校づくりを進めることが重要である。
  学校が説明責任を果たしていく観点からは、国の定める小・中学校設置基準において求められているとおり、教育活動その他の学校運営の状況に関する自己点検・評価や保護者等への情報提供について、積極的な取組が必要である。また、学校運営を常に改善し、教職員の意識の向上を図るため、学校評議員制度を活用することにより、保護者や地域の学校に対するニーズを把握することは、保護者や地域との信頼関係を築き、協力を得る上でも有効である。魅力ある楽しい学校づくりのため、学習指導や生徒指導の在り方等について、児童生徒の願いに対して、適切な配慮を行うことはもとより大切なことである。

(3) きめ細かい教科指導の実施

  学校関係者は、学業でのつまずきから学校へ通うことが苦痛となる等、学業の不振が不登校のきっかけの一つとなる例が少なくないということを認識する必要がある。様々な調査を通じて、学年が進むに連れて児童生徒の授業理解度が低下していく傾向が示されていることにも留意すべきであろう。
  学業の不振に関しては、学習習慣、学ぶ意欲の形成に問題がある場合、学習方法や基礎的な内容の理解に問題がある場合、時には生活リズムの乱れや、教師との関係が関連していること等もあり、まずは適切な実態把握に基づき、個々の実態に基づいて事態の改善を図るという基本姿勢を持つことが大切である。
  このような観点に立ち、児童生徒への指導に当たっては、一人一人の個性が異なることを常に意識し、具体的な指導の方法や進度につき、児童生徒の側に立った配慮が必要である。例えば、各教科等において理解の状況や習熟の程度に応じた指導等による「分かる授業」を実施したり、補充指導の充実を図ったりする等、基礎基本の確実な習得のためのきめ細かな指導を推進していくことが重要である。

(4) 学ぶ意欲を育む指導の充実

  学校において、児童生徒が発達段階に応じて自らの生き方や将来に対する夢や目的意識について考える、そうしたきっかけを与えることのできる指導を行うことは、児童生徒が楽しく、学ぶ意欲を持って主体的に学校に通う上で重要である。このような観点から、学校においては、あらゆる機会をとらえ、社会との接点や関わりを児童生徒が実感することができるような創意を生かした取組を行うことが望まれる。そのような取組においては、学校外の多様な人材や機関の協力を得た体験活動等が効果的である。

(5) 安心して通うことができる学校の実現

  学校生活に起因する不登校の背景には、いじめ、体罰など児童生徒間や教員との人間関係によるものもある。
  児童生徒が楽しく、安心して通うことができる居場所としての学校づくりのためには、いじめや暴力行為を許さない学級づくり、更には必要に応じて警察等の関係機関との連携を図ったり、出席停止の措置を適切に講じる等、問題行動への毅然とした対応が大切である。さらに、いじめの解決に向けての真摯な取組を進めていく中で、いじめられた児童生徒を守り教育相談等の援助を十分に行うことはもとより、「いじめる側」についても、何らかの問題を抱えており支援を必要としているという認識に立ち、適切に対応することが大切である。
  教員が児童生徒を全人的に受け止め理解し共感しようとする姿勢を持つことは、教員と児童生徒の人間関係の改善を図る上で重要である。また、教員による体罰や人権侵害行為等があってはならないことは言うまでもなく、児童生徒にとって安全で安心できる環境を確保することは学校や教育委員会の当然の責務である。

(6) 児童生徒の発達段階に応じたきめ細かい配慮

  不登校の未然防止の観点から、例えば、小学校では家庭との連携の下、基本的な生活習慣を身に付けることや、中学校では思春期の問題への対応をきめ細かくできるようにする等、各学校種と児童生徒の発達段階に応じた配慮を行うことが重要である。
  特に小学校においては、不登校は中学校生活への不適応や思春期の問題等に限られるものと考えるのではなく、小学校における学校生活上の問題や基本的な生活習慣が身に付いていないこと等が背景となっている場合もあることや、早期の段階での対応が効果的であることを認識し、対応することが必要である。
  中学校においては、小学校と比して学業の不振やあそび・非行等による不登校が増加することに着目し、特にそれらの問題への適切な対応をすることが求められる。
  また、中学校で不登校生徒が大幅に増加することから、小・中学校間の接続の改善を図る観点から、小・中連携を推進する等の配慮が重要である。具体的には、例えば、中学校区の地域コミュニティーでの合同の活動、小・中合同の教育活動の実施や連携カリキュラムづくりの実施、小・中学校間の教職員の交流や兼務等の人事上の工夫、中学校の新一年生の担当教員として必要な資質を考慮した教員の配置の工夫等が考えられる。また、学校の実情に応じて小学校高学年において部分的に教科担任制を取り入れる工夫も、中学校との違いを緩和したり、教師の得意分野を生かした授業の実施をするといった観点等から考えられる。さらに、中学校へ入学する際の不安を解消するために、小学校高学年の児童を対象とする中学校への体験入学を実施したり、中学校入学時や年度初めの人間関係の形成や変化への適応に向けたきめ細かい指導を充実するため、学校や学年の開始時期における集中的なオリエンテーションを設けたり、小規模小学校から中学校へ入学した者への入学時の学級編制上の配慮を行ったりすること等が考えられる。

  きめ細かく柔軟な個別・具体的な取組

  以下の取組は、基本的には、不登校となった児童生徒に対し、きめ細かく柔軟な対応を事後的に行うための学校における取組について述べたものであるが、これらの事項への取組を日常的に充実することは、同時に、すべての児童生徒や、不登校の傾向はあっても完全な不登校状態にはない児童生徒に対する取組としても重要である。

(1) 校内の指導体制及び教職員等の役割

  学校全体の指導体制の充実
  学校全体の指導体制の充実を図る上で、校長の強いリーダーシップの下、教頭、学級担任、生徒指導主事、教務主任、学年主任、養護教諭、スクールカウンセラー、相談員等がそれぞれの役割について相互理解した上で日頃から連携を密にし、一致協力して対応にあたることが、まず重要である。
  特に校長は、適切な校務分掌を定め、教員の効果的な役割分担を行うなど、学校全体の体制づくりに努める必要がある。校長の強力なリーダーシップによる指導体制の確立とそれを支える教育委員会の取組により、不登校児童生徒への対応において成果を上げてきた学校の事例もあり、管理職にある者は、自らが果たすべき役割を十分に意識する必要がある。
  校内の指導・支援体制については、現実には、不登校児童生徒への対応を学級担任一人に任せがちで、学校全体での組織的かつ具体的な対応が十分に行われていないのではないかという指摘もある。例えば、不登校の児童生徒が現在どのような状況で、どのように学級担任や養護教諭、スクールカウンセラー等が関わっているのか、今後どのように指導・支援を進めるのかといった点で、具体的な情報共有等のための取組が不十分であると考えられる。こうした問題は、学年内のみならず、学年間あるいは学校間の引継に際しても生じていると見られる。
  また、個々の教員を援助する校内体制づくりについては、例えば、学校を休みがちである、学習に集中できない、問題行動が見られる、学級生活で孤立しがちである等、何らかの学校生活への適応の面でのつまずきのある児童生徒を早期に見出し、管理職や養護教諭等関係職員が、スクールカウンセラー等も加えて、定期的な会合を開き、当該児童生徒を支援していく校内サポートチームをつくることが有効であると考えられる。さらに必要に応じて、外部の機関の協力を依頼し、協働して支援に当たる等の体制をつくることが考えられる。なお、校内の体制については、既に類似の委員会等の組織がある場合(例えば、生徒指導やLD、ADHD等に対応するための委員会等)には、ケースに応じて、参加する教員や関わる専門家等を替えること等により、複数の組織を設けることなく、柔軟な対応をとることが適当であると考えられる。

  コーディネーター的な不登校対応担当の役割の明確化
  各学校においては、不登校児童生徒に対する適切な対応のために不登校について学校における中心的かつコーディネーター的な役割を果たす教員を明確に位置付けることが必要である。
  具体的には、当該コーディネーター的な役割を果たす教員は、校内における不登校児童生徒の学級担任や養護教諭、生徒指導主事等との連絡調整及び児童生徒の状況に関する情報収集、児童生徒の状況に合わせた学習支援等の指導のための計画づくりに関する学級担任等との連携、不登校児童生徒の個別指導記録等の管理、学校外の人材や関係機関との連携協力のためのコーディネート等を行うことが求められる。
  また、不登校児童生徒への事後的な対応のみならず、不登校傾向がある児童生徒への早期の対応を行うことも重要な役割である。特に、児童生徒の社会性を育む観点等からも効果的である開かれた学校づくりを進めるためには、地域社会や関係機関等との調整は重要であり、学校内に生徒指導や体験活動のための連絡窓口がある場合等にはそのような既存の校内の体制と連携協力を図ることが有効である。
  なお、このような学校内外のコーディネーター役を果たす不登校対応担当は、その期待される役割から考えて、各地域や学校の実情に応じ、校長のリーダーシップの下、教頭や生徒指導主事等、全校的な立場で対応することができる教員をあてることが望ましい。


  教員の資質の向上
  学校の教職員、特に学級担任は、児童生徒との関係における自らの影響力を常に自覚し、児童生徒の指導に当たる必要がある。専門性を有するカウンセラー等の学校外の人材、適応指導教室や民間施設等の学校外の施設や関係機関の人材、また、地域の人材等の協力を様々な局面で得ることがあっても、児童生徒の教育指導については、教員がその中心的な存在であることは変わらない。
  不登校の対応にあっては、前述の適切な働きかけ、関わりの重要性を一人一人の教員がしっかりと認識する必要があるとともに、各教員は児童生徒のありのままの姿を受けとめ、先入観を持つことなく粘り強く聴く姿勢を持つことが重要であり、個々の教員が児童生徒に対する共感的理解の基本姿勢を持つことが求められる。このように、児童生徒にとって、話しやすく相談しやすい雰囲気を持ち、児童生徒の立場に立って聴き、指導ができる資質を身に付けることが教員に望まれるが、その場合においても、児童生徒のありのままの姿を受け止めるということが、正すべき行動を正すことなく、それを容認してしまうかのような対応として誤解されてはならない。
  さらに、児童生徒が将来の自らの生き方について考えるきっかけを与えるような指導ができる資質も、児童生徒の進路形成を支援する観点から必要である。
  また、教員は、学級等の集団の成員の心の結び付きを重視し、ともに認め励まし合いながらよりよい学級をつくろうとする中で、児童生徒が存在感や自己実現の喜びを実感できるように努めることが大切である。その意味から、児童生徒理解や個々の児童生徒への対応に関する資質の向上ばかりでなく、学級や学年運営等の望ましい集団の育成に関わる資質や能力を教員養成や研修等において育成することも重要である。
  なお、個々の教員の資質を向上させる上で、システム化された学校内外の研修はもちろん重要であるが、それのみならず、各学校において、不登校児童生徒に対し、複数の教員が事例研究を重ねて継続的に関わっていくこと自体が重要な役割を果たすことに着目する必要がある。
  このほか、不登校の多様、かつ今日的な要因や背景へ対応する上で、初期の段階での対応の判断を誤らないよう、関連する他分野についても基礎的な知識を身に付けておくことが望ましい。例えば、精神医学の基礎知識やLD、ADHD等に関する知識、児童虐待の早期発見や「ひきこもり」に関する知識を教員が身に付ける意義は大きい。ただし、これらの知識については、教員はあくまでも初期の対応を適切にするために必要なものであり、自らが専門的な診断を下そうとしたりすることがないよう注意が必要である。

  養護教諭の役割と保健室・相談室等、教室以外の「居場所」の環境・条件整備
  養護教諭は、心の健康問題や基本的な生活習慣の問題等に関わる児童生徒の身体的な不調等のサインにいち早く気付くことができる立場にある。そのため、情緒の安定を図るなどの対応や予防のために養護教諭が行う健康相談活動の果たす役割は大きい。
  また、養護教諭が、児童生徒の抱える問題に関する情報を校内の組織に発信し共有化することにより、組織としての役割分担や支援計画が明確となり、学校全体の取組が一層効果的に推進されることが期待される。
  保健室や相談室等は、児童生徒が不登校状態となる前の段階や、不登校児童生徒の学校復帰のきっかけともなる、いわゆる「保健室登校」や「相談室登校」等の「居場所」として果たす役割は大きい。
  保健室の利用状況を見ると、平成13年度に「保健室登校」をしている児童生徒がいた学校の割合は、小学校で12.3%、中学校で45.5%となっており、平成2年度の調査結果と比して中学校では2倍程度の伸びを示している。また当該校で「保健室登校」をしている児童生徒の平均人数は、小学校では1.4人、中学校では2.3人となっている。さらに、平成13年度の「問題行動等調査」においては、「特に効果のあった学校の措置」として、比較的多くの小・中学校が「養護教諭が専門的に指導にあたった」(5.0%)、「保健室登校等特別の場所に登校させて指導にあたった」(7.7%)を挙げている。
  したがって、これらの児童生徒がそれぞれ状況に応じて学校生活に適応する努力をしやすいように、保健室や相談室のみならず空き教室等を活用することや、それらの「居場所」の配置の工夫等に配慮することにより、学校内における「居場所」を充実する必要がある。
  また、養護教諭がその役割を十分に果たすために、保健室等の物理的なスペースを確保するとともに、学校の設置者において保護者の相談や他機関との連絡のための通信機器の充実、養護教諭の複数配置等の条件整備が必要である。
(参考資料)
(18)「保健室登校」をしている児童生徒がいる学校の割合

  スクールカウンセラーや心の教室相談員等の外部人材との連携協力
  「心の専門家」であるスクールカウンセラーについては、学校における教育相談体制の充実を図る観点から、平成7年度以来、中学校を中心に配置され、逐次その拡充が図られてきている。平成13年度からは、国庫補助事業を実施し、各学校において、臨床心理士等のスクールカウンセラーが活動を行っている(平成14年度配置校:5,500校)。また、国は、平成10年度から、中学生が悩みを気軽に話し、ストレスを和らげることのできるよう「心の教室相談員」を配置する事業を実施しており、教職経験者や青少年団体指導者等の様々な人材が活動を行っている(平成14年度配置校数:4,000校)。
  特にスクールカウンセラーについては、「心の専門家」としての専門性と学校外の人材であることによる外部性とにより、不登校児童生徒等へのカウンセリングや教職員、保護者等への専門的助言・援助において効果を上げている。スクールカウンセラーが配置された学校関係者は、その効果を高く評価しており、養護教諭、教師、保護者等からの相談活動へのニーズは高い。また、スクールカウンセラーの配置校と他の学校とを比較すると、不登校の増加を抑止するといった効果も示されている。
  スクールカウンセラーには、「学校におけるカウンセラー」という性格上、 学校の組織・機能、校風等についてよく承知した上で、独自の資質や対応が求められる。例えば、校長のリーダーシップの下、児童生徒への対応を考える上で必要な情報については、プライバシー等に配慮しつつ関係教職員と共有し、連絡を密にすることや、児童生徒の方から相談に来ることをただ待つのみならず、場合により、学級担任や養護教諭等から得た情報を基に、不登校に関する取組に積極的に関わっていく姿勢が求められる。そうした観点から、不登校あるいはその傾向のある児童生徒への対応、保護者との相談、教員からの相談への対応・助言、教員等に対する研修や事例研究の企画・実施等への参画、専門機関への紹介等を積極的に行うことが求められる。
  スクールカウンセラーが学校について学ぶためにも、また、学校の教職員等がスクールカウンセラーと円滑に連携協力していくためにも、今後、国や各自治体において、これまでの調査研究事業の成果と課題を踏まえてマニュアルの作成等の取組を行うことが有効であり、また、研修等を通じて、スクールカウンセラーと教員それぞれの職務内容等の理解を深める必要がある。
  今後、スクールカウンセラーに関しては、その専門性を生かし、訪問型の支援において一定の役割を果たすことや、他のスクールカウンセラーへの支援を行うためにスーパーバイザー的な役割を果たす者の配置を進めること、及び早期における対応の必要性を踏まえて学校種別ごとに効果的な配置をすること等につき、検討すべき課題がある。
  また、学校におけるカウンセラーとして必要な資質を踏まえた資格や人材養成の在り方、研修システムなど資質の維持・向上のための方策の在り方、勤務形態の在り方等も、今後の検討課題と考えられる。
  このように、スクールカウンセラーの配置を推進していく中で、様々な課題も提起されているが、不登校への対応をはじめ、総じてその成果は大きく、できるだけ早期にすべての児童生徒がスクールカウンセラーに相談できる機会を設けていくことが適当であると考える。国に対しては、引き続きスクールカウンセラーの効果的な活用方法について調査研究を進めつつ、必要な条件整備の在り方を検討していくことを望みたい。
  なお、これらのスクールカウンセラーや「心の教室相談員」の事業以外に行われている各教育委員会独自の教育相談体制の充実に向けた取組についても今後一層の充実が望まれる。
(参考資料)
(19)スクールカウンセラーの配置状況

(2) 情報共有のための個別指導記録の作成

  前述の学校全体の指導体制の充実のための取組を実効あるものとする観点から、校内・関係者間で情報を共有し、特定の教職員のみでなく、指導組織を生かした共通理解の下で指導・対応に当たる体制を確立することが重要である。
  そのような情報共有のためには、個人情報の取扱いに十分配慮しつつ、不登校児童生徒の個別の指導記録づくりを行うことが有効であると考えられる。当該指導記録には、児童生徒の欠席や「保健室登校」などの状況はもとより、関係機関との連携の下に行った対応とその際の児童生徒の言動・状況や保護者の対応等の経過について記載することが考えられる。
  記載に当たっては、客観的事実のみを記載し、主観的な判断を避けるように努めなければならない。また、当該指導記録を保護者との相談や家庭訪問の際に使用し、保護者の見解を聞いた上で作成するなどの取組も、保護者との連携を深める上で有意義であろう。さらに、当該指導記録を児童生徒の指導のため関係機関との連携において使用することを想定する場合には、その旨を保護者に説明し、当該指導記録の役割やその記載事項等について保護者からの理解を得ておくことが重要である。
  このように当該指導記録の保有等につき個人情報の保護に配慮しつつ、保護者や関係機関との連携のほか、学年間や小・中学校間、転校先等との引継ぎや教育委員会への連絡等において活用することが考えられるところであり、各学校の適切な取組を望みたい。

(3) 家庭への訪問等を通じた児童生徒や家庭への適切な働きかけ

  既に第3章の「基本的な考え方」で述べたように、学校は、登校への働きかけについては時期や態様に応じた適切な配慮をする必要があることを踏まえつつ、児童生徒が学校外の施設に通う場合や家庭にいる場合であっても、当該児童生徒は自らの学級・学校の在籍児童生徒であることを自覚し、関わりを持ち続けるよう努めるべきである。
  そのような観点からも、学級担任等の教職員が児童生徒の状況に応じて家庭への訪問を行うこと等を通じて、その生活や学習の状況を把握し、児童生徒本人やその保護者が必要としている支援をすることは大切である。


(4) 不登校児童生徒の学習状況の把握と学習の評価の工夫

  不登校児童生徒が適応指導教室や民間施設等の学校外の施設において指導を受けている場合には、当該児童生徒が在籍する学校がその学習の状況等について把握することは当該児童生徒の学習支援や進路指導を行う上で重要である。
  学校が把握した当該学習の計画や内容がその学校の教育課程に照らし適切と判断される場合には、当該学習の評価を適切に行い指導要録に記入したり、また、評価の結果を通知表その他の方法により、児童生徒や保護者、当該施設に積極的に伝えたりすることは、指導の改善による児童生徒の学習の充実はもとより、学校に通うことができない不登校児童生徒の学習意欲に応え、自立を支援する上で意義が大きい。

(5) 児童生徒の再登校に当たっての受入体制

  不登校児童生徒が再登校をしてきた場合には、温かい雰囲気の下に自然な形で迎え入れられるよう配慮するとともに、徐々に学校生活への適応を図っていけるような指導上の工夫を行うことが重要である。その際に、当該児童生徒の状況が学校の教職員の共通理解の下にあることは重要であり、情報共有がなされていないために児童生徒が再び登校への意欲をなくすようなことがあってはならない。
  また、再登校に当たっては保健室や相談室等の教室以外の学校の居場所を積極的に活用することが考えられる。

(6) 児童生徒の立場に立った柔軟な学級替えや転校等の措置

  いじめに関しては、前述のようにいじめを絶対に許さない毅然とした対応をとることがまずもって大切である。また、いじめられている児童生徒の立場に立つとき、緊急避難としての欠席が弾力的に認められてよいことはもとよりであり、こうしたいじめを背景とする欠席に際しては、その後の学習に支障のないよう適切な配慮が求められる。
  さらに、弾力的な対応として、いじめられた側の児童生徒に対して柔軟に学級替えや転校を認めることが可能となっているところであり、不登校についても、学校におけるいじめが原因で不登校となっている場合等は、そのような学級替えや転校の措置を活用することが考えられる。
  また、教員による体罰や暴言等、不適切な言動や指導が不登校の原因となっている場合は、学校や教育委員会の関係者は、そのような不適切な言動や指導をめぐる問題の解決に真剣に取り組むとともに、保護者等の意向を踏まえつつ、十分な教育的配慮を持った上で学級替えや転校を柔軟に認めていくことが望まれる。
  なお、今日、多くの場合、欠席日数が著しく長期にわたったとしても、不登校児童生徒の進級や卒業の認定については弾力的に取り扱われているが、保護者等から学習の遅れに対する不安により、進級時の補充指導や原級留置に関する要望がある場合には、その意向を踏まえて、補充指導の実施に関して柔軟に対応するとともに、校長の責任において原級留置の措置をとるなど、適切な対応をとることが考えられる。また、欠席日数が著しく長期にわたる不登校児童生徒の進級や卒業に当たっては、こうした点について予め保護者等の意向を聴いて参考とするなどの配慮をすることが望まれる。

  不登校児童生徒の実態に配慮した特色ある教育課程の試み

  不登校児童生徒の実態に配慮した特色ある教育課程については、学習指導要領等の基準によらない教育課程の編成・実施を特例的に認める研究開発学校制度の活用により、不登校児童生徒を対象とした分教室における特別のカリキュラムの編成などに関する研究が行われているところであり、引き続きその推進が期待される。
  また、それに加えて、平成15年4月に施行される構造改革特別区域制度の下では、不登校の児童生徒の実態に配慮した特色ある教育課程や指導方法等による学校の設置や、不登校児童生徒の指導を行うNPOで一定の実績等を有するものの学校設置について、その成果を検証していくことも考えられる。その際には、学校の裁量の大きさに伴って説明責任が強く求められることから、適当な尺度や基準の下、情報公開、第三者評価などが適切に実施される必要があろう。特に、こうした学校を利用する児童生徒の学習到達度については、十分なフォローアップが求められよう。


第5章  関係機関との連携による取組

  入所・通所型の施設の取組

(1) 適応指導教室の整備充実

  適応指導教室の整備充実と整備指針の策定
  適応指導教室とは、教育委員会が、教育センター等学校以外の場所や学校の余裕教室等において、不登校児童生徒の学校生活への復帰を支援するため、児童生徒の在籍校と連携を取りつつ、個別カウンセリング、集団での指導、教科指導等を組織的・計画的に行う施設として設置したものをいう。適応指導教室は、不登校児童生徒の学校復帰等の支援に関し、大きな役割を果たしてきた実績があり、今後もその役割は重要である。
  適応指導教室の設置数については、平成2年度においては84箇所であったのに対し、平成13年度は991箇所に達しており、全国的に整備が進められてきている。しかしながら、平成13年度において、適応指導教室を設置している市町村教育委員会の割合は、全体の約27%であり、また、利用者からの評価は他の学校外の施設に比して高くなっているものの、全国の不登校児童生徒のうち1割程度の者しか通級できていないという実態からも、いまだ適応指導教室の整備状況は十分なものとは言えず、今後一層、質・量両面の充実が望まれる。同時に、適応指導教室から各家庭等へ、より一層その存在や指導内容等について積極的に周知し働きかける等、主体的な活動を行う必要がある。さらに、地域によっては、小学生の受入が十分にできていないといった指摘もあり、今後児童生徒の発達段階に応じたよりきめ細かい対応が求められる。
  また、適応指導教室については、その役割や望ましい在り方について明確にされてこなかったこともあり、具体的な在りようは地域の実情に応じ、様々なものとなっている。全国的な整備充実を図る上では、その望ましい在り方について示すモデル的な整備指針を作成することも意義があると考え、本報告において「適応指導教室整備指針(試案)」を掲げた。
  なお、適応指導教室については、その役割や機能に照らし、より適切な呼び方を望む声もあったことから、今後、国として標準的な呼称を用いる場合は、例えば、不登校児童生徒に対する「教育支援センター」という名称を適宜併用することを提案したい。また、既に各地域では、様々な親しみやすい名称を付している実態があり、そうした工夫は今後ともあってよいと考える。
(参考資料)
(20) 適応指導教室の設置数及び利用状況の推移
(21) 不登校経験者の利用施設の評価
(別添1)
   適応指導教室整備指針(試案)

  適応指導教室の指導体制の充実
  適応指導教室の指導体制については、指導員数が全国平均で、1施設当たり平均3名程度、かつ、非常勤職員が全体の指導員の約8割を占めているのが現状であり、一部の大規模な施設を除けば、指導員の量的不足や非常勤職員が多いために専門性を生かした指導やノウハウの蓄積が困難であるといった課題がある。したがって、今後、適応指導教室への常勤職員の配置が望まれる。
  また、適応指導教室の指導員は、集団への適応、情緒の安定、基礎学力の補充、基本的生活習慣の改善等のための相談・適応指導に必要な知識及び経験または技能、熱意と識見を有している必要があり、これらの資質・能力の向上のため、指導員に対する研修等の充実も不可欠である。
  さらに、適応指導教室の指導体制をめぐっては、専門性の不足や年齢構成の偏りなどの課題が指摘されている。児童生徒がどのような状態にありどのような支援を必要としているのか適応指導教室が正しく見極め(「アセスメント」)を行い、教育相談を実施することや、後述する地域ネットワークの中核的機能を担うことなどを考えると、カウンセラー等の専門家など多様な人材を配置することも望まれる。
  そのほか、地域や学校の実情に応じて、不登校児童生徒が在籍する学校の学級担任、その他の教員がコーディネーター的な不登校担当教員との連携の下、機動的に適応指導教室に赴き、保護者や指導員等との情報交換や相談を行ったり、児童生徒の状態に応じて学習指導や教育相談を行ったりすることも考えられる。
(参考資料)
(22) 適応指導教室の指導体制

  地域ネットワークにおける中核的機能の整備
 不登校児童生徒が、各地域において身近で公的支援を受けられるよう、適応指導教室の物理的な整備充実を図る一方で、既存の適応指導教室や学校、地域の関係機関との連携協力・資源の共有化を図ることが必要である。このため、地域において教育センターや適応指導教室が核となり、学校や他の小規模な適応指導教室、児童相談所、警察、病院、ハローワーク等の関係機関、更には民間施設やNPO等と連携し、不登校児童生徒やその保護者を支援するネットワークを整備することが望まれる。
  また、LD、ADHD等が不登校の背景にある場合が見られることから、特別支援教育のセンター的機能を有する養護学校との連携も望まれる。
  教育委員会の中には、不登校児童生徒やその保護者を対象とした宿泊型の施設を設置し、そこを核として、周辺の学校に対し不登校児童生徒への対応に関し助言したり、教員のための研修や事例研究会を企画・実施するほか、悩みを抱える保護者に対する相談や保護者同士のネットワークづくりへの支援、数日間にわたる体験活動プログラムの提供、各種の情報収集を行うなど、地域ネットワークにおける中核的機能を担わせている事例もある。こうした試みが、各地で積極的に進められていくことを期待したい。
(別添2)
   不登校に対する連携モデル(試案)

(2) 社会教育施設の体験活動プログラムの積極的な活用

  社会教育施設では、不登校児童生徒を対象とする様々な野外体験活動プログラム等が提供されており、例えば、宿泊型のものや自然を利用したもの等、都市部における適応指導教室や小規模な適応指導教室では提供しにくいものが実施されている場合も多い。
  今後、適応指導教室とこれらの体験活動プログラム等を実施する社会教育施設との積極的な連携が望まれる。

(3) 公的機関と民間施設やNPO等との積極的な連携

  不登校児童生徒への支援については、民間施設やNPO等においても様々な取組がなされており、今後、学校、適応指導教室等の公的機関は、民間施設等の取組の自主性や成果を踏まえつつ、より積極的な連携を図っていくことが望ましい。
  具体的な連携の内容としては、例えば、各地域のネットワークを活用しながら、公的機関による民間施設に関する情報提供や、共同の事例検討会の実施、研修等における講師としての協力、不登校児童生徒の指導計画の共同作成・実施、体験活動プログラムの共同開発・実施、訪問型の支援に関するマニュアルの共同作成、第4章で触れた学校外での学習評価における連携等の取組が考えられる。
  このような公的機関と民間施設等との密接な連携を進める上で、公的機関による情報収集のみならず、民間施設からの積極的な情報提供や民間施設の運営等に関する透明性の確保が望まれる。また、民間施設等の実践には評価すべきもの、参考とすべきものが多々ある一方で、一部には不適切な指導が疑われるものや活動の実態がはっきりしないものもあるという指摘もある。その観点から、本協力者会議においては、「平成4年報告」に別記として掲げられている「民間施設についてのガイドライン(試案)」について、事業運営の透明性の確保や相談・指導面での情報公開の必要性の観点から見直しを行った。
  教育委員会、学校、適応指導教室等の公的機関は、このガイドライン(試案)を保護者等へ周知するとともに、ガイドライン(試案)に照らして把握できた情報を保護者の参考に資するよう提供することが望ましい。また、不登校児童生徒や保護者は、民間施設において相談・指導を受ける際には、当該ガイドライン(試案)や教育委員会等から示された情報に留意することが望まれる。さらに、学校は、教育委員会と連携し、民間施設における相談・指導が個々の児童生徒にとって適切であるかの判断や出席扱いの適否の判断等をするに際して、当該ガイドライン(試案)を参考とすることが望ましい。
  そのほか、地域の実情に応じ、教育委員会が当該ガイドライン(試案)等を考慮しつつ、不登校児童生徒への支援に関し実績がある民間施設に、適応指導教室の相談・指導の業務を委託する等の「公設民営型」の適応指導教室についても今後検討することが考えられる。
 (別添3)
   民間施設についてのガイドライン(試案)

  訪問型の支援の取組

(1) 公的な機関等による訪問型の支援の推進

  不登校児童生徒や「ひきこもり」の青少年を対象とする公的な機関等による訪問型の支援については、一部の自治体で既に実施され、成果を上げているところである。
  今後、適応指導教室に通うことができない者など、支援を受けていない不登校の児童生徒やその保護者等に対し、より積極的に支援を行う観点から、地域の実情や状況等を踏まえつつ、このような取組が全国各地で実施されることが望まれる。その際、適応指導教室や教育センター等、地域の中核的な機能を持った公的施設が人材バンクを整備して訪問に当たる人材の斡旋を行うなど、訪問型支援にあたり、コーディネーターとしての機能を果たすことが考えられる。
(参考資料)
(23) 訪問指導に係る事業の実施状況
(24) 訪問指導の内容

(2) 訪問型の支援の実施に当たっての配慮

  公的な機関等による訪問においては、専門家のみならず、様々な人材と連携協力して実施することが考えられる。例えば、一部の自治体では大学との組織的な連携により、心理学や教育学を学ぶ大学生等を派遣することにより成果を上げている例もある。その場合には、この活動を大学における単位認定に反映させる等の措置も考えられる。
  また、専門家以外の多様な人材が訪問型の支援に関わる場合には、適切な事前の指導や活動中の援助あるいは研修のためのスーパーバイザーの確保等、訪問する者の資質向上等のための方策を検討する必要がある。
  なお、特に、ひきこもりがちな不登校児童生徒の家庭を訪問する際には、その影響の大きさを考え、守秘義務の遵守はもとより、所定の時間外の私的な接触には慎重に対処したり、スーパーバイザーへの報告を確実に行うなど、指導する上での配慮事項等につき十分徹底を図る必要がある。さらに、訪問が解決に向けての次のステップへ結び付くよう適応指導教室や学校等と密接な連携を図ることが求められる。

  IT等の活用

  ITを不登校児童生徒への指導や支援にどのように活用していくかについては、今後先駆的・実験的な事例等を踏まえながら研究する必要がある。既に保護者との相談等における電子メールの活用については一定の成果が報告されている。また、特に、ひきこもり傾向がある等、人との直接的な関わりが苦手な児童生徒については、相談等のきっかけとしてITを活用することは有効である。教育委員会が、不登校児童生徒の家庭に対してパソコンを貸与し、学校や適応指導教室への無料アクセスを認め、カウンセラーに相談したり、他の児童生徒と交流したりすることを可能とするといった実験的な取組も試みられている。
  また、このような取組の可能性に目を向けると同時に、児童生徒がそれだけにのめり込んでしまうことがないよう人間関係づくりや学校復帰等、次のステップにつながるようにする等、その活用に当たり十分配慮が必要と考えられる。
  なお、学習指導におけるITの活用については、高等学校以上では、通信制の学校が存するなど相応の普及をしているが、義務教育段階にあっては、ひきこもり傾向のある不登校児童生徒に対し部分的にインターネットを利用した学習の実施、個別学習ソフトの開発などの試みも見られるものの、今後なお一層の研究を進めていくことが必要である。


第6章  中学校卒業後の課題

  高等学校に関する取組

(1) 高等学校入学者選抜等の改善

  高等学校入学者選抜については、学力検査と調査書による選抜が中心であるが、選抜方法の多様化や評価尺度の多元化の観点から改善が進められてきており、そのいずれか一方を用いたり、更には、そのいずれも用いずに他の方法によることも可能となってきている。
  今後は、このような選抜方法の多様化の流れの中、高等学校で学ぶ意欲や能力を有する不登校生徒について、これをより適切に評価することが望まれる。例えば、進学の動機や高校で学びたいこと、学校外を含めて中学校時代に学んだ事柄などを記載した自己申告書を調査書に添付することや調査書に代えて提出することを認めたり、また、例外的な選抜枠を設けて面接や実技、作文のみで評価したり、学力検査の成績のみで評価することも考えられる。一部の教育委員会では、既にこうした方法を取り入れており、今後更なる取組の広がりを望みたい。
  なお、国の実施する中学校卒業程度認定試験については、やむを得ない事情により不登校となっている生徒が在学中に受験できるよう、その受験資格の拡大が図られたところであり、不登校生徒や保護者に対してこの制度に関する適切な情報提供を行い、様々な選択の幅を広げる配慮が望まれる。

(2) 高等学校における長期欠席・中途退学への取組の充実

  高等学校における不適応による長期欠席についても行政として把握し課題として認識することが必要であることは既に第2章「不登校の現状」で述べたとおりである。国においては、高等学校での長期欠席に関する調査は行っていないが、中途退学に関しては、「問題行動等調査」の一環として把握している。学校復帰のできなかった長期欠席者は、中途退学者の中に含まれてしまっていると考えられる。この調査結果によると、平成13年度の公私立高等学校の中途退学者は約10万5千人、在学者全体に占める割合(中退率)は2.6%となっている。中退率は近年横ばいであるが、過去と比べると比較的高い水準にあり、また、その事由別の構成比の推移を見ると、「学校生活・学業不適応」の項目、例えば「人間関係がうまく保てない」が伸びている。
  高等学校における長期欠席や中途退学の課題については、小・中学校時に不登校であった生徒や、高等学校入学後も欠席傾向がある生徒に対し、単位制の活用や選択幅の拡大等による個に応じた教育課程編成、少人数制の指導による「分かるまで」のていねいな教科指導、生徒の個人として優れている点や長所、学習における進歩の状況の積極的な評価、体験活動の積極的な推進、副担任制を活用することによる担任の選択制度等の多様な取組が行われている。今後、各地域の実情に合わせ、中高一貫教育の推進や、総合学科や単位制高等学校等の特色ある高等学校づくり等も含め、多様な取組や工夫が行われることを期待したい。
(参考資料)
(25) 高等学校中途退学者数の推移
(26) 事由別中途退学者数の構成比の推移


  中学校卒業後の就学・就労や「ひきこもり」への支援

(1) 中学校卒業後の青少年の進路の相談や受け皿づくりへの期待

  中学校時に不登校であり高等学校へ進学しなかった者、または高等学校へ進学したものの中途退学をした者等、中学校卒業後に進学も就労もしていない者等に対して、例えば、通信制の高等学校や専修学校高等課程への進学、放送大学の選科履修生・科目履修生や大学入学資格検定試験等を通じた多様な進学、職業訓練等の機会等について相談できる窓口や社会的自立を支援するための受け皿が必要である。
  不登校経験者を対象とした調査では、多くの者が何らかの支援を望んでいるが、その内容をみると、中学校在学時には「心理相談」が最多であるが、中学校卒業後では「技術指導」の比重が相対的に増してくるという傾向がみられる。
  こうした支援の望ましい在り方については、今後、各都道府県や市町村の青少年担当部局、福祉・労働担当部局等との連携や都道府県と市町村との連携の下に検討する必要があるが、その検討に当たっては、自治体において既にそのような施設を設置している例や、青少年の自立支援を行い、成果を上げている既存の民間施設等の取組等が参考になると考えられる。
(参考資料)
(27) 不登校経験者が求める支援

(2) 中学校卒業後のひきこもり傾向にある青少年への支援

  中学校卒業後のひきこもり傾向にある青少年やその家庭への支援については、教育行政のみでそれを行うことは困難であるが、状況に応じ、訪問や手紙等による働きかけを家族との連携の上で行うことが望ましい。また、電話や面接による相談や訪問による本人や家族への支援、あるいは進路や就職に関する情報提供を行う等、保健・医療・福祉・労働行政機関と教育行政機関や関係するNPO等が連携した地域のサポートネットワークを整えていくことが有効であると考えられる。


第7章  教育委員会に求められる役割

  不登校や長期欠席の早期の把握と対応

  各市町村教育委員会においては、不登校や長期欠席は、義務教育制度に関わる重大な課題であることを認識し、学校等の不登校への対応に関する意識を高めるとともに、学校が家庭や関係機関等と効果的に連携を図り、課題の早期の解決を図るための体制の確立を促すことが重要である。
  例えば、児童生徒が連続して欠席している等、不登校傾向が見られた場合には、各学校が速やかに市町村教育委員会へ報告をし、それを受けて市町村教育委員会が学校の指導計画づくりを促すとともに、フォローアップを行う等、早期の把握と対応に関する学校や教育行政関係者等の意識を高めている例もあり、そうした取組を広げていくことが望まれる。
  また、不登校の背景に児童虐待があると疑われる事例に際しては、その実情に応じ、教育委員会として出席督促を行うとともに児童相談所への通告について学校を指導するなど、適切な対応をとることが求められる。

  学校等の取組を支援するための教育条件等の整備

  各教育委員会においてはまず、不登校に対する正しい認識の下に、適切な取組が各学校において行われるよう方針を立て、指導・啓発を行うことが求められる。

(1) 教員の資質向上

  教育委員会においては、従来より、教員の採用・研修を通じて、その資質向上に取り組んでいるところであるが、こうした取組が各教員の不登校への適切な対応に資することが期待される。
  教員採用については、熱意があり人間性豊かな人材が確保されるよう、採用選考方法の工夫改善に引き続き努めていく必要がある。
  また、初任者研修をはじめとする教職経験に応じた研修、生徒指導・教育相談といった専門的な研修、管理職や生徒指導主事を対象とする研修などの体系化とプログラムの充実を図り、教員に対して、例えば不登校に関する知識や理解、児童生徒に対する理解、関連する分野の基礎的な知識などを身に付けさせていくことが必要である。加えて、視野を広げたり、知識・能力の専門性を高めたりするためには、様々な機関や施設等へ教員を派遣する長期研修の推進も重要である。例えば、関係機関との連携を推進する観点からは、児童相談所などへの長期派遣研修を積極的に進めることも意義あることと考える。また、教員の現職教育の機会を提供している大学・大学院との連携を図り、指導的な教員を対象にカウンセリングなどの専門的な能力の育成を図っていくことも望まれる。その他、例えば放送大学を利用した学習など、教員の自己啓発を促すことも大切である。
  なお、教員のみならず、スクールカウンセラー等を対象とした研修等の充実も望まれる。

(2) きめ細かな指導のための適切な人的措置

  不登校を未然に防ぐ観点から、魅力ある学校づくり、「心の居場所」としての学校づくりを進めるためには、少人数授業やティームティーチング、習熟度別指導などのきめ細かな指導が可能となるよう、適切な教員配置を行うことが必要である。また、小・中学校さらには高等学校の間の連携を推進するため、異校種間の人事交流や兼務などを進めていくことも期待される。
  また、不登校児童生徒が多く在籍する学校については、教員の加配等、効果的かつ計画的な人的配置に努める必要がある。そのためにも、日頃より各学校の実情を把握し、また加配等の措置をした後も、校内指導体制の確立、家庭や関係機関との連携の強化等に向け、この措置が効果的に活用されているか等のフォローアップを十分に行うことが大切である。
  さらに、教員による体罰や暴言等、不適切な言動や指導が不登校の原因となっている場合は、人的措置を含め、厳正な対応をとることが必要である。

(3) 保健室や相談室等の整備

  不登校児童生徒への対応に当たり、養護教諭の果たす役割や「保健室登校」・「相談室登校」の意義に鑑み、養護教諭の複数配置や研修機会の充実、保健室等の環境整備、情報通信機器の整備等が望まれる。

  学校における指導等への支援

(1) モデル的な個別指導記録の作成

  各市町村教育委員会においては、各学校で不登校児童生徒に対する個に応じたきめ細かい指導を行うために活用できるよう個別指導記録のモデル案等を作成することが求められる。また、当該個別指導記録が効果的に活用されるよう適切な指導が望まれる。

(2) 転校のための柔軟な措置

  いじめや教員による不適切な言動や指導等が不登校の原因となっている場合等には、市町村教育委員会においては、保護者等の意向を踏まえつつ、学校と連携した適切な教育的配慮の下に、就学すべき学校の指定の変更や区域外就学を認める措置を講じることが望まれる。また、他の児童生徒を不登校に至らせるような深刻ないじめや暴力行為があった場合は、必要に応じて出席停止措置を的確に講ずる必要がある。

  適切な対応の見極め(「アセスメント」)及びそのための支援体制づくり

  不登校の要因・背景が多様化しているため、対策を検討する上で、初期に適切な対応の見極め(「アセスメント」)を行うことは極めて重要である。そのためには、児童生徒の状況によっては、個別の教員や校内の関係者のみが対応するのではなく、専門知識を持つ外部の者等の協力を得ることが必要であり、そのような初期段階のアセスメント機能に関し、各学校等をサポートする地域の体制を構築することにつき、各教育委員会は今後具体的に検討していく必要がある。その際に、適応指導教室の機能を充実してそうした役割を担わせたり、あるいは学校と関係機関等のコーディネートを行わせることも考えられる。

  学校外の公的機関等の整備充実

(1) 適応指導教室の整備充実やそのための指針づくり

  各都道府県教育委員会においては、適応指導教室の更なる整備充実のために、域内の市町村教育委員会と緊密な連携を図りつつ、未整備地域を解消して不登校児童生徒や保護者が利用しやすい環境づくりを進めたり、別添1の「適応指導教室整備指針(試案)」を参考に、地域の実情に応じた指針を作成し、必要な施策を講じていくことが求められる。もとより、市町村教育委員会は、主体的に適応指導教室の整備充実を進めていくことが必要である。

(2) 教育センターや教育研究所等における教育相談機能の充実

  教育委員会は、所管する教育センターや教育研究所等における教育相談機能を活用し、保護者や不登校児童生徒をはじめ、学校、適応指導教室等が身近に助言・援助を得られる体制の整備を図り、域内の不登校に関する連携ネットワークの機能の充実を図ることが望ましい。その際、ITの有効な活用方法について研究を進め、教育相談の実践に生かしていくことが期待される。

  訪問型支援など保護者への支援の充実

  各都道府県・市町村教育委員会においては、保護者全般に対する不登校への理解を深めるための啓発を行うことや、不登校のみならず子育てについての保護者に対する支援を充実することが求められる。
  また、不登校の対応にあたっては、ひきこもりがちな不登校児童生徒やその保護者等に対し、必要な配慮の下、訪問型の支援を積極的に推進することが期待される。その際には、家庭の協力を得ることが不可欠であり、また、保護者自身が悩みを抱えている場合等もあることから、情報提供や保護者のネットワークとの連携等による支援の充実が必要である。

  官民の連携ネットワークの整備の推進

(1) 他部局との連携協力のためのコーディネート

  各教育委員会においては、学校と関係機関との連携協力を推進するため、積極的に他の保健・福祉・医療・労働分野の部局等とのコーディネーターとしての役割を果たす必要がある。

(2) 関係機関のネットワークづくりと不登校対策の中核的機能の整備充実

  各教育委員会においては、不登校へ対応するための学校、適応指導教室、児童相談所、警察、病院、ハローワーク等の関係機関や民間施設、NPO等のネットワークづくりや、その中核的な機能の整備充実に努める必要がある。

(3) 民間施設等との連携協力のための情報収集・提供等

  教育委員会においては、情報公開を適切に行っている健全な民間施設やNPO等との連携協力を推進するため、積極的に情報収集に努めるとともに、学校や保護者等への情報提供を適切に行うことが必要である。また、各民間施設等は、設置者の判断によりそれぞれ自らの責任で自主的に運営されていることを前提に、各公的機関や保護者等へその情報提供を行うことが望ましい。


第8章  国に求められる役割

  不登校の実態把握のための概念整理や調査の在り方の検討

  前述のように、現状の不登校の概念規定や要因・背景などの実態把握の在り方については、見直すべき課題もあり、国において、今後検討を行う必要がある。
  また、高等学校における長期欠席を把握するための調査の在り方についても検討を行う必要がある。

  不登校への対応に関する全国の情報収集・情報提供

  国においては、各教育委員会等において展開されている有効な施策や実践事例に関し、情報収集や情報提供に努め、各教育委員会等の不登校対策の推進を支援することが望まれる。その一環として、本協力者会議の報告を踏まえて、各学校の指導方法の改善が図られるよう、より具体的な手法や事例等について紹介する指導資料の作成を行うことを求めたい。

  関係省庁との連携協力

  国においては、各教育委員会等が推進する不登校に対する様々な取組を支援し、教育委員会・学校と関係機関との連携協力が円滑に進むよう、青少年行政や、保健・福祉・医療・労働行政等を担当する関係省庁と積極的に連携協力をする必要がある。

  不登校施策の改善へ向けた不断の取組

  国においては、各教育委員会等の不登校施策への取組の充実を支援するため、不登校施策の改善のための不断の取組をすることが求められる。
  当面、これまで行われてきた教員の資質向上や教員配置の充実による学校の指導体制の強化、スクールカウンセラーの配置等による教育相談体制の充実、体験活動の推進等に引き続き努めることが求められる。
  また、新たに、本協力者会議の報告に基づく指導資料の作成を行うほか、平成15年度から実施される事業を積極的に展開し、適応指導教室を中心とした地域ネットワークの整備のための実践的な研究を進め、この報告で述べた様々な提言の具現化を図っていくことが必要である。さらに、不登校児童生徒に対するITの有効な活用の在り方などについても、教育相談・学習指導の両面にわたって研究を一層深めていくことが望まれる。
  既に述べたとおり、本報告書の提言は、教育委員会や学校等での具体的な取組の充実を図ることに主眼を置くものであるが、文部科学省においては、スクールカウンセラーの配置、更には不登校児童生徒の実態に配慮した特色ある教育課程の試み等の課題について、取組の成果と課題を十分に検証しつつ、必要な検討を行うことを望みたい。

  不登校対策については、画一的な不登校像を安易に描いて論ずるのではなく、不登校児童生徒の将来の社会的自立を目指し、一人一人の状況を踏まえて、その「最善の利益」が何であるのかという視点に立ち、真剣に考えなければならない課題である。国はもとより、家庭、地域、学校関係者など教育に携わる者全てが、そうした姿勢を常に保ちつつ、不断の取組を進めていくことを願って止まない。

ページの先頭へ