第3章   教育振興基本計画の在り方について

教育振興基本計画策定の必要性
     
     前章では,「新しい時代にふさわしい教育基本法の在り方について」これまでの議論の集約を行ったが,そこでも述べたとおり,教育の基本理念,基本原則の見直しとともに,具体的な教育制度の改善と施策の充実,さらに,国民一人一人の意識改革とがあいまって,はじめて教育改革が実効あるものになる。
       近年,「環境」「科学技術」「男女共同参画」「食料・農業・農村」など,行政上の様々な重要分野について,基本法が制定されるとともに,それぞれの基本法に基づく基本計画が策定されている。これらの計画には,施策の基本方針や目標,各種の具体的な施策,施策を推進するために必要な事項等が,総合的・体系的に盛り込まれ,国民に分かりやすく示されるとともに,閣議決定を経て政府全体の重要課題と位置付けられている。
     
     しかしながら,各分野の基本法のうち最初に制定された教育基本法には,基本計画に関する規定が置かれていないため,現在まで,教育に関する政府全体の基本計画は策定されていない。また,教職員定数改善計画,国立大学施設整備計画,コンピュータ整備計画,留学生受け入れ10万人計画など,個々の施策の計画は策定されてきたが,教育全体に及ぶ総合的な施策の体系としての計画が作られてきたわけではない。最近では「21世紀教育新生プラン」のように教育施策を総合的に体系化して国民に分かりやすく示す試みも行われているが,これは,文部科学省の施策の枠内で取りまとめられたものであり,政府全体として教育のより明確な位置付けが望まれる。
       政府として,未来への先行投資である教育を重視するという明確なメッセージを国民に伝えるためにも,また,施策を国民に分かりやすく示すという政府としての説明責任を果たすためにも,教育の根本法である教育基本法に根拠を置いた,教育振興に関する基本計画を策定することが重要である。
     
     このため,本審議会では,教育振興基本計画の策定に関する根拠規定を教育基本法上明確に位置付けることを前提に,計画の骨格となる基本的考え方を審議し,「2教育振興基本計画の基本的考え方」として示すこととした。
       また,本審議会では,これまでの計画に関する様々な議論を「3教育振興基本計画に盛り込むべき施策の基本的な方向」及び「(参考)計画に盛り込むことが考えられる具体的な政策目標の例」として取りまとめた。これらは,そのまま基本計画となるものではないが,これから計画を検討する際の参考に資するとともに,基本計画のイメージをできるだけ分かりやすく示すためのものである。
     
     今後,本審議会の関係分科会等において,より専門的な立場から,計画に盛り込むべき政策目標や施策の具体的な検討を行う必要がある。また,教育基本法改正後,法の理念を実現するために必要な諸施策の実施につき,関係府省に対しても幅広く協力を求め,政府全体として教育振興基本計画を速やかに策定されることを期待したい。
教育振興基本計画の基本的考え方
   
  (1) 計画期間と対象範囲
       計画期間については,あまり長期間に設定した場合,社会や時代の変化との乖離が大きくなるおそれがあることを考慮し,おおむね5年間とすることが適当であると考える。また,計画については定期的に政策評価を実施し,その結果を踏まえながら必要に応じ見直しを行うものとする。なお,従来の教育関係の個別の計画には5年間程度を計画期間とするものが多く,また,他の基本法に基づく基本計画の多くも計画期間は5年間に設定されている。
         計画の対象範囲は,原則として教育に関する事項とし,高等教育と密接に関連する学術や,スポーツ,文化芸術教育等も,この計画に含めるものとする。
     
  (2) これからの教育の目標と教育改革の基本的方向
    (これからの教育の目標)
       教育振興基本計画では,まず第一に,これからの教育の目標と,その目標を達成するために,どのような方向に改革を進めていくべきかという教育改革の基本的方向を明らかにする必要がある。「これからの教育の目標」については,第1章2(3)で述べたように,以下のとおりとすることが適当である。
     
1 自己実現を目指す自立した人間の育成
2 豊かな心と健やかな体を備えた人間の育成
3 「知」の世紀をリードする創造性に富んだ人間の育成
4 新しい「公共」を創造し,21世紀の国家・社会の形成に主体的に参画する日本人の育成
5 国際社会を生きる教養ある日本人の育成
    (教育改革の基本的方向)
       また,「教育改革の基本的方向」については,上記の教育の目標と第2章1(1)で述べた教育基本法見直しの視点を勘案して,以下のとおりとすることが適当である。
     
1 国民から信頼される学校教育の確立
  一人一人の個性に応じてその能力を最大限に伸ばす教育の推進
  豊かな心をはぐくむ教育の推進
  健やかな体をはぐくむ教育の推進
  グローバル化,情報化等社会の変化に的確に対応する教育の推進
2 「知」の世紀をリードする大学改革の推進
3 家庭の教育力の回復,家庭・学校・地域社会の連携・協力の推進
4 生涯学習社会の実現
     
  (3) 政策目標の設定と施策の総合化・体系化,重点化
       次に,これからの教育の目標と教育改革の基本的方向を踏まえて,計画には具体的な政策目標と施策を明記する必要がある。政策目標の策定に際しては,国民に分かりやすい目標を設定することが重要である。また,政策目標のうち可能なものについてはできる限り数値化するなど,達成度の評価を容易にし,施策の検証に役立つよう留意する必要がある。計画の策定に際しては,10年後の社会の姿を見通しながら,今後5年間に重点的に取り組むべき分野・施策を明確にする必要がある。
       なお,計画の策定に当たっては,施策を総合化・体系化する必要があること,施策の優先順位を明確化し,重点化を図る必要があること,これまでの答申等における提言がどれだけ実現されているかについての検証が必要であることに十分留意しなければならない。
       
  (4) 計画の策定,推進に際しての必要事項
    (教育投資の充実)
       教育は我が国社会の存立基盤であり,国家戦略として人材教育立国,科学技術創造立国を目指すためには,計画に定められた施策を着実に推進していく必要がある。一方,現在の厳しい財政状況の下で,未来への先行投資である教育投資の意義について,国民の支持・同意を得るためには,今まで以上に教育投資の質の向上を図り,投資効果を高めることにより,その充実を図っていくことが重要である。そのためには,上記で述べたように,施策の総合化・体系化,重点化によって教育投資の効率化に努めるとともに,厳格な政策評価の結果を適切に反映させる必要がある。
    (国と地方公共団体,官民の適切な役割分担)
       計画の策定に際しては,教育における地方分権,規制改革を一層推進するとともに,教育の機会均等や全国的な教育水準の維持向上を図る観点から,国が責任を負うべき施策と地方公共団体が責任を負うべき施策を明確に区別した上で,相互の連携・協力が図られるようにする必要がある。また,職業能力開発など関係行政分野との連携・協力に努めるとともに,行政と民間との間の適切な役割分担,連携・協力にも配慮する必要がある。
    (厳格な政策評価の実施)
       厳格な政策評価を定期的に実施し,政策目標の達成状況や施策に対する投資効果を明らかにするとともに,その結果を計画の見直しや次期計画に適切に反映させていく必要がある。また,国民に対する説明責任を果たすため,白書などを通じて評価結果の積極的な広報を行うとともに,国民からの意見を計画に適切に反映させる必要がある。
 
教育振興基本計画に盛り込むべき施策の基本的な方向
     
 
   今後,関係分科会等においては,以下のような基本的な方向に沿って,計画に盛り込むべき施策を検討することが適当である。
     
(1) 国民から信頼される学校教育の確立
    1 一人一人の個性に応じてその能力を最大限に伸ばす教育の推進
      1)「確かな学力」の育成
         生涯にわたって自らの能力を高め,自己実現を目指そうとする意欲や態度が一人一人に求められるこれからの時代にあって,学校教育においてまず重視しなければならないことは,「確かな学力」の育成,すなわち,基礎・基本を徹底し,知識,技能とともに自ら学ぶ意欲,思考力,判断力,表現力などを養うことである。また,生涯にわたって学び続けていく上で不可欠な学習の方法を一人一人の子どもが習得できるような教育を充実し,教育内容を適切に検証することで不断にその改善を図っていくことが大切である。このような観点から,今後,以下の方向で施策を検討すべきと考える。
     
基礎・基本の徹底
学ぶ意欲や態度を育てる教育の充実
思考力・表現力・問題解決能力を育てる教育の充実
国語力の育成などコミュニケーション能力の向上
「学び方」,「調べ方」を習得させる教育の充実
「確かな学力」の育成のための指導方法の改善
全国的な学力テストの実施等による児童生徒の学力の全国的な状況の検証等に基づく教育の改善・充実
少人数指導や習熟度別指導を可能とする教職員定数の改善
      2)個性,才能を伸ばす教育の実現
         教育においては,基礎・基本を徹底し,「確かな学力」を育成することにより,一人一人の多様な才能を開花させ,社会の様々な分野で活躍する創造的な人材を育成していくことも重要である。そのためには,職業観・勤労観の育成とともに,各人に備わった個性や才能を発見・認識させ,これらを将来の職業選択なども見据えつつ各人のニーズに応じて伸ばしていくことが必要である。このような教育が実現することにより,各人が,かけがえのない人生を充実感を持って送ることが可能となり,それはまた,地方分権が進む中で,各地域が特色を発揮しながら発展すること,ひいては,我が国の社会全体の活性化にもつながるものである。このような観点から,今後,以下の方向で施策を検討すべきと考える。
     
才能を伸ばす機会の確保
習熟の程度等に応じた補充的・発展的な学習の充実
語学,理数,技術等,特定の専門分野に重点を置いた教育の推進
将来の生き方や職業を主体的に選択・決定できるようにするためのキャリア教育の充実
障害のある子ども一人一人の教育的ニーズに応じた教育の充実
      3)科学的素養を育成する教育の推進
         科学技術の発展がもたらす新たな課題に対し,国民が正確な科学的知識に基づいた判断や自己決定を行うためには,国民の理科・科学技術に関する理解を増進する努力を行い,科学的な見方や考え方を育成する必要がある。また,このような豊かな科学的素養を育成することは,我が国が科学技術創造立国を目指していくに当たって不可欠である。このような観点から,今後,以下の方向で施策を検討すべきと考える。
     
子どもの知的好奇心や探究心の涵養
基礎的な科学的知識や技能の習得
科学的・合理的・主体的な思考力・判断力の育成
      4)柔軟な教育の仕組みの導入
         義務教育をはじめとする学校教育は,子どもの能力を伸ばし,その自己実現を支援する上でも,また,心身ともに健康な国民の育成を図る上でも,今後とも中心的な役割を果たすことが期待されている。特に,義務教育の充実を図ることは重要である。他方,人々の価値観が多様化し,地方分権が進む中,子どもや学校の実情に対応する柔軟性を備えた制度の構築や,その弾力的な運用が必要となってきている。このような観点から,今後,以下の方向で施策を検討すべきと考える。
     
幼小,小中,中高などの異校種間連携を含めた学校間連携の推進
学校選択の適切な実施
就学時期の弾力化の検討
地域が学校運営に参加する学校など新しいタイプの学校の設置の検討
やり直しのきく開かれた学校システムの検討
      5)優れた教員の養成・確保
         学校教育の成否は,その直接の担い手として,日々子どもに接し,その人格形成に大きな影響を与えている教員の資質能力に負うところが大きい。教員が,子どもにとって魅力のある,そして教育専門職としての力量を備えた存在であるためには,教員の養成及び採用の各段階における資質能力の水準の確保や,採用後の研修等を通じた継続的な資質向上の取組,また,教員の能力や実績等を適切に評価し,処遇に結び付けることや,学校教育において幅広い人材を活用することが有効である。また,学校において,校長を中心として,すべての教職員が一致協力して学校運営に取り組むことが重要であり,これらの教職員の専門性の向上を図ることが必要である。義務教育費国庫負担制度については,義務教育の水準を全国的に確保するため,教職員の給与費について,一定の財源を国の責任として安定的に保障しているものである。国が一定の責任を負いながらナショナルミニマムとしての義務教育の水準を確保するという制度の根幹は今後とも堅持しつつ,義務教育についての国の責任,地方分権,地方教育行政制度の在り方等義務教育に関わる様々な観点からの見直しの中で,その在り方について検討していく必要がある。このような観点から,今後,以下の方向で施策を検討すべきと考える。
     
使命感と能力を備えた教員の養成と確保
教職員の指導力,専門性の向上
新たな教員の評価システムの導入
不適格な教員に対する厳格な対応
学校教育における幅広い人材の活用の促進
義務教育費国庫負担制度の見直し
公立学校の教員給与制度の見直し
教員配置に関する市町村の権限と責任を拡大する観点からの教職員定数の在り方の弾力化
      6)教育施設・設備等の整備・充実
         少子化の進行に伴い,児童生徒一人当たりの校舎保有面積は増加を続けているが,一方で施設の老朽化が進み,破損や雨漏り等の問題が顕在化してきている。また,阪神・淡路大震災の経験を踏まえた学校施設の耐震化や,子どもの安全確保を図るための学校施設づくりも急務となっている。さらに,良好な教育環境を確保するため,施設・設備の充実に努めていく必要があるが,この点に関しては,例えば,地域の実情等に応じて空調設備の整備を進めるべきといった意見もある。このような観点から,今後,以下の方向で施策を検討すべきと考える。
     
学校施設の耐震化・老朽化対策など,安全で快適な教育施設の整備・充実
教育設備,教材教具等の整備・充実
      7)保護者・住民に信頼される学校づくり
         子どもの健全育成を図る上で,学校,家庭,地域の三者が,それぞれ責任を持って自らの役割を果たしつつ,相互に緊密に連携しながら教育に当たることが重要である。このためには,三者が子どもの教育に関する情報を共有することで,子どもが安心して通うことのできる学校づくりを目指すことが求められる。また,学校は,教育活動などの学校運営の状況について評価を行い,その結果に基づいて改善を図るとともに,評価結果を含めた学校の情報を保護者等へ提供し,学校としての説明責任を果たすことが必要である。さらに,学校の安全管理の徹底を図ることは,信頼される学校づくりの基本であり,三者が連携して継続的な取組を行っていく必要がある。このような観点から,今後,以下の方向で施策を検討すべきと考える。
     
学校の評価と情報提供の推進
学校におけるマネジメント体制の確立と責任の明確化
学校運営に対する保護者や地域住民の意向を反映させるシステムの確立
安全な学校づくりと子どもの心のケアの充実
      8)私立学校教育の振興
         私立学校は,生徒数において大きな割合を占めるとともに,建学の精神に基づく特色ある教育を展開しており,質・量共に我が国の公教育の重要な一翼を担っている。したがって,公私を通じた全国的な初等中等教育水準の維持向上のため,特色を生かした教育を展開している私立学校の振興に努める必要がある。このような観点から,今後,以下の方向で施策を検討すべきと考える。
     
特色のある私立小中学校の設置の促進
私学助成の充実
    2 豊かな心をはぐくむ教育の推進
      1)豊かな心の育成,自立心の育成
         どんなに便利な世の中になっても,人々が豊かな心を持てなければ,本当に豊かな社会とは言えない。子どもの豊かな心をはぐくみ,次代に引き継いでいくことは,これからの教育においても一貫して重視されなければならない。しかし,社会の中にあって人々が互いに豊かな心を持ち続けるためには,他者を思いやる心や美しいものに感動する心,自然や生命を大切にし,人権を尊重するなどの基本的な倫理観等を各人が有することのみならず,特に心身の成長期にある子どもが現実に直面する諸問題を解決し,また,生活のあらゆる場面を通じて豊かな心を育てることができるよう,周囲の大人が適切に支援していくことが肝要である。このような観点から,今後,以下の方向で施策を検討すべきと考える。
     
道徳教育の充実
ボランティア活動や自然体験活動などの奉仕活動・体験活動の推進
情操をはぐくむ教育の充実
子どもの読書活動の推進
暴力行為,いじめ,不登校への対応等生徒指導の充実
      2)「公共」に主体的に参画する意識や態度の涵養
         よりよい国づくり,社会づくりを支えるのは,国民一人一人の自覚と行動である。このため,「公共」に主体的に参画する意識や態度を涵養する取組を重視していく必要がある。また,我々が個人としての自己実現を図りながらも,「個人」と不即不離の関係にある「公共」との調和の中で生活していくためには,社会的モラルや公共心,自立心,規範意識など,健全な社会の一員として必要な資質・意識とともに,より良い社会の実現に自分自身も主体的に貢献しようという「社会人」としての自覚を有することが当然に求められる。このような観点から,今後,以下の方向で施策を検討すべきと考える。
     
国家・社会の形成者としての資質を養う教育の充実
ボランティア活動や自然体験活動などの奉仕活動,体験活動の推進(再掲)
道徳教育の充実(再掲)
      3)日本人のアイデンティティと国際性の育成
         グローバル化が進展し,日本人は,国際社会という更に大きな社会集団の構成員として生活する機会が増加している。国際社会にあっては,それぞれ異なる歴史,伝統,文化,慣習,宗教等を有する各国が,互いの複雑な利害や需要・供給を調整しつつ,共存を図ることが必要となる。我々が他国を正しく理解するため,また,他国の人々に日本を正しく理解してもらうためには,まず我々自身が,生まれ育った郷土や日本について,正しく理解するとともに,郷土や国を愛しより良いものにしていこうとする姿勢を持つことが必要である。そのような日本人としての確実な基礎を築くことで,我々は個人としても,多様な価値観や歴史的・文化的背景を異にする国際社会において認められ尊敬される存在になり,また,我が国も,国際社会における地位をより高めていくことができる。このような観点から,今後,以下の方向で施策を検討すべきと考える。
     
我が国の歴史,伝統,文化等に関する理解と愛情を深め,他国の異なる歴史,文化等を理解し尊重する態度の育成
郷土や国を愛する心をはぐくむ教育の推進
国際理解教育の充実
文化財を活用した教育の推進
学校及び地域における文化芸術に関する学習や体験活動の充実
      4)文化芸術教育・学習の推進
         21世紀において,我が国が心豊かな社会を実現するためには,社会全体で文化芸術を大切にし,支えていくことが求められる。このため,国民一人一人が,文化芸術の担い手であるという意識を持ち,身近な事柄として文化芸術を大切にしていく必要がある。特に,将来の文化を担う子どもに豊かな感性や創造性をはぐくむことが重要であり,学校教育において,優れた文化芸術に直接触れ,親しみ,創造する機会を持つことができるよう,文化芸術に関する学習や体験の機会の充実が図られる必要がある。また,技術,知性,感性の力で日々の暮らしや生活空間をより快適で潤いのある,環境に優しいスタイルに作り変えていこうとする,言わば21世紀にふさわしい暮らしの「デザイン」に対する関心と感性を高めていくことも重要になってくる。このような観点から,今後,以下の方向で施策を検討すべきと考える。
     
学校及び地域における文化芸術に関する学習や体験活動の充実(再掲)
文化芸術活動の指導者の確保,活用
      5)幼児教育の充実
         幼児期は,生涯にわたる人間形成の基礎が培われる極めて重要な時期である。この時期の教育では,基本的な生活習慣,創造的な思考の基礎,豊かな感性をはぐくみ,道徳性の芽生えを培うとともに,幼児期にふさわしい知的発達を促す体験などを行うことが重要である。また,近年の地域社会や家庭の急速な変化の中,幼稚園に求められるニーズが多様化するとともに,地域に開かれた幼児教育のセンターとしての幼稚園の重要性が一層高まっており,その期待に的確にこたえることが大切である。このような観点から,今後,以下の方向で施策を検討すべきと考える。
     
遊びの中で様々な体験を通じて,生きる力の基礎を培う幼児教育の充実
幼稚園の子育て支援機能の充実
多様な教育・保育ニーズへの対応
幼稚園・保育所と小学校以降の教育との連携の強化
    3 健やかな体をはぐくむ教育の推進
      1)健やかな体の育成に向けた取組の充実
         子どもがたくましく成長し,充実した人生を送るためには,健やかな体をはぐくむことが必要であり,「体・徳・知」のバランスの取れた成長を促すことが極めて重要である。また,社会全体が,このような体力や健康の重要性を正しく認識することが求められる。これからの教育においては,生涯にわたって積極的に運動に親しむ資質や能力,意欲を育成するとともに,スポーツをする習慣を定着させるための工夫が必要である。そのためには,子どもが自然に楽しくスポーツに親しめる工夫が必要であるとともに,スポーツの後のすがすがしい気持ちや達成感を味わわせることで,子どもがスポーツの醍醐味に触れることのできるきっかけを与えることが必要である。このため,多様なスポーツの機会を提供するとともに,より高いレベルに挑戦しようとする子どもに対しても,その意欲が十分に生かせるような環境を整えることが重要である。このような観点から,今後,以下の方向で施策を検討すべきと考える。
     
体力やスポーツの重要性についての理解を深めるための教育の充実
子どもが自ら体を動かすようになるための動機付けの工夫
子どもの運動する機会等の確保,教員や指導者の養成と確保
スポーツにおける学校と地域の連携の推進
より高い競技レベルに到達する機会の確保
      2)子どもに対する健康教育の推進
         近年の子どもは,体力,運動能力の低下傾向が続くとともに,肥満傾向の割合なども増加し,将来の生活習慣病への危険性が高まっている。また,心の健康の問題や青少年による薬物乱用など,子どもの健康に関する現代的な課題が深刻化している。この状況を踏まえ,健康の価値を認識し,自分自身を大切にする態度の育成など,生涯にわたる心身の健康の保持に必要な知識,習慣等を身に付けさせなければならない。このような観点から,今後,以下の方向で施策を検討すべきと考える。
     
健康に関する現代的な課題に適切に対応するための教育の充実
体力の向上に資する子どもの生活習慣の改善
    4 グローバル化,情報化等社会の変化に的確に対応する教育の推進
      1)教育の国際化の推進
         グローバル化が急速に進展している現代においては,特に経済の分野における国境を越えた大競争を余儀なくされている一方,社会・文化・政治など,あらゆる分野における国際的な協調,あるいは国際的な理解が望まれている。そのためには,十分なコミュニケーション能力はもとより,国際的な視野と日本人としての確固たるアイデンティティとを併せ持ち,21世紀の国際社会の中で世界に貢献できる人材を育成していくことや教育交流を促進していくことが肝要である。このような観点から,今後,以下の方向で施策を検討すべきと考える。
     
国民全体の一定レベルの英語力の達成,国際社会で活躍できるコミュニケーション能力の向上
英会話活動の推進等小学校の英語教育の充実,中学・高等学校・大学における具体的な目標と一貫した指導方法に基づく英語教育の充実
留学生交流の推進
我が国の歴史,伝統,文化等に関する理解と愛情を深め,他国の異なる歴史,文化等を理解し尊重する態度の育成(再掲)
国際理解教育の充実(再掲)
海外子女や帰国・外国人児童生徒の教育の充実
      2)教育の情報化の推進
         日進月歩の勢いで革新を続ける情報通信技術は,多様な情報を国境を越えてリアルタイムに入手し発信することが可能な,高度情報通信ネットワーク社会の進展をもたらしている。このため,教育においては,IT環境の整備を推進するとともに,情報を主体的に取捨選択し,活用・発信する能力を身に付けさせる取組を行うことや,情報をめぐるルールやモラルの問題に積極的に対応する必要が生じている。このような観点から,今後,以下の方向で施策を検討すべきと考える。
     
IT環境の整備・充実
情報活用能力とモラルの育成
視聴覚メディアの効果的活用の促進
ITを活用した効果的な教育・学習の推進
「情報化の影の部分」への対応
      3)環境教育の推進
         高度経済成長期以降の大量生産・大量消費・大量廃棄型の社会経済活動や生活スタイルへの反省から,生産から消費,廃棄へと向かう一方通行型の経済社会構造を根本から見直そうとする動きが広がっている。教育の分野においても,社会を構成するあらゆる主体が,総力を結集して循環型社会の形成に寄与し,持続可能な社会の構築を目指すことが必要であるとの認識の下,積極的な取組を進めることが求められている。このような観点から,今後,以下の方向で施策を検討すべきと考える。
     
循環型社会の形成の意識の醸成
環境負荷の小さい教育施設の整備と環境教育への活用
     
  (2) 「知」の世紀をリードする大学改革の推進
      1)「知の拠点」を支える教育研究環境の整備
         これからの教育においては,知の世紀をリードする創造性に富んだ人材を育成することが重要である。このためには,国公私立を問わずすべての大学が適切なマネジメント体制の下で,大学間あるいは内外の研究機関等との間の人的交流を促進することや,学生が学業に専念できる仕組みを整えることなど,柔軟かつ安定的な大学の教育研究環境を整備することが必要である。これにより,大学は,世界のあらゆる知の分野で活躍し得る,高い能力を備えた人材を育成するための拠点となり得る。このような観点から,今後,以下の方向で施策を検討すべきと考える。
     
国立大学の法人化など高等教育機関におけるマネジメント体制の確立
教員・学生の流動化の促進
奨学金の充実などの学生支援の推進
施設・設備の充実
大学職員の専門性の向上
私学助成の推進による私立大学の教育研究環境の整備・充実
大学の設置認可の弾力化
若手研究者の育成・活用の機会の充実
高等教育機関相互の連携協力の強化
      2)教育研究機能の充実
         我が国の大学が世界に伍していけるだけの競争力を持つ健全な「知の拠点」となるための機能を継続的に果たしていくためには,基礎的な学問や教養に関する教育研究に加え,社会のニーズを敏感に読み取り,これに柔軟に対応することを可能にする教育研究機能を有すること,そして高度な教育研究への誘因(インセンティブ)を与えるような取組が求められる。このような観点から,今後,以下の方向で施策を検討すべきと考える。
     
国際競争力向上のための教育研究機能の質的向上,人材の招へい・集積
基礎的学問分野の教育研究機能の充実
社会のニーズに柔軟に対応した教育研究機能の強化
教養教育の再構築の推進
ITを活用した教育内容の豊富化・高度化の推進
競争的資金の充実による研究の振興
      3)評価制度の導入・整備
         我が国の大学が教育研究の質の向上を図るためには,自己点検・評価の充実とともに,第三者評価などを通じた多元的な評価システムの確立により,大学の教育研究の内容・方法の改善を積極的に図っていくことが重要である。このような観点から,今後,以下の方向で施策を検討すべきと考える。
     
自己点検・評価,第三者評価の実施と評価結果の公表
評価に基づく重点的な資源配分
大学評価における教育の評価の観点の重視
      4)社会・経済の発展への積極的貢献
         「知の拠点」としての大学は,今後,その閉鎖性を打破するとともに,その知的資源等をもって積極的に社会の発展に貢献する教育機関となることが重要となる。このため,地方公共団体や地域の企業と様々な形態で協力しながら教育・研究を行い,その成果を進んで地域に還元することが求められている。このような観点から,今後,以下の方向で施策を検討すべきと考える。
     
大学を核とする産官学連携の推進
大学から産業界への技術移転の推進
社会人の再教育機能の強化
     
  (3) 家庭の教育力の回復,学校・家庭・地域社会の連携・協力の推進
      1)家庭の教育力の向上
         家庭はすべての教育の原点であり,子どもが家族の愛情の下に教育され,家族の一員としての種々の役割を果たしながら成長を遂げてゆく重要な教育の場である。しかしながら,しつけや子育てに自信を持てない親が近年増加傾向にあると言われており,このことは,基本的な生活習慣や社会のルール,自立心や自制心などを身に付けないまま育つ子どもが増えるとともに,親自身の育児ノイローゼや児童虐待を引き起こす結果につながることもある。このため,親が人生最初の教師であることを自覚し,家庭の教育力を十分に発揮できるよう,家庭における教育を支援するための諸施策や,また子どもを産み育てやすい社会環境づくりを教育を通じて推進していくという条件整備を進める中で,家庭の教育力の充実を図っていくことが求められている。このような観点から,今後,以下の方向で施策を検討すべきと考える。
     
家庭教育に関する情報・学習機会の提供の充実
家庭教育についての相談体制の整備
父親の家庭教育への参画促進
      2)地域の教育力の向上
         子どもが生活し成長する場として,家庭・学校と並んで,地域もまた重要な役割を果たしている。地域の中で大人や様々な年齢の子どもと交流し,生活体験,社会体験,自然体験,文化芸術体験等の様々な体験を積み重ねることで,子どもは豊かな人間性や主体性,社会性,責任感などの資質をはぐくんでいくものである。このため,地域における教育の拠点である社会教育施設の充実を図るとともに,地域の大人が協力し,家庭や学校を巻き込みながら,地域の特色に応じた教育環境を築いていくことが求められている。このような観点から,今後,以下の方向で施策を検討すべきと考える。
     
大人の地域づくりへの参画の促進
地域における奉仕活動・体験活動や子どもの週末活動等の機会の充実
社会教育施設の活性化・高機能化
学校・家庭・地域の連携の推進
地域における読書活動の推進
     
  (4) 生涯学習社会の実現
      1)生涯学習社会の実現
         国民一人一人が,社会の変化に主体的に対応し,活力ある社会を築いていくためには,その個性や能力を生涯にわたって高め,最大限に発揮できるようにすることが不可欠である。また,近年,国民のライフスタイルは多様に変化し,生きがいづくりや余暇の活用,仕事以外での社会への参加,社会に貢献する活動への興味が高まってきている。このため,人々が,生涯のいつでも,どこでも,だれでも自由に学習機会を選択して学ぶことができ,その成果が適切に評価されるような生涯学習社会の構築がますます重要な課題となっている。このような観点から,今後,以下の方向で施策を検討すべきと考える。
     
社会・経済の変化や個人の学習ニーズに柔軟に対応した学習環境の整備
生涯学習の普及・啓発と情報提供の充実
生涯学習の成果の評価・認証体制の整備
地域の教育施設を活用した学習機会の提供の促進
      2)男女共同参画に関する教育・学習の推進
         男女が,互いにその人権を尊重しつつ責任も分かち合い,性別にかかわりなく,その個性と能力を十分に発揮することができる男女共同参画社会の実現は,我が国が活力を持って着実に発展を遂げるための極めて緊要な課題となっている。特に,このような社会を実現するためには,国民一人一人が性別に基づく固定的な役割分担意識を見直し,男女共同参画や自立の意識を有することが不可欠であり,こうした意識の涵養のために教育・学習が果たす役割は重要である。このような観点から,今後,以下の方向で施策を検討すべきと考える。
     
学校,家庭,地域など社会のあらゆる分野における男女共同参画の視点に立った教育・学習の推進,情報の提供
男女が各人の個性と能力を発揮するとともに多様な選択を可能にする教育・学習の推進
      3)生涯スポーツ社会の実現
         健康で充実し,潤いのある人生を送るためには,スポーツは欠かせないものであるという認識に立ち,子ども時代に身に付けた運動の習慣と意欲を社会に出た後も維持し,生涯にわたってスポーツを楽しんでいくためには,それぞれの年齢,体力や技術,興味,目的に応じたスポーツを楽しむ環境・条件を地域において整備し,生涯スポーツ社会の実現につなげていくことが不可欠である。また,地域のスポーツ活動に各自が積極的に参画する意識を持つとともに,住民が主体となった取組を積極的に奨励することも必要である。このような観点から,今後,以下の方向で施策を検討すべきと考える。
     
住民が主体的に参画する地域のスポーツクラブの育成促進
民間団体等の活力をスポーツ環境の整備に活用する取組の充実
ボランティア等の地域の力の活用の促進
各自のスポーツニーズに対応した質の高いスポーツ指導者の養成・確保
魅力あるスポーツ空間の確保