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全ライフコースを対象とした個体の機能低下メカニズムの解明

1.目標名

 全ライフコースを対象とした個体の機能低下メカニズムの解明

2.概要

  我が国を含む先進諸国において急速に高齢化が進展する中、健康寿命の延伸は世界的に重要な課題である。健康寿命の延伸には、個々の疾患をケアし、QOL(生活の質)を向上させることが重要であるとともに、個体レベルの機能低下を先制的に抑制するような革新的アプローチが期待される。
  生体は発生から死に至るまでの間、環境から様々な刺激を常に受けており、それらの外的要因と内的・遺伝的要因が長い時間軸に沿って影響することで個体の機能低下が生じると考えられている。この複雑な現象を理解して制御するためには、従来の疾患別、組織・臓器別の研究アプローチでは限界があり、戦略的な取り組みが必要である。
  そこで本研究開発目標は、発生から成熟、老化、また世代の継承に至るまでの全ライフコースを対象として、発生、免疫、幹細胞、タンパク質品質管理機構、エピジェネティクス等の幅広い研究分野を糾合した新たな視点からの分野横断的研究を推進することにより、個体の機能低下の評価・制御の実現に向けたメカニズム解明や基盤技術のシーズ創出を目指す。

3.達成目標

  本研究開発目標では、個体の機能低下を評価し制御できるようになることを目指して、主に個体の機能低下メカニズムを解明する研究を行うとともに、基盤的技術の開発に向けたシーズ創出を行う。具体的には以下の達成を目指す。
(1)個体の機能低下を引き起こす要因の同定とメカニズムの解明
(2)個体の機能低下の評価・制御のための基盤技術のシーズ創出

4..研究推進の際に見据えるべき将来の社会像

  3.「達成目標」に記載した事項の達成を通じ、以下に挙げるような社会の実現に貢献する。

・リスクファクター別、疾患別ではなく、個体の機能低下を評価し、制御できるようになることで、各種のリスクや疾患統合的な予防・診断・治療が可能になる。さらに、生活習慣や運動、食事等による疾患への予防・介入法や健康増進法に科学的根拠を与えることで、人々が正しい科学的知識のもとで健康的な生活を実践することが可能になる。それによって健康寿命が延伸されるとともに、要介護人口の減少等によって、介護費・医療費等の社会保障負担が軽減されている社会。
・個体の機能低下を引き起こす基本的なメカニズムが明らかになることで、加齢関連疾患に対する新たな創薬標的の発見や、健康増進機能を有する食品の開発等に貢献し、我が国の製薬や食品産業等の競争力が高まった社会。

5.具体的な研究例

(1)個体の機能低下を引き起こす要因の同定とメカニズムの解明
  分野横断的アプローチによって、全ライフコースを対象に個体の機能低下を引き起こす要因を同定し、そのメカニズムを解明する研究を行う。例えば、発生・発達期における環境条件が個体の機能低下に及ぼす影響の解析や、免疫システム・幹細胞・タンパク質品質管理機構・エピジェネティクス等の恒常性維持機構が個体の機能低下に及ぼす影響の解析、細胞老化等の細胞レベルでの恒常性維持機構の解析、個体の機能低下の動物種間の種差や個体差等の比較生物学的アプローチによる解析等を行う。

(2)個体の機能低下の評価・制御のための基盤技術のシーズ創出
  個体の機能低下を評価する指標や制御する技術を創出するために必要な基盤的技術のシーズ創出を行う。例えば、個体の時間軸に沿った機能低下を可視化するイメージング技術、数理・工学的手法を用いた定量計測・解析技術やデータ統合技術、ストレス環境を模倣・再現した多細胞システムの構築や解析を可能にする技術等の開発を行う。

6.国内外の研究動向

(国内動向)
  発生、免疫、幹細胞、タンパク質品質管理機構、エピジェネティクス等、幅広い観点から個体の機能低下にアプローチするために重要な研究分野は我が国が世界的に強みを有している。特に近年、多様な環境からの刺激を生体が核内のエピジェネティックな変化として記憶し、それが発生から老化、次世代へと時間軸に沿って影響を与えるという研究が注目されており、我が国の研究グループはこの分野において先導的な成果を発表している。また、細胞老化の誘導にがん抑制遺伝子であるp16INK4aが関与していることの発見や、変異により多彩な老化症状を引き起こすKlotho遺伝子の発見等、細胞や個体の機能低下メカニズムの解明に当たって我が国の研究者は大きな役割を果たしている。

(国外動向)
  先進諸国において急速に高齢化が進む中、本研究領域は世界的にも重要性が増している。また、サーチュイン遺伝子の寿命・老化制御に関する機能の発見や、代謝系のシグナル伝達経路の寿命・老化制御に関する新たな役割の発見等、個体の機能低下メカニズムを分子的に解明する研究が急速に発展している。米国ではNIH(National Institute of Health)の下にNIA(National Institute on Aging)が設置されており、研究所内での研究のみならず米国内の関連した研究に予算を配分している。さらに、ドイツにおいて2007年にMax Planck Institute for Biology of Ageingが設置される等、ヨーロッパにおいても盛んに研究が推進されている。

7.検討の経緯

「戦略目標等策定指針」(平成27年6月8日科学技術・学術審議会戦略的基礎研究部会決定)に基づき、以下のとおり検討を行った。

(科学研究費助成事業データベース等を用いた科学計量学的手法による国内外の研究動向に関する分析資料の作成)
  科学研究費助成事業データベース等を用いて、研究論文の共引用関係又は直接引用関係の分析等の科学計量学的手法を活用することにより、国内外の研究動向に関する分析資料を作成した。

(分析資料を用いた専門家へのアンケートの実施及び注目すべき研究動向の作成)
   「科学技術振興機構研究開発戦略センターの各分野ユニット」、「日本医療研究開発機構のプログラムディレクター等」及び「科学技術・学術政策研究所科学技術動向研究センターの専門家ネットワークに参画している専門家」に対し、作成した分析資料を用いて今後注目すべき研究動向に関するアンケートを実施した。その後、アンケートの結果の分析等を行い、注目すべき研究動向として「環境との相互作用による生体応答性の劣化メカニズムの研究」を特定した。

(ワークショップの開催及び研究開発目標の作成)
  注目すべき研究動向「環境との相互作用による生体応答性の劣化メカニズムの研究」に関係する産学の有識者が一堂に会するワークショップを開催し、特に注目すべき国内外の動向、研究や技術開発の進展が社会的・経済的に与え得るインパクトやその結果実現し得る将来の社会像、研究期間中に達成すべき目標等について議論を行い、ワークショップにおける議論等を踏まえ、研究開発目標を作成した。

8.閣議決定文書等における関係記載

「第5期科学技術基本計画」(平成28年1月22日閣議決定)
第3章 (1) <2> 1)
我が国は既に世界に先駆けて超高齢社会を迎えており、我が国の基礎科学研究を展開して医療技術の開発を推進し、その成果を活用した健康寿命の延伸を実現するとともに、医療制度の持続性を確保することが求められている。

「医療分野研究開発推進計画」(平成26年7月22日健康・医療戦略推進本部決定、平成29年2月17日一部変更)
1-1.(1) <2>
我が国の国民の平均寿命と健康寿命(日常生活に制限のない期間)との差は、2013年に、男性は9.02年、女性は12.40年となっている。今後、健康寿命の延伸により、この差を短縮することができれば、個人の生活の質の低下を防ぐとともに、社会保障負担の軽減も期待できる。健康と疾病は必ずしも不連続なものではないことから、治療を中心とする医療のみでなく、疾病予防に係る研究等を通じて健康寿命の延伸を目指した対策を行うことや、いまだ病気でない段階においても、疾患を高い確率で予測するとともに早期診断を行い、適切な対策によって発症、合併症や重症化を防ぐ取組をより重視することが望まれる。

「ニッポン一億総活躍プラン」(平成28年6月2日閣議決定)
安心した生活(高齢者に対するフレイル(虚弱)予防・対策)
6.元気で豊かな老後を送れる健康寿命の延伸に向けた取組(その2)
【具体的な施策】
新しい運動・スポーツの開発・普及等や職域における身近な運動を推奨することで、取り組みやすい健康増進活動を普及するとともに、介護予防の現場などで高齢者の自立への動機付けを高めることのできる、運動・スポーツを取り入れた介護予防のプログラムの充実に取り組む。あわせて、老化メカニズムの解明等を進める。

「日本再興戦略2016 -第4次産業革命に向けて-」(平成28年6月2日閣議決定)
第2 1-2.(2)<4>
食・農、観光、スポーツなどの地域資源等を活用した産業創出を促進するとともに、高齢者に特有の疾患の解明や老化・加齢の制御についての基礎研究の推進、自治体での健康寿命延伸に向けた産業育成を促進するためのソーシャル・インパクト・ボンドの社会実装に向けた検討を進める。

9.その他

  平成29年度より日本医療研究開発機構(AMED)において開始される「老化メカニズムの解明・制御プロジェクト(仮称)」等の関連する事業や、平成28年度より「ライフサイエンスの横断的取組による超高齢社会課題解決への貢献」として老化研究を開始している理化学研究所等の国内外の関連する研究機関、学会、コンソーシアム等と連携した効率的・効果的な研究の推進が望まれる。

お問合せ先

研究振興局基礎研究振興課

課長:渡辺 正実、基礎研究推進室長:斉藤 卓也、室長補佐:田川博雅、基礎研究・機構係:後藤 裕
電話番号:03-5253-4111(内線4386)、03-6734-4120(直通)

-- 登録:平成29年03月 --