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革新的医療機器及び医療技術の創出につながるメカノバイオロジー機構の解明

1.目標名

革新的医療機器及び医療技術の創出につながるメカノバイオロジー機構の解明

2.概要

 生体は重力などの物理的刺激に常にさらされ、それらの力に対して生体が常に適応していることは、宇宙飛行による筋肉量、骨密度の大幅な低下や、長期臥床による廃用性萎縮からも明らかである。メカノバイオロジーは、物理的刺激が分子、細胞内小器官、細胞や組織にどのように感知され、その刺激に対する生体応答や制御機構がどのように働くかを解明する研究である。近年、音波による血管新生作用を活用した新規治療法が開発されるなど、物理的刺激を医療に応用することへの将来性が示されている。
 本研究開発目標では、我が国が誇る先導的詳細計測・制御技術等を融合し、物理的刺激の受容機構とその調節機構、物理的刺激の受容後に生じる細胞内シグナル伝達機構等の詳細な解明から、目標とする生体応答を惹起する適切な物理的刺激を選択し制御することにより、革新的医療機器及び医療技術を創出し、健康長寿社会を実現する。

3.達成目標

 本研究開発目標では、メカノバイオロジー機構の解明に基づく革新的な医療機器及び医療技術の創出することを目的とする。具体的には、以下の達成を目指す。
(1)物理的刺激に対する感知機構・調節機構・応答機構の解明を基にした新規適応疾患におけるシーズの創出
(2)バイオナノ界面技術等を活用した、医療応用につながる物理的刺激発生デバイスの開発及び最適化に資する基盤技術の創出

4.研究推進の際に見据えるべき将来の社会像

 3.「達成目標」に記載した事項の達成を通じ、以下に挙げるような社会の実現に貢献する。

  • メカノバイオロジー機構の解明により、物理的刺激を積極的に取り入れた革新的医療機器や効果的な疾病予防、先制医療、リハビリテーション等の医療技術が開発され、健康寿命の延伸に資する、安全かつ費用対効果の高い医療が実現された社会。

5.具体的な研究例

(1)物理的刺激に対する感知機構・調節機構・応答機構の解明を基にした新規適応疾患におけるシーズの創出
 物理的刺激の感知機構を担う膜タンパク質、細胞骨格を構成するタンパク質等の同定や、細胞内及び細胞間の応答機構の解明に向けて、トランスクリプトーム、プロテオーム等の網羅的解析等を行う。また、物理的刺激に起因する細胞膜、細胞内小器官等を構成するタンパク質の構造変化等がもたらす調節機構の解明に向けた研究を行う。さらに、細胞レベルで解明した知見を組織・臓器レベルまで発展させ、メカノバイオロジー機構の解明に基づき、新規適応疾患における革新的医療機器及び医療技術の創出に向けた研究開発を行う。例えば、物理刺激と骨折治癒メカニズムの解明や音波による血管新生の作用機序の解明、圧による創傷治癒促進の機序解明、がん治療における温熱療法の作用機序の解明等を行う。

(2)バイオナノ界面技術等を活用した、医療応用につながる物理的刺激発生デバイスの開発及び最適化に資する基盤技術の創出
 ナノメートルサイズで局所刺激を可能とする制御技術や細胞が発生する収縮力、組織内応力(ひずみ)分布を定量的に把握する計測技術等の開発により、目標とする生命現象を惹起する適切な物理的刺激の発生・制御法を開発する。また、三次元細胞培養や組織培養における機械刺激負荷システムやライブセルイメージングによる物理的刺激に対する感知機構及び応答機構の可視化技術等の詳細解析に資する基盤技術や、生体内で物理的刺激を惹起する生体適合性の高い医療材料の開発等の医療応用に向けた基盤技術を開発する。

6.国内外の研究動向

(国内動向)
 メカノバイオロジーは、科学研究費助成事業の特別推進研究等や科学技術振興機構の国際共同研究(ICORP)等によって推進され、平成22年度から平成24年度には科学研究費助成事業時限付き分科細目に指定されるなど、我が国における新たな科学技術分野として成熟してきた。応用研究領域では、筋骨格系、循環器系の研究が盛んであり、創傷治癒、生殖医療においても注目すべき成果が創出されている。論文数の比較では、米国に次ぐ2位グループであり、2000年以降の当該分野の論文著者所属国では全体の約6パーセントを占めるが、2012年以降は伸び悩んでおり、戦略的に研究を推進する必要がある。メカノバイオロジーは物理学・工学と医学・生物学の融合領域であり、我が国における個別要素はそれぞれ強みを有するものの、学問横断的な視点が弱く、領域間の交流の場が他国と比べると少ないのが現状である。

(国外動向)
 論文数の比較では、米国が約半分を占めるなど、米国が圧倒的に優位な状況であるが、米国以下は全て10パーセント以下のシェアで激しい競争の下にある。米国では、国立衛生研究所(NIH)の研究所の一つとしてNational Institute of Biomedical Imaging and Bioengineeringを2000年に設立したほか、国立科学財団(NSF)はBiomechanics and Mechanobiologyに対する資金配分を強化し、基盤的研究の支援を推進している。国際的にはメカノバイオロジーに特化した組織は少ないものの、米国内の主要な大学に数多くの医用生体工学関連の研究所が設立されており、メカノバイオロジー関連の研究教育活動が盛んに行われている。また、アジア諸国においても、シンガポールでは2009年にメカノバイオロジー研究所(MBI)を設立し、米国コロンビア大学の教授を所長として迎えるなど、世界各国から研究者を公募して研究を推進している。

7.検討の経緯

 戦略的な基礎研究の在り方に関する検討会 報告書(平成26年6月27日)に基づき、以下の通り検討を行った。

(サイエンスマップ及び科学研究費助成事業データベースを用いた国内外の研究動向に関する分析資料の作成)
 「サイエンスマップ2012&2010」(平成26年7月31日科学技術・学術政策研究所)及び科学研究費助成事業データベースにおける情報を用いて、国内外の研究動向に関する分析資料を作成した。

(分析資料を用いた専門家へのアンケートの実施及び注目すべき研究動向の作成)
 「科学技術振興機構研究開発戦略センター」や「科学技術・学術政策研究所科学技術動向研究センターの専門家ネットワークに参画している専門家」に対し、作成した分析資料を用いて今後注目すべき研究動向に関するアンケートを実施した。その後、アンケートの結果についての分析等を行い、注目すべき研究動向として「メカノバイオロジーに基づく次世代医療技術の創成」及び「インタラクティブバイオ界面創製技術の研究開発」を特定した。

(ワークショップの開催及び研究開発目標の作成)
 注目すべき研究動向「メカノバイオロジーに基づく次世代医療技術の創成」及び「インタラクティブバイオ界面創製技術の研究開発」に関係する産学の有識者が一堂に会するワークショップをそれぞれ開催し、特に注目すべき国内外の動向、研究や技術開発の進展が社会的・経済的に与え得るインパクトやその結果実現し得る将来の社会像、研究期間中に達成すべき目標などについて議論を行い、それぞれのワークショップにおける議論等を踏まえ、研究開発目標を作成した。

8.閣議決定文書等における関係記載

「医療分野研究開発推進計画」(平成26年7月22日健康・医療戦略推進本部決定)
1.1.(1)(3)
科学技術立国である我が国が、iPS細胞をはじめとする幹細胞を活用した再生医療技術やゲノム解析等の最先端医療技術だけでなく、工学や材料科学、製造業の特筆すべき課題解決力を最大限に生かした世界最先端の医薬品や医療技術を開発し、これらを速やかに国民に提供できる国を目指すことが期待される。

「第4期科学技術基本計画」(平成23年8月19日閣議決定)
2.4.(1)
医療・介護・健康サービス等の産業を創成し、活性化することで、我が国の持続的な成長と社会の発展を実現する。さらに、先進諸国がこれから直面する高齢社会への対応や発展途上国に蔓延する疾病に対し、医薬品、医療機器の開発等を通じて、国際貢献を目指す。

「科学技術イノベーション総合戦略2014」(平成26年6月24日閣議決定)
第2章第2節3.(4)<1>
生体との相互作用を持つバイオデバイスのような「ナノバイオデバイス・システム」など、従来とは異なるアプローチで開発されたデバイス・システムが注目を集めている。これらの革新的なデバイスを次世代デバイス・システムとして活用する取組は、分野横断的に大きな波及効果を期待できる。

9.その他

○本研究開発目標の下で行われる研究によって生み出される成果は、直接的には物理的刺激による生体応答の制御を可能にするため、医療機器等への応用が期待される。そのため、日本医療研究開発機構における連携プロジェクト「オールジャパンでの医療機器開発」や「革新的医療技術創出拠点プロジェクト」等において、本研究開発目標の下で行われる研究の成果を着実に実用化に繋げるための取組が期待される。

お問合せ先

研究振興局基礎研究振興課

課長:行松 泰弘、基礎研究推進室長:岩渕 秀樹、室長補佐:浅井 雅司、基礎研究・機構係長:春田 諒
電話番号:03-5253-4111(内線4386)、03-6734-4120(直通)

-- 登録:平成27年05月 --