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Society5.0を支える革新的コンピューティング技術の創出

1.目標名

 Society5.0を支える革新的コンピューティング技術の創出

2.概要

 自動運転、知能ロボット、スマート工場などに代表される「超スマート社会(Society5.0)」の実現には、エッジ~大規模システムに渡る情報処理システムにおいて、多種多様なIoTデバイスから得られる大量データの知的情報処理をリアルタイム・高効率で行うことが不可欠である。これまでの情報処理技術は、ムーアの法則に象徴されるような半導体の微細化により性能向上を追求してきたが、微細化の限界に直面しており、これまでの技術の延長では今後の情報処理技術の革新的な発展は見込めなくなっている。
 本戦略目標では、リアルタイム性や低消費電力性、大量データの高速処理を実現するためのアーキテクチャの開発を通じた新たなコンピューティング技術の創出と、従来手法にとらわれないアルゴリズム、アーキテクチャ等の技術レイヤーの連携・協調とそれを活かしたセキュリティ技術やアプリケーションの開発を通じた高効率コンピューティング技術の研究開発を推進し、あらゆる情報システムの高効率化に資する革新的コンピューティングの基盤技術の構築を目指す。

3.達成目標

 本戦略目標では、高速処理、低消費電力化、低コスト化等による情報システム全体の高効率化に向けて、従来性能を圧倒的に凌駕する革新的コンピューティングの基盤技術の創出を目指す。具体的には以下の達成を目指す。
(1)情報処理を質的に大転換させる新たなコンピューティング技術の創出
(2)アルゴリズム、アーキテクチャ等の技術レイヤーを連携・協調させた高効率コンピューティング技術の開発

4.研究推進の際に見据えるべき将来の社会像

 3.「達成目標」に記載した事項の達成を通じて、各種センサーからの情報を高効率に取得・解析し、状況に応じてエッジ側でのリアルタイムの認識・判断、クラウド側での他の蓄積データとの比較・分析など、計算システム全体としての適切な情報処理技術を高効率に行うことができるようになり、以下に挙げるような社会の実現に貢献する。
・高度な情報処理を活用したスマートロボット、スマート工場、自動運転、IoTなどによる超スマート社会(Society5.0)。
・少子高齢化に伴う労働力不足の解消、高齢者・障がい者の介護・自立支援、安全で便利な移動手段の確保、ものづくりの効率化、社会インフラの効率的な保全、セキュリティ強化、プライバシーの確保などが可能となる社会。

5.具体的な研究例

(1)情報処理を質的に大転換させる新たなコンピューティング技術の創出
・リアルタイム性や低消費電力性に注目し、深層学習のアルゴリズム、布線論理アーキテクチャ等を活用し、従来性能を飛躍的に高めるための新たなアーキテクチャの研究開発。
・大量データの高速処理に向けて、量子コンピュータ、光コンピュータ、ニューロモルフィック、ブレインモルフィック等を実現するための新たなアーキテクチャの研究開発。

(2)アルゴリズム、アーキテクチャ等の技術レイヤーを連携・協調させた高効率コンピューティング技術の開発
・社会実装を見据え、計算分野の技術(自動制御、診断・予測、分散学習等)を活用したアルゴリズム、アーキテクチャ、ハードウェアを最適に組み合わせ、飛躍的な性能向上を実現する研究開発。
・アルゴリズムとアーキテクチャが連携し、IoTデバイスからの大量データの信頼性を担保するセキュリティ技術の研究開発。
・アルゴリズムとアーキテクチャが連携し、量子コンピュータを高効率に利活用するための言語やコンパイラ等の研究開発やニューロモルフィックを高効率に利活用するためのアプリケーションの研究開発。

6.国内外の研究動向

(国内動向)
 近年、AI・深層学習関係のコンピューティング技術の研究活動が注目されており、2016年にNECと東京大学による「ブレインモルフィックAI技術」の研究開発や、産業技術総合研究所による130PFLOPSの深層学習演算能力をもつ「人工知能処理向け大規模・省電力クラウド基盤」の開発が開始されている。また、ImPACT「量子人工脳を量子ネットワークでつなぐ高度知識社会基盤の実現」プロジェクト、日立製作所の「CMOSアニーリングチップ」、富士通の「デジタルアニーラー」などの量子アニーリング技術の開発や、ERATO「中村巨視的量子機械プロジェクト」の超伝導量子ビットを用いた量子コンピュータ技術の開発も進められている。2018年度には経済産業省「AIチップ開発加速のためのイノベーション推進事業」も開始予定であるが、いずれもアルゴリズムやソフトウェア、デバイス分野に特化した研究開発となるため、アーキテクチャ分野を主流とした研究には至っておらず、ハードウェア技術とソフトウェア技術の接点となる当該分野の研究振興が極めて重要な状況にある。

(国外動向)
 米国では、フォン・ノイマン・ボトルネックの問題が顕在化する以前の2008年よりDARPAのSyNAPSEプログラムでニューロモルフィックチップの開発が進められ、2016年にIBMが「TrueNorth」を発表した。IEEEがRebooting Computing Initiativeを設立して以降、Googleは深層学習のアクセラレータチップ「TPU」開発に着手し、NVIDIAはトヨタ自動車等と自動運転用のAI搭載チップ開発の協業を始め、DARPAではグラフ解析特化した研究プログラム「HIVE」を開始するなど、米国企業などが莫大なコストを集中投資投入して研究開発を活発化している。欧州では欧州委員会による施策として、Human Brain Projectにおいて50PFLOPSのスパコンを設置する計画が進行中であり、Horizon2020でも、エクサスケール技術の研究開発が実施されている。中国でも第13次五ヵ年計画によって、100PFLOPSのスーパーコンピュータシステム(Sunway TaihuLight)の取り組みを実施中である。
 上記のように米国の企業や国策を通じてGPU、FPGAなど現実的なところから、ニューロモルフィック、量子コンピューティングのように挑戦的な研究領域まで、コンピューティングの新たな取り組みを加速している。

7.検討の経緯

「戦略目標等策定指針」(平成27年6月8日科学技術・学術審議会戦略的基礎研究部会決定)に基づき、以下のとおり検討を行った。

(科学研究費助成事業データベース等を用いた科学計量学的手法による国内外の研究動向に関する分析資料の作成)
 科学研究費助成事業データベース等を用いて、研究論文の共引用関係又は直接引用関係の分析等の科学計量学的手法を活用することにより、国内外の研究動向に関する分析資料を作成した。

(分析資料を用いた専門家へのアンケートの実施及び注目すべき研究動向の作成)
 「科学技術振興機構研究開発戦略センターの各分野ユニット」、「日本医療研究開発機構のプログラムディレクター等」及び「科学技術・学術政策研究所科学技術予測センターの専門家ネットワークに参画している専門家」に対し、作成した分析資料を用いて今後注目すべき研究動向に関するアンケートを実施した。その後、アンケートの結果の分析等を行い、注目すべき研究動向として「革新的コンピューティングによるSociety5.0を支えるコア技術の創出」を特定した。

(ワークショップの開催及び戦略目標の作成)
 注目すべき研究動向「革新的コンピューティングによるSociety5.0を支えるコア技術の創出」に関係する産学の有識者が一堂に会するワークショップを開催し、特に注目すべき国内外の動向、研究や技術開発の進展が社会的・経済的に与え得るインパクトやその結果実現し得る将来の社会像、研究期間中に達成すべき目標等について議論を行い、ワークショップにおける議論等を踏まえ、戦略目標を作成した。

(その他)
・2017年3月にCRDSシンポジウム「IoT/AI時代に向けたテクノロジー革新-大変革時代の新機軸とは-」が開催され、コンピューティングの大幅な機能向上に向けた取り組みの必要性が議論された。
・2017年4月より、CRDS内で「革新的コンピューティング」の調査活動が開始され、2017年7月26日に「革新的コンピューティング」の研究開発戦略検討会を開催し、今後取り組むべき研究開発領域や推進体制について議論された。
・2017年11月29日にはCRDSのワークショップ「ドメインスペシフィック・コンピューティング~新たなコンピューティングの進化の方向性~」が開催され、国内外の状況、産業界からの期待、研究開発の進め方などについて議論された。

8.閣議決定文書等における関係記載

「第5期科学技術基本計画」(平成28年1月22日閣議決定)
第2章(3)<2>i)
・大規模データの高速・リアルタイム処理を低消費電力で実現するための「デバイス技術」
・IoTの高度化に必要となる現場システムでのリアルタイム処理の高速化や多様化を実現する「エッジコンピューティング」

「科学技術イノベーション総合戦略2017」(平成29年6月2日閣議決定)
第2章(2)[A]<2>i)
・デバイス技術:大規模データの高速・リアルタイム処理を超小型・超低消費電力で実現するための技術開発が重要である。
・エッジコンピューティング:リアルタイム処理の高速化に向け、分散処理技術構築の推進や、ゲートウェイ等の終端装置のセキュリティが確保又は確保されないことにも配慮したアーキテクチャの構築が重要となる。
第2章(2)[B]<2>i)
・情報処理技術:高速・大規模情報処理を実現するため、三次元集積チップの開発、量子デバイス・アーキテクチャの開発等の要素技術開発が重要である。
第2章(2)[C]<2>i)
・大規模データをリアルタイム処理するためのエッジコンピューティング、仮想化・処理部最適化等のネットワーク技術、及び高速かつ高精度にデータから知識・価値を抽出するビックデータ解析技術の研究開発を推進する。

9.その他

 本戦略目標に関連する施策として、平成30年度より開始予定の経済産業省「AIチップ開発加速のためのイノベーション推進事業」が挙げられるが、当該事業は短・中期的な目標で高効率・高速処理を可能とするAIチップと設計ツール整備に関するプロジェクトとして早期の実用化を目指すものであるのに対し、本戦略目標では中・長期の視点でさらに先を見据えた研究開発として、将来の産業に貢献できる基盤技術の開発を行う。また、文部科学省の「AIPプロジェクト(人工知能/ビッグデータ/IoT/サイバーセキュリティ統合プロジェクト)」(平成28年度発足)の機械学習・深層学習のアルゴリズム・ソフトウェア研究等の取組と、本目標とは相補的な関係にあることから、相互に連携することで有機的に進展することが必要である。
 国際的な戦略として、既に米国や中国、台湾や英国などで研究開発に集中投資されているアプリケ―ションやシステムと、本戦略目標が目指す新技術(回路アーキテクチャなど)を組合せ、各々の技術の連携・協調が図られることでコンピューティングの更なる高効率化を目指すことが重要となる。

お問合せ先

研究振興局基礎研究振興課

大洞、伊藤、林
電話番号:03-5253-4111(内線4386)

-- 登録:平成30年03月 --