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次世代IoTの戦略的活用を支える基盤技術

1.目標名

次世代IoTの戦略的活用を支える基盤技術

2.概要

 Society5.0においては、IoT(Internet of Things)でつながった人や機器から生み出される大量かつ多様なデータを、AIやビッグデータ処理等の情報科学技術により分析・活用し、インテリジェントな機器等をニーズに合わせて制御することで、機器単体では決して得られない新しい価値やサービスを創発することが期待される。今後数十年先を見据えた次世代IoT基盤は、従来のIoT基盤と比べ、量的にも質的にも全く異なるものとなることが予想される。
 また、我が国の強みとして、各企業等が質の高いデータを所有していることが挙げられるが、セキュリティやプライバシーへの配慮から、流通は進んでおらず、IoT機器の脆弱性から外部からの攻撃も危ぶまれる。
 今後、日本が世界に打ち勝つためには、この急速に進展するIoT環境の戦略的活用を支援する基盤技術の研究開発を促進することが重要である。特に、企業秘密や個人情報保護等への制約をテクノロジーで超え、高度な攻撃にも耐えうるIoTセキュリティの開発は必須である。このため、本戦略目標では、IoT機器から得られる多種大量のデータをリアルタイムに連携・統合するための基盤構築と、IoT機器の脆弱性・データの保全性等を担保するセキュリティのための基盤技術の構築を目指す。

3.達成目標

 本戦略目標では、スマートシティの実現やインダストリアルIoT等、具体的な社会実装も視野に入れ、今後ますます複雑化、大規模化することが想定されるIoT基盤(次世代IoT基盤)を活用するための研究開発を推進する。具体的には、以下の2つの達成を目指す。
(1)IoT機器から得られる多種大量のデータを、リアルタイムに分散多段処理する基盤構築のための要素技術の開発
(2)IoT機器に対するAI等による高度化した攻撃への対処や機密情報の保護等、IoTセキュリティのための要素技術の開発

4.研究推進の際に見据えるべき将来の社会像

 3.「達成目標」の実現を通じ、膨大な数のセンサーがフィジカル空間の情報をリアルタイムに知的センシングし、自動的により広範囲、多頻度にサイバー空間へデータを吸い上げ、フィジカル空間の人間、機械等に様々な形で最適な動作・行動を起こさせるための情報をフィードバックすることを可能にする。また、上記のように生成された高付加価値のデータを蓄積し、匿名化等のプライバシー保護を施したうえでセキュアに社会へ提供することを可能にする。これにより、以下に挙げるような社会の実現に貢献する。
・これまでには存在しない新しい価値、サービスが生まれ、経済活性化に繋がるスマート社会(Society5.0)
・新しい無限のデジタル情報財の生産を可能とし、セキュリティ強化、プライバシーの確保等が可能となる社会

5.具体的な研究例

(1)IoT機器から得られる多種大量のデータを、リアルタイムに分散多段処理する基盤構築のための要素技術の開発
・ネットワーク上において計算資源を最適利用しながらデータをリアルタイムに分散多段処理する超分散自律制御技術
・IoT機器から得られる大量のデータの連携・統合を高精度高性能に実現する技術

(2)IoT機器に対するAI等による高度化した攻撃への対処や機密情報の保護等、IoTセキュリティのための要素技術の開発
・相互接続されたIoT機器のセキュリティ状況把握を行うためのIoT機器探索・特定・情報収集技術
・IoT機器に対するサイバー攻撃やその防御に関する技術及び機器の安全性の担保に関する技術
・データの保全性やプライバシー等の秘匿性を保証するデータ処理技術

6.国内外の研究動向

(国内動向)
 IoTに関連する要素技術としては、様々なデバイスやセンサー、通信、セキュリティ等多岐にわたる。これらの技術はJSTの「先進的統合センシング技術」や、経産省の「機器間相互認証に用いるLSIのセキュリティ対策に関する研究開発」(2012~2013年)等多くの取り組みがなされてきた。
 しかし、IoT基盤の構築には、要素技術を統合化、システム化するとともに、アーキテクチャやアプリケーションに踏み込んだ研究開発が重要であるが、我が国においては、アプリケーション等に踏み込んだプロジェクトが少ない。そのような中、文科省は「社会システム・サービスの最適化のためのIT統合システム構築」(2012~2016年)において安全・安心な社会、あるいは社会システム全体の高効率化を実現するための研究開発を、経産省においては「機器間相互認証に用いるLSIのセキュリティ対策に関する研究開発」(2012~2013年)が実施されてきた。
 一方、民間においては、IoTはデバイスから通信、コンピューティング、ネットワーク、アプリケーション等多岐にわたる技術の集積であることから、複数の企業や官も含めたコンソーシアム活動が活発である。例えば、製造業向けのエッジコンピューティングプラットフォームであるFIELD Systemや、生産現場向けのシステムのコンソーシアムであるEdge Cross等が組織されている。

(国外動向)
 次世代IoTに関する基礎研究の動向として、米国では、アプリケーションやサービスにまで踏み込んだ基礎研究が幅広く進められている。Google等において、革新的なセンサー技術やAI技術の本格応用の研究開発が順調に進んでいる。また、欧州は、EUによる継続的な支援により、アーキテクチャに関する研究開発等に強い傾向がある。一方、中国は、アーキテクチャの研究開発に弱い面がある一方、独自のアーキテクチャや他国に依存しないサービス実現の必要性から、麒麟等のシリコンチップ及び端末製造技術の進展が著しい。
 応用研究については、米国では、産業界のコンソーシアムの動きが活発である。欧州では、ドイツ企業を中心として盛んに研究開発を進めており、Industrie4.0等、コンソーシアムの作り方、場の作り方が優れている点が特徴である。

7.検討の経緯

 「戦略目標等策定指針」(2015年6月8日科学技術・学術審議会戦略的基礎研究部会決定)に基づき、以下のとおり検討を行った。

1.科学研究費助成事業データベース等を用いた国内の研究動向に関する分析及び研究論文データベースの分析資料を基に、科学技術・学術政策研究所科学技術予測センターの専門家ネットワークに参画している専門家や科学技術振興機構(JST)研究開発戦略センター(CRDS)の各分野ユニット、日本医療研究開発機構(AMED)のプログラムディレクター等を対象として、注目すべき研究動向に関するアンケートを実施した。

2.上記アンケート結果や、有識者へのインタビュー等の情報を踏まえて、注目すべき研究動向として「次世代IoTの戦略的活用を支える基盤技術」を特定した。

3.2018年11月に、文部科学省とJSTは共催で、注目すべき研究動向「次世代IoTの戦略的活用を支える基盤技術」に関係する産学官の有識者が一堂に会するワークショップを開催し、特に注目すべき国内外の動向、研究や技術開発の進展が社会的・経済的に与え得るインパクトやその結果実現し得る将来の社会像、研究期間中に達成すべき目標、国際戦略等について議論を行った。本ワークショップにおける議論等を踏まえ、本戦略目標を作成した。

8.閣議決定文書等における関係記載

「第5期科学技術基本計画」(2016年1月22日閣議決定)
第2章(2)2
国は、産学官・関係府省連携の下で、超スマート社会の実現に向けてIoTを有効活用した共通のプラットフォームの構築に必要となる取組を推進する。
具体的には、複数システム間のデータ利活用を促進するインターフェースやデータフォーマット等の標準化、全システムに共通するセキュリティ技術の高度化及び社会実装の推進、リスクマネジメントを適切に行う機能の構築を進める。

第2章(2)3
このため、国は、特に以下の基盤技術について速やかな強化を図る。
・設計から廃棄までのライフサイクルが長いといったIoTの特徴も踏まえた、安全な情報通信を支える「サイバーセキュリティ技術」
・ハードウェアとソフトウェアのコンポーネント化や大規模システムの構築・運用等を実現する「IoTシステム構築技術」
(略)
・IoTの高度化に必要となる現場システムでのリアルタイム処理の高速化や多様化を実現する「エッジコンピューティング」
また、これらの基盤技術を支える横断的な科学技術として数理科学が挙げられ、各技術の研究開発との連携強化や人材育成の強化に留意しつつ、その振興を図る。

「統合イノベーション戦略」(2018年6月15日閣議決定)
第2章(1)1
こうしたイノベーションの創出を実現するためには、これまでのように分野ごとのデータのみならず、分野の垣根を越えてデータを連携させることが重要である。

第2章(1)2
誰もが安全・安心にデータの利活用等を行い、グローバルなデータ流通を確保するためには、サイバーセキュリティ、個人情報保護等の課題への対応が必要である。

第2章(1)3
データ連携基盤の整備に当たり必要となる、サイバーセキュリティ、個人情報保護等の課題への対応については早急に検討を進め、欧米等との相互運用性を確保しつつ、データ連携基盤を整備する。

9.その他

 本戦略目標に関連する施策として、CREST「人工知能」(2016~2023年度)では、AI技術を用いた多種膨大な情報の利活用を可能とする技術に関する研究が、CREST/さきがけ「革新的コンピューティング」(2018~2024年度)では、情報処理の効率化、高速化を目指したコンピューティング基盤に関しての研究がそれぞれ行われており、本戦略目標で行われる異種データ連携を加速する多種多量な情報の最適処理や、スケーラブルなデータ連携・統合処理を行う基盤の確立等を目指した研究開発と相互に連携を行うことで、効率的・効果的な研究の推進が期待される。
 国際戦略としては、我が国として、先行する諸外国と協調して行うべき領域については、国内外の幅広い研究者による国際的なコンソーシアムの形成等により、積極的に共同研究の実施等を進めることにより、効率的・効果的な研究の推進が望まれる。

お問合せ先

研究振興局基礎研究振興課

金子、千田、林
電話番号:03-5253-4111(内線4386)

-- 登録:平成31年03月 --