平成31年4月1日
文部科学省及び厚生労働省は、ヒト受精胚に遺伝情報改変技術等を用いる基礎的研究の実施にあたり遵守すべき事項について、「ヒト受精胚に遺伝情報改変技術等を用いる研究に関する倫理指針」を制定し、本日(平成31年4月1日)の官報にて告示しましたので、お知らせします。
ヒト受精胚の取扱いについては、人の生命の萌芽として尊重することを原則とする「ヒト胚の取扱いに関する基本的考え方」(平成16年7月23日、総合科学技術会議(現 総合科学技術・イノベーション会議(CSTI))決定)を踏まえ、関連の指針等を策定し、具体的な対応を図ってきたところです。
平成30年3月、CSTIにおいて、「「ヒト胚の取扱いに関する基本的考え方」見直し等に係る報告(第一次)~生殖補助医療研究を目的とするゲノム編集技術等の利用について~」がとりまとめられ、文部科学省及び厚生労働省において指針の速やかな策定が求められました。
文部科学省及び厚生労働省では、本とりまとめを踏まえ、ゲノム編集技術をはじめとする遺伝情報改変技術等を用いた研究のうち、生殖補助医療目的に用いる予定がないヒト受精胚を用いた生殖補助医療の向上に資する基礎的研究を行うにあたり、当該研究に携わる者が遵守すべき事項を定める指針の策定に向けて両省合同による審議会等での検討を行ってきました。
今般、昨年実施したパブリック・コメントにおける意見や、CSTI生命倫理専門調査会の意見等を踏まえ、「ヒト受精胚に遺伝情報改変技術等を用いる研究に関する倫理指針」(平成31年文部科学省・厚生労働省告示第3号。以下「本指針」という。)を制定し、平成31年4月1日に告示するとともに、同日施行することとしました。
(1)目的、研究の要件及びヒト受精胚に対する配慮
・ヒト受精胚に遺伝情報改変技術等を用いる基礎的研究について、ヒト受精胚の尊重、遺伝情報への影響その他の倫理的な観点から、当該研究に携わる者が遵守すべき事項を定めることにより、その適正な実施を図ることを目的とする。
・上記の研究は、当分の間、胚の発生及び発育並びに着床に関するもの、ヒト受精胚の保存技術の向上に関するものその他の生殖補助医療の向上に資するものに限るものとする。
・ヒト受精胚を取り扱う者は、ヒト受精胚が人の生命の萌芽であることに配慮し、人の尊厳を侵すことのないよう、誠実かつ慎重にヒト受精胚の取扱いを行うものとする。
(2)遺伝情報改変技術等
・本指針の対象となる遺伝情報改変技術等とは、ゲノム編集技術その他の核酸を操作する技術とする。
【参考】CSTI第一次報告書(平成30年3月29日)で示された技術の範囲
・CRISPR/Cas9等のゲノム編集技術
・従来からのウイルスベクター、プラスミド等を用いた遺伝子組換え等に関する技術
・ゲノムDNAを切断せず、特定のゲノムDNAを標識する技術及び特定のゲノムDNAの遺伝子発現を増強・抑制する技術
・ヒト受精胚へのミトコンドリア移植(導入)に関する技術 等
(3)ヒト受精胚の取扱い等
・提供を受けることができるヒト受精胚は、生殖補助医療に用いる目的で作成されたヒト受精胚であって、当該目的に用いる予定がないヒト受精胚であり、受精後14日以内(凍結保存期間を除く。)のものとする。
・ヒト受精胚の取扱期間は、原始線条が現れるまで(最大14日(凍結保存期間を除く。))とする。
・研究に用いたヒト受精胚は、人又は動物の胎内への移植は禁止する。
(4)インフォームド・コンセントの手続等
・ヒト受精胚の提供は、提供者によるヒト受精胚を滅失させることについての意思が事前に確認されているものとする。
・説明事項は、研究の目的、方法及び実施体制、ヒト受精胚が滅失することその他提供されるヒト受精胚の取扱い、個人情報の保護の方法、インフォームド・コンセントの撤回手続に関すること等とする。
(5)研究の体制
・研究機関の基準は、ヒト受精胚を用いる研究を行うために必要な施設及び設備、当該研究等に関する十分な実績及び技術的能力等を有するものとする。
・提供機関の基準は、医療法に規定する病院又は診療所であり、ヒト受精胚の取扱いに関して十分な実績及び能力等を有するものとする。
・研究機関及び提供機関に倫理審査委員会を設置するとともに、当該倫理審査委員会の構成要件及び当該倫理審査委員会の開催する会議の成立要件を満たすものとする。
・研究責任者の要件は、ヒト受精胚の取扱い及びヒト受精胚に遺伝情報改変技術等を用いる生殖補助医療研究に関する十分な倫理的な認識、当該研究等に関する十分な専門的知識及び経験を有するものとする。
(6)研究の手続
・研究計画の実施及び変更に当たっては、倫理審査委員会の意見を求めるとともに、文部科学大臣及び厚生労働大臣の確認を受けるものとする。
・研究の進行状況及び終了について、文部科学大臣及び厚生労働大臣に報告するものとする。
(7)雑則
・文部科学大臣及び厚生労働大臣は、研究の実施について、本指針に定める基準に適合していないと認められるものがあったときは、その旨を公表するものとする。
・本指針は、関連研究の進展、ヒト受精胚の取扱いに関する社会的情勢の変化等を勘案して、必要に応じ見直しを行うこととする。
本指針の案に関して実施したパブリックコメント(平成30年10月17日~11月15日)の結果は、e-Govの「パブリックコメント(結果公示案件)」に掲載しています。
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