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◎ | 本条の趣旨 |
・ | 教育基本法第2条を受け、学校のみならず、社会のあらゆる場所で教育が実施されうるようにする必要がある。この趣旨から、社会教育が重要であることを前提として、一般に社会において行われる教育を尊重し、国及び地方公共団体がこれを積極的に奨励する方策を講ずべきこと(第1項)、及び国及び地方公共団体が自ら社会教育を行う場合の方法を示した(第2項)もの。 |
○ | 「社会教育」 |
教育基本法は、社会教育の定義について何ら規定していない。広義では、社会教育法における社会教育の定義のように、学校教育に対するものとして学校教育以外の教育を包含する概念と捉えられる。 一方、家庭教育は本来的に社会教育とは別の概念であると考え、学校教育及び家庭教育以外の教育とする狭義の考え方もあり、本条の「社会において行われる教育」は、後者と考えるのが適当である。 |
(関係法令)
社会教育法第二条 この法律で「社会教育」とは、学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)に基き、学校の教育課程として行われる教育活動を除き、主として青少年及び成人に対して行われる組織的な教育活動(体育及びレクリエーシヨンの活動を含む。)をいう。
○ | 「家庭教育」 |
家庭教育は、あらゆる教育の出発点であり、その基礎となるべきものであるが、学校教育の発展とともに、その機能がややもすれば軽視されやすい傾向にあるとの問題意識の下に、家庭教育の任に当たる父母等がよく家庭教育を行えるよう、国及び地方公共団体は、心身の修養に努める機会を与える努力をしなければならないことを定めるもの。 |
(関係法令)
民法第820条 親権を行う者は、子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う。
児童福祉法第2条 国及び地方公共団体は、児童の保護者とともに、児童を心身ともに健やかに育成する責任を負う。
児童の権利に関する条約第18条第1項 (前略)父母又は場合により法定保護者は、児童の養育及び発達についての第一義的な責任を有する。(後略)
○ | 「勤労の場所」 |
おおよそ職業を持ち、肉体的、精神的労働たるを問わず、なんらかの勤労に従事する者に対して、その勤労の場所に即してなされる教育の意味である。 なお、労働者を対象とした職業訓練は、職業能力・技能開発等を目的とする場合も多く、社会教育とは若干性格が異なるものと解されている。 |
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○ | 「その他社会において行われる教育」 |
職場の社会や地域の社会など、人間生活の実態に即して様々な社会が構成されるものであり、その社会環境に即してなされる教育という意味である。 | |
○ | 「図書館、博物館、公民館等の施設の設置」 |
いずれも、施設の例示である。 戦前は、図書館・博物館等が、諸外国の例に比すると、その数、設備において極めて不十分であり、今後、その増設と内容の充実並びにその積極的活用が図られなければならないことから規定されたもの。 なお、公民館とは、町村民のための文化教養の機関で、郷土における公民学校、図書館、博物館、公会堂、町民集会所、産業指導所などの機能を併せ持つものとして構想されていた。 |
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○ | 「学校の施設の利用」 |
従来、我が国の学校があまりにも閉鎖的であったという問題意識から、学校は、学校教育に支障のない限り、社会教育のために、その施設を提供しなければならないことを示したもの。 学校教育法第85条及び社会教育法第44条は、本条を受けた規定である。 |
(関係法令)
学校教育法第85条 学校教育上支障のない限り、学校には、社会教育に関する施設を附置し、又は学校の施設を社会教育その他公共のために、利用させることができる。
社会教育法第44条第1項 学校の管理機関は、学校教育上支障がないと認める限り、その管理する学校の施設を社会教育のために利用に供するように努めなければならない。
学校施設の確保に関する政令第3条第1項 学校施設は、学校が学校教育の目的に使用する場合を除く外、使用してはならない。但し、左の各号の一に該当する場合は、この限りでない。
一 法律又は法律に基く命令の規定に基いて使用する場合
二 管理者又は学校の長の同意を得て使用する場合
【7条2項は憲法89条に抵触しないのか】
○昭和22年3月22日貴族院教育基本法案委員会
<辻田政府委員> 教育基本法の第七条第二項に於きまして「国及び地方公共団体は、図書館、博物館、公民館等の施設の設置、学校の施設の利用その他適当な方法によつて教育の目的の実現に努めなければならない。」是は社会教育の従来非常に不振でありました点を改めまして、今後民主的な、平和的な、文化的な国家を建設する上に於て、社会教育が非常に重要である点を認めまして、特に国及び地方公共団体は此の点に留意しなければならないことに付て茲に謳つて居るのでございます。従つて直接には新憲法の八十九条と関連しての問題ではないのでありますけれども、併し只今御質疑がありましたやうに、八十九条の後段の「公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業」とありまして、勿論「公の支配に属しない」と云ふのは矢張り教育にも掛つて居るのでございますが、是は教育に付て例を申上げますと、一私人が育英的な方面に経費を出して居ると云ふ風な育英事業等もございますが、さう云ふ風な一私人が出して居られるやうな事業に対しては、公の支配に属しない教育の事業と云ふ風に解釈して居るのでございます。従つて一定の法規に基きまして国又は地方公共団体が事業をして居ります場合には、それは公の支配に属する教育の事業と云ふ風に解釈して宜いだらうと思ひます。
【家庭教育の在り方についても国が立ち入って監督するということか】
○昭和22年3月20日貴族院教育基本法案委員会
<辻田政府委員> 家庭教育の内容に一々個々の家庭に付てあれ是れする訳ではございませぬが、法に於きましては家庭教育を含めました広い意味の社会教育が従来非常に我が国に於ては発達して居なかつたのでありまするので、今回は社会教育を非常に重視致しまして、家庭教育を含めました社会教育と云ふものが、国及び地方公共団体に於きまして大いに奨励されなければならぬと云ふ大方針を謳つた訳でございます。