1 日 時:平成15年6月1日(日)13:30~16:00 2 会 場:ホテル全日空札幌「鳳」 3 次 第:
4 概 要: (1)遠山敦子文部科学大臣挨拶 御多忙のところ、また足元の良くない日にお集まりいただき、感謝申し上げる。今回の教育改革フォーラムで最も傍聴希望者が多かった北海道において、皆様とお目にかかれることを大変嬉しく思う。 21世紀に入り、日本も世界も様々な難しい問題に直面している。この困難な課題を乗り越えて、心豊かで活力ある、国民が希望を持てる社会を築いていかなければならない。将来に向けて、日本が輝ける国、世界に貢献できる国として発展していくための鍵は、教育であると考えている。 今日、青少年の規範意識や道徳心、自律心の低下、いじめ、不登校や学ぶ意欲の低下など、様々な問題が生じている。これらの問題への解決には、まずは家庭の教育力の回復が最も大事であると考えるが、同時に、学校に対する信頼を回復し、「豊かな心」と「確かな学力」を身に付けた子どもたちを育てていくことが重要。 そのため、近年、「21世紀教育新生プラン」や「人間力戦略ビジョン」を策定するなど大きな教育改革を進めている。この教育改革を貫く理念は「画一と受身から自立と創造へ」ということ。このような大きな理念を皆さんに御理解いただけるよう、これをわかりやすく整理した「教育の構造改革」と題したパンフレットを作り、本日もお配りしているところ。 御覧いただくとおり様々に具体的な改革を推進しているが、現在直面している課題を克服し、新しい時代にふさわしい教育を実現して、日本を良くしていくためには、さらに、今日的な視点から、教育の在り方を根本にまで遡って改革を進めていくことが必要。このため、中央教育審議会において御議論いただき、去る3月20日に「新しい時代にふさわしい教育基本法と教育振興基本計画の在り方について」の答申をいただいた。答申で述べられている教育改革の理念、方向性は当を得たものと考えている。 我が省としては、答申の趣旨を踏まえ、教育基本法の改正に向けて、様々な観点から研究・準備を進めている。与党においても、協議機関を設置し検討を進めていただいていると承知している。それらを踏まえて、教育基本法の改正の問題についてしっかりと対応していきたい。 同時に、この問題は、日本の教育をどうしていくかということについて大きな理想を掲げるものであることから、できるだけ多くの国民の皆様に幅広く御議論いただくことが重要と考えている。そのためにこの教育改革フォーラムを開催させていただくとともに、多様な方法で答申の内容の広報・普及に努めている。 本日のフォーラムが実り多いものとなることを期待するとともに、皆様方の御理解と御支援を心よりお願い申し上げる。 (2)基調講演(木村孟中央教育審議会副会長) ○教育改革の背景及び状況について 教育改革の背景については、社会の変化が大きい。 家庭については、1世帯あたりの人数が昭和22年の約5人から2.75人になり、核家族化が進んでいる。また、家庭のありようも変わってきている。さらに、日本の家庭の状況は世界でも特異な存在になっている。例えば、1日の父親の子どもに接する時間について、諸外国は母親の約7時間と同程度確保されているが、日本は4.2時間しかない。また、親の子どもに対する満足度について、諸外国では12歳に至るまで90%ぐらいあるのが、日本では、3歳の時点で60%、12歳の時点では40%ほどしかない状態になっている。学校については、大学進学率一つを取り上げてみても、昭和30年の約1割から5割近くへと変化している。社会については、第三次産業の就業率が昭和25年の約30%から64%になっている。第一次産業については、約5割であったのが、約5%に減っている。 この結果、教育については多くの課題を抱えるに至っている。若い人が夢を持ちにくくなったことから、規範意識、道徳心、自律心が低下している。 例えば、日本の高校生は親や先生に反抗することに60%から80%が是と考えているのに対し、アメリカや中国では20%以下にすぎない。2番目に、いじめ、不登校、中途退学、学級崩壊などのゆゆしき現象が生じている。3番目に、小・中・高だけでなく、大学まで学ぶ意欲の低下が生じている。4番目に、都市化などにより家庭や地域の教育力が低下している。最後に、これからの社会では、「知」の伝承機関である大学の役割が非常に重要であり、世界的な水準の大学、大学院づくりが課題になっている。 一方、諸外国の教育改革をみてみると、イギリスでは、サッチャー首相が非常に激しい教育改革を行い、ナショナルカリキュラムの策定や学校評価が実施されるようになった。また、5,000人のスクール・インスペクターが任命されて、公立の小学校・中学校の査察が行われている。ブレア首相になっても、研究中心大学をつくるなどの大学改革や、留学生の増加計画が進められている。 アメリカでは、レーガン大統領の時代に、「A Nation at Risk」という報告書が出され、教育の四つの危機とその原因が指摘されている。教育の危機としては、教育の機能の低下、学力の低下、モラルの低下、国家を担う意志と力の低下が、その原因としては、教育が社会の構造変化に遅れてしまったこと、教員の待遇と社会的地位が低いことが指摘されている。 日本でも、平成7年に中央教育審議会が再開されてから、鋭意様々な議論が行われてきた。 例えば、平成12年12月に教育改革国民会議から報告書が出され、15の具体的な提案とともに教育振興基本計画の策定と教育基本法の見直しが提言された。この報告を受けて、文部科学省においては、平成13年1月に、「21世紀教育新生プラン」を策定し、教育改革を着実に推進するための具体的な施策とスケジュールが取りまとめられた。また、平成14年8月には、文部科学省から「人間力戦略ビジョン」が提唱され、画一から自立と創造へというスローガンのもと、体系的な施策の推進が図られている。 こういう様々な提言を踏まえて、具体的な改革の取組とともに、教育を根本から見直し、新しい時代にふさわしい教育を実現するために出されたのが、平成15年3月の中央教育審議会答申である。 ○教育基本法について 教育基本法は昭和22年3月に憲法施行の1ヵ月前に公布、施行されている。11条からなっており、フランスのジョスパン法の36条や大韓民国の教育基本法の29条と比較しても、簡潔な短い法律である。教育の目的、方針、教育の機会均等や義務教育など、教育の基本理念や重要な原則について規定しており、学校教育法や社会教育法などの教育法規の根本法になっている。制定から56年間、一度も改正されていない。 中央教育審議会においては、新しい時代にふさわしい教育基本法の在り方と教育振興基本計画の策定について平成13年11月に諮問を受け、総会を15回、基本問題部会を28回開催し、一日中教審(公聴会)を計5回開催し、そのほかにも折にふれて御意見をいただいた上で、平成15年3月20日に答申を出したところである。 ○答申の概要 新しい時代にふさわしい教育を実現するためには、今日的視点から教育の在り方の根本にまでさかのぼって見直して再構築することが必要との認識に立ち、5つの目標を掲げた。5つの目標とは、「豊かな心と健やかな体を備えた人間の育成」、「自己実現を目指す自立した人間の育成」、「知の世紀をリードする創造性に富んだ人間の育成」、「日本の伝統・文化を基盤として国際社会を生きる教養ある日本人の育成」、「新しい公共を創造し、21世紀の国家・社会の形成に主体的に参加する日本人の育成」であり、これらを通じて、「21世紀を切り拓く心豊かでたくましい日本人の育成」が可能になると考えた。 教育基本法の改正の視点としては、「個人の尊厳」、「人格の完成」、「平和的な国家及び社会の形成者」というような現行法の基本理念は引き続き堅持すべきであり、これに「21世紀を切り拓く心豊かでたくましい日本人の育成」を目指す観点から重要な理念や原則を明確にする必要があるという結論に達した。 ○条文ごとの改正の方向
(3)パネルディスカッション ○教育改革の推進や教育基本法の改正について
○教育基本法に新たに規定する理念について
○学校・家庭・地域社会の連携・協力について
○宗教教育について
○確かな学力の育成について
○会場からの意見紹介 (総論)
(公共)
(その他)
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