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文化庁における行政文書の開示決定等に係る審査基準

平成13年3月15日
文化庁長官決定
平成15年4月8日一部改正
平成18年3月31日一部改正
平成25年4月1日一部改正

 行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成11年法律第42号。以下「法」という。)第9条に規定する開示決定等についての文化庁における審査に当たっては、この基準に基づき適正な運用を図るものとする。

第1 行政文書に該当するか否かの基準

1 開示請求の対象となる「行政文書」とは、文化庁の職員が職務上作成し、又は取得した文書、図画及び電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られた記録をいう。以下同じ。)であって、文化庁の職員が組織的に用いるものとして、文化庁が保有しているものをいう。ただし、官報、白書、新聞、雑誌、書籍その他不特定多数の者に販売することを目的として発行されるもの、又は、日本芸術院において、行政機関の保有する情報の公開に関する法律施行令(平成12年政令第41号)で定めるところにより、歴史的若しくは文化的な資料又は学術研究用の資料として特別の管理がされているものを除く。

2 行政文書が「組織的に用いるもの」に該当するか否かについては、以下の観点から総合的に判断を行うものとする。

(1) 行政文書の作成又は取得の状況
 ア 職員個人の便宜のためにのみ作成又は取得したものか
 イ 直接的又は間接的に当該行政機関の長等の管理監督者の指示等の関与があったか

(2)行政文書の利用の状況
 ア 業務上必要なものとして他の職員又は部外に配付されたものであるかどうか
 イ 他の職員がその職務上利用しているものであるかどうか

(3)保存又は廃棄の状況
 ア 専ら当該職員の判断で処理できる性質の文書であるかどうか
 イ 組織として管理している職員共用の保存場所で保存されているものであるかどうか

(4)以下のものは「組織的に用いるもの」に該当しない。
(ア)職員が単独で作成し、又は取得した文書であって、専ら自己の職務の遂行の便宜のために利用し、組織としての利用を予定していないもの
 ア 自己研鑽のための資料
 イ 備忘録
(イ) 職員が自己の職務の遂行の便宜のために利用する正式文書と重複する当該文書の写し
(ウ) 職員の個人的な検討段階に留まるもの
 決裁文書の起案前の職員の検討段階の文書等。ただし、起案前の文書であっても、組織において業務上必要なものとして保存されているものは除く。

(5) どの段階から組織として共用文書たる実質を備えた状態になるかについては、文書の利用又は保存の実態により判断されることとなるが、以下の時点を目安とする。
(ア)決裁を要するものについては、起案文書が作成され、稟議に付された時点
(イ)会議資料については会議に提出した時点
(ウ)申請書等については申請書等が行政機関の事務所に到達した時点
(エ)組織として管理している職員共用の保存場所に保存した時点

3 「保有しているもの」とは、所持している文書をいう。この「所持」は、物を事実上支配している状態をいい、当該文書を書庫等で保管し、又は倉庫業者等をして保管させている場合にも、当該文書を事実上支配していれば、「所持」に当たる。(ただし、一時的に文書を借用している場合や預かっている場合など、当該文書を支配していると認められない場合を除く。)

第2 行政文書を特定するための基準

 行政文書の特定は、開示請求書の「行政文書の名称その他行政文書を特定するに足りる事項」の記載から職員が開示請求者が求める行政文書を他の行政文書と識別できるか否かにより、判断するものとする。

1 特定が不十分な記載の例

 「○○に関する資料」(○○の事柄の具体性の程度にもよるが、一般的には、関連性の程度には種々のものが想定され、どこまでを含むかは明らかでない。)、「○○(行政機関又はその下部組織)の保有する行政文書」という記載がされている場合

2 特定されていると考えられる例

 行政文書ファイル管理簿に登載されている行政文書ファイル名が記載されている場合

第3 行政文書の開示義務等

1 行政文書の開示義務

 開示請求があったときは、次に掲げる場合を除き、開示請求のあった行政文書を開示しなければならない。

(1)開示請求に係る行政文書の全部に法第5条各号に掲げる情報(以下「不開示情報」という。)が記録されているため、すべて不開示とする場合(不開示情報が記録されている部分を、それ以外の部分と容易に区分して除くことができない場合を含む。)

(2)法第8条の規定により、行政文書の存否を明らかにしないで開示請求を拒否する場合

(3)開示請求に係る行政文書を文化庁が保有していない場合又は開示請求の対象が行政文書に該当しないとき

(4)開示請求の対象が、他の法律において開示手続が定められており、法の適用除外規定により、開示請求の対象外のものであるとき(著作権登録原簿、出版権登録原簿、著作隣接権登録原簿及びこれらの附属書類)

(5)開示請求手数料が納付されていない場合、行政文書の特定が不十分である場合等、開示請求に形式的な不備があるとき

(6)権利濫用に関する一般法理が適用されるとき

2 部分開示

 開示義務に係る行政文書の一部に不開示情報が記録されている場合において、不開示情報が記録されている部分を容易に区分して除くことができるときは、当該部分を除いた部分につき開示しなければならない。ただし、当該部分を除いた部分に有意の情報が記録されていないと認められるときは、この限りでない。

3 公益上の理由による裁量的開示

 開示請求に係る行政文書に不開示情報が記録されている場合であっても、公益上特に必要があると認めるときは、開示請求者に対し、当該行政文書を開示することができる。

4 行政文書の存否に関する情報

 開示請求に対し、当該開示請求に係る行政文書が存在しているか否かを答えるだけで、不開示情報を開示することとなるときは、当該行政文書の存否を明らかにしないで、当該開示請求を拒否することができる。

第4 不開示情報に該当するか否かの基準(法第5条関係)

 開示請求の対象とされた行政文書について、不開示情報に該当するか否かを審査するための基準である。
 なお、行政文書に記録されている情報が不開示情報であるか否かの判断は事情の変化により変わりうるため、法においては、当該判断は開示請求があった都度行うこととされているが、各号に基づき不開示となる情報を含み得るものと考えられるものの一例として、内閣府情報公開・個人情報保護審査会の答申事例等が参考になり得る。(答申事例等を整理したものとして「情報公開法に係る主な答申等の取りまとめについて」(情報公開に関する連絡会議資料)がある。)(※下記参照)

1.法第5条第1号関係(個人に関する情報)

1 「個人に関する情報」

(1)「個人に関する情報」(以下「個人情報」という。)とは、個人の内心、身体、身分、地位その他個人に関する一切の事項についての事実、判断、評価等のすべての情報が含まれるものであり、個人に関連する情報全般を意味する。したがって、個人の属性、人格や私生活に関する情報に限らず、個人の知的創作物に関する情報、組織体の構成員としての個人の活動に関する情報も含まれる。
 個人の権利利益を十全に保護するため、個人識別性のある情報を一般的に不開示とし、個人情報の判断に当たり、原則として、公務員等(法第5条第1号ハに規定する「公務員等」をいう。以下同じ。)に関する情報とそれ以外の者に関する情報とを区別していない。ただし、前者については、特に不開示とすべきでない情報を同号ハにおいて除外している。
 「個人」には、生存する個人のほか、死亡した個人も含まれる。生前に本号により不開示であった情報が、個人が死亡したことをもって開示されることとなるのは不適当である。

(2)「(事業を営む個人の当該事業に関する情報)」は、個人情報の意味する範囲に含まれるが、当該事業に関する情報であるので、法人等に関する情報と同様の要件により不開示情報該当性を判断することが適当であることから、本号の個人情報からは除外している。

(3)「当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの」
 「特定の個人を識別することができるもの」の範囲は、当該情報に係る個人が誰であるかを識別させることとなる氏名その他の記述の部分だけでなく、氏名その他の記述等により識別される特定の個人情報の全体である。
 「その他の記述等」としては、例えば、住所、電話番号、役職名、個人別に付された記号、番号(振込口座番号、試験の受験番号、保険証の記号番号等)等が挙げられる。氏名以外の記述等単独では必ずしも特定の個人を識別することができない場合もあるが、当該情報に含まれるいくつかの記述等が組み合わされることにより、特定の個人を識別することができることとなる場合もある。

(4)「(他の情報と照合することにより、特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)」
 当該情報単独では特定の個人を識別することができないが、他の情報と照合することにより識別することができるものも、個人識別情報として不開示情報となる。
 照合の対象となる「他の情報」としては、公知の情報や、図書館等の公共施設で一般に入手可能なものなど一般人が通常入手し得る情報が含まれる。また、何人も開示請求できることから、仮に当該個人の近親者、地域住民等であれば保有している又は入手可能であると通常考えられる情報も含まれる。他方、特別の調査をすれば入手し得るかも知れないような情報については、一般的には、「他の情報」に含まれない。照合の対象となる「他の情報」の範囲については、当該個人情報の性質や内容等に応じて、個別に判断する。
 また、識別可能性の判断に当たっては、厳密には特定の個々人を識別することができる情報ではないが、特定の集団に属する者に関する情報を開示すると、当該集団に属する個々人に不利益を及ぼすおそれがある場合があり得る。このように、当該情報の性質、集団の性格、規模等により、個人の権利利益の十全な保護を図る観点から、個人識別性を認めるべき場合があり得る。

(5)「特定の個人を識別することができないが、公にすることにより、なお、個人の権利利益を害するおそれがあるもの」
 行政機関が保有する個人情報の大部分は、特定の個人を識別することができる情報であり、これを不開示情報とすることで、個人の権利利益の保護は基本的には十分確保されると考えられる。
 しかし、匿名の作文や無記名の個人の著作物など、個人の人格と密接に関連したり、公にすれば財産権(著作権等を含む。)その他の個人の正当な利益を害するおそれがあると認められるものについては、特定の個人を識別できない個人情報であっても、公にすることにより、なお個人の権利利益を侵害するおそれがあり、不開示となる。

2 「法令の規定により又は慣行として公にされ、又は公にすることが予定されている情報」(法第5条第1号ただし書イ)

(1)「法令の規定により」

 「法令の規定」は、何人に対しても等しく当該情報を公開することを定めている規定に限られる。公開を求める者又は公開を求める理由によっては公開を拒否する場合が定められていれば、当該情報は、「公にされている情報」には該当しない。

(2)「慣行として」

 公にすることが慣習として行われていることを意味するが、慣習法としての法規範的な根拠を要するものではなく、事実上の慣習として公にされていること又は公にすることが予定されていることで足りる。当該情報と同種の情報が公にされた事例があったとしても、それが個別的な事例にとどまる限り、「慣行として」には当たらない。

(3)「公にされ」

 当該情報が、現に公衆が知り得る状態に置かれていれば足り、現に公知の事実である必要はない。過去に公にされたものであっても、時の経過により、開示請求の時点では公にされているとは見られない場合があり得る。

(4)「公にすることが予定されている情報」

 将来的に公にする予定(具体的に公表が予定されている場合に限らず、求めがあれば何人にも提供することを予定しているものも含む。)の下に保有されている情報をいう。ある情報と同種の情報が公にされている場合に、当該情報のみ公にしないとする合理的な理由がないなど、当該情報の性質上通例公にされるものも含む。

3 「人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報」(法第5条第1号ただし書ロ)

 公にすることにより害されるおそれがある当該情報に係る個人の権利利益よりも、人の生命、健康等の保護の必要性が上回るときには、当該情報を開示しなければならないこととする。現実に、人の生命、健康等に被害が発生している場合に限らず、将来これらが侵害される蓋然性が高い場合も含まれる。この比較衡量に当たっては、個人の権利利益にも様々なものがあり、また、人の生命、健康、生活又は財産の保護にも、保護すべき権利利益の程度に差があることから、個別の事案に応じ慎重な検討が必要である。
 なお、人の生命、健康等の基本的な権利利益の保護以外の公益との調整は、公益上の理由による裁量的開示の規定(法第7条)により図られる。

4 「当該個人が公務員等である場合において、当該情報がその職務の遂行に係る情報であるときは、当該情報のうち、当該公務員等の職及び当該職務遂行の内容に係る部分」(法第5条第1号ただし書ハ)

 行政文書には、公務遂行の主体である公務員等の職務活動の過程又は結果が記録されているものが多いが、政府の諸活動を説明する責務が全うされるようにするという観点からは、これらの情報を公にする意義は大きい。一方で公務員等についても、個人としても権利利益は十分に保護する必要がある。この両者の要請の調和を図る観点から、どのような地位、立場にある者(「職」)がどのように職務を遂行しているか(「職務遂行の内容」)については、たとえ、特定の公務員等が識別される結果となるとしても、個人に関する情報としては不開示としないこととする。

(1)「当該個人が公務員等である場合において」

 個人情報のうち、当該個人が「公務員等」である場合である。当該個人が「公務員等」であっても、職務遂行に係る情報が職務遂行の相手方等公務員等以外の個人情報である場合など、一つの情報が複数の個人情報である場合には、各個人ごとに不開示情報該当性を判断する必要がある。すなわち、当該公務員等にとっての不開示情報該当性と他の個人にとっての不開示情報該当性とが別個に検討され、そのいずれかに該当すれば、当該部分は不開示となる。「公務員等」とは、一般職か特別職か、常勤か非常勤かを問わず、国、独立行政法人等(法第5条第1号ハに規定する「独立行政法人等」をいう。以下同じ。)、地方公共団体及び地方独立行政法人の職員等(独立行政法人等及び地方独立行政法人の役員を含む。以下同じ)のほか、国務大臣、国会議員、裁判官等を含む。また、公務員等であった者が当然に含まれるものではないが、公務員等であった当時の情報については、不開示とはならない。

(2)「当該情報がその職務の遂行に係る情報であるとき」

 「職務の遂行に係る情報」とは、公務員等が国の機関、独立行政法人等、地方公共団体の機関又は地方独立行政法人の一員として、その担任する職務を遂行する場合における当該活動についての情報を意味する。例えば、行政処分その他の公権力の行使に係る情報、職務としての会議への出席、発言その他の事実行為に関する情報がこれに含まれる。
また、当該情報は、具体的な職務の遂行との直接の関連を有する情報を対象とし、公務員等の情報であっても、職員等の人事管理上保有する健康情報、休暇情報等は、管理される職員等の個人情報として保護され、職務遂行に係る情報には該当しない

(3)「当該情報のうち、当該公務員等の職及び当該職務遂行の内容に係る部分」

 公務員等の職務の遂行に係る情報には、当該公務員等の氏名、職名及び職務遂行の内容によって構成されるものが少なくない。このうち、前述のとおり、政府の諸活動を説明する責務が全うされるようにする観点から、公務員等の氏名を除き、その職名と職務遂行の内容については、当該公務員等の個人に関する情報としては不開示としないものとする。

(4)公務員等の職務遂行に係る情報に含まれる当該公務員等の氏名の取扱い

 公務員等の職務遂行に係る情報に含まれる当該公務員等の氏名については、公にした場合、公務員等の私生活等に影響を及ぼすおそれがあり得ることから、私人の場合と同様に個人情報として保護に値すると位置付けた上で、法第5条第1号ただし書イに該当する場合には例外的に開示することとする。
 当該公務員等の職及び氏名が、法令の規定により又は慣行として公にされ、又は公にすることが予定されている場合には、職務の遂行に係る情報について、個人情報としては不開示とはならない。慣行として公にされているかどうかの判断に当たっては、人事異動の官報への掲載その他行政機関により職名と氏名とを公表する慣行がある場合、行政機関により作成され、又は行政機関が公にする意思をもって(又は公にされることを前提に)提供した情報をもとに作成され、現に一般に販売されている職員録に職と氏名とが掲載されている場合には、その職にある者の氏名を一般に明らかにしようとする趣旨であり、慣行として公にされ、又は公にすることが予定されているものと解される。

5 本人からの開示請求

 本法の開示請求権制度は、何人に対しても、請求の目的の如何を問わず請求を認めていることから、本人から、本人に関する情報の開示請求があった場合にも、開示請求者が誰であるかは考慮されない。したがって、特定の個人が識別される情報であれば、本号のイからハまで又は公益上の理由による裁量的開示(法第7条)に該当しない限り、不開示となる。

2.法第5条第2号関係(法人等に関する情報)

1 「法人その他の団体(国、独立行政法人等、地方公共団体及び地方独立行政法人を除く。以下「法人等」という。)に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であって、次に掲げるもの。ただし、人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報を除く。」

(1)「法人その他の団体(国、独立行政法人等、地方公共団体及び地方独立行政法人を除く。)に関する情報」

 「法人その他の団体」とは、株式会社等の商法上の会社、財団法人、社団法人、学校法人、宗教法人、政治団体、外国法人等が含まれる。また、「その他の団体」には法人ではないが権利能力なき社団等も含まれる。一方、国、独立行政法人等、地方公共団体及び地方独立行政法人については、その公的性格にかんがみ、法人等とは異なる開示・不開示の基準を適用すべきであるので、本号から除き、その事務又は事業に係る不開示情報は、法第5条第6号等において規定している。「法人その他の団体に関する情報」は、法人等の組織や事業に関する情報のほか、法人等の権利利益に関する情報等法人等と何らかの関連性を有する情報を指す。なお、法人等の構成員に関する情報は、法人等に関する情報であると同時に、構成員各個人に関する情報でもある。

(2)「事業を営む個人の当該事業に関する情報」

 「事業を営む個人の当該事業に関する情報」は、事業に関する情報であるので、(1)に掲げた法人等に関する情報と同様の要件により、事業を営む上での正当な利益等について不開示情報該当性を判断することが適当であることから、本号で規定しているものである。

(3)「ただし、人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報を除く。」

 当該情報を公にすることにより保護される人の生命、健康等の利益と、これを公にしないことにより保護される法人等又は事業を営む個人の権利利益とを比較衡量し、前者の利益を保護する必要性が上回るときには、当該情報を開示しなければならない。
 現実に人の生命、健康等に被害が発生している場合に限らず、将来これらが侵害される蓋然性が高い場合も含まれる。なお、法人等又は事業を営む個人の事業活動と人の生命、健康等に対する危害等との明確な因果関係が確認されなくても、現実に人の生命、健康等に対する被害等の発生が予想される場合もあり得る。

2 「公にすることにより、当該法人等又は当該個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるもの」(法第5条第2号イ)

(1)「権利」

 信教の自由、集会・結社の自由、学問の自由、財産権等、法的保護に値する権利一切を指す。

(2)「競争上の地位」

 法人等又は事業を営む個人の公正な競争関係における有利な地位を指す。

(3)「その他正当な利益」

 ノウハウ、信用等法人等又は事業を営む個人の運営上の地位を広く含むものである。

(4)「害するおそれ」

 「害するおそれ」があるかどうかの判断に当たっては、法人等又は事業を営む個人の性格や権利利益の内容、性質等に応じ、当該法人等又は事業を営む個人の憲法上の権利(信教の自由、学問の自由等)の保護の必要性、当該法人等又は事業を営む個人と行政との関係等を十分考慮して判断する必要がある。この「おそれ」の判断に当たっては、単なる確率的な可能性ではなく、法的保護に値する蓋然性が求められる。

3 「行政機関の要請を受けて、公にしないとの条件で任意に提供されたものであって、法人等又は個人における通例として公にしないこととされているものその他の当該条件を付することが当該情報の性質、当時の状況等に照らして合理的であると認められるもの」(法第5条第2号ロ)

 法人等又は事業を営む個人から公にしないとの条件の下に任意に提供された情報については、当該条件が合理的なものと認められる限り、不開示情報として保護し、情報提供者の信頼と期待を基本的に保護するものとする。

(1)「行政機関の要請を受けて、公にしないとの条件で任意に提供されたもの」

 行政機関の要請を受けずに、法人等又は事業を営む個人から提供された情報は含まれない。ただし、行政機関の要請を受けずに提供の申出があった情報であっても、提供に先立ち、法人等又は事業を営む個人の側から非公開の条件が提示され、行政機関が合理的理由があるとしてこれを受諾した上で提供を受けた場合には、含まれ得る。
 「要請」には、法令に基づく報告又は提出の命令は含まれないが、行政機関の長が報告徴収権限を有する場合に、当該権限を行使することなく任意に提出を求めた場合は含まれる。
 「公にしない」とは、本法に基づく開示請求に対して開示しないことはもちろんであるが、第三者に対して当該情報を提供しない意味である。また、特定の行政目的以外の目的には使用しないとの条件で情報の提供を受ける場合も通常含まれる。
 「条件」については、行政機関の側から公にしないとの条件で情報を提供してほしいと申し入れる場合も、法人等又は事業を営む個人の側から行政機関の要請があったので情報は提供するが公にしないでほしいと申し出る場合も含まれるが、いずれにしても双方の合意により成立するものである。また、条件を設ける方法については、黙示的なものを排除するものではない。

(2)「法人等又は個人における通例として公にしないこととされているものその他の当該条件を付することが当該情報の性質、当時の状況等に照らして合理的であると認められるもの」

 「法人等又は個人における通例」とは、当該法人等又は個人の個別具体的な事情ではなく、当該法人等又は個人が属する業界における通常の取扱いを意味し、当該法人等において公にしていないことだけでは足りない。
 公にしないとの条件を付すことの合理性の判断に当たっては、情報の性質に応じ、当該情報の提供当時における諸般の事情を考慮して判断するが、必要に応じ、その後の変化も考慮する趣旨である。公にしないとの条件が付されていても、現に当該情報が公にされている場合には、不開示情報とはならない。

3.法第5条第3号関係(国の安全等に関する情報)

1 「国の安全が害されるおそれ」

 「国の安全」とは、国家の構成要素である国土、国民及び統治体制が害されることなく平和で平穏な状態に保たれていること、すなわち、国としての基本的な秩序が平穏に維持されている状態をいう。具体的には、直接侵略及び間接侵略に対し、独立と平和が守られていること、国民の生命が国外からの脅威等から保護されていること、国の存立基盤としての基本的な政治方式及び経済・社会秩序の安定が保たれていることなどが考えられる。
 「国の安全が害されるおそれ」とは、これらの国の重大な利益に対する侵害のおそれ(当該重大な利益を維持するための手段の有効性を阻害され、国の安全が害されるおそれがあると考えられる場合を含む。)をいう。

2 「他国若しくは国際機関との信頼関係が損なわれるおそれ」

 「他国若しくは国際機関」(我が国が承認していない地域、政府機関その他これに準ずるもの(各国の中央銀行等)、外国の地方政府又は国際会議その他国際協調の枠組みに係る組織(アジア太平洋経済協力機構、国際刑事警察機構等)の事務局等を含む。以下「他国等」という。)との間で、相互の信頼に基づき保たれている正常な関係に支障を及ぼすようなおそれをいう。例えば、公にすることにより、他国等との取決め又は国際慣行に反することとなる、他国等の意思に一方的に反することとなる、他国等に不当に不利益を与えることとなるなど、我が国との関係に悪影響を及ぼすおそれがある情報が該当する。

3 「他国若しくは国際機関との交渉上不利益を被るおそれ」

 他国等との現在進行中の又は将来予想される交渉において、我が国が望むような交渉成果が得られなくなる、我が国の交渉上の地位が低下するなどのおそれをいう。例えば、交渉(過去のものを含む。)に関する情報であって、公にすることにより、現在進行中の又は将来予想される交渉に関する我が国の立場が明らかにされ、又は具体的に推測されることになり、交渉上の不利益を被るおそれがある情報が該当する。

4 「おそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報」

 本号の該当性の判断においては、文化庁長官は、「おそれ」を認定する前提となる事実を認定し、これを不開示情報の要件に当てはめ、これに該当すると認定(評価)することとなるが、このような認定を行うに当たっては、高度の政策的判断や我が国の安全保障上又は対外関係上の将来予測としての専門的・技術的判断を伴う。

4.法第5条第4号関係(公共の安全等に関する情報)

1 「犯罪の予防、鎮圧又は捜査、公訴の維持、刑の執行その他の公共の安全と秩序の維持」

(1)「犯罪の予防、鎮圧又は捜査、公訴の維持、刑の執行」は、「公共の安全と秩序の維持」の例示である。

 「犯罪の予防」とは、犯罪の発生を未然に防止することをいう。なお、国民の防犯意識の啓発等、一般に公にしても犯罪を誘発し、又は犯罪の実行を容易にするおそれがない防犯活動に関する情報は、不開示とはならない。
 「犯罪の鎮圧」とは、犯罪がまさに発生しようとするのを未然に防止したり、犯罪が発生した後において、その拡大を防止し、若しくは終息させることをいう。 
 「犯罪の捜査」とは、捜査機関が犯罪があると思料するときに、公訴の提起などのために犯人及び証拠を発見・収集・保全することをいう。犯罪捜査の権限を有する者は、刑事訴訟法によれば、検察官、検察事務官及び司法警察職員であり、司法警察職員には、一般司法警察職員と特別司法警察職員とがある。
 「公訴の維持」とは、検察官が裁判所に対し、特定の刑事事件について審判を求める意思表示をすることを内容とする訴訟行為を公訴の提起というが、この提起された公訴の目的を達成するため、終局判決を得るまでに検察官が行う公判廷における主張・立証、公判準備などの活動を指す。
 「刑の執行」とは、犯罪に対して科される制裁を刑といい、刑法第2章に規定された死刑、懲役、禁錮、罰金、拘留、科料、没収、追徴及び労役場留置の刑又は処分を具体的に実施することをいう。保護観察、勾留の執行、保護処分の執行、観護措置の執行、補導処分の執行、監置の執行についても、刑の執行に密接に関連するものでもあることから、公にすることにより保護観察等に支障を及ぼし、公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがある情報は、不開示とする。

(2)「公共の安全と秩序の維持」とは、犯罪の予防、鎮圧又は捜査、公訴の維持及び刑の執行に代表される刑事法の執行を中心としたものを意味する。

 刑事訴訟法以外の特別法により、臨検・捜索・差押え、告発等が規定され、犯罪の予防・捜査とも関連し、刑事司法手続に準ずるものと考えられる犯則事件の調査、独占禁止法違反の調査等や、犯罪の予防・捜査に密接に関連する破壊的団体(無差別大量殺人行為を行った団体を含む。)の規制、暴力団員による不当な行為の防止、つきまとい等の規制、強制退去手続に関する情報であって、公にすることにより、公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあるものは、不開示となる。
 また、公にすることにより、テロ等の人の生命、身体、財産等への不法な侵害や、特定の建造物又はシステムへの不法な侵入・破壊を招くおそれがあるなど、犯罪を誘発し、又は犯罪の実行を容易にするおそれがある情報や被疑者・被告人の留置・勾留に関する施設保安に支障を生ずるおそれのある情報も、不開示となる。

2 「おそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報」

 公にすることにより、犯罪の予防、鎮圧、捜査等の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがある情報については、その性質上、開示・不開示の判断に犯罪等に関する将来予測としての専門的・技術的判断を要することなどの特殊性が認められることから、国の安全等に関する情報と同様、司法審査の場においては、裁判所が、本号に規定する情報に該当するかどうかについての文化庁長官の第一次的な判断を尊重し、その判断が合理性を持つ判断として許容される限度内のものであるか(「相当の理由」があるか)否かについて審理・判断することになる。

5.法第5条第5号関係(審議、検討等に関する情報)

1 「国の機関、独立行政法人等、地方公共団体及び地方独立行政法人の内部又は相互間」

 「国の機関」とは、国会、内閣、裁判所及び会計検査院(これらに属する機関を含む。)を指し、これらの機関、独立行政法人等、地方公共団体及び地方独立行政法人について、それぞれの機関の内部又は他の機関との相互間の意味である。

2 「審議、検討又は協議に関する情報」

 国の機関、独立行政法人等、地方公共団体又は地方独立行政法人の事務及び事業について意思決定が行われる場合に、その決定に至るまでの過程においては、例えば、具体的な意思決定の前段階としての政策等の選択肢に関する自由討議のようなものから、一定の責任者の段階での意思統一を図るための協議や打合せ、決裁を前提とした説明や検討、審議会等又は行政機関が開催する有識者、関係法人等を交えた研究会等における審議や検討など、様々な審議、検討及び協議が行われており、これら各段階において行われる審議、検討又は協議に関連して作成され、又は取得された情報をいう。

3 「率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ」

 公にすることにより、外部からの圧力や干渉等の影響を受けることなどにより、率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれがある場合を想定したもので、適正な意思決定手続の確保を保護利益とするものである。
例えば

  • 審議、検討等の場における発言内容が公になると、発言者やその家族に対して危害が及ぶおそれがある場合(法第5条第4号にも該当)
  • 行政機関内部の政策の検討がまだ十分でない情報が公になり、外部からの圧力により当該政策に不当な影響を受けるおそれがある場合
    などがこれにあたる。

4 「不当に国民の間に混乱を生じさせるおそれ」

 未成熟な情報や事実関係の確認が不十分な情報などを公にすることにより、国民の誤解や憶測を招き、不当に国民の間に混乱を生じさせるおそれがある場合をいう。
例えば、特定の物資が将来不足することが見込まれることから、政府として取引の規制が検討されている段階で、その検討情報を公にすれば、買い占め、売り惜しみ等が起こるおそれがある場合などが想定される。

5 「特定の者に不当に利益を与え若しくは不利益を及ぼすおそれ」

 尚早な時期に情報や事実関係の確認が不十分な情報などを公にすることにより、投機を助長するなどして、特定の者に不当に利益を与え又は不利益を及ぼす場合を想定したもので、事務及び事業の公正な遂行を図るとともに、国民への不当な影響が生じないようにする趣旨である。
 例えば、

  • 施設等の建設計画の検討状況に関する情報が開示されたために、土地の買い占めが行われて土地が高騰し、開示を受けた者等が不当な利益を得るおそれがある場合 
  • 違法行為の事実関係についての調査中の情報が開示されたために、結果的に違法・不当な行為を行っていなかった者が不利益を被るおそれがある場合
    などがこれにあたる。

6 「不当に」

 「不当に」とは、審議、検討等途中の段階の情報を公にすることの公益性を考慮してもなお、適正な意思決定の確保等への支障が看過し得ない程度のものを意味する。予想される支障が「不当」なものかどうかの判断は、当該情報の性質に照らし、公にすることによる利益と不開示にすることによる利益とを比較衡量した上で判断する。

 
7 意思決定後の取扱い等

 審議、検討等に関する情報については、行政機関としての意思決定が行われた後は、一般的には、当該意思決定そのものに影響が及ぶことはなくなることから、本号の不開示情報に該当する場合は少なくなるものと考えられるが、当該意思決定が政策決定の一部の構成要素であったり、当該意思決定を前提として次の意思決定が行われる等審議、検討等の過程が重層的、連続的な場合には、当該意思決定後であっても、政策全体の意思決定又は次の意思決定に関して本号に該当するかどうかの検討を行う。また、当該審議、検討等に関する情報が公になると、審議、検討等が終了し意思決定が行われた後であっても、国民の間に混乱を生じさせたり、将来予定されている同種の審議、検討等に係る意思決定に不当な影響を与えるおそれがある場合等があれば、不開示となり得る。
 なお、審議、検討等に関する情報の中に調査データ等で特定の事実を記録した情報があった場合、例えば、当該情報が専門的な検討を経た調査データ等の客観的、科学的事実やこれに基づく分析等を記録したものであれば、一般的に本号に該当する可能性が低い。

6.法第5条第6号関係(事務又は事業に関する情報)

1 「次に掲げるおそれその他当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの」(法第5条第6号本文)

(1)「次に掲げるおそれ」

 「次に掲げるおそれ」として本号のイからホまでに掲げたものは、各機関共通的に見られる事務又は事業に関する情報であって、その性質上、公にすることにより、その適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると考えられる典型的な支障を挙げたものである。これらの事務又は事業の外にも、同種のものが反復されるような性質の事務又は事業であって、ある個別の事務又は事業に関する情報を開示すると、将来の同種の事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの等、「その他当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれ」があり得る。

(2)「当該事務又は事業の性質上」

 当該事務又は事業の本質的な性格、具体的には、当該事務又は事業の目的、その目的達成のための手法等に照らして、その適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるかどうかを判断する。

(3)「適正な遂行に支障を及ぼすおそれ」

 「適正な遂行に支障を及ぼすおそれ」があるか否かは、各規定の要件の該当性を客観的に判断する必要がある。また、事務又は事業がその根拠となる規定・趣旨に照らし、公益的な開示の必要性等の種々の利益を衡量した上で「適正な遂行」と言えるものであることが求められる。「支障」の程度は名目的なものでは足りず実質的なものが要求され、「おそれ」の程度も単なる確率的な可能性ではなく、法的保護に値する蓋然性が要求される。

2 「監査、検査、取締り、試験又は租税の賦課若しくは徴収に係る事務に関し、正確な事実の把握を困難にするおそれ又は違法若しくは不当な行為を容易にし、若しくはその発見を困難にするおそれ」(法第5条第6号イ)

(1)「監査」とは、主として監察的見地から、事務又は事業の執行又は財産の状況の正否を調べることをいう。

 「検査」とは、法令の執行確保、会計経理の適正確保、物資の規格、等級の証明等のために帳簿書類その他の物件等を調べることをいう。
 「取締り」とは、行政上の目的による一定の行為の禁止、又は制限について適法、適正な状態で確保することをいう。
 「試験」とは、人の知識、能力等又は物の性能等を試すことをいう。
 「租税の賦課若しくは徴収」とは、国又は地方公共団体が、公租公課を特定の人に割り当てて負担させること又は租税その他の収入を取ることをいう。

(2)「正確な事実の把握を困難にするおそれ又は違法若しくは不当な行為を容易にし、若しくはその発見を困難にするおそれ」

 例えば、監査等の対象、実施時期、調査事項等の詳細な情報、試験問題のように、事前に公にすれば、適正かつ公正な評価や判断の前提となる事実の把握が困難となったり、行政客体における法令違反行為又は法令違反に至らないまでも妥当性を欠く行為を助長したり、巧妙に行うことにより隠蔽をするなどのおそれがあるものは、不開示とする。また、事後であっても、違反事例等の詳細についてこれを公にすると他の行政客体に法規制を免れる方法を示唆するようなものは該当し得る。

3 「契約、交渉又は争訟に係る事務に関し、国、独立行政法人等、地方公共団体又は地方独立行政法人の財産上の利益又は当事者としての地位を不当に害するおそれ」(法第5条第6号ロ)

(1)「契約、交渉又は争訟」

 「契約」とは、相手方との意思表示の合致により法律行為を成立させることをいう。
 「交渉」とは、当事者が、対等の立場において相互の利害関係事項に関し一定の結論を得るために協議、調整などの折衝を行うことをいう。
 「争訟」とは、訴えを起こして争うことをいう。訴訟、行政不服審査法に基づく不服申立てその他の法令に基づく不服申立てがある。

(2)「国、独立行政法人等、地方公共団体又は地方独立行政法人の財産上の利益又は当事者としての地位を不当に害するおそれ」

 国、独立行政法人等、地方公共団体又は地方独立行政法人が一方の当事者となる上記の契約等においては、自己の意思により又は訴訟手続上、相手方と対等な立場で遂行する必要があり、当事者としての利益を保護する必要がある。
 例えば、

  • 入札予定価格等を公にすることにより、公正な競争により形成されるべき適正な額での契約が困難になり財産上の利益が損なわれる場合
  • 交渉や争訟等の対処方針等を公にすることにより、当事者として認められるべき地位を不当に害するおそれがある場合
    などは不開示となる。

4 「調査研究に係る事務に関し、その公正かつ能率的な遂行を不当に阻害するおそれ」(法第5条第6号ハ)

 例えば、
 知的所有権に関する情報、調査研究の途中段階の情報などで、一定の期日以前に公にすることにより成果を適正に広く国民に提供する目的を損ね、特定の者に不当な利益や不利益を及ぼすおそれがあるもの
試行錯誤の段階のものについて、公にすることにより、自由な発想、創意工夫や研究意欲が不当に妨げられ、減退するなど、能率的な遂行を不当に阻害するおそれがある場合には、このような情報を不開示とする。

5 「人事管理に係る事務に関し、公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれ」(法第5条第6号ニ)

 国の機関、独立行政法人等、地方公共団体又は地方独立行政法人が行う人事管理(職員等の任免、懲戒、給与、研修その他職員等の身分や能力等の管理に関すること)に係る事務については、当該機関の組織としての維持の観点から行われる一定の範囲で当該組織の独自性を有するものである。
 人事管理に係る事務に関する情報の中には、例えば、勤務評価や、人事異動、昇格等の人事構想等を公にすることにより、公正かつ円滑な人事の確保が困難になるおそれがあるものがあり、このような情報を不開示とするものである。

6 「独立行政法人等、地方公共団体が経営する企業又は地方独立行政法人に係る事業に関し、その企業経営上の正当な利益を害するおそれ」(法第5条第6号ホ)

 独立行政法人等、地方公共団体が経営する企業(地方公営企業法第2条の適用を受ける企業をいう。)又は地方独立行政法人に係る事業については、企業経営という事業の性質上、その正当な利益を保護する必要があり、これを害するおそれがあるものを不開示とする。ただし、正当な利益の内容については、経営主体、事業の性格、内容等に応じて判断する必要があり、その開示の範囲は法第5条第2号の法人等とは当然異なり、独立行政法人等、地方公共団体が経営する企業又は地方独立行政法人に係る事業に関する情報の不開示の範囲は、より狭いものとなる場合があり得る。

第5 部分開示に該当するか否かの基準(法第6条関係)

1 法第6条第1項関係

(1)「開示請求に係る行政文書の一部に不開示情報が記録されている場合」

 一件の行政文書に複数の情報が記録されている場合に、各情報ごとに、法第5条に規定する不開示情報に該当するかどうかを審査した結果、不開示情報に該当する情報がある場合に、部分的に開示できるか否かの判断を行うものとする。

(2)「容易に区分して除くことができるとき」

 当該行政文書のどの部分に不開示情報が記載されているかという記載部分の区分けが困難な場合だけではなく、区分けは容易であるがその部分の分離が技術的に困難な場合も部分開示の義務はない。「区分」とは、不開示情報が記録されている部分とそれ以外の部分とを概念上区分けすることを意味し、「除く」とは、不開示情報が記録されている部分を、当該部分の内容が分からないように墨塗り、被覆等を行い、行政文書から物理的に除去することを意味する。容易に区分して除くことができない場合として以下の例が想定される。

  • 文章として記録されている内容そのものには不開示情報は含まれないが、特徴のある筆跡により特定の個人を識別することができる場合
  • 録音されている発言内容自体には不開示情報が含まれていないとしても声により特定の個人を識別できる場合

 文書の記載の一部を除くことは、コピー機で作成したその複写物に墨を塗り再複写するなどして行うことができ、一般的には容易である。なお、部分開示の作業に多くの時間・労力を要することは、直ちに、区分し、分離することが困難であるということにはならない。
 一方、録音、録画、磁気ディスクに記録されたデータベース等の電磁的記録については、複数の人の発言が同時に録音されているがそのうち一部の発言内容のみに不開示情報が含まれている場合や、録画されている映像中に不開示情報が含まれている場合などでは、不開示情報部分のみを除去することが容易ではないことがあり得る。このような場合には、容易に区分して除くことができる範囲で、開示すべき部分を決定する。なお、電磁的記録について、不開示部分と開示部分の分離が既存のプログラムでは行えない場合は、「容易に区分して除くことができない場合」に該当する。

(3)「当該部分を除いた部分につき開示しなければならない。」

 部分的に削除すべき範囲は、文書であれば、一般的には、文、段落等、表であれば個々の欄等を単位として判断する。
部分開示の実施に当たり、具体的な記述をどのように削除するかの方法の選択については、文化庁長官が、本法の目的に沿った範囲で、当該方法を講ずることの容易さ等を考慮して決定する。

(4)「有意の情報が記録されていないと認められるときは、この限りではない。」

 「有意の情報が記録されていないと認められるとき」とは、説明責任が全うされるようにするとの観点から、不開示情報が記録されている部分を除いた残りの部分に記載されている情報の内容が、開示をしても意味がないと認められる場合を意味する。例えば、残りの部分に記載されている内容が、無意味な文字、数字等の羅列となる場合等である。この「有意」性の判断に当たっては、同時に開示される他の情報があればこれも併せて判断する。
 「有意」性の判断は、開示請求者が知りたいと考える事柄との関連によって判断すべきものではなく、個々の請求者の意図によらず、客観的に決めるものとする。

2 法第6条第2項関係

(1)「開示請求に係る行政文書に前条第1号の情報(特定の個人を識別することができるものに限る。)が記録されている場合」

 氏名等の部分だけを削除して残りの部分を開示しても個人の権利利益保護の観点から支障が生じないときには、部分開示とする。

(2)「当該情報のうち、氏名、生年月日その他の特定の個人を識別することができることとなる記述等の部分を除くことにより、公にしても、個人の権利利益が害されるおそれがないと認められるとき」

 個人を識別させる要素を除去することにより誰の情報であるかが分からなくなれば、残りの部分については、通常、個人情報としての保護の必要性は乏しくなるが、個人識別性のある部分を除いても、開示することが不適当であると認められるものもある。例えば、カルテ、作文などの個人の人格と密接に関連する情報や、個人の未公表の研究論文等開示すると個人の権利利益を害するおそれがあるものである。
このため、個人を識別させる部分を除いた部分について、公にしても、個人の権利利益を害するおそれがないものに限り、部分開示の規定を適用する。

(3)「当該部分を除いた部分は、同号の情報に含まれないものとみなして、前項の規定を適用する。」

 第1項の規定により、部分開示の範囲を決定するに当たっては、個人識別情報のうち、特定の個人を識別することができることとなる記述等以外の部分は、個人の権利利益を害するおそれがない限り、法第5条第1号に規定する不開示情報ではないものとして取り扱うことになる。したがって、他の不開示情報の規定に該当しない限り、当該部分は開示されることになる。
 また、第1項の規定を適用するに当たっては、容易に区分して除くことができるかどうかが要件となるので、個人を識別させる要素とそれ以外の部分とを容易に区分して除くことができない場合には、当該個人に関する情報は全体として不開示となることになる。なお、個人を識別することができる要素は、法第5条第1号イ~ハのいずれかに該当しない限り、部分開示の対象とならない。

第6 公益上の理由による裁量的開示に該当するか否かの基準(法第7条関係)

1 「公益上特に必要があると認めるとき」とは、法第5条各号の不開示情報の規定に該当する情報であるが、文化庁長官の高度の行政的な判断により、公にすることに、当該保護すべき利益を上回る公益上の必要性があると認められる場合をいう。

2 本条の適用に関しては、公益上特に必要と認めたにもかかわらず行政文書を開示しないことは想定できないが、公益上の必要性の認定についての文化庁長官の要件裁量は認められる。

第7 行政文書の存否に関する情報に該当するか否かの基準(法第8条関係)

1 「開示請求に係る行政文書が存在しているか否かを答えるだけで、不開示情報を開示することとなるとき」

 開示請求に係る行政文書が具体的にあるかないかにかかわらず、開示請求された行政文書の存否について回答すれば、不開示情報を開示することとなる場合をいう。開示請求に含まれる情報と不開示情報該当性とが結合することにより、当該行政文書の存否を回答できない場合もある。例えば、特定の個人の名を挙げて、その病歴情報が記録された文書の開示請求があった場合、当該行政文書に記録されている情報は不開示情報に該当するので、不開示であると答えるだけで、当該個人の病歴の存在が明らかになってしまう。このような特定の者又は特定の事項を名指しした探索的請求は、法第5条各号の不開示情報の類型すべてについて生じ得る。
 具体的には、次のような例が考えられる。 特定の個人の病歴に関する情報(第1号)
 先端技術に関する特定企業の設備投資計画に関する情報(第2号)
 情報交換の存在を明らかにしない約束で他国等との間で交換された情報(第3号)
 犯罪の内偵捜査に関する情報(第4号)
 買い占めを招くなど国民生活に重大な影響を及ぼすおそれのある特定の物質に関する政策決定の検討状況の情報(第5号)
 特定分野に限定しての試験問題の出題予定に関する情報(第6号)

2 「当該行政文書の存否を明らかにしないで、当該開示請求を拒否することができる」

 行政文書の存否を明らかにしないで、当該開示請求を拒否する決定も、申請に対する処分であることから、行政手続法第8条に基づき、処分の理由を示す必要がある。提示すべき理由の程度としては、開示請求者が拒否の理由を明確に認識し得るものであることが必要である。また、個別具体的な理由提示の程度については、当該情報の性質、内容、開示請求書の記載内容等を踏まえ、請求のあった行政文書の存否を答えることにより、どのような不開示情報を開示することになるかをできる限り具体的に提示することになる。
 また、存否を明らかにしないで拒否することが必要な類型の情報については、常に存否を明らかにしないで拒否することが必要である。例えば、行政文書が存在しない場合に不存在と答えて、行政文書が存在する場合にのみ存否を明らかにしないで拒否したのでは、開示請求者に当該行政文書の存在を類推させることになる。

お問合せ先

大臣官房総務課文書情報管理室

(大臣官房総務課文書情報管理室)

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