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ナノスケール熱動態の理解と制御技術による革新的材料・デバイス技術の開発

1.目標名

  ナノスケール熱動態の理解と制御技術による革新的材料・デバイス技術の開発

2.概要

  電子機器における発熱の問題は微細化されたデバイスやそれを用いた機器の高性能化の障壁となっており、IoTの進展を阻害するおそれがある。熱を電気や光と同様に自在に制御することができれば、これらの電子機器の熱問題の解決に貢献することができる。
  また、工場、自動車、住宅等において、未利用のまま排出されている熱エネルギーが大量に存在しており、こうした熱エネルギーの有効活用が省エネルギー社会の実現には不可欠である。
  近年、国内外で「放熱」「熱輸送」「熱発生」「断熱」「蓄熱」「熱変換」「輻射」等の熱の時空間変動(以下、熱動態)に関してナノスケールから原理原則に立ち返った研究が活発化しており、熱制御技術のシーズが次々と創出されている。
  本戦略目標において、熱の制御・利活用に向けた基礎的な原理の解明や基盤技術を早急に確立し、将来社会や産業に革新をもたらす新材料創製・デバイス開発に取り組む。

3.達成目標

  本戦略目標では、熱に関する課題の解決や熱エネルギーの有効活用に向けて、熱の根源的な理解と制御を通じた新材料創製やデバイス開発を目的とする。具体的には、以下の達成を目指す。
(1)ナノスケールでの熱動態の基礎的理解と熱制御基盤技術の構築
(2)熱に関する課題の解決や熱エネルギーの有効活用に向けた革新的材料の創製
(3)熱に関する課題の解決や熱エネルギーの有効活用を実現する新規デバイスの開発

4.研究推進の際に見据えるべき将来の社会像

  3.「達成目標」に記載した事項の達成を通じ、以下に挙げるような社会の実現に貢献する。

・電子・光デバイス等の電子機器や、住宅や自動車等の構造物等の幅広い対象において、熱制御に関する制約を克服し、これまでになかった機能性やデザインの追求が可能になる社会
・工場や自動車などにおいて、熱を時空間的に自在に制御し、無駄にしている熱エネルギーを有効に活用できる社会

5.具体的な研究例

(1)ナノスケールでの熱動態の基礎的理解と熱制御基盤技術の構築
  ナノスケールでの熱動態の理解を進め、ナノスケールからマクロスケールまでの一体的な学理体系を構築する。また、熱制御に係る基礎的・基盤的な技術開発を行う。例えば、高断熱性と光透明性を両立した新機能材料の提案・原理検証や、界面熱抵抗をなくすための制御技術開発、半導体集積回路の更なる高集積化を可能とする放熱技術の開発等を進める。

(2)熱に関する課題の解決や熱エネルギーの有効活用に向けた革新的材料の創製
  ナノスケールでの熱制御機能を有する革新的な材料創製を行う。例えば、真空断熱パネルより熱伝導が少ない超断熱材料、特定の方向に熱伝導性を有する異方性熱伝導材料、幅広い温度域でも使用可能な蓄熱材料の創製等を進める。

(3)熱に関する課題の解決や熱エネルギーの有効活用を実現する新規デバイスの開発
  ナノスケールでの熱制御技術を活用したデバイスの試作や基本機能・特性の確認を行う。例えば、熱整流デバイス・熱スイッチ、超低消費電力のセンサ、次世代不揮発メモリ、高蓄熱密度で短時間に蓄熱・放熱可能なシステムの開発等を進める。

6.国内外の研究動向

(国内動向)
・応用物理学会では2016年3月の第63回春季学術講演会において、日本伝熱学会、日本熱物性学会、日本表面科学会、化学工学会、ナノ学会、日本熱電学会、日本物理学会等が共催・後援する特別シンポジウム「フォノンエンジニアリングの広がり」、日本伝熱学会では第52回伝熱シンポジウム「ナノスケール伝熱機能発現とその応用への展開」、日本物理学会では2016年3月の第71回年次大会シンポジウム「フォノンエンジニアリングに向けた物質科学の新展開」等が開催され、ナノスケールの熱制御やフォノンエンジニアリングに関する研究者コミュニティが形成され始めた。
・さらに、応用物理学会で2016年9月に研究分野の連携に向けたフォノンエンジニアリングの合同セッション、2017年1月に新領域グループ「フォノンエンジニアリング研究グループ」が創設されるなど、各学会でナノスケール熱制御に関する研究が活発化している。
・2015~2016年には、その他に日本伝熱学会、日本化学会、日本表面科学会、化学工学会等でもナノスケール熱制御に関するシンポジウム・研究会の開催や学会誌での特集が組まれている。

(国外動向)
・欧米では、ナノエレクトロニクス分野の熱制御に積極的に取り組み始めている。2014年5月開催の第10回ナノテクノロジー国際会議(INC10)における日米欧の熱制御関係の大きなプロジェクト数は、米国:16件、欧州:14件、日本:2件となっており、欧米に比べて日本の少なさが懸念される。
・また、欧州ではEUナノフォノニクスのコミュニティ作りを目的として、固体物理学、ナノエレクトロニクス、生物学を対象としたEUPHONONが2013年にスタートし、5800万円/年の規模で実施されている。米国では、ナノスケールでの熱制御に特化したプログラムはまだ無いものの、論文発表や新アイデア発信が多数行われており、ナノ構造でのフォノン制御を活用した熱設計・熱解析や、フォノン制御材料の創製に精力的に取り組んでいる。
・中国ではフォノニック・熱エネルギーセンター(同済大)の設立や、フォノンエンジニアリングや熱電材料に関する論文数の顕著な増加など、活発な取組が進んでいる。
・フォノンエンジニアリング関係の論文数は、20件(2000年)⇒130件(2010年)⇒280件(2014年)(出典:戦略プロポーザルCRDS-FY2014-SP-04)、のように急激な伸びを示しているが、各国の割合は、中国:34%、米国:21%、フランス:15%、ドイツ:11%、日本:6%(出典:Web of Scienceのデータを基に集計)、となっており、日本がこの分野でリーダーシップをとっていくためには、コミュニティの増加と活動支援が求められる。

7.検討の経緯

「戦略目標等策定指針」(平成27年6月8日科学技術・学術審議会戦略的基礎研究部会決定)に基づき、以下のとおり検討を行った。

(科学研究費助成事業データベース等を用いた科学計量学的手法による国内外の研究動向に関する分析資料の作成)
  科学研究費助成事業データベース等を用いて、研究論文の共引用関係又は直接引用関係の分析等の科学計量学的手法を活用することにより、国内外の研究動向に関する分析資料を作成した。

(分析資料を用いた専門家へのアンケートの実施及び注目すべき研究動向の作成)
  「科学技術振興機構研究開発戦略センターの各分野ユニット」、「日本医療研究開発機構のプログラムディレクター等」及び「科学技術・学術政策研究所科学技術動向研究センターの専門家ネットワークに参画している専門家」に対し、作成した分析資料を用いて今後注目すべき研究動向に関するアンケートを実施した。その後、アンケートの結果の分析等を行い、注目すべき研究動向として「熱の諸問題解決へ向けたナノスケール熱制御技術の革新」及び「中低温域の熱源活用等を通じた化学プロセスに関する革新的技術の創出」を特定した。

(ワークショップの開催及び戦略目標の作成)
  注目すべき研究動向「熱の諸問題解決へ向けたナノスケール熱制御技術の革新」及び「中低温域の熱源活用等を通じた化学プロセスに関する革新的技術の創出」に関係する産学の有識者が一堂に会するワークショップを開催し、特に注目すべき国内外の動向、研究や技術開発の進展が社会的・経済的に与え得るインパクトやその結果実現し得る将来の社会像、研究期間中に達成すべき目標等などについて議論を行い、ワークショップにおける議論等を踏まえ、戦略目標を作成した。

8.閣議決定文書等における関係記載

「科学技術イノベーション総合戦略2016」(平成28年5月24日閣議決定)
第1章 (3)2)[B]
基盤技術を支える横断的技術として、素材・ナノテクノロジー(中略)の早期構築を進める。また、これら基盤の強化に当たっては(中略)高度な熱マネジメントで重要となるナノ領域の熱(フォノン)制御技術(中略)等の基礎研究を中長期的視点に立って推進することも重要である。
第2章 (1)1.1)[C]3)
・蓄熱・断熱技術、再生可能エネルギー熱利用技術等の開発

「第5期科学技術基本計画」(平成28年1月22日閣議決定)
第2章(3)1
新たな価値創出のコアとなる我が国が強みを有する技術を更に強化していくことが必要(後略)。
第2章(3)<2>2)
・革新的な構造材料や新機能材料など、様々なコンポーネントの高度化によりシステムの差別化につながる「素材・ナノテクノロジー」
第3章(1)<1>1)
産業、民生(家庭、業務)及び運輸(車両、船舶、航空機)の各部門において、より一層の省エネルギー技術等の研究開発及び普及を図る。

9.その他

○未利用熱エネルギー革新的活用技術研究組合(TherMAT)では産業応用を見据えた研究開発に焦点を当てて熱電変換、蓄熱断熱、遮熱等に関する取組がなされている。
○科学技術振興機構(JST)CREST/さきがけ「微小エネルギーを利用した革新的な環境発電技術の創出」(平成27年度発足)やCREST「エネルギー高効率利用のための相界面科学」、さきがけ「エネルギー高効率利用と相界面」(平成23年度発足)では、一部に熱電変換材料の研究開発が含まれる。

  上記のような関連事業で得られた知見も活用しながら、熱の統一的な理解や熱制御そのものを主軸とした戦略目標を早期に設定することにより、他国をリードする新たな研究開発基盤技術の確立が可能となる。

お問合せ先

研究振興局基礎研究振興課

課長:渡辺 正実、基礎研究推進室長:斉藤 卓也、室長補佐:田川博雅、基礎研究・機構係:後藤 裕
電話番号:03-5253-4111(内線4386)、03-6734-4120(直通)

-- 登録:平成29年03月 --