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新たな光機能や光物性の発現・利活用による次世代フォトニクスの開拓

1.目標名

新たな光機能や光物性の発現・利活用による次世代フォトニクスの開拓

2.概要

 光の利用技術はこれまで、物質の観察手段としてだけでなく、材料加工や情報通信、医療等の幅広い分野における横断的技術として活用されてきた。近年では、レーザー技術をはじめとする精密制御・高感度計測技術の飛躍的な進展に伴い、新物質の創製・新機能発現から量子状態の制御に至るまで、知のフロンティア開拓を先導する先端科学技術として現代に欠かせない社会インフラの一翼を担っている。他方で、物質と光の相互作用における多彩な非線形光学現象や素励起物性など光の作用の本質については未解明の点も多く、さらなる分野深化や応用展開に向けては新たな系統的・体系的知見の獲得が不可欠となっている。
 そのため、本戦略目標では、新たな光機能や光物性の解明・利活用・制御等を通じて従来の光科学技術を横断的かつ重層的に集積・発展させることにより、将来の社会・産業ニーズに応える新たなフォトニクス分野の進展を加速させるとともに、新技術シーズの創出を支える基礎的な原理の解明にも併せて取り組むことで、新たな光機能物質の人工生成や革新的な光通信技術の開発・活用、微細構造の高時空間分解可視化、先端数理科学との融合による複合光基盤技術・システムの創出等を目指す。
 これにより、環境・エネルギー・ものづくり・情報通信・医療等の広範な分野を更に横断的かつ有機的に支えていくことで、精度・感度・容量・消費電力等の様々な点で社会的要請に応える高次な社会・産業インフラの形成につなげる。

3.達成目標

 本戦略目標では、結晶構造や素励起の動的挙動等に関する物性解明からナノデバイスの開発、生体組織深部の非侵襲観察から電子の超高速動態の捕捉に至るまで、多様な目的に応じた最適な光源や光検出システムの開発を通じて広範な社会・産業ニーズに機動的に応える次世代のフォトニクス分野を開拓することを目的とする。具体的には、以下の達成を目指す。
(1)様々な光応答物性の精密制御による新たな光機能物質やナノ構造体の創製及び高機能光デバイスの開発
(2)非線形・有機フォトニクスの応用による生体やソフトマテリアル内部の非侵襲in vivo観察・イメージング手法の高度化
(3)物質中の多彩な素励起と光の相互作用に関する基盤的研究の推進
(4)超高密度・高電磁場科学やアト秒レーザー技術、超高精度の光周波数コム技術など極限フォトニクスの開拓

4.研究推進の際に見据えるべき将来の社会像

 3.「達成目標」に記載した事項の達成を通じ、以下に挙げるような社会の実現に貢献する。

  • 未開拓の光機能物質や先端光源等を用いたフォトニクス技術が環境・エネルギー問題など重要な社会的課題の解決・緩和に貢献し、ものづくり産業の革新や新たな基幹産業の構築が可能となった結果、我が国の知的基盤及びグローバル産業競争力が強化された社会。
  • 新たな光通信技術やセンシング技術など光の利用・制御に関するフォトニクス技術の進展により、情報社会・空間の捉え方が変わり、情報通信基盤の高度化・高セキュリティ化が進むとともに、実世界とITを緊密につなげるCPS(サイバー・フィジカル・システムズ)やモノのインターネット(IoT)が実現している社会。
  • 人や環境に配慮した光源や光検出器等の開発及びその制御技術の確立により、生命科学や医療システム等の高度化が促され、短時間・低コスト・低負担なストレスフリー診断など先端医療・診断を可能とする先端機器開発等が進展している社会。

5.具体的な研究例

(1)様々な光応答物性の精密制御による新たな光機能物質やナノ構造体の創製及び高機能光デバイスの開発
 誘電率・透磁率が人工制御されたメタマテリアル等を先行例として、従来の光科学技術では扱われなかった新たな原理に基づく光機能物質の開発やその幅広い利活用に向けた研究開発を行う。具体的には、光の波長よりも小さな構造物を用いた光波の制御や光の回折限界を超えた分解能の実現、ナノスケール領域における微細光加工・計測技術の開発、新物質創製に向けた研究等を行う。今後の課題とされる基礎的な原理の解明や将来的な大量製造技術の確立に向けては、シミュレーションを含む理論的アプローチから新機能の発現過程や新物質の生成過程、従来知られていない物性の解明に向けた研究を行うとともに、特定の屈折率や透明度、誘電率等を持つ物質・材料を自在に設計・作製する手法やそのための装置開発等を行う。

(2)非線形・有機フォトニクスの応用による生体やソフトマテリアル内部の非侵襲in vivo観察・イメージング手法の高度化
 幅広い先端生命科学等への応用展開に向け、分子~個体レベルの生体機能を組織深部に至るまで非侵襲的かつリアルタイムで観察可能な光イメージング技術の開発や、そのために必要な小型かつ安定な実用的なコヒーレント光源の開発、生体関連物質(検出対象)と非生体物質(プローブ)との光照射下での相互作用機構の解明に向けた研究等を進める。これにより、生体分子やソフトマテリアル内部の直接観察・分析が可能な高品質・高分解能顕微鏡の開発等につなげる。

(3)物質中の多彩な素励起と光の相互作用に関する基盤的研究の推進
 幅広い基礎研究や産業応用に必要な固体基礎物性の解明・理解深化や、次世代の高機能光デバイスの実現に向け、固体内部や表面における準粒子(集団励起)のダイナミクスや固体からの電子放出等の超高速動的過程を観測・制御可能な手法を開発し、極短パルス幅コヒーレント光の制御技術など様々な光応答や光化学反応に関する制御技術を確立する。具体的には、時間・空間の両次元で高分解能な電子状態の観察手法や、プラズモン・フォノン等の振動・伝搬制御技術の高度化研究等を行う。例えばプラズモニクスに関しては、光の回折限界を下回るサブ波長サイズの光機能素子や表面プラズモン回路・干渉計等のナノ光学素子の開発を目指す。

(4)超高密度・高電磁場科学やアト秒レーザー技術、超高精度の光周波数コム技術など極限フォトニクスの開拓
 超高強度レーザーと物質の相互作用により発生する相対論的高密度プラズマを利用した研究や、アト秒パルス波の発生・制御技術、高強度任意電場の整形技術、究極の時空間計測に向けた光周波数コム技術、レーザー加速技術など、極限環境・条件下における先端光科学技術を開拓する。これにより、先端レーザー科学等に関する知見の集積や基礎的な原理の解明につなげ、原子物理や材料物性の理解深化に寄与するとともに、超高精度・超高安定な光格子時計の高度化・実用化に向けた研究開発や、化学反応等における電子の超高速運動の捕捉、物質中電子のアト秒精度での自在操作等を可能にする技術の開発等につなげる。

 以上の各達成目標について、光の状態(位相、パルス、強度、波長等)の高度制御技術を共通項としつつ、計算科学や複雑系の数理科学等の知見に基づく予測的手法など多角的なアプローチからフォトニクス技術の先鋭化及び広範な利活用を図るとともに、これらの技術に基づくシステムの構築・最適化に向けた開発・実証につなげていく。

6.国内外の研究動向

(国内動向)
 我が国では、センター・オブ・イノベーション(COI)プログラム等の他、「最先端の光の創成を目指したネットワーク研究拠点プログラム」等の光科学技術が関連する利用研究が展開されている。具体的には、従来の動作原理を越える画期的な半導体レーザーを実現するフォトニック結晶に関する要素技術やレーザー加速システムの確立、その応用による超小型X線自由電子レーザーの開発など新しい研究開発が進められている。

(国外動向)
 欧州では、第7次研究枠組み計画(FP7)に引き続き、新しいイノベーション指向の研究開発スキームである「Horizon 2020」が立ち上げられ、情報通信ネットワークの革新や産業競争力の強化を目的とした光科学技術の強化が進められている。また、独国では、フラウンホーファー研究機構を通じて生産技術に関わる光科学技術の研究開発が国策として進められている。さらに、米国では、2014年4月にNSFの光・フォトニクスにおける優先課題委員会より報告書(「Building a Brighter Future with Optics and Photonics」)がまとめられ、今後米国として、イメージングや微弱フォトニクス技術に注力していくことが謳われている。

7.検討の経緯

 「戦略的な基礎研究の在り方に関する検討会 報告書」(平成26年6月27日)に基づき、以下の通り検討を行った。

(サイエンスマップ及び科学研究費助成事業データベースを用いた国内外の研究動向に関する分析資料の作成)
 「サイエンスマップ2012&2010」(平成26年7月31日科学技術・学術政策研究所)及び科学研究費助成事業データベースにおける情報を用いて、国内外の研究動向に関する分析資料を作成した。

(分析資料を用いた専門家へのアンケートの実施及び注目すべき研究動向の作成)
 「科学技術振興機構研究開発戦略センター」や「科学技術・学術政策研究所科学技術動向研究センターの専門家ネットワークに参画している専門家」に対し、作成した分析資料を用いて今後注目すべき研究動向に関するアンケートを実施した。その後、アンケートの結果の分析等を行い、注目すべき研究動向として「光の超精密制御による新たなフォトニクス分野の開拓」を特定した。

(ワークショップの開催及び戦略目標の作成)
 注目すべき研究動向「光の超精密制御による新たなフォトニクス分野の開拓」に関係する産学の有識者が一堂に会するワークショップを開催し、特に注目すべき国内外の動向、研究や技術開発の進展が社会的・経済的に与え得るインパクトやその結果実現し得る将来の社会像、研究期間中に達成すべき目標などについて議論を行い、ワークショップにおける議論等を踏まえ、戦略目標を作成した。

8.閣議決定文書等における関係記載

科学技術イノベーション総合戦略2014(平成26年6月24日閣議決定)
第2章第1節1.3.(4)<1>
モーターや情報機器等の消費電力を大幅に低減する超低消費電力パワーデバイス(SiC、GaN等)、超低消費電力半導体デバイス(三次元半導体、不揮発性素子等)、光デバイス等の研究開発及びシステム化を推進し、電力の有効利用技術の高度化を図るとともに、当該技術の運輸・産業・民生部門機器への適用を拡大することで、エネルギー消費量の大幅削減に寄与する。(中略)これにより、エネルギーの効率的な利用と国際展開をねらう先端技術を有する社会を実現する。

第2章第2節1.基本的認識 
分野横断技術を下支えする数理科学やシステム科学、光・量子科学の活用を十分に図る必要がある。

9.その他

○平成20年度戦略目標「最先端レーザー等の新しい光を用いた物質材料科学、生命科学など先端科学のイノベーションへの展開」では、これまで各分野で個別に行われてきた光利用開発を融合し、「物質と光の関わり」に関する光科学技術の基礎研究や、波及効果の大きな技術シーズの創出を目指してきた。ここで創出された優れた研究シーズを、本戦略目標の下で行われる研究により集中的に伸ばしていくことで、最先端光科学技術の実用化を加速していくことが重要である。
○「光・量子科学研究拠点形成に向けた基盤技術開発」事業では、光・量子科学技術分野のシーズと各重点分野や産業界のニーズとを融合した、最先端の光源、ビーム源、ビーム制御法、計測法等の研究開発等を目的としている。ここで開発された新規光源や要素技術が本戦略目標の下で行われる研究開発の基礎となる。
○「先端計測分析技術・機器開発プログラム」では、革新的な先端計測分析技術の要素技術や機器及びその周辺システム等の開発が進められており、検出器や新規光源の開発が行われている。本戦略目標の下で行われる研究と連携することで、先端装置の実用化、特に光センシングにおいて迅速な成果創出が期待できる。

お問合せ先

研究振興局基礎研究振興課

課長:行松 泰弘、基礎研究推進室長:岩渕 秀樹、室長補佐:浅井 雅司、基礎研究・機構係長:春田 諒
電話番号:03-5253-4111(内線4386)、03-6734-4120(直通)

-- 登録:平成27年05月 --